JP4171385B2 - マイクロカプセル担持シートの製造方法 - Google Patents
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Description
このようなマイクロカプセル担持シートの利用分野としては、染料や発色剤を封入した複写シート、色素を封入した感光記録シート、揮発性溶剤を封入した発泡性シート、香料を封入した匂い付きシートなどが知られている。
マイクロカプセル担持シートの製造は、基材シートの表面に、マイクロカプセルが分散された塗工液を塗工し乾燥させることで、基材シートの表面にマイクロカプセルの層を形成する方法が知られている。工業的生産では、連続走行させた基材シートの表面に連続的に塗工液を塗工して、連続帯状のマイクロカプセル担持シートを製造する。製造されたマイクロカプセル担持シートは、ロール状に巻回して、運搬や保管の取扱いを容易にすることが多い。
前記したように、マイクロカプセル塗工液を塗工し乾燥させたばかりのマイクロカプセル担持シートを、そのままでロール状に巻回したり重ねておいたりすると、マイクロカプセル層が、隣接するマイクロカプセル担持シートの基材シート裏面と接触して、マイクロカプセルが基材シートとの間でブロッキングを起こし易い。マイクロカプセル担持シートを使用するために、巻回ロールから解き放そうとすると、基材シートの裏面に接合されたマイクロカプセルが破壊されたり脱落したりする。
〔マイクロカプセル〕
マイクロカプセルは、隔壁層となるカプセル殻体に、液状などを呈する芯物質を内包してなるものである。芯物質を構成する材料によって、各種の機能が発揮される。
カプセルの殻体部分については、従来公知のマイクロカプセルにおけるカプセル殻体の原料と同様のものを用いて形成することができる。具体的には、コアセルベーション法で製造する場合は、ゼラチン等の等電点を有する化合物やポリエチレンイミン等のカチオン性の化合物とアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体、デンプンのフタル酸エステル、ポリアクリル酸等のアニオン性物質の組み合わせが好適である。In−situ重合法を用いる場合では、メラミン−ホルマリン樹脂(メラミン−ホルマリンプレポリマー)、ラジカル重合性モノマーなどが好適である。界面重合法を用いる場合では、ポリアミン、グリコール、多価フェノールなどの親水性モノマーと、多塩基酸ハライド、ビスハロホルメール、多価イソシアネートなどの疎水性モノマーとの組み合わせが好適であり、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ尿素などのカプセル殻体が形成される。
カプセルに内包される液状物質としては、単に1種または2種以上の液体または混合液体であってもよいし、それら液体が微粒子等の固体物質を溶解させてなる溶液またはスラリー溶液であってもよい。また、それら液体や溶液に微粒子等(例えば熱線吸収能を有する微粒子など)の固体物質を分散させてなるもの(いわゆる分散体)であってもよいし、混合させてなるもの(いわゆる混合物)でもよい。
液状物質は、特に限定はされないが、全体として油性であり水系媒体中で油滴を形成して分散し得るものが好ましい。
液状物質としては、通常一般的にマイクロカプセルの芯物質として用いることのできる従来公知の液状物質であればよく、特に限定はされないが、例えば、o−、m−またはp−キシレン、トルエン、ベンゼン、ドデシルベンゼン、ヘキシルベンゼン、フェニルキシリルエタン、ナフテン系炭化水素等の芳香族系炭化水素類;シクロへキサン、n−ヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類;デカンエポキシド、ドデカンエポキシド等のエポキシド類;シクロヘキシルビニルエーテル等のエーテル類;テトラフルオロジプロモエタン、クロロトリフルオロエチレンの低重合物等のハロゲン化溶媒;などの単独またはそれらの混合物を挙げることができる。これら液状物質は、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
必要に応じ、マイクロカプセルに内包する液状物質に添加剤を添加することもできる。液状物質中での添加剤の状態は、溶解あるいは分散した状態など、特に限定はされない。添加剤としては、例えば、染料、顔料、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、農薬、医薬、化粧料、触媒、接着剤、油用性ビタミン、金属粉、液晶、樹脂粒子などを挙げることができる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
マイクロカプセルの形状は、特に限定はされないが、球状等の粒子状であることが好ましい。
マイクロカプセルの粒子径は、特に限定はされないが、本発明の有用性が高いのは20〜200μmである。マイクロカプセルの粒子径が小さ過ぎると、シート上に十分な量の機能性物質を付与するためにはマイクロカプセルを積層させなければならず、この場合は均一に担持させるのが難しい。粒子径が大き過ぎると、マイクロカプセルの強度が不十分となり、マイクロカプセルの割れが多くなるおそれがある。
例えば、液状物質を水系媒体に分散させる際は、水系媒体としては、特に限定はされないが、水や、水と親水性溶剤(アルコール、ケトン、エステル、グリコールなど)との混合液、水に水溶性高分子(PVA(ポリビニルアルコール)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ゼラチン、アラビアゴムなど)を溶解させた溶液、水に界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤など)を添加した溶液、または、これら水系媒体を複合した液などを好ましく用いることができる。また、液状物質を水系媒体に分散させる量は、特に限定はされない。
マイクロカプセル化工程を行う際には、カプセル殻体原料、液状物質等、および必要に応じて用いる水系媒体や非水系媒体の他にも、適宜他の成分を用いてもよい。
通常、マイクロカプセル化工程によりマイクロカプセルを調製した後、必要に応じてマイクロカプセルを濾過等により単離する。例えば、液状物質を水系媒体などに分散させてマイクロカプセル化工程を行った場合は、マイクロカプセル調製後、吸引濾過や自然濾過にて該マイクロカプセルを水系媒体等から分離する。
単離後は、通常公知の方法により、所望の粒径分布となるようにマイクロカプセルを分級することが好ましい。また、不純物を除去し、製品品質を向上させるため、得られたマイクロカプセルを洗浄する操作を行うことも好ましい。
マイクロカプセルを基材シートに担持させるためには、マイクロカプセルを分散させた塗工液を調製し、基材シートに塗工液を塗工する。
塗工液中のマイクロカプセルの含有割合は、具体的には、20〜60重量%であるが、好ましくは30〜50重量%である。マイクロカプセルの含有割合が少な過ぎると、乾燥不十分になったり、塗工膜に隙間が多くでき均一性が低下したりするおそれがある。多過ぎると、塗工液が凝集し易くなったり、塗工液の流動性が低下したりするため、塗工し難くなるおそれがある。
また、マイクロカプセルと基材シートとの接合力が不足する場合は、バインダーを使用することもできる。
塗工液の粘度は、クレブス粘度計の測定値で53〜100KUが好ましい。塗工液の粘度が低過ぎる場合は、塗工液中でマイクロカプセルが分離し易くなったり、塗膜が不均一になったりするおそれがある。粘度が高過ぎる場合も、塗膜が不均一になったりするおそれがある。
塗工液に配合するバインダーの材料は、特に限定はされないが、例えば、有機系バインダー、等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
有機系バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、フッ素樹脂系、アルキド樹脂系、アミノ樹脂系、ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリウレタン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系、フェノール樹脂系、ポリオレフィン樹脂系、シリコーン樹脂系、アクリルシリコーン樹脂系、キシレン樹脂系、ケトン樹脂系、ロジン変性マレイン酸樹脂系、液状ポリブタジエン、クマロン樹脂などの合成樹脂系バインダー;エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムなどの天然または合成のゴム系バインダー;セラック、ロジン(松脂)、エステルガム、硬化ロジン、脱色セラック、白セラックなどの天然樹脂系バインダー;硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの熱可塑性または熱硬化性高分子系バインダー等を挙げることができる。なお、上記合成樹脂系バインダーとしては、可塑性(熱可塑性)のバインダーであってもよいし、アクリル系、メタクリル系、エポキシ系などの硬化性(熱硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性、湿気硬化性、これらの併用等も含む)のバインダーを挙げることもできる。これら有機系バインダーは1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
水溶性型のバインダーとしては、例えば、水溶性アルキド樹脂、水溶性アクリル変性アルキド樹脂、水溶性オイルフリーアルキド樹脂(水溶性ポリエステル樹脂)、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシエステル樹脂、水溶性メラミン樹脂等を挙げることができる。
エマルション型のバインダーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル共重合ディスパージョン、酢酸ビニル樹脂エマルション、酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、スチレン−アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリル−シリコーンエマルション、フッ素樹脂エマルション等を挙げることができる。
基材シートは、マイクロカプセル担持する機能を果たす。
マイクロカプセル担持シートの使用目的や用途によって、基材シートの材料は変更できる。但し、キスコート方式の塗工が可能な程度の強度や柔軟性が必要である。
基材シートは、プラスチックフィルムそのもののみからなるシートであってもよいし、プラスチックフィルムをベースにして、その表面をコロナ処理、プラズマ処理、UV照射処理等を施したもの、または、アルミ、銅、金、銀などの金属を蒸着あるいはラミネートしたものやSnO、ZnO、ITO、SiO2等の無機酸化物をコーティングしたものなどのように別の基材や物質を重ねたものであってもよく、特に限定はされない。
基材シートの厚さは、使用目的や要求性能によって異なる。
〔易接着性シート〕
基材シートとして、マイクロカプセルを担持する側の表面に易接着性を有する易接着性シートを用いることができる。
易接着性シートの材料としては、マイクロカプセルの材料によっても異なるが、ポリエステル系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、オキサゾリン系、PVP系、ポリオキシアルキレン系、セルロース系などの、水溶性あるいは水分散性、エマルジョン系樹脂が使用できる。通常の基材シートの表面に、易接着材料の層をコーティングしておくこともできる。基材シートに対する易接着層の作製は、通常のコーティング技術が適用できる。
塗工装置としては、通常のマイクロカプセルの塗工技術に利用されている塗工装置が使用できる。基本的な塗工方式としてキスコート方式を採用する塗工装置が好ましい。
キスコート方式では、連続走行する基材シートに対して、塗工液が付着した塗工ロールを回転させながら接触させ、塗工ロールから基材シートに塗工液を移行させて、塗工液を基材シートに塗工する。このとき、基材シートが塗工ロールと接触する位置では、基材シートのうち塗工ロールの接触面と反対側の面が開放されている。通常のロールコーターやグラビアコーターなどにおける加圧ロールあるいはバックアップロールが存在しない。
キスコート方式の塗工装置では、基材シートの走行方向と塗工ロールの回転方向とを、同じ方向に設定することもできるし、逆方向に設定することもできる。同じ方向で速度差をつけておくこともできる。
塗工ロールの回転方向が基材シートの走行方向と同じ場合は、リバースコート方式ではないが、キスコート方式である限り、前記した塗工ロールと基材シートとの接点で、基材シートと塗工ロールとは軽く接しているだけなので、マイクロカプセルに過大な圧力が加わることはない。
基材シートの走行速度は、塗工後の乾燥条件などによっても異なるが、通常、0.1〜10m/分の範囲に設定できる。遅過ぎると生産性が悪くなり、早過ぎると乾燥不良になってブロッキングし易くなったりする。
基材シート上への塗工液の塗工厚みは、塗工液に含まれるマイクロカプセルによっても異なるが、通常、ウェット状態で1〜300μm、乾燥後の厚みで1〜100μmの範囲に設定できる。本発明の効果が特に有効に発揮されるのは、乾燥後の厚み10〜100μmの範囲である。塗工液の厚みを、マイクロカプセルの外径に対して1.0〜3.0倍に設定するのが好ましい。
〔マイクログラビアコーター〕
マイクログラビアコーターは、キス方式であり、かつ、リバース方式の塗工装置として知られている。具体的には、特公平5−53553号公報に開示された塗工技術を基本にしている。
グラビアパターンの大きさや形状は、通常の塗料やインクの塗工に利用されているマイクログラビアコーターで採用されている条件の中から、マイクロカプセルの担持に適した条件が採用できる。塗工液に分散させたマイクロカプセルの粒径に合わせて、グラビアパターンの深さやピッチ間隔を設定することができる。パターン形状としては、塗工ロールの軸方向に対して傾斜した傾斜線を、塗工ロールの周面に螺旋状に並べて配置することができる。互いに交差する傾斜線で格子状のグラビアパターンを形成することもできる。その他、通常のマイクログラビアロールに採用されているグラビアパターンが採用できる。
グラビアパターンのセル容積を、50〜200ml/m2に設定しておくことができる。セル容積が小さ過ぎると、粒子径の大きなマイクロカプセルが担持し難い。セル容積が大き過ぎると、塗工膜にグラビアパターンの凹凸が転写されてしまい、マイクロカプセルが均一に配置され難くなる。
塗工ロールの外径は、一般的なグラビアコーターにおける塗工ロールの外径よりもかなり小さく設定される。具体的には、塗工液の材料や塗工条件によっても異なるが、通常、直径20〜60mmの範囲に設定される。
〔乾燥硬化〕
基材シートに塗工された塗工液を乾燥硬化させることで、マイクロカプセルを基材シートに担持させる。
塗工液にバインダーが配合されている場合は、バインダーがマイクロカプセルを基材シートに接合する機能を果たす。
塗工液の硬化は、塗工液に含まれるバインダーの成分によって異なる硬化手段が採用できる。溶媒の蒸発による硬化、加熱による硬化、紫外線などの放射線照射による硬化などが挙げられる。
〔再剥離フィルムの積層〕
基材シートにマイクロカプセルが担持されたマイクロカプセル担持シートのうち、マイクロカプセル側の表面に再剥離フィルムを貼着することで、基材シート、マイクロカプセル層および再剥離フィルムが積層されたマイクロカプセル担持シートとなる。
再剥離フィルムの積層によって、マイクロカプセル担持シートを重ねておくときに、担持されたマイクロカプセルが、重ねられた隣りのマイクロカプセル担持シートの裏面に付着してブロッキングを起こすことが防止できる。マイクロカプセルの表面を覆ってマイクロカプセルを保護する機能もある。マイクロカプセル担持シートを巻回して巻回ロールの状態で運搬したり取り扱ったりするのが容易になる。
再剥離フィルムの厚みは、40〜120μmが適切である。50〜100μmがより好ましい。厚みが薄過ぎると、しわになり易いので取扱いが困難である。厚みが分厚過ぎると、マイクロカプセル担持シートを巻回ロールにしたときに重くなり、取扱いの作業性が悪くなったり、使用後の廃棄物量が増加したりする。
マイクロカプセル担持シートのマイクロカプセル層に再剥離フィルムを貼着する際に、9.8〜196N/cm2(1〜20kgf/cm2)の圧力を加えることが有効である。圧力が高いほど強く貼着できるが、圧力が強過ぎると、マイクロカプセルを変形させたり破壊したり、再剥離フィルムを剥がす際に剥がれ難くなったりする。
再剥離フィルムが重ねられたマイクロカプセル担持シートは、ロール状に巻き取って、巻回ロールの形態で、輸送保管などの取扱いを行うことができる。
巻回作業は、通常のシート材料における巻回作業と同様の装置や作業条件が採用できる。巻回状態で、マイクロカプセル担持シートと再剥離フィルムとの間に、ある程度の巻き圧が加わった状態にすることができる。この巻き圧は、前記した貼着時に加える圧力と同程度の圧力に設定することができる。巻き圧が加わった状態で保持された巻回ロールでは、マイクロカプセル層の表面が平滑化するという機能が果たされる。マイクロカプセル担持シートの使用時に、マイクロカプセル層と別の部材とを貼り合わせるときに接着面積が増大するという利点がある。
マイクロカプセル担持シートは、基材シートの表面に、マイクロカプセルが接合されている。さらに、マイクロカプセル層の表面には再剥離フィルムが貼着されている。
用途や目的に合わせて、マイクロカプセルをまばらに担持させたり、密に担持させたり、複層に担持させたりすることが、塗工ロールや塗工条件の設定組み合わせによって、容易に達成できる。
マイクロカプセルの担持層の厚みは、用途によっても異なる。マイクロカプセルを密に担持させることが望ましい用途では、マイクロカプセル層の厚みを10〜100μmに設定するのが好ましい。厚みが小さ過ぎると、面方向でマイクロカプセル同士の間に隙間ができてしまい易い。厚みが大き過ぎると、マイクロカプセル層を形成するための塗工液の均一な塗工が困難になる。
また、マイクロカプセル塗工液が基材シートに塗工されたあと、マイクロカプセルがいまだ完全に接合されていなかったり、バインダーが十分に乾燥硬化していない状態であったりしても、剥離フィルムで覆った状態であれば、保管などの取扱いが可能になる。マイクロカプセル担持シートを巻き取った巻回ロールにして保管や輸送に供することが可能になる。その結果、塗工後の養生のために長い時間をかけたり広いスペースを取ったりすることなく、直ぐに次の処理工程や輸送などの取扱いを進めることができる。
〔マイクロカプセル担持シートの構造〕
PETなどの合成樹脂材料からなる基材シート10の表面に、概略球状をなすマイクロカプセル20が、隙間なく均一に配置されている。マイクロカプセル20は、透明樹脂などで構成された概略球状の外殻22の内部に、芯物質となる封入液24が封入されている。
図1では、マイクロカプセル20は、透明なバインダー層32に埋め込まれた状態で、バインダー層32が基材シート10に積層一体化されている。但し、明確なバインダー層32はなく、マイクロカプセル20と基材シート10との接触個所やマイクロカプセル20同士の接触個所のみが、少量のバインダーで接合されていても構わない。また、マイクロカプセル20を覆うバインダー層32を、マイクロカプセル20の外径よりも十分に厚くすれば、マイクロカプセル20の保護機能を果たすこともできる。
<再剥離フィルム>
マイクロカプセル20およびバインダー層32の表面には、再剥離フィルム12が貼り付けられている。
再剥離フィルム12が存在することで、マイクロカプセル20およびバインダー層32が外部に露出しなくなる。埃や異物が表面に付着することを確実に防止できる。マイクロカプセル担持シートSを、次の処理工程まで移送したり、一時的に保管しておいたりする間に、マイクロカプセル担持シートSの表面に器物が接触しても、マイクロカプセル20が傷付くことを再剥離フィルム12が良好に防ぐことができる。
〔再剥離フィルムの積層〕
図2には、再剥離フィルムの積層作業を模式的に示している。
マイクロカプセル担持シートSと再剥離フィルム12とを挟み付けて圧接させることで、再剥離フィルム12を十分な力で貼り付けることができるとともに、マイクロカプセル担持シートSの表面を平滑化させる作用も高まる。再剥離フィルム12の平滑な表面がマイクロカプセル担持シートSに当接して圧力が加わると、例えば、マイクロカプセル20が少し基材シート10から浮き上がっていても再剥離フィルム12で抑えつけられて浮き上がりが解消される。マイクロカプセル20あるいはバインダー層32の表面に微細な凹凸やうねりが生じていても、平滑な再剥離フィルム12が当接することで均される。
再剥離フィルム12が積層されたマイクロカプセル担持シートSは、ロール状に巻回して回収することができる。巻回ロールRの状態で、輸送保管などの取扱いを行えば、取扱いが行い易い。この巻回処理時に、巻回ロールRの状態で巻き圧が発生するような条件で巻き取ることで、再剥離フィルム12によるマイクロカプセル20層の平滑化が促進される。
巻回ロールRは、重なり合うマイクロカプセル担持シートSの間に再剥離フィルム12が介在しているので、マイクロカプセル担持シートS同士が固着したり、マイクロカプセル20が隣の基材シート10にブロッキングしてしまったりすることがない。
図3〜5は、再剥離フィルム12を積層する前の、マイクロカプセル担持シートSの製造方法について示す。この実施形態では、マイクログラビアコーターを用いて、基材シート10にマイクロカプセル20を担持させる。
〔マイクログラビアコーター〕
マイクログラビアコーターは、図3、4に示すマイクログラビアロール40を使用する点に特徴がある。
<マイクログラビアロール>
図4に示すように、外周面にはグラビアパターン部42を有する。グラビアパターン部42は、細かな凹凸を機械的な彫刻やエッチング処理によって形成したものである。図4の場合、傾斜直線状の凹溝が円筒状の外周面に螺旋状に巻きついた状態で密接して配置されたグラビアパターン部42を有する。グラビアパターン部42の全幅Wは、基材シート10の幅に合わせて設定される。基材シート10の幅と完全に一致していなくても構わない。
マイクログラビアロール40の下方には、塗工液30の貯留器38を備える。塗工液30は、マイクロカプセル20とバインダー層32の材料などを溶媒に分散あるいは溶解させて、塗工を容易にしたマイクロカプセル分散液である。バインダー層32の材料が液状であれば、バインダー液にマイクロカプセル20を分散させておくだけでも塗工液30を構成できる。
マイクログラビアロール40の一部は、塗工液30に接触しており、マイクログラビアロール40の回転により、グラビアパターン部42に付着した塗工液30が上方側に運ばれる。
図3に示すように、マイクログラビアロール40の上方でマイクログラビアロール40の前後に離れて、前後一対のガイドロール60が配置されている。ガイドロール60の下端は、マイクログラビアロール40の上端と同じか少し低い程度の位置に配置されている。
帯状の基材シート10が、一方のガイドロール40の下側に沿って連続的に供給され、マイクログラビアロール40の上側を経て、他方のガイドロール40の下側に沿って送り出される。基材シート10は、図示を省略した上流側で、ロール状に巻回されたものを順次引き出して走行させる。
<塗工動作>
マイクログラビアロール40の回転に伴ってグラビアパターン部42に付着した塗工液30が、基材シート10の下面に供給されて塗工が行われる。グラビアパターン部42の凹凸形状が、マイクロカプセル20を含む塗工液30を、効率良くかき上げて運ぶことになる。
塗工液30が基材シート10と接触する位置の少し手前側に、マイクログラビアロール40の外周面に近接してドクターナイフ装置50が配置されている。貯留器38からマイクログラビアロール40に付着して持ち上げられた塗工液30は、ドクターナイフ装置50の先端とマイクログラビアロール40の外周面との間隙に相当する厚さに厚みを調整されてから、基材シート10と接触して塗工される。これによって、基材シート10に形成される塗工液30の厚さが、より正確に設定される。
なお、通常のグラビアコーターで塗工を行うと、グラビアロールから基材シート10に塗工液30を移行させるときに、グラビアロールとバックアップロールとで基材シート10を強く挟み付けるので、塗工液30が基材シート10の幅よりも外側に押し出されて、基材シート10の裏側(上面側)にまではみ出して付着することがある。しかし、上記実施形態のマイクログラビアコーターでは、マイクログラビアロール40は基材シート10に軽く押し当てられているだけであるので、塗工液30が、基材シート10の裏側にはみ出して付着する問題は起こり難い。塗工液30に大きな圧力が加わらなければ、マイクロカプセル20が破壊されたり過度に変形させられたりすることも起こり難い。
図5に示すように、基材シート10に所定厚さの塗工液30が塗工されたマイクロカプセル担持シートSは、塗工液30を乾燥させて、マイクロカプセル20を基材シート10に強固に担持させる。
塗工液30に含まれる溶媒を蒸発させて、残ったバインダーでマイクロカプセル20を基材シート10に結合させることができる。塗工液30に含まれるバインダーが硬化して、マイクロカプセル20が埋め込まれたバインダー層32が形成されるようであってもよい。マイクロカプセル20を基材シート10に結合させたり、バインダー層32を硬化させたりするために、送風乾燥処理や加熱処理、放射線照射処理などを行うことができる。
〔マイクロカプセル担持シートの製造〕
<マイクロカプセル塗工液A−1の製造>
高沸点油KMC−113(呉羽化学社製)200重量部に、クリスタルバイオレットラクトン5重量部を溶解させて、発色剤(1)を得た。
水200重量部にアラビアゴム24重量部、ゼラチン8重量部を溶解した。この水溶液を43℃に保持し、ディスパー(特殊機化工業社製、製品名:ROBOMICS)で撹拌しながら、前記発色剤(1)を添加した。撹拌速度を、回転数1000rpmまで徐々に上げ、その状態で撹拌を続けて、発色剤の縣濁液を得た。
分散液からマイクロカプセル(1)を吸引濾過して脱水し、マイクロカプセル濃度51重量%のペーストを得た。
マイクロカプセル塗工液A−1の固形分濃度は45重量%、クレブス粘度計(ブルックフィールド社製、KU−1)で測定された粘度62KUであった。
<マイクロカプセル担持シートの塗工製造>
塗工装置として、図3に示す基本構造を備えたマイクログラビアコーター(康井精機社製)を使用した。マイクログラビアロールは、直径20mmであり、外周面の全体にグラビアパターンが彫刻されたものを用いた。グラビアパターンは、深さ300μmの傾斜直線状の溝が、1インチ当たり25本の密度で密接して、平行螺旋状に配置されており、溝部分の内部容積すなわちセル容積170ml/m2である。
マイクログラビアロールの回転数64rpm(基材シートの走行方向と逆回転)に設定して、前記したマイクロカプセル塗工液A−1を、基材シートに塗工した。マイクロカプセル塗工液Aを塗工して得られたマイクロカプセル担持シートは、90℃、風速10m/分で強制送風するジェット乾燥機で乾燥させた。
このようにして得られたマイクロカプセル担持シートは、基材シートの表面にマイクロカプセルが強固に接合されたものであった。マイクロカプセルは、ムラなく均一に担持されており、マイクロカプセルの破壊や過剰な変形は認められなかった。基材シートの両端からはみ出したり裏側に付着したりしたマイクロカプセルは認められなかった。
前工程で得られた乾燥直後のマイクロカプセル担持シートに、下記に示す各種フィルムを重ねた状態で、室温環境で49N/cm2(5kgf/cm2)の荷重をかけて貼り付け、ロール状に巻き取った。
巻き取り後の積層シートロールを、室温で1日養生した。その後、積層シートロールから積層シートを引き出し、フィルムを剥がした。その結果を、下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎:剥離の際に剥離抵抗がなく、剥離面全体に光沢が出ている。
×:剥離の際に剥離抵抗が大きく、剥離面のマイクロカプセルが損傷している。
<フィルム材料とその評価>
フィルム1〜8は、再剥離性フィルムであり、フィルム9は再剥離性のないフィルムである。
フィルム1:トレテック7531(商品名、東レ合成フィルム社製、微粘着ポリエチレン系フィルム、厚さ50μm)=評価◎
フィルム2:トレテック7121(商品名、東レ合成フィルム社製、微粘着ポリエチレン系フィルム、厚さ60μm)=評価◎
フィルム3:トレテック7721(商品名、東レ合成フィルム社製、微粘着ポリエチレン系フィルム、厚さ100μm)=評価◎
フィルム4:トレテック7111(商品名、東レ合成フィルム社製、微粘着ポリエチレン系フィルム、厚さ100μm)=評価○
フィルム5:プロテクトテープ622B(商品名、積水化学社製、微粘着ポリエチレン系フィルム、厚さ60μm)=評価○
フィルム6:サニテクトPAC2−70(商品名、サンエー化研社製、微粘着ポリエチレン系フィルム、厚さ70μm)=評価◎
フィルム7:トレファンNO3931(商品名、東レ合成フィルム社製、未延伸ポリプロピレン系フィルム、厚さ100μm)=評価○
フィルム8:パイレンOTP2002(商品名、東洋紡社製、2軸延伸ポリプロピレン系フィルム、厚さ50μm)=評価○
フィルム9:ルミラーT60(商品名、東レ社製、PETフィルム、厚さ125μm)=評価×
12 再剥離フィルム
20 マイクロカプセル
22 外殻
24 封入液
30 塗工液(マイクロカプセル分散液)
32 バインダー
38 貯留器
40 マイクログラビアロール
43 グラビアパターン部
50 ドクターナイフ装置
60 ガイドロール
64 ニップロール
S マイクロカプセル担持シート
Claims (1)
- 基材シートと、該基材シートの表面に接合された層状のマイクロカプセル層と、該マイクロカプセル層の表面に剥離可能に貼着された再剥離フィルムとを備えるマイクロカプセル担持シートの製造方法であって、
前記基材シートの表面に、前記マイクロカプセルが分散された塗工液をマイクログラビアコーターで塗工し乾燥硬化させて、基材シートの表面に、マイクロカプセルがバインダー層に埋め込まれてなるマイクロカプセル層を形成する工程(a)と、
前工程(a)のあと、前記マイクロカプセル層の表面に再剥離フィルムを9.8〜196N/cm2の圧力を加えて貼着し巻き取る工程(b)と、
を含むことを特徴とする、マイクロカプセル担持シートの製造方法。
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