JP4171532B2 - センタ穴加工方法および軸状物加工装置 - Google Patents

センタ穴加工方法および軸状物加工装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は軸状物の両端面を切削加工するとともに加工後の両端面にそれぞれセンタ穴を加工する方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
軸状物の切削,研削等機械加工の多くは、その軸状物の両端面に設けられたセンタ穴にセンタを嵌入させることにより軸状物の心出しを行った状態で行われる。そのため、軸状物の加工工程の比較的初期の段階で、両端面を切削加工するとともに加工後の両端面にそれぞれセンタ穴を加工することが行われており、これらの加工専用の装置として、センタ穴加工装置が知られている。このセンタ穴加工装置は、それぞれ2本ずつの主軸を有して互いに対向する2つの主軸台と、それら2つの主軸台を主軸の軸線に平行な方向に移動させる主軸台移動装置と、軸状物をその軸状物の軸線が主軸の軸線と平行になる姿勢で保持するチャックと、そのチャックを主軸の軸線と平行な方向と直角な方向とに移動させるチャック移動装置とを含むように構成される。2つの主軸台の、互いに同心に対向する2対の主軸の1対に端面切削工具を、他の1対にセンタドリルをそれぞれ保持させる一方、チャックに軸状物を保持させ、主軸台移動装置とチャック移動装置とにより2つの主軸台とチャックとを移動させて、2つの端面切削工具と軸状物とを、2つの端面切削工具が軸状物の両端面を切削加工して軸状物を所定の長さにする相対位置とし、その相対位置を保ってチャック移動装置によりチャックを主軸の軸線と直交する方向に移動させれば、軸状物の両端面が同時に切削加工される。その後、軸状物が2つのセンタドリルと同心の状態でそれら2つのセンタドリル間に位置するようにチャックをチャック移動装置により移動させた上、2つの主軸台を互いに接近させれば、軸状物の両端面に2つのセンタ穴が同時に加工される。
【0003】
このように、センタ穴加工装置によれば、軸状物の両端の端面の切削加工とセンタ穴の加工とを能率良く行うことができる。しかし、このセンタ穴加工装置は、主軸台とそれを移動させる主軸台移動装置とを2組備えているため、構造が複雑になり設備コストが高くなることを避け得ない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段,作用および効果】
本発明は、以上の事情を背景として、設備コストを比較的低く抑えながら、軸状物の両端面の切削加工とセンタ穴加工とを比較的能率よく行い得るセンタ穴加工方法およびその方法の実施に好適な軸状物加工装置を得ることを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様のセンタ穴加工方法および軸状物加工装置が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。各項に記載の特徴の組合わせの可能性を明示するためである。
なお、以下の各項のうち、 (2) 項に段落〔0012〕および〔0013〕に記載の特徴を追加したものが請求項1に相当し、その請求項1に (4) 項の特徴を追加したものが請求項2に、それら請求項1または2に (9) 項および段落〔0010〕に記載の特徴を追加したものが請求項3に、その請求項3に段落〔0012〕および〔0013〕に記載の特徴を追加したものが請求項4に、請求項1ないし4のいずれかに (6) 項の特徴を追加したものが請求項5に、請求項1ないし5のいずれかに (1) 項の特徴を追加したものが請求項6に、それぞれ相当する。
(1)互いに平行に配設され、それぞれ回転駆動される少なくとも2本の回転軸に、センタ穴ドリルと端面切削工具とをそれぞれ保持させる一方、前記回転軸の軸線に対して直角な回転軸線のまわりに回転可能なチャックに、前記回転軸の軸線と平行に軸状物を保持させ、チャックと前記端面切削工具を保持させた回転軸との相対移動と端面切削工具の回転とを伴って軸状物の第1端面を前記端面切削工具により端面切削加工した後、その第1端面を前記センタ穴ドリルに同軸に対向させてセンタ穴加工を行い、さらに、前記チャックの180度の回転により軸状物の前記第1端面とは反対側の第2端面を前記端面切削工具と前記センタ穴ドリルとに対向可能な姿勢とし、その姿勢で第2端面の端面切削加工とセンタ穴加工とを順次行うセンタ穴加工方法。
このように軸状物の一方の端面に対する端面切削加工とセンタ穴加工とを行った後、チャックの180度の回転により軸状物を反転させ、反対側の端面に対する端面切削加工とセンタ穴加工とを行えば、前述の2つの主軸台を備え、専用で高価なセンタ穴加工装置を使用することなく、それに似た加工を実施することができる。片側ずつの端面に対して順次ではあるが、端面切削加工に続いてセンタ穴加工を行うことができるのであり、能率よくセンタ穴加工を行うことができる。しかも、次項以下に記載するように、それぞれ回転駆動される複数本の回転軸を備えた加工ヘッドを備えた切削加工装置は、軸状物の加工に広く使用されている汎用的な装置であり、この装置に、回転軸の軸線に対して直角な回転軸線のまわりに回転可能なチャックを設ければ、本センタ穴加工方法の実施が可能になるため、安価な設備により軸状物の両端面に対する端面切削加工とセンタ穴加工とを能率よく行うことができることになる。
(2)互いに平行に配設され、それぞれ回転駆動される少なくとも2本の回転軸を備えた加工ヘッドと、
前記回転軸の軸線に対して直角な回転軸線のまわりに回転可能であり、自身の回転軸線と直角に軸状物を保持するチャックと、
そのチャックを、少なくとも、そのチャックに保持された軸状物の互いに反対側の第1端面と第2端面とがそれぞれ前記回転軸と対向する2回転位置へ回転させるチャック回転装置と、
前記加工ヘッドと前記チャックとを、少なくとも前記回転軸の軸線に平行な方向と直角な一方向とに相対移動させ、チャックに保持された軸状物を前記少なくとも2本の回転軸の少なくとも一方と同軸に対向させる移動装置と
を含む軸状物加工装置。
上記2本の回転軸の一方に端面切削工具を、他方にセンタドリルをそれぞれ取り付ければ、前項に記載のセンタ穴加工方法を実施することができる。移動装置が、加工ヘッドとチャックとを、回転軸の軸線に平行な方向と直角な一方向とに相対移動させ得るものであれば、端面切削工具およびセンタドリルと軸状物との軸方向位置を変更することと、軸状物を端面切削のために端面切削工具に対して相対移動させることと、軸状物を端面切削工具に対向する位置とセンタドリルに対向する位置とへ移動させることとが可能になる。ただし、上記回転軸の軸線に直角な一方向を、2本の回転軸が並ぶ方向に選定することが必要である。
上記チャック回転装置は、例えばサーボモータ等の電動モータを駆動源とし、チャックを任意の角度回転させ、任意の回転位置で固定し得るものでもよく、例えば油圧揺動モータや、油圧シリンダとラック・ピニオンとの組合わせ等によりチャックを180度のみ回転させ得るものとしてもよい。少なくとも、チャックを、そのチャックに保持された軸状物の互いに反対側の第1端面と第2端面とがそれぞれ前記回転軸と対向する2回転位置へ回転させ得るものであればよいのである。
(3)前記移動装置が、前記加工ヘッドとチャックとを、前記回転軸の軸線と直交する平面内において互いに直交する2軸に平行な方向に移動させる直交2軸方向移動装置を含む (2)項に記載の軸状物加工装置。
本態様によれば、上記ただし書きの条件が不可欠ではなくなる。
(4)前記移動装置が、
前記加工ヘッドを前記回転軸の軸線に平行なX軸方向とそのX軸方向に直角なZ軸方向とに移動させる加工ヘッド移動装置と、
前記チャックを前記X軸方向および前記Z軸方向に直角なY軸方向に移動させるチャック移動装置と
を含む (3)項に記載の軸状物加工装置。
(5)前記加工ヘッド移動装置が、水平なZ軸方向に移動するZ軸スライドと、そのZ軸スライド上において水平なX軸方向に移動し、前記加工ヘッドを支持するX軸スライドとを備え、前記チャック移動装置が、垂直なY軸方向に移動するY軸スライドを備えた (4)項に記載の軸状物加工装置。
(6)前記加工ヘッドが、
回転軸線まわりに回転可能であり、前記複数の回転軸を自身の回転軸線に平行な軸線まわりに回転可能に保持するタレットと、
そのタレットを、回転させることにより前記複数の回転軸の1本を選択的に加工位置に位置決めするタレット回転装置と
を含む (2)ないし (5)項のいずれか1つに記載の軸状物加工装置。
このように加工ヘッドがタレットおよびタレット回転装置を含む軸状物加工装置は、一般的に使用されており、この一般的な軸状物加工装置に特殊なチャックおよびチャック回転装置を付加すれば、本発明に係る軸状物加工装置の一例が得られる。
(7)前記タレットに前記複数の回転軸が等角度間隔で保持され、前記タレット回転装置が、タレットを前記複数の回転軸の保持間隔と等しい角度ずつ割出回転させる割出回転装置である (6)項に記載の軸状物加工装置。
(8)前記チャックが、そのチャックの回転軸線を含む一平面を対称面として面対称に移動する状態で保持された一対の爪を備えた (2)ないし (7)項のいずれか1つに記載の軸状物加工装置。
本態様のチャックに軸状物を保持させれば、軸状物の軸線が必然的に回転軸の軸線を含む一平面上に位置する状態になるため、その一平面に直角な方向におけるチャックと回転軸との位置決めを行えば、必然的に軸状物の同方向における回転軸に対する位置決めを行ったことになり、その分、軸状物の端面切削工具やセンタ穴ドリルに対する相対位置決めが容易になる。
(9)前記チャックが、チャック本体と、そのチャック本体に前記チャックの回転軸線を含む一平面に沿って移動可能に保持された前記一対の爪と、それら一対の爪をチャックの回転軸線を対称軸として互いに軸対称に移動させる爪移動装置とを含む (8)項に記載の軸状物加工装置。
本態様のチャックは、次項に記載の態様のチャックの他、一対の爪が、チャックの回転軸線に対して直角な回動軸線のまわりに回動することにより、チャックの回転軸線を対称軸として互いに軸対称に移動する態様のチャックも包含している。ただし、チャックがこの後者の態様である場合に、保持させるべき軸状物の直径が変われば、軸状物の軸線がチャックの回転軸線を含む一平面内に位置することは保証されるが、チャックの回転軸線に平行な方向の位置が変わることは避け得ない。したがって、次項の態様のチャックを使用する方が軸状物とセンタドリルとを同心に位置決めることが容易になる。
(10)前記一対の爪が、前記チャック本体に、前記チャックの回転軸線と直交する一直線に沿って移動可能に保持された (9)項に記載の軸状物加工装置。
本態様のチャックをセンタ穴ドリルに対して予め定められた相対位置に位置決めすれば、軸状物をセンタ穴ドリルと同心に位置決めすることができ、軸状物とセンタドリルとの相対位置決めが容易になる効果が得られる。
(11)前記一対の爪の一方が、前記チャック本体に対して前記チャックの回転軸線と平行な回転軸線の回りに回動可能であり、一対の爪の他方が回動不能である (9)項または(10)項に記載の軸状物加工装置。
本態様のチャックによれば、軸状物の外周面が黒皮のままである等の理由で、軸状物の直径が精度よく均一ではない場合でも、軸状物をチャックに強固に保持させることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態である軸状物加工装置およびそれによるセンタ穴加工方法を図面に基づいて詳細に説明する。
図1において10は軸状物加工装置12のベースであり、ベース10上には、加工ヘッド14およびチャック16等が設けられている。加工ヘッド14は、ベース10上において、水平面内で互いに直交する2方向であるZ軸方向およびX軸方向に直線移動させられる。そのため、ベース10上には送りねじの一種であるボールねじ20がZ軸方向に平行に設けられるとともに、Z軸スライド22に設けられた図示しないナットに螺合されており、ボールねじ20がZ軸移動用サーボモータ24によって回転させられることにより、Z軸スライド22がZ軸方向に移動させられる。この移動は、ベース10上に設けられた案内部材たる一対のガイドレール26と、Z軸スライド22に固定の被案内部材たるガイドブロック28とにより案内される。
【0006】
Z軸スライド22上には、ボールねじ30がX軸方向に平行に設けられるとともに、X軸スライド32が図示しないナットにおいて螺合されている。ボールねじ30がX軸移動用サーボモータ34によって回転させられることにより、X軸スライド32は一対のガイドレール36に案内されてX軸方向に移動させられる。
以上ナット,ボールねじ20,Z軸スライド22,Z軸移動用サーボモータ24およびナット,ボールねじ30,X軸スライド32,X軸移動用サーボモータ34等が加工ヘッド移動装置38を構成している。
【0007】
上記X軸スライド32上に前記加工ヘッド14が支持されている。加工ヘッド14は、タレット40とタレット回転装置42とを備え、タレット40はその外周部に複数本(本実施形態の場合10本)の回転軸44をそれぞれ自身の軸線まわりに回転可能に保持している。これら回転軸44は、それらの軸線が互いに平行かつタレット40の回転軸線に平行になる状態で等角度間隔に設けられている。これら回転軸44には、端面切削工具46およびセンタ穴ドリル48(図4参照)等を含む複数の工具49がそれぞれ相対回転不能かつ相対移動不能に取り付けられる。タレット回転装置42は、タレット40を相対回転可能に保持するタレット保持台50と、タレット保持台50に接続されてタレット40を回転駆動するタレット駆動用モータ52とを備えている。タレット40は、タレット保持台50内に設けられた図示しないクランプ装置によりクランプ,アンクランプされる。アンクランプ状態では、タレット40はタレット保持台50に対して回転可能であり、タレット駆動用モータ52により工具49の取付角度間隔と等しい角度ずつ割出回転させられることにより、複数の工具49のうちのいずれか1つが被加工物加工のための加工位置に位置決めされる。その後タレット40がクランプされれば、位置決めされた工具49がタレット保持台50に対して相対移動不能となる。加工位置に位置決めされた工具49は、図示しない回転駆動装置により回転駆動される。
【0008】
ベース10上の、加工ヘッド14のX軸方向における前進端位置近傍に前記チャック16が設けられている。チャック16はX軸方向およびZ軸方向と直交する垂直方向であるY軸方向に移動可能に設けられている。チャック16はY軸スライド60に保持されており、Y軸スライド60はそのナットにおいて、Y軸方向に平行に延びるボールねじ62に螺合されている。ボールねじ62がプーリ,ベルトを介してY軸移動用サーボモータ64によって回転させられることにより、Y軸スライド60が一対のガイドレール66に案内されてY軸方向に昇降させられる。これらナット,Y軸スライド60,ボールねじ62,Y軸移動用サーボモータ64等がチャック移動装置68を構成している。
【0009】
なお、上記Z軸移動用サーボモータ24,X軸移動用サーボモータ34およびY軸移動用サーボモータ64の各回転位置は図示しないエンコーダによって検出されるようになっており、それによりZ軸スライド22,X軸スライド32およびY軸スライド60のそれぞれの位置がわかるようになっている。各サーボモータは、駆動源たる電動モータの一種であって、回転角度を制御可能なモータであり、サーボモータに代えてステップモータを用いてもよい。
【0010】
チャック16は、Y軸スライド60に支持されたチャック保持台70により相対回転可能に保持されている。チャック保持台70は、内部に回転角度を制御可能な回転駆動モータ等を含むチャック回転装置72を備えており、チャック16は、このチャック回転装置72により加工ヘッド14の回転軸線に直角な回転軸線まわりに回転させられる。本実施形態におけるチャック16は、図2および図3に示すように、チャック16の回転軸線と直交する直線に沿って互いに軸対称に接近,離間可能な一対の爪74,76を有する二つ爪チャックである。これら爪74,76は、チャック本体78によりチャック16の回転軸線と直交する直線に沿って移動可能に保持された図示しない移動部材に着脱可能に取り付けられている。チャック16は、チャック本体78に設けられた図示しない締付ねじが回転操作されるのに伴って上記移動部材を互いに接近,離間させ、それにより一対の爪74,76を互いに接近,離間させる爪駆動機構を有している。この爪駆動機構は一般に知られたものであるため、図示および詳細な説明は省略する。
【0011】
爪74,76は、基端部より先端部側が幅の広いT字形を成す取付部80と、取付部80の先端部の長手方向に隔たった両端から延び出す一対の爪部82とを備えている。爪部82の先端面には、V溝である係合溝84が形成されている。爪74,76の各取付部80の基端部側には、それぞれ2個のボルト穴86,88が形成されている。爪76の取付部80のボルト穴88は、爪74のボルト穴86よりやや大径とされている。爪74,76は、各爪部82の係合溝84が互いに対向する状態で、取付部80においてボルト90,92によりチャック本体78の前記移動部材に取り付けられている。ただし、爪74は、前記移動部材に相対移動不能に固定されているが、爪76は移動部材に対して僅かに相対移動可能に取り付けられている。ボルト92は、軸部が先端の雄ねじ部よりやや大径とされることにより段付面を備えており、この段付面が移動部材に当接するまで締め込まれた状態においても、頭部がボルト穴88のさぐり部の底面から僅かに浮いた状態になるようにされている。そのため、爪76が移動部材に取り付けられた状態で、移動部材に対して僅かに相対移動することが許容されるのであり、この相対移動には、爪76がチャック16の回転軸線と平行な回動軸線のまわりに小角度回動する移動も含まれている。
【0012】
また、図1に示すように、ベース10の、チャック16の下方に位置する部分には、位置決め部材保持装置94が設けられており、これに位置決め部材96が取り付けられるようになっている。図示の例では、位置決め部材保持装置94が、軸状の位置決め部材96を垂直な姿勢で、かつ、上下方向の位置を調節可能に保持するものとされているが、位置決め部材96の上下方向位置を一義的に定めて保持するものとすることも可能である。この場合には、位置決め部材96を複数種類準備し、加工すべき軸状物の長さに合わせて選択して位置決め部材保持装置に保持させればよいのである。
【0013】
以上のように構成された軸状物加工装置により、軸状物の両端面に端面切削加工とセンタ穴加工とが施される。ここでは、加工されるべき軸状物が、直径が長手方向において均一である単純な軸100であるとする。軸100をチャック16に保持させる際には、チャック16が位置決め部材96近傍である取付位置に位置させられ、かつ、爪74,76が互いに離間させられる。そして、軸100が垂直の姿勢で爪74,76間に挿入され、両端面102,104のうちの一方(例えば端面104)が位置決め部材96の上向きの端面105に当接させられることにより軸方向の位置決めがなされる。その後、チャック16の爪74,76が互いに接近する向きに移動させられ、軸100が、爪部82の係合溝84に係合した状態で、爪部82により両側から挟まれる。この状態では、軸100は、軸100の軸線がチャック16の回転軸線と直交するとともに、軸100の軸線とチャック本体78との距離が一義的に決められた状態(軸100のチャック16の回転軸線方向の位置が決められた状態)で、チャック16に強固に保持される。また、軸100の直径が正確に均一ではない場合においても、前述のように爪76が小角度回動可能とされていることにより、爪74,76の2対の爪部82のいずれにも軸100が強固に挟まれる。
【0014】
以上のようにして軸100がチャック16に保持された後、チャック16がチャック移動装置68により上昇させられることによって、軸100が位置決め部材96から離間させられ、被加工位置まで上昇させられる。このとき軸100は端面102が上向きとなる姿勢で保持されている。そして、被加工位置においてチャック回転装置72によりチャック16が90度回転させられ、図4に示すように軸100の端面102が加工ヘッド14に対向させられる。一方、加工ヘッド14は加工ヘッド移動装置38により加工開始位置まで移動させられ、かつ、タレット回転装置42によりタレット40が回転させられることによって端面切削工具46が加工位置に位置決めされている。
【0015】
以上で加工準備が完了し、加工が開始される。端面切削工具46が自身の軸線まわりに回転させられつつ加工ヘッド移動装置38によりZ軸方向に移動させられることにより、軸100の端面102が図4に二点鎖線で示すように切削加工されて端面106が形成される。端面切削加工が終了し、端面切削工具46が加工開始位置へ復帰させられた後、タレット40が一定角度回転させられ、センタ穴ドリル48が加工位置に位置決めされる。続いて、センタ穴ドリル48が回転させられるとともに、加工ヘッド移動装置38により加工ヘッド14がZ軸方向とX軸方向とに順次移動させられることにより、まずセンタ穴ドリル48が軸100に同軸に対向させられ、次に軸100に接近させられて、軸100の端面106に、図4に二点鎖線で示すようにセンタ穴108が形成される。
【0016】
端面102側の端面切削加工およびセンタ穴加工が終了し、加工ヘッド移動装置38により加工ヘッド14が加工開始位置に復帰させられた後、チャック16が180度回転させられ、他方の端面104が加工ヘッド14に対向する状態とされる。そして、上記端面102の場合と同様にして、端面切削工具46,センタ穴ドリル48により端面104の端面切削加工とセンタ穴加工とが行われる。
【0017】
本実施形態においては、タレット40を有する加工ヘッド14を備えた汎用の軸状物加工装置12に、特殊なチャック16を設けることによって、軸100の端面切削およびセンタ穴加工を行うことが可能になるため、専用のセンタ穴加工装置を設置する必要がなく、設備コストを低減することができる。また、タレット40には複数種類の工具49を保持させることができるため、端面切削,センタ穴加工以外に、例えば平面取りやタップ加工等種々の加工も可能となる。
【0018】
なお、付言すれば、本実施形態においては、軸100のチャック16に対する軸方向の位置決めが、位置決め部材保持装置94に保持された位置決め部材96により行われるようになっているが、加工されるべき軸状物自体に被位置決め部がある場合には、チャックに位置決め部を設けて軸方向の位置決めを行うことも可能である。例えば、図5に示すように、軸状物110が半径方向に突出したフランジ部112を有するものである場合には、チャック16のチャック本体78に位置決め突起114を設け、その位置決め突起114にフランジ部112の端面を当接させることにより、軸状物110の軸方向の位置決めを行うのである。フランジ部112等の被位置決め部に当接する位置決め部を爪74,76に設けることも可能である。
【0019】
また、前記実施形態においては、ボルト92が段付面を有するものとされるとともに、チャック16の爪76側の取付部80のボルト穴88が爪74のボルト穴86よりやや大径とされることにより、爪76が小角度回動可能とされていたのであるが、ボルト穴86,88のいずれか一方の少なくとも1個を円弧状の長穴とすることにより、いずれか一方の爪74,76を小角度回動可能とすることもできる。また、段付面を有するボルト92を使用する代わりに、ボルト90に、爪76のボルト90が貫通する部分の厚さより僅かに長いスリーブを嵌合し、そのスリーブがボルト90により移動部材に固定された状態でも、ボルト90の頭部が爪76から僅かに浮いた状態となるようにすることによっても、一方の爪76を小角度回動可能とすることができる。さらに、爪74,76の一方を移動部材に固定するボルトを僅かに緩めた状態で、チャックに軸状物を把持させ、その後、ボルトを完全に締め付けて爪74,76の一方を移動部材に固定することによっても、直径が正確に均一ではない軸状物をチャックに強固に把持させることができる。
【0020】
チャックをY軸方向に移動可能とすることは不可欠ではなく、位置固定のチャック保持台にチャックを回転可能に保持させることも可能である。ただし、この場合には、タレット40の回転により加工位置に位置決めされるセンタ穴ドリル48の軸線とチャックの回転軸線とが同一平面(加工ヘッド移動装置38による加工ヘッド14の移動方向であるX軸方向とZ軸方向との両方に平行な一平面)上に位置するように、チャックをチャック保持台に保持させることが必要である。
【0021】
また、Y軸方向に移動する機能を有しないチャックを備えた軸状物加工装置とすることも可能である。この場合には、市販のターニングセンタや、少なくとも2本の回転軸を有する旋盤等を利用して本発明を実施することができる。ただし、前記実施形態における位置決め部材96のようにチャックの外部に設けられた位置決め部材により軸状物の相対位置決めを行う場合には、軸状物のチャックへの取付け終了後、位置決め部材を移動装置によりチャックから離間させることが必要となる。
その他、特許請求の範囲を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である軸状物加工装置を示す斜視図である。
【図2】上記軸状物加工装置のチャックを概略的に示す正面図である。
【図3】上記チャックの底面図である。
【図4】上記軸状物加工装置による軸状物の加工を説明するための図である。
【図5】本発明の別の実施形態である軸状物加工装置のチャックを概略的に示す正面図である。
【符号の説明】
10:ベース 14:加工ヘッド 16:チャック 38:加工ヘッド移動装置 40:タレット 42:タレット回転装置 44:回転軸 46:端面切削工具 48:センタ穴ドリル 49:工具 68:チャック移動装置 72:チャック回転装置 74,76:爪 100:軸 102,104:端面 110:軸状物 112:フランジ部 114:位置決め突起

Claims (6)

  1. 互いに平行に配設され、それぞれ回転軸軸線のまわりに回転駆動される少なくとも2本の回転軸を備えた加工ヘッドと、
    前記回転軸軸線に対して直角なチャック回転軸線のまわりに回転可能であり、そのチャック回転軸線と直角に軸状物を保持するチャックと、
    そのチャックを、前記チャック回転軸線のまわりに、少なくとも、そのチャックに保持された軸状物の互いに反対側の第1端面と第2端面とがそれぞれ前記回転軸と対向する2回転位置へ回転させるチャック回転装置と、
    前記チャックの前記チャック回転軸線に直角な方向の移動を含む運動によって、前記加工ヘッドと前記チャックとを、少なくとも前記回転軸軸線に平行な方向と直角な一方向とに相対移動させ、チャックに保持された軸状物を前記少なくとも2本の回転軸の各々と同軸に対向させる移動装置と、
    前記チャックの前記チャック回転軸線に直角な方向の移動により前記チャック回転軸線との相対位置が可変の位置に静止して設けられ、前記チャックが開いた状態でそのチャックに保持される軸状物の前記第1端面と前記第2端面とのいずれかと当接することにより、その軸状物の前記チャックに対する位置決めを行う位置決め部材と
    を含む軸状物加工装置。
  2. 前記移動装置が、
    前記加工ヘッドを前記回転軸軸線に平行なX軸方向とそのX軸方向に直角なZ軸方向とに移動させる加工ヘッド移動装置と、
    前記チャックを前記X軸方向および前記Z軸方向に直角なY軸方向に移動させるチャック移動装置と
    を含む請求項1に記載の軸状物加工装置。
  3. 前記チャックが、チャック本体と、そのチャック本体に前記チャック回転軸線と直交する一直線に沿って、前記チャック回転軸線を対象軸として軸対称に移動可能に保持された一対の爪とを含む請求項1または2に記載の軸状物加工装置。
  4. 前記チャック回転装置が前記チャックを前記一対の爪の移動方向が水平方向となる回転位置に回転させ得るものであり、前記位置決め部材が、前記チャックがその回転位置に回転させられた状態で、開いた状態の前記一対の爪の隙間と、それら一対の爪の移動方向と直交する方向において対向する位置に上向きの端面を備えて設けられ、その上向きの端面において前記軸状物の前記第1端面および前記第2端面のいずれかと当接することにより、軸状物の位置決めを行う請求項3に記載の軸状物加工装置。
  5. 前記加工ヘッドが、
    タレット回転軸線まわりに回転可能であり、前記複数の回転軸をそのタレット回転軸線に平行な前記回転軸軸線のまわりに回転可能に保持するタレットと、
    そのタレットを、回転させることにより前記複数の回転軸の1本を選択的に加工位置に位置決めするタレット回転装置と
    を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の軸状物加工装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の軸状物加工装置の、前記少なくとも2本の回転軸の1本にセンタ穴ドリルを、別の1本に端面切削工具をそれぞれ保持させる一方、前記チャックに前記チャック回転軸線と直交する姿勢で軸状物を保持させ、チャックと前記端面切削工具を保持させた回転軸との前記回転軸軸線と直交する方向の相対移動と端面切削工具の回転とにより軸状物の前記第1端面を前記端面切削工具により端面切削加工した後、その第1端面を前記センタ穴ドリルに同軸に対向させてセンタ穴加工を行い、さらに、前記チャックの前記チャック回転軸線まわりの180度の回転により軸状物の前記第2端面を前記端面切削工具と前記センタ穴ドリルとに対向可能な姿勢とし、その姿勢で第2端面の端面切削加工とセンタ穴加工とを順次行うセンタ穴加工方法。
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