JP4176136B2 - Ag合金薄膜 - Google Patents

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Description

本発明は、Ag合金薄膜およびこのAg合金薄膜の形成用のAg合金スパッタリングターゲットに関する技術分野に属し、特には、照明器具や自動車のヘッドランプ、リアランプ等の反射膜用のAg合金薄膜(Ag合金反射膜)およびこのAg合金反射膜形成用のAg合金スパッタリングターゲットに関する技術分野に属するものである。
照明器具用反射膜や自動車ヘッドランプ、リアランプ用の反射膜としては、膜厚約100nmのAlを樹脂基板上にスパッタリングにより成膜したものが主に用いられている。しかしながら、Alは耐食性に乏しく、酸やアルカリにより容易に腐食され反射率が低下するため、これを防止するためにAlの反射膜上には樹脂等の保護コートが施されており、この保護コートがコストアップ要因となっている。
一方、Agは初期反射率が97%前後であり、Alの初期反射率88%に比べると10%程度高いため、反射特性としては申し分なく、また、耐食性にも優れているため、反射膜として保護コート無しでの使用が期待されたが、環境にハロゲンイオンと水分が存在するとAg薄膜は凝集を生じ、凝集により反射率が低下するという問題があった。しかも、凝集が生じるとAg薄膜表面に無数の白点や変色が生じるため、意匠性、商品性を低下させるという問題があった。
また、Agは環境のイオウ成分と反応して容易に硫化し、黒く変色するため、反射率が低下するという問題があった。
このように、Agは耐食性には優れるものの、凝集や硫化の問題があるために、Alと同様に表面に環境を遮断する保護コートを必要とし、Alよりも価格が高い分、かえってコスト高となってしまうという問題があった。このため、耐凝集性に優れ、かつ耐硫化性に優れ、保護コートが不要なAg合金薄膜が望まれていた。
このようなAg膜の耐凝集性を改善する技術として様々な技術が提案されている。例えば、特開2001−226765号公報には、AgにAu及びRuを0.1 〜3.0wt%添加し、さらにCu,Ti,Cr,Ta,Ni,Mo,Alの内少なくとも1種類以上の元素を0.1 〜3.0wt%添加してなるAg合金材料が提案されている。また、特開2005−15893号公報には、Biを含有するAg合金の表面および/または該Ag合金薄膜上の他層との界面にBi層または/およびBi酸化物層が形成された構造を有するAg合金反射膜が提案されている。
これらの技術によれば、Agの凝集は抑えられるものの、硫化の抑制に関しては十分な効果が得られず、保護コート無しで反射膜として使用するには不十分である。
一方、耐硫化性については、Agは電気接点材料や装飾膜として使用されるため、この分野で合金化や多層膜化などにより様々な改善がなされている。例えば、特開昭55―85646号公報では、AgにPd、Pt、Auの内2種類以上を合計10〜60wt%含有することを特徴とする合金が開示されており、また、特開平5−47251号公報には、Ag-Sn 合金層の表面にAuまたはAu合金を10〜200nm の厚さで形成する耐硫化性に優れた合金膜構造が開示されている。これらの合金または合金膜は、耐硫化性については優れた特性を示すが、前者については、添加量が少ないと硫化による反射率低下を十分に抑えることができず、また、添加量が多いと硫化による反射率低下は抑制されるが、反射膜の色が黄色くなったり、反射率がAlよりも低くなり初期の反射特性が悪くなるという問題があった。また、特開2005-48231号公報では、Ag-Bi-Sn合金やAg-Bi-Au合金膜等の記載がある。これらの合金は耐凝集性や耐硫化性を改善はしているものの、実施例にもあるように耐硫化試験では反射率が10%以上低下しており、照明器具や自動車用の反射膜として用いるには特性が不十分である。
特開2001−226765号公報 特開2005−15893号公報 特開昭55―85646号公報 特開平5−47251号公報 特開2005−48231号公報
本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、初期反射率がAl並の88%以上であり、かつ、耐凝集性及び耐硫化性に優れたAg合金薄膜提供しようとするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。本発明によれば上記目的を達成することができる。
このようにして完成され上記目的を達成することができた本発明は、Ag合金薄膜係わり、特許請求の範囲の請求項1記載のAg合金反射膜(本発明に係るAg合金反射膜)あり、それは次のような構成としたものである。
即ち、請求項1記載のAg合金薄膜は、AuまたはAu、Bi、Snの2種以上を含有するAg合金薄膜であって、下記式(1) 〜(3) を満足すると共に、130 〜200 ℃の不活性ガス雰囲気中で熱処理されていることを特徴とするAg合金薄膜である〔第1発明〕。但し、下記式(1) 〜(3) において、[Bi]はBi含有量(原子%)、[Au]はAu含有量(原子%)、[Sn]はSn含有量(原子%)を示すものである。
5.28[Bi]+0.15[Au]+1.14[Sn]≦8.7 ------ 式(1)
1.0 ≦10[Bi]+[Au] ------------------- 式(2)
2.0 ≦[Sn]+2[Au]4 ------------------- 式(3)
本発明に係るAg合金薄膜は、初期反射率が88%以上であり、かつ、耐凝集性及び耐硫化性に優れている。このため、保護コートが無くても反射膜として好適に用いることができる。
Agの凝集抑制については、これまでに開示されているAuやBiの添加で十分な効果が得られているが、問題は耐硫化性の改善である。例えば、特開昭55―85646号公報ではPd,Pt,Auを添加して耐硫化性を改善することが提案されているが、例えばPdはAg中に4at%(略4wt%)以上添加すると反射率が88%以下となってしまうため、Agの凝集抑制効果が得られる組成まで添加することができない。また、Auを添加したスパッタリング法で成膜したAg合金薄膜の場合は、図1に示すように、0.01MのNa2S水溶液に30分浸漬する硫化試験では、純Agに比べるとAuを添加することにより確かに硫化が低減されて反射率の低下が改善されるが、88%以上の反射率を維持するためには約30at%(略44wt%)添加しなければならず、多量のAuを必要とするため高価になってしまう。また、特開平2005−48231号公報に開示のAg-Bi-Sn合金やAg-Bi-Au合金は、Biの効果で耐凝集性は優れるものの、耐硫化性については、SnやAuの添加量が少ないために効果はあるものの十分ではなく、88%以上の反射率を維持することができない。
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、Au、Snの1種以上を含有するAg合金薄膜を不活性ガス雰囲気中で130 〜200 ℃で加熱処理することにより、耐硫化性が大幅に向上することを見出した。
この耐硫化性向上の理由は、はっきりとはわからないが、Snを含有する場合は、上記加熱処理により、Ag合金薄膜の表面のSn濃度が膜中のSnの平均濃度よりも高くなっており、これがバリアとなってイオウの侵入が抑制されたものと考えられる。一方、Auを含有する場合は、上記加熱処理によってAg合金薄膜の表面でのAuの濃化等のAuの組成に変化は見られず、Snを含有する場合とは異なるメカニズムによりイオウの侵入が抑えられていると考えられる。
BiとAuは従来技術にもあるように、ハロゲンイオンによる凝集を抑える効果がある。
従って、AuまたはAu、Bi、Snの2種以上を含有するAg合金薄膜を130 〜200 ℃の不活性ガス雰囲気中で加熱処理すると、耐凝集性および耐硫化性に優れたものとなる。
即ち、このAg合金薄膜は、(A) Bi、Snを含有せず、Auを含有する場合と、(B) Au、Bi、Snの2種以上を含有する場合とがあり、前者(A) の場合は、Au含有による耐凝集性向上効果(以下、Auの耐凝集性向上効果という)と、Au含有材の不活性ガス雰囲気中での130 〜200 ℃加熱処理による耐硫化性向上効果(以下、Au+熱処理の耐硫化性向上効果という)とを奏し、耐凝集性および耐硫化性に優れたものとなる。
後者(B) の場合は、(1) Snを含有せず、Au、Biを含有する場合と、(2) Biを含有せず、Au、Snを含有する場合と、(3) Auを含有せず、Bi、Snを含有する場合と、(4) Au、Bi、Snを含有する場合とがある。この中、(1) の場合は、Auの耐凝集性向上効果と、Bi含有による耐凝集性向上効果(以下、Biの耐凝集性向上効果という)と、Au+熱処理の耐硫化性向上効果とを奏し、耐凝集性および耐硫化性に優れたものとなる。(2) の場合は、Auの耐凝集性向上効果と、Au+熱処理の耐硫化性向上効果と、Sn含有材の不活性ガス雰囲気中での130 〜200 ℃加熱処理による耐硫化性向上効果(以下、Sn+熱処理の耐硫化性向上効果という)とを奏し、耐凝集性および耐硫化性に優れたものとなる。(3) の場合は、Biの耐凝集性向上効果と、Sn+熱処理の耐硫化性向上効果とを奏し、耐凝集性および耐硫化性に優れたものとなる。(4) の場合は、Auの耐凝集性向上効果と、Biの耐凝集性向上効果と、Au+熱処理の耐硫化性向上効果と、Sn+熱処理の耐硫化性向上効果とを奏し、耐凝集性および耐硫化性に優れたものとなる。
このとき、添加元素(AuまたはAu、Bi、Snの2種以上)の量は、前記式(1) 〜(3) を満足することが必要である。
即ち、Auの耐凝集性向上効果および/またはBiの耐凝集性向上効果を奏するには、前記式(2) を満足することが必要である。この式(2) を満足すれば、耐凝集性向上効果を奏して耐凝集性に優れたものとなる。この式(2) での変数は[Au]、[Bi]である。Au、Biの中、Auだけを添加する場合は、1.0 原子%(以下、at%ともいう)以上の添加が必要であり、Biだけを添加する場合は、0.1 at%以上の添加が必要であるが、AuおよびBiを添加する場合は、例えばAuが0.5 at%でも、Biを0.05at%以上添加すれば耐凝集性向上効果を奏して耐凝集性に優れたものとなる。
Au+熱処理の耐硫化性向上効果および/またはSn+熱処理の耐硫化性向上効果を奏するには、前記式(3) を満足することが必要である。この式(3) を満足すれば、上記の耐硫化性向上効果を奏して耐硫化性に優れたものとなる。この式(3) での変数は[Au]、[Sn]である。Au、Snの中、Snだけを添加する場合は、2.0 at%以上の添加が必要であり、Auだけを添加する場合は、1.0 at%以上の添加が必要であるが、SnおよびAuを添加する場合は、例えばSnを1.9 at%添加する場合には、Auを0.5 at% 以上添加すれば耐硫化性向上効果を奏して耐硫化性に優れたものとなる。
これらの添加元素(AuまたはAu、Bi、Snの2種以上)は、その添加量(含有量)の増大に伴ってAg合金薄膜の耐凝集性、耐硫化性は向上するが、一方で、反射率は低下する。このため、添加量には制限があり、88%以上の反射率を得るためには、前記式(1) を満足することが必要である。
以上のことに基づき、本発明に係るAg合金薄膜は、AuまたはAu、Bi、Snの2種以上を含有するAg合金薄膜であって、前記式(1) 〜(3) を満足すると共に、130 〜200 ℃の不活性ガス雰囲気中で熱処理されていることを特徴とするAg合金薄膜としている。従って、このAg合金薄膜は、初期反射率が88%以上であり、かつ、耐凝集性及び耐硫化性に優れている。このため、保護コートが無くても反射膜として好適に用いることができる。なお、AuまたはAu、Bi、Snの2種以上を含有するAg合金薄膜とは、Auを含有するAg合金薄膜またはAu、Bi、Snの2種以上を含有するAg合金薄膜のことである。Au、Bi、Snの2種以上を含有するAg合金薄膜には、Au、Biを含有するAg合金薄膜、Au、Snを含有するAg合金薄膜、Bi、Snを含有するAg合金薄膜、Au、Bi、Snを含有するAg合金薄膜がある。これらは、AuまたはSnを必ず含有し、この中、Auを含有せず、Snを含有する場合はBiを必ず含有するものとなっている。
ここで、不活性ガス雰囲気の温度:130 〜200 ℃(即ち、不活性ガス雰囲気中での熱処理の温度:130 〜200 ℃)としているのは、この温度が130 ℃よりも低いと、Au+熱処理の耐硫化性向上効果や、Sn+熱処理の耐硫化性向上効果を奏することができず、200 ℃よりも高いと、熱処理時に熱による凝集が発生し、このため反射率が88%未満となってしまうからである。なお、上記熱処理の温度:130 〜200 ℃において、熱処理温度が低い場合は熱処理時間を長くすることが好ましい。例えば、130 ℃の場合は12時間以上、150 ℃の場合は1時間以上とすればよい。200 ℃の場合は10分間以上熱処理すればよい。
熱処理の雰囲気を不活性ガス雰囲気としているのは、これ以外の雰囲気(例えば大気や酸素雰囲気、真空雰囲気)とした場合は、熱処理しないものと殆ど差が無く、Au+熱処理の耐硫化性向上効果や、Sn+熱処理の耐硫化性向上効果を奏することができないからである。即ち、熱処理の雰囲気としては不活性ガス雰囲気とした場合のみ、Au+熱処理の耐硫化性向上効果やSn+熱処理の耐硫化性向上効果を奏することができ、耐硫化性に優れたものが得られるからである。なお、不活性ガスは、窒素ガスやアルゴンガス等の希ガスである。不活性ガス雰囲気は、例えば窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気、窒素ガスとアルゴンガスの混合ガス雰囲気である。真空雰囲気は不活性ガス雰囲気ではない。
本発明に係るAg合金薄膜の膜厚は、100nm 以上であることが望ましい。膜厚が100nm 未満の場合、可視光が完全に反射されずに透過成分が発生するからである。より好ましくは120nm 以上、更に好ましくは150nm 以上である。
本発明に係るAg合金薄膜を作製するためのスパッタリングターゲットの組成は、Biを除き膜組成と同じにすればよい。これは、SnやAuについてはターゲットとほぼ同じ組成(含有量)の膜が形成されるからである。一方、Biは、ターゲットでの組成(含有量)よりも膜中の組成が低くなる。これは、成膜中にBiが膜中から再蒸発するためと考えられる。このため、膜中のBi組成よりもターゲット中のBi組成を高くしておく必要がある。Biの膜中の収率は成膜条件や成膜装置により異なるが、ターゲット中のBi組成は、膜中組成の2倍以上であることが望ましい。従って、本発明に係るAg合金薄膜を作製するためのスパッタリングターゲットの組成は、下記式(4) 〜(6) を満足すればよい。即ち、本発明に係るAg合金薄膜の形成用のスパッタリングターゲットは、AuまたはAu、Bi、Snの2種以上を含有すると共に、下記式(4) 〜(6) を満足することを特徴とするAg合金よりなるスパッタリングターゲット(Ag合金スパッタリングターゲット)とすればよい。
2.64[Bi]+0.15[Au]+1.14[Sn]≦8.7 ------ 式(4)
1.0 ≦5[Bi]+[Au] ------------------- 式(5)
2.0 ≦[Sn]+2[Au] 4 ------------------- 式(6)
のAg合金スパッタリングターゲットによれば、本発明に係るAg合金薄膜を形成することができる。即ち、このAg合金スパッタリングターゲットを用いてAg合金反射膜を形成し、これを130 〜200 ℃の不活性ガス雰囲気中で熱処理することにより、本発明に係るAg合金薄膜を得ることができる。
本発明の実施例および比較例について、以下説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
〔例1〕
DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、直径2インチ(5.08cm)、厚さ0.7mm のガラス基板(コーニング#1737)上に厚さ100nm の種々の組成のAg-Au 合金薄膜、Ag-Au-Sn合金薄膜、Ag薄膜を成膜した。このとき、スパッタリングターゲットとしては、種々の組成のAg合金スパッタリングターゲットを用いた。成膜条件は、基板温度:室温、Arガス圧:1〜3mtorr (0.133〜0.399 Pa)、極間距離:55mm、成膜速度:7〜8nm/sとした。成膜前の到達真空度は1×10-5torr(1.33×10-3Pa)以下であった。
このようにして成膜されたAg合金薄膜(Ag-Au 合金薄膜、Ag-Au-Sn合金薄膜)およびAg薄膜について、一部のものを除き、窒素ガス、アルゴンガス、酸素ガス、真空〔3×10-6torr(3.99×10-4Pa)〕の各種雰囲気で160℃で1時間の熱処理を行った。この熱処理は、より具体的には次のようにして行った。窒素ガス雰囲気での熱処理の場合は、先ず、石英管の中に上記Ag合金薄膜およびAg薄膜を入れ、石英管内を真空ポンプで3×10-6torr(3.99×10-4Pa)に引いた後、窒素を石英管内に導入して大気圧に戻し、その後、石英管内は大気圧のままとして、窒素を4L(リットル)/minの流量で流しながら石英管の周りから赤外線により160℃に加熱し、この状態を1時間維持することにより行った。アルゴンガス雰囲気での熱処理の場合も、酸素ガス雰囲気での熱処理の場合も、上記窒素ガス雰囲気での熱処理の場合と同様の方法(上記窒素をアルゴン、酸素に代え、この点を除き同様)で熱処理を行った。真空雰囲気での熱処理の場合は、石英管の中にAg合金薄膜およびAg薄膜を入れ、石英管内を真空ポンプで3×10-6torr(3.99×10-4Pa)に引いた後、石英管の周りから赤外線により160℃に加熱し、この状態を1時間維持することにより行った。
このようにして熱処理されたAg合金薄膜およびAg薄膜、並びに、熱処理されていないAg合金薄膜およびAg薄膜(成膜後のもの)について、可視光反射率(初期反射率)の測定、耐硫化性評価のための硫化試験、耐凝集性評価のための凝集試験を行った。
このとき、可視光反射率は、JIS 3106の方法によって測定した。硫化試験は、0.01MのNa2S水溶液に上記薄膜(Ag合金薄膜、Ag薄膜)を30分浸漬した後、この薄膜の可視光反射率を測定することにより行った。凝集試験は、60℃、90RH%の恒温恒湿試験槽に上記薄膜を入れ、500 時間経過後に、薄膜表面を目視にて観察し、薄膜表面の白点(凝集点)の数を測定することにより行った。
上記Ag合金薄膜の合金組成、式(1) の左辺(5.28[Bi]+0.15[Au]+1.14[Sn]≦8.7 )の値、式(2) の右辺(10[Bi]+[Au])の値、式(3) の右辺([Sn]+2[Au]4 )の値、及び、成膜後のもの(熱処理されていない)についての反射率(初期反射率)の測定結果を表1に示す。成膜後のもの(熱処理されていない)についての反射率(初期反射率)、硫化試験結果(硫化試験後の反射率)、及び、凝集試験結果〔凝集試験(恒温恒湿試験)後の白点発生数〕を表2に示す。各雰囲気での熱処理後のものについての硫化試験前の反射率の測定結果、硫化試験結果(硫化試験後の反射率)、及び、凝集試験結果〔凝集試験(恒温恒湿試験)後の白点発生数〕を表3〜6に示す。なお、表1〜6において、番号1のものはAg合金薄膜ではなく、Ag薄膜についての結果を示すものである。
表1からわかるように、成膜後のAg合金薄膜(熱処理されていない)の中、番号13のものは、式(1) の左辺の値が8.7 を超え、式(1) を満たしていないため、初期反射率が88%を下回っている。従って、番号13のAg合金薄膜については、以後熱処理及び評価試験は実施しないこととした。
表2からわかるように、成膜後のAg合金薄膜(熱処理されていない)は、Ag薄膜に比べると、AuやSnの添加により耐硫化性は向上しているものの、硫化試験後に全て反射率が88%未満に低下している(耐硫化性が十分でない)。また、Au含有量が1.0at%未満である番号2,10,14のものは、白点の発生を十分抑えきれていない(耐凝集性が十分でない)。
表3〜4からわかるように、窒素雰囲気中で熱処理したAg合金薄膜、アルゴン雰囲気中で熱処理したAg合金薄膜については、番号2と14のものは式(3) を満足しないため、硫化試験後に反射率が88%を下回った。また、番号2,10,14のものは式(2) を満足しないため、白点が発生しており、耐凝集性が十分でない。これに対し、番号3〜9、11〜12のもの(本発明例)は、硫化試験後の反射率は88%以上であり、白点発生もなく、耐硫化性および耐凝集性に優れている。
表5からわかるように、酸素雰囲気中で熱処理したAg合金薄膜については、番号10,14のものは熱処理後硫化試験前の反射率が88%を下回っている。これ以外のものは硫化試験により反射率が88%未満に低下しており、耐硫化性に劣っている。
表6からわかるように、真空雰囲気で熱処理したAg合金薄膜については、硫化試験により反射率が88%未満に低下しており、耐硫化性に劣っている。
〔例2〕
RFマグネトロンスパッタリング装置を用いて、直径2インチ(5.08cm)、厚さ0.7mm のガラス基板(コーニング#1737)上に厚さ100nm の種々の組成のAg-Sn 合金薄膜、Ag-Bi-Sn合金薄膜、Ag-Bi-Sn-Au 合金薄膜を成膜した。このとき、成膜条件は、基板温度:室温、Arガス圧:1〜3mtorr (0.133〜0.399Pa)、極間距離:100mm 、成膜速度:0.4 〜0.5 nm/sとした。成膜前の到達真空度は1×10-5torr(1.33×10-3Pa)以下であった。スパッタリングターゲットとしては、表7に示す組成のAg合金スパッタリングターゲットを用いた。なお、これらのターゲットの中、番号15、16、19のものは、式(5) (1.0 ≦5[Bi]+[Au])を満足しておらず、番号17のものは式(6) (2.0 ≦[Sn]+2[Au]4 )を満足しておらず、番号22のものは式(4) (2.64[Bi]+0.15[Au]+1.14[Sn]≦8.7 )を満足していない。これ以外のターゲット(番号18、20、21、23、24のもの)は式(4) 〜(6) を満足している。
このようにして成膜されたAg合金薄膜の組成を表8に示す。表8の番号は、同じターゲット番号のターゲットを用いて成膜されたことを示す。即ち、表8の番号15〜24のAg合金薄膜は、表7の番号15〜24のターゲットを用いて形成されたものである。表7および表8から、膜中のAu、Sn含有量はターゲット中のAu、Sn含有量と等しく、膜中のBi含有量はターゲット中のBi含有量のほぼ50%であることがわかる。なお、このBiの含有量については、ICP-質量分析法(セイコーインスツルメンツ社製SPQ-8000)を用いて定量分析した。具体的には、100mg以上の試料を前処理として硝酸:純水=1:1の水溶液に溶かし、これを200 ℃のホットプレート上で加熱して試料が完全に溶解したことを確認した後、冷却し分析を行った。
上記Ag合金薄膜(Ag-Sn 合金薄膜、Ag-Bi-Sn合金薄膜、Ag-Bi-Sn-Au 合金薄膜)について、一部のものを除き、窒素ガス、アルゴンガス、酸素ガス、真空〔3×10-6torr(3.99×10-4Pa)〕の各種雰囲気で160℃で1時間の熱処理を行った。この熱処理は前述の例1の場合と同様の方法により行った。
このようにして熱処理されたAg合金薄膜、および、熱処理されていないAg合金薄膜について、可視光反射率(初期反射率)の測定、耐硫化性評価のための硫化試験、耐凝集性評価のための凝集試験を行った。これらの測定、試験は、前述の例1の場合と同様の方法により行った。
上記Ag合金薄膜の合金組成、式(1) の左辺の値、式(2) の右辺の値、及び、式(3) の右辺の値、並びに、成膜後のもの(熱処理されていない)についての反射率(初期反射率)の測定結果を表8に示す。成膜後のもの(熱処理されていない)についての反射率(初期反射率)、硫化試験後の反射率、及び、凝集試験(恒温恒湿試験)後の白点発生数を表9に示す。各雰囲気での熱処理後のものについての硫化試験前の反射率、硫化試験後の反射率、及び、凝集試験(恒温恒湿試験)後の白点発生数を表10〜13に示す。
表8からわかるように、成膜後のAg合金薄膜(熱処理されていない)の中、番号22のものは、式(1) の左辺の値が8.7 を超え、式(1) を満たしていないため、初期反射率が88%を下回っている。従って、番号22のAg合金薄膜については、以後熱処理及び評価試験は実施しないこととした。
表2のAg薄膜の結果と表9からわかるように、成膜後のAg合金薄膜(熱処理されていない)は、Ag薄膜に比べると、SnやAuの添加により耐硫化性は向上しているものの、硫化試験後に全て反射率が88%未満に低下している。
表10〜11からわかるように、窒素雰囲気中で熱処理したAg合金薄膜、アルゴン雰囲気中で熱処理したAg合金薄膜については、番号15、16、19のものは耐硫化性は向上しているものの、式(2) を満足しないため、白点が発生している。また、番号17のものは式(3) を満足しないため、耐硫化性が不十分である。これに対し、番号18、20、21、23、24のもの(本発明例)は、硫化試験後も反射率88%以上を維持しており、白点発生もなく、耐硫化性および耐凝集性に優れている。
表12からわかるように、酸素ガス雰囲気中で熱処理したAg合金薄膜については、番号15、17、18、20、21のものは熱処理後硫化試験前の反射率が88%を下回っている。番号16、19,23、24のものは、熱処理後硫化試験前の反射率が88%以上であるが、硫化試験後に反射率が88%未満に低下しており、耐硫化性に劣っている。
表13からわかるように、真空雰囲気で熱処理したAg合金薄膜については、硫化試験により反射率が88%未満に低下しており、耐硫化性に劣っている。Ag合金薄膜の組成が式(1) 〜(3) を満足している場合であっても、酸素ガス雰囲気や真空下で熱処理するのでは優れた性能が得られないことがわかる。
〔例3〕
DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、直径2インチ(5.08cm)、厚さ0.7mm のガラス基板(コーニング#1737)上に厚さ100nm のAg-2.0at%Sn-1.5at%Au合金薄膜を成膜した。このとき、成膜条件は、基板温度:室温、Arガス圧:1〜3mtorr (0.133〜0.399 Pa)、極間距離:55mm、成膜速度:7〜8nm/sとした。成膜前の到達真空度は1×10-5torr(1.33×10-3Pa)以下であった。上記成膜直後のAg-2.0at%Sn-1.5at%Au合金薄膜の反射率は、94.3%であった。
このようにして成膜されたAg合金薄膜(Ag-2.0at%Sn-1.5at%Au合金薄膜)について、アルゴンガス雰囲気で100℃×20時間、130℃×12時間、180℃×20分、210℃×10分の熱処理を行った後、耐硫化性評価のための硫化試験、耐凝集性評価のための凝集試験を行った。この結果を表14に示す。
表14からわかるように、熱処理温度:100℃の場合には、硫化試験後に反射率が88%未満に低下しており、耐硫化性が不充分であり、耐硫化性向上効果がない。熱処理の温度が210℃の場合は、熱処理によりAg合金の凝集が生じ、熱処理後硫化試験前の反射率が88%を下回った(従って、熱処理後の硫化試験および凝集試験は行わなかった)。130℃で熱処理したもの、及び、180℃で熱処理したものは、硫化試験後の反射率も反射率88%以上であり、耐硫化性に優れている。
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本発明に係るAg合金薄膜は、初期反射率が88%以上であり、かつ、耐凝集性及び耐硫化性に優れているので、保護コートが無くても照明器具用反射膜や自動車用ヘッドランプ、リアランプ用の反射膜として好適に用いることができて有用である。
Ag-Au 合金薄膜についてのAu組成と硫化試験前後の反射率との関係を示す図である。

Claims (1)

  1. AuまたはAu、Bi、Snの2種以上を含有するAg合金薄膜であって、下記式(1) 〜(3) を満足すると共に、130 〜200 ℃の不活性ガス雰囲気中で熱処理されていることを特徴とするAg合金薄膜。
    5.28[Bi]+0.15[Au]+1.14[Sn]≦8.7 ------ 式(1)
    1.0 ≦10[Bi]+[Au] ------------------- 式(2)
    2.0 ≦[Sn]+2[Au]4 ------------------- 式(3)
    ただし、上記式(1) 〜(3) において、[Bi]はBi含有量(原子%)、[Au]はAu含有量(原子%)、[Sn]はSn含有量(原子%)を示すものである。
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