JP3963109B2 - 画像形成装置および画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、静電潜像が形成される像担持体と、トナーを担持するトナー担持体とを相互に離間させた状態でトナー担持体に交番電圧を印加してトナー担持体から像担持体にトナーを移動させて静電潜像を顕像化して画像を形成する画像形成装置および画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
画像形成装置(プリンター、ファクシミリ装置および複写機など)として、非接触現像方式のものが従来より知られている。この現像方式の画像形成装置では、感光ドラムや感光体ベルトなどの感光体(像担持体)が所定方向に一定速度で回転して、その周囲に配設された帯電ユニットにより均一に帯電される。次いで感光体には露光ユニットからの光ビームが露光され、感光体上に静電潜像が形成される。そして、この感光体に形成された静電潜像は、感光体の周囲に配設された現像ユニットによって現像される。
【0003】
この現像ユニットには、帯電したトナーを担持しながら感光体と対向する現像位置にトナーを搬送する現像ローラ(トナー担持体)が感光体から離間して設けられている。そして、現像ローラに交番電圧を印加することによって現像ローラと感光体との間に交番電界を発生させ、現像ローラ上の帯電トナーを感光体に向けて飛翔させることにより、感光体上の静電潜像が顕像化される。ここで、現像ローラに交番電圧を印加する主たる理由は次の通りである。
【0004】
上記した非接触現像方式では、現像ローラ表面と感光体表面の間隙距離(以下、「ギャップ」という)に応じてトナーを現像する電界強度が変わる。したがって、安定した画像形成を行うためには、ギャップを一定に保つことが重要であり、従来より現像ローラの端部にコロを同心に装着し、このコロを感光体に押しつける等の工夫が成されていた。しかしながら、現像ローラおよび感光体のそれぞれに微小な偏心が存在することは避けられず、現像ローラの長手方向においてギャップが不均一となっている。このようにギャップの面内差が存在すると、電界強度も不均一となり、画像の濃度ムラが発生するおそれがある。また、装置動作中にギャップが変動し、電界強度の変動を引き起こして画像の濃度に変動を発生させることもある。そこで、従来装置では、非接触現像方式において、現像ローラに交番電圧を与えることでかかる問題の解消を図っている。というのも、現像ローラに印加される交番電圧の振幅がある程度大きいとき、ギャップが広くてもトナーを感光体に飛翔させるのに十分な電界が得られるため、濃度ムラが発生しにくくなるからである。
【0005】
しかしながら、ギャップの面内差による悪影響を抑制したとしても、現像ローラと感光体の径は部品毎にバラツキ、つまり個体差が存在するため、ギャップの値はそれぞれの画像形成装置毎に微妙に異なる。このため、現像ローラに印加する交番電圧の振幅を固定化したのでは、個体差に起因して良好な画像を形成することができない場合がある。例えば現像ローラの径が個体差の上限値となったとき、ギャップは比較的狭くなってしまう。したがって、ギャップの面内差による悪影響を排除するために予め交番電圧の振幅を大きく設定してしまうと、現像ローラと感光体との間で放電が発生して画像品質の低下を招いてしまうことがある。逆に、放電発生を確実に防止する観点から交番電圧の振幅を低く設定しまうと、ギャップの面内差によりギャップが広くなっている箇所でトナーを感光体に飛翔させるのに十分な電界が得られず、その結果、濃度ムラが発生してしまう。このように、交番電圧の振幅を固定化すると、濃度ムラおよび放電発生を同時に防止することが困難となっている。
【0006】
そこで、従来、例えば特開2001−27837号公報に記載されているように、実際の画像形成を行う前に交番電圧の振幅を最適化する技術が提案されている。具体的には、交番電圧の振幅を変化させながらテストパターン(本発明の「パッチ画像」に相当)を形成するとともに、それらのテストパターンの濃度に基づきギャップを推定し、さらに該ギャップに対応する振幅を最適値として設定している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来技術では、2段階のステップ、つまり
(1)複数のテストパターンを形成し、各テストパターンの濃度を測定した後、それぞれの振幅とこれに対応する濃度のデータとに基づきギャップを推定するステップと、
(2)そのギャップに対応する振幅の最適値を求めるステップと
を行う必要があり、振幅の最適化に複雑な演算処理と時間を要するという問題があった。
【0008】
また、ステップ(1)で求められるギャップは単なる推定値であるため、ステップ(2)において振幅の最適値を求める際、最適値を低めに設定せざるを得ない。というのも、ステップ(1)で求めたギャップに対応して放電を発生させない最大振幅を最適値として設定するのが望ましいのであるが、該ギャップは推定値であり誤差を含んでいるため、その誤差分だけ最大振幅から低い値を最適値として設定せざるを得ないからである。したがって、濃度ムラの解消が十分でない場合がある。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、放電発生を確実に防止しながら、濃度ムラを確実に抑えて高品質の画像を形成することができる画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる画像形成装置は、静電潜像を担持可能な像担持体と、その両端部が軸支された状態で回転駆動されるとともにトナーを担持しながら前記像担持体から離間配置される現像ローラと、前記現像ローラに交番電圧を印加して前記現像ローラから前記像担持体にトナーを移動させて前記静電潜像を顕像化して画像を形成する制御手段とを備えた画像形成装置において、前記画像の濃度を検出する濃度検出手段をさらに備え、交番電圧の振幅を増大させた際に前記像担持体と前記現像ローラとの間での放電が発生した時点の振幅を放電限界振幅としたとき、前記制御手段は、前記像担持体と前記現像ローラとのギャップに対する前記放電限界振幅を示す放電限界特性を記憶する記憶部を有し、前記放電限界特性に基づいて交番電圧の振幅を所定の変更量で段階的に増大しながら各振幅でパッチ画像を形成するとともに、振幅を1段階増大する度に振幅増大前後におけるパッチ画像の前記濃度検出手段による濃度検出結果を比較して、両パッチ画像の画像濃度の変動量が所定値以下であるときには振幅増大前の振幅を最適振幅と決定し、しかも、前記像担持体と前記現像ローラとが対向する面内における前記ギャップの相違量を面内差としたとき、前記濃度検出手段は前記現像ローラの端部に対向して前記像担持体上に形成されるパッチ画像または前記像担持体から転写媒体に転写された該パッチ画像の濃度を検出し、前記振幅の前記変更量は前記面内差に応じた前記放電限界振幅の差であることを特徴としている。
【0011】
また、この発明にかかる画像形成方法は、静電潜像が形成される像担持体と、その両端部が軸支された状態で回転駆動されるとともにトナーを担持する現像ローラとを相互に離間させた状態で前記現像ローラに交番電圧を印加して前記現像ローラから前記像担持体にトナーを移動させて前記静電潜像を顕像化して画像を形成する画像形成方法において、交番電圧の振幅を増大させた際に前記像担持体と前記現像ローラとの間での放電が発生した時点の振幅を放電限界振幅としたとき、前記像担持体と前記現像ローラとのギャップに対する前記放電限界振幅を示す放電限界特性を記憶する記憶工程と、前記放電限界特性に基づいて交番電圧の振幅を所定の変更量で段階的に増大しながら各振幅でパッチ画像を形成するとともに、振幅を1段階増大する度に振幅増大前後におけるパッチ画像の濃度の検出結果を検出して、両パッチ画像の画像濃度の変動量が所定値以下であるときには振幅増大前の振幅を最適振幅と決定する振幅決定工程とを備え、しかも、前記像担持体と前記現像ローラとが対向する面内における前記ギャップの相違量を面内差としたとき、前記振幅決定工程では、前記現像ローラの端部に対向して前記像担持体上に形成されるパッチ画像または前記像担持体から転写媒体に転写された該パッチ画像の濃度を検出し、前記振幅の前記変更量は前記面内差に応じた前記放電限界振幅の差であることを特徴としている。
【0012】
このように構成された発明(画像形成装置および画像形成方法)では、放電限界特性が予め求められており、この放電限界特性に基づき互いに異なる振幅でパッチ画像が形成されるとともに、各パッチ画像の濃度に応じて交番電圧の最適振幅が決定される。このように放電限界を考慮しながらパッチ画像が形成され、しかもそれらのパッチ画像濃度に基づき交番電圧の最適振幅が決定される。したがって、交番電圧の振幅を最適振幅に設定することで、その振幅は像担持体とトナー担持体とのギャップにかかわらず常に放電限界振幅以下となり、放電発生を確実に防止することができるとともに、濃度ムラが確実に抑えられて高品質画像の形成が可能となる。
【0013】
ここで、各パッチ画像の濃度に応じて交番電圧の最適振幅を決定するためには、例えば振幅を変更する前後におけるパッチ画像濃度を比較すればよい。というのも、パッチ画像を形成するために設定された振幅が放電限界振幅以下となっている場合には、該パッチ画像は放電発生がない状態で形成されるからである。ギャップに対し振幅が不十分だとギャップにより濃度が変化するが、ギャップに対し十分な振幅を印加すれば、ギャップにより濃度ムラがなく均一な画像が得られる。したがって、放電限界振幅以下で振幅の違いにより濃度が変化しない値を求めることで、放電発生がなく濃度ムラのない画像の形成ができる。
【0014】
さらに言えば、像担持体とトナー担持体とのギャップに対し、濃度ムラのない2つの振幅がともに放電限界振幅以下となっている場合には、いずれの振幅でパッチ画像を形成したとしても、そのパッチ画像は放電発生がない状態で形成されるため、振幅を変更する前後におけるパッチ画像濃度は放電発生の影響を受けなくなるからである。したがって、こうして得られた振幅を最適振幅とすればよい。このとき、面内差の範囲内において放電発生を確実に防止するためには、こうして得られた2つの振幅のうち小さい方の振幅を最適振幅として決定するのが望ましい。
【0017】
また、交番電圧の振幅を段階的に変更するにあたっては、例えば放電が発生し難い側、つまり低振幅側から段階的に増大させながらパッチ画像を形成するようにしてもよく、こうすることで放電発生を防止しながらパッチ画像を形成することができる。
【0018】
また、トナー担持体が、その両端部が軸支された状態で回転駆動される現像ローラである場合には、そのトナー担持体の長手方向における像担持体との間隔が端部で最も大きくなり、その部分が他の部分よりも濃度が低下して濃度ムラの発生を招きやすくなっているため、パッチ画像を現像ローラの端部に対向して像担持体上に形成するように構成するのが望ましい。そして、該パッチ画像の濃度を精度良く検出するために、像担持体上のパッチ画像、または像担持体から転写媒体に転写されたパッチ画像の濃度を読取るように濃度検出手段を構成するのが望ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる画像形成装置の3つの実施形態について説明するが、これらの実施形態の装置構成および基本動作は同一であり、交番電圧の最適振幅を決定する動作(振幅決定動作)が一部異なるのみであるので、まず両者に共通する装置の構成および動作について説明し、その後に、各実施形態に特有の動作について述べる。
【0021】
A.装置構成および基本動作
図1は、この発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像信号が制御ユニット1のメインコントローラ11に与えられると、このメインコントローラ11からの指令に応じてエンジンコントローラ12がエンジン部EGの各部を制御して複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシートSに画像信号に対応する画像を形成する。
【0022】
このエンジン部EGでは、7つのユニット:(a)感光体ユニット2;(b)イエロー現像ユニット(以下「Y現像ユニット」という)3Y;(c)マゼンタ現像ユニット(「M現像ユニット」)3M;(d)シアン現像ユニット(「C現像ユニット」)3C;(e)ブラック現像ユニット(「K現像ユニット」)3K;(f)中間転写ユニット4および(g)定着ユニット5が装置本体6に対して着脱自在となっている。そして、すべてのユニット2、3Y、3M、3C、3K、4、5が装置本体6に装着された状態で、図1に示すように、感光体ユニット2の感光体21が図1の矢印方向D1に回転するとともに、その感光体21の周りにその回転方向D1に沿って、帯電部22、現像ユニット3Y、3M、3C、3Kからなるロータリー現像部3およびクリーニング部23がそれぞれ配置される。
【0023】
7つのユニット2、3Y、3M、3C、3K、4、5のうち感光体ユニット2には感光体21、帯電部22およびクリーニング部23が収容されており、これらを一体的に装置本体6に対して着脱自在となっている。帯電部22には帯電バイアス発生部121から帯電バイアスが印加されており、感光体21の外周面を均一に帯電させる。また、この感光体ユニット2には、感光体21の回転方向D1における帯電部22の上流側にクリーニング部23が設けられており、一次転写後に感光体21の外周面に残留付着しているトナーを掻き落とす。こうして、感光体21の表面クリーニングを行っている。
【0024】
帯電部22によって帯電された感光体21の外周面に向けて露光ユニット8から光ビームLが照射される。この露光ユニット8は、図2に示すように、画像信号切換部122と電気的に接続されており、この画像信号切換部122を介して与えられる画像信号に応じて露光パワー制御部123が露光ユニット8を制御し、光ビームLを感光体21上に露光して画像信号に対応する静電潜像を感光体21上に形成する。
【0025】
このように構成された画像形成装置では、例えば、エンジンコントローラ12のCPU124からの指令に基づき、画像信号切換部122がパッチ作成モジュール125と導通している際には、パッチ作成モジュール125から出力されるパッチ画像信号が露光パワー制御部123に与えられてパッチ潜像が形成される。一方、画像信号切換部122がメインコントローラ11のCPU111と導通している際には、ホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像信号に応じて光ビームLが感光体21上に露光されて画像信号に対応する静電潜像が感光体21上に形成される。このように感光体21が本発明の「像担持体」に相当している。
【0026】
こうして形成された静電潜像はロータリー現像部3によってトナー現像される。このロータリー現像部3では、ブラック用の現像ユニット3K、シアン用の現像ユニット3C、マゼンタ用の現像ユニット3M、およびイエロー用の現像ユニット3Yが軸中心に回転自在に設けられている。そして、これらの現像ユニット3Y、3M、3C、3Kは予め決められた複数の位置に移動位置決めされるとともに、感光体21に対して選択的に現像位置で位置決めされる。図1ではブラック用の現像ユニット3Kが現像位置に位置決めされており、この位置決め状態で現像ユニット3Kに設けられた現像ローラ31が感光体21から離間した状態で対向配置されるが、その他の現像ユニット3Y、3M、3Cについても現像ユニット3Kと全く同様に現像ユニットの現像位置への位置決めにより各現像ユニットに設けられた現像ローラ31が感光体21と対向配置される。
【0027】
また、現像位置に位置決めされた現像ユニットでは、ユニットハウジング内に貯留されたトナーは本発明の「トナー担持体」に相当する現像ローラ31に担持されながら、現像位置に搬送される。そして、現像ローラ31に対して、図3に示す交番電圧が現像バイアスとして現像バイアス発生部126から印加される。ここでは、交流成分として振幅Vpp(=|Vbmax−Vbmin|)で、しかも交流成分の一周期Taに対する電位Vmax側のピーク電位期間Tbの割合、つまりデューティーパーセント(=(Tb/Ta)×100%)が60%の矩形波状の交流成分を印加している。なお、デューティーパーセントは60%に限定されず、例えば40〜80%の矩形波を用いることができ、また、交番電圧の交流成分の波形は矩形波に限定されず、正弦波、三角波などの繰り返し波形を用いることができる。また、交番電圧の振幅Vppについては後述するように各現像ユニット3Y、3M、3C、3Kごとにその個体差を考慮して最適値に設定されており、この点に関しては後で詳述する。
【0028】
この現像ローラ31への交番電圧の印加によって現像ローラ31と感光体21との間で交番電界が形成され、現像位置に選択位置決めされたユニットハウジング内のトナーが現像ローラ31から感光体21に飛翔して静電潜像を顕像化する。こうして、選択された色のトナー像が感光体21の表面に形成される。
【0029】
上記のようにして現像部3で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で中間転写ユニット4の中間転写ベルト41上に一次転写される。すなわち、中間転写ユニット4は複数のローラに掛け渡された中間転写ベルト41と、中間転写ベルト41を回転駆動する駆動部(図示省略)とを備えており、カラー画像をシートSに転写する場合には、感光体21上に形成される各色のトナー像を中間転写ベルト41上に重ね合わせてカラー画像を形成する一方、単色画像をシートSに転写する場合には、感光体21上に形成されるブラック色のトナー像のみを中間転写ベルト41上に転写して単色画像を形成する。
【0030】
また、本実施形態にかかる画像形成装置では、パッチ画像の光学濃度を検出するために、中間転写ベルト41が掛け渡された一のローラに対向してパッチセンサPSが配置されて本発明の「濃度検出手段」として機能する。特に、この実施形態では、後述する理由からパッチ画像が中間転写ベルト41の幅方向における端部に形成されるように構成され、これに伴いパッチセンサPSもローラの長手方向における端部に対向して配置されている。
【0031】
こうして中間転写ベルト41上に形成された画像については、所定の二次転写領域TR2において、カセット9から取り出されたシートS上に二次転写する。そして、トナー画像が転写されたシートSを、ヒータ(図示省略)が内蔵された定着ユニット5に導入し、ここで加熱しながら圧力を加えることによってトナーをシートSに定着させる。こうして画像が形成されたシートSは装置本体6の上面部に設けられた排出トレイ部に搬送される。
【0032】
なお、図2において、符号113はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラ11に設けられた画像メモリであり、符号127はCPU124で行う演算プログラム、CPU124における演算結果、エンジン部EGを制御するための制御データ、ならびに後述する放電限界特性や濃度飽和特性などを記憶するためのメモリ(記憶部)である。
【0033】
次に、上記のように構成された画像形成装置において、画像ムラおよび放電発生に対して交番電圧の振幅Vppが与える影響について説明する。図4は交番電圧の振幅と画像濃度との関係を示すグラフである。同図では、互いに異なるギャップGa,Gb,Gcでの上記関係が示されている。各ギャップについて着目すると、振幅Vppが比較的小さいとき(同図の左手側において)は、振幅Vppの増大に応じて画像濃度が上昇しているが、振幅Vppが所定値以上となると、画像濃度はほぼ一定となり、飽和している。例えばギャップGa,Gb,Gcでは、濃度飽和振幅Vpp_a,Vpp_b,Vpp_c以上の振幅を有する交番電圧をそれぞれ現像ローラ31に印加したとしても、いずれにおいても画像濃度は飽和し、画像濃度を一定に保つことが可能となる。すなわち、各ギャップに対する濃度飽和振幅をプロットすると、例えば図5に示す濃度飽和曲線が得られ、この濃度飽和曲線で示される値よりも高い振幅の交番電圧を現像ローラ31に印加することで画像濃度を飽和状態に維持することができる。すなわち、「濃度飽和曲線」とは、交番電圧の振幅を増大させた際に画像濃度が飽和する時点の振幅を濃度飽和振幅としたとき、感光体(像担持体)21と現像ローラ(トナー担持体)31とのギャップに対する濃度飽和振幅を示すものであり、これにより濃度飽和特性を示している。
【0034】
ここで、上記したよう画像形成装置では、例えば図6に示すように、感光体21と現像ローラ31とが対向する面内においてギャップが不均一となっており、特に現像ローラ31の長手方向においてギャップの面内差tが存在しているが、ギャップの面内差tに応じて振幅Vppを適正値に設定することで濃度ムラを解消することができる。例えばギャップ範囲がギャップGa〜Gbである場合、交番電圧の振幅を値Vpp_aに設定したのでは、ギャップの面内差により画像濃度がγ1〜γ2の範囲内で変動して濃度ムラが発生してしまうが、振幅を値Vpp_b以上に設定すると濃度ムラを効果的に防止することができる。また、個体差によりギャップ範囲が広い側にシフトしてギャップGb〜Gcとなった場合、振幅を値Vpp_c以上に設定することで濃度ムラを効果的に防止することができる。
【0035】
このように交番電圧の振幅を大きくすることによってギャップの面内差や個体差による濃度ムラを防止することが可能であるが、交番電圧の振幅を大きくした場合、感光体21と現像ローラ31との間での放電発生が問題となってくる。すなわち、図5に示した放電限界線を超えて振幅を大きくすると、放電が発生してしまい画像品質を著しく低下させてしまう。なお、この「放電限界線」は、交番電圧の振幅を増大させた際に感光体(像担持体)21と現像ローラ(トナー担持体)31との間での放電が発生した時点の振幅を放電限界振幅としたとき、ギャップに対する放電限界振幅を示すものであり、これにより放電限界特性を示している。
【0036】
このように、濃度ムラを解消するためには交番電圧の振幅を大きくするのが望ましい一方、放電発生を防止するためには交番電圧の振幅を小さくするのが望ましく、これらの要望をバランスよく、しかも簡単に満足されて放電発生を確実に防止しながら、濃度ムラを確実に抑えて高品質の画像を形成するのが望まれる。そこで、以下の説明する実施形態ではメモリ127に予め記憶された振幅決定用プログラムにしたがって装置各部を制御して上記要望が満足されている。以下、3つの実施形態に分けて説明する。
【0037】
B.第1実施形態
図7および図8は、この発明の第1実施形態を示す図であり、図1の画像形成装置において交番電圧の振幅を決定する動作を示すフローチャートである。この装置では、現像ユニットが装置本体6に新たに装着されると、メモリ127に記憶されている振幅決定用のプログラムにしたがってエンジンコントローラ12が装置各部を制御して交番電圧の振幅を決定する。なお、ここでは、装置本体6への現像ユニットの装着時に振幅決定動作を行っているが、その他のタイミング、例えば感光体ユニット2を交換した時にも振幅決定動作を行うようにしてもよい。
【0038】
この振幅決定動作では、交番電圧の振幅Vppを最小ギャップG1n(=Gmin)での放電限界振幅Vpp_1に設定する(ステップS1)。この設定値については任意に設定することが可能であるが、以下の理由から放電限界振幅Vpp_1に設定するのが好適である。すなわち、感光体21や現像ローラ31の設計段階でギャップの面内差および個体差は予め設定されているため、ギャップ範囲も当然に既知である。また、図5に示すように最大ギャップGmaxおよび最小ギャップGminも予め既知であり、ギャップGminに対する放電限界振幅Vpp_1も実験などにより既知となっている。したがって、放電限界振幅Vpp_1に設定すれば、現像ローラ31の装着状態にかかわらず、後述するようにパッチ画像を形成する際に放電が発生するのを確実に防止することができる。
【0039】
次のステップS2では、振幅Vpp_1を有する交番電圧を現像ローラ31に印加してパッチ画像を感光体21上に形成した後、そのパッチ画像を中間転写ベルト41に1次転写する。そして、そのパッチ画像の光学濃度D1をパッチセンサPSで読取り、メモリ127に一時的に記憶する。
【0040】
このとき、実際に装置本体6に装着された現像ローラ31と感光体21とのギャップ範囲(Gn〜Gw)が例えば図9(a)に示すように振幅Vpp_1での濃度飽和ギャップG1dよりも狭ギャップ側(同図左側)に位置している場合には、そのギャップ範囲内ではいずれのギャップ位置においても振幅Vpp_1は濃度飽和振幅以上となっており、画像全体にわたって画像濃度は飽和状態となり濃度ムラは発生していない。また、振幅Vpp_1は最小ギャップGminに対応する放電限界振幅であるため、そのギャップ範囲内ではいずれのギャップ位置においても放電は発生していない。
【0041】
これに対し、同図(b)に示すようにパッチ画像形成位置(現像ローラ31の端部に対応する位置)でのギャップGwが振幅Vpp_1での濃度飽和ギャップG1dよりも広ギャップ側(同図の右側)に位置している場合には、振幅Vpp_1は少なくともギャップGwでの濃度飽和振幅Vpp_wよりも小さく、濃度は飽和状態に達していない。したがって、画像形成位置での画像濃度は面内差tにおいてギャップが狭くなっている側の画像濃度よりも低く、濃度ムラは生じている。
【0042】
上記のようにして振幅Vpp_1でのパッチ画像の作成および濃度検出が完了すると、ステップS3〜S9を実行して振幅Vppを面内差tに相当する分だけ1段階増大させた振幅Vpp_2に設定した状態でパッチ画像を形成するとともに、該パッチ画像の光学濃度D2を検出する。より具体的には、まずステップS3でカウント値mを初期値である「2」に設定した後、次のステップS4でギャップG1nに面内差tを加算してギャップG1w(=G2n)を求める(図5参照)。さらに、そのギャップG2nでの放電限界振幅Vpp_2を求める(ステップS5)。なお、この実施形態では振幅決定動作の終了条件を確認するため、ステップS4で求めたギャップGmnが最大ギャップGmax以下であるか否かを判定している(ステップS8)。例えば図5に示すようにm=2でのギャップG2nは最大ギャップGmax以下となっているので、ステップS7に進んで交番電圧の振幅VppをステップS5で求めた振幅Vpp_2に設定する。なお、振幅決定動作の終了条件を確認する方法については、これに限定されるものではなく、例えば振幅Vpp_mが最大ギャップGmaxでの放電限界振幅を超えることを振幅決定動作の終了条件としてもよい。
【0043】
そして、その振幅Vpp_2を有する交番電圧を現像ローラ31に印加してパッチ画像を感光体21上に形成した後、そのパッチ画像を中間転写ベルト41に1次転写する。そして、そのパッチ画像の光学濃度D2をパッチセンサPSで読取り、メモリ127に一時的に記憶する(ステップS8)。さらに、メモリ127から振幅Vppを変更する前後の光学濃度D1,D2を読出し、両者の濃度差(=|D2−D1|)を求める(ステップS9)。このとき、振幅Vpp_1でパッチ画像を形成した場合と同様に、実際に装置本体6に装着された現像ローラ31と感光体21とのギャップ範囲(Gn〜Gw)と、振幅Vpp_2での濃度飽和ギャップG2dとの相対関係により光学濃度D2は異なるが、例えば図9に示すようにギャップ範囲が濃度飽和ギャップG2dよりも狭ギャップ側(同図左側)に位置している場合には、そのギャップ範囲内ではいずれのギャップ位置においても振幅Vpp_2は濃度飽和振幅以上となっており、画像全体にわたって画像濃度は飽和状態となり濃度ムラは発生していない。そのため、光学濃度D1,D2を比較することで上記ギャップ範囲を特定することができる。
【0044】
そこで、この実施形態では光学濃度D1,D2の濃度差(=|D2−D1|)が所定値以下に収まっているか否かに基づいて実際に装置本体6に装着された現像ローラ31と感光体21とのギャップ状態を求めている(ステップS10)。このステップS10で濃度差がゼロあるいは小さい値であり、所定値以下となっていると判定する、つまり図9(a)のように振幅Vpp_1,Vpp_2のいずれの振幅に設定したとしてもギャップ範囲(Gn〜Gw)全体にわたって画像濃度が飽和状態となっていると判定されると、2つのうち低振幅側の振幅Vpp_1を最適振幅として決定する(ステップS11)。
【0045】
一方、ステップS10で濃度差が所定値を超えている、つまり図9(b)のように振幅Vpp_1で濃度が飽和していない、あるいは振幅Vpp_1,Vpp_2とも濃度が飽和していないと判定されると、カウント値mを「1」だけインクリメントしてステップS4に戻って上記処理(ステップS4〜S12)を繰り返す。ここで、振幅Vpp_1,Vpp_2とも濃度が飽和していない場合については上記において説明を省略したが、このような場合、振幅Vppの増大につれて画像濃度が高くなるため、両者の濃度差は顕著なものとなり、ステップS10によりその状態を正確に判定することができる。
【0046】
なお、ステップS6でギャップGmnが最大ギャップGmaxを超えていると判断した場合、その振幅Vpp_mを最適振幅として決定することができる(ステップS13)。
【0047】
以上のように、この第1実施形態によれば、放電限界特性(放電限界線)に基づき互いに異なる振幅Vpp_1,Vpp_2,…でパッチ画像を形成するとともに、各パッチ画像の光学濃度D1,D2,…に応じて交番電圧の最適振幅を決定しており、実際に装置本体6に装着された現像ローラ31と感光体21とのギャップに対して交番電圧の振幅を調整適合させることができ、その最適振幅に設定することで、常に放電限界以下で、しかも濃度が飽和した状態で画像を形成することができる。その結果、放電発生および濃度ムラを確実に抑えて高品質画像が得られる。
【0048】
また、上記実施形態では、振幅VppをVpp_(m-1)からVpp_mに1段階変更するたびに、変更後の振幅Vpp_mでパッチ画像を新たに感光体21上に形成するとともに、そのパッチ画像の光学濃度DmをパッチセンサPSで読取り(ステップS10)、各振幅Vpp_(m-1),Vpp_mでのパッチ画像の濃度D(m-1),Dmを比較して最適振幅を決定している(ステップS8,S9)。そして、最適振幅が決定された時点(ステップS10で「YES」と判定された時点)で、さらなる処理(ステップS4〜S10)の繰り返しを中止しているので、パッチ画像の個数や読取り回数などを抑えることができる。
【0049】
また、上記実施形態では、現像ローラ31は、その両端部が軸支された状態で回転駆動されるように構成されているので、その現像ローラ31の長手方向における感光体21とのギャップが端部で最も大きくなり、その部分が他の部分よりも濃度が低下して濃度ムラの発生を招きやすくなっているため、パッチ画像を現像ローラ31の端部に対向して感光体21上に形成している。
【0050】
また、上記実施形態では、交番電圧の振幅Vppを段階的に変更するにあたっては、放電が発生し難い側、つまり低振幅側から段階的に増大させながらパッチ画像を形成しているので、放電発生を防止しながらパッチ画像を形成することができる。
【0051】
また、上記実施形態では振幅Vppの変更量を面内差tに応じた放電限界振幅の差に設定しているが、その差よりも小さな値に設定してもよい。いすれの場合、つまり振幅Vppの変更量を上記差以下に設定することでギャップ範囲が最小ギャップGminから最大ギャップGmaxまでのいずれに位置したとしても交番電圧の最適振幅を決定することができる。ここで、「面内差tに応じた放電限界振幅の差」とは、図10に示すように、ギャップ範囲を範囲(G(m-1)n〜G(m-1)w)から面内差tだけ広ギャップ側にシフトさせて範囲(Gmn〜Gmw)に変更するために必要となる振幅差を意味しており、具体的にはギャップG(m-1)wでの放電限界振幅Vpp_(m-1)と、ギャップGmwでの放電限界振幅Vpp_mとの差(=Vpp_m−Vpp_(m-1))である。
【0052】
さらに、この実施形態にかかる装置では、各振幅Vppでの放電限界ギャップと濃度飽和ギャップとの差ΔGは、図10に示すように、
…
Vpp_(m-1):ΔG(m-1)=G(m-1)w−G(m-1)s
Vpp_m :ΔGm =Gmw−Gms
…
であるが、いずれの振幅においても差ΔGが面内差tよりも大きくなるように構成されている。したがって、上記のようにして振幅決定動作を行うことで画像形成条件を放電限界線と濃度飽和曲線とで挟まれた範囲(同図の斜線領域)に収めることができ、放電発生を確実に防止しながら、濃度ムラを確実に抑えて高品質の画像を形成することができる。
【0053】
C.第2実施形態
図11および図12は、この発明の第2実施形態を示す図であり、図1の画像形成装置において交番電圧の振幅を決定する動作を示すフローチャートである。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、広ギャップ側から振幅Vppを変更設定している点であり、振幅決定動作を実行することで第1実施形態と同様の作用効果を奏している。以下、第2実施形態の詳細について説明する。
【0054】
この実施形態においても、現像ユニットが装置本体6に新たに装着されることでメモリ127に記憶されている振幅決定用のプログラムにしたがってエンジンコントローラ12が装置各部を制御して交番電圧の振幅を決定しているが、その他のタイミング、例えば感光体ユニット2を交換した時にも振幅決定動作を行うようにしてもよい。
【0055】
この振幅決定動作では、最大ギャップG1w(=Gmax)から面内差tを差し引いたギャップG1nを求め、このギャップG1nでの放電限界振幅Vpp_1を、交番電圧の振幅Vppとして設定する(ステップS21:図13参照)。そして、振幅Vpp_1を有する交番電圧を現像ローラ31に印加してパッチ画像を感光体21上に形成した後、そのパッチ画像を中間転写ベルト41に1次転写する。さらに、そのパッチ画像の光学濃度D1をパッチセンサPSで読取り、メモリ127に一時的に記憶する(ステップS22)。このとき、実際に装置本体6に装着された現像ローラ31と感光体21とのギャップ範囲が例えば図14(a)に示すようにギャップ範囲(Gn〜Gw)が最大ギャップGmaxに近い、つまり現像ローラ31が感光体21から比較的離れて配置されている場合には、その振幅Vpp_1はギャップGwでの放電限界振幅Vpp_sよりも小さく、しかも濃度飽和振幅Vpp_dよりも大きくなっているため、放電および濃度ムラを発生させることなく、パッチ画像が形成される。
【0056】
これに対し、同図(b)に示すようにギャップ範囲(Gn〜Gw)が最大ギャップGmaxから離れると、つまり現像ローラ31が感光体21から比較的近接して配置されている場合には、その振幅Vpp_1はギャップGwでの放電限界振幅Vpp_sよりも高くなるため、放電が発生してしまい、所望のパッチ画像を得ることができない。
【0057】
上記のようにして振幅Vpp_1でのパッチ画像の作成および濃度検出が完了すると、ステップS23〜S28を実行して振幅Vppを1段階だけ増大させた振幅Vpp_2に設定した状態でパッチ画像を形成するとともに、該パッチ画像の光学濃度D2を検出する。より具体的には、まずステップS23でカウント値mを初期値である「2」に設定した後、次のステップS24でギャップG1n(=G2w)から面内差tを差し引いてギャップG2nを求める(図13参照)。そして、ギャップG2nでの放電限界振幅Vpp_2を求める(ステップS25)。なお、この実施形態では振幅決定動作の終了条件を確認するため、ステップS26でギャップGmnが最小ギャップGmin以上であるか否かを判定している。例えば図13に示すようにm=2でのギャップG2nは最小ギャップGmin以上となっているので、ステップS27に進んで交番電圧の振幅VppをステップS25で求めた振幅Vpp_2に設定する。
【0058】
そして、その振幅Vpp_2を有する交番電圧を現像ローラ31に印加してパッチ画像を感光体21上に形成した後、そのパッチ画像を中間転写ベルト41に1次転写する。そして、そのパッチ画像の光学濃度D2をパッチセンサPSで読取り、メモリ127に一時的に記憶する(ステップS28)。さらに、メモリ127から振幅Vppを変更する前後の光学濃度D1,D2を読出し、両者の濃度差(=|D2−D1|)を求める(ステップS29)。このとき、振幅Vpp_1でパッチ画像を形成した場合と同様に、実際に装置本体6に装着された現像ローラ31と感光体21とのギャップ範囲と、振幅Vpp_2での濃度飽和ギャップG2wとの相対関係により光学濃度D2は異なるが、例えば図14に示すようにギャップ範囲が濃度飽和ギャップG2wに近接している場合には、そのギャップ範囲内ではいずれのギャップ位置においても振幅Vpp_2は放電限界振幅よりも小さく、しかも濃度飽和振幅よりも大きくなっているため、放電および濃度ムラを発生させることなく、パッチ画像を形成することができる。そのため、光学濃度D1,D2を比較することで上記ギャップ範囲を特定することができる。
【0059】
そこで、この実施形態では光学濃度D1,D2の濃度差(=|D2−D1|)が所定値以下に収まっているか否かに基づいて実際に装置本体6に装着された現像ローラ31と感光体21とのギャップ状態を求めている(ステップS30)。このステップS30で濃度差がゼロあるいは小さい値であり、所定値以下となっていると判定する、つまり図14(a)のように振幅Vpp_1,Vpp_2のいずれの振幅に設定したとしてもギャップGwでは放電が発生せず、ギャップ範囲全体にわたって画像濃度が飽和状態となっていると判定されると、2つのうち低振幅側の振幅Vpp_2を最適振幅として決定する(ステップS31)。
【0060】
一方、ステップS30で濃度差が所定値を超えている、つまり図14(b)のように振幅Vpp_1で放電が発生していると判定されると、カウント値mを「1」だけインクリメントしてステップS24に戻って上記処理(ステップS24〜S32)を繰り返す。
【0061】
なお、ステップS26で振幅Vpp_mが最小ギャップGminでの放電限界振幅Vpp_minを下回っている場合、その振幅Vpp_mを最適振幅として決定することができる(ステップS33)。
【0062】
D.第3実施形態
上記した第1および第2実施形態では、振幅VppをVpp_(m-1)からVpp_mに1段階変更するたびに、変更後の振幅Vpp_mでパッチ画像を形成し、そのパッチ画像の濃度Dmと、変更前のパッチ画像の濃度D(m-1)とを比較して最適振幅を決定しているが、例えば振幅Vppを多段階に変更しながら、各振幅でパッチ画像を形成するとともに、各パッチ画像の濃度を一括して読取った上で各振幅でのパッチ画像の濃度を比較して最適振幅を決定するようにしてもよい。以下、この発明の第3実施形態について、図15を参照しつつ詳述する。
【0063】
図15は、この発明の第3実施形態を示す図であり、図1の画像形成装置において交番電圧の振幅を決定する動作を示すフローチャートである。この実施形態では、まず上記第1および第2実施形態と同様に濃度飽和特性に基づき互いに異なる複数の振幅Vpp_1,Vpp_2,…を設定する(ステップS41)。そして、各振幅Vpp_1,Vpp_2,…でパッチ画像を形成するとともに、各パッチ画像の光学濃度D1,D2,…を検出する(ステップS42)。
【0064】
次のステップS43で、変更前後のパッチ画像間での濃度差を次式、つまり
ΔD12=|D1−D2|
ΔD23=|D2−D3|
…
ΔD(m-1)m=|D(m-1)−Dm|
に基づき求める。それに続いて、これらの濃度差のうち所定値以下となるものを選択し、その選択結果に基づき低振幅側の振幅を最適振幅として決定する(ステップS44)。例えば、第1実施形態のごとく、設定振幅Vpp_1,…が
Vpp_1<…<Vpp_(r-1)<Vpp_r…<Vpp_max
ただし、2≦r≦max
となっている場合に、ΔD(r-1)rのみが所定値以下となったときには振幅Vpp_(r-1)を最適振幅とすればよく、また全ての濃度差が所定値を超えているときにはVpp_maxを最適振幅とすればよい。
【0065】
一方、第2実施形態のごとく、設定振幅Vpp_1,…が
Vpp_1>…>Vpp_(r-1)>Vpp_r…>Vpp_max
ただし、2≦r≦max
となっている場合に、ΔD(r-1)rのみが所定値以下となったときには振幅Vpp_rを最適振幅とすればよく、また全ての濃度差が所定値を超えているときにはVpp_maxを最適振幅とすればよい。
【0066】
なお、複数の濃度差が所定値以下となったときにはそれらの振幅のうち最も低振幅側の振幅を最適振幅として決定することができる。
【0067】
以上のように、第3実施形態によれば、実際に装置本体6に装着された現像ローラ31と感光体21とのギャップに対して交番電圧の振幅を調整適合させることができ、その最適振幅に設定することで、常に放電限界以下で、しかも濃度が飽和した状態で画像を形成することができる。その結果、放電発生および濃度ムラを確実に抑えて高品質画像が得られる。
【0068】
また、第1および第2実施形態とは異なり、パッチ画像の作成および濃度検出を一括して行うように構成しているので、(1)振幅の1段階変更、(2)変更後の振幅でのパッチ画像形成および(3)変更前後のパッチ画像濃度の比較からなるサブ工程を繰り返す必要がなくなり、処理ルーチンを簡素化することができる。
【0069】
E.その他
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、現像ユニット3Y、3M、3C、3Kのそれぞれにメモリなどの記憶手段を取り付けている場合には、現像ユニットごとに上記のようにして求められた交番電圧の最適振幅に関連する振幅データ(最適振幅Vppそのもの、または最適振幅Vppを示すコードなどの情報)を記憶しておくことができる。したがって、装置起動時に、振幅決定動作を行ってもよいし、あるいはメモリから振幅データを読み出し、上記振幅決定動作を実行することなく振幅データに基づき交番電圧の最適振幅を設定するようにしてもよい。また、例えば紙詰まり処理を実行するために装置本体6から一旦取り外されていた現像ユニットを装置本体6に戻した際に、上記実施形態と同様に装置本体6への現像ユニットの装着のたびに振幅決定動作を行ってもよいし、あるいは現像ユニットの装着に応じて該現像ユニットに取り付けられたメモリから振幅データを読出し、上記した振幅決定動作を実行することなく、振幅データに基づき交番電圧の振幅を設定するようにしてもよい。特に、後者の場合には、振幅決定動作が不要となるので、装置本体6への現像ユニットの装着後、直ちに通常動作を行うことができ、画像形成動作を短時間で実行することができ、効率的である。
【0070】
また、上記実施形態では、中間転写ベルト41上に形成されるパッチ画像の濃度に基づき交番電圧の振幅を決定しているが、感光体21上に形成されるパッチ画像の濃度を測定し、該測定結果から交番電圧の最適振幅を決定するようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、感光体21上に形成されたトナー像を中間転写ベルト41上に転写しているが、中間転写ベルト以外の転写媒体(転写ドラム、転写ベルト、転写シート、中間転写ドラム、中間転写シートなど)にトナー像を転写してカラー画像を形成する画像形成装置にも本発明を適用することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、4色のトナーを用いたカラー画像を形成することができる画像形成装置であったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、モノクロ画像のみを形成する画像形成装置にも当然に適用することができる。
【0073】
さらに、上記実施形態にかかる画像形成装置は、ホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシートに形成するプリンタであるが、本発明は複写機やファクシミリ装置などの電子写真方式の画像形成装置全般に適用することができる。
【0074】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、放電限界特性を予め求めておき、この放電限界特性に基づき互いに異なる振幅でパッチ画像を形成するとともに、各パッチ画像の濃度に応じて交番電圧の最適振幅を決定するように構成しているので、常に放電限界を考慮しながら交番電圧の最適振幅を決定する。しかも、その最適振幅をそのまま画像を形成する際の交番電圧の振幅として設定することによって、像担持体とトナー担持体とのギャップにかかわらず、その振幅は常に放電限界振幅以下となり、放電発生を確実に防止することができるとともに、濃度ムラが確実に抑えられて高品質画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1の画像形成装置において現像ローラに印加される交番電圧の電気的特性を示す図である。
【図4】交番電圧の振幅と画像濃度との関係を示すグラフである。
【図5】種々のギャップに対する濃度飽和振幅および放電限界振幅を示すグラフである。
【図6】図1の画像形成装置において使用されている現像ローラと感光体との関係を示す図である。
【図7】この発明の第1実施形態を示すフローチャートである。
【図8】この発明の第1実施形態を示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態にかかる振幅決定動作を示す図である。
【図10】この発明にかかる画像形成装置の変形例を示す図である。
【図11】この発明の第2実施形態を示すフローチャートである。
【図12】この発明の第2実施形態を示すフローチャートである。
【図13】種々のギャップに対する濃度飽和振幅および放電限界振幅を示すグラフである。
【図14】第1実施形態にかかる振幅決定動作を示す図である。
【図15】この発明の第3実施形態を示す図である。
【符号の説明】
3C,3K,3M,3Y…現像ユニット
6…装置本体
12…エンジンコントローラ(制御手段)
21…感光体(像担持体)
31…現像ローラ(トナー担持体)
41…中間転写ベルト(転写媒体)
127…メモリ(記憶部)
Gmin…最小ギャップ
PS…パッチセンサ(濃度検出手段)
Vpp…(交番電圧の)振幅
t…(ギャップの)面内差
Claims (2)
- 静電潜像を担持可能な像担持体と、その両端部が軸支された状態で回転駆動されるとともにトナーを担持しながら前記像担持体から離間配置される現像ローラと、前記現像ローラに交番電圧を印加して前記現像ローラから前記像担持体にトナーを移動させて前記静電潜像を顕像化して画像を形成する制御手段とを備えた画像形成装置において、
前記画像の濃度を検出する濃度検出手段をさらに備え、
交番電圧の振幅を増大させた際に前記像担持体と前記現像ローラとの間での放電が発生した時点の振幅を放電限界振幅としたとき、
前記制御手段は、前記像担持体と前記現像ローラとのギャップに対する前記放電限界振幅を示す放電限界特性を記憶する記憶部を有し、前記放電限界特性に基づいて交番電圧の振幅を所定の変更量で段階的に増大しながら各振幅でパッチ画像を形成するとともに、振幅を1段階増大する度に振幅増大前後におけるパッチ画像の前記濃度検出手段による濃度検出結果を比較して、両パッチ画像の画像濃度の変動量が所定値以下であるときには振幅増大前の振幅を最適振幅と決定し、しかも、
前記像担持体と前記現像ローラとが対向する面内における前記ギャップの相違量を面内差としたとき、
前記濃度検出手段は前記現像ローラの端部に対向して前記像担持体上に形成されるパッチ画像または前記像担持体から転写媒体に転写された該パッチ画像の濃度を検出し、
前記振幅の前記変更量は前記面内差に応じた前記放電限界振幅の差であることを特徴とする画像形成装置。 - 静電潜像が形成される像担持体と、その両端部が軸支された状態で回転駆動されるとともにトナーを担持する現像ローラとを相互に離間させた状態で前記現像ローラに交番電圧を印加して前記現像ローラから前記像担持体にトナーを移動させて前記静電潜像を顕像化して画像を形成する画像形成方法において、
交番電圧の振幅を増大させた際に前記像担持体と前記現像ローラとの間での放電が発生した時点の振幅を放電限界振幅としたとき、
前記像担持体と前記現像ローラとのギャップに対する前記放電限界振幅を示す放電限界特性を記憶する記憶工程と、
前記放電限界特性に基づいて交番電圧の振幅を所定の変更量で段階的に増大しながら各振幅でパッチ画像を形成するとともに、振幅を1段階増大する度に振幅増大前後におけるパッチ画像の濃度の検出結果を検出して、両パッチ画像の画像濃度の変動量が所定値以下であるときには振幅増大前の振幅を最適振幅と決定する振幅決定工程と
を備え、しかも、
前記像担持体と前記現像ローラとが対向する面内における前記ギャップの相違量を面内差としたとき、
前記振幅決定工程では、前記現像ローラの端部に対向して前記像担持体上に形成されるパッチ画像または前記像担持体から転写媒体に転写された該パッチ画像の濃度を検出し、
前記振幅の前記変更量は前記面内差に応じた前記放電限界振幅の差であることを特徴とする画像形成方法。
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