JP2004275916A - 単分散粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】精度よく、単分散粒子を製造する方法を提供する。
【解決手段】連続相としての第1液体中に、分散相となりかつ前記第1液体と反応する第2液体を、オリフィスを介して、液滴で吐出する。前記オリフィスを形成するオリフィスプレート面に対する前記第2液体の接触角が、該オリフィスプレート面に対する前記第1液体の接触角より大きくなるように構成される。また、前記オリフィスプレート面が前記第1液体中に浸漬された状態で、前記第2液体を、該オリフィスから第1液体中に吐出する。
【解決手段】連続相としての第1液体中に、分散相となりかつ前記第1液体と反応する第2液体を、オリフィスを介して、液滴で吐出する。前記オリフィスを形成するオリフィスプレート面に対する前記第2液体の接触角が、該オリフィスプレート面に対する前記第1液体の接触角より大きくなるように構成される。また、前記オリフィスプレート面が前記第1液体中に浸漬された状態で、前記第2液体を、該オリフィスから第1液体中に吐出する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単分散粒子を、精度よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
単分散粒子の製造方法として、湿式法と乾式法とが代表的なものとして知られているが、医薬品や、液晶用スペーサ、デジタルペーパー、電気泳動等の表示デバイス、塗料や印刷などに配合される艶消剤などの分野においては、粒径の均一性が要求されるため、単分散粒子は、主として湿式法により製造されている。
【0003】
従来、マイクロカプセルや単質材料からなる単分散粒子の湿式法による製造方法としては、「マイクロカプセル―その機能と応用」(発行所 日本規格協会、発行日 1991年3月20日)、「最新マイクロカプセル化技術」(発行所 (株)総合技術センター、発行日 1990年4月20日)等に紹介されている通り、界面沈積法(例えば、相分離法や、液中乾燥法、融解分散冷却法、懸濁被覆法)や、界面反応法(例えば、界面重合法や、in situ重合法、液中硬化被覆法、界面反応法)等の二種以上の液体間における反応による方法が、代表的な方法として知られている。
しかしながら、これら従来の湿式法は、撹拌条件や材料濃度調整により単分散粒子の粒径をコントロールするため、そのコントロールが困難で、乾式法ほどではないにしろ、バラツキが生じていた。また、マイクロカプセルの場合には、粒径だけでなく、皮膜厚を所望のものに、コントロールすることは困難であった。
【0004】
そこで、これら従来の湿式法による問題点を解決する方法として、マイクロカプセルを構成する部材の一部を含む液体からなる被吐出液体中に、マイクロカプセルを構成する部材の残りを含む液体を、前記被吐出液体の上方に位置するインクジェット式ヘッドのオリフィスから吐出し、両液体間の反応によりマイクロカプセルを製造する方法も開発されてきている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−232178号公報
【0006】
この方法は、オリフィスより吐出された液体が、ほぼ均一な大きさの液滴となり、被吐出液中に供給されるため、理論的には、均一なマイクロカプセルが製造されることが考えられる。
しかしながら、この製造方法は、吐出された液体が、被吐出液体に到達するまでに液滴の大きさが変化しやすく、また、吐出された液体が、液体面の抵抗等によって被吐出液体の深部中に入って行くのが難しく、被吐出液体の表面付近に分布し易く、更に、吐出される液滴の間隔が狭い場合、被吐出液体表面に到達する前に液滴同士が合一する場合があり、その結果、均一な単分散粒子が得にくいという問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、このような従来技術の課題を背景になされたもので、精度よく、単分散粒子を製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するため、鋭意検討した結果、以下の方法により、上記課題が達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は、連続相としての第1液体中に、分散相となりかつ前記第1液体と反応する第2液体を、オリフィスを介して、液滴で吐出し、前記第1液体中で単分散粒子を製造する方法において、前記オリフィスを形成するオリフィスプレート面に対する前記第2液体の接触角が、該オリフィスプレート面に対する前記第1液体の接触角より大きく、かつ前記オリフィスが前記第1液体中に浸漬された状態で、前記第2液体を、該オリフィスから前記第1液体中に吐出することを特徴とする、単分散粒子の製造方法に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明は、後述するインクジェット式ヘッド等のオリフィスより、連続相である第1液体中に、該第1液体中で粒子状の分散相となる第2液体を吐出させ、両液体間の接触表面で反応が生じ、固体状態の単分散粒子を製造させる方法であり、前記分散相となる第2液体を吐出させる際、オリフィスのオリフィスプレート面が、前記連続相である第1液体中に浸漬された状態で吐出させることを特徴(特徴1)としている。
また、前記オリフィスプレート面が、該プレート面に対する前記分散相となる第2液体の接触角が、該プレート面に対する前記連続相である第1液体の接触角より大きいことを特徴(特徴2)としている。
【0010】
本発明の前記特徴1により、前記特許文献1の方法のように吐出した分散相となる第2液体の液滴が、被吐出液体に到達するまでに大気の影響を受けず、そのため、吐出した液滴の大きさの変化が少なく、均一な液滴となり、その結果、均一な単分散粒子が形成する効果が得られる。
また、前記特徴2により、分散相となる第2液体の吐出された液滴が、連続相の第1液体中の深部に移動しやすくなり、液滴同士が合一することがなく、その結果、均一な単分散粒子が形成する効果が得られる。なお、前記オリフィスプレート面に対する前記分散相となる液体の接触角が、前記連続相である第1液体の接触角と同じ、もしくは小さいプレート面を使用した場合は、分散相となる第2液体の吐出された液滴が、連続相の第1液体中の深部に移動し難く、オリフィスプレート面付近に分布しやすくなり、液滴同士が合一し易く、その結果、均一な単分散粒子が得難くなるので好ましくない。
【0011】
なお、本発明において、接触角は、液滴法(例えば、協和界面科学(株)製の接触角計CA−X型)にて測定される。
本発明において、連続相である第1液体と、該連続相である第1液体中で分散相となった第2液体(液滴)としては、両液体が界面で接触することにより反応し、分散相となった第2液体(液滴)表面が固体化した粒子となるものであれば、各種液体の組み合わせが利用可能である。
具体的には、例えば、ポリアミン、ポリオール等の活性水素含有化合物と、酸クロライド、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂等の化合物との組み合わせや、ゼラチンカチオン化合物と、アラビヤゴムアニオン化合物との組み合わせ、メラミンとホルマリン又は尿素との組み合わせ、その他「最新マイクロカプセル化技術」(発行所 (株)総合技術センター、発行日 1990年4月20日)等に紹介されている各種組み合わせが可能である。
【0012】
なお、本発明において、両液体の組み合わせとしては、液体である化合物同志の組み合わせは、もちろん、固形である化合物であっても、該化合物を溶解もしくは安定に分散する溶媒と併用して、液体状態にしたものの組み合わせでもよい。また、これら液体は、必要に応じ、両液体の少なくとも一方側に、前記反応を促進する硬化促進剤や、接触角を調整する界面活性剤、顔料、染料、導電剤、防腐剤等の各種機能を付与する添加剤を含ませることも可能である。また、本発明において、両液体間での反応は、液体同志全体が反応する必要はなく、それぞれの液体を構成する一部成分同志が反応し、それにより単分散粒子を形成するものであってもよい。
次に、本発明の単分散粒子の製造方法について、図1に基づき説明する。
図1は、インクジェット式ヘッド1を、連続相である第1液体2中に浸漬した状態で、オリフィスプレート4により形成されるオリフィス6を介して分散相となる第2液体3を吐出し、液滴5を形成する概略説明図である。
【0013】
なお、図1では、ヘッド1個の場合の例を示しているが、必要に応じて、連接した複数のヘッドからなるものを使用し、同時に複数の液滴を形成する方式であってもよい。また、図1では、オリフィスプレート4の面の向きが、重力方向に対し水平である場合について示しているが、必ずしも水平である必要ない。
ヘッド1中に導入された分散相となる第2液体5は、一定圧力又は一定間隔の圧力変化により、オリフィス6から前記連続相である第1液体中に吐出される。なお、分散相となる第2液体に、一定圧力を加える方法としては、例えば、水位差を利用する方法や、シリンジ、ポンプ等により一定速度で押す方法等が代表的な方法として挙げられる。また、一定間隔の圧力を変化させる方法としては、例えば、シリンジピストンを振動させる方法や、ピエゾ素子を利用した方法等が代表的な方法として挙げられる。
【0014】
オリフィス6の口径は、通常、0.1〜500μm、好ましくは、10〜100μmのものが適当であり、0.1μm未満であると、ノズル詰まりが生じ易くなり、一方、500μmを越えると、均一な吐出制御が困難となり、均一な液滴を形成しにくくなる傾向にある。
また、吐出速度は、特に制限ないが、1〜5000滴/秒、好ましくは、500〜3000滴/秒が適当である。
本発明においては、オリフィス6は、液体を吐出できるものであれば、特に制限されるものではない。好適に使用されるオリフィス6は、インクジェット式ヘッドのオリフィスが挙げられる。
オリフィスプレート4の面は、前述の通り、分散相となる第2液体の吐出された液滴5が、連続相の第1液体2中の深部に移動し易く、オリフィスプレート面付近に分布するのを防止するため、その表面特性は重要である。即ち、オリフィスプレート面に対する前記分散相となる第2液体の接触角が、前記オリフィスプレート面に対する前記連続相である第1液体の接触角より大きくなっていればよい。そのため、オリフィスプレートは、少なくとも、その表面が、上記のような特性を有するように加工又は素材により形成されていればよい。但し、プレート面の素材は、両液体と化学反応等により変質しないものを選択する必要がある。
【0015】
オリフィスプレート面の素材としては、例えば、セラミックや、ガラス、各種金属などの無機質材料や、各種プラスチックなどの有機質材料が好適に挙げられる。
これらオリフィスプレート面の素材自体が、前記接触角条件を満たすものであれば、それを無処理のまま使用できるが、分散相となる第2液体と連続相の第1液体との種類により、前記接触角条件を満たさない場合には、オリフィスプレート面の素材表面を表面処理することにより、前記接触角条件を満たせばよい。
表面処理する方法としては、前記接触角条件を満たすように、例えば、各種樹脂を塗布する方法や、金属もしくはその酸化物を蒸着する方法、樹脂や金属からなるフィルムを貼り付ける方法、素材表面をレーザー光・紫外光の照射処理、プラズマ放電処理、酸処理等で改質させる方法等が代表的なものとして挙げられるが、これら方法に限定されるものではない。
【0016】
一般的に、分散相となる第2液体と、連続相の第1液体との関係が、W/O(オイル イン ウォーター)であれば、オリフィスプレート面の素材は、シリコーン樹脂や、フッ素樹脂等で親油性にすることが適当である。一方、O/Wであれば、素材表面をレーザー光・紫外光の照射処理、プラズマ放電処理、酸処理、酸化チタン、シリカ、アルミナなどの蒸着処理、あるいはポリビニルアルコール等の親水性樹脂塗布等にて、親水性とするのが適当である。
【0017】
なお、オリフィスプレート面は、液滴を吐出させるオリフィスがある側の、連続相である第1液体に接する面であるが、該面は、その全面について、前記接触角条件を満たすようにするのが望ましいが、場合により、オリフィス周辺のオリフィスプレート面だけ前記接触角条件を満たすようにしたものであってもよい。
接触角は、前述の通り、オリフィスプレート面に対する前記分散相となる第2液体の接触角が、前記オリフィスプレート面に対する前記連続相である第1液体の接触角より大きいことが必要であるが、好ましくは、前記オリフィスプレート面に対する分散相となる第2液体の接触角θが、10°<θ<180°であり、オリフィスプレート面に対する連続相である第1液体の接触角θが、0°<θ<150°であり、かつ、前者の接触角が後者の接触角より10°以上、特に好ましくは、70°以上大きいものが望ましい。
【0018】
本発明は、この様にして連続相である第1液体中で、分散相となる第2液体を液滴の状態で分散させ、ヘッドを連続相である第1液体中から取り出した後、自然放置や、必要に応じて、加熱等により反応完了させ、単分散粒子を製造する。この様にして製造した単分散粒子は、用途に応じて、そのままで、もしくは、連続相である液体中より取り出し、乾燥させることにより、製品化される。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
実施例1〜3及び比較例1
分散相となる20℃の第2液体〔水99質量部と、ジエチレントリアミン1質量部とからなる混合物〕を、インクジェット吐出装置[HEK−1(コニカ(株)製)、オリフィス口径20μm]にて、該装置の表1に示す素材のオリフィスプレート面を、連続相である20℃の第1液体〔トルエン450質量部と、エポキシ樹脂[エピコート1001(ジャパン エポキシ レジン(株)製)]45質量部と、縮合リシンレイン酸ヘキサグリセリン5質量部とからなる混合物〕に浸漬させた状態で、吐出速度1000滴/秒にて吐出させた。
吐出終了後、50℃まで加温し、4時間保持した。
得られた分散液について、単分散粒子の粒度分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置[SALD−3100S((株)島津製作所製)]にて測定し、その結果を表1の下段に示した。
なお、実施例1〜3及び比較例1は、W/O状態のものである。
【0020】
【表1】
表1
【0021】
注1)表面をフッ素樹脂塗料[Vフロン(大日本塗料(株)製)]で被覆。
注2)A:オリフィスプレート素材に対する分散相となるの第2液体の接触角
B:オリフィスプレート素材に対する連続相である第1液体の接触角
注3)粒径分布の変動係数CV(CV値小さいほど粒径均一)
【0022】
実施例4〜5及び比較例2〜3
分散相となる10℃の第2液体〔ドデカン88質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート10質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプ[タケネートD177N(三井武田ケミカル(株)製)]2質量部とからな混合物〕を、インクジェット吐出装置[HEK−1(コニカ(株)製)、オリフィス口径20μm]にて、該装置の表2に示す素材のオリフィスプレート面を、連続相である10℃の第1液体〔水495質量部と、ポリビニルアルコール5質量部とからなる混合物〕に浸漬させた状態で、吐出速度800滴/秒にて吐出させた。
吐出終了後、80℃まで加温し、6時間保持した。
得られた分散液について、単分散粒子の粒度分布を測定し、その結果を表2の下段に示した。
なお、実施例4〜5及び比較例2〜3は、O/W状態のものである。
【0023】
【表2】
表2
【0024】
表1及び表2の結果からも明らかな通り、本発明の製造方法である実施例1〜5においては、均一な単分散粒子が得られた。一方、オリフィスプレート面に対する分散相となる第2液体体の接触角が、オリフィスプレート面に対する連続相である第1液体の接触角より小さい比較例1〜3では、いずれも不均一な粒子となった。
【0025】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、精度よく、単分散粒子を製造させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオリフィスから分散相となる第2液体が、連続相である第1液体中に吐出され、第2液体の液滴が深部まで移動する状態を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、単分散粒子を、精度よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
単分散粒子の製造方法として、湿式法と乾式法とが代表的なものとして知られているが、医薬品や、液晶用スペーサ、デジタルペーパー、電気泳動等の表示デバイス、塗料や印刷などに配合される艶消剤などの分野においては、粒径の均一性が要求されるため、単分散粒子は、主として湿式法により製造されている。
【0003】
従来、マイクロカプセルや単質材料からなる単分散粒子の湿式法による製造方法としては、「マイクロカプセル―その機能と応用」(発行所 日本規格協会、発行日 1991年3月20日)、「最新マイクロカプセル化技術」(発行所 (株)総合技術センター、発行日 1990年4月20日)等に紹介されている通り、界面沈積法(例えば、相分離法や、液中乾燥法、融解分散冷却法、懸濁被覆法)や、界面反応法(例えば、界面重合法や、in situ重合法、液中硬化被覆法、界面反応法)等の二種以上の液体間における反応による方法が、代表的な方法として知られている。
しかしながら、これら従来の湿式法は、撹拌条件や材料濃度調整により単分散粒子の粒径をコントロールするため、そのコントロールが困難で、乾式法ほどではないにしろ、バラツキが生じていた。また、マイクロカプセルの場合には、粒径だけでなく、皮膜厚を所望のものに、コントロールすることは困難であった。
【0004】
そこで、これら従来の湿式法による問題点を解決する方法として、マイクロカプセルを構成する部材の一部を含む液体からなる被吐出液体中に、マイクロカプセルを構成する部材の残りを含む液体を、前記被吐出液体の上方に位置するインクジェット式ヘッドのオリフィスから吐出し、両液体間の反応によりマイクロカプセルを製造する方法も開発されてきている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−232178号公報
【0006】
この方法は、オリフィスより吐出された液体が、ほぼ均一な大きさの液滴となり、被吐出液中に供給されるため、理論的には、均一なマイクロカプセルが製造されることが考えられる。
しかしながら、この製造方法は、吐出された液体が、被吐出液体に到達するまでに液滴の大きさが変化しやすく、また、吐出された液体が、液体面の抵抗等によって被吐出液体の深部中に入って行くのが難しく、被吐出液体の表面付近に分布し易く、更に、吐出される液滴の間隔が狭い場合、被吐出液体表面に到達する前に液滴同士が合一する場合があり、その結果、均一な単分散粒子が得にくいという問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、このような従来技術の課題を背景になされたもので、精度よく、単分散粒子を製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するため、鋭意検討した結果、以下の方法により、上記課題が達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は、連続相としての第1液体中に、分散相となりかつ前記第1液体と反応する第2液体を、オリフィスを介して、液滴で吐出し、前記第1液体中で単分散粒子を製造する方法において、前記オリフィスを形成するオリフィスプレート面に対する前記第2液体の接触角が、該オリフィスプレート面に対する前記第1液体の接触角より大きく、かつ前記オリフィスが前記第1液体中に浸漬された状態で、前記第2液体を、該オリフィスから前記第1液体中に吐出することを特徴とする、単分散粒子の製造方法に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明は、後述するインクジェット式ヘッド等のオリフィスより、連続相である第1液体中に、該第1液体中で粒子状の分散相となる第2液体を吐出させ、両液体間の接触表面で反応が生じ、固体状態の単分散粒子を製造させる方法であり、前記分散相となる第2液体を吐出させる際、オリフィスのオリフィスプレート面が、前記連続相である第1液体中に浸漬された状態で吐出させることを特徴(特徴1)としている。
また、前記オリフィスプレート面が、該プレート面に対する前記分散相となる第2液体の接触角が、該プレート面に対する前記連続相である第1液体の接触角より大きいことを特徴(特徴2)としている。
【0010】
本発明の前記特徴1により、前記特許文献1の方法のように吐出した分散相となる第2液体の液滴が、被吐出液体に到達するまでに大気の影響を受けず、そのため、吐出した液滴の大きさの変化が少なく、均一な液滴となり、その結果、均一な単分散粒子が形成する効果が得られる。
また、前記特徴2により、分散相となる第2液体の吐出された液滴が、連続相の第1液体中の深部に移動しやすくなり、液滴同士が合一することがなく、その結果、均一な単分散粒子が形成する効果が得られる。なお、前記オリフィスプレート面に対する前記分散相となる液体の接触角が、前記連続相である第1液体の接触角と同じ、もしくは小さいプレート面を使用した場合は、分散相となる第2液体の吐出された液滴が、連続相の第1液体中の深部に移動し難く、オリフィスプレート面付近に分布しやすくなり、液滴同士が合一し易く、その結果、均一な単分散粒子が得難くなるので好ましくない。
【0011】
なお、本発明において、接触角は、液滴法(例えば、協和界面科学(株)製の接触角計CA−X型)にて測定される。
本発明において、連続相である第1液体と、該連続相である第1液体中で分散相となった第2液体(液滴)としては、両液体が界面で接触することにより反応し、分散相となった第2液体(液滴)表面が固体化した粒子となるものであれば、各種液体の組み合わせが利用可能である。
具体的には、例えば、ポリアミン、ポリオール等の活性水素含有化合物と、酸クロライド、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂等の化合物との組み合わせや、ゼラチンカチオン化合物と、アラビヤゴムアニオン化合物との組み合わせ、メラミンとホルマリン又は尿素との組み合わせ、その他「最新マイクロカプセル化技術」(発行所 (株)総合技術センター、発行日 1990年4月20日)等に紹介されている各種組み合わせが可能である。
【0012】
なお、本発明において、両液体の組み合わせとしては、液体である化合物同志の組み合わせは、もちろん、固形である化合物であっても、該化合物を溶解もしくは安定に分散する溶媒と併用して、液体状態にしたものの組み合わせでもよい。また、これら液体は、必要に応じ、両液体の少なくとも一方側に、前記反応を促進する硬化促進剤や、接触角を調整する界面活性剤、顔料、染料、導電剤、防腐剤等の各種機能を付与する添加剤を含ませることも可能である。また、本発明において、両液体間での反応は、液体同志全体が反応する必要はなく、それぞれの液体を構成する一部成分同志が反応し、それにより単分散粒子を形成するものであってもよい。
次に、本発明の単分散粒子の製造方法について、図1に基づき説明する。
図1は、インクジェット式ヘッド1を、連続相である第1液体2中に浸漬した状態で、オリフィスプレート4により形成されるオリフィス6を介して分散相となる第2液体3を吐出し、液滴5を形成する概略説明図である。
【0013】
なお、図1では、ヘッド1個の場合の例を示しているが、必要に応じて、連接した複数のヘッドからなるものを使用し、同時に複数の液滴を形成する方式であってもよい。また、図1では、オリフィスプレート4の面の向きが、重力方向に対し水平である場合について示しているが、必ずしも水平である必要ない。
ヘッド1中に導入された分散相となる第2液体5は、一定圧力又は一定間隔の圧力変化により、オリフィス6から前記連続相である第1液体中に吐出される。なお、分散相となる第2液体に、一定圧力を加える方法としては、例えば、水位差を利用する方法や、シリンジ、ポンプ等により一定速度で押す方法等が代表的な方法として挙げられる。また、一定間隔の圧力を変化させる方法としては、例えば、シリンジピストンを振動させる方法や、ピエゾ素子を利用した方法等が代表的な方法として挙げられる。
【0014】
オリフィス6の口径は、通常、0.1〜500μm、好ましくは、10〜100μmのものが適当であり、0.1μm未満であると、ノズル詰まりが生じ易くなり、一方、500μmを越えると、均一な吐出制御が困難となり、均一な液滴を形成しにくくなる傾向にある。
また、吐出速度は、特に制限ないが、1〜5000滴/秒、好ましくは、500〜3000滴/秒が適当である。
本発明においては、オリフィス6は、液体を吐出できるものであれば、特に制限されるものではない。好適に使用されるオリフィス6は、インクジェット式ヘッドのオリフィスが挙げられる。
オリフィスプレート4の面は、前述の通り、分散相となる第2液体の吐出された液滴5が、連続相の第1液体2中の深部に移動し易く、オリフィスプレート面付近に分布するのを防止するため、その表面特性は重要である。即ち、オリフィスプレート面に対する前記分散相となる第2液体の接触角が、前記オリフィスプレート面に対する前記連続相である第1液体の接触角より大きくなっていればよい。そのため、オリフィスプレートは、少なくとも、その表面が、上記のような特性を有するように加工又は素材により形成されていればよい。但し、プレート面の素材は、両液体と化学反応等により変質しないものを選択する必要がある。
【0015】
オリフィスプレート面の素材としては、例えば、セラミックや、ガラス、各種金属などの無機質材料や、各種プラスチックなどの有機質材料が好適に挙げられる。
これらオリフィスプレート面の素材自体が、前記接触角条件を満たすものであれば、それを無処理のまま使用できるが、分散相となる第2液体と連続相の第1液体との種類により、前記接触角条件を満たさない場合には、オリフィスプレート面の素材表面を表面処理することにより、前記接触角条件を満たせばよい。
表面処理する方法としては、前記接触角条件を満たすように、例えば、各種樹脂を塗布する方法や、金属もしくはその酸化物を蒸着する方法、樹脂や金属からなるフィルムを貼り付ける方法、素材表面をレーザー光・紫外光の照射処理、プラズマ放電処理、酸処理等で改質させる方法等が代表的なものとして挙げられるが、これら方法に限定されるものではない。
【0016】
一般的に、分散相となる第2液体と、連続相の第1液体との関係が、W/O(オイル イン ウォーター)であれば、オリフィスプレート面の素材は、シリコーン樹脂や、フッ素樹脂等で親油性にすることが適当である。一方、O/Wであれば、素材表面をレーザー光・紫外光の照射処理、プラズマ放電処理、酸処理、酸化チタン、シリカ、アルミナなどの蒸着処理、あるいはポリビニルアルコール等の親水性樹脂塗布等にて、親水性とするのが適当である。
【0017】
なお、オリフィスプレート面は、液滴を吐出させるオリフィスがある側の、連続相である第1液体に接する面であるが、該面は、その全面について、前記接触角条件を満たすようにするのが望ましいが、場合により、オリフィス周辺のオリフィスプレート面だけ前記接触角条件を満たすようにしたものであってもよい。
接触角は、前述の通り、オリフィスプレート面に対する前記分散相となる第2液体の接触角が、前記オリフィスプレート面に対する前記連続相である第1液体の接触角より大きいことが必要であるが、好ましくは、前記オリフィスプレート面に対する分散相となる第2液体の接触角θが、10°<θ<180°であり、オリフィスプレート面に対する連続相である第1液体の接触角θが、0°<θ<150°であり、かつ、前者の接触角が後者の接触角より10°以上、特に好ましくは、70°以上大きいものが望ましい。
【0018】
本発明は、この様にして連続相である第1液体中で、分散相となる第2液体を液滴の状態で分散させ、ヘッドを連続相である第1液体中から取り出した後、自然放置や、必要に応じて、加熱等により反応完了させ、単分散粒子を製造する。この様にして製造した単分散粒子は、用途に応じて、そのままで、もしくは、連続相である液体中より取り出し、乾燥させることにより、製品化される。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
実施例1〜3及び比較例1
分散相となる20℃の第2液体〔水99質量部と、ジエチレントリアミン1質量部とからなる混合物〕を、インクジェット吐出装置[HEK−1(コニカ(株)製)、オリフィス口径20μm]にて、該装置の表1に示す素材のオリフィスプレート面を、連続相である20℃の第1液体〔トルエン450質量部と、エポキシ樹脂[エピコート1001(ジャパン エポキシ レジン(株)製)]45質量部と、縮合リシンレイン酸ヘキサグリセリン5質量部とからなる混合物〕に浸漬させた状態で、吐出速度1000滴/秒にて吐出させた。
吐出終了後、50℃まで加温し、4時間保持した。
得られた分散液について、単分散粒子の粒度分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置[SALD−3100S((株)島津製作所製)]にて測定し、その結果を表1の下段に示した。
なお、実施例1〜3及び比較例1は、W/O状態のものである。
【0020】
【表1】
表1
【0021】
注1)表面をフッ素樹脂塗料[Vフロン(大日本塗料(株)製)]で被覆。
注2)A:オリフィスプレート素材に対する分散相となるの第2液体の接触角
B:オリフィスプレート素材に対する連続相である第1液体の接触角
注3)粒径分布の変動係数CV(CV値小さいほど粒径均一)
【0022】
実施例4〜5及び比較例2〜3
分散相となる10℃の第2液体〔ドデカン88質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート10質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプ[タケネートD177N(三井武田ケミカル(株)製)]2質量部とからな混合物〕を、インクジェット吐出装置[HEK−1(コニカ(株)製)、オリフィス口径20μm]にて、該装置の表2に示す素材のオリフィスプレート面を、連続相である10℃の第1液体〔水495質量部と、ポリビニルアルコール5質量部とからなる混合物〕に浸漬させた状態で、吐出速度800滴/秒にて吐出させた。
吐出終了後、80℃まで加温し、6時間保持した。
得られた分散液について、単分散粒子の粒度分布を測定し、その結果を表2の下段に示した。
なお、実施例4〜5及び比較例2〜3は、O/W状態のものである。
【0023】
【表2】
表2
【0024】
表1及び表2の結果からも明らかな通り、本発明の製造方法である実施例1〜5においては、均一な単分散粒子が得られた。一方、オリフィスプレート面に対する分散相となる第2液体体の接触角が、オリフィスプレート面に対する連続相である第1液体の接触角より小さい比較例1〜3では、いずれも不均一な粒子となった。
【0025】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、精度よく、単分散粒子を製造させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオリフィスから分散相となる第2液体が、連続相である第1液体中に吐出され、第2液体の液滴が深部まで移動する状態を示す図。
Claims (3)
- 連続相としての第1液体中に、分散相となりかつ前記第1液体と反応する第2液体を、オリフィスを介して、液滴で吐出し、前記第1液体中で単分散粒子を製造する方法において、前記オリフィスを形成するオリフィスプレート面に対する前記第2液体の接触角が、該オリフィスプレート面に対する前記第1液体の接触角より大きく、かつ前記オリフィスプレート面が前記第1液体中に浸漬された状態で、前記第2液体を、該オリフィスから前記第1液体中に吐出することを特徴とする、単分散粒子の製造方法。
- 前記オリフィスプレート面に対する前記第2液体の接触角θが、10°<θ<180°であり、前記オリフィスプレート面に対する前記第1液体の接触角θが、0°<θ<150°であり、かつ、前記第2液体の接触角θが、前記第1液体の接触角θより10°以上大きい、請求項1に記載の単分散粒子の製造方法。
- 前記オリフィスの口径が、0.1〜500μmである、請求項1又は請求項2に記載の単分散粒子の製造方法。
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