JP4178808B2 - 回転体の軸支構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は回転体の軸支構造に関し、特に、車両用灯具において可変配光機構を構成すべく傾動自在に軸支される回転体としてランプユニットの軸支構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6はこの種のランプユニットの軸支構造の従来例を示すものである。図6に示すように、ランプユニット101をフレーム102に対して傾動自在に軸支することで、ランプユニット101の配光方向を変更自在とする可変配光機構が成立している。
【0003】
ここで、この種のランプユニット101の軸支構造は、先ず、フレーム102の上下に設けられた一対の軸支部103、104に対して、ランプユニット101の回転軸105の上下端部を前方から組み合わせた後、各軸支部103、104にブラケット106、107をネジN止め固定することで、ランプユニット101を回転自在に軸支する構造をとっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術にあっては、ランプユニット101を回転自在に取り付けるにあたって上述のようにネジNが必要であり、部品点数・締結工数が嵩む問題があった。
【0005】
また、別の軸支構造としては、フレームを上下二分割で構成し、上側分割フレームと下側分割フレームとでランプユニットを軸方向から挟みこんで、二つの割フレームを締結固定する方策もあるが、この方法では組立作業が煩雑化するとともにネジを無くすことができず、やはり部品点数・締結工数を削減することはできない。
【0006】
本発明はこのような従来技術を背景に為されたものであって、ネジを廃止して、原価・工数を削減できる回転体の軸支構造の提供を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明にあっては、回転体をフレームの一対の軸支部に軸支する回転体の軸支構造であって、前記フレームの一方の軸支部は、前記回転体の回転軸の一端部をベアリングを介して軸方向から圧入固定することで該一端部を回転自在に支持する圧入穴部を有し、前記フレームの他方の軸支部は、ベアリングの装着状態または非装着状態の前記回転体の回転軸の他端部を径方向から挿入自在なU字状開口部を有し、該U字状開口部に対して軸方向から圧入固定されると同時に回転体の回転軸の他端部をベアリングを介して圧入固定する圧入部材によって、回転体の回転軸の他端部を回転自在に支持することを特徴とするものである。
【0008】
この場合、▲1▼まず、フレームの他方の軸支部のU字状開口部を通じて、フレームの所定の軸心位置に回転体の回転軸の軸心を一致させる。▲2▼次に、フレームの一方の軸支部の圧入穴部に、ベアリングを介して回転体の回転軸の一端部を圧入固定する。▲3▼次いで、U字状開口部に圧入部材を圧入しつつ、この圧入部材で回転体の回転体の他端部をベアリングを介して回転自在に固定する。
【0009】
このように請求項1記載の発明によれば、ネジを一切使用せずに回転体をフレームに軸支できるので、原価・工数を削減できる。
【0010】
また、請求項1記載の発明にあっては、上記の回転体の軸支構造において、U字状開口部および圧入部材には、互いに係合する凹部および凸部からなる回り止め手段が設けられてなり、これら凹部および凸部は、圧入部材の圧入方向に向けて傾斜する傾斜稜線または傾斜谷線と、その傾斜稜線または傾斜谷線の両側に設けられた傾斜平面と、からくさび状に形成されてなることを特徴とするものである。
【0011】
そのため、上記の効果に加え、互いに係合する凹部および凸部からなる回り止め手段によって、圧入部材が回転軸の回転力の影響を受けて連れ回ってしまうこと防止することができる。
【0012】
そして、これら凹部および凸部がくさび状に形成されているため、ネジを用いずとも、そのくさび効果によって圧入部材をU字状開口部にガタ無く確実に固定することができる。
【0013】
請求項2記載の発明にあっては、請求項1記載の回転体の軸支構造において、前記フレームの他方の軸支部には、前記回転体を前記フレームの一方の軸支部に向けて常時付勢するスプリング部材が取り付られていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、スプリング部材の付勢力により、圧入部材を脱落させようとする力が加わり難い構造となり、良好な軸支構造を提供できる。
【0015】
請求項3記載の発明にあっては、請求項1または2記載の回転体の軸支構造において、前記回転体の回転軸が垂直方向に沿って設定され、前記フレームの一方の軸支部を下側に配置したことを特徴とするものである。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加え、回転体の自重が下側に配置された一方の軸支部に加わる一方で、上側に配置された他方の軸支部には加わらないので、最も安定した回転体の軸支構造とすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面を基に説明する。この実施形態は、本発明にかかる回転体の軸支構造を車両用前照灯のランプユニットの軸支構造に適用した例であり、図1は「回転体」としてのランプユニットの軸支構造を示す斜視図、図2は同ランプユニットの軸支構造の上面図、図3はランプユニットのフレームへの取付工程を示す説明図、図4はランプユニットの上側軸支部近傍の分解斜視図、図5はランプユニットの下側軸支部近傍の分解斜視図である。
【0018】
車両用前照灯1は、車両前端部に配設される図示せぬハウジングと前面レンズとによって形成される灯室内に、フレーム2と、該フレーム2に軸支され且つフレーム2に固定された駆動部33の進退ロッド34の進退運動にしたがって垂直軸P(回転軸13の軸心)を中心に車幅方向に首振り回転できるランプユニット3と、を備えて構成されている。
【0019】
フレーム2は、上述のようにランプユニット3を回転自在に軸支するもので、フレーム本体4と、該フレーム本体4の上下端部から前方に突設された一対の軸支部5、6と、を備えて構成されている。なお、このフレーム2は、光軸調整機構を介してハウジングに支持されていることで、車体組立時には光軸を微調整できるようになっている。ここで、光軸調整機構は、傾動支点を構成する玉継手と、傾動支点を中心にフレーム2を左右方向に傾動させる左右光軸調整手段と、同じく傾動支点を中心にフレーム2を上下方向に傾動させる上下光軸調整手段と、から構成されるものである。
【0020】
この実施形態のランプユニット3は、プロジェクタ型ランプユニットであって、図示せぬ光源バルブと、該光源バルブの発光部からの光を車両前方に向けて反射すべくを発光部を第一焦点とする放物面を有する樹脂製のリフレクタ8と、このリフレクタ8から前方に反射される反射光を投影する投影レンズ9と、前記リフレクタ8の前面開口部に固定されるとともに投影レンズ9を支持する金属製の筒状のレンズホルダ10と、を備えて構成されている。
【0021】
ランプユニット3の回転軸13は、図4および図5に示すように、レンズホルダ10の上下面に設けられた筒状部11、12に圧入固定される軸部材13A、13Bによって構成されている。
【0022】
このランプユニット3の回転軸13の両端部を軸支する一対の軸支部5、6は、「一方の軸支部」としての下側軸支部5が、図3、5に示すように回転軸13の下端部14をベアリング15を介して軸方向から圧入固定する圧入穴部16を有して構成されていて、「他方の軸支部」としての上側軸支部6が、図3、4に示すようにベアリング18の装着状態の回転軸13上端部17を径方向から挿入自在なU字状開口部19を有して構成されている。
【0023】
つまり、図3に示すように、ランプユニット3を、フレーム2の上側軸支部6のU字状開口部19を通じてフレーム2の所定の軸心位置Pに配置した後、ベアリング15を装着した回転軸13の下端部14を軸方向からフレーム2の下側軸支部5の圧入穴部16に圧入固定するようになっている。
【0024】
そして、この実施形態では、フレーム2の上側軸支部6のU字状開口部19に対して軸方向から圧入されて固定される圧入部材20によって、フレーム2の上側軸支部6に対して、ベアリング18を装着したランプユニット3の回転軸13の上端部17を回転自在に支持するようになっている。
【0025】
より詳しくは、圧入部材20は、フレーム2と同様に金属製であり、フレーム2のU字状開口部19の円形部19aに圧入固定されるべく該円形部19aとほぼ同径で形成される外周面20aを有し、且つ、回転軸13の上端部17に圧入固定されるベアリング18のアウターレースを圧入固定すべく該アウターレースとほぼ同径の圧入穴部20bを有して、円筒状に構成されている。
【0026】
ここで、これらU字状開口部19および圧入部材20には、互いに係合する凹部21、21および凸部22、22からなる回り止め手段が設けられていて、圧入部材19が回転軸13の回転力の影響を受けて連れ回ってしまうこと防止している。
【0027】
上記U字状開口部19に設けられた凹部21、21は、いずれも圧入部材20の圧入方向に向けて漸次縮径するように傾斜する傾斜谷線21aと、その傾斜谷線21aの両側に設けられた傾斜平面21b、21bと、からくさび状に形成されている。一方、圧入部材20に設けられた凸部22、22は、いずれも圧入部材20の圧入方向に向けて漸次縮径するように傾斜する傾斜稜線22aと、その傾斜稜線22aの両側に設けられた傾斜平面22b、22bと、からくさび状に形成されている。そのため、回り止め手段を構成するくさび状の凹部21、21および凸部22、22のいわゆるくさび効果によって、ネジを用いずとも、圧入部材20をU字状開口部19にガタ無く確実に固定することができるとともに、高い組付精度を達成することができる。特に、この実施形態では、凹部21、21および凸部22、22がそれぞれ対向配置されて、傾斜谷線21a、21a同士を結ぶ線上および傾斜稜線22a、22a同士を結ぶ線上に回転軸13の軸心(垂直軸P)が設定されているため、圧入部材20の圧入程度によって軸心がズレてしまうことなく、高い組付精度を達成することができる。
【0028】
また、上側軸支部6には、ランプユニット3を下側軸支部5に向けて常時付勢するスプリング部材23が取り付られていて、これにより、車両の振動などの影響で圧入部材20を脱落させようとする力があやまってランプユニット3から加わってしまうことを回避して、圧入部材20の良好な圧入状態を維持することができる。
【0029】
ここで、上記スプリング部材23をより詳しく説明すると、スプリング部材23は、図4に示すように、上板24および前板25および後板26により略断面コ字状に形成されている。スプリング部材23の前板25の下端には折り返し形成されたフック部27が設けられ、また、後板26の下端には同じく折り返し形成されたフック部28が設けられ、これらフック部27、28が上側軸支部6の下面のフック溝30、31に係止されてることでスプリング部材23が上側軸支部6に取り付けられる。このとき、後板26は、該後板26と同一幅に形成された溝部32にはめ込まれることで、スプリング部材23が位置決めされている。そして、スプリング部材23の上板24は、上側軸支部6に向けて(下方に向けて)凸湾曲状に形成されており、この上板24の略中央部の突起部29が圧入部材20の圧入穴部20bおよびベアリング18のインナーレースを通じて露出する回転軸13の上端17に当接することで、上板24の撓み力を利用してランプユニット3を下側軸支部5に向けて常時付勢するようになっている。なお、スプリング部材23は、上述のようにランプユニット3を直接押圧する構造ではなく、回転軸13の上端部17と一体化するベアリング18または圧入部材20を押圧する構造であってもよい。
【0030】
このように構成されるこの実施形態のランプユニット3の取付工程を図3を基に説明する。
【0031】
まず、ランプユニット3の回転軸13の両端部に予めベアリング15、18を装着しておく。▲1▼このランプユニット3のベアリング18を装着した回転軸13の上端部17を、フレーム2の上側軸支部6のU字状開口部19に挿入していき、ランプユニット3の回転軸13の軸心を垂直軸Pに一致する位置まで移動する。▲2▼次に、フレーム2の下側軸支部5の圧入穴部16に、ベアリング15を装着したランプユニット3の回転軸13の下端部14を圧入固定する。▲3▼次いで、フレーム2のU字状開口部19に圧入部材20を圧入しつつ、この圧入部材20の圧入穴部20bに、ベアリング18が装着されたランプユニット3の回転軸13の上端部17を圧入固定する。▲4▼最終的に、スプリング部材23を上側軸支部6に取り付けてランプユニット3のフレーム2への取り付けを完了する。
【0032】
このようにこの実施形態のランプユニット3の軸支構造によれば、ランプユニット3がフレーム2に対して回転自在に軸支されるが、この際、ネジを一切使用しないため、原価・工数を削減できる。
【0033】
また、この実施形態のランプユニット3の軸支構造によれば、圧入部材20の回り止め手段としての凹部21および凸部22は、圧入部材20の圧入方向に向けて傾斜する傾斜谷線21aおよび傾斜稜線22aと、その傾斜谷線21aおよび傾斜稜線22aの両側に設けられた傾斜平面21b,21b、22b,22bと、からくさび状に形成されてなることを特徴とするため、ネジを用いずとも、回り止め手段を構成する凹部21および凸部22のくさび効果によって、圧入部材20をU字状開口部19にガタ無く確実に固定することができる。
【0034】
また、この実施形態のランプユニット3の軸支構造によれば、上側軸支部6には、下側軸支部5に向けてランプユニット3を押圧するスプリング部材23が取り付られているため、スプリング部材23の押圧力によって、車体から伝わってくる上下振動を抑止し、圧入部材20を脱落させようとする力がランプユニット3から加わってしまうことを回避して、圧入部材20の良好な圧入状態を維持することができる。
【0035】
また、この実施形態のランプユニット3の軸支構造によれば、ランプユニット2の回転軸13を垂直方向に沿って設定し、圧入穴部16を有する下側軸支部5でランプユニット3の自重を受けるため、上側軸支部6にランプユニット3の自重が一切加わらず、最も安定したランプユニット3の軸支構造とすることができる。
【0036】
また、この実施形態のランプユニット3の軸支構造によれば、軸支構造を構成するフレーム2、レンズホルダ10、軸部材13A、13B、ベアリング15、18、圧入部材20、を金属製としたことで、温度変化によって軸ズレが起きにくく、温度補償性の高い軸支構造となる。
【0037】
【発明の効果】
この発明によれば、回転体をフレームの一対の軸支部に軸支する回転体の軸支構造であって、前記フレームの一方の軸支部は、前記回転体の回転軸の一端部をベアリングを介して軸方向から圧入固定することで該一端部を回転自在に支持する圧入穴部を有し、前記フレームの他方の軸支部は、ベアリングの装着状態または非装着状態の前記回転体の回転軸の他端部を径方向から挿入自在なU字状開口部を有し、該U字状開口部に対して軸方向から圧入固定されると同時に回転体の回転軸の他端部をベアリングを介して圧入固定する圧入部材によって、回転体の回転軸の他端部を回転自在に支持することを特徴とするため、ネジを一切使用せずに回転体をフレームに軸支できるので、原価・工数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる回転体の軸支構造を適用した車両用前照灯のランプユニットの軸支構造を示す斜視図。
【図2】同車両用前照灯のランプユニットの軸支構造を示す上面図。
【図3】同車両用前照灯のランプユニットのフレームへの取付工程を示す説明図。
【図4】同車両用前照灯のランプユニットの上側軸支部近傍の分解斜視図。
【図5】同車両用前照灯のランプユニットの下側軸支部近傍の分解斜視図。
【図6】従来の回転体としてのランプユニットの軸支構造の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
2 フレーム
3 ランプユニット(回転体)
5 下側軸支部(一方の軸支部)
6 上側軸支部(他方の軸支部)
13 回転軸
14 回転軸の下端部(回転軸の一端部)
15 ベアリング
16 圧入穴部
17 回転軸の上端部(回転軸の他端部)
19 U字状開口部
20 圧入部材
21 凹部
21a 傾斜谷線
21b 傾斜平面
22 凸部
22a 傾斜稜線
22b 傾斜平面
23 スプリング部材
Claims (3)
- 回転体をフレームの一対の軸支部に軸支する回転体の軸支構造であって、
前記フレームの一方の軸支部は、前記回転体の回転軸の一端部をベアリングを介して軸方向から圧入固定することで該一端部を回転自在に支持する圧入穴部を有し、
前記フレームの他方の軸支部は、ベアリングの装着状態または非装着状態の前記回転体の回転軸の他端部を径方向から挿入自在なU字状開口部を有し、
該U字状開口部に対して軸方向から圧入固定されると同時に回転体の回転軸の他端部をベアリングを介して圧入固定する圧入部材によって、回転体の回転軸の他端部を回転自在に支持し、
前記U字状開口部および前記圧入部材には、互いに係合する凹部および凸部からなる回り止め手段が設けられてなり、
これら凹部および凸部は、圧入部材の圧入方向に向けて傾斜する傾斜稜線または傾斜谷線と、その傾斜稜線または傾斜谷線の両側に設けられた傾斜平面と、からくさび状に形成されてなることを特徴とする回転体の軸支構造。 - 請求項1記載の回転体の軸支構造において、
前記フレームの他方の軸支部には、前記回転体を前記フレームの一方の軸支部に向けて常時付勢するスプリング部材が取り付られていることを特徴とする回転体の軸支構造。 - 請求項1または2記載の回転体の軸支構造において、
前記回転体の回転軸が垂直方向に沿って設定され、
前記フレームの一方の軸支部を下側に配置したことを特徴とする回転体の軸支構造。
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