JP4175104B2 - 衝撃試験機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は衝撃試験機に関し、更に詳しくは、油圧シリンダを駆動源とする衝撃試験機に関する。
【0002】
【従来の技術】
試験片に衝撃荷重を加えて、試験片の強度等の特性を調査するための衝撃試験機として、油圧シリンダを駆動源とするものが知られている。
この種の衝撃試験機においては、一般に、油圧シリンダにサーボバルブを介して作動油を供給し、そのサーボバルブの開度によってピストンの移動速度を制御するとともに、サーボバルブを閉じることによってピストンを停止させる。また、ピストンには、適当な助走区間を与えた後に試験片に対して衝撃荷重を加えるようにすることにより、ピストンが所要の速度に達してから試験片に衝撃負荷を加えるように配慮されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−145577号公報(第2頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、以上のような油圧シリンダを駆動源とする衝撃試験機において、ピストンを急停止させる場合、サーボバルブを閉じた際に慣性力によって極めて高い圧力が発生し、その圧力により油圧シリンダ自体およびサーボバルブに大きなダメージを与えるばかりでなく、装置全体に伝わる衝撃力も大きなものとなる。
【0005】
ここで、油圧シリンダには、通常、そのストローク端にクッション部が形成されており、このクッション部では、誤動作によってピストンがストローク端に衝突しようとしたとき、シリンダヘッドに設けた極めて狭い通路を作動油が通過して外部に流出するようになっており、その抵抗によってピストンがシリンダのストローク端に衝突する際の衝撃を緩和させるのであるが、このクッション部にピストンが高速度で入った場合、その部分で極めて高い圧力が発生して、その衝撃によるダメージは大きなものとなる。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、試験片に高速度の衝撃負荷を与えるべくピストンを高速度で移動させて急停止させても、発生する衝撃力を従来に比してより小さくすることができ、もって油圧シリンダ自体、サーボバルブに掛かるダメージを少なくし、また、装置全体に伝わる衝撃力も小さくすることのできる衝撃試験機の提供を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の衝撃試験機は、油圧シリンダを駆動源とする負荷機構を備え、その油圧シリンダにサーボバルブを介して作動油を供給することによって、試験片に対して衝撃負荷を加える衝撃試験機において、上記油圧シリンダ内周の負荷方向前進側の端部に、ピストンの外周との隙間が中央部の動作領域よりも狭い減速領域が形成され、その減速領域に向けて移動したピストンの先端部が当該減速領域に入り込んだ状態では、シリンダ端部の作動油がピストンの外周とシリンダの減速領域の内周との隙間を通ってリターンポートから流出するように構成され、かつ、その減速領域の更に上記負荷方向前進端側には、シリンダ内周とピストンの外周とのすきまが当該減速領域よりも更に狭いクッション部が形成されているとともに、試験片に対して衝撃負荷を加えるべくピストンを高速で減速領域に向けて移動させた後、ピストンが上記減速領域に入り込んでいる状態で当該ピストンを停止させるべく上記サーボバルブを閉じるように制御信号を供給する制御手段を備えていることによって特徴づけられる。
【0008】
本発明は、油圧シリンダ内周の端部に設けた減速領域によりピストンの速度を緩やかに低下させるとともに、その減速領域にピストンが入った状態とバルブを閉じる動作を同期させることによって、所期の目的を達成しようとするものである。
【0009】
すなわち、油圧シリンダ内周の端部に、その長手方向中央部の通常の動作領域もりも小径の領域、つまりピストン外周その隙間が中央部よりも狭くなる減速領域を形成し、更に端部側には、ピストン外周とのすきまが更に狭くなるクッション部を設ける。そして、減速領域にピストンが入り込んだ状態では、作動油がピストンとの間の狭い領域を通ってリターンポートからシリンダ外に流出するように構成すれば、ピストンがこの減速領域に入ることによってその速度が緩やかに低下する。このピストンの減速動作と、バルブを閉じる動作を同期させることにより、ピストンは比較的短い距離でスムーズに停止し、その際に発生する圧力を小さくすることができると同時に、その圧力がバルブに伝わることを抑制することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の全体構成を示す模式図であり、図2はその油圧シリンダ2の下端部近傍の詳細構造を示す模式的断面図である。
【0011】
試験機本体1はテーブル11の上に架台12を設けた構造を有し、架台12上に駆動源である油圧シリンダ2が配置されており、テーブル11上には試験片把持具3により試験片Wが支持されている。
【0012】
油圧シリンダ2のピストン21の下端部には、ロードセル4およびポンチ5が取り付けられており、ピストン21を高速度で下降させることによって、ポンチ5によって試験片Wを打ち抜くようになっている。
【0013】
油圧シリンダ2は、サーボバルブ6を介して供給される油圧源(図示せず)からの作動油によって動作し、このサーボバルブ6の弁開度に応じた速度でピストン21が移動する。ピストン21の変位は変位計7によって検出され、その変位検出信号と、前記したロードセル4からの荷重検出信号は、それぞれ制御装置8に取り込まれ、試験結果として記憶ないしは記録される。また、サーボバルブ6はこの制御装置8から供給される制御信号によって駆動制御される。
【0014】
油圧シリンダ2の内周は、下記の下端部近傍の領域を除く領域が一様な内径寸法を有する動作領域2aとなっているとともに、下端部所定領域はその動作領域2aよりも小径の減速領域2bを形成している。また、シリンダエンド2cには、更に小径のクッション部2dが形成されている。動作領域2a、減速領域2bおよびクッション部2dの各内径寸法Da,DbおよびDdと、ピストン21の外径寸法Dpとの関係は、Dp<Dd<Db<Daである。
【0015】
油圧シリンダ2のリターンポート22と減速領域2bとの関係は、図2に示すように、ピストン21の先端が減速領域2bに入った状態では、ピストン21の先端と油圧シリンダ2の下端との間に存在する作動油が、減速領域2bの内周面とピストン21の外周面との間の狭い空隙のみを介してリターンポート22に流れる位置関係となっている。
【0016】
なお、シリンダエンド2cには、リターンポート22とクッション部2dとをシリンダ外部で連通させるバイパス2eが形成されており、このバイパス2eには、リターンポート22からクッション部2dへ流入することのみを許容する向きの逆止弁23が配置されている。
【0017】
さて、以上の実施の形態において、制御装置8では、試験の開始指令を与えることによって、サーボバルブ6を駆動してピストン21を高速度で下降させ、ポンチ5を試験片Wに衝突させた後、ピストン21を急停止させるべくサーボバルブ6を閉じるが、このサーボバルブ6の閉じるタイミングを、ピストン21が減速領域2bに入った状態とする。
【0018】
以上の動作において、ピストン21の先端が減速領域2bに入り込むと、ピストン21の先端面とシリンダエンド2cとの間に存在する作動油は、ピストン21の外周面と減速領域2bの内周面との狭い隙間を通ってリターンポート22からシリンダ外部に流出する。これにより、ピストン21が動作領域2aを移動していたときに比して、作動油の流動抵抗が増大し、ピストン21が減速を開始する。この減速動作と同期するようにサーボバルブ6が閉じられる結果、ピストン21は比較的短い距離でスムーズに停止する。この停止に際して、油圧シリンダ2の内部およびサーボバルブ6内に発生する圧力は、減速領域2bを設けない場合に比して大幅に低くなることが確認されている。
【0019】
なお、ピストン21が下のストローク端に位置している状態から上昇させる場合、作動油はリターンポート22からバイパス2eを介して油圧シリンダ2内に流入し、ある程度上昇した後はリターンポート22から流入することにより、に問題は生じない。
【0020】
次に、以上の本発明の実施の形態における減速領域2bを設けることによるピストン21の急停止時の発生圧力の低減効果について、実験を行った結果を述べる。図3はピストン21が減速領域2bに入ったときにサーボバルブ6を閉じた場合、図4はピストン21が減速領域2bの手前の動作領域2aに位置しているときにサーボバルブ6を閉じた場合の測定結果をそれぞれ示すグラフである。各図には、サーボバルブ6の開度とピストン21の変位の検出結果を併せて示している。
【0021】
これらのグラフから明らかなように、ピストン21が減速領域2bに入った状態でサーボバルブ6を閉じることにより、ピストン21が動作領域2aに位置している状態でサーボバルブ6を閉じた場合に比して、油圧シリンダ2内およびリターンポート22内、すなわちサーボバルブ6内の圧力変動を大幅に減少させることができ、装置全体に伝わる衝撃力も減少させることができた。
【0022】
なお、本発明は、衝撃圧縮や衝撃曲げ試験のほか、衝撃引張や衝撃ねじり試験を行うための衝撃試験機にも等しく適用し得ることは勿論である。
また、図1の例では、両ロッドタイプの油圧シリンダを用いたが、片ロッドタイプの油圧シリンダを用いる場合にも本発明を適用し得ることは言うまでもない。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、衝撃負荷を加えるための油圧シリンダの前進端の内周に、中央部の動作領域よりもピストン外周に対する隙間が狭くなる減速領域を設け、この減速領域にピストンが入り込んだ状態では、その減速領域のシリンダ内周とピストン外周との狭い隙間を通ってリターンポートからシリンダ外に流出するように構成するとともに、その減速領域にピストンが入ったときにバルブを閉じてピストンを停止させるように構成しているので、衝撃負荷を与えた後にピストンを急停止させたとき、ピストンは比較的短い距離でスムーズに停止し、シリンダ内やバルブ内に発生する圧力を従来の比して大幅に低減させることができ、装置全体に伝わる衝撃力も低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の全体構成を示す模式図である。
【図2】図1の実施の形態における油圧シリンダ2の要部の詳細構造を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の実施の形態において、ピストン21が減速領域2bに入ったときにサーボバルブ6を閉じた場合の各部の圧力変化の測定結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態において、ピストン21が減速領域2bの手前の動作領域2aに位置しているときにサーボバルブ6を閉じたときの各部の圧力変化の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 試験機本体
11 テーブル
12 架台
2 油圧シリンダ
2a 動作領域
2b 減速領域
2d クッション部
2e バイパス
21 ピストン
22 リターンポート
3 試験片把持具
4 ロードセル
5 ポンチ
6 サーボバルブ
7 変位計
8 制御装置
W 試験片

Claims (1)

  1. 油圧シリンダを駆動源とする負荷機構を備え、その油圧シリンダにサーボバルブを介して作動油を供給することによって、試験片に対して衝撃負荷を加える衝撃試験機において、上記油圧シリンダ内周の負荷方向前進側の端部に、ピストンの外周との隙間が中央部の動作領域よりも狭い減速領域が形成され、その減速領域に向けて移動したピストンの先端部が当該減速領域に入り込んだ状態では、シリンダ端部の作動油がピストンの外周とシリンダの減速領域の内周との隙間を通ってリターンポートから流出するように構成され、かつ、その減速領域の更に上記負荷方向前進端側には、シリンダ内周とピストンの外周とのすきまが当該減速領域よりも更に狭いクッション部が形成されているとともに、試験片に対して衝撃負荷を加えるべくピストンを高速で減速領域に向けて移動させた後、ピストンが上記減速領域に入り込んでいる状態で当該ピストンを停止させるべく上記サーボバルブを閉じるように制御信号を供給する制御手段を備えていることを特徴とする衝撃試験機。
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