JP4178624B2 - 白色積層ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、白色積層ポリエステルフィルムに関する。詳しくは、耐折れしわ性に優れ、各種印刷記録、特に感熱転写記録用の受容シート基材として好適な白色積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハードコピー技術における記録方法の一つとしてノンインパクト、操作、保守が容易、低コスト、小型化可能な感熱転写記録が注目されている。
【0003】
このような感熱転写記録用の受容シート基材として、従来より、ポリエステル中にポリエステルと非相溶の樹脂を含有し、延伸により生成せしめた微細な気泡(ボイド)を含有する白色ポリエステルフィルムが適用されている。
【0004】
該白色ポリエステルフィルムが適用されているのは、ボイドを含有しているため感熱転写記録方式による印字の際、サーマルヘッドの加熱に対する断熱効果により印字部分に効率よく熱が伝わること、あるいはクッション性の発現によりサーマルヘッドと印字面との密着性が高いこと等が挙げられる。
【0005】
さらに、近年では、より高階調かつ高精細な画像を得るため、サーマルヘッドの微細化や、加熱のための印加エネルギーを微妙にコントロールするなどの改良が進められている。
【0006】
このような装置面の改良に対し、基材となる白色ポリエステルフィルムについてもさまざまな提案がなされている。例えば、積層構成であって表層をポリエステル主体の層、あるいは無機系微粒子含有層としたもの等である。この様な白色ポリエステルフィルムの具体例としては、特公平7−37098号公報、特開平5−329969号公報、特開平6−238787号公報などが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、改良された装置に上述のような白色積層ポリエステルフィルムを用いた場合、依然として次のような問題があった。
【0008】
すなわち、表層をポリエステル主体、あるいは無機系微粒子含有層としたため、表面が高平滑となり微細化したサーマルヘッドとの密着性は向上するものの、加熱に対する断熱効果が不充分となり、高速印字や高精細印字などでは微小領域での印加エネルギー不足となって印字性が低下するなどの問題があった。さらには、取扱い時の折曲げにより表面にしわが入りやすいという「折れしわ」などの問題もあった。
【0009】
本発明は、上記の諸問題を解決し、微小領域での断熱効果やサーマルヘッドとの密着性向上により感熱転写記録方式による印字性に特に優れ、また耐折れしわ性にも優れた白色積層ポリエステルフィルムを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成する本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、白色ポリエステル層(B)の両面に白色ポリエステル層(A)を積層してなる、芯層部が白色ポリエステル層(B)、両表層部が白色ポリエステル層(A)である3層積層構造の白色積層ポリエステルフィルムであって、該白色ポリエステル層(A)、(B)は、ポリエステルとは非相溶の熱可塑性樹脂を含有する微細気泡(ボイド)含有層であって、かつ該層(A)、(B)のボイド含有率およびボイド数が下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とする白色積層ポリエステルフィルムである。
【0011】
(1) VB =5〜50(%)
(2) 0.1≦VA /VB ≦0.9
(3) nB =8×103 〜3×105 個/mm2
(4) 0.1≦nA /nB ≦0.9
(ただし、VA 、VB は、それぞれ白色ポリエステル層(A)、(B)のボイド含有率を表し、nA 、nB は、それぞれ白色ポリエステル層(A)、(B)のボイド数を表す。)
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において、ポリエステルとは、ジオールとジカルボン酸とから縮重合によって得られるポリマーであり、ジカルボン酸とは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等で代表されるものであり、またジオールとは、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等で代表されるものである。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(ポリエチレンナフタレート)等を使用することができる。
【0013】
もちろん、これらのポリエステルは、ホモポリエステルであってもコポリエステルであってもよく、共重合成分としては、例えばジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分を用いることができる。
【0014】
また、このポリエステルの中には、必要に応じて本発明の効果が損なわれない量で適宜な添加剤、例えば耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、耐侯安定剤、有機の易滑剤、有機系微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤等が配合されていてもよい。
【0015】
本発明に用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが耐水性、耐久性、耐薬品性等の点で優れているため好ましいものである。
【0016】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、白色ポリエステル層(B)の少なくとも片面に白色ポリエステル層(A)を積層して成る白色積層ポリエステルフィルムであって、3層積層構造であり、芯層部が白色ポリエステル層(B)、両表層部が白色ポリエステル層(A)であり、かつ、該白色ポリエステル層(A)、(B)はポリエステルとは非相溶の熱可塑性樹脂を含有する微細気泡(ボイド)含有層であって、かつ該層(A)、(B)のボイド含有率およびボイド数が下記式(1)〜(4)を満足することが必要である。
【0017】
(1) VB =5〜50(%)
(2) 0.1≦VA /VB ≦0.9
(3) nB =8×103 〜3×105 個/mm2
(4) 0.1≦nA /nB ≦0.9
ここで、VA 、VB は、それぞれ白色ポリエステル層(A)、(B)のボイド含有率を、nA 、nB は、それぞれ白色ポリエステル層(A)、(B)のボイド数を表すものである。
【0018】
本発明においては、白色ポリエステル層(B)のボイド含有率は、5〜50%であって、好ましくは10〜45%、更には15〜40%が最も好ましい。ボイド含有率が5%より小さい場合、白色度や隠蔽性(光学濃度)に大きく劣る他、白色積層ポリエステルフィルム全体のクッション性が非常に低下するためサーマルヘッドとの密着性が低下、あるいはサーマルヘッドの加熱に対する断熱効果が不足することにより印字性が低下する傾向があり好ましくない。一方、ボイド含有率が50%より大きい場合には、フィルム全体としての強度が低下し、製膜中に破れやすくなったり、サーマルヘッドとの接触時に表面が変形しやすく、ドットがつぶれたりする等の問題が生じることがある。
【0019】
また、本発明において、白色ポリエステル層(B)のボイド数は、8×103 〜3×105 個/mm2 であって、好ましくは、1×104 〜2×105 個/mm2 、更には2×104 〜1×105 個/mm2 が最も好ましい。
【0020】
ボイド数が8×103 個/mm2 より少ない場合、前述のボイド含有率を満たしていても個々のボイドが非常に大きなものであって、白色度、光学濃度が不十分で白色フィルムとしての白さに劣るために印字画像の鮮明性が低下する傾向がある。また、フィルム面のクッション性や断熱効果が不均一であるため、高速印字、高精細印字ではドットの周囲の一部が欠けていたり、ときには印字画像に、「抜け」や「ムラ」が発生し、印字性にも劣ることがある。一方、ボイド数が3×105 個/mm2 より多い場合には、フィルム全体としての強度が低下し、製膜中に破れやすくなったり、あるいはサーマルヘッドとの接触時に表面が変形し、ドットがつぶれやすくなる傾向がある。
【0021】
さらに本発明においては、白色ポリエステル層(B)に対する白色ポリエステル層(A)のボイド含有率の比率(VA /VB )、およびボイド数の比率(nA /nB )は0.1〜0.9であって、好ましくは0.15〜0.8、更には0.2〜0.75が最も好ましい。該比率が0.1より小さい場合には、サーマルヘッドの加熱に対する断熱効果が小さく、印字性が低下する他、耐折れしわ性に劣る傾向がある。また、該比率が0.9より大きい場合、フィルム全体としての強度が低下し、製膜中に破れやすくなったり、あるいはサーマルヘッドとの接触時に表面が変形し、ドットがつぶれて印字性が低下する等の問題が起こりやすくなる。また、積層構成とした効果が小さく結果として積層構成とした分、製造コストが高くなる傾向がある。
【0022】
本発明における白色ポリエステル層(A)、(B)は、ポリエステルからなる層中にポリエステルとは非相容の熱可塑性樹脂を含有せしめ、さらにフィルム製膜時の延伸により層中に微細な気泡(ボイド)を発生させ、このボイドによって光を散乱させることにより白色不透明とし、かつクッション性をも付与せしめた層である。
【0023】
従って、本発明におけるボイドとは、基本的にはポリエステル中に含有せしめた該熱可塑性樹脂を核として生成されたものであり、白色不透明化、クッション性付与に寄与するものである。具体的にはボイドの断面積の平均値が好ましくは0.5〜25μm2 、より好ましくは1〜20μm2 の範囲内にあるものである。
【0024】
本発明でいう「ポリエステルとは非相容の熱可塑性樹脂」とは、ポリエステル以外の熱可塑性樹脂であって、示差走査熱量計(DSC)等の方法での測定において、ポリエステルと該熱可塑性樹脂とを溶融した系において、ポリエステルに相当するガラス転移温度(以降、Tgと省略する)以外に該熱可塑性樹脂に相当するTgが観察される樹脂である。
【0025】
ポリエステルに対して非相溶な熱可塑性樹脂は、ポリエステル中では粒子状に分散し、延伸によりポリエステルフィルム中に空所を形成せしめる効果が大きい。
【0026】
このような熱可塑性樹脂の融点は、ポリエステルの融点よりも低温であり、かつフィルム支持体を配向させるに用いる温度よりも高温であることが好ましい。かかる点から、該熱可塑性樹脂の中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンのようなオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、アクリルなどが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は単独重合体であっても共重合体であってもよい。これらの中でも、臨界表面張力の小さなオレフィンが好ましく、更にはポリプロピレン、ポリメチルペンテンが好ましい。特にポリメチルペンテンはポリエステルとの表面張力差が大きく、かつ融点が高いため延伸の際、微細気泡を作りやすいので特に好ましい。
【0027】
さらに、該熱可塑性樹脂に、カルボキシル基やエポキシ基等の極性基やポリエステルと反応性のある官能基をもったオレフィン系の重合体及び共重合体、ポリアルキレングリコール等を併用した場合、熱可塑性樹脂の分散径が小さくなり、ひいては延伸により生成するボイドをより微細化でき製膜安定性が向上するとともに、白色度、光学濃度がさらに優れたものとなるので好ましい。
【0028】
本発明においては白色ポリエステル層(A)、(B)中における、ポリエステルとは非相溶の熱可塑性樹脂の含有量WA 、WB は、特に限定されないが、白色ポリエステル層(B)中においては、1〜35重量%が好ましく、より好ましくは2〜30重量%、更には3〜25重量%の範囲にあるものが最も好ましい。
【0029】
また、白色ポリエステル層(A)の含有量WA は、白色ポリエステル層(B)の含有量WB に対する比率(WA /WB )として0.03〜0.8が好ましく、0.05〜0.75がより好ましい。白色ポリエステル層(A)、(B)の含有量が上記範囲より少ない場合にはクッション性や断熱効果が小さく、またフィルムの白色度、光学濃度等の特性を向上させることが難しい傾向がある。逆に、上記範囲より多い場合には、フィルム表面の平滑性(光沢度)が低下し感熱転写などの受容シート基材として適さなくなるだけでなく、延伸時にフィルム破れ等の不都合を生じることがある。
【0030】
また、本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、白色ポリエステル層(B)の少なくとも片面に白色ポリエステル層(A)を積層した構成とする必要がある。すなわち、白色ポリエステル層(A)、(B)の各層に微細なボイドを含有せしめ、かつボイド含有率とボイド数を前述の式(1) 〜(4) を満たすことにより、白色ポリエステル層(A)をより平滑性(光沢度)に優れ、白色ポリエステル層(B)をよりクッション性の優れた層とし、かつ白色積層ポリエステルフィルム全体として、サーマルヘッドの加熱に対する断熱効果に優れ、印字性、耐折れしわ性など、必要な特性の全てを満足させることが可能となるのである。
【0031】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、白色ポリエステル層(B)の少なくとも片面に白色ポリエステル層(A)を積層して成る白色積層ポリエステルフィルムであるが、白色ポリエステル層(B)の両面に白色ポリエステル層(A)を積層し、3層積層構成としたものは、製膜安定性や実用面における取扱い性などの点からより望ましいものであり、本発明の白色ポリエステルフィルムは、かかる白色ポリエステル層(B)の両面に白色ポリエステル層(A)を積層した3層積層構成からなる。
【0032】
本発明においては白色ポリエステル層(A)の厚みtA が、白色積層ポリエステルフィルムの全厚みtに対する比率(tA /t)として0.01〜0.7であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.6、更には0.03〜0.5が最も好ましい。0.01より小さい場合には白色度、平滑性(光沢度)が低下したり、フィルム強度の低下により製膜時に破れやすくなる傾向がある。また、0.7より大きい場合には、クッション性や断熱効果が低下し印字性に劣る場合があるため好ましくない。
【0033】
また、本発明の白色ポリエステル層(B)の両面に白色ポリエステル層(A)を積層した3層積層構成において、両側の積層厚みの合計をtA とし、全厚みtに対する比率が前述の範囲内であることが好ましい。
【0034】
さらに本発明においては、白色積層ポリエステルフィルムの全厚みは、特に限定されないが、通常10〜500μm、好ましくは20〜300μm程度の範囲にあるものが受容シートの基材としての実用面での取扱性に優れるので好ましい。
【0035】
本発明においては、白色積層ポリエステルフィルムの白色度、光学濃度等を向上させるため、白色ポリエステル層(A)、(B)のうち少なくとも一層に無機系微粒子を添加することが好ましい。無機系微粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、タルク、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、アルミナ、リン酸カルシウム、マイカなどを用いることができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの粒子の中でも、特に、白色度、光学濃度など総合的効果の点から、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムの適用がより好ましく、特に酸化チタン系のものが最も好ましい。また、該無機系微粒子は多孔質や中空多孔質等の形態であってもよく、さらには本発明の効果が損なわれない範囲内において、樹脂に対する分散性を良化せしめるために、さらに表面処理が施されていてもよい。
【0036】
本発明において用いられる無機系微粒子の平均粒子径は、0.05〜3μmが好ましく、0.07〜1μmの範囲にあるものがより好ましい。平均粒子径が上記範囲外では、均一分散化が難しくなったり、フィルム表面の平滑性が悪化したり、さらにはこれらが原因となって白色度、光沢度が低下したりする場合があるので好ましくない。
【0037】
また、無機系微粒子の添加量は、特に限定されないが、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは3〜25重量%、さらには5〜20重量%の範囲にあるものが最も好ましい。添加量が上記範囲より少ない場合には、フィルムの白色度、光学濃度等の特性を向上させることが難しく、逆に上記範囲より多い場合には延伸時のフィルム破れや、後加工の際に粉発生等の不都合を生じることがあり好ましくない。
【0038】
ここで、上述の無機系微粒子を添加した場合にも、非相溶の熱可塑性樹脂と同様にしてボイドが生成され得る。しかし、このようなボイドは、通常、該熱可塑性樹脂によるものと比べて、小さいものであって白色不透明化には寄与しても、クッション性付与にはあまり寄与しないものである。なお、平均粒子径の大きな無機系微粒子、具体的には平均粒子径が0.5〜3μmのものを使用した場合には、クッション性付与にも寄与することがある。よって、本発明では無機系微粒子により生成されたボイドの断面積の平均値が前述の範囲内、すなわち0.5〜25μm2 にあるものはボイドとして数え、0.5μm2 より小さいものはボイドとして数えないものである。
【0039】
本発明では、白色積層ポリエステルフィルムに、より鮮明で青味のある白色性(具体的には白色度がより高く、色調b値がより小さいこと)を与え、高級なイメージを持たせるために、白色ポリエステル層(A)、(B)のうち少なくとも一層に蛍光増白剤を含有せしめることが望ましい。
【0040】
本発明において、蛍光増白剤とは、太陽光中や人工光中の紫外線を吸収し、これを紫〜青色の可視光線に変え輻射する機能を保持し、その蛍光作用により高分子物質の明度を低下させることなく白色度、青味指数(色調b値)を助長させる化合物である。蛍光増白剤としては、商品名“ユビテック”(チバガイギー社)、“OB−1”(イーストマン社)、“TBO”(住友精化(株))、“ケイコール”(日本曹達(株))、“カヤライト”(日本化薬(株))、“リューコプア”EGM(クライアントジャパン(株))等を用いることができる。蛍光増白剤は、特に限定されるものではなく、単独、場合によっては2種以上の併用であってもよいが、本発明では、特に耐熱性に優れ、前述ポリエステルとの相溶性がよく均一分散できると共に、着色が少なく、樹脂に悪影響を及ぼさないものの選択が望ましい。
【0041】
白色ポリエステル層(A)中における蛍光増白剤の含有量は、0.005〜1重量%が好ましく、0.01〜0.5重量%の範囲にあるものがより好ましい。含有量が上記範囲より少ないと充分な増白効果が得にくく、上記範囲を越えるものは均一分散性の低下や、いわゆる「濃度消光」と呼ばれる増白効果の低下あるいは着色による白色度の低下等を招き易いため好ましくない。
【0042】
本発明においては、白色度、色調b値、光学濃度などを向上させるためには、白色ポリエステル層(A)、(B)のうち、少なくとも一層に無機系微粒子および/または蛍光増白剤が含有せしめられていることが好ましいが、より白色度、色調b値を高めるためには少なくとも一層に無機系微粒子と蛍光増白剤を併用添加することが好ましい。さらに、白色ポリエステル層(A)、(B)の各層に無機系微粒子および蛍光増白剤を添加する場合には、蛍光増白剤の含有量を白色ポリエステル層(B)よりも白色ポリエステル層(A)の方を多くしたものが、効果の点で更に好ましい。
【0043】
また、本発明においては、白色ポリエステル層(A)と白色ポリエステル層(B)の各層は同一のポリエステル組成物であっても、異なったポリエステル組成物であってもよい。特に異なったポリエステル組成物、例えば白色ポリエステル層(B)がホモポリエステルで白色ポリエステル層(A)がコポリエステルからなる場合、易接着性などの特性が得られる点でより好ましい。また、白色ポリエステル層(A)に用いられるポリエステルがポリエチレンナフタレートで白色ポリエステル層(B)に用いられるポリエステルがポリエチレンテレフタレートの場合、耐候性、剛性などの向上効果が得られるため、より好ましい。
【0044】
なお、本発明においては、白色ポリエステル層(A)と白色ポリエステル層(B)を積層する方法としては、溶融製膜中の共押出により複合化する方法、あるいはそれぞれ別々に製膜した後、ラミネートする方法のいずれでもよいが、コストなどの点で前者の方法がより好ましい。
【0045】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、白色ポリエステル層(A)側より求めた白色度が70%以上、より好ましくは75%以上、更には85%以上にあるものがくすみ感のない、非常に美しい白さを示すので好ましい。また、白色ポリエステル層(A)側より求めた色調b値が0以下、より好ましくは−0.5以下、最も好ましくは−1以下であるものが青味があり、高級感のある優れた白さを示すので好ましい。
【0046】
また、本発明の白色積層ポリエステルフィルムの光学濃度は、厚み100μm相当において0.5〜2.0であることが好ましく、0.7〜1.8であることがより好ましい。光学濃度が0.5未満であると、フィルムの隠蔽性が小さいため裏側が透けて見え、受容シート基材として使用する場合には好ましくない。
【0047】
また、光学濃度が2.0を越えるためには、ポリエステルとは非相溶の熱可塑性樹脂、無機系微粒子を多量に含有せしめねばならず、結果としてフィルムの強度が弱くなる場合があり好ましくない。
【0048】
さらに本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、白色ポリエステル層(A)側より求めた表面の光沢度が好ましくは15%以上、さらには20%以上にあるものが平滑性に優れ、受容シートの基材として用いたとき高精細な像を形成することができる他、より高級なイメージを与えることができる。
【0049】
次に、本発明の白色積層ポリエステルフィルムの製造方法について、いくつかの例を説明するが、かかる例のみに限定されるものではない。
【0050】
白色積層ポリエステルフィルムの製造方法については、押出機(A)と押出機(B)を有する複合製膜装置において、ポリエステルのチップおよびポリエステルとは非相溶の熱可塑性樹脂のマスターチップを、非相溶の熱可塑性樹脂の含有量WB が1〜35重量%となるよう混合し、充分に真空乾燥した後に、270〜300℃に加熱された押出機(B)に供給する。また、白色ポリエステル層(A)を積層するため、ポリエステルのチップおよびポリエステルとは非相溶の熱可塑性樹脂のマスターチップを、非相溶の熱可塑性樹脂の含有量WA が白色ポリエステル層(B)の含有量WB に対する比率(WA /WB )として0.03〜0.8となるよう混合し、十分に真空乾燥したものを押出機(A)に供給し、Tダイ複合口金内で押出機(A)のポリマーが押出機(B)のポリマーの両表層(両面)にくるように積層してシート状に成形し、溶融された積層シートを得る。
【0051】
この溶融された積層シートを、表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気で密着冷却固化し、未延伸積層フィルムを作製する。該未延伸積層フィルムを80〜120℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に2〜5倍延伸し、20〜30℃のロール群で冷却する。
【0052】
続いて長手方向に延伸した積層フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き90〜140℃に加熱した雰囲気中で長手方向に垂直な方向に横延伸する。
【0053】
延伸倍率は、縦、横それぞれ2〜5倍に延伸するが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は6〜20倍であることが好ましい。面積倍率が6倍未満であると得られるフィルムの白色度、光学濃度が不十分となり、逆に20倍を越えると延伸時に破れを生じやすくなる傾向がある。
【0054】
こうして得られた二軸延伸フィルムの平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で150〜230℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取り、本発明の白色積層ポリエステルフィルムを得ることができる。このとき、白色ポリエステル層(A)の厚みtA が、白色積層ポリエステルフィルムの全厚みtに対する比率(tA /t)として0.01〜0.7であることが好ましい。
【0055】
このようにして得られた白色積層ポリエステルフィルムは、受容シート基材として用いたときにクッション性に優れるため、インクジェット、感熱転写、オフセット印刷などの各種印刷記録の基材に適しており、特に、サーマルヘッドの加熱に対する断熱効果、耐折れしわ性に優れることにより感熱転写記録用の受容シート基材として好適に用いられる。
【0056】
【特性の測定方法および評価方法】
本発明の特性値は、次の評価方法、評価基準による。
【0057】
(1)ボイド含有率およびボイド数
透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、白色ポリエステル層(A)、(B)の断面を各々500〜50,000倍に拡大観察した断面写真から求めた。すなわち、計100個以上のボイドが撮影されている断面写真のボイド部分をマーキングして、そのボイド部分をハイビジョン画像解析処理装置PIAS−IV((株)ピアス製)を用いて画像処理を行い、白色ポリエステル層(A)、(B)の測定視野内のボイド面積の総和およびボイド総数を算出し、下記式よりボイド含有率、ボイド数を求めた。
【0058】
ただし、ボイド含有率、ボイド数の計算は、異なる任意の位置で計5回の測定を行い、その平均値として算出した。また、測定視野内のボイドについて2個以上の互いに隣接したボイド同士が連結している場合には、一つのボイドとして計算した。
【0059】
(2)無機系微粒子の平均粒子径
透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、白色ポリエステル層(A)または白色ポリエステル層(B)の断面を3,000〜200,000倍に拡大観察した断面写真から求めた。すなわち、断面写真の粒子部分をマーキングして、その粒子部分をハイビジョン画像解析処理装置PIAS−IV((株)ピアス製)を用いて画像処理を行い、測定視野内の計100個の粒子を真円に換算したときの平均径を算出し、無機系微粒子の平均粒子径とした。
【0060】
(3)白色度
JIS L−1015に準じて、(株)島津製作所製UV−260を用いて測定した。波長450nmおよび550nmにおける反射率を、各々B%、G%とすると、白色度は下記式で表される。
【0061】
白色度(%)=4B−3G
(4)隠蔽性
光学濃度(O.D)で求め、光学濃度計TR927(マクベス社製)を用いて透過方式で測定した。測定値が大きいほど、隠蔽性が高い。
【0062】
(5)光沢度
デジタル変角光沢度計UGV−5B(スガ試験機(株)製)を用いてJIS Z−8741に準じて測定した。なお、測定条件は入射角60゜、受光角60゜とした。
【0063】
(6)耐折れしわ性
本発明の白色積層ポリエステルフィルムを、幅10mmのテープ状にスリットしたものをテープ走行試験機を用いてステンレス製ガイドピン(外径:4.5mm、8mm)に走行条件:速度1m/分、出側張力50gで巻き付けた後、フィルムを巻き戻して表面状態を目視で観察して以下の3段階評価を行った。○以上を良好と判定した。
【0064】
○:表面にしわが全く無い。
【0065】
△:部分的にしわがある。
【0066】
×:無数のしわがある。
【0067】
(7)印字性
印字ドットの形状から判定した。まず、本発明の白色積層ポリエステルフィルムの白色ポリエステル層(A)側に下記の受容層形成塗液を、乾燥後の厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、120℃で2分間乾燥させ、感熱転写記録用の受容シートを得た。
【0068】
「受容層形成塗液」
(A)変性ポリオレフィン:ウレタン変性ポリエチレン水分散体(ウレタン変性比率=20重量%、アンモニア水溶液中で加熱することにより乳化させ、水分散体としたもの)
(B)ポリエステル:ポリエチレングリコール(以下、PEGと省略する)共重合ポリエステル水分散体(テレフタル酸/イソフタル酸/5−ナトリウムスルホ−イソフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール/PEG=50/49/1/55/42.3/2.7(モル比)の比率で共重合したもの、PEGの分子量=4000、PEGの含有量=30重量部、Tg=16℃)
(A)/(B)を固形分重量比50/50で混合し、水で希釈して固形分濃度を3%とした。
【0069】
次に、カラープリンターとして「Professional Color Point 2」(セイコー電子工業(株)製)、熱転写インキリボンとして専用のCH705(イエロー、マゼンタ、シアン セイコー・アイ・サプライ(株)製)を用いて、上述の受容シートに4階調のテストパターン印刷を行った。そして印刷面のイエロー、マゼンタ、シアン3色各々の部分を反射型光学顕微鏡を用いて100〜300倍に拡大して観察し、ドットの形状について以下の4段階評価を行った。○以上を良好と判定した。
【0070】
◎:3色全ての色について、ドットの形状が円形であり極めて良好。
【0071】
○:ドットに、わずかに「欠け」が見られるものの良好。
【0072】
△:ドットに「欠け」、「つぶれ」などの異常が見られる。
【0073】
×:ドットに「欠け」、「つぶれ」などの異常が多数見られる。
【0074】
【実施例】
本発明を以下の実施例、比較例を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
実施例1
ポリエチレンテレフタレート(以降、PETと省略する)チップにポリメチルペンテン(以降、PMPと省略する)を5重量%(WA =5重量%)、さらに相溶化剤として分子量4000のポリエチレングリコール(以降、PEGと省略する)を1重量%添加した原料を180℃で3時間真空乾燥した後、押出機(A)に供給し、常法により285℃で溶融してTダイ複合口金に導入した。
【0076】
一方、上記PETチップにPMPを15重量%(WB =15重量%)、さらに相溶化剤として分子量4000のPEGを1重量%添加したものを180℃で3時間真空乾燥した後に、押出機(B)に供給し、常法により285℃で溶融してTダイ複合口金内で白色ポリエステル層(A)が白色ポリエステル層(B)の両表層に積層してなる積層溶融体シートを得た。該積層溶融体シートを表面温度25℃に保たれた冷却ドラム上に静電荷法で密着冷却固化させ未延伸積層フィルムとした。続いて、該未延伸積層フィルムを常法に従い、98℃に加熱されたロール群を用いて長手方向に3.2倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。さらに該延伸積層フィルムをテンターに導き125℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.4倍延伸した。
【0077】
その後、テンター内で220℃の熱固定を行い均一に徐冷後巻き取り、白色ポリエステル層(A)の厚みtA が5μm、白色ポリエステル層(B)の厚みtB が90μmの構成とした、全厚みtが100μmの白色積層ポリエステルフィルムを得た。該白色積層ポリエステルフィルムの原料組成、積層厚み、構成などについては表1にまとめて示した。
【0078】
かくして得られた白色積層ポリエステルフィルムの特性は、表2のとおりである。すなわち、クッション性が発現し柔軟性に富むものであって、印字性に優れると共に耐折れしわ性に優れるものであった。
【0079】
実施例2、3、4、5
実施例1に基づき、押出機(A)、(B)に供給する原料のうちPMPの添加量WA 、WB を表1に示したとおり変更したこと以外は実施例1と同一手法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0080】
この白色積層ポリエステルフィルムの特性は、表2のとおり各特性に優れるものであり、特に実施例4は印字性に極めて優れるものであった。
【0081】
実施例6、7
実施例1に基づき、表1に示したとおり、白色ポリエステル層の厚みtAを各々2μm(実施例6)、20μm(実施例7)とし、全厚みtが100μmとなるよう積層したこと以外は実施例1と同一手法で、白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0082】
この白色積層ポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおりに各特性に優れるものであった。
【0083】
実施例8
表1に示したとおり、実施例1の押出機(A)に供給する原料に、更に平均粒子径0.3μmのアナターゼ型酸化チタン微粒子を7重量%、蛍光増白剤“OB−1”(イーストマン社製)を0.12重量%添加したこと以外は実施例1と同一手法で、白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0084】
この白色積層ポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおり各特性に優れ、特に白色度、隠蔽性の高い、高級感あふれるフィルムであった。
【0085】
比較例1
表1に示したとおり、実施例1の押出機(A)、(B)に供給する原料のうち、PMPの添加量WA 、WB を各々20重量%、5重量%とした他は、実施例1と同一手法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0086】
この白色積層ポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおりであって、特に印字性に劣るものであった。
【0087】
比較例2
表1に示したとおり、実施例1の押出機(A)に供給する原料のうち、PMPの添加量WA を13重量%とした他は、実施例1と同一手法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0088】
この白色積層ポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおり、印字性に劣るものであった。
【0089】
比較例3
表1に示したとおり、実施例1の押出機(B)に供給する原料のうち、PMPの添加量WB を0.5重量%としたこと以外は実施例1と同一手法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0090】
この白色積層ポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおり、各特性に劣るものであった。
【0091】
比較例4
実施例1の押出機(A)に供給する原料として、表1に示したとおり、PETチップに平均粒子径0.3μmのアナターゼ型酸化チタン微粒子のみを14重量%添加したものを使用した他は、実施例1と同一手法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0092】
この白色積層ポリエステルフィルムは、表2に示したとおりであって、特に耐折れしわ性に劣るものであった。
【0093】
比較例5
表1に示したとおり、実施例1の押出機(B)に供給する原料のうち、PMPの添加量WB を40重量%としたこと以外は実施例1と同一手法で製膜を行ったが、フィルム破れが頻発して白色積層ポリエステルフィルムを採取できなかった。
【0094】
【表1】
【表2】
【0095】
【発明の効果】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムによれば、印字性に優れるだけでなく受容シートの実用特性である耐折れしわ性にも優れたものが提供される。
【0096】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、上記のような優れた特性を有するので、感熱転写、インクジェット、オフセット印刷などの各種印刷記録に供される受容シート基材として好適に用いられ得るものである。
Claims (5)
- 白色ポリエステル層(B)の両面に白色ポリエステル層(A)を積層してなる、芯層部が白色ポリエステル層(B)、両表層部が白色ポリエステル層(A)である3層積層構造の白色積層ポリエステルフィルムであって、該白色ポリエステル層(A)、(B)は、ポリエステルとは非相溶の熱可塑性樹脂を含有する微細気泡(ボイド)含有層であって、かつ該層(A)、(B)のボイド含有率およびボイド数が下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とする白色積層ポリエステルフィルム。
(1)VB =5〜50(%)
(2)0.1≦VA /VB ≦0.9
(3)nB =8×103 〜3×105 個/mm2
(4)0.1≦nA /nB ≦0.9
(ただし、VA 、VB は、それぞれ白色ポリエステル層(A)、(B)のボイド含有率を表し、nA 、nB は、それぞれ白色ポリエステル層(A)、(B)のボイド数を表す。) - 白色ポリエステル層(A)の厚みtA が、白色積層ポリエステルフィルムの全厚みtに対する比率(tA /t)として0.01〜0.7であることを特徴とする請求項1に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
- ポリエステルとは非相溶の熱可塑性樹脂がポリオレフィンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
- 白色ポリエステル層(A)、(B)のうち少なくとも一層に無機系微粒子および/または蛍光増白剤を含有せしめたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルム。
- ポリオレフィンがポリメチルペンテンであり、さらに白色ポリエステル層(A)、(B)がポリエチレングリコールを含有することを特徴とする請求項3に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
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