JP4180051B2 - アスファルト組成物 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、アスファルト組成物に関する。更に詳細には、本発明は、少なくとも1つのビニル芳香族重合体ブロック(A)と少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、及び該ベースブロック共重合体に結合した官能基含有変性剤基を含む、少なくとも1種の変性ブロック共重合体を含むブロック共重合体成分(I)、アスファルト(II)、及び硫黄及び硫黄化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の加硫剤(III)を含むことを特徴とするアスファルト組成物に関する。本発明のアスファルト組成物は、軟化点及び伸度が高く、高温貯蔵安定性及び低温曲げ特性に優れるのみならず、道路舗装に用いた際の道路表面の動的安定度、骨材把握抵抗性に優れるため、道路舗装用に非常に適したアスファルト組成物である。かかる特性を生かして、本発明のアスファルト組成物は、道路舗装用のバインダー、特に排水性舗装道路に使用するバインダーとして好適に利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルト組成物は、道路舗装、防水シート、遮音シート、ルーフィング等の用途に広く利用されている。その際、アスファルトに種々のポリマーを添加して、その性質を改良しようとする試みが多くなされている。そのポリマーの具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ゴムラテックス、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とからなるブロック共重合体等が使用されている。
しかしながら、近年、道路通行車両の増大、或いは高速化といった事情に伴って、優れた強度、耐摩耗性を有するアスファルト混合物、さらに、強度、耐摩耗性を保持しつつ、高速道路での排水性改良や騒音低減化を目的として、道路舗装に用いた際に高い開粒度を発揮するアスファルト混合物の要求がますます高まっている。このため、より高い軟化点や曲げ応力、骨材把握力などの機械的強度が必要とされ、例えば上記ブロック共重合体の分子量を上げることにより改良することが試みられているが、このような方法では高温貯蔵安定性が充分でなく、溶融粘度が高くなり、道路舗装時の施工性が劣る。
【0003】
このため、一般にはアロマ系オイルの添加、硫黄や過酸化物の添加による架橋で貯蔵安定性を改良することが行われている。例えば、特許文献1には硫黄の使用が、特許文献2には特定構造のポリスルフィドの使用が、特許文献3には硫黄加硫剤、硫黄含有加硫促進剤の併用が開示されている。しかしながら、かかる改良方法においても未だに満足できる結果が得られておらず、道路舗装に用いた際の道路表面の動的安定度、骨材把握抵抗性に優れる改質材はこれまで見出されていないのが現状であり、さらなる改良が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】
特公昭57−24385号公報(米国特許第4,145,322号に対応)
【特許文献2】
特公平1−13743号公報(米国特許第4,554,313号及び米国特許第4,567,222号に対応)
【特許文献3】
特開平3−501035号公報(米国特許第5,508,112号に対応)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況下、本発明者らは、従来技術の上記問題を解決するため、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体又はその水添物とアスファルトとを含む組成物の特性改良について鋭意検討を行なった。その結果、少なくとも1つのビニル芳香族重合体ブロック(A)と少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、及び該ベースブロック共重合体に結合した官能基含有変性剤基を含む、少なくとも1種の変性ブロック共重合体を含むブロック共重合体成分(I)、アスファルト(II)、及び硫黄及び硫黄化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の加硫剤(III)を含むアスファルト組成物が、軟化点及び伸度が高く、高温貯蔵安定性及び低温曲げ特性に優れるのみならず、道路舗装に用いた際の道路表面の動的安定度、骨材把握抵抗性に優れることを見出した。また、上記ブロック共重合体(I)として特定のブロック共重合体混合物を用いると、軟化点と溶融粘度とのバランスに優れたアスファルト組成物が得られることを見いだした。これらの知見に基づき、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
従って、本発明の1つの目的は、軟化点及び伸度が高く、高温貯蔵安定性及び低温曲げ特性に優れるのみならず、道路舗装に用いた際の道路表面の動的安定度、骨材把握抵抗性に優れるアスファルト組成物を提供することにある。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴並びに諸利益は、以下の詳細な説明及び請求の範囲の記載から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする少なくとも1つのビニル芳香族重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、但し該ベースブロック共重合体は、水添されていないか、又は水添されている、及び該ベースブロック共重合体に結合した少なくも1つの官能基を含有する変性剤基を含む、少なくとも1種の変性ブロック共重合体を含むブロック共重合体成分(I)0.5〜50重量部;アスファルト(II)100重量部;及び硫黄及び硫黄化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の加硫剤(III)0.01〜10重量部を含むことを特徴とするアスファルト組成物が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアスファルト組成物は、軟化点及び伸度が高く、高温貯蔵安定性及び低温曲げ特性に優れるのみならず、道路舗装に用いた際の道路表面の動的安定度、骨材把握抵抗性に優れるため、道路舗装用に非常に適したアスファルト組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の理解を容易にするために、以下、本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
1.ビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする少なくとも1つのビニル芳香族重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、但し該ベースブロック共重合体は、水添されていないか、又は水添されている、及び該ベースブロック共重合体に結合した、少なくも1つの官能基を含有する変性剤基を含む、少なくとも1種の変性ブロック共重合体を含むブロック共重合体成分(I)0.5〜50重量部;アスファルト(II)100重量部;及び硫黄及び硫黄化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の加硫剤(III)0.01〜10重量部を含むアスファルト組成物であって、該変性剤基が下記式(1)〜(4)、(7)〜(14)よりなる群から選ばれる式で表される少なくとも1種の官能基を有することを特徴とするアスファルト組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
上記式(1)〜(4)、(7)〜(14)において、Nは窒素原子、Siは珪素原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子を表し、R1〜R 2 は各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し、且つ、該炭化水素基は、所望により、各々独立に、水酸基、アミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、各R5は各々独立に炭素数1〜48の炭化水素基を表し、且つ、所望により、各々独立に、水酸基、アミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、各R6は各々独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0012】
2.該ブロック共重合体成分(I)が、少なくとも2つの該ビニル芳香族重合体ブロック(A)と少なくとも1つの該共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、但し該ベースブロック共重合体は、水添されていないか、又は水添されている、及び該ベースブロック共重合体に結合した該変性剤基を含む変性ブロック共重合体(I-A)10〜90重量%;及び少なくとも1つの該ビニル芳香族重合体ブロック(A)と少なくとも1つの該共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、但し該ベースブロック共重合体は、水添されていないか、又は水添されている、及び該ベースブロック共重合体に結合した該変性剤基を含む、該変性ブロック共重合体(I-A)とは異なる変性ブロック共重合体(I-B)、及び少なくとも1つの該ビニル芳香族重合体ブロック(A)と少なくとも1つの該共役ジエン重合体ブロック(B)とからなり、水添されていないか、又は水添されている未変性共重合体(I-C)からなる群より選ばれる少なくとも1つの共重合体10〜90重量%を含む混合物であり、但し各重量%はそれぞれ該混合物の重量に基づく、ことを特徴とする前項1に記載のアスファルト組成物。
3.成分( I )の変性ブロック共重合体に混在する未変性のブロック共重合体の割合は、70重量%以下であり、加硫剤( III )の配合量が0.02〜5重量部であることを特徴とする前項1又は2に記載のアスファルト組成物。
【0013】
4.前項1〜3のいずれかに記載のアスファルト組成物の製造方法であって、
(1)ビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする少なくとも1つのビニル芳香族重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、及び該ベースブロック共重合体末端に結合したリチウムイオンを含むリビングブロック共重合体を提供し、
(2)該リビングブロック共重合体を、少なくも1つの官能基を含有する、又は少なくも1つの官能基を形成することができる変性剤化合物と反応させることにより、変性ブロック共重合体を得、
(3)得られた変性ブロック共重合体、及び硫黄及び硫黄含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の加硫剤を、攪拌しながら溶融状態のアスファルトに添加する、ことを含む方法。
5.該工程(2)で得られた該変性ブロック共重合体を水添することを特徴とする前項4に記載の方法。
【0014】
本発明で使用するブロック共重合体成分(I)は、ビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする少なくとも1つのビニル芳香族重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、但し該ベースブロック共重合体は、水添されていないか、又は水添されている、及び該ベースブロック共重合体に結合した少なくも1つの官能基を含有する変性剤基を含む、少なくとも1種の変性ブロック共重合体を含む成分である。
該変性ブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素単量体単位含有量は、一般に5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは15〜85重量%である。本発明においては、特に5〜60重量%、好ましくは10〜55重量%、更に好ましくは15〜50重量%の範囲が推奨される。
【0015】
該ベースブロック共重合体の製造方法としては、例えば日本国特公昭36−19286号公報(GB895980に対応)、日本国特公昭43−17979号公報(米国特許第4,600,749号に対応)、日本国特公昭49−36957号公報(米国特許第3,281,383号に対応)などに記載された方法が挙げられる。これらの方法で得られるリビングブロック共重合体に後述する変性剤を反応させることにより本発明で使用する官能基含有変性ブロック共重合体が得られる。本発明で使用する変性ブロック共重合体は、例えば、下記一般式で表されるような構造を有する。
【0016】
(A−B)n−Y、 A−(B−A)n−Y、
B−(A−B)n−Y、Y−(A−B)n、
Y−(A−B)n−Y、 Y−A−(B−A)n−Y、
Y−B−(A−B)n−Y、[(B−A)n]m−Y、
[(A−B)n]m−Y、[(B−A)n−B]m−Y、
[(A−B)n−A]m−Y
(上式において、Aはビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とするビニル芳香族重合体ブロック(A)であり、Bは共役ジエン単量体単位を主体とする共役ジエン重合体ブロック(B)である。AブロックとBブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。又、nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。mは2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。Yは、後述する官能基を有する原子団が結合している変性剤の残基を示す。Yを後述するメタレーション反応を含む方法によって結合させる場合、YはAブロック及び/又はBブロックの側鎖に結合する。また、Yに結合しているポリマー鎖の構造は同一でも、異なっていても良い。)
【0017】
尚、本発明において、ビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とするビニル芳香族重合体ブロック(A)とはビニル芳香族炭化水素単量体単位を50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有するビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体ブロック又はビニル芳香族炭化水素単独重合体ブロックを示し、共役ジエン単量体単位を主体とする共役ジエン重合体ブロック(B)とは共役ジエン単量体単位を50重量%を超える量で、好ましくは70重量%以上含有する共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との共重合体ブロック又は共役ジエン単独重合体ブロックを示す。共重合体ブロック中のビニル芳香族炭化水素単量体単位は均一に分布していても、又テーパー状に分布していてもよい。又、該共重合体部分には、ビニル芳香族炭化水素単量体単位が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。また、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との共重合体ブロックには、ビニル芳香族炭化水素単量体単位含有量が異なる部分が複数個共存していても良い。本発明で使用するベースブロック共重合体は、上記一般式で表されるブロック共重合体の任意の混合物でもよい。
【0018】
また、本発明で使用する変性ブロック共重合体において、該ベースブロック共重合体又はその水添物中にビニル芳香族炭化水素単独重合体ブロックが組み込まれている場合、ビニル芳香族炭化水素単独重合体ブロックの割合(以下、ビニル芳香族炭化水素のブロック率という)を、50重量%以上、より好ましくは50〜97重量%、さらに好ましくは60〜95重量%に調整することが、伸びに優れた組成物を得る上で好ましい。またビニル芳香族炭化水素単独重合体ブロックの重量平均分子量は、一般に0.5万〜50万、好ましくは0.7〜20万であることが推奨される。ビニル芳香族炭化水素のブロック率の測定は、例えば四酸化オスミウムを触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより水添されていないブロック共重合体を酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族炭化水素単独重合体ブロック成分(ただし重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素単独重合体ブロック成分は除かれている)を用いて、次式から求められる。
【0019】
ビニル芳香族炭化水素のブロック率(重量%)
=(ベースブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素単独重合体ブロックの重量/ベースブロック共重合体中の全ビニル芳香族炭化水素の重量)×100
【0020】
本発明において、ベースブロック共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率など)は、後述する極性化合物等の使用により任意に変えることができ、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合は一般に5〜90%、好ましくは10〜80%、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量は一般に3〜80%、好ましくは5〜70%である。但し、ベースブロック共重合体が水添されている場合のミクロ構造は、共役ジエンとして1,3ーブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合は好ましくは10〜80%、更に好ましくは25〜75%であり、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量は好ましくは5〜70%である。
【0021】
本発明において、共役ジエンとは1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどである。特に好ましいものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。これらの共役ジエンは、一種のみを使用してもよいし二種以上を組み合わせて使用してもよい。又、ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、O−メチルスチレン、P−メチルスチレン、P−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、などがあるが、特に好ましいものとしてはスチレンが挙げられる。これらのビニル芳香族炭化水素は、一種のみを使用してもよいし二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明において、ベースブロック共重合体の製造に用いられる溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、或いはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などが使用できる。これらは一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
又、上記したベースブロック共重合体の製造方法においては、有機リチウム化合物を重合開始剤として用いる。本発明で用いることができる有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子を結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムなどが挙げられる。さらに、米国特許5,708,092号明細書に開示されている1−(t−ブトキシ)プロピルリチウム及びその溶解性改善のために、上記1−(t−ブトキシ)プロピルリチウムに1〜数分子のイソプレンモノマーを反応させて得られるリチウム化合物、英国特許2,241,239号明細書に開示されている1−(t−ブチルジメチルシロキシ)ヘキシルリチウム等のシロキシ基含有アルキルリチウム、米国特許5,527,753号明細書に開示されているアミノ基含有アルキルリチウム、ジイソプロピルアミノリチウム等のアミノリチウム類も使用することができる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。又、有機リチウム化合物は、ブロック共重合体の製造において一度に全量添加してもよいし、2回以上に分割して添加してもよい。
【0024】
本発明において、ベースブロック共重合体の製造時の重合速度の調整、重合した共役ジエン部分のミクロ構造の変更、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との反応性比の調整などの目的で極性化合物やランダム化剤を使用することができる。極性化合物やランダム化剤としては、エーテル類、アミン類、チオエーテル類、ホスフィン、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸のカリウム塩又はナトリウム塩、カリウムまたはナトリウムのアルコキシドなどが挙げられる。適当なエーテル類の例はジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルである。アミン類の例としては、第三級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン)、その他環状第三級アミンなども使用できる。ホスフィン及びホスホルアミドの例としては、トリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミドなどがある。
【0025】
本発明において、ベースブロック共重合体を製造する際の重合温度は、一般に−10℃乃至150℃、好ましくは30℃乃至120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、特に好適には0.5乃至10時間である。又、重合反応系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。例えば、0.1〜3MPa、好ましくは0.2〜2MPaの圧力下で重合を行なうことができる。更に、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガスなどが混入しないように留意する必要がある。
【0026】
本発明の成分(I)に用いる変性ブロック共重合体は、例えば、リチウムイオンを含むリビング末端を有するベースブロック共重合体(リビングブロック共重合体)をリビングアニオン重合で製造し、そして、官能基含有変性剤を該リビングブロック共重合体と反応させて変性ブロック共重合体を得、所望により、該変性ブロック共重合体を部分的に又は完全に水添することによる方法によって得られる。なお、該変性剤の官能基は、公知の方法で保護されていてもよい。他の方法としては、ベースブロック共重合体に有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、得られたアルカリ金属が結合した重合体に、上記の変性剤を反応させる方法が挙げられる。後者の場合、ベースブロック共重合体の水添物を得た後に、メタレーション反応させて、上記の変性剤を反応させる方法が推奨される。変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で一般に水酸基やアミノ基は有機アルカリ金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコール等活性水素を有する化合物で処理することにより、水酸基やアミノ基にすることができる。尚、本発明においては、リビングブロック共重合体に変性剤を反応させる際に、一部変性されていないベースブロック共重合体が成分(I)の変性ブロック共重合体に混在しても良い。成分(I)の変性ブロック共重合体に混在する未変性のブロック共重合体の割合は、70重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは 50重量%以下であることが推奨される。
【0027】
本発明のアスファルト組成物において、変性ブロック共重合体中のベースブロック共重合体、又はその水添物に結合している変性剤残基が水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基及びアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を有することが好ましい。上記のような官能基を有することにより、変性ブロック共重合体は、アスファルトとの親和性が高く、アスファルトを構成する成分との間の水素結合等の化学的な結合により相互作用が効果的に発現され、また、本発明が目的とする特性が特に優れたアスファルト組成物を得ることができる。
本発明において、該変性剤残基の例としては、下記式(1)〜(14)からなる群より選ばれる式で表される少なくとも1種の官能基を有するものが挙げられる。
【0028】
【化1】
【0029】
【化2】
上記式(1)〜(14)において、Nは窒素原子、Siは珪素原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子を表し、R1〜R4は各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し、且つ、該炭化水素基は、所望により、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、各R5は各々独立に炭素数1〜48の炭化水素基を表し、且つ、所望により、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、各R6は各々独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0030】
本発明において、上記変性剤残基を形成するために用いることができる変性剤としては、上記の官能基を有する、及び/又は形成し得る公知の化合物を用いることができる。例えば日本国特公平4−39495号公報(米国特許第5,115,035号に対応)に記載された末端変性処理剤を用いることができる、具体的には、下記のものが挙げられる。
【0031】
上記式(1)〜(6)の官能基を有する変性剤の例としては、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、N−(1,3−ジブチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、4−ジ(β−トリメトキシシリルエチル)アミノスチレン、4−ジ(β−トリエトキシシリルエチル)アミノスチレン、4−ジ(γ−トリメトキシシリルプロピル)アミノスチレン、4−ジ(γ−トリエトキシシリルプロピル)アミノスチレンなどが挙げられる。
【0032】
上記式(7)の官能基を有する変性剤の例としては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状ラクトンが挙げられる。
上記式(8)の官能基を有する変性剤の例としては、4−メトキシベンゾフェノン、4−エトキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(メトキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(エトキシ)ベンゾフェノン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
上記式(9)及び(10)の官能基を有する変性剤の例としては、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシランなどが挙げられる。
【0033】
また、上記式(9)及び(10)の官能基を有する変性剤の更なる例として、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシランが挙げられる。
【0034】
また、上記式(9)及び(10)の官能基を有する変性剤の更なる例として、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルエトキシシランが挙げられる。
【0035】
また、上記式(9)及び(10)の官能基を有する変性剤の更なる例として、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシラン、トリス(γ−グリシドキシプロピル)メトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、ビス(γ−メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ−メタクリロキシプロピル)メトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシランが挙げられる。
【0036】
また、上記式(9)及び(10)の官能基を有する変性剤の更なる例として、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジブトキシシランが挙げられる。
【0037】
また、上記式(9)及び(10)の官能基を有する変性剤の更なる例として、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジイソプロペンオキシシランが挙げられる。
【0038】
上記式(11)の官能基を有する変性剤の例としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
上記式(12)の官能基を有する変性剤の例としては、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
上記の変性剤の使用量は、ベースブロック共重合体のリビング末端1当量に対して、0.5〜5当量で使用することが推奨される。なお、本発明において、ベースブロック共重合体のリビング末端の量は、重合に使用した有機リチウム化合物の量から算出することができる。
上記変性剤をベースブロック共重合体と反応させる際の条件に関しては特に限定はないが、反応温度は0〜150℃であることが好ましく、50〜100℃であることが更に好ましく、反応圧力(ゲージ圧)は0〜10kg/cm2であることが好ましく、1〜5kg/cm2であることが更に好ましい。
【0039】
また、上記式(13)又は(14)の官能基を有する変性剤残基を有する変性ブロック共重合体は、上記式(10)又は(11)の官能基を有する変性剤を用いて得られた変性ブロック共重合体を水添することによって得られる。
上記の変性剤を反応させることにより、変性ブロック共重合体が得られる。変性ブロック共重合体に変性剤の残基が結合している位置は特に制限されないが、高温時における物性に優れた組成物を得るにはビニル芳香族重合体ブロック(A)に結合していることが好ましい。
【0040】
本発明において、水添されたベースブロック共重合体を有する変性ブロック共重合体は、上記で得られた変性ブロック共重合体を水素添加することにより得られる。水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、 Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、日本国特公昭42−8704号公報(カナダ国特許第815575号に対応)、日本国特公昭63−4841号公報(米国特許第4,501,857号に対応)、日本国特公平1−37970号公報(米国特許第4,673,714号に対応)に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物およびチタノセン化合物と還元性有機金属化合物との混合物があげられる。
【0041】
チタノセン化合物としては、日本国特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
水添反応は一般的に0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜5MPaが推奨される。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0042】
本発明に使用される変性ブロック共重合体を水添する場合、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合のトータル水素添加率は目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。例えば、熱安定性が要求されるような場合には、変性ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上が水添されていてもよい。また、アスファルトとの相溶性を維持し、且つ熱安定性が要求されるような場合には、水添率が10%以上、70%未満、或いは15%以上、65%未満、所望によっては20%以上、60%未満にすることが好ましい。更に、本発明では、水素添加された変性ブロック共重合体において、共役ジエン化合物に基づくビニル結合の水素添加率が85%以上、好ましくは90%以上更に好ましくは95%以上であることが、熱安定性に優れたアスファルト組成物を得る上で推奨される。ここで、ビニル結合の水素添加率とは、水素添加前のブロック共重合体中において、1,2−結合、及び3,4−結合により組み込まれている共役ジエン単量体単位が有するビニル結合の内、水素添加されたビニル結合の割合を云う。
なお、該ベースブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素単量体単位に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、水添率を50%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下にすることが好ましい。
【0043】
本発明の成分(I)に使用する変性ブロック共重合体又はその水添物の重量平均分子量は、3万〜100万、好ましくは5万〜80万、更に好ましくは7〜60万である。分子量が3万未満の場合は、アスファルト組成物の軟化点や機械的強度が劣り、100万を超えるとアスファルトへの溶解性が劣るため好ましくない。
本発明において、ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づくビニル結合含量は、赤外分光光度計(例えば、ハンプトン法)や核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて知ることができる。また水添率も、赤外分光光度計や核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて知ることができる。また、変性ブロック共重合体又はその水添物の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めることができる。
【0044】
上記のようにして得られた変性ブロック共重合体又はその水添物の溶液は、必要に応じて触媒残査を除去し、変性ブロック共重合体又はその水添物を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば重合後又は水添後の溶液にアセトンまたはアルコール等の重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、変性ブロック共重合体又はその水添物の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、または直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。尚、変性ブロック共重合体及び/又はその水添物を含有するブロック共重合体成分(I)には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。これらの安定剤は一般的に0.01〜5重量%用いる。フェノール系安定剤の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(例えば、日本国住友化学社製「Sumilizer BHT」)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル・フェニル)プロピオネート(例えば、米国チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「Irganox 1076」)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン(例えば、米国チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「Irganox 1010」)、及び2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニル・アクリレート(例えば、日本国住友化学社製「Sumilizer GM」)が挙げられる。リン系安定剤の例としては、トリス(ノニル・フェニル)ホスファイト(例えば、日本国住友化学社製「Sumilizer TNP」)及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(例えば、日本国住友化学社製「Sumilizer P-16」)が挙げられる。イオウ系安定剤の例としては、ジラウリル・チオジプロピオネート(例えば、日本国住友化学社製「Sumilizer TPL-R」)、及びペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル)−チオプロピオネート(例えば、日本国住友化学社製「Sumilizer TP-D」)が挙げられる。アミン系安定剤の例としては、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、日本国住友化学社製「Sumilizer 9A」)、及びジアリル−p−フェニレンジアミンの混合物(例えば、日本国精工化学株式会社製「ノンフレックスTP-R」)、及びN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(例えば、日本国大内新興化学工業株式会社製「ノクラック810−NA」)が挙げられる。
【0045】
本発明のアスファルト組成物において、該ブロック共重合体成分(I)は以下の混合物であることが好ましい。
少なくとも2つの該ビニル芳香族重合体ブロック(A)と少なくとも1つの該共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、但し該ベースブロック共重合体が、水添されていないか、又は水添されている、及び該ベースブロック共重合体に結合した該変性剤基を含む変性ブロック共重合体(I-A)10〜90重量%;及び少なくとも1つの該ビニル芳香族重合体ブロック(A)と少なくとも1つの該共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、但し該ベースブロック共重合体は、水添されていないか、又は水添されている、及び該ベースブロック共重合体に結合した該変性剤基を含む、該変性ブロック共重合体(I-A)とは異なる変性ブロック共重合体(I-B)、及び少なくとも1つの該ビニル芳香族重合体ブロック(A)と少なくとも1つの該共役ジエン重合体ブロック(B)とからなり、水添されていないか、又は水添されている未変性共重合体(I-C)からなる群より選ばれる少なくとも1つの共重合体10〜90重量%(但し各重量%はそれぞれ該混合物の重量に基づく)を含む混合物。
【0046】
このような混合物をブロック共重合体成分(I)として用いると、道路舗装に用いた際の道路表面の動的安定度、骨材剥離抵抗性に優れたアスファルト組成物を得ることができる。なお、上記成分(I-A)と成分(I-B)とは、ブロック構造及び/又は分子量が異なる変性ブロック共重合体である。
これらのブロック共重合体の分子量(GPCによる測定において、標準ポリスチレン換算でのピーク分子量)は、成分(1−B)及び(1−C)が3万〜20万、好ましくは3.5万〜18万、更に好ましくは4万〜15万であり、成分(1−A)が6万〜50万、好ましくは8万〜40万、更に好ましくは10万〜35万であることが、アスファルト組成物の軟化点と相分離安定性のバランス性能の点でとりわけ好ましい。
【0047】
本発明において、成分(1−A)と成分(1−B)又は(1−C)との混合物であるブロック共重合体成分(I)は、上記の有機リチウム化合物を用いる公知の方法で、成分(1−A)と成分(1−B)又は(1−C)とを別途製造し、混合することにより得られる。その際、分子量は有機リチウム化合物量を制御することにより調整される。各成分の混合方法に関しては、重合反応終了後、水、アルコール、酸などを添加して活性種を失活させた各成分の重合溶液を所定の組成で混合した後、例えばスチームストリッピングなどを行って重合溶媒を分離した後、乾燥することにより上記の混合物を得ることができる。また個別に重合溶媒を分離、乾燥して得られたポリマーをロール等でブレンドして得ることもできる。
【0048】
また、成分(1−A)および成分(1−B)からなるブロック共重合体成分(I)、又は成分(1−A)と成分(1−C)からなるブロック共重合体成分(I)は、上記とは別の手法によっても得ることができる。例えば、成分(1−C)の構造を有する重合体を製造した後、重合系内に上述した変性剤の内カップリング反応が可能な変性剤(カップリング反応に寄与する官能基を2つ以上有する変性剤)を有機リチウム化合物に対して、所定量(例えば、リビング末端1当量に対して0.5〜5当量)添加することにより、一部のリビングポリマーを変性剤の残基を介して結合させ、その後アルコールなどの失活剤を添加することにより、成分(1−A)と成分(1−C)との混合物を同一反応系内で得ることができる。また、有機リチウム化合物を重合開始剤として重合体を得た後、更に重合系内に有機リチウム化合物を重合開始剤として添加して重合反応を継続した後、上述した変性剤を有機リチウム化合物に対して、所定量(例えば、リビング末端1当量に対して0.5〜5当量)添加することにより成分(1−A)および成分(1−B)からなる混合物を同一反応系内で得ることができる。
【0049】
次に、本発明に使用される成分(II)のアスファルトに関して説明する。
本発明で用いることができるアスファルトの例としては、石油精製の際の副産物(石油アスファルト)、または天然の産出物(天然アスファルト)として得られるもの、もしくはこれらと石油類を混合したものなどを挙げることができ、その主成分は瀝青(ビチューメン)と呼ばれるものである。具体的にはストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、タール、ピッチ、オイルを添加したカットバックアスファルト、アスファルト乳剤などを使用することができる。これらは混合して使用しても良い。本発明において好ましいアスファルトは、針入度(JIS−K 2207によって測定)が30〜300、好ましくは40〜200、更に好ましくは45〜150のストレートアスファルトである。本発明のアスファルト組成物において、ブロック共重合体成分(I)の配合割合は、アスファルト100重量部に対して0.5〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは3〜20重量部である。
【0050】
次に、本発明に使用される成分(III)の硫黄及び硫黄化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の加硫剤に関して説明する。
加硫剤(III)として使用することができる硫黄の例としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、不活性硫黄などが挙げられる。また、加硫剤(III)として使用することができる硫黄化合物の例としては、塩化硫黄、二硫化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、高分子多硫化物などが挙げられる。また加硫剤(III)と併用して、架橋促進剤を使用することでき、スルフェンアミド系架橋促進剤、グアニジン系架橋促進剤、チウラム系架橋促進剤、アルデヒド・アミン系、アルデヒド・アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系、ザンテート系などを必要に応じた量使用することができる。架橋促進剤の具体例としては、ジフェニル・グァニジン、n−ブチルアルデヒド−アニル縮合品、ヘキサメチレン・テトラミン、2−メルカプトベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、チオカルバニリド、テトラメチルチウラム・モノスルフィド、ジメチル・ジチオカルバミン酸ナトリウム、イソプロピル・キサントゲン酸亜鉛などが挙げられる。成分(III)の加硫剤の使用量は、成分(II)のアスファルト100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜5重量部、更に好ましくは0.05〜2重量部である。また架橋促進剤を使用する場合、その使用量は、成分(II)のアスファルト100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜5重量部、更に好ましくは0.05〜2重量部である。これらの使用量は、本発明が目的とする作用効果を発現させるため適した量である。
【0051】
本発明においては、シランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤の具体例としては、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等があげられる。
【0052】
好ましいシランカップリング剤は、シラノール基又はアルコキシシランを有すると同時にメルカプト基又は/及び硫黄が2個以上連結したポリスルフィド結合を有するものであり、その例としてはビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピルーN,Nージメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどがあげられる。シランカップリング剤の配合量は、成分(II)のアスファルト100重量部に対して、0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜10重量部、更に好ましくは0.1〜5重量部が推奨される。
【0053】
本発明においては、骨材把握抵抗性の点から必要に応じてアニオン系、カチオン系及びノニオン系界面活性剤等を使用することができる。界面活性剤の具体例としては、炭素数11以上の高級脂肪酸(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸など)、該高級脂肪酸の金属塩、モノアミン化合物、ジアミン化合物、ポリアミン化合物、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイド共重合オリゴマーなどが挙げられる。その他、酸性有機リン酸化合物、酸性有機リン酸化合物と無機リン酸化合物との混合物、多価カルボン酸又はその無水物、脂肪族リン酸エステル、ステアリルフォスフェート等の高級アルコールのリン酸エステル、高級アルコールとリン酸化アルコールとの混合物、没食子酸又はその誘導体、トール油脂酸又はその誘導体、ポリアルキレンポリアミンと脂肪酸の縮合物、液状エポキシ、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性スチレン/ブタジエンブロック共重合体、無水マレイン酸グラフト変性スチレン/ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、無水マレイン酸グラフト変性スチレン/イソプレンブロック共重合体の水素添加物などを使用することができる。
【0054】
本発明においては、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、クレー、タルク、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、スラッグウール、ガラス繊維などの無機充填剤、カーボンブラック、酸化鉄等の顔料、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤、離型剤、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤、その他添加剤或いはこれらの混合物等「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)などに記載されたものが挙げられる。添加剤の量に関しては特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常、変性ブロック共重合体100重量部に対して50重量部以下である。
【0055】
本発明のアスファルト組成物の製造方法に関しては、特に限定はないが、例えば、以下の方法により製造することができる。
(1)ビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする少なくとも1つのビニル芳香族重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、及び
該ベースブロック共重合体末端に結合したリチウムイオン
を含むリビングブロック共重合体を提供し、
(2)該リビングブロック共重合体を、少なくも1つの官能基を含有する、又は少なくとも1つの官能基を形成することができる変性剤化合物と反応させることにより、変性ブロック共重合体を得、
(3)得られた変性ブロック共重合体、及び硫黄及び硫黄含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の加硫剤を、攪拌しながら溶融状態のアスファルトに添加する、ことを含む方法。
【0056】
上記方法における各成分(リビングブロック共重合体、変性剤化合物、加硫剤及びアスファルトなど)の調整方法、種類、量などに関しては、本発明のアスファルト組成物に関連して既に上記した通りである。
上記変性ブロック共重合体、加硫剤及びアスファルトの混合物を攪拌する際の条件に関しては特に制限はないが、160〜200℃(通常は、180℃前後)の温度で行なうことが好ましく、攪拌時間は好ましくは30分〜6時間、更に好ましくは2〜3時間である。攪拌速度に関しては、用いる装置により適時選択すればよいが、通常、100〜8,000rpmで行なう。
【0057】
なお、上記工程(2)で得られた該変性ブロック共重合体を水添してもよい。水添方法に関しては、本発明のアスファルト組成物に関連して既に上記した通りである。
上記のようにして得られた本発明のアスファルト組成物は、道路舗装用として好適に利用できる。特に本発明のアスファルト組成物は動的安定度、骨材把握抵抗性に優れる点を生かして交通量の多い道路、高速道路、交差点やカーブ地点などの自動車の荷重がかかりやすい道路などの排水性舗装道路におけるバインダーとして好適に利用できる。
排水性舗装道路は、道路と、その上に形成された、複数の排水用空隙を有する排水性舗装層を包含し、該排水性舗装層は複数の骨材とバインダーとしてのアスファルトからなるアスファルト混合物である。
【0058】
本発明のアスファルト組成物を利用した排水性舗装道路は、耐わだち掘れ性、透水性、交通騒音低減性、低温時にひび割れしにくいなどの低温特性に優れる。なお、本発明のアスファルト組成物は、排水性舗装道路と同様の機能が要求される透水性舗装道路にも利用できる。
一般にアスファルト舗装は、適当な粒度分布を有する祖骨材(砕石)、細骨材(砂、砕砂)、石粉等の混合物にアスファルトバインダーを加熱状態で混合したアスファルト混合物を敷き均し、ローラー等で転圧して施工されるが、排水性舗装道路は降雨時の滞水防止のための排水性、連続した水膜の除去による走行安全性の確保、エンジン音やタイヤと路面との接触にからむ騒音等の交通騒音低減などの機能を発揮させるために、通常のアスファルト混合物に比較して非常に多くの連続した空隙を有する配合となっている。本発明のアスファルト組成物は、排水性舗装層の空隙率が5〜35%、好ましくは10〜30%、更に好ましくは12〜28%の排水性舗装に好適に使用できる。
【0059】
なお、上記空隙率は次の式で定義される。
【数1】
(式中、ρmはアスファルト混合物(アスファルト組成物と骨材の混合物)の密度(g/cm3)を表し、Vはアスファルト混合物の体積(cm3)を表し、Vvはアスファルト混合物の空隙体積(cm3)を表し、Dはアスファルト混合物の理論最大密度(g/cm3)を表す。)
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、以下の実施例において、ブロック共重合体及びその水添物の特性、アスファルト組成物の物性の測定は、次のようにして行った。
【0061】
1.変性ブロック共重合体等の特性
(1)スチレン含有量
紫外線分光光度計(日本国日立製作所製、UV200)を用いて、262nmの吸収強度より算出した。
(2)ビニル結合含量及び水添率
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX−400)を用いて測定した。
(3)重量平均分子量
GPC〔米国ウォーターズ社製のGPC装置を用い、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラム(日本国昭和電工製:Shodex)を用いた〕で測定した。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定は温度35℃で行った。市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して、重量平均分子量を求めた。
【0062】
(4)未変性ブロック共重合体の割合
テトラヒドロフラン20mlに変性ブロック共重合体10mgと重量平均分子量8000の低分子量内部標準ポリスチレン10mgを含む試料溶液について、上記(3)と同様の方法でGPCを行って得られたクロマトグラムから、標準ポリスチレンに対する変性ブロック共重合体の割合を求める。また、上記試料溶液について、米国デュポン社製の装置であるZorbaxとシリカ系ゲルを充填剤としたカラムとを用いる以外は上記(3)と同様の方法でGPCを行って得られたクロマトグラムから、標準ポリスチレンに対する変性ブロック共重合体の割合を求める。これら2つの割合の差をとることにより、シリカカラムへの吸着量が得られる。シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着するので、未変性ブロック共重合体の割合は、シリカカラムへ吸着しなかったものの割合である。
【0063】
2.変性ブロック共重合体等の製造
なお、水添反応に用いた水添触媒は、下記の方法で調製した。
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン2リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジ−(p−トリル)40ミリモルと重量平均分子量が約1,000の1,2−ポリブタジエン(1,2−ビニル結合量約85%)150グラムを溶解した後、n−ブチルリチウム60ミリモルを含むシクロヘキサン溶液を添加して室温で5分反応させ、その後、直ちにn−ブタノール40ミリモルを添加攪拌して室温で保存した。
【0064】
a.ポリマー1
攪拌機及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄、乾燥、窒素置換し、予め精製したスチレン15重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を投入した。次いでテトラメチルエチレンジアミンを、使用するn−ブチルリチウム1モルに対して0.1モル添加した後、n−ブチルリチウムを全使用モノマー100重量部に対して0.135重量部添加し、70℃で1時間重合した後、予め精製したブタジエン70重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を加えて70℃で1時間重合し、その後更に予め精製したスチレン15重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を投入して70℃で1時間重合した。
【0065】
次に、上記で得られたリビングポリマーに、変性剤として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以後、変性剤M1と呼ぶ)を重合に使用したn−ブチルリチウムに対して当モル添加して反応させた。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100重量部に対して0.3重量部添加した。
得られた変性ブロック共重合体(ポリマー1)は、スチレン含有量が30重量%、ブロックスチレン量の分析値よりスチレンのブロック率は95%、ビニル結合量が15%、重量平均分子量が11.0万であった。尚、ポリマー1中に混在する未変性のブロック共重合体の割合は25重量%であった。
【0066】
b.ポリマー2
変性剤を使用しないこと以外はポリマー1の製造と同様の方法で、官能基が結合していない未変性ブロック共重合体(ポリマー2)を得た。
c.ポリマー3
攪拌機及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄、乾燥、窒素置換し、予め精製したスチレン30重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を投入した。次いでテトラメチルエチレンジアミンを、使用するn−ブチルリチウム1モルに対して0.1モル添加した後、n−ブチルリチウムを全使用モノマー100重量部に対して0.1重量部添加し、70℃で1時間重合した。その後、予め精製したブタジエン70重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を加えて70℃で1時間重合した。
【0067】
次に、上記で得られたリビングポリマーに、変性剤としてテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(以後、変性剤M2と呼ぶ)を、重合に使用したn−ブチルリチウムに対して1/4モル添加して反応させた。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100重量部に対して0.3重量部添加した。
得られた変性ブロック共重合体(ポリマー3)は、スチレン含有量が30重量%、ブロックスチレン量の分析値よりスチレンのブロック率は100%、ビニル結合量が17%、重量平均分子量が44万であった。尚、ポリマー3中に混在する未変性のブロック共重合体の割合は30重量%であった。
【0068】
d.ポリマー4
テトラメチルエチレンジアミンの添加量を変えてビニル結合量を35%にする以外はポリマー1と同様の方法で変性ブロック共重合体を得た。この変性ブロック共重合体の溶液に、上記水添触媒をポリマー100重量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100重量部に対して0.3重量部添加した。
得られた水添変性ブロック共重合体(ポリマー4)は、水添率98%であった。尚、ポリマー4中に混在する未変性のブロック共重合体の量は30重量%であった。
【0069】
e.ポリマー5
ポリマー1と同様の方法で得たリビングポリマーに、変性剤としてγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(以後、変性剤M3と呼ぶ)を、重合に使用したn−ブチルリチウムに対して当モル添加して反応させて変性ブロック共重合体の溶液を得た。
この変性ブロック共重合体の溶液に、上記水添触媒をポリマー100重量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行い、水添率が約35%になるように水素量を調整して水添変性ブロック共重合体を得た。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100重量部に対して0.3重量部添加した。尚、ポリマー5中に混在する未変性のブロック共重合体の量は30重量%であった。
【0070】
f.ポリマー6
攪拌機及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄、乾燥、窒素置換し、予め精製したスチレン19重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を投入した。次いでテトラメチルエチレンジアミンを、使用するn−ブチルリチウム1モルに対して0.1モル添加した後、n−ブチルリチウムを全使用モノマー100重量部に対して0.079重量部添加し、70℃で1時間重合した。その後、予め精製したブタジエン45重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を加えて70℃で1時間重合した。次に、n−ブチルリチウムを全使用モノマー100重量部に対して0.043重量部と予め精製したブタジエン25重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を加えて70℃で1時間重合し、その後更に予め精製したスチレン11重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を投入して70℃で1時間重合した。
【0071】
次に、上記で得られたリビングポリマーに、変性剤1を重合に使用した全n−ブチルリチウムに対して当モル添加して反応させた。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100重量部に対して0.3重量部添加した。
得られた変性ブロック共重合体(ポリマー6)は、スチレン含有量が30重量%、ブロックスチレン量の分析値よりスチレンのブロック率は94%、ビニル結合量が15%であった。また、ポリマー6は、GPC測定におけるポリスチレン換算でのピーク分子量が15.3万の成分が74重量%、ピーク分子量が6.5万の成分が26重量%であった。尚、ポリマー6中に混在する未変性のブロック共重合体の割合は30重量%であった。
g.ポリマー7
変性剤を使用しないこと以外はポリマー6と同様の方法で、官能基が結合していない未変性ブロック共重合体(ポリマー7)を得た。
【0072】
3.アスファルト組成物の調製
750ミリリットルの金属缶にストレートアスファルト60−80〔日本国 日本石油(株)製〕を400g投入し、180℃のオイルバスに金属缶を充分に浸す。次に、溶融状態のアスファルトの中に所定量の重合体等を攪拌しながら少量づつ投入する。完全投入後5000rpmの回転速度で90分間攪拌してアスファルト組成物を調製した。
【0073】
4.アスファルト組成物の特性
(1)軟化点(リング&ボール法)
JIS−K 2207に準じ、規定の環に試料を充填し、グリセリン液中に水平に支え、試料の中央に3.5gの球を置き、液温を5℃/minの速で上昇させたとき、球の重さで試料が環台の底板に触れた時の温度を測定した。
(2)溶融粘度
180℃でブルックフィールド型粘度計により測定した。
【0074】
(3)針入度
JIS−K 2207に準じ、恒温水浴槽で25℃に保った試料に規定の針が5秒間に進入する長さを測定した。
(4)伸度
JIS−K 2207に準じ、試料を形枠に流し込み、規定の形状にした後、恒温水浴内で4℃に保ち、次に試料を5cm/minの速度で引っ張ったとき、試料が切れるまでに伸びた距離を測定した。
【0075】
(5)接着強さ
トルエンに溶かしたアスファルト組成物を、コーターで帆布上に塗布し、室温乾燥1時間後、70℃オーブンで7分間乾燥させ、完全にトルエンを蒸発させた。次に、アスファルト組成物を塗布した帆布を被着体である表面が平滑な御影石と共に70℃オーブンに1時間入れ、取り出し後速やかに荷重1kgのローラーで2回圧着した。そして、23℃の恒温室で帆布と御影石の180℃剥離試験を行い、接着強さを測定した。
(6)低温曲げ特性
20mm×20mm×120mmの形枠にアスファルト組成物を流し込み、型枠の上端部より上に盛り上がった余剰分をカットし、−20℃の低温槽に4時間以上養生後、速やかに取り出しスパンは80mm、積荷速度100mm/min、2点支持中央積荷方式で曲げ応力を測定した。
【0076】
(7)高温貯蔵安定性
アスファルト組成物製造直後、内径50mm、高さ130mmのアルミ缶に、アスファルト組成物をアルミ缶の上限まで流し込み、180℃のオーブン中に入れ、24時間後取り出し自然冷却させた。次に室温まで下がったアスファルト組成物の下端から4cm、上端から4cmを採取し、それぞれ上層部と下層部の軟化点を測定し、その軟化点差を高温貯蔵安定性の尺度とした。
【0077】
5.排水性舗装混合物の特性
6号砕石を約85重量%、砕砂を約10重量%、石粉を約5重量%用い、空隙率が約20%になるように配合設計された骨材を混合して170℃で加熱し、これにバインダーとして加熱溶融したアスファルト組成物を5重量%添加して170℃で混合し、空隙率が約20%の排水性舗装混合物を製造して下記の特性を測定した。
(1)ホイールトラッキング試験(動的安定度の指標)
「舗装試験法便覧別冊(暫定試験方法)」(日本国 社団法人 日本道路協会発行)に記載されたホイールトラッキング試験方法に準じて測定した。試験温度は60±0.5℃であった。
(2)カンタブロ試験(骨材把握抵抗性の指標)
「舗装試験法便覧別冊(暫定試験方法)」(日本国 社団法人 日本道路協会発行)に記載されたカンタブロ試験方法に準じて測定した。養生温度は0℃であり、試験温度は18℃であった。
【0078】
実施例1〜3、比較例1〜5
ブロック共重合体としてポリマー1又はポリマー2を用い、表1に記載の材料及び配合処方に従い以下の試験を行った。
750ミリリットルの金属缶にストレートアスファルト60−80〔日本国日本石油(株)製〕を400g投入し、180℃のオイルバスに金属缶を充分に浸す。次に、所定量のブロック共重合体と硫黄(日本国鶴見化学工業(株)製「金華印微粉硫黄」)を溶融状態にし、アスファルト中に少量づつ攪拌しながら投入する。完全投入後5000rpmの回転速度で90分間攪拌してアスファルト組成物を得た。その特性を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
また、得られた実施例1、比較例3、比較例5のアスファルト組成物を使用して、排水
性舗装混合物を作製し、その特性を表2に示した。
本発明のアスファルト組成物を使用した排水性舗装混合物は優れた動的安定度及び骨材把握抵抗性を示し、アスファルト道路舗装に好適なアスファルト組成物であった。
【0081】
【表2】
【0082】
実施例4〜5、参考例1
ポリマー1の代わりにポリマー3(参考例1)、ポリマー4(実施例4)、ポリマー5(実施例5)をそれぞれ使用する以外は実施例1と同様の方法で排水性舗装混合物を調製した。これらの排水性舗装混合物はいずれも優れた動的安定度及び骨材把握抵抗性を示した。
実施例6及び比較例6及び7
実施例1と同様の方法で、アスファルト組成物を製造した。その特性を表3に示した。
【0083】
【表3】
【0084】
本発明のアスファルト組成物は、軟化点及び伸度が高く、高温貯蔵安定性及び低温曲げ特性に優れるのみならず、道路舗装に用いた際の道路表面の動的安定度、骨材把握抵抗性に優れるため、道路舗装用に非常に適したアスファルト組成物である。かかる特性を生かして、本発明のアスファルト組成物は、道路舗装用のバインダー、特に排水性舗装道路などの道路舗装用に使用するバインダーとして好適に利用できる。
Claims (5)
- ビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする少なくとも1つのビニル芳香族重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、但し該ベースブロック共重合体は、水添されていないか、又は水添されている、及び該ベースブロック共重合体に結合した、少なくも1つの官能基を含有する変性剤基を含む、少なくとも1種の変性ブロック共重合体を含むブロック共重合体成分(I)0.5〜50重量部;アスファルト(II)100重量部;及び硫黄及び硫黄化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の加硫剤(III)0.01〜10重量部を含むアスファルト組成物であって、該変性剤基が下記式(1)〜(4)、(7)〜(14)よりなる群から選ばれる式で表される少なくとも1種の官能基を有することを特徴とするアスファルト組成物。
Nは窒素原子、Siは珪素原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子を表し、R1〜R 2 は各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し、且つ、該炭化水素基は、所望により、各々独立に、水酸基、アミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、各R5は各々独立に炭素数1〜48の炭化水素基を表し、且つ、所望により、各々独立に、水酸基、アミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、各R6は各々独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。 - 該ブロック共重合体成分(I)が、少なくとも2つの該ビニル芳香族重合体ブロック(A)と少なくとも1つの該共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、但し該ベースブロック共重合体が、水添されていないか、又は水添されている、及び該ベースブロック共重合体に結合した該変性剤基を含む変性ブロック共重合体(I-A)10〜90重量%;及び少なくとも1つの該ビニル芳香族重合体ブロック(A)と少なくとも1つの該共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、但し該ベースブロック共重合体は、水添されていないか、又は水添されている、及び該ベースブロック共重合体に結合した該変性剤基を含む、該変性ブロック共重合体(I-A)とは異なる変性ブロック共重合体(I-B)、及び少なくとも1つの該ビニル芳香族重合体ブロック(A)と少なくとも1つの該共役ジエン重合体ブロック(B)とからなり、水添されていないか、又は水添されている未変性共重合体(I-C)からなる群より選ばれる少なくとも1つの共重合体10〜 90重量%を含む混合物であり、但し各重量%はそれぞれ該混合物の重量に基づく、ことを特徴とする請求項1に記載のアスファルト組成物。
- 成分( I )の変性ブロック共重合体に混在する未変性のブロック共重合体の割合は、70重量%以下であり、加硫剤( III )の配合量が0.02〜5重量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のアスファルト組成物の製造方法であって、
(1)ビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする少なくとも1つのビニル芳香族重合体ブロック(A)と共役ジエン単量体単位を主体とする少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロック(B)とからなるベースブロック共重合体、及び該ベースブロック共重合体末端に結合したリチウムイオンを含むリビングブロック共重合体を提供し、
(2)該リビングブロック共重合体を、少なくも1つの官能基を含有する、又は少なくとも1つの官能基を形成することができる変性剤化合物と反応させることにより、変性ブロック共重合体を得、
(3)得られた変性ブロック共重合体、及び硫黄及び硫黄含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の加硫剤を、攪拌しながら溶融状態のアスファルトに添加する、ことを含む方法。 - 該工程(2)で得られた該変性ブロック共重合体を水添することを特徴とする請求項4に記載の方法。
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