JP3966055B2 - 白色積層ポリエステルフィルム及びそれを用いた感熱転写記録用受容シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、白色性、印刷鮮明性および耐折れじわ性に優れた白色積層ポリエステルフィルムに関するものであり、さらに、感熱転写記録用の受容シート基材として好適な白色積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハードコピー技術における記録方法の一つとして、ノンインパクト、操作、保守が容易、低コスト、小型化が可能等の特徴を持つ感熱転写記録が注目されている。感熱転写記録方式とは、色材含有層であるインキ層を有する転写シート(インキリボン)と受容シートを重ね合わせ、インキリボン側からのサーマルヘッドの加熱に応じて、溶融または昇華して移行する色材含有成分または色材を、受容シート上に微細な網点(ドット)状に転写して印字するものである。
【0003】
このような感熱転写記録用の受容シート基材として、従来より、ポリエステル中に、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機系微粒子や、ポリエステルと非相溶の樹脂を含有せしめた白色ポリエステルフィルムが使用されている。
【0004】
一般的には、これらのフィルム上に印字機能を高めるための受容層を設けることにより、感熱転写記録用の受容シートとして使用しているが、さらに、印字記録の精度が向上すると共に、印字画像の鮮明性を高め、より高級感を与える高白色性の白色ポリエステルフィルムが求められている。
【0005】
このような要求に対しては、上述の無機系微粒子の複数種を併用添加したもの、無機系微粒子と非相溶樹脂を併用添加したもの等が、例えば特開平4−153232号公報、特開平6−322153号公報等で提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年では、上述の要求に加えて、実用特性として、耐折れじわ性に優れることが要求されている。すなわち、上記従来の白色ポリエステルフィルムを用いた感熱転写記録用シートは、印刷機への供給時のチャッキングや印刷機内でのロール通過の過程、あるいはサーマルヘッドとの摩擦抵抗によって、フィルムの表面に微細な折れじわが発生しやすいといった欠点があり、この折れじわのために印刷画像の品位が低下するという問題があった。そのため、耐折れじわ性の高い感熱転写記録用シートの実現が強く求められているのが実状である。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、白色性、画像鮮明性に優れると共に、耐折れじわ性に優れた白色積層ポリエステルフィルムを提供せんとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、微細な気泡を含有する白色ポリエステル層(B)の両側表面に、無機系微粒子を含有する白色ポリエステル層(A)が積層されてなる白色積層ポリエステルフィルムであって、ポリエステル層(A)の厚さが1〜3.5μm、積層フィルム全体の厚さが10〜40μmであって、少なくとも片面に塗布層が設けられており、該塗布面側から測定したPHが4〜10であり、該フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率をそれぞれE1、E2(N/mm2)、長手方向の伸度Smと幅方向の伸度Stとし、該フィルムの比重をρとしたとき、下記式同時に満足し、感熱転写記録用に用いられることを特徴とするものである。
【0009】
1.16 ≦ E2/E1 ≦ 1.6 (1)
4000 ≦(E1+E2)/ρ ≦ 5588(2)
St≦Sm (3)
また、本発明の感熱転写記録用受容シートは、かかる白色積層ポリエステルフィルムを用いて構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、つまり白色性、画像鮮明性に優れると共に、耐折れじわ性に優れた白色積層ポリエステルフィルムについて、鋭意検討し、積層フィルムの性質として、該フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率と該フィルムの比重との間に、特定な関係を満足するものを選択して使用してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0011】
本発明において、ポリエステルとは、ジオールとジカルボン酸とから縮重合によって得られるポリマーであり、ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等で代表されるものであり、またジオールは、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等で代表されるものである。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(ポリエチレンナフタレート)等を使用することができる。これらのポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであってもよく、共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分を用いることもできる。また、このポリエステルの中には、必要に応じて、本発明の効果が損なない範囲内で、適宜の添加剤、例えば紫外線吸収剤、紫外線安定剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、有機の易滑剤、有機系微粒子、充填剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤等が配合されていてもよい。
【0012】
本発明において、白色ポリエステル層(A)を白色化する方法として、表面の光沢度、経時での安定性、製膜性などの点で、無機系微粒子を含有させることが必要である。本発明において用いられる無機系微粒子は、気泡形成性を有していても、有していなくてもよく、その一例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウム、シリカ、アルミナ、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等を用いることができる。これらの無機系微粒子は、単独でも2種以上を併用してもよい。また、無機系微粒子は、多孔質や中空多孔質等の形態であってもよく、さらには本発明の効果を阻害しない範囲内において、樹脂に対する分散性を向上させるために、表面処理が施されていてもよい。
【0013】
本発明における無機系微粒子は、均一分散性、フィルム表面の光沢性、平滑性の点から、ポリエステル中での平均粒子径が、好ましくは0.05〜3μm、より好ましくは0.07〜1μmとなるものが使用される。また、かかる無機系微粒子の添加量は、フィルムの白色性、隠蔽性の点から、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、特に好ましくは3〜20重量%の範囲にあるものがよい。
【0014】
本発明の白色ポリエステル層(B)は、微細な気泡を含有する層とすることが必要である。すなわち、内部に微細な気泡を含有することにより、感熱転写記録時のサーマルヘッドの加熱に対する断熱効果が得られ、印字部分に効率よく伝熱させることが可能となる。さらに、クッション性があるのでサーマルヘッドと印字面との密着性が高められ、印字部分への伝熱が、より均一、かつ、より高効率となる。
【0015】
微細な気泡を含有する方法としては、
▲1▼発泡剤を含有せしめ、押出や製膜時の加熱により発泡させるか、あるいは化学的分解により発泡させて、気泡を形成する方法、
▲2▼押出時にガスまたは気化可能物質を添加する方法、
▲3▼ポリエステルと非相溶の熱可塑性樹脂(非相溶樹脂)を添加し、それを一軸または二軸延伸することにより微細な気泡を発生させる方法、
▲4▼前記の非相溶樹脂の代わりに気泡形成性の無機系微粒子を多量添加する方法
等が好ましく用いられる。これらの方法の中でも、製膜性、内部に含有する気泡の量の調整しやすさ、より微細で均一な大きさの気泡の形成しやすさ、さらに軽量性などの総合的な点から、▲3▼の非相溶樹脂を使用する方法が特に好ましい。
【0016】
このような非相溶樹脂としては、ポリエステル以外の熱可塑性樹脂であって、かつ該ポリエステルに対して非相溶性を示す熱可塑性樹脂が好ましく、ポリエステル中では粒子状に分散し、延伸によりフィルム中に気泡を形成せしめる効果が大きい樹脂が好ましい。より具体的には、示差走査熱量計(DSC)等を用いた公知の方法での測定において、ポリエステルと上記非相溶樹脂とを溶融した系において、ポリエステルに相当するガラス転移温度(以後、Tgと省略する)以外に該非相溶樹脂に相当するTgが観察される樹脂である。
【0017】
このような非相溶樹脂の融点は、ポリエステルの融点よりも低温であって、かつ、製膜時にフィルムを熱固定して配向させる際の温度(熱処理温度)よりも高温であることが好ましい。このような点から該非相溶樹脂の中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンのようなオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フッ素系樹脂などが好ましく用いられる。これらは、単独重合体であっても、共重合体であってもよく、さらには2種以上の非相溶樹脂を併用してもよい。これらの中でも、臨界表面張力の小さなポリプロピレン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィンが好ましく、さらにはポリメチルペンテンが最も好ましく使用される。
【0018】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、長手方向および幅方向の引張弾性率をそれぞれE1、E2(N/mm2 )とし、該フィルムの比重をρとしたとき、下記式を同時に満足する。
【0019】
1.16 ≦ E2/E1 ≦ 1.6 (1)
4000 ≦(E1+E2)/ρ ≦ 5588 (2)
ここで、E2/E1は、好ましくは、1.5以下、より好ましくは、1.4以下である。一方、(E1+E2)/ρ は、好ましくは、4500以上、より好ましくは、5000以上である。
【0020】
本発明においては、E2/E1および(E1+E2)/ρの値が、ともに上記範囲であることが必要である。E2/E1、または、(E1+E2)/ρのいずれか一方の値が上記の範囲外であると、フィルムの長手方向と幅方向の剛性のバランスが不均衡となったり、またフィルム全体としての柔軟性が不適切なものとなり、耐折れじわ性が低下する。また場合によっては、画像鮮明性などの印刷性が低下するなどの不具合が生じやすく、特に、(E1+E2)/ρが4000未満では顕著となる傾向を示す。
【0021】
E2/E1、または、(E1+E2)/ρのいずれか一方の値が上記の範囲外であるフィルムを感熱転写記録用受容シートとして使用した場合には、印刷機内の搬送ロールの圧力やサーマルヘッドとの摩擦抵抗などによってフィルム表面に微細なしわが発生しやすく、そのしわにより印刷画像の品位が低下する。
【0022】
すなわち、E2/E1および(E1+E2)/ρの値がともに上記範囲を満足することによってのみ、はじめて耐折れじわ性に優れた白色積層ポリエステルフィルムとすることができる。したがって、本発明のフィルムを用いた感熱転写記録用受容シートは、しわが発生することがないので、画像鮮明性に優れた印刷物を得ることができる。
【0023】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、フィルムのクッション性の点から、比重ρが、好ましくは0.4以上1.2以下、より好ましくは0.5以上1.1以下、特に好ましくは0.6以上1.0以下である。
【0024】
本発明の白色積層フィルムは、画像鮮明性と耐折れしわ性を、より高度なレベルで両立させる点から、比重ρは0.9以下が好ましく、長手方向の伸度Smと幅方向の伸度Stが式(3)を満足することが必要であり、また、(4)を満足することが好ましい。
【0025】
St≦Sm (3)
90%≦Sm (4)
ここで、Smは90%以上であるのが好ましく、より好ましくは100%以上、さらには110%以上、特に好ましくは120%以上である。Smを該範囲とするには、樹脂組成、製膜条件、後処理等の種々方法を採用することができるが、本発明に至る検討から、製膜条件の点では、例えば延伸倍率を制御して低延伸倍率とする、特に長手方向については多段延伸を実施する、延伸温度を厚み斑が損なわない範囲で高温とする、延伸後の冷却ロール温度を30〜60℃とすること等の方法を例示することができる。
【0026】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、印字画像の明るさの点から、白色度が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上であるのがよい。
【0027】
本発明の白色積層ポリエステル層は、印字画像の鮮明性の点から、色調b値が、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、特に好ましくは0以下であるのがよい。
【0028】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、フィルム表面の平滑性の点から、光沢度が、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは55%以上である。
【0029】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されないが、10〜40μmであり、より好ましくは20〜40μmの範囲にあるものが、白色性や実用面での取扱性に優れていてよい。
【0030】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムにおける白色ポリエステル層(A)の積層厚みは、白色性の点から1〜3.5μmであり、より好ましくは2〜3.5μmである。
【0031】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、微細な気泡を含有する白色ポリエステル層(B)の両側表面に、無機系微粒子を含有する白色ポリエステル層(A)が積層されてなるものである。
【0032】
かかる白色ポリエステル層(A)と白色ポリエステル層(B)の各層に用いるポリエステルの種類は同一であっても、異なっていてもよい。例えば、白色ポリエステル層(A)に用いられるポリエステルが、ポリエチレンナフタレートで、白色ポリエステル層(B)に用いられるポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートであってもよいし、また、白色ポリエステル層(A)に用いられるポリエステルがコポリエステルで、白色ポリエステル層(B)に用いられるポリエステルがホモポリエステルであってもよい。
【0033】
本発明において、白色ポリエステル層(A)と白色ポリエステル層(B)を積層する方法としては、溶融製膜中の共押出により複合化する方法、あるいはそれぞれ別々に製膜した後、ラミネートする方法のいずれでもよいが、生産性の点で溶融製膜中の共押出により複合化する方法が好ましい。
【0034】
また本発明の白色積層フィルムにおいては、少なくとも片面に塗布層を設け、該塗布面側から測定した表面比抵抗が1012Ω/□以下であることが好ましく、また、PHが4〜10である。
【0035】
該塗布面から測定した表面比抵抗は1012Ω/□以下であることが好ましく、より好ましくは1011Ω/□以下、特に好ましくは1010Ω/□以下である。表面比抵抗が小さいほど、帯電防止性が付与されるので、加工工程や印刷機内の搬送、あるいはサーマルヘッド通過時の帯電が抑制でき、給紙性が向上するため、より良好な画像鮮明性や耐折れしわ性が発現される。表面比抵抗が1012Ω/□以下であると、例えば、フィルム表面に受容層を設けて受容シートとした場合に、静電気による受容シート同士の貼付きや印字の際の紙詰まり等のトラブル、あるいは受容シート表面へのゴミやほこり等の付着という問題を発生させることなく、安定して良好な品質の製品が得られやすくなる。また、表面比抵抗は、電気的な抵抗がない状態が最も好ましいが、現実的には、表面比抵抗は、10-2Ω/□以上であるのが通例である。
【0036】
また、本発明においては、塗布層の表面PHが4〜10であり、特に好ましくは4.5〜9.5、さらに特に好ましくは5〜9である。塗布層面に受容層を配置させる際に、表面PHが4未満あるいは10を越えると印刷した際の特性が悪化する場合がある。特に表面PHが4未満の酸性サイドとなると、染料によっては、変色するなどの現象が発生し、実用的に問題となり印刷特性が大幅に低下し、不鮮明な画像あるいは所望の色合いを出すことが難しくなる場合があるからである。
【0037】
ポリエステル層(A)上に塗布層を設ける場合、帯電防止剤単独の層あるいはバインダー樹脂を併用した層のいずれかを採用することができるが、特に、後者のバインダー樹脂を併用した層はフィルム上に受容層を設けて感熱転写記録用の受容シートとしたときに受容層との密着性向上効果が期待できる点で、より好ましいものである。
【0038】
上記の帯電防止剤としては、例えば、イオン性高分子化合物、界面活性剤、導電性無機微粒子、無機電解質および有機錯塩などを好ましく使用することができる。これらのうち、塗布性、バインダー樹脂や他の組成物との混和性などの点でイオン性高分子化合物が好ましく用いることができる。ここでイオン性高分子化合物とは、主鎖、側鎖もしくは主鎖のペンダントとしてイオン性基を有する高分子化合物の総称である。
【0039】
イオン性基としては、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩などのアニオン性基、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルピロリジウム塩などの第4級アンモニウム塩を主成分とする化合物であるカチオン性基、ポリエーテル類、多価アルコール類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどを主成分とする化合物である非イオン性基、長鎖脂肪族基、第4級アンモニウム型の窒素とカルボキシル基またはスルホン基を持つ化合物などの両性イオン基などを用いることができる。
【0040】
主鎖にイオン性基を有する高分子化合物の具体例として、例えば、ピロリジウム環、ピペリジニウム環などを主鎖に有する高分子化合物、又はこれらのものに不飽和結合を有する化合物を共重合成分として含む高分子化合物を用いることができる。
【0041】
また、側鎖にイオン性基を有する高分子化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンなどからなる単独重合体および/または他の成分としてポリエチレン、ポリプロピレンなどの飽和炭化水素、ポリアセチレンなどの不飽和炭化水素、アルキレンオキシドなどの共重合体を主鎖とし、リン酸塩、スルホン酸塩、ビニルスルホン酸塩、カルボン酸塩、4級アンモニウム塩などのイオン性基を側鎖に有する高分子化合物を用いることができる。
【0042】
本発明においては、帯電防止剤は、イオン性高分子化合物の中でも、混和性や塗布性の点から、イオン性基がアニオン性基である高分子化合物が特に好ましい。また、上記のイオン性高分子化合物は単独で用いても、あるいは2種以上を組合せて用いてもよい。
【0043】
本発明においては、帯電防止剤としては、リサイクル時の耐熱性などに優れるので、スルホン酸基および/またはその塩を有する共重合体を、好ましく用いることができ、中でもスチレンスルホン酸金属塩が好適に使用される。スチレンスルホン酸金属塩の含有量は、10〜40重量%であることが好ましい。また、同様の理由で、ポリチオフェンあるいはその誘導体を好ましく使用することができる。
【0044】
ここで本発明において好ましく用いられるスルホン酸基および/またはその塩を有する共重合体としては、ポリビニルスルホン酸および/またはその塩、ポリスチレンスルホン酸および/またはその塩などである。該共重合体には、他の共重合成分が、その特性を悪化させない程度に共重合されていてもよく、更には該共重合体に架橋性官能基を付与したのもとしてもよい。
【0045】
更に、本発明においては、帯電防止剤としては、帯電防止性と表面PHの両立という点で、特にスルホン酸リチウム塩を有する共重合体が好適である。
【0046】
また、帯電防止剤と併用されるバインダー樹脂としては、帯電防止剤との混和性、塗布性、さらには受容層との密着性を付与する樹脂、例えばポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびポリビニルブチラール樹脂などの樹脂が好ましい。これらの樹脂の中でも、特にポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂がより好ましく用いられる。これらの樹脂は単独で用いても、2種以上を混合あるいは共重合体として組合せて用いてもよい。特に本発明においては、耐ブロッキング性、接着性、帯電防止剤との相溶性の点から、ガラス転移温度が10〜80℃のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0047】
本発明において、帯電防止剤とバインダー樹脂の併用形態としては、帯電防止剤と共重合したもの、あるいは両者を混合して用いたものが好ましい。さらに、帯電防止剤とバインダー樹脂を混合して用いたものは、受容層との密着性がよく、選択範囲や応用範囲の広さことから、より好ましいものである。また、帯電防止剤とバインダー樹脂との割合(重量比)は、本発明の範囲内であれば特に限定されないが、例えば、帯電防止剤とバインダー樹脂との割合(重量比)は、5/95〜95/5が好ましく、より好ましくは10/90〜90/10である。また特にイオン性高分子化合物をバインダー樹脂と混合して使用する場合については、任意の比率で混合して用いることができるが、本発明の効果をより顕著に発現させるために、固形分重量比で、イオン性高分子化合物/バインダー樹脂が40/60〜10/90が好ましく、より好ましくは35/65〜15/85である。用いられるイオン性高分子化合物によって該混合比は変更されるが、上記範囲より多すぎると接着性が低下したり、また、少なすぎると帯電防止性が得られにくくなる場合がある。
【0048】
また、本発明の白色積層ポリエステルフィルムに好ましく塗布される塗布膜には、イオン性高分子化合物とバインダー樹脂に、架橋剤が添加されてもよく、架橋剤は任意の比率で混合して用いることができる。
【0049】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムに好ましく塗布される層は、本発明の目的を阻害しない範囲内であれば、他の添加剤、例えば架橋剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、有機の易滑剤、有機系もしくは無機系の微粒子、充填剤、核剤、染料、分散剤等を含有させてもよい。
【0050】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムに好ましく塗布される塗布層の形成方法は、塗液を白色積層ポリエステルフィルムのポリエステル層(A)側に、塗布、乾燥して設ける方法が好ましい。
【0051】
塗布層形成塗液の塗布方法としては、例えば、リバース(ロール)コート、グラビアコート、ナイフコート、エアーナイフコート、ロールコート、ブレードコート、ビードコート、回転スクリーンコート、スロットオリフィスコート、ロッドコート、バーコート、ダイコート、スプレーコート、カーテンコート、ダイスロットコート、チャンプレックスコート、ブラシコート、ツーコート、メータリングブレード式のサイズプレスコート、ビルブレードコート、ショートドウェルコート、ゲートロールコート、グラビアリバースコート、エクストルージョンコート、押出コートなどの方法を用いることができる。
【0052】
また、塗布層の塗布工程としては、白色積層ポリエステルフィルムの製膜工程内で塗布する方法(インラインコート)、製膜後のフィルム上に塗布、乾燥する方法(オフラインコート)のいずれの方法であってもよいが、インラインコートは、均一塗布、薄膜塗布および経済性などの点でより優れた方法である。また、コート前のフィルムには塗布性改良を目的として、予めその表面にコロナ放電処理、プラズマ処理などの前処理を施しておくことも可能である。
【0053】
また、塗布層形成塗液の液媒体は、水系、溶剤系あるいは両者混合系のいずれの液媒体でもよいが、インラインコート法により塗布層を設ける場合には、取扱性や防爆などの安全性の点で水系または水を主体とした両者混合系の液媒体が好ましく用いられる。
【0054】
塗布厚みは、0.005〜10μmが好ましく、より好ましくは0.01〜5μmである。塗布層の厚みが0.005μmより薄い場合、帯電防止性が不十分となり易い。一方、塗布層の厚みが10μmより厚い場合には、コート時に塗布層形成塗液の塗布性が低下したり、高コストとなって経済性が低下することがあるため好ましくない。
【0055】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、感熱転写記録用として好適に使用することができる。
【0056】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムを感熱転写記録用の受容シート基材として用いる際には、単独で用いても、他の素材と貼合わせて用いてもよい。かかる他素材としては、例えば普通紙、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、樹脂含浸紙、グラシン紙、ラミネート紙などの紙、合成紙、不織布、あるいは他種フィルム等を用いることができる。
【0057】
また本発明の白色積層フィルムにおいては、特に紙と貼合されて好適に使用することができる。紙と貼り合わされる際に求められる耐折れしわ性は、印刷機内での搬送をはじめ、貼合せ加工工程あるいは出来上がった製品としての取扱いの点から強く求められるものであり、この点から本発明にて規定する白色積層フィルムは優れた特性を発揮する。
【0058】
更に本発明においては、下記に規定する耐折れしわ性評価Iにおいて、しわの発生が3個/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0である。ここで耐折れしわ性評価Iとは、白色積層ポリエステルフィルムの受容層形成面と反対面に厚さ100μmの上質紙(コクヨ KB-PF1039 )を、接着剤としてポリエステル樹脂(東洋紡“バイロン”500)を用いて温度110℃にてラミネーターにより均一に貼り合わせ、折れじわ評価用のシートを作製した。該シートを長さ100mm、幅25mmに切り出し、直径15mmの鉄の円芯を軸にフィルム面を内側にして180度折り返し、フィルム面上のしわの発生状態を目視観察し、しわの数を数えるものである。
【0059】
次に、本発明の白色積層ポリエステルフィルムの製造方法について、その一例を説明するが、かかる例に限定されるものではない。
【0060】
押出機(A)と押出機(B)を有する複合製膜装置において、白色ポリエステル層(B)を形成するため、乾燥したポリエステルのチップと乾燥した非相溶樹脂のチップとを混合したものを、260〜300℃に加熱された押出機(B)に供給し、溶融して、Tダイ複合口金内に導入する。
【0061】
一方、白色ポリエステル層(A)を積層するため、ポリエステルのチップと無機系微粒子のマスターチップを混合して真空乾燥する。この原料には、必要に応じて、蛍光増白剤を添加してもよい。
【0062】
次に、この乾燥原料を、260〜300℃に加熱された押出機(A)に供給し、同様に溶融して、Tダイ複合口金内に導入し、押出機(A)のポリマーが、押出機(B)のポリマーの表層にくるように積層して、シート状に共押出しし、溶融積層シートを得る。
【0063】
この溶融積層シートを、表面温度10〜60℃に冷却されたキャストドラム上で、静電気により密着冷却して、未延伸積層フィルムを作製する。この未延伸積層フィルムを、70〜120℃に加熱したロール群に導き、長手方向に2〜5倍延伸した後、室温まで冷却する。
【0064】
続いて、長手方向に延伸した積層フィルムの両端をクリップで把持しながら、テンターに導き、80〜130℃に加熱した雰囲気中で、幅方向に2〜5倍に延伸する。
【0065】
こうして得られた二軸延伸積層フィルムを、引き続きテンター内にて、150〜230℃で、1〜30秒間の熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取ることにより、本発明の白色積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0066】
こうして得られる白色積層ポリエステルフィルムのE2/E1および(E1+E2)/ρの値を、本発明で特定する範囲にする方法は、特に限定されないが、白色ポリエステル層(A)と白色ポリエステル層(B)の積層比率を調節したり、白色ポリエステル層(B)に形成される気泡の大きさや量、形状などをコントロールする、長手方向の延伸条件あるいは幅方向の延伸条件を調節する、長手方向/幅方向の延伸倍率比を調整したり、テンター内での熱処理温度を調節することを組み合わせることにより達成することができる。
【0067】
白色ポリエステル層(A)と白色ポリエステル層(B)の積層比率が同じ場合には、白色ポリエステル層(B)に形成される気泡の大きさと量を変更したり、長手方向と幅方向の延伸倍率および延伸比率を調節することにより達成することができる。
【0068】
こうして得られた本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、白色性、印刷性、耐折れじわ性に優れている。
【0069】
また、かかる白色積層ポリエステルフィルムを、基材に用いた感熱転写記録用受容シートは、印字記録時の給紙トラブルがなく、印字画像も鮮明である。従って、本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、感熱転写記録用の受容シート基材として最適の特性を有するフィルムである。
【0070】
【実施例】
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
[特性の測定方法および評価方法]
本発明の特性値は、次の評価方法、評価基準により求められる。
【0072】
(1)気泡の有無
フィルムの断面を、ミクロトームで切り出し、走査型電子顕微鏡S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて、500〜5000倍に拡大して観察し、気泡の有無を確認した。
【0073】
(2)フィルム厚さ
積層フィルムの全厚さTは(株)ミツトヨ製ダイヤルゲージNo.2109−10(測定子直径10mm、最小目盛1μm)を用いて測定した。
【0074】
白色ポリエステルフィルム層(A)の厚さtは、上記(1)の方法で断面のSEM写真(倍率2000倍)を撮影し、該写真から厚さを測定した。
【0075】
(3)比重 ρ
フィルムを50mm×60mmの大きさにカットして得たサンプルを、高精度電子比重計SD−120L(ミラージュ貿易(株)製)を用い、JIS K−7112のA法(水中置換法)に準じて測定した。なお、測定は温度23℃、相対湿度65%の条件下にて行った。
【0076】
(4)引張弾性率及び引張伸度
フィルムの長手方向および幅方向にそれぞれ幅1cm、長さ18cmにカットした短冊状のサンプルをそれぞれ10枚採取した。測定は、東洋測器製テンシロン引張試験機AMF/RTA100を用いて行い、サンプルを試験長10cmで把持し、負荷速度30cm/分で引っ張り、荷重−伸び線図を記録した。荷重−伸び線図から次式により長手方向および幅方向の引張弾性率を計算し、n=10平均値で表した。
【0077】
E1:長手方向弾性率(N/mm2 )
E2:幅方向弾性率 (N/mm2 )
P0 :伸び0.5%のときの荷重(N)
P1 :伸び3%のときの荷重(N)
T :サンプル厚さ(mm)
W :サンプル幅 (mm)
また、引張伸度は、破断した伸び長さからフィルムが伸びた長さを求め、初期の長さで割り返した値を破断伸度として計算し、n=10の平均値で長手方向の伸度(Sm)、巾方向の伸度(St)を求めた。
【0078】
(5)耐折れじわ性(耐折れしわ性評価I、耐折れしわ性評価II)
(5.1)耐折れしわ性評価I
白色積層ポリエステルフィルムの受容層形成面と反対面に厚さ100μmの上質紙(コクヨ KB-PF1039 )を、接着剤としてポリエステル樹脂(東洋紡“バイロン”500)を用いて温度110℃にてラミネーターにより均一に貼り合わせ、折れじわ評価用のシートを作製した。該シートを長さ100mm、幅25mmに切り出し、直径15mmの鉄の円芯を軸にフィルム面を内側にして180度折り返し、フィルム面上のしわの発生状態を目視観察し、以下のように判定した。
【0079】
しわの発生がないものを◎
しわが1〜3個/cm発生したものを○
しわが4〜9個/cm発生したものを△
しわが10個/cm以上発生したものを×
とした。◎、○が実用に供するものである。
【0080】
(5.2)耐折れしわ性評価II
さらに、「耐折れしわ性評価I」で、◎であったものについては、鉄の円芯の直径を6mmとして同様の評価を行い、発生する折れしわの数を観察した(耐折れしわ性評価II)。本評価により長手方向、巾方向のしわの数を下記の通りの分類して総合評価結果とした。
【0081】
しわの数が0〜4個/cm:A
しわの数が5〜8個/cm:B
しわの数が9個以上/cm:C
また直径15mmの鉄の円芯での評価結果が△のものは「D」、×のものは「E」とした。
【0082】
本総合評価結果によりA、Bが得られたものは、実用上極めて優れており、高速化あるいは小型化が進む加工工程でも良好に使用することができる。
【0083】
(6)白色度
分光式色差計SE−2000型(日本電色工業(株)製)を用い、JIS Z−8722に準じた光学条件にて色の三刺激値であるX値、Y値、Z値を測定し、下記式より白色度を計算して求めた。
【0084】
白色度(%)=4×0.847×Z値−3×Y値
(7)色調b値
上記(4)項の装置・光学条件にて測定し、JIS Z−8730に準じて求めた。
【0085】
(8)光沢度
デジタル変角光沢度計UGV−5B(スガ試験機(株)製)を用いて、白色ポリエステル層(A)側よりJIS Z−8741に準じて測定した。なお、測定条件は入射角=60゜、受光角=60゜とした。
【0086】
(9)印刷性
本発明の白色積層ポリエステルフィルム上に下記の受容層形成塗液をグラビアコーターにて塗布した後、120℃で1分間乾燥し、受容層の厚みが0.1μmである感熱転写記録用の受容シートを得た。
【0087】
[受容層形成塗液]
ウレタン変性ポリエチレン水分散体(ウレタン変性比率=20重量%、アンモニア水溶液中で加熱することにより乳化させ、水分散体としたもの)を水で希釈し、固形分濃度を3%としたもの。
【0088】
次にカラープリンターとして「Professional Color Point 2」(セイコー電子工業(株)製)を用い、インキリボンとして専用のCH705(イエロー、マゼンタ、シアン セイコー・アイ・サプライ(株)製)を用いて、該受容シートの受容層形成面に8階調のテストパターン印字を行った。次に、印字したテストパターンを、下記の方法により印字濃度および印字ドット形状、画像鮮明性について評価し、印字性を判定した。
【0089】
(9.1)印字濃度
印字濃度は、反射方式での光学濃度(反射濃度)から求めた。すなわち、マゼンタ部分について光学濃度計TR927(マクベス社製)を用いて反射濃度を測定し、5回測定した反射濃度の平均値から以下の4段階評価を行った。○以上を良好と判定した。
【0090】
◎:0.13≦ODmin 、0.85≦ODmax
○:0.1≦ODmin <0.13、0.7≦ODmax <0.85
△:0.07≦ODmin <0.1、0.5≦ODmax <0.7
×:ODmin <0.07、ODmax <0.5
ただし、ODmin 、ODmax は、各々最も低階調、最も高階調の印字部分の反射濃度を表す。
【0091】
(9.2)ドット形状
ドット形状は、印字面のイエロー、マゼンタ、シアンの3色各々の部分を反射型光学顕微鏡を用いて100〜300倍に拡大して観察し、印字ドットの形状について以下の4段階評価を行った。○以上を良好と判定した。
【0092】
◎:3色全てについて、きれいな円形であり極めて良好
○:わずかに「欠け」が見られるものの良好
△:「欠け」や「つぶれ」が見られる。またはドットが小さい
×:「欠け」や「つぶれ」が著しい。あるいはドットが極端に小さい。
【0093】
(10)表面比抵抗
温度23℃、相対湿度65%で24時間放置して調湿した後、同条件下でデジタル超高抵抗微小電流計R8340((株)アドバンテスト製)を用いて印加電圧100Vで測定した。なお、測定値は5回行い、平均値を求めた。
【0094】
(11)表面PH
フィルムサンプルを常態下(23℃、相対湿度65%)において24時間放置後、(株)堀場製作所製のPH測定器である「COMPACT PH METER twin PH」(タイプB212)を用いて、サンプル表面の表面PHを測定した(塗布層を設けている場合は、塗布面を測定した)。センサーにイオン交換水を滴下し、該センサー部の2つの電極に被さるように所定の大きさにカットしたサンプルをセットし測定を実施した。なお、測定値は自動測定モードで5回行い、その平均値を表面PH値とした。
【0095】
参考例1
(白色積層ポリエステルフィルムの製造)
押出機(A)と押出機(B)を有する複合製膜装置において、白色ポリエステル層(A)を形成するため、ポリエチレンテレフタレート(以降、PETと略記する)チップに平均粒子径0.2μmのアナターゼ型酸化チタン微粒子を6重量%、蛍光増白剤“OB−1”(イ−ストマン社製)を0.1重量%添加した原料を180℃で3時間乾燥した後、押出機(A)に供給し、285℃で溶融してTダイ複合口金に導入した。
【0096】
一方、白色ポリエステル層(B)を形成するため、PETチップにポリメチルペンテン(以降、PMPと略記する)を8重量%、さらに、分散剤として分子量4000のポリエチレングリコール(以降、PEGと略記する)を1重量%添加したものを180℃で3時間乾燥した後に、押出機(B)に供給し、285℃で溶融してTダイ複合口金に導入した。該口金内で、白色ポリエステル層(A)と白色ポリエステル層(B)をA/B/Aの三層に積層して押し出し、表面温度25℃に保たれた冷却ドラム上に静電荷法で密着し、冷却固化させて未延伸積層フィルムを得た。このとき、白色ポリエステル層(A)および(B)の積層比率がA/B/A=10/80/10となるように押出機(A)および(B)のスクリュー回転数を調整した。
【0097】
続いて、該未延伸積層フィルムを95℃に加熱されたロール群に供給して長手方向に3.2倍延伸し、25℃のロール群で一旦冷却して一軸延伸フィルムとした。該一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内に導き、予熱ゾーンで110℃で予熱し、125℃の延伸ゾーンで横方向に3.4倍延伸した。さらに引き続いてテンター内の熱処理ゾーンで210℃の熱処理を施した後、均一に徐冷して巻き取り、厚さ40μm、比重0.82の白色積層ポリエステルフィルムを得た。該白色積層ポリエステルフイルムの断面をSEMにて観察したところ、白色ポリエステル層(B)の内部に微細な気泡を含有しているのが確認された。
【0098】
(受容シートの作製)
得られた白色積層ポリエステルフィルムの表層に、下記の受容層形成塗液を、乾燥後の厚さが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、120℃で2分間乾燥させた。
【0099】
(受容層形成塗液の組成)
(a)変性ポリオレフィン:ウレタン変性ポリエチレン水分散体(ウレタン変性比率20重量%、アンモニア水溶液中で加熱することにより乳化させ、水分散体としたもの)。
【0100】
(b)帯電防止剤:リン酸系イオン性高分子水分散体(予め、水酸化カリウムで中和したアシッドホスホオキシ(ポリオキシエチレングリコール)モノメタクリレート(オキシエチレングリコールの繰り返し単位数n=5)/ブチルアクリレート/アクリル酸を70/25/5(重量%)の比率で乳化重合させたもの。
【0101】
(a)/(b)を固形分重量比50/50で混合し、水で希釈して固形分濃度を3%とした。
【0102】
次いで、上記受容層形成面と反対側の面に、厚さ100μmの上質紙を、接着剤として低Tgポリエステル樹脂(Tg=4℃、軟化点=114℃)を用いて、温度110℃にて均一に貼り合わせて受容シートを作製した。
【0103】
(評 価)
上記白色積層ポリエステルフィルムの特性および受容シートの特性は表2に示す。この白色積層ポリエステルフィルムを用いた受容シートは印刷性が良好で、耐折れじわ性に優れるものであった。
【0104】
参考例2
PMPの添加量を10重量%とし、長手方向の延伸倍率を3.2倍、幅方向の延伸倍率を3.6倍としたこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ40μm、比重0.80の白色積層ポリエステルフィルムを得た。また、参考例1と同様にして受容シートを作製した。
【0105】
該フィルムの断面をSEMにて観察したところ、白色ポリエステル層(B)の内部に微細な気泡を含有しているのが確認された。
【0106】
上記白色積層ポリエステルフィルムおよび受容シートの特性は表2に示すとおりであって、この白色積層ポリエステルフィルムを用いた受容シートは印刷性が良好で、耐折れじわ性に優れるものであった。
【0107】
参考例3
PMPの添加量を12重量%とし、長手方向の延伸倍率を3.2倍、幅方向の延伸倍率を3.8倍としたこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ40μm、比重0.76の白色積層ポリエステルフィルムを得た。また、参考例1と同様にして受容シートを作製した。
【0108】
該フィルムの断面をSEMにて観察したところ、白色ポリエステル層(B)の内部に微細な気泡を含有しているのが確認された。
【0109】
上記白色積層ポリエステルフィルムおよび受容シートの特性を表2に示す。この白色積層ポリエステルフィルムを用いた受容シートは印刷性が良好で、耐折れじわ性に優れるものであった。
【0110】
実施例4
(白色積層ポリエステルフィルムの製造)
押出機(A)と押出機(B)を有する複合製膜装置を用いて、白色ポリエステル層(A)を形成するため、ポリエチレンテレフタレート(以降、PETと略記する)チップに平均粒子径0.2μmのアナターゼ型酸化チタン微粒子を6重量%、蛍光増白剤“OB−1”(イ−ストマン社製)を0.1重量%添加した原料を180℃で3時間乾燥した後、押出機(A)に供給し、285℃で溶融してTダイ複合口金に導入した。
【0111】
一方、白色ポリエステル層(B)を形成するため、PETチップにポリメチルペンテン(以降、PMPと略記する)を10重量%、さらに分散剤として分子量4000のポリエチレングリコール(以降、PEGと略記する)を1重量%添加したものを180℃で3時間乾燥した後に、押出機(B)に供給し、285℃で溶融してTダイ複合口金に導入した。該口金内で、白色ポリエステル層(A)と白色ポリエステル層(B)をA/B/Aの三層に積層して押し出し、表面温度25℃に保たれた冷却ドラム上に静電荷法で密着し、冷却固化させて未延伸積層フィルムを得た。
【0112】
続いて、該未延伸積層フィルムを97℃に加熱されたロール群に供給して長手方向に1.1倍延伸した後、2.64倍本延伸し(合計2.9倍延伸)、35℃のロール群で一旦冷却して一軸延伸フィルムとした。さらに続いて、該一軸延伸フィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面に下記の塗液をメタリングバーを用いたバーコート方式にて塗布した。この塗液を塗布された一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内に導き、予熱ゾーンで110℃で予熱し、125℃の延伸ゾーンで横方向に3.3倍延伸した。さらに引き続いてテンター内の熱処理ゾーンで210℃の熱処理を施した後、均一に徐冷して巻き取り、厚さ35μm、厚み0.1μmの塗布層が設けられた比重0.85の白色積層ポリエステルフィルムを得た。該白色積層ポリエステルフイルムの断面をSEMにて観察したところ、白色ポリエステル層(B)の内部に微細な気泡を含有しているのが確認された。また、実施例1と同様にして受容シートを作製した。
【0113】
(塗布層形成塗液)
帯電防止剤:ポリスチレンスルホン酸リチウム塩水分散体(分子量=約7万)
バインダー樹脂:アクリルエマルジョン(アクリル成分:メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/N−メチロールアクリルアミド=60/38/1/1(重量%)の共重合体、ガラス転移温度60℃)
上記帯電防止剤/バインダー樹脂を固形分重量比で30/70に混合し、水で希釈して固形分濃度を4重量%とした。
【0114】
上記白色積層ポリエステルフィルムおよび受容シートの特性を表2に示す。この白色積層ポリエステルフィルムを用いた受容シートは印刷性、耐折れじわ性に極めて優れるものであった。
【0115】
実施例5
塗布層形成塗液を塗布しないこと以外は実施例4と同様にして、厚さ35μm、比重0.85の白色積層ポリエステルフィルムを得た。また、実施例4と同様にして受容シートを作製した。
【0116】
該フィルムの断面をSEMにて観察したところ、白色ポリエステル層(B)の内部に微細な気泡を含有しているのが確認された。
【0117】
上記白色積層ポリエステルフィルムおよび受容シートの特性を表2に示す。とおりであって、この白色積層ポリエステルフィルムを用いた受容シートは、印刷性が良好で、耐折れじわ性に極めて優れるものであった。
【0118】
比較例1
延伸倍率および熱処理温度を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ40μm、比重0.81の白色積層ポリエステルフィルムを得た。また、実施例1と同様にして受容シートを作製した。
【0119】
該フィルムの断面をSEMにて観察したところ、白色ポリエステル層(B)の内部に微細な気泡を含有しているのが確認された。
【0120】
上記白色積層ポリエステルフィルムおよび受容シートの特性を表2に示す。この白色積層ポリエステルフィルムを用いた受容シートは印刷性は良好であったが、耐折れじわ性に劣るものであった。
【0121】
比較例2
延伸倍率および熱処理温度を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ40μm、比重0.78の白色積層ポリエステルフィルムを得た。また、実施例1と同様にして受容シートを作製した。
【0122】
該フィルムの断面をSEMにて観察したところ、白色ポリエステル層(B)の内部に微細な気泡を含有しているのが確認された。
【0123】
上記白色積層ポリエステルフィルムおよび受容シートの特性は表2に示す。この白色積層ポリエステルフィルムを用いた受容シートは印刷性は良好であったが、耐折れじわ性に劣るものであった。
【0124】
比較例3
PMPの添加量を6重量%、PEGの添加量を3重量%とし、長手方向の延伸倍率を3.5倍、幅方向の延伸倍率を4.0倍とし、熱処理温度を230℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ40μm、比重0.86の白色積層ポリエステルフィルムを得た。また、実施例1と同様にして受容シートを作製した。
【0125】
該フィルムの断面をSEMにて観察したところ、白色ポリエステル層(B)の内部に微細な気泡を含有しているのが確認された。
【0126】
上記白色積層ポリエステルフィルムおよび受容シートの特性を表2に示す。この白色積層ポリエステルフィルムを用いた受容シートは印刷性は良好であったが、耐折れじわ性に劣るものであった。
【0127】
比較例4
PMPの添加量を6重量%、PEGの添加量を3重量%とし、長手方向の延伸倍率を3.0倍、幅方向の延伸倍率を3.0倍とし、熱処理温度を230℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ40μm、比重0.90の白色積層ポリエステルフィルムを得た。また、実施例1と同様にして受容シートを作製した。
【0128】
該フィルムの断面をSEMにて観察したところ、白色ポリエステル層(B)の内部に微細な気泡を含有しているのが確認された。
【0129】
上記白色積層ポリエステルフィルムおよび受容シートの特性は、表2に示す。印刷性は良好であったが、耐折れじわ性に劣るものであった。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
表2から明らかなように、実施例4,5の白色積層ポリエステルフィルムおよび受容シートは、印刷性と耐折れじわ性に優れたものであることがわかる。
【0132】
これに対して、比較例1〜4の白色積層ポリエステルフィルムおよび受容シートは、耐折れじわ性に劣ることがわかる。
【0133】
【発明の効果】
本発明によれば、白色性、光沢性に優れたフィルムを提供することができ、該フィルムを感熱転写記録用の受容シート基材として用いたものは、鮮明な印字画像が得られ、耐折れじわ性にも優れるので、溶融型、昇華型いずれの感熱転写記録方式においても、受容シート基材として好適に使用することができる。
【0134】
また、かかる白色積層ポリエステルフィルムは、紙の代用品、すなわち、カード、ラベル、シール、宅配便伝票、ビデオプリンター用受像紙、バーコード用プリンター受像紙、ポスター、地図、無塵紙、表示板、白板、印画紙などの基材シートとしても好適に使用することができる。
Claims (9)
- 微細な気泡を含有する白色ポリエステル層(B)の両側表面に、無機系微粒子を含有する白色ポリエステル層(A)が積層されてなる白色積層ポリエステルフィルムであって、ポリエステル層(A)の厚さが1〜3.5μm、積層フィルム全体の厚さが10〜40μmであって、少なくとも片面に塗布層が設けられており、該塗布面側から測定したPHが4〜10であり、該フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率をそれぞれE1、E2(N/mm2)、長手方向の伸度Smと幅方向の伸度Stとし、該フィルムの比重をρとしたとき、下記式を同時に満足することを特徴とする感熱転写記録用に用いられる白色積層ポリエステルフィルム。
1.16 ≦ E2/E1 ≦ 1.6 (1)
4000 ≦(E1+E2)/ρ ≦ 5588 (2)
St≦Sm (3) - 該積層フィルムの比重ρが0.9以下である請求項1に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
- 長手方向の伸度Smと幅方向の伸度Stが式(4)を満足する請求項1または2に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
90%≦Sm (4) - 白色度が70%以上、色調b値が2以下、かつ光沢度が40%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルム。
- 塗布面側から測定した表面比抵抗が1012Ω/□以下である請求項1〜4のいずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルム。
- 紙と貼合されて用いられる請求項1〜5のいずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルム。
- 耐折れしわ性評価Iにおいて、しわの発生が3個/cm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルム。
- 感熱転写記録用に用いられる請求項1〜7のいずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルム。
- 前記1〜8のいずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルムを用いてなる感熱転写記録用受容シート。
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