JP4163457B2 - マイクロカプセル含有シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロカプセルを含有する塗工膜をシート表面上に有してなるマイクロカプセル含有シートの製造方法に関する。さらに詳しくは、マイクロカプセルを含有する塗工液をシート表面に塗工してなるに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、マイクロカプセルを含有する塗工液をシート表面に塗工することにより、表面にマイクロカプセル含有塗膜(含有層)を有するシート(マイクロカプセル含有シート)が製造されている。このようなマイクロカプセル含有シートを得るにあたっては、いかに均一な塗工表面を形成するか、また、いかに均質な塗工膜とするか等が重要であり、これまでにも様々な塗工方法が提案されている。具体的には、エアードクターコーターを用いた方法(米国特許第3186861号、同第3472674号、英国特許第1176469号など)や、ブレードコーターを用いた方法(特公昭49−35330号公報など)や、カーテンコーターを用いた方法(特開昭54−85811号公報、特開平11−58946号公報など)が知られており、当該技術分野においては当然に又は慣用的にこれらの方法が用いられていた。また、従来の技術水準において求められていた塗工膜の性能を達成し実現し得るためには、通常これらの方法を用いることで十分であった。
【0003】
しかしながら、近年の技術進歩に伴い当該技術分野や産業界からはより高度で優れた性能を有するものが要請されるようになっており、このような要請を達成し、塗工面の均一さや塗工膜性能の均質さに高度に優れたマイクロカプセル含有シートを得るためには、従来の塗工技術では不十分であり不可能であったため、新たな塗工方法の開発が要望されていた。
なお、従来の塗工方法の特徴とその問題点を示すと以下のようになる。
エアードクターコーターを用いた方法では、マイクロカプセルを含有する塗工液をシート上に供給したあと塗工厚の調整や塗工表面の均一化を行うにあたって、直接接触して圧力を加えることのないエアージェットを用いる。よって、マイクロカプセルに損傷を与えたり破壊してしまったりすることが殆んど無く、均質な性能を有する塗工面が得られやすいという利点がある。また、供給した塗工液を過剰に掻き落としてしまうことも少ないため、その点では生産性やコスト面にも優れる。しかしながら、エアードクターコーターのエアージェットによって過剰量の塗工液を吹き落とす場合に、塗工液が細かい粒になって吹き飛ばされエアードクターの刃先が汚れやすく、塗工スジを頻繁に発生させることになる。こまめに刃先をクリーニングすれば解消することもできるが、その都度塗工作業を中断しなければならず稼働率や生産性が大きく低減する。また、マイクロカプセルをできるだけ密な状態となるように塗工するためには塗工液の固形分や粘度をある程度高くしておく必要があるが、それ応じてエアージェットの風圧を高くしなければならず、コスト面や生産性に劣るほか、過剰に塗工液が飛散することになりさらに刃先が汚れやすくなるという問題がある。
【0004】
また、ブレードコーターを用いた方法は、上記エアージェットの代わりに、ブレードをシート表面に供給した塗工液に押し当ててせん断力を生じさせ、均一な塗工面を得ようとする方法であり、上述したエアードクターコーターの使用における問題を技術的に解消することのできる塗工方法である。しかしながら、塗工中、ブレードは常にシートに押し当てた状態とするため、塗工液に含有されているマイクロカプセルが損傷を受けやすく、カプセル構造が壊れてしまうものも多い。よって、塗工膜に均質な性能を発揮させることができないほか、マイクロカプセルを密な状態となるように塗工することも非常に困難となる。また、塗工液中のマイクロカプセルの粒径や形状にばらつきがみられる場合、比較的粒径の大きなものや若干異質な形状を有するものは、押し当てたブレードの先端に引っかかりやすく、その周りで2次凝集が発生することもあり、塗工スジの大きな要因となるうえ、塗工膜厚を所定の厚みに制御することができなかったり、塗工表面に波状模様を形成してしまったりする、という問題がある。
【0005】
さらに、カーテンコーターを用いた方法は、上述したエアードクターコーターやブレードコーターを用いた方法とは異なり、一旦供給した塗工液を掻き落とすというような操作は無く、初めに供給する時点から目的の塗工膜となるよう一定の供給速度でシート上に供給していくことで塗工する方法である。よって、エアージェットやブレードによるせん断力から必然的に生じる分級作用の影響で、比較的大きなマイクロカプセルが掻き落とされてしまったり、塗工時間経過とともにマイクロカプセル濃度が高くなってしまう、というような問題は当然発生しない。さらに、初めに多量の塗工液を供給しておくということは無いので、塗工液の成分が必要以上にシートに浸透し、シート自体の膨潤を引き起こしてしまうというようなことがない点でも優れている。また、そもそもカーテンコーターを用いた方法では余計な分級作用等が無いため、粒度分布の広いマイクロカプセルを含む塗工液を塗工したい場合に適している。しかしながら、この方法においては、塗工液をシート表面に供給し塗工するにあたり、塗工液の自由落下垂直カーテンを形成させる必要があり、また、走行しているシートの表面に塗工液を流し落とすことのみで均一な塗工面を得ることが求められるため、通常、他の塗工方法に比べて粘度の低い塗工液を使用する必要がある。従って、塗工液としてマイクロカプセルを含有する液を用いる場合は、粘度を低くするために必然的にマイクロカプセルの含有量を少なくしなければならず、マイクロカプセルを所望の密な状態となるように塗工することが困難となり、ところどころに疎な部分を有する塗工膜となってしまう、という問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、マイクロカプセルを含有する塗工膜を有するシートにおいて塗工膜の表面が均一であり、塗工膜中のマイクロカプセルは壊れたり損傷を受けているものが非常に少なく、極めて緻密な状態で配され、塗工膜全体にわたって均質な性能を発揮することができるマイクロカプセル含有シートの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、近年の技術進歩に伴い産業界からも求められているより優れた性能を有するマイクロカプセル含有シートを得る方法として、これまでマイクロカプセル含有シートの製造には用いられていなかった特定の塗工コーターを用いてシート上への塗工液の塗工を行うとともに、特定の物性を有する塗工液を用いるようにする塗工工程を含む製造方法を見出した。
そこで、この製造方法によりマイクロカプセル含有シートを製造したところ、上記課題を一挙に解決し得ることを確認することができ、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかるマイクロカプセル含有シートの製造方法は、
シートを支持案内するバッキングロールと、このバッキングロールの外周面に対向する案内面を持つガイド部とを備え、前記案内面は前記バッキングロールの外周面との間隔が前記シートの移動方向に向かって次第に狭くなっていて、前記バッキングロールとの間に供給された塗工液にせん断力を掛けることで前記塗工液の前記シートへの塗工厚みを制御するようになっている塗工コーターを用い、マイクロカプセルとバインダーとを含む塗工液をプラスチックフィルムを基材とするシートの表面に連続的に塗工する工程を含むマイクロカプセル含有シートの製造方法であって、
前記塗工液は全体中の前記マイクロカプセル濃度が30〜60重量%および固形分濃度が35〜70重量%であるとともに液粘度が500〜10000mPa・sであり、かつ、前記塗工コーターは前記ガイド部の案内面の先端が前記バッキングロールの外周面との間に少し隙間を持つ塗工コーターであることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるマイクロカプセル含有シートの製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜実施し得る。
本発明にかかるマイクロカプセル含有シートの製造方法(以下、本発明の製造方法と称することがある。)は、特定の塗工コーターを用い、マイクロカプセルとバインダーとを含み特定の物性を有する塗工液を、プラスチックフィルムを基材とするシートの表面に連続的に塗工する工程(塗工工程)を含む製造方法である。
【0010】
以下、本発明の製造方法に用いる上記特定の塗工コーターについて、図1を用いて説明する。すなわち、上記特定の塗工コーターは、シート2を支持案内するバッキングロール1と、このバッキングロール1の外周面に対向する案内面3を持つガイド部4とを備え、上記案内面3は上記バッキングロール1の外周面との間隔が上記シート2の移動方向に向かって次第に狭くなっていて、上記バッキングロール1との間に供給された塗工液5にせん断力を掛けることで上記塗工液5の上記シート2への塗工厚みを制御するようになっており、上記ガイド部4の案内面の先端が上記バッキングロール1の外周面との間に少し隙間6を持つ塗工コーターである。
【0011】
上記案内面3とバッキングロールとの間に供給された塗工液5に掛かるせん断力は、案内面3とバッキングロール1の外周面との間隔がシート2の移動方向に向かって次第に狭くなっている先にある、案内面3の先端と上記バッキングロール1の外周面との間の隙間6を通過させるときに生じる。このような原理により生じるせん断力が、供給された塗工液5に掛けられて塗工が行われることによって、前述した課題を容易に解決することができる。なお、上記隙間6は、塗工工程後の塗工膜厚が所望の厚みとなるように、所定の間隔に設定しておくのが通常である。案内面3は平面であっても曲面であってもよく特に限定はされない。案内面3を持つガイド部4は、通常、所定の形状を有するブロック体であるが、板状などであってもよく、塗工中、設定した所定の隙間6を保持することのできるものであれば特に限定はされない。
【0012】
上記塗工コーターを用いるにあたり、バッキングロールに支持させたシートを移動させる速度(走行させる速度)は、特に限定はされないが、具体的には、0.1〜10m/minが好ましく、より好ましくは0.1〜7m/min、さらにより好ましくは0.1〜5m/minである。シートの走行速度が、0.1m/min未満の場合は、均一な塗工膜が得られにくく、生産性にも劣ることとなるおそれがあり、10m/minを超える場合は、マイクロカプセルのすり抜けが多くなり、均一な塗工膜が得られないおそれがある。
シート単位面積あたりの塗工液の供給量は、30〜900g/m2が好ましく、より好ましくは40〜700g/m2、さらにより好ましくは50〜500g/m2である。30g/m2未満の場合は、塗工膜の切れ等が生じ、連続的に塗工することができず均一な塗工膜が得られないおそれがあり、900g/m2を超える場合は、塗工膜が厚くなりすぎて、均一に乾燥することが困難となり、マイクロカプセル同士に隙間の無い均一な塗工膜が得られないおそれがある。
【0013】
前記塗工工程において用いることのできる塗工コーターとしては、具体的には、例えば、コンマコーターまたはリップコーターなどが挙げられるが、特に限定されるわけではなく、上に詳細に説明した塗工コーターの思想に該当しうる塗工コーター等も全て含むものとする。コンマコーターおよびリップコーターとしては、通常公知のものを用いることができる。また、コンマコーターおよびリップコーターの塗工原理の回略を図示すると、図2および図3のようになる。
以下、本発明でいう塗工液について以下に説明する。
上記塗工液は、マイクロカプセルとバインダーとを含むものである。
【0014】
上記マイクロカプセルは、特に限定はされないが、通常一般的には、隔壁層となるカプセル殻体に、液状物質などの芯物質を内包してなるものである。
カプセル殻体部分については、従来公知のマイクロカプセルにおけるカプセル殻体の原料と同様のものを用いて形成され得ることが好ましい。具体的に用いられるものとしては、例えば、コアセルベーション法を用いる場合では、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体、デンプンのフタル酸エステル、ポリアクリル酸等のアニオン性物質が好適である。In−situ重合法を用いる場合では、メラミン−ホルマリン樹脂(メラミン−ホルマリンプレポリマー)、ラジカル重合性モノマーなどが好適である。界面重合法を用いる場合では、ポリアミン、グリコール、多価フェノールなどの親水性モノマーと、多塩基酸ハライド、ビスハロホルメール、多価イソシアネートなどの疎水性モノマーとの組み合わせが好適であり、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ尿素などのカプセル殻体が形成される。
【0015】
上記カプセル殻体の原料には、さらに多価アミン等を加えることもでき、耐熱保存性などに優れたカプセル殻体を有するマイクロカプセルを得ることができる。多価アミン等の使用量は、上記カプセル殻体の原料に起因する所望の殻体物性が極端に損なわれない程度であればよい。
上記多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,3−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミンや、ポリ(1〜5)アルキレン(C2〜C6)ポリアミン・アルキレン(C2〜C18)オキシド付加物等の脂肪族多価アミンのエポキシ化合物付加物、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン、キシリレンジアミン等の芳香族多価アミン、ピペラジン等の脂環式多価アミン、3,9−ビス−アミノプロピル2,4、8,10−テトラオキサスピロ−〔5,5〕ウンデカン等の複素環式ジアミン等を好ましく挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
カプセル殻体に内包され得る芯物質としては、特に限定されるわけではなく、上述した液状物質のほか、例えば、加熱することで均一に溶解して温度が下がると固化し得る物質、具体的には、ロウ類、ロウ類を主体とするワックス、高級アルコール、ポリオレフィンワックスなどを挙げることができる。
上記液状物質としては、単に1種または2種以上の液体または混合液体であってもよいし、それら液体が微粒子等の固体物質を溶解させてなる溶液またはスラリー溶液であってもよく、特に限定はされない。また、それら液体や溶液に微粒子等(例えば熱線吸収能を有する微粒子など)の固体物質を分散させてなるもの(いわゆる分散体)であってもよいし、混合させてなるもの(いわゆる混合物)でもよい。
【0017】
上記液状物質の調製においては、用いる液体や固体物質の種類および数などは、得られるマイクロカプセルの用途分野や最終製品で要求される機能などを考慮して適宜選択すればよく、特に限定はされない。
液状物質は、特に限定はされないが、全体として油性であり水系媒体中で油滴を形成して分散し得るものが好ましい。
液状物質としては、通常一般的にマイクロカプセルの芯物質として用いることのできる従来公知の液状物質であればよく、特に限定はされないが、例えば、o−、m−またはp−キシレン、トルエン、ベンゼン、ドデシルベンゼン、ヘキシルベンゼン、フェニルキシリルエタン、ナフテン系炭化水素等の芳香族系炭化水素類;シクロへキサン、n−ヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類などの単独またはそれらの混合物を挙げることができる。これら溶媒は、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
また、必要に応じ、マイクロカプセルに内包する液状物質に添加剤を添加することもできる。液状物質中での添加剤の状態は、溶解あるいは分散した状態など、特に限定はされない。添加剤としては、例えば、染料、顔料、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、農薬、医薬、化粧料、触媒、接着剤、油用性ビタミン、金属粉、液晶、樹脂粒子などを挙げることができる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これら添加物を、液状物質に溶解あるいは分散させる場合、例えば、加熱処理、機械的処理、化学的処理(カップリング剤処理等)等を、添加の際行ってもよいし、予め添加前に行っておいてもよい。
【0019】
マイクロカプセルの形状は、特に限定はされないが、球状等の粒子状であることが好ましい。
マイクロカプセルの粒子径は、特に限定はされないが、具体的には、5〜500μmであることが好ましく、より好ましくは10〜300μm、さらにより好ましくは10〜250μmである。マイクロカプセルの粒子径が5μm未満である場合は、マイクロカプセルを均一に一層に存在させるのが困難であったり、マイクロカプセルを均一に存在させたマイクロカプセル含有シートが得られないおそれがあり、500μmを超える場合は、マイクロカプセルの強度が不十分となり、マイクロカプセルの割れが多くなるおそれがある。
【0020】
マイクロカプセルを製造するにあたっては、マイクロカプセル化工程を含む通常公知の製造方法、具体的には、例えば、コアセルベーション法(相分離法)、液中乾燥法、融解分解冷却法、スプレードライング法、パンコーティング法、気中懸濁被覆法および粉床法等のいわゆる界面沈積法や、界面重合法、In−situ重合法、液中硬化被膜(被覆)法(オリフィス法)および界面反応法(無機化学反応法)等のいわゆる界面反応法を好ましく用いることができる。なかでも、コアセルベーション法、In−situ重合法、界面重合法、液中乾燥法、融解分解冷却法がより好ましい。そして、これら各種製造方法のマイクロカプセル化工程では、カプセル殻体に内包される芯物質として前述した液状物質等を用いるようにする。このような方法であれば上記マイクロカプセルを極めて容易に得ることができるため好ましい。
【0021】
マイクロカプセル化工程を行うにあたっては、通常、液状物質等を芯物質としての状態(例えば液滴状の形態)にする必要があるが、その方法としては、気相中で噴霧や滴下等を行ったりオリフィス等を用いたりして液滴状にしてもよいし、水系媒体または非水系媒体中で分散させることにより液滴状にしてもよく、特に限定はされない。
例えば、液状物質を水系媒体に分散させる際は、水系媒体としては、特に限定はされないが、水や、水と親水性溶剤(アルコール、ケトン、エステル、グリコールなど)との混合液、水に水溶性高分子(PVA(ポリビニルアルコール)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ゼラチン、アラビアゴムなど)を溶解させた溶液、水に界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤など)を添加した溶液、または、これら水系媒体を複合した液などを好ましく用いることができる。また、液状物質を水系媒体に分散させる量は、特に限定はされないが、具体的には、水系媒体100重量部に対して、該液状物質を20〜200重量部用いることが好ましく、より好ましくは30〜150重量部である。20重量部未満であると、結果的に粒径分布の広いマイクロカプセルとなり、生産効率の低下を招くおそれがあり、200重量部を超える場合は、逆懸濁液となりマイクロカプセルが製造できなくなるおそれがある。
【0022】
マイクロカプセル化工程において、カプセル殻体原料の使用量は、特に限定はされないが、具体的には、芯物質として使用する液状物質等の1重量部に対して、1〜50重量部とすることが好ましく、より好ましくは5〜30重量部である。該使用量が上記範囲外であると、得られるマイクロカプセルにおけるカプセル殻体の厚みが前述した範囲内にならないおそれがある。
マイクロカプセル化工程を行う際には、カプセル殻体原料、液状物質等、および必要に応じて用いる水系媒体や非水系媒体の他にも、適宜他の成分を用いてもよい。
【0023】
通常、マイクロカプセル化工程によりマイクロカプセルを調製した後、必要に応じてマイクロカプセルを濾過等により単離する。例えば、液状物質を水系媒体などに分散させてマイクロカプセル化工程を行った場合は、マイクロカプセル調製後、吸引濾過や自然濾過にて該マイクロカプセルを水系媒体等から分離する。単離後は、通常公知の方法により、所望の粒径分布となるようにマイクロカプセルを分級することが好ましい。また、不純物を除去し、製品品質を向上させるため、得られたマイクロカプセルを洗浄する操作を行うことも好ましい。
上記バインダーとしては、特に限定はされないが、例えば、有機系バインダー、等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
有機系バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、フッ素樹脂系、アルキド樹脂系、アミノ樹脂系、ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリウレタン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系、フェノール樹脂系、ポリオレフィン樹脂系、シリコーン樹脂系、アクリルシリコーン樹脂系、キシレン樹脂系、ケトン樹脂系、ロジン変性マレイン酸樹脂系、液状ポリブタジエン、クマロン樹脂などの合成樹脂系バインダー;エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムなどの天然または合成のゴム系バインダー;セラック、ロジン(松脂)、エステルガム、硬化ロジン、脱色セラック、白セラックなどの天然樹脂系バインダー;硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの熱可塑性または熱硬化性高分子系バインダー等を挙げることができる。なお、上記合成樹脂系バインダーとしては、可塑性(熱可塑性)のバインダーであってもよいし、アクリル系、メタクリル系、エポキシ系などの硬化性(熱硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性、湿気硬化性、これらの併用等も含む)のバインダーを挙げることもできる。これら有機系バインダーは1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0025】
バインダーの形態としては、特に限定はなく、溶剤可溶型、水溶性型、エマルション型、分散型(水/有機溶剤等の任意の溶剤)等を挙げることができる。
水溶性型のバインダーとしては、例えば、水溶性アルキド樹脂、水溶性アクリル変性アルキド樹脂、水溶性オイルフリーアルキド樹脂(水溶性ポリエステル樹脂)、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシエステル樹脂、水溶性メラミン樹脂等を挙げることができる。
エマルション型のバインダーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル共重合ディスパージョン、酢酸ビニル樹脂エマルション、酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、スチレン−アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリル−シリコーンエマルション、フッ素樹脂エマルション等を挙げることができる。
【0026】
本発明でいう塗工液においては、マイクロカプセルおよびバインダー以外にも他の成分を必要に応じて含むことができる。例えば、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤等である。上記他の成分を含む場合、その含有割合は、マイクロカプセル等に由来する所望の性能を有する塗工膜が得られる範囲であれば、特に限定はされない。
本発明でいう塗工液においては、マイクロカプセルが均一に存在してなる塗工膜を得るため、塗工液中にマイクロカプセルを均一に分散させておくことが好ましいが、その方法・手段としては、例えば、界面活性剤等のレベリング剤の添加、および/または、水溶性高分子等の粘度調整剤の添加などを挙げることができる。
【0027】
本発明でいう塗工液において、マイクロカプセルとバインダーとの含有比率に関しては、特に限定はされないが、マイクロカプセル100重量部に対してバインダーが2〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜40重量部、さらにより好ましくは5〜30重量部である。マイクロカプセル100重量部に対してバインダーが2重量部未満の場合は、塗工したあとシート上にマイクロカプセルを固定することができずバインダーとしての効果が期待できないおそれがあり、50重量部を超える場合は、塗工液の固形分が高くなりすぎ同時に粘度も上昇し、均一な表面や均質な連続膜が得られないおそれがあり、場合によってはマイクロカプセルを密な状態で存在させることができないおそれがある。
【0028】
また、本発明でいう塗工液においては、マイクロカプセルの含有割合は、具体的には、30〜60重量%であるが、好ましくは30〜50重量%、より好ましくは30〜45重量%である。マイクロカプセルの含有割合が、30重量%未満であると、塗工膜においてマイクロカプセルを密な状態で存在させることができないおそれがあり、60重量%を超えると、塗工膜においてマイクロカプセルが多層に重なって存在する部分が多く発生しやすくなり、安定的にほぼ1層となるように塗工することができないおそれがある。通常、任意に多層の部分が多く存在してしまうと、より均質な塗工膜を得ることが極めて困難になるが、ほぼ1層の状態でマイクロカプセルを存在させると容易に均質性に優れた塗工膜を得ることが期待できる。
【0029】
本発明でいう塗工液においては、マイクロカプセルおよびバインダーを含めた固形分の割合は、具体的には、35〜70重量%であるが、好ましくは35〜60重量%、より好ましくは35〜55重量%である。固形分が、35重量%未満であると、塗工膜においてマイクロカプセルを密な状態で存在させることができないおそれがあり、70重量%を超えると、塗工膜においてマイクロカプセルが多層に重なって存在する部分が多くなりすぎるおそれがある。なお、マイクロカプセルを固形分に含めるに当たっては、マイクロカプセルのカプセル殻体やその内包物も含めたマイクロカプセル全体を固形分として扱うものとする。
【0030】
本発明でいう塗工液においては、その液の粘度は、具体的には、500〜10000mPa・sであるが、好ましくは600〜8000mPa・s、さらにより好ましくは700〜7000mPa・sである。塗工液の粘度が、500mPa・s未満の場合、塗工膜においてマイクロカプセルを密な状態で存在させることができないおそれがあり、10000mPa・sを超えると、均質性に優れた塗工膜が得られないおそれがある。
本発明でいう塗工液、すなわち上記塗工工程において用いる塗工液は、該塗工工程に用いる前に、脱泡処理されたものであることが好ましい。脱泡処理をしておくことによって、得られた塗工膜において、ピンホールの発生や、マイクロカプセル同士あるいはマイクロカプセルとシート表面との間に気泡による隙間が生じることを大きく低減することができ、また、塗工液の粘性も若干ではあるが低下し塗工状態をより安定させることなどができ、ひいては、均一な塗工表面および均質性に優れた塗工膜を容易に形成することができる。
【0031】
塗工液の脱泡処理の方法としては、通常、上述した塗工液を調製した後、減圧下で脱泡・脱気する方法や、遠心力により脱泡・脱気する方法が挙げられる。
上記塗工工程においては、上述した塗工液を、プラスチックフィルムを基材とするシートの表面に連続的に塗工する。
上記シートとしては、プラスチックフィルムそのもののみからなるシートであってもよいし、プラスチックフィルムをベースにして、その表面をコロナ処理、プラズマ処理、UV照射処理等を施したもの、または、アルミル、銅、金、銀などの金属を蒸着あるいはラミネートしたものやSnO、ZnO、ITO、SiO2等の無機酸化物をコーティングしたものなどのように別の基材や物質を重ねたものであってもよく、特に限定はされない。
【0032】
上記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンスルフィドなどを好ましく用いることができる。
本発明のマイクロカプセル含有シートの製造方法においては、上記塗工工程に引き続き、さらに、塗工工程において塗工した塗工液を加熱により乾燥する工程(乾燥工程)を含むことができる。
通常、前述した塗工工程に加え、さらに上記乾燥工程を行う場合は、塗工工程を行う装置部分と乾燥工程を行う装置部分とを共に備え、かつ、両装置部分が何らかの形で連結されている、一体型の装置において、連続的に行われることが一般的であるが、両工程を別々の装置で行うようにしてもよく、特に限定はされない。
【0033】
本発明の製造方法においては、塗工工程後(すなわち、シート表面に塗工液を塗工した後)、加熱工程を開始するまで(すなわち、塗工工程後の塗工面を加熱し始めるまで)の時間(以下、セッティング時間と称することがある。)を、特に限定はされないが、1〜10分とすることが好ましく、より好ましくは2〜10分、さらにより好ましくは2.5〜10分である。上記セッティング時間が上記範囲内であると、より緻密にマイクロカプセルを存在させた塗工膜を容易に得ることができる。セッティング時間が1分未満であると、得られた塗工膜においてマイクロカプセルを密な状態で存在させることができず、ところどころに隙間を生じてしまうおそれがあり、10分を超える場合は、例えば、塗工工程を行う装置部分と乾燥工程を行う装置部分が連結されてなる一体型装置の場合、該装置を長大とせざるを得ず、設置面積が拡大し、コスト増加など経済性にも劣り、生産性が低下するおそれがある。
【0034】
乾燥工程においては、加熱温度、乾燥時間(加熱時間)等の乾燥条件は、特に限定されるわけではなく、塗工工程後の塗工面の状態などを考慮し、適宜設定することができる。
本発明の製造方法においては、上記乾燥工程後に得られる塗工膜の厚み(塗工膜厚)が、塗工工程時の塗工液に含有させたマイクロカプセルの平均粒子径の±30%であることが好ましく、より好ましくは±27%、さらにより好ましくは±25%である。乾燥工程後の塗工膜厚が上記範囲内であることによって、マイクロカプセルを密な状態となっている均一な表面を有する均質な連続膜が得られるなどといった効果を得ることができる。また、−30%を下回る場合は、マイクロカプセルの割れが多いか、マイクロカプセルが壊れやすい状態となるおそれがあり、+30%を超える場合は、マイクロカプセルが多層に重なって存在する部分が多くなりすぎ、均一な塗工面にならないおそれがある。
【0035】
乾燥工程後の塗工膜厚を上記範囲内とするには、特に限定はされないが、例えば、塗工工程後の膜厚を所望の範囲に制御することが好ましい。
本発明のマイクロカプセル含有シートの製造方法においては、上記塗工工程や乾燥工程のほかに、さらに、塗工工程に用いる塗工液を脱泡処理する工程を含むことができる。このように、塗工工程に用いる塗工液を予め脱泡しておけば、得られた塗工膜において、ピンホールの発生や、マイクロカプセル同士あるいはマイクロカプセルとシート表面との間に気泡による隙間が生じることを大きく低減することができ、また、塗工液の粘性も若干ではあるが低下し塗工状態をより安定させることなどができ、ひいては、均一な塗工表面および均質性に優れた塗工膜を容易に形成することができる。
【0036】
塗工液を脱泡処理する方法としては、通常、上述した塗工液を調製した後、減圧下で脱泡・脱気する方法や、遠心力により脱泡・脱気する方法が挙げられる。本発明のマイクロカプセル含有シートの製造方法においては、上記塗工工程および乾燥工程以外にも、必要に応じて他の操作工程を含むことができる。例えば、UV硬化工程などを挙げることができる。
本発明の製造方法により得られるマイクロカプセル含有シートは、ノンカーボン紙や圧力測定フィルムなどといった、マイクロカプセルを表面に配した従来公知のシートと同様の用途分野に用いることができる。
【0037】
また、マイクロカプセルに内包させる物質として、各種機能を有するものを用いることにより、それら各種機能を備えたマイクロカプセル含有シートを容易に得ることができる。具体的には、例えば、所定の溶媒に熱線吸収性微粒子を分散させてなる分散体や、所定の溶媒に熱線吸収性物質を溶解させてなる溶液を、内包させた場合は、熱線吸収性に優れたシートが容易に得られるほか、シート基材として透明性に優れたものを用いれば、シート全体として優れた透明性を有し且つ熱線吸収性に優れたシートを得ることもできる。さらには、紫外線吸収剤を内包させた場合は、シート全体として優れた透明性を有し且つ紫外線を効果的に吸収し得る機能を有するシートを容易に得ることができ、液晶を内包させた場合は、液晶の光スイッチ機構を利用した機能を有するシートを容易に得ることができ、香料、農薬、除虫剤などを内包させた場合は、マイクロカプセルの持つ除放性を利用した機能を有するシートを容易に得ることができる。
【0038】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。また、「リットル」を単に「L」と記すことがある。
−実施例1−
ハイゾールSAS296(日石化学社製)261gに熱線吸収剤として(オクタキス(アニリノ)−オクタキス(フェニルチオ)バナジルフタロシアニン)2gを溶解させた熱線吸収剤溶解液を得た。
【0039】
予め水60gにアラビアゴム5.5g、ゼラチン5.5gを溶解し、43℃に保持された水溶液に同温度の熱線吸収剤溶液をディスパー(特殊機化工業社製、製品名:ROBOMICS)撹拌下に添加し、撹拌速度を徐々に上げ、回転数1500rpmで60分間撹拌し、懸濁液を得た。
この懸濁液に43℃の温水300mLを添加しながら撹拌速度も徐々に下げ500rpmとした、さらに10%NaCO3水溶液0.75mLを添加した後30分間保持した。
11mLの10%酢酸水溶液を25分間かけて定量添加した後、10℃以下に冷却した。
【0040】
冷却状態で2時間保持した後、37%ホルマリン水溶液3mLを30秒間で定量添加し、さらに10%NaCO3水溶液22mLを25分間かけて定量添加した。
次いで常温に戻し、20時間熟成を行い、熱線吸収剤溶液を内包したマイクロカプセル(1)の分散液を得た。
このマイクロカプセル(1)の粒子径をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置 LA−910(堀場製作所社製)で測定した結果、体積平均粒子径51μmであった。
【0041】
このマイクロカプセル(1)をろ過し、マイクロカプセル濃度52重量%の濾過ケーキを得た。
このマイクロカプセル濾過ケーキ102g、バインダー(第一工業製薬社製、製品名:スーパーフレックス300(濃度:30重量%))35g、1%カルボキシメチルセルロース水溶液22gを均一混合しマイクロカプセル塗工液(1)を得た。
このマイクロカプセル塗工液(1)の固形分濃度は40重量%、粘度マイクロカプセル濃度は33重量%、粘度は2250mPa・sであった。
【0042】
このマイクロカプセル塗工液(1)を用い、コンマコーターをセットした連続塗工機((株)ヒラノテクシード製)にPETフィルム(幅:250mm、フィルム厚:125μm)をセットし、連続塗工機に続いて乾燥炉(熱風温度:100℃、風量:5m/s)を準備したうえで、塗工スピード(フィルム走行速度)3.5m/min、セッティング時間180秒、乾燥時間は7分間の条件で塗工し、マイクロカプセルを塗工したシート(1)を得た。
塗工面の状態は安定しており、スジ引き(塗工スジ)、塗りむらのない良好なものであった。
【0043】
マイクロカプセルを塗工したシート(1)の乾燥塗膜の厚さは45μmであった。
このマイクロカプセルを塗工したシート(1)をマイクロスコープ((株)ハイトロン製、製品名:ハイスコープKH−2700)で観察した結果、マイクロカプセル間の隙間が殆ど無く細密充填された状態であり、かつ、マイクロカプセルが積層している箇所は極僅かで、ほぼ一層に塗工されている事が確認された。
−実施例2−
実施例1の熱線吸収剤に代えて、カヤソーブCY−17(日本化薬(株)製)を用い、溶剤中に微分散させて、熱線吸収剤分散液を得た。
【0044】
この熱線吸収剤分散液100gにマイクロカプセル形成用モノマー組成物(MMA(メチルメタクリレート)12g/St(スチレン)12g/BA(ブチルアクリレート)8g/EGDMA(エチレングリコールジメタクリレート)8g、開始剤ABNV(アゾビスバレロニトリル)((日本ヒドラジン工業(株)製)4g)を添加均一混合し、熱線吸収剤分散液組成物を得た。
予めポリビニルアルコール(クラレ(株)製、製品名:PVA205)21gを水400gに溶解した水溶液に、上記熱線吸収剤分散液組成物を添加し、実施例1と同様にディスパーを用いて、回転数1000rpmで60分間撹拌し、懸濁液を得た。
【0045】
この懸濁液を、パドル羽根をセットした1リットルのセパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気下、回転数300rpmで撹拌しながら加熱し、75℃で5時間In−Situ重合を行い、熱線吸収剤分散液を内包したマイクロカプセル(2)を得た。
このマイクロカプセル(2)の粒子径を実施例1と同様に測定した結果、体積平均粒子径120μmであった。
このマイクロカプセル(2)をろ過し、マイクロカプセル濃度43重量%の濾過ケーキを得た。
【0046】
このマイクロカプセル濾過ケーキ102g、バインダー(第一工業製薬社製、製品名:スーパーフレックス300(濃度:30重量%))50g、1%カルボキシメチルセルロース水溶液22gを均一混合しマイクロカプセル塗工液(2)を得た。
このマイクロカプセル塗工液(2)の固形分濃度は34重量%、粘度マイクロカプセル濃度は25.3重量%、粘度は3050mPa・sであった。
このマイクロカプセル塗工液(2)を用い、リップコーターをセットした連続塗工機((株)ヒラノテクシード製)にPETフィルム(幅:250mm、フィルム厚:125μm)をセットし、連続塗工機に続いて乾燥炉(熱風温度:100℃、風量:10m/s)を準備したうえで、塗工スピード(フィルム走行速度)7m/min、セッティング時間90秒、乾燥時間5分間の条件で塗工し、マイクロカプセルを塗工したシート(2)を得た。
【0047】
塗工面の状態は安定しており、スジ引き(塗工スジ)、塗りむらのない良好なものであった。
マイクロカプセルを塗工したシート(2)の乾燥塗膜の厚さは108μmであった。
このマイクロカプセルを塗工したシート(2)をマイクロスコープ((株)ハイトロン製、製品名:ハイスコープKH−2700)で観察した結果、マイクロカプセルの割れや溶媒のブリードアウト等は全く見られず、マイクロカプセル間の隙間が殆ど無く細密充填された状態であり、かつ、マイクロカプセルが積層している箇所は極僅かで、ほぼ一層に塗工されている事が確認された。
【0048】
−比較例1−
実施例1のマイクロカプセル塗工液(1)を用い、フレキシブルブレードコーターをセットした連続塗工機(川上鉄工所社製)に、実施例1と同様にPETフィルム(幅:250mm、フィルム厚:125μm)をセットし、連続塗工機に続いて乾燥炉(熱風温度:100℃、風量:5m/s)を準備するとともに、塗工スピード(フィルム走行速度)10m/min、セッティング時間40秒、乾燥時間5分間の条件で、実施例1と同じ塗工膜厚になるようコータークリアランスを調節して塗工し、マイクロカプセルを塗工したシート(c1)を得た。
【0049】
塗工面の状態においては、スジ引き(塗工スジ)の問題は無かったが、若干塗りむらが肉眼で確認された。
マイクロカプセルを塗工したシート(c1)の乾燥塗膜の厚さは56μmであった。
このマイクロカプセルを塗工したシート(c1)をマイクロスコープ((株)ハイトロン製、製品名:ハイスコープKH−2700)で観察した結果、マイクロカプセルの割れは見られなかったが溶媒のブリードアウトが見られ、マイクロカプセル間に所々の隙間が認められた、また、マイクロカプセルの積層している箇所も多数認められ、ほぼ一層には塗工されていない事が確認された。
【0050】
−比較例2−
実施例2のマイクロカプセル塗工液(2)を水で希釈し、固形分26.4重量%で、マイクロカプセル濃度19.6重量%、粘度541mPa・sの塗工液(c2)を得た。
この塗工液(c2)を用い、スロットダイで自由落下垂直カーテンを形成させたが均一なカーテンが出来ず、すぐに途切れてしまった。界面活性剤等の膜形成材を添加したが、カーテン塗工可能なカーテンを形成する事が出来なかった。
−比較例3−
比較例2で得た塗工液(c2)にさらに界面活性剤を添加し、固形分17.5重量%、マイクロカプセル濃度12.9重量%、粘度487mPa・sの塗工液(c3)を得た。
【0051】
この塗工液(c3)を用いたところ、自由垂直落下カーテンを形成することができたので、カーテン塗工を行い、マイクロカプセルを塗工したシート(c3)を得た。
得られたシート(c3)の乾燥塗膜の厚さは95μmであった。
このマイクロカプセルを塗工したシート(c3)を、マイクロスコープ((株)ハイトロン製、製品名:ハイスコープKH−2700)で観察した結果、マイクロカプセルの割れ、溶媒のブリードアウトは全く認められなかったが、マイクロカプセル間に隙間が多く認められ、かつ、マイクロカプセルが多層に積層している部分も多く認められた。
〔得られたマイクロカプセル含有シートの熱線吸収能の評価〕
1辺が20cmの正四角柱の容器を透明アクリル板で作成し、このアクリル容器の中央部の温度を測定出来るよう温度センサーがセットした。
【0052】
このアクリル容器上面より真上に30cm離れた位置に、500Wの赤外線ランプをセットした、
赤外線ランプを点灯し10分間照射した際のアクリル容器内の温度上昇を測定した結果18.3℃の上昇が認められた。
次いで、アクリル容器内温を常温に戻し、アクリル容器上部を実施例1で得られたシート(1)で全面カバーした状態で赤外線ランプを10分間照射しアクリル容器の温度上昇を測定した結果、12.6℃の温度上昇であった。
同様に実施例2で得られたシート(2)で全面カバーした時の温度上昇は9.8℃であった。
【0053】
同様に比較例1で得られたシート(c1)で全面カバーした時の温度上昇は15.9℃であった。
同様に比較例3で得られたシート(c3)で全面カバーした時の温度上昇は18.3℃であった。
以上の結果から、熱線吸収剤を内包したマイクロカプセルを塗工したシートにおいては高い熱線吸収効果が確認されたが、マイクロカプセルが隙間無く塗工されていないと効果が大きく低下することが分かった。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、マイクロカプセルを含有する塗工膜を有するシートにおいて塗工膜の表面が均一であり、塗工膜中のマイクロカプセルは壊れたり損傷を受けているものが非常に少なく、極めて緻密な状態で配され、塗工膜全体にわたって均質な性能を発揮することができる、マイクロカプセル含有シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いることのできる塗工コーターの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の製造方法に用いることのできるコンマコーターの一例を示す概略図である。
【図3】本発明の製造方法に用いることのできるリップコーターの一例を示す概略図である。
【図4】従来のマイクロカプセル含有シートの製造方法において用いられていたブレードコーターの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 バッキングロール
2 シート
3 案内面
4 ガイド部
5 塗工液
6 隙間
7 ブレード
Claims (6)
- シートを支持案内するバッキングロールと、このバッキングロールの外周面に対向する案内面を持つガイド部とを備え、前記案内面は前記バッキングロールの外周面との間隔が前記シートの移動方向に向かって次第に狭くなっていて、前記バッキングロールとの間に供給された塗工液にせん断力を掛けることで前記塗工液の前記シートへの塗工厚みを制御するようになっている塗工コーターを用い、マイクロカプセルとバインダーとを含む塗工液をプラスチックフィルムを基材とするシートの表面に連続的に塗工する工程および塗工した塗工液を加熱により乾燥する工程を含むマイクロカプセル含有シートの製造方法であって、
前記塗工液は全体中の前記マイクロカプセル濃度が30〜60重量%および固形分濃度が35〜70重量%であるとともに液粘度が500〜10000mPa・sであり、かつ、前記塗工コーターは前記ガイド部の案内面の先端が前記バッキングロールの外周面との間に隙間を持つ塗工コーターであり、かつ
前記乾燥する工程後の塗工膜厚が前記マイクロカプセルの平均粒子径の−30%から+30%の範囲である
ことを特徴とする、マイクロカプセル含有シートの製造方法。 - 前記マイクロカプセルの平均粒子径が10〜250μmである、請求項1に記載の製造方法。
- 前記塗工する工程における塗工速度が0.1〜10m/minである、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記塗工コーターがコンマコーターまたはリップコーターである、請求項1から3までのいずれかに記載の製造方法。
- 前記塗工する工程で塗工した後前記乾燥する工程で加熱するまでの時間が1〜10分である、請求項1から4までのいずれかに記載の製造方法。
- 前記塗工する工程に用いる塗工液を脱泡処理する工程を含む、請求項1から5までのいずれかに記載の製造方法。
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