JP4175005B2 - 画像形成装置および画像形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、感光体の表面に光ビームを露光してその表面に静電潜像を形成するとともに、トナーを担持するトナー担持体に現像バイアスを印加して前記トナー担持体から前記感光体にトナーを移動させることで前記静電潜像を顕像化して目標濃度のトナー像を形成する画像形成装置および方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の画像形成装置では、感光体およびトナーの疲労・経時変化や、装置周辺における温湿度の変化などに起因して、画像濃度が変化することがある。そこで、従来より帯電バイアス、現像バイアス、露光エネルギーなどのパラメータ(画像形成条件)を適宜調整して画像濃度を安定化させる技術が数多く提案されている。例えば、特開平10−239924号公報に記載の発明では、帯電バイアスおよび現像バイアスを適宜調整することで画像濃度の安定化を図っている。すなわち、この従来技術では、帯電バイアスおよび現像バイアスを変えながら、基準パッチ画像を感光体上に形成し、各基準パッチの画像濃度を検出している。そして、これらの検出値に基づき最適な帯電バイアスおよび現像バイアスをそれぞれ最適帯電条件および最適現像条件として決定している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、基準パッチ画像を形成する前に帯電バイアス−現像バイアス特性を予め調べておき、基準パッチ画像を形成するに当たっては、この特性を満足するように帯電バイアスおよび現像バイアスを設定している。このように、最適帯電バイアスおよび最適現像バイアスを求めて画像濃度を安定化するためには、画像形成装置ごとに帯電バイアス−現像バイアス特性を求めておく必要があり、作業が煩雑であるという問題を有している。
【0004】
また、帯電バイアス−現像バイアス特性は常に一定というわけではなく、経時的に変化することがある。このように当該特性が変化してしまうと、最適な帯電バイアスまたは現像バイアスを正確に算出することが難しくなってしまう。この問題を解消するためには、適宜、帯電バイアス−現像バイアス特性を更新すればよいのであるが、このような更新作業は面倒であり、メンテナンス性の点で劣っている。
【0005】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡単に、しかも高精度に画像濃度を安定化させることができる画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる画像形成装置は、帯電した感光体の表面に光ビームを露光して静電潜像を形成する露光手段と、その表面にトナーを担持するトナー担持体を有して該トナー担持体に印加される現像バイアスに応じてトナーを感光体表面に移動させて静電潜像をトナーにより顕像化する現像手段と、光ビームのエネルギー密度を最適露光条件に設定するとともに、現像バイアスを最適現像条件に設定して所定の目標濃度のトナー像を形成する制御手段と、トナー像の濃度を検出する濃度センサとを備える画像形成装置であって、上記目的を達成するために、感光体の光減衰特性は、光ビームを感光体に照射して高濃度用パッチ画像に対応する静電潜像を形成するとき、光ビームのエネルギー密度が増大するのに伴って感光体の表面電位が所定の電位に漸近する漸近領域を有しており、濃度センサは高濃度側目標濃度において飽和する検出特性を有し、制御手段は、現像バイアスを多段階に変更設定しながら各バイアス値で高濃度用パッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて最適現像条件を求める一方、最適現像条件で現像バイアスをトナー担持体に印加しながら、漸近領域において光ビームのエネルギー密度を多段階に変更設定しながら各エネルギー値で低濃度用パッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて最適露光条件を求め、高濃度側目標濃度のトナー像を形成するために必要な最適現像条件を求めるにあたっては、当該高濃度側目標濃度よりも低濃度のパッチ画像を高濃度用パッチ画像として複数形成するとともに、当該パッチ画像の濃度センサによる検出結果から、バイアス値とパッチ画像の濃度との関係式を求め、当該関係式に基づいて高濃度側目標濃度に対応する最適現像条件を外挿的に求めることを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる画像形成方法は、感光体の表面に光ビームを露光してその表面に静電潜像を形成するとともに、トナーを担持するトナー担持体に現像バイアスを印加してトナー担持体から感光体にトナーを移動させることで静電潜像を顕像化して所定の目標濃度のトナー像を形成する画像形成方法であって、上記目的を達成するために、感光体の光減衰特性は、光ビームを感光体に照射して高濃度用パッチ画像に対応する静電潜像を形成するとき、光ビームのエネルギー密度が増大するのに伴って感光体の表面電位が所定の電位に漸近する漸近領域を有しており、トナー像を形成するのに先立って、(a)現像バイアスを多段階に変更設定しながら各バイアス値で高濃度用パッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて最適現像条件を求める工程と、(b)最適化された現像バイアスをトナー担持体に印加するとともに漸近領域において光ビームのエネルギー密度を多段階に変更設定しながら各エネルギー値で低濃度用パッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて最適露光条件を求める工程とを実行して目標濃度のトナー像を形成するために必要な現像バイアスおよび光ビームのエネルギー密度をそれぞれ最適現像条件および最適露光条件として求め、工程(a)において高濃度側目標濃度のトナー像を形成するために必要な最適現像条件を求めるにあたっては、当該高濃度側目標濃度よりも低濃度のパッチ画像を高濃度用パッチ画像として複数形成するとともに、高濃度側目標濃度において飽和する検出特性を有する濃度センサにより検出した当該パッチ画像の濃度検出結果から、バイアス値とパッチ画像の濃度との関係式を求め、当該関係式に基づいて高濃度側目標濃度に対応する最適現像条件を外挿的に求めることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(画像形成装置および方法)では、感光体が上記した漸近領域を有することを利用して所定の目標濃度のトナー像を形成するために必要となる画像形成条件、つまり最適現像条件および最適露光条件を以下の2段階で求めている。
【0009】
(1)まず第1段目として、光ビームのエネルギー密度を一定にしながら、現像バイアスを多段階に変更設定しながら各バイアス値で高濃度用パッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて最適現像条件を求めている。したがって、高濃度側でのトナー像の画像濃度が目標濃度に制御される。なお、光ビームのエネルギー密度の値については、後の「発明の実施の形態」で詳述する理由から、漸近領域の範囲内で設定しておくのが望ましい。
【0010】
(2)また、第2段目として、現像バイアスを最適現像条件に固定しながら、光ビームのエネルギー密度を多段階に変更設定しながら各エネルギー値で低濃度用パッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて最適露光条件を求めている。ここでは、特に光ビームのエネルギー密度を漸近領域で変更設定しているため、高濃度側でのトナー像の画像濃度を変化させることなく、低濃度側でのトナー像の画像濃度が目標濃度に制御される。
【0011】
このように、この発明では、現像バイアスおよび光ビームのエネルギー密度の2つのパラメータ(画像形成条件)について個別に、しかもそれぞれの最適値に設定することが可能となる。また、一のパラメータのみを変化させながら形成したパッチ画像の濃度からそのパラメータの最適値を見出すことができるので制御が簡単であり、従来技術のように、制御が複雑になって装置コストが高くなったり、処理に長時間を要するという問題もない。そして、このように最適化された画像形成条件の下でトナー像形成を行うことにより、この画像形成装置は、画質の良好なトナー像を安定して形成することが可能となっている。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像信号が制御ユニット1のメインコントローラ11に与えられると、このメインコントローラ11からの指令に応じてエンジンコントローラ12がエンジン部EGの各部を制御して複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシートSに画像信号に対応する画像を形成する。
【0013】
このエンジン部EGでは、7つのユニット:(a)感光体ユニット2;(b)イエロー現像ユニット(以下「Y現像ユニット」という)3Y;(c)マゼンタ現像ユニット(「M現像ユニット」)3M;(d)シアン現像ユニット(「C現像ユニット」)3C;(e)ブラック現像ユニット(「K現像ユニット」)3K;(f)中間転写ユニット4および(g)定着ユニット5が装置本体6に対して着脱自在となっている。そして、すべてのユニット2、3Y、3M、3C、3K、4、5が装置本体6に装着された状態で、図1に示すように、感光体ユニット2の感光体21が図1の矢印方向D1に回転するとともに、その感光体21の周りにその回転方向D1に沿って、帯電部22、現像ユニット3Y、3M、3C、3Kからなるロータリー現像部3およびクリーニング部23がそれぞれ配置される。
【0014】
7つのユニット2、3Y、3M、3C、3K、4、5のうち感光体ユニット2には感光体21、帯電部22およびクリーニング部23が収容されており、これらを一体的に装置本体6に対して着脱自在となっている。帯電部22には帯電バイアス発生部121から帯電バイアスが印加されており、感光体21の外周面を均一に帯電させる。また、この感光体ユニット2には、感光体21の回転方向D1における帯電部22の上流側にクリーニング部23が設けられており、一次転写後に感光体21の外周面に残留付着しているトナーを掻き落とす。こうして、感光体21の表面クリーニングを行っている。
【0015】
帯電部22によって帯電された感光体21の外周面に向けて露光ユニット8から光ビームLが照射される。この露光ユニット8は、図2に示すように、画像信号切換部122と電気的に接続されており、この画像信号切換部122を介して与えられる画像信号に応じて露光パワー制御部123が露光ユニット8を制御し、光ビームLを感光体21上に露光して画像信号に対応する静電潜像を感光体21上に形成する。
【0016】
このように構成された画像形成装置では、例えば、エンジンコントローラ12のCPU124からの指令に基づき、画像信号切換部122がパッチ作成モジュール125と導通している際には、パッチ作成モジュール125から出力されるパッチ画像信号が露光パワー制御部123に与えられてパッチ潜像が形成される。一方、画像信号切換部122がメインコントローラ11のCPU111と導通している際には、ホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像信号に応じて光ビームLが感光体21上に露光されて画像信号に対応する静電潜像が感光体21上に形成される。
【0017】
この実施形態では、特に図3に示す光減衰特性を有する感光体21が採用されている。通常、高濃度用パッチ画像を形成する場合と、低濃度用パッチ画像を形成する場合とで光減衰特性は相互に相違している。すなわち、帯電部22により均一の表面電位Vdに帯電した感光体21を部分的に光ビームLにより露光すると、その部分の電荷が中和されて感光体21の表面に静電潜像が形成されるが、ベタ画像のような高濃度用パッチ画像では感光体21表面の比較的広い範囲が露光されているため、その表面電位プロファイルは井戸型となり、光ビームLの単位面積当たりのエネルギー(以下、単に「露光エネルギー」という)が比較的小さい間では露光エネルギーの増大にしたがって露光部分の表面電位、いわゆる明部電位は徐々に低下していく。そして、感光体21の特性で決まる残留電位程度まで低下すると、露光エネルギーを増大させたとしても、露光部分の表面電位はほとんど変化しない。その結果、高濃度用パッチ画像については、図3の曲線Chに示すような光減衰特性となり、この光減衰特性は光ビームLのエネルギー密度(露光エネルギー)が増大するのに伴って感光体21の表面電位が所定の電位Vrに漸近する漸近領域を有している。
【0018】
これに対し、ライン画像のような低濃度用パッチ画像では露光される領域が狭いため、その表面電位は鋭いディップ状のプロファイルを有することとなる。このため、実際に測定される感光体21の表面電位の変化は、露光された部分の表面電位(明部電位)の変化と、非露光部分と露光部分とのコントラスト比の変化とにより決定されることとなり、特にこの実施形態では、後者の変化が支配的となっている。その結果、感光体21の低濃度用パッチ画像については、図3の直線Clに示すような光減衰特性となる。
【0019】
図1に戻って装置構成の説明を続ける。こうして形成された静電潜像は本発明の「現像手段」に相当するロータリー現像部3によってトナー現像される。このロータリー現像部3では、ブラック用の現像ユニット3K、シアン用の現像ユニット3C、マゼンタ用の現像ユニット3M、およびイエロー用の現像ユニット3Yが軸中心に回転自在に設けられている。そして、これらの現像ユニット3Y、3M、3C、3Kは予め決められた複数の位置に移動位置決めされるとともに、感光体21に対して選択的に現像位置で位置決めされる。図1ではブラック用の現像ユニット3Kが現像位置に位置決めされており、この位置決め状態で現像ユニット3Kに設けられた現像ローラ31が感光体21から離間した状態で対向配置されるが、その他の現像ユニット3Y、3M、3Cについても現像ユニット3Kと全く同様に現像ユニットの現像位置への位置決めにより各現像ユニットに設けられた現像ローラ31が感光体21と対向配置される。
【0020】
また、現像位置に位置決めされた現像ユニットでは、ユニットハウジング内に貯留されたトナーは現像ローラ31に担持されながら、現像位置に搬送される。このように、この実施形態では、現像ローラ31が本発明の「トナー担持体」に相当している。なお、トナーが負に帯電するものとして以下説明するが、装置各部の電位を適宜変更することで正に帯電するトナーも使用可能である。
【0021】
そして、現像ローラ31に対して、図4に示す交番電圧が現像バイアスとして現像バイアス発生部126から印加される。この現像バイアスは、図4に示すように、直流成分Vavgに対して振幅Vppなる矩形波電圧が重畳された波形を有する交番電圧である。ここでは、交流成分として振幅Vpp(=|Vbmax−Vbmin|)で、しかも交流成分の一周期Taに対する電位Vmax側のピーク電位期間Tbの割合、つまりデューティーパーセント(=(Tb/Ta)×100%)が50%の矩形波状の交流成分を印加している。このような波形の現像バイアスを印加することにより、その振幅Vppによりトナーの飛翔量を制御することができる一方、その直流成分Vavgにより画像濃度を制御することが可能である。
【0022】
なお、現像バイアスとしての交番電圧の波形はこれに限定されるものではなく、例えば直流成分に正弦波や三角波を重畳したものであってもよい。また、そのデューティ比が50%でない波形を用いてもよい。この場合には、その直流成分Vavgとしては、加重平均電圧、すなわち、時間とともに振幅の変化する電圧波形の瞬時値をある時間範囲について平均化して直流電圧値に換算した値を用いることができる。
【0023】
この現像ローラ31への交番電圧の印加によって現像ローラ31と感光体21との間で交番電界が形成され、現像位置に選択位置決めされたユニットハウジング内のトナーが現像ローラ31から感光体21に飛翔して静電潜像を顕像化する。こうして、選択された色のトナー像が感光体21の表面に形成される。
【0024】
上記のようにして現像部3で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で中間転写ユニット4の中間転写ベルト41上に一次転写される。すなわち、中間転写ユニット4は複数のローラに掛け渡された中間転写ベルト41と、中間転写ベルト41を回転駆動する駆動部(図示省略)とを備えており、カラー画像をシートSに転写する場合には、感光体21上に形成される各色のトナー像を中間転写ベルト41上に重ね合わせてカラー画像を形成する一方、単色画像をシートSに転写する場合には、感光体21上に形成されるブラック色のトナー像のみを中間転写ベルト41上に転写して単色画像を形成する。
【0025】
また、本実施形態にかかる画像形成装置では、パッチ画像の濃度を検出するために、中間転写ベルト41が掛け渡された一のローラに対向してパッチセンサPSが配置されて本発明の「濃度検出手段」として機能する。
【0026】
こうして中間転写ベルト41上に形成された画像については、所定の二次転写領域TR2において、カセット9から取り出されたシートS上に二次転写する。そして、トナー画像が転写されたシートSを、ヒータ(図示省略)が内蔵された定着ユニット5に導入し、ここで加熱しながら圧力を加えることによってトナーをシートSに定着させる。こうして画像が形成されたシートSは装置本体6の上面部に設けられた排出トレイ部に搬送される。
【0027】
なお、図2において、符号113はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラ11に設けられた画像メモリであり、符号127はCPU124で行う演算プログラム、CPU124における演算結果、エンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのメモリ(記憶部)である。
【0028】
上記のように構成された画像形成装置では、電源投入時などの適当なタイミングで所定のパッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて画像形成条件を最適化するパッチ処理を行っている。具体的には、エンジンコントローラ12のCPU124が予め記憶されたプログラムを実行して、各トナー色毎に図5に示す処理を行っている。
【0029】
図5は、この画像形成装置のパッチ処理を示すフローチャートである。同図の左側に示した処理(ステップS11〜S18)では高濃度側目標濃度(OD=1.3)のトナー像を形成するために必要な現像バイアスを最適現像条件として求める一方、同図の左側に示した処理(ステップS21〜S27)では低濃度側目標濃度(OD=0.22)のトナー像を形成するために必要な露光エネルギーを最適露光条件として求めている。
【0030】
まず、露光エネルギーEを最大値に固定する(ステップS11)。なお、露光エネルギーEについては任意であるが、既に図3に示したように漸近領域では高濃度用パッチ画像についての光減衰特性Chは残留電位Vrに漸近しており、後述する理由から漸近領域にある露光エネルギーに設定するのが望ましい。
【0031】
次に、現像バイアスの直流成分(以下、「直流現像バイアス」という)Vavgを初期値Vavg_Aに設定する(ステップS12)。この初期値Vavg_Aは図3に示すように高濃度側目標濃度D(op)に対応する直流現像バイアス、つまり最適現像条件よりも残留電位Vrに近い値に設定されている。したがって、初期値Vavg_Aに設定した状態で高濃度用パッチ画像として例えばベタ画像を形成する(ステップS13)と、高濃度側目標濃度D(op)よりも低濃度のパッチ画像が形成される(図6)。
【0032】
そして、ステップS13〜S15を繰り返すことで、さらに直流現像バイアスVavgをバイアスVavg_B,Vavg_Cに変更設定しながら、各バイアス下で高濃度側目標濃度D(op)よりも低濃度のパッチ画像を形成する。なお、この実施形態では、直流現像バイアスVavgとして3種類のVavg_A,Vavg_B,Vavg_Cをこの順序で変更設定しているが、個数および順序は任意であることはいうまでもない。
【0033】
こうして3種類の高濃度用パッチ画像が形成されると、各パッチ画像の画像濃度をパッチセンサPSにより検出する(ステップS16)。これによって、例えば図6に示すように、各直流現像バイアスVavg_A,Vavg_B,Vavg_C下で形成されたパッチ画像の画像濃度D(A),D(B),D(C)がそれぞれ検出される。これに続いて、直流現像バイアスと画像濃度との組み合わせ(Vavg_A,D(A))、(Vavg_B,D(B))、(Vavg_C,D(C))に基づき直流現像バイアスと画像濃度との相関関係を示す式、つまり図6中の1点鎖線で示す直線式を求める(ステップS17)。この理由は以下のとおりである。
【0034】
同図中の実線は直流現像バイアスと濃度との関係を示しており、直流現像バイアスを除く画像形成条件を一定に維持している場合には単位面積当たりのトナー付着量と濃度との関係と実質的に等しい。同図に示すように、直流現像バイアスVavgを表面電位Vdに近づけてコントラスト電位Vcont(図3参照)を大きくすれば、トナー付着量が多くなり、その結果、トナー像の画像濃度も高くなる。しかし、単位面積当たりのトナー付着量が一定値以上となると、それ以上に直流現像バイアスを変化させたとしても濃度はあまり変化しなくなり、トナー飽和濃度を示すようになる。
【0035】
また、パッチセンサPSは通常、例えば図8に示すような出力特性を有している。すなわち、パッチ画像を構成するトナーの量が比較的少なく、比較的低濃度である場合には濃度変化に応じてセンサ出力が大きく変化するのであるが、パッチ画像が次第に濃くなってくると、濃度変化に伴うセンサ出力の変動量は少なくなっていき、高濃度領域では濃度が変化したとしてもセンサ出力の変動量はゼロ、あるいは微小となっている。つまり高濃度領域ではパッチセンサのダイナミックレンジが狭くなっている。したがって、限界濃度D(lmt)を超える高濃度領域ではパッチセンサPSのダイナミックレンジは狭く、このパッチセンサPSによりパッチ画像の濃度を正確に測定することが困難となっている。
【0036】
そこで、この実施形態では、上記のように目標濃度D(op)よりも低濃度のパッチ画像を形成することでパッチセンサPSにより各パッチ画像の濃度を正確に測定する一方、限界濃度D(lmt)を超える高濃度領域については上記のようにして求めた直線式に基づいて直流現像バイアスと濃度との関係を外挿的に求めることを可能としている。具体的には、ステップS18で上記相関関係(図6の直線式)に基づき高濃度側目標濃度D(op)に対応する直流現像バイアスVavg_opを求め、これを最適現像条件としてメモリ127に記憶する。勿論、目標濃度付近でのパッチセンサPSの濃度変化に対するセンサ出力の変動が十分大きい、つまりパッチセンサPSのダイナミックレンジが広い場合は、目標濃度を挟む形で現像バイアスを変更してパッチ画像を形成し内挿することで現像条件を求めてもよい。
【0037】
それに続いて、図5の右側の処理を実行する。すなわち、直流現像バイアスVavgを先に求めた最適現像条件Vavg_opに設定し(ステップS21)、露光エネルギーEを漸近領域の範囲内で変更設定しながら各エネルギー条件の下で低濃度用パッチ画像として例えば互いに離隔配置された複数の1ドットラインからなるライン画像を形成する(ステップS22〜S25)。そして、こうして形成した各パッチ画像の画像濃度をパッチセンサPSにより検出し(ステップS26)、その濃度が予め設定された低濃度用目標濃度、この実施形態では濃度OD=0.22にほぼ一致するときの露光エネルギーを求めてその値を最適露光条件としてメモリ127に記憶する(ステップS27)。
【0038】
以上のように、この実施形態によれば、高濃度側および低濃度側のそれぞれについて比較的簡単な処理によって、各パラメータについて1つずつ個別に、しかも確実にそれぞれの最適条件(最適現像条件および最適露光条件)を求めることができ、こうして最適化された画像形成条件の下で画像形成を行うことによって、画質の良好なトナー像を安定して形成することが可能となっている。その理由について、図3に示す光減衰特性に基づき詳述する。漸近領域では、既に説明したように、高濃度側の光減衰特性Chは漸近線(電位=Vr)に漸近しており、電位変動はほとんどなくコントラスト電位Vcontはほぼ一定となる。したがって、直流現像バイアスVavgを最適現像条件に設定することで露光エネルギーの大小にかかわらずトナー像の画像濃度を高濃度側目標濃度D(op)に制御することができる。
【0039】
一方、低濃度側では露光エネルギーの増大にしたがって電位の絶対値がほぼ比例的に低下するという光減衰特性Clが存在するため、直流現像バイアスVavgを最適現像条件に設定した場合、露光エネルギーの設定値に応じてコントラスト電位Vcontが異なる。しかしながら、上記のように高濃度側においては単に直流現像バイアスVavgのみを制御することで目標濃度が得られることから、低濃度側では、露光エネルギーのみを上記のようにして最適露光条件に設定することで低濃度側目標濃度に対応するコントラスト電位Vcontが得られ、トナー像の画像濃度を低濃度側目標濃度に制御することができる。
【0040】
このように、2つのパラメータ(現像条件および露光条件)について個別に、しかもそれぞれの最適条件に設定することが可能となっている。また、特に上記実施形態では最適現像条件を求める際の露光エネルギーを漸近領域に設定しているため、最適露光条件に近い状態で最適現像条件を求めることができ、精度を高めることができる。もちろん、感光体21の光減衰特性が予め既知であれば、露光エネルギーを低露光エネルギー側(図3の左手側)の値に設定した状態で最適現像条件を求めるようにしてもよいが、この場合、最終的に最適露光条件が漸近領域に設定されることを考慮した上で最適現像条件を求める必要がある。したがって、より精度良く、しかも簡単に最適現像条件を求めるためには、上記実施形態のごとく露光エネルギーを漸近領域に設定するのが好適である。
【0041】
また、上記のようにして最適化された画像形成条件の下でトナー像形成を行うことにより、高濃度から低濃度まで広範な濃度範囲にわたって画質の良好なトナー像を安定して形成することができる。このように、高濃度側および低濃度側について最適な濃度に合わせることができるので、トナー量を所定範囲に収めることができ、色再現性、文字再現性を向上させることができる。それに加え、必要以上にトナー量が増大しないため、散り、中抜け、定着器へのトナー付着などの不具合を効果的に防止することができる。
【0042】
また、一のパラメータのみを変化させながら形成したパッチ画像の濃度からそのパラメータの最適値を見出すことができるので、簡単な制御でかつ短時間で処理を行うことができる。
【0043】
また、上記実施形態では、高濃度側目標濃度D(op)よりも低濃度のパッチ画像を形成するとともに、各パッチ画像の濃度D(A),D(B),D(C)をパッチセンサPSにより検出しているので、各高濃度用パッチ画像、つまりベタ画像の画像濃度を高精度で検出することができる。そして、こうして高精度で検出された画像濃度に基づき高濃度側目標濃度D(op)を得るために必要となる最適現像条件を外挿的に決定しているので、高濃度目標濃度D(op)が比較的高い、つまり限界濃度D(lmt)を超える程度に高い濃度である場合でも、その目標濃度のトナー像を形成するために必要な画像形成条件を精度良く求めることができる。
【0044】
また、従来技術の如くパッチセンサPSで高濃度側目標濃度D(op)のパッチ画像を直接センシングした場合、その検出精度に問題があるために最適現像条件を誤って設定してコントラスト電位Vcontが必要以上に大きくなって高濃度側のトナー像を形成する際に必要以上にトナー付着量が多くなってしまうという問題が生じやすい。これに対し、本実施形態では、上記したように外挿的に最適現像条件を求めているので、このような問題の発生を防止してトナー付着量を適正化することができる。
【0045】
ところで、上記実施形態の如く直流現像バイアスと画像濃度との相関関係に基づき最適現像条件を外挿的に求める場合、図6に示すように、実際のトナー特性は相関関係を示す直線(1点鎖線)から乖離して、濃度に関して乖離ΔD(op)が存在するとともに、直流現像バイアスに関して乖離ΔVavg(op)が存在している。そして、目標濃度がトナー飽和濃度に近づくにしたがってそれらの乖離は大きくなる。例えば目標濃度D(op)より高い目標濃度D(op1)では、各乖離ΔD(op1)、ΔVavg(op1)は、
ΔD(op1)>ΔD(op)
ΔVavg(op1)>ΔVavg(op)
となってしまう。したがって、これらの乖離については、極力小さくなるように構成するのが望ましい。具体的には、図7に示すように、トナー飽和濃度がそれぞれDs1、Ds2、Ds3(ただし、Ds1<Ds2<Ds3)となるトナー特性を有する3種類のトナー(図中の符号T1,T2,T3)と、高濃度側目標濃度D(op)との比がそれぞれ
{Ds1/D(op)}×100=100%
{Ds2/D(op)}×100=105%
{Ds3/D(op)}×100=110%
となっている場合には、図1の構成の画像形成装置では目標濃度D(op)における乖離ΔVavg(op)のそれぞれは例えば50V、10V、3Vとなった。また、上記実施形態と同様にして求めた最適現像条件Vavg(op)で実際に形成されるトナー像の濃度と、目標濃度D(op)とのパーセント比は、トナーT1で80%、トナーT2で95%、トナーT3で98%となった。
【0046】
これらの結果から明らかなように、トナー飽和濃度が目標濃度に対して十分高くないと、相関関係に基づき求めた最適現像条件Vavg(op)で画像を形成すると、濃度不足を起こすことになり、不都合が生じる場合がある。したがって、好ましくはトナー飽和濃度が高濃度側目標濃度D(op)に対して少なくとも5%以上高いトナーを用いて画像形成を行うのが好適である。さらに好ましくはトナー飽和濃度が高濃度側目標濃度D(op)に対して少なくとも10%以上高いトナーを用いて画像形成を行う。
【0047】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記した実施形態では、高濃度用パッチ画像としてベタ画像を、また低濃度用パッチ画像として互いに離隔配置された複数の1ドットラインからなるライン画像を用いているが、パッチ画像として用いることのできる画像はこれらに限定されるものではなく、他のパターンを有する画像であってもよい。これらは使用されるトナーの特性やパッチセンサPSの感度等に応じて適宜変更されるべきものである。また、各パッチ画像の高濃度側および低濃度側目標濃度も上記の数値に限定されるものではなく、適宜変更してよい。
【0048】
また、上記実施形態では、現像ローラ31に交番電圧を現像バイアスとして印加することでトナーを感光体21に移動させて静電潜像を顕像化させる、いわゆる非接触現像方式の画像形成装置に本発明を適用しているが、直流電圧を現像バイアスとして印加する装置や接触現像方式の装置に対しても本発明を適用することができることはいうまでもない。
【0049】
また、上記実施形態では、パッチセンサPSは、感光体21から一次転写された直後の中間転写ベルト41上でパッチ画像の濃度を検出するように構成されているが、パッチセンサPSの位置は他の位置であってもよく、例えば感光体21上に形成されたパッチ画像の濃度を検出するようにしてもよい。
【0050】
さらに、上記実施形態は、4色のトナーを用いてカラー画像を形成可能な装置であったが、これ以外にも、例えば、モノクロ画像のみを形成する装置に対しても本発明を適用することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、感光体が上記した漸近領域を有することに基づき現像バイアスおよび光ビームのエネルギー密度を個別に最適化するように構成しているので、パラメータ(画像形成条件)について個別に、しかもそれぞれの最適条件に設定することが可能となっている。また、このように最適化された画像形成条件の下でトナー像形成を行うことにより、高濃度から低濃度まで広範な濃度範囲にわたって画質の良好なトナー像を安定して形成することができる。さらに、一のパラメータのみを変化させながら形成したパッチ画像の濃度からそのパラメータの最適値を見出すことができるので、簡単な制御でかつ短時間で処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1の画像形成装置に採用されている感光体の光減衰特性を示すグラフである。
【図4】図1の画像形成装置において現像ローラに印加される交番電圧の電気的特性を示す図である。
【図5】この画像形成装置のパッチ処理を示すフローチャートである。
【図6】現像バイアスとトナー像の画像濃度との関係を示す図である。
【図7】現像バイアスとトナー像の画像濃度との関係を示す図である。
【図8】パッチセンサの出力特性を示すグラフである。
【符号の説明】
3…ロータリー現像部(現像手段)
8…露光ユニット(露光手段)
12…エンジンコントローラ(制御手段)
21…感光体
31…現像ローラ(トナー担持体)
124…CPU(制御手段)
D(op)…高濃度側目標濃度
L…光ビーム

Claims (5)

  1. 帯電した感光体の表面に光ビームを露光して静電潜像を形成する露光手段と、その表面にトナーを担持するトナー担持体を有して該トナー担持体に印加される現像バイアスに応じてトナーを前記感光体表面に移動させて前記静電潜像をトナーにより顕像化する現像手段と、前記光ビームのエネルギー密度を最適露光条件に設定するとともに、前記現像バイアスを最適現像条件に設定して所定の目標濃度のトナー像を形成する制御手段と、前記トナー像の濃度を検出する濃度センサとを備える画像形成装置において、
    前記感光体の光減衰特性は、光ビームを前記感光体に照射して高濃度用パッチ画像に対応する静電潜像を形成するとき、光ビームのエネルギー密度が増大するのに伴って前記感光体の表面電位が所定の電位に漸近する漸近領域を有しており、
    前記濃度センサは高濃度側目標濃度において飽和する検出特性を有し、
    前記制御手段は、
    前記現像バイアスを多段階に変更設定しながら各バイアス値で前記高濃度用パッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて最適現像条件を求める一方、
    前記最適現像条件で現像バイアスを前記トナー担持体に印加しながら、前記漸近領域において前記光ビームのエネルギー密度を多段階に変更設定しながら各エネルギー値で低濃度用パッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて前記最適露光条件を求め、
    高濃度側目標濃度のトナー像を形成するために必要な前記最適現像条件を求めるにあたっては、当該高濃度側目標濃度よりも低濃度のパッチ画像を前記高濃度用パッチ画像として複数形成するとともに、当該パッチ画像の前記濃度センサによる検出結果から、前記バイアス値と前記パッチ画像の濃度との関係式を求め、当該関係式に基づいて前記高濃度側目標濃度に対応する前記最適現像条件を外挿的に求めることを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記高濃度用パッチ画像がベタ画像である請求項1記載の画像形成装置。
  3. 前記低濃度用パッチ画像は、互いに離隔配置された複数のドット、または互いに離隔配置された複数の1ドットラインのいずれかで構成されている請求項1または2記載の画像形成装置。
  4. 感光体の表面に光ビームを露光してその表面に静電潜像を形成するとともに、トナーを担持するトナー担持体に現像バイアスを印加して前記トナー担持体から前記感光体にトナーを移動させることで前記静電潜像を顕像化して所定の目標濃度のトナー像を形成する画像形成方法において、
    前記感光体の光減衰特性は、光ビームを前記感光体に照射して高濃度用パッチ画像に対応する静電潜像を形成するとき、光ビームのエネルギー密度が増大するのに伴って前記感光体の表面電位が所定の電位に漸近する漸近領域を有しており、
    前記トナー像を形成するのに先立って、
    (a)前記現像バイアスを多段階に変更設定しながら各バイアス値で前記高濃度用パッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて前記最適現像条件を求める工程と、
    (b)前記最適化された現像バイアスを前記トナー担持体に印加するとともに前記漸近領域において前記光ビームのエネルギー密度を多段階に変更設定しながら各エネルギー値で低濃度用パッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて前記最適露光条件を求める工程と
    を実行して前記目標濃度のトナー像を形成するために必要な現像バイアスおよび前記光ビームのエネルギー密度をそれぞれ最適現像条件および最適露光条件として求め、
    前記工程(a)において高濃度側目標濃度のトナー像を形成するために必要な前記最適現像条件を求めるにあたっては、当該高濃度側目標濃度よりも低濃度のパッチ画像を前記高濃度用パッチ画像として複数形成するとともに、高濃度側目標濃度において飽和する検出特性を有する濃度センサにより検出した当該パッチ画像の濃度検出結果から、前記バイアス値と前記パッチ画像の濃度との関係式を求め、当該関係式に基づいて前記高濃度側目標濃度に対応する前記最適現像条件を外挿的に求めることを特徴とする画像形成方法。
  5. 前記工程(a)では、前記光ビームのエネルギー密度が前記漸近領域の範囲内で設定される請求項4記載の画像形成方法。
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