JP4616602B2 - 単分散粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
従来、マイクロカプセルや単質材料からなる単分散粒子の湿式法による製造方法としては、「マイクロカプセル−その機能と応用」(発行所 日本規格協会、発行日 1991年3月20日)、「最新マイクロカプセル化技術」(発行所 (株)総合技術センター、発行日1990年4月20日)等に紹介されているとおり、界面沈積法(例えば、相分離法や、液中乾燥法、融解分散冷却法、懸濁被覆法)や、界面反応法(例えば、界面重合法や、in situ重合法、液中硬化被覆法、界面反応法)等の二種以上の液体間における反応による方法が、代表的な方法として知られている。
そこで、これら従来の湿式法による問題点を解決する方法として、単分散粒子を構成する反応性成分を含む第1液体中に、前記反応性成分と反応する別の成分を含む第2液体を、前記第1液体中に浸漬した吐出口を介して、振動を利用して吐出し、両液体間の反応により単分散粒子を製造する方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
この方法は、吐出孔より吐出された液滴が、ほぼ一定の大きさの液滴となって、第1液体中に供給されるため、理論的には、均一な単分散粒子が製造できると考えられた。
上記問題を発生させる要因は、主として二つ存在すると考えられる。まず一つは、振動によって生じる液滴が、振動数や、滴下される液体の種類、気温、その他の滴下条件により、大きさにばらつきが生じ得るため、生成した単分散粒子の均一性が、必ずしも良好とならない点にある。二つ目としては、サテライト粒子の発生がある。サテライト粒子は、目的とする粒子径よりも小さな粒子径の粒子である。その発生は、液滴を2つに分離する際に、液滴同士が引き延ばされ、細く線状となった液体部分が千切れるときに生じる。
また、滴下した液滴が、吐出口の周辺にまとわりつく現象も、目的外の粒子の発生を促進する要因となっている。
即ち、本発明は、以下の発明に関するものである。
1.(1)シリンジを、その胴部の前端に設けられた針部が連続相としての第1液体中に浸漬された状態で保持する工程であって、前記シリンジは、その胴部に、前記第1液体と反応する第2液体を収容するとともに、該記第2液体を前方の針部に駆動するピストンを有する工程、
(2)前記ピストンを駆動して、前記第2液体を、前記シリンジの針部先端の開孔から、前記第1液体中に、液滴として吐出する工程、
を含む、単分散粒子の製造方法に関するものである。
(4)前記工程(2)において、前記ピストンを前方に駆動することにより、前記シリンジの該針部先端の開孔から、前記コア−シェル粒子を含む前記第2液体を、前記第1液体中に液滴で吐出する工程、
を有する方法。
3.(1)第1シリンジを、その胴部の前端に設けられた針部が連続相としての第1液体中に浸漬された状態で保持する工程であって、前記第1シリンジは、その胴部に、前記第1液体と反応する第2液体を収容するとともに、該記第2液体を前方の針部に駆動するピストンを有する工程、
(2)前記ピストンを前方に駆動して、前記第2液体を、前記シリンジの針部先端の開孔から、前記第1液体中に、液滴として吐出して、第2液体を芯成分とし、前記第1液体と前記第2液体との反応により生成し且つ前記第2液体の芯成分の周りを包囲する殻成分からなるコア−シェル粒子を調製する工程、
(3)第2シリンジを、その胴部の前端に設けられた針部が連続相としての前記第1液体と反応する第3液体中に浸漬された状態で保持する工程であって、前記第2シリンジは、その胴部に、前記工程(2)で得られたコア−シェル粒子を含む第1液体を収容するとともに、該記第1液体を前方の針部に駆動するピストンを有する工程、
(4)前記ピストンを前方に駆動して、前記第1液体を、前記シリンジの針部先端の開孔から、前記第3液体中に、液滴として吐出する工程、
を含み、前記第1シリンジの針部の内径が、5〜1500μmであり、且つ前記第2シリンジの針部の内径が、10〜3000μmである多核構造の単分散粒子の製造方法。
本発明は、後述するシリンジの針部より、連続相である第1液体中に、該第1液体中で分散相となる第2液体を液滴で吐出させ、両液体間の接触面で反応を生じさせ、単分散粒子を製造させる方法である。シリンジを用いることで、振動を利用した吐出方式と比較して、吐出する液体の粘度に影響されることなく、より高い精度で均一な粒子径の単分散粒子を得ることが可能となる。
本発明では前記分散相となる第2液体が、シリンジの針部が前記連続相である第1液体中に浸漬された状態で、その吐出孔から液滴として吐出されることを特徴(特徴1)としている。この特徴1により、分散相を連続相に滴下する際に、大気の影響を受けることがないため、吐出された液滴の大きさに変動が少なく、均一な液滴となり、その結果、均一な単分散粒子を形成する効果が得られる。
なお、本発明において、接触角は、液滴法(例えば、協和界面化学(株)製の接触角系CA−X型)にて測定される。
具体的には、例えば、ポリアミンや、ポリオール等の活性水素含有化合物と、酸クロライド、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂等の化合物との組み合わせや、ゼラチンカチオン化合物と、アラビヤゴムアニオン化合物との組み合わせ、メラミンとホルマリン又は尿素との組み合わせ、その他「最新マイクロカプセル化技術」(発行所 (株)総合技術センター、発行日 1990年4月20日)等に紹介されている各種組み合わせが可能である。
本発明において、両液体の組み合わせとしては、液体同士の組み合わせは、もちろん、固体である化合物であっても、該化合物を溶解もしくは安定に分散する溶媒と併用して、液体状態にしたものの組み合わせでもよい。また、これら液体は、必要に応じ、両液体を少なくとも一方に前記反応を促進する反応促進剤や遅延する反応遅延剤、接触角を調整する界面活性剤、顔料、染料、導電剤、防腐剤等の各種機能を付与する添加剤を含ませることも可能である。また、本発明において、両液体間での反応は、液体同士全体が反応する必要はなく、それぞれの液体を構成する一部成分同士が反応し、それにより単分散粒子を形成するものであってもよい。
本発明において、第1液体の粘度は、例えば、0.3〜500mPa・s、好ましくは、1〜450mPa・sであることが適当である。第1液体の粘度が、0.3mPa・sより小さくなると、サテライト粒子が発生しやすくなる。一方、第1液体の粘度が、500mPa・sより高くなると、第2液体の吐出がスムーズに行われなくなる傾向にある。
第2液体の粘度は、例えば、0.6〜1000mPa・s、好ましくは、2〜900mPa・sであることが適当である。第2液体の粘度が、0.6mPa・sより小さくなると、サテライト粒子が発生しやすくなる。また、第2液体の粘度が、1000mPa・sより高くなると、第2液体の吐出がスムーズに行われなくなり、単分散粒子の製造効率が低下する傾向にある。
図1は、シリンジ1の胴部の前端に設けられている針部4を、連続相である第1液体2中に浸漬した状態で、その胴部の後方に取り付けられているピストン6を先方に駆動することにより、胴部に収容されている第2液体3を、針部4の先端開孔から、液滴で、第2液体と反応する第1液体2中に吐出し、コア−シェル構造の液滴5を形成する概略説明図である。
図1では、シリンジ1個の場合の例を示しているが、必要に応じて、連接した複数のシリンジを使用し、同時に複数の液滴を形成する方式であってもよい。また、図1では、針部4の向きが、重力方向に対して垂直である場合について示しているが、必ずしも垂直である必要はない。
第2液体をシリンジで吐出する際の吐出速度は、例えば、50〜6000個/分が好ましく、60〜5000個/分であることが更に好ましい。吐出速度が50個/分より遅いと、均一な単分散粒子を得ることが困難となる。一方、吐出速度が6000個/分より早いと、サテライト粒子の発生が促進され、均一な単分散粒子を得ることが困難となり易い。
針部4の内径は、例えば、5〜1500μm、好ましくは、10〜1000μm、特に好ましくは、20〜600μmである。内径を上記範囲内とすることにより、良好な吐出性を保持した状態で、より均一な単分散粒子を得ることができる。
針部4の連続相に接している側の面の素材としては、例えば、セラミックや、ガラス、各種金属などの無機質材料や、各種プラスチックなどの有機質材料が好適に上げられる。
表面処理する方法としては、前記接触角条件を満たすように、例えば、各種樹脂を塗布する方法や、金属もしくはその酸化物を蒸着する方法、樹脂や金属からなるフィルムを貼り付ける方法、素材表面をレーザー光や紫外光の照射処理、プラズマ放電処理、酸処理等で改質させる方法等が代表的なものとして挙げられるが、これら方法に限定されるものではない。
針部の連続相との接触面は、その全面について、前記接触角条件を満たすようにするのが望ましいが、場合により、開孔周辺のみ前記接触角条件を満たすようにしたものであってもよい。
本発明は、このようにして連続相である第1液体中で、分散相となる第2液体を液滴で分散させ、シリンジの針部を連続相である第1液体中に浸漬したまま、もしくは、第1液体中から取り出した後、自然放置や、必要に応じて加熱等により反応完了させ、単分散粒子を製造する。このようにして製造した単分散粒子は、用途に応じてそのままで、もしくは、連続相である液体中より取り出し、乾燥させることにより、製品化される。
本発明では、上記単分散粒子の製造方法を応用することにより、単分散粒子中に更に細かい粒子を含んむ多核単分散粒子を得ることができる。
多核単分散粒子を得る方法として一つは、第2液体を胴部に収容しているシリンジの針部先端の開孔から、ピストン6を後方に駆動して、第1液体を液滴でその第2液体中に吸引し、シリンジの胴部内で第2液体と、液滴の第1液体とを反応させて、第1液体を芯成分とするコア−シェル粒子を生成させし、次いで、得られたコア−シェル粒子を含有する第2液体を、ピストン6を前方に駆動して、シリンジ1の針部先端の開孔からそのコア−シェル粒子を含有する第1液体中に液滴で吐出する方法である。
吐出の方法、第1液体及び第2液体としての原料、その条件等は、前述した単分散粒子の製造方法に準じて行うことができる、第2液体中に生成した粒子の数、大きさ等によっては、吐出時の圧力を高める必要があり、その際の圧力としては、例えば、1000kPaを限度として上昇させることができる。
まず、第2液体を、針部を第1液体中に浸漬したシリンジを用いて、第1液体中に液滴で吐出する。この段階で用いるシリンジの針部の内径は、5〜1500μmが好ましく、10〜1000μmがより好ましく、20〜600μmが更に好ましい。内径が5μmより小さいと、第2液体の吐出が困難となる。内径が1500μmより大きいと、次工程での吐出時に針部先端の開孔がつまり、吐出が困難となる。
吐出の方法、第1液体及び第2液体としての原料、その条件等は、前述した単分散粒子の製造方法に準じて行うことが可能であるが、第1液体中に生成した粒子の数、大きさ等によっては、吐出時の圧力を高めることも可能であり、その際の圧力としては、例えば、1000kPaを限度として上昇させることが可能である。
分散相となる20℃の第2液体〔水とポリビニルアルコール(質量平均分子量500)とジエチレントリアミンからなる、表1に示す質量割合の混合物〕を、連続相である20℃の第1液体〔トルエンとエポキシ樹脂〔エピコート828(ジャパン エポキシ レジン(株)製)〕と縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン(サンソフト(株)製)からなる表1に示す質量割合の混合物〕を液滴で吐出した。
実施例1〜2に関しては、図1に示されるように、針部を第1液体中に浸漬したマイクロディスペンサー〔Σ-MX9000SMII(武蔵エンジニアリング社製)〕を用いて行った。針部及び開孔の内径は40μm、吐出時の圧力は7kPa、吐出時間は20ミリ秒、吐出速度は300個/分の条件にて吐出を行った。
一方、比較例1〜2では、液滴の吐出を、第1液体中に浸漬したピエゾ式インクジェット吐出装置〔HEK−1(コニカミノルタ(株)製)、オリフィス口径40μm〕を用いて行った。吐出条件は、D時間(Draw Time)12μ秒、RR時間(Release and Reinforce Time)24μ秒の条件で、下記表に示すRR電圧をかけることにより吐出を行った。
なお、実施例と条件を合わせるため、ピエゾ式インクジェット吐出装置の吐出孔の連続相と接している隔壁の面は、マイクロスペンサーの針部開孔と同様に、ポリ四フッ化エチレンで形成されているものを使用した(下記表面参照)。
上記各方法にて、第1液体中に第2液体を吐出し、吐出終了後、50℃まで加温し、4時間保持した。
得られた分散液の画像は、顕微鏡(BX51:OLYMPUS(株)製)を通しCCDカメラ(DXC−990MD:SONY(株)製)で撮影し、コンピューターに取り込み、WinRoof(三谷商事(株)製)を用い基準スケール(OB‐M 1/100:OLYMPUS(株)製)によるキャリブレーション行った後、個々の単分散粒子の粒径分布を測定した(粒子の測定個数は200以上)。その結果を表1の下段に示した。
注3)粒径分布の変動係数CV(CV値小さいほど粒径均一)
(評価)◎:CV=10%以下 、○:CV=11〜20%
△:CV=21〜30%、×:CV=30%越える、又は粒子出来ず
マイクロディスペンサー〔Σ-MX9000SMII(武蔵エンジニアリング社製)〕にて、内径40μmの針部を20℃の第1液体〔水485質量部、ポリビニルアルコール10質量部、ジエチレントリアミン5質量部とからなる混合物:粘度4mPa・s〕に浸漬させた状態で、分散相となる20℃の第2液体〔ドデカン82質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート3質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプ15質量部とからなる混合物:粘度16mPa・s〕の第1液体内への吐出と、第1液体のシリンジ胴部内への吸引を交互に行った。なお、上記操作は、圧力−0.5kPa、吸引時間2ミリ秒、吸引速度300個/分で、第1液体をシリンジ胴部内に吸引し、シリンジ胴部内で第1液体と第2液体を反応させてコア−シェル粒子を形成させ、該コア−シェル粒子を含有する第2液体を、吐出時間20ミリ秒、7kPaの圧力、吐出速度300個/分で第1液体中に吐出した。
吐出終了後、80℃まで加温し、6時間保持した。
得られた分散液について、単分散粒子の粒度分布を測定したところ、粒径分布の変動係数CVが10%以下であり、更に顕微鏡にて粒子を確認したところ、多核構造と単核構造の単分散粒子の混合物であることが確認できた。また、サテライト粒子は、観察されなかった。
マイクロディスペンサー〔Σ-MX9000SMII(武蔵エンジニアリング社製)〕にて、内径20μmの針部を20℃の第1液体〔水485質量部、ポリビニルアルコール10質量部、ジエチレントリアミン5質量部とからなる混合物:粘度4mPa・s〕に浸漬させた状態で、分散相となる20℃の第2液体〔ドデカン82質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート3質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプ15質量部とからなる混合物:粘度16mPa・s〕の第1液体内への吐出を行った。なお、上記操作は、吐出速度300個/分、吐出時間は20ミリ秒、9kPaの圧力で吐出を行い、第1液体と単分散粒子の混合液を得た。
次に、内径100μmの針部を上記第2液体中に浸漬した状態で、上記単分散粒子を含有する第1液体を、吐出速度120個/分、吐出時間は20ミリ秒、6kPaの圧力で吐出した。
吐出終了後、80℃まで加温し、6時間保持した。
得られた分散液について、単分散粒子の粒度分布を測定したところ、粒径分布の変動係数CVが10%以下であり、更に顕微鏡にて粒子を確認したところ、多核構造と単核構造の単分散粒子の混合物であることが確認できた。また、サテライト粒子は、観察されなかった。
2 第1液体
3 第2液体
4 針部
5 液滴
6 ピストン
Claims (6)
- (1)シリンジを、その胴部の前端に設けられた針部が連続相としての第1液体中に浸漬された状態で保持する工程であって、前記シリンジは、前記胴部に、前記第1液体と反応する第2液体を収容するとともに、該記第2液体を前方の針部に駆動するピストンを有する工程、
(2)前記ピストンを後方に駆動して、前記第1液体を、まず、前記針部の開孔から吸引して、前記シリンジの胴部中の前記第2液体内に液滴で吸引して、前記第1液体を芯成分とし、前記第1液体と前記第2液体との反応により形成されかつ前記第1液体の芯成分の周りを包囲する殻成分からなるコア−シェル粒子を形成させる工程、
(3)前記ピストンを前方に駆動することにより、前記シリンジの該針部の開孔から、前記コア−シェル粒子を含む前記第2液体を、前記第1液体中に液滴で吐出する工程、
を含むことを特徴とする、単分散粒子の製造方法。 - 前記第1液体に接している前記針部の表面に対する前記第2液体の接触角が、該表面に対する前記第1液体の接触角より大きい、請求項1に記載の方法。
- 前記第1液体に接している前記針部の表面に対する前記第2液体の接触角θが、10°<θ<180°であり、前記針部の表面に対する前記第1液体の接触角θが、0°<θ<150°であり、且つ前記第2液体の接触角θが、該表面に対する前記第1液体の接触角θより10°以上大きい、請求項2に記載の方法。
- 前記針部の内径が、5〜1500μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 前記第1液体の粘度が、0.3〜500mPa・sであり、前記第2液体の粘度が、0.6〜1000mPa・sである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 前記第2液体の吐出速度が、50個/分〜6000個/分である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
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