JP2005059199A - 立体構造物の製造方法および微細立体構造物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶液が供給される微細径の針状流体吐出体101の先端に近接して基板100を配設するとともに、前記針状流体吐出体101に任意波形電圧を印加することにより前記基板表面に対して流体の超微細径液滴102を吐出させ、該液滴102を基板100へ飛翔、付着させ、付着後該流体液滴を固化する立体構造物105の製造方法。
【選択図】図1(a)
Description
しかし、インクジェットで立体構造物を作製しようとする場合、解決すべきいくつかの課題が存在する。一つには、インクジェットで吐出するのは通常、液体で、そのままでは立体的に積み重なることはない。このために、積み重ねるには固化させるための別の手段が必要になる。
また、従来のインクジェット記録方式には、超微細立体構造を作製するために解決すべき以下の根本的な問題があった。
<超微細液滴の吐出の困難性>
現在、実用化され広く用いられているインクジェット方式(ピエゾ方式やサーマル方式)では、1pl(ピコリットル)を下回るような微少量の液体の吐出は困難である。この理由は、ノズルが微細になるほど吐出に必要な圧力が大きくなるためである。
<着弾精度の不足>
ノズルから吐出した液滴に付与される運動エネルギーは、液滴半径の3乗に比例して小さくなる。このため、微細液滴は空気抵抗に耐えるほどの十分な運動エネルギーを確保できず、空気対流などにより、正確な着弾が期待できない。さらに、液滴が微細になるほど、表面張力の効果が増すために、液滴の蒸気圧が高くなり蒸発量が大きくなる(本発明においては、特に断らない限り、「蒸発」とは揮発の意味も含むものとする。)。このため微細液滴は、飛翔中の著しい質量の消失を招き、着弾時に液滴の形態を保つことすら難しいという事情があった。
その他、インクジェット方式を用いた特殊な方法としては、低融点のはんだ合金(鉛スズ合金)をピエゾ型インクジェットで吐出することで、高さ60μm程度の立体構造を形成することも行われている。この方式では、インクとして比重の大きなはんだ合金を用いることで、飛翔液滴の運動エネルギーをある程度大きくしている。しかしながら、液滴の直径は数十μm〜100μm程度であった(例えば、非特許文献1)。
また、はんだを使ったインクジェットによる立体構造物形成では、着弾時の温度低下による固化を利用している(例えば、特許文献2および特許文献3)。したがって、上記の手法では、吐出する流体の種類が、融点によって制約されてしまう。
また、電界を用いて成膜する方法としては、静電塗装などが知られているが、これは均一に強固な塗膜を得ることを目的としたもので、立体構造の形成はできない。
上記のように、従来のインクジェット方式では、超微細な立体構造物、例えば柱状の微細構造物の作製は難しい。
微細な立体構造物、なかでもアスペクト比(構造物の断面もしくは底面の短径に対する高さ方向の長さの比(高さ/断面直径))の高い構造物は、ナノテクノロジーをはじめ、例えば、表面実装基板におけるスルーホールや、バンプなど多くの応用用途がある。例えば、特許文献3には、断面直径が25μmの柱状立体構造物をバンプとして利用し、積層集積回路ユニットを製造する方法が開示されているが、さらに精度よく、しかも微細化することができれば、より小型かつ高密度の集積回路の製造も可能となる。
さらに本発明は、上記微細立体構造物を製造する方法において、多様な材料を用いることを可能とすることを目的とする。
(1)溶液が供給される微細径の針状流体吐出体の先端に近接して基板を配設するとともに、前記針状流体吐出体に任意波形電圧を印加することにより前記基板表面に対して流体の超微細径液滴を吐出させ、該液滴を基板へ飛翔、付着させ、付着後該流体液滴を固化することを特徴とする立体構造物の製造方法、
(2)前記基板上に先に付着した液滴固化物に電界を集中させ、その上に、後から付着する液滴を積み重ねる(1)項記載の立体構造物の製造方法、
(3)前記液滴固化物よりなる立体物の頂点に電界集中させ、前記立体物の頂点に前記飛翔液滴を堆積させ、立体物を成長させることを特徴とする(1)または(2)項記載の立体構造物の製造方法、
(4)立体構造物の断面直径を、前記針状流体吐出体から吐出させた液滴の揮発性により制御することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
(5)前記流体が金属超微粒子を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法、
(6)前記流体が高分子溶液であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法、
(7)前記流体がセラミックス超微粒子を含む溶液であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法、
(8)前記流体がセラミックスのゾル−ゲル溶液であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法、
(9)前記流体が低分子溶液であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法、
(10)前記流体が、金属超微粒子を含む溶液、高分子溶液、セラミックス超微粒子を含む溶液、セラミックスのゾル−ゲル溶液、および低分子溶液からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む(1)〜(4)のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法、
(11)吐出する前記液滴のサイズが、直径15μm以下であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法、
(12)前記液滴のサイズが、直径5μm以下であることを特徴とする(11)項記載の立体構造物の製造方法、
(13)前記液滴のサイズが、直径3μm以下であることを特徴とする(11)項記載の立体構造物の製造方法、
(14)前記液滴の乾燥固化時間が、2秒以下であることを特徴とする(1)〜(13)のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法、
(15)前記乾燥固化時間が、1秒以下であることを特徴とする(14)項記載の立体構造物の製造方法、
(16)前記乾燥固化時間が、0.1秒以下であることを特徴とする(14)項記載の立体構造物の製造方法、
(17)前記液滴の飛翔速度が4m/s以上であることを特徴とする(1)〜(16)のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法、
(18)前記飛翔速度が6m/s以上であることを特徴とする(17)項記載の立体構造物の製造方法、
(19)前記飛翔速度が10m/s以上であることを特徴とする(17)項記載の立体構造物の製造方法、
(20)前記流体の飽和蒸気圧未満の雰囲気において行われることを特徴とする(1)〜(19)のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法、
(21)吐出する前記流体の誘電率が1以上であることを特徴とする(1)〜(20)のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法、
(22)超微細粒径の液滴を固形化、積重ねて成長させてなる微細径の立体構造物、
(23)アスペクト比が2以上である(22)項記載の立体構造物、
(24)前記アスペクト比が3以上である(23)項記載の立体構造物、
(25)前記アスペクト比が5以上である(23)項記載の立体構造物、
(26)前記液滴の粒径が直径15μm以下であることを特徴とする(22)〜(25)のいずれか1項に記載の立体構造物、
(27)前記液滴の粒径が直径5μm以下であることを特徴とする(26)項記載の立体構造物、および
(28)前記液滴の粒径が直径3μm以下であることを特徴とする(26)項記載の立体構造物。
さらに本発明の立体構造物の製造方法によれば、作製に要するエネルギー消費量が極めて小さく、フォトマスクの作製や、金型の製作といった事前準備が不要で、試作が容易に可能である。しかも、必要な場所に必要なだけの量の資源を投入できるという利点がある。また本発明の立体構造物は、電子材料などさまざまな微細構造物に活用することができる。
本発明の立体構造物の製造方法では、超微細インクジェットに加えられた電界による効果で、針状流体吐出体(以下、「ノズル」ともいう。)の先端部に向かう応力が、絶えず先行して付着した液滴(以下、「先行着弾液滴」ともいう。)が固化して形成された構造物の先端部に作用する。つまり、いったん構造物の成長が始まると、後述の図3で説明するような電界を、構造物の頂点に集中することができる。このため、吐出した液滴を、先行して付着した構造物の頂点に、確実に精度よく着弾することができるのである。
さらに、上記の電界による効果で、常にノズル方向へ引っ張りながら成長させることができ、アスペクト比の高い構造物でも倒れることなく形成することができる。これらの効果により効率よく立体構造の成長を促すことができる。
基板は、絶縁体でも導電体でも構わない。構造物の成長にあわせ、駆動電圧、駆動電圧波形、駆動周波数などを変化させても構わない。
<ノズルを大幅に移動した場合:図1(b)(I)>
まず、初期位置にあるノズル201によって立体構造物203を形成する。その後ノズルを大幅に、基板と平行方向に、移動してノズル201aから液滴202aを吐出した場合、初期の立体構造物203とノズル201aの先端の間には電界の作用が及ばないため、液滴202aは、立体構造物203の影響を受けず、新たな着地点に立体構造物203aを形成した。
一方、ノズルから生じる電界が作用する範囲内で小幅に移動してノズル201bから液滴202bを吐出した場合、初期の立体構造物203とノズル201bの先端との間に電界が作用し、液滴202bは電気力線に沿って飛翔するため、立体構造物203の頂点に吸い寄せられ付着する。このような状況で吐出を継続すると、初期の立体構造物203の頂点付近から、ノズル201bに向う方向に、枝分かれ状の立体構造物203bが成長した。
枝分かれ状の立体構造物203bを成長させた後、さらに小幅に移動してノズル201cから液滴202cを吐出した場合、立体構造物203bとノズル201cの先端との間には電界が作用するため、液滴202cは立体構造物203bの頂点に吸い寄せられ付着する。液滴202cの吐出を継続すると、立体構造物203bの先端からノズル201cに向かう方向に、さらに枝分かれした立体構造物203cが成長した。
実際にノズルを小きざみに移動して形成した立体構造物の例を図1(c)に示す。
上記(I)〜(III)の事実は、本発明の立体構造物の製造方法では、ノズル先端と立体構造物の頂点に電界を生じさせ、該頂点に液滴を吸い寄せることにより、正確な着弾を実現していることを裏付けるものである。したがって、通常、着弾精度の維持が困難なほど微少な液滴においても、本発明の製造方法によれば、後から飛来する液滴を誘導して確実に堆積することができ、精度の高い立体構造物の形成ができるのである。
本発明の立体構造物の製造方法に用いられる微細液滴を形成する液体材料は、超微細液滴ジェット装置(以下、単に「インクジェット装置」ともいう。)の針状の流体吐出体から少量づつ流体を飛翔させ、基板に付着させることができる液体であれば、どのようなものでもよい。
例えば、金属超微粒子ペースト、ポリビニルフェノールのエタノール溶液(例えば、マルカリンカー(商品名))などの高分子溶液、セラミックスのゾル−ゲル液、オリゴチオフェンのような低分子溶液を用いることができる。
これらの溶液の1種を用いてもよく、複数の溶液を組み合わせて用いてもよい。
乾燥速度がある程度速く、乾燥により粘度が大きく変化するものは、立体構造物の形成材料として好ましく使用できる。
乾燥固化する時間、液滴の飛翔速度、雰囲気中の溶媒の蒸気圧などは形成材料となる溶液に応じて適宜設定可能である。
好ましい条件としては、乾燥固化時間は2秒以下が好ましく、1秒以下がより好ましく、0.1秒以下が特に好ましい。また、飛翔速度は、好ましくは4m/s以上であり、6m/s以上がより好ましく、10m/s以上が特に好ましい。飛翔速度に上限は特に無いが、20m/s以下が実際的である。雰囲気は溶媒の飽和蒸気圧未満で行われることが好ましい。
本発明の立体構造物の製造方法では、超微細インクジェットを用いて微細液滴を吐出させる。微細液滴は表面張力の作用や、比表面積の大きさなどにより、溶剤の蒸発速度が極めて大きくなる。とくに、液滴が微細になるほど表面張力の効果が増大するために、液滴の蒸気圧が高くなり蒸発量が激しくなる。このため、せっかく微細液滴を生成できても基板に到達する前に消失してしまうことさえあり得る。しかし、本発明の立体構造物の製造方法では、液滴を帯電することにより蒸発を適度に抑制し、従来の技術では不可能であった微細な液滴においても目的物へ確実に着弾することを可能にしている。
断面直径の制御範囲は、作業効率も考慮すると、断面直径を大きくする場合に、ノズル先端の内径の20倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましい。小さくする場合には、ノズル先端の内径の1/10を下限とすることが好ましく、1/5以上がより好ましく、1/2以上が特に好ましい。
図2は、本発明の実施に好適な超微細流体ジェット装置の一実施態様を一部断面により示したものである。図中1は、超微細径のノズルである。超微細液滴サイズ実現のためには、低コンダクタンスの流路をノズル1の近傍に設けるか、またはノズル1自身を低コンダクタンスのものにすることが好ましい。このためには、ガラス製の微細キャピラリーチューブが好適であるが、導電性物質に絶縁材でコーティングしたものでも可能である。ノズル1をガラス製とすることが好ましい理由は、容易に数μm程度のノズルを形成できること、ノズルのつまり時には、ノズル端を破砕することにより、新しいノズル端が再生できること、ガラスノズルの場合、テーパー角がついているために、ノズル先端部に電界が集中しやすく、また不要な溶液が表面張力によって上方へと移動し、ノズル端に滞留せず、つまりの原因にならないこと、および、適度な柔軟性を持つため、可動ノズルの形成が容易であること等による。また、低コンダクタンスとは、好ましくは10−10m3/s以下である。また、低コンダクタンスの形状とは、それに限定されるものではないが、例えば、円筒形状の流路においてその内径を小さくしたり、または、流路径が同一でも内部に流れ抵抗となるような構造物を設けたり、屈曲させたり、もしくは、弁を設けた形状などが挙げられる。
またノズルの先端の外径は、上記のノズルの先端の内径に応じて適宜に定まるが、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは8μm以下である。ノズルは針状であることが好ましい。
ノズル1は、キャピラリーチューブに限らず、微細加工により形成される2次元パターンノズルでもよい。あるいは、針状の電極と流体を供給するノズルを別体に形成し、近接して位置させる構造でも差し支えない。
また、ノズル1内には吐出すべき溶液3が充填される。このとき、ノズル内に電極を挿入した場合には、電極2は溶液3に浸されるように配置される。溶液3は、図示しない溶液源から供給される。ノズル1は、シールドゴム4およびノズルクランプ5によりホルダー6に取り付けられ、圧力が漏れないようになっている。
圧力調整器7で調整された圧力は圧力チューブ8を通してノズル1に伝えられる。
以上のノズル、電極、溶液、シールドゴム、ノズルクランプ、ホルダー及び圧力ホルダーは側面断面図で示されている。ノズルの先端に近接して基板13が基板支持体14により配設されている。
コンピューター9からの吐出信号は、任意波形発生装置10に送られ制御される。
任意波形発生装置10より発生した任意波形電圧は、高電圧アンプ11を通して、電極2へと伝えられる。ノズル1内の溶液3は、この電圧により帯電する。これによりノズル先端の集中電界強度を高めるものである。
また、図示しないが、ノズル位置検出によるフィードバック制御を行い、ノズル1を基板13に対し一定に保つようにする。また、基板13を、導電性または絶縁性の基板ホルダーに裁置して保持するようにしてもよい。
本発明の実施態様の超微細流体ジェット装置は、コンパクトで設置の自由度が高いため、マルチノズル化を容易に行うことができる。本発明の製造方法には、国際公開第03/070381号に記載されている超微細流体ジェット装置を好ましく使用することができる。
図4は、本発明の一実施態様における吐出開始電圧Vcのノズル径d依存性を示したものである。流体溶液として、銀のナノメートルオーダーの径の粒子を分散させたペーストを用いたもので、ノズルと基板との距離100μmの条件で測定したものである。微細ノズルになるに従い吐出開始電圧が低下し、従来法に比べ、より低電圧で吐出可能なことが分かる。
図5は、本発明の一実施態様における印字ドット直径(以下、「ドット径」と呼ぶこともある。)の印加電圧依存性を示したものである。ドット径dすなわちノズル径が小さくなるに従い、吐出開始電圧V、すなわち駆動電圧が低下することが分かる。図5より明らかなように、1000Vをはるかに下回る低電圧で吐出が可能である。具体的には直径1μm程度のノズルを用いた場合、駆動電圧は200V台にまで低下するという著しい効果が得られる。この結果は、従来の課題であった低駆動電圧化を解決し、装置の小型化、ノズルの高密度のマルチ化を可能するものである。
ドット径は、電圧によって制御可能である。また、印加電圧パルスのパルス幅を調整することでも制御できる。なお、図4、図5における電圧は、パルスのピークと中心値の幅で示している。また、印加する電圧は交流であっても、直流であっても、もしくは任意のパルス波形であってもよい。この際、吐出時間と休止時間の間隔やデューティー比を調整することで、着弾液体の乾燥状態などを制御し、構造物の形状を制御することが可能である。
図2に示すインクジェット装置のノズル1先端のクリーニングについては、ノズル1内に高圧を付加すると共に、基板13とノズル1先端とを接触させ、固体化した溶液を基板13にこすりつける方法や、基板13に接触させることで、ノズル1と基板13間のわずかな間隙に働く毛細管力を利用することで行う。
また、溶液充填前にノズル1を溶媒に浸し、毛細管力によりノズル1内へ溶媒を少量充填することにより、最初のノズルの詰まりを回避できる。また、印字途中に詰まった場合、溶媒中にノズルを浸けることにより除去が可能である。
さらに、基板13上に滴下した溶媒にノズル1を浸して、同時に圧力や電圧等を加えることも有効である。
使用する溶液の種類によって一概にはいえないが、一般的に低蒸気圧、高沸点の溶媒、例えばテトラデカンなどには有効である。
また、後に述べるように、電圧の印加方法として交流駆動を用いることで、ノズル内の溶液に攪拌効果を与え均質性を保つとともに、溶媒と溶質の帯電性が著しく異なる場合には、溶液の平均組成よりも溶媒過剰の液滴と、溶質過剰の液滴を交互に吐出することにより、ノズルの詰まりが緩和される。また、溶液の性質に合わせ、溶媒と溶質の帯電特性と、極性、パルス幅を最適化することで、組成の時間変化を最小化し、長期間安定した吐出特性が維持できる。
X−Y−Zステージ上に、基板ホルダーを配置し、基板13の位置を操作することが実用的であるが、これにとらわれず、逆にX−Y−Zステージ上にノズル1を配置することも可能である。
ノズルと基板との距離は、位置微調整装置を用いて適当な距離に調整する。
また、ノズルの位置調整は、レーザー測距計による距離データを元にZ軸ステージをクローズドループ制御により移動させ、1μm以下の精度で一定に保つことができる。
従来のラスタスキャン方式では、連続した線を形成する際に、着弾位置精度の不足や、吐出不良などにより配線がとぎれてしまうケースも起こりうる。このため、本実施の形態においては、ラスタスキャン方式に加え、ベクトルスキャン方式を採用してもよい。単ノズルのインクジェットを用いて、ベクトルスキャンにより回路描画を行うこと自体については、例えば、ジャーナル・オブ・マイクロエレクトロメカニカル・システム(Journal of Microelectromechanical systems), S. B. Fuller et al., Vol. 11, No.1, p.54 (2002)に記載されている。
ラスタスキャン時には、コンピュータ画面上で対話式に描画箇所を指定できるような新たに開発した制御ソフトを用いてもよい。また、ベクトルスキャンの場合も、ベクトルデータファイルを読み込むことで、自動的に複雑パターン描画が可能である。ラスタスキャン方式としては、通常のプリンタによって行われている方式を適宜用いることができる。また、ベクトルスキャン方式としては、通常のプロッタで用いられている方式を適宜用いることができる。
例えば、使用ステージとして、シグマ光機製のSGSP−20−35(XY)と、Mark−204コントローラーを用い、また、制御用ソフトウエアとしてナショナルインスツルメンツ製のLabviewを使用して、自作し、ステージの移動速度を1μm/sec〜1mm/secの範囲内でもっとも良好な描画となるように調整した場合を考える。この場合、ステージの駆動は、ラスタスキャンの場合は、1μm〜100μmピッチで移動させその動きに連動させ、電圧パルスにより吐出を行うことができる。また、ベクトルスキャンの場合はベクトルデータに基づき、連続的にステージを移動させることができる。ここで用いられる基板としては、ガラス、金属(銅、ステンレスなど)、半導体(シリコン)、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
本発明の立体構造物の製造方法により実現される液滴は超微細であるために、インクに用いる溶媒の種類にもよるが、基板に着弾すると瞬間的に蒸発し、液滴は瞬間的にその場に固定される。このときの乾燥速度は従来技術によって生成されるような数十μmのサイズの液滴が乾燥する速度に比べ、桁違いに速い。これは、液滴の微細化により蒸気圧が著しく高くなるためである。ピエゾ方式などを用いた従来技術では、本発明の製造方法で形成される立体構造物ほどの微細ドットの形成は困難で、また着弾精度も悪い。
前記図2に示したインクジェット装置を用い、図6に示す立体構造物を作製した。
市販の金属銀超微粒子ペースト(数nm(代表値:5nm)の銀を約50質量%含有、残部揮発性溶剤、分散剤、バインダー等)で、微細立体構造物を30μm間隔で描画した。
ノズル1の先端の内径は600nm、常温雰囲気下、ノズル1内のペースト3に印加した電圧を交流のピーク・ツ・ピーク電圧で500V、ノズルと基板との距離は約30μmに、それぞれ設定した。
図6の写真の場合は、ノズルを各格子点でいったん停止させ、構造物を成長する時間だけ待ち時間を設け、左から右へと移動させた。立体構造物の断面直径は600nmであり、高さは25μm、アスペクト比は42であった。写真において、構造物先端部が、右側に倒れているものが多いが、これは移動時に電界をかけたま移動させたため、ノズル先端部の電界に構造物が引きずられたためである。
ポリビニルフェノールのエチルアルコール溶液を用い、ノズルの先端の内径を5μm、交流電圧のピーク・ツ・ピークを450V、ノズルと基板との距離を約70μmとして行った以外は実施例1と同様にして立体構造物の形成を実施した。
形成された立体構造物の断面直径は5μmであり、高さは10μm、アスペクト比は2であった。ポリビニルフェノールにおいても、飛翔液滴の蒸発乾燥および電界集中により構造物を成長させ立体構造物を形成できることがわかった。
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Ti:Zr)03)のモルフォロジックフェーズバウンダリー組成(MPB)前駆体を2−メトキシエタノールおよびエチレングリコールの溶媒に溶解した溶液を用い、ノズルの先端の内径を5μm、直流電圧を1338Vとし、ノズルと基板との距離を50μmとして行った以外は実施例1と同様にして立体構造物の形成を実施した。形成された立体構造物の断面直径は4μmであり、高さは8μm、アスペクト比は2であった。チタン酸ジルコン酸鉛においても、飛翔液滴の蒸発乾燥および電界集中により構造物を成長させ立体構造物を形成できることがわかった。
蛍光体粒子、G25(Duke製、スチレン・ジニルベンゼン共重合体粒子、粒子径0.028μm)を水およびエチレングリコールの混合溶媒に溶解した溶液を用い、ノズルの先端の内径を15μm、交流電圧のピーク・ツ・ピークを900V〜1000V、ノズルと基板との距離を50μmに設定して行った以外は実施例1と同様にして立体構造物の形成を実施した。形成された立体構造物の断面直径は4μmであり、高さは24μm、アスペクト比は6であった。蛍光体粒子においても、飛翔液滴の蒸発乾燥および電界集中により構造物を成長させ立体構造物を形成できることがわかった。
実施例1と同様の金属銀超微粒子ペースト(ハリマ化成製銀ナノペースト)を用い、ノズルの先端の内径を1μm、交流電圧のピーク・ツ・ピークを380V、ノズルと基板との距離を100μmに設定して行った以外は実施例1と同様にして立体構造物の形成を実施した。形成された立体構造物の断面直径は300nmであり、高さは約75μm、アスペクト比は250であった。
実施例1と同様の金属銀超微粒子ペースト(ハリマ化成製銀ナノペースト)を用い、ノズルの先端の内径を1μm、交流電圧のピーク・ツ・ピークを550V、ノズルと基板との距離を200μmに設定して行った以外は実施例1と同様にして立体構造物の形成を実施した。
形成された立体構造物は、断面直径3μm、高さ180μm、アスペクト比60の構造物であった(図7)。本実施例では180μmで立体構造物の成長を終了したが、さらに高い立体構造物の形成も可能である。
実施例1と同様の金属銀超微粒子ペーストを用い、ノズルの先端の内径を3μm、交流電圧のピーク・ツ・ピークを571V、ノズルと基板との距離を130μmに設定して行った以外は実施例1と同様にして立体構造物の形成を実施した。
形成された立体構造物は、断面直径1μm、高さ100μm、アスペクト比100の構造物であった。
実施例1と同様の金属銀超微粒子ペーストを用い、ノズルの先端の内径を20μm、交流電圧のピーク・ツ・ピークを1500V、ノズルと基板との距離を80μmに設定して行った以外は実施例1と同様にして立体構造物の形成を実施した。
結果、吐出した液滴が基板上で濡れ広がった状態となり、立体構造物は形成されなかった(図8)。
上記の電極利用の具体例として、米国特許第6,114,187号に記載されている、インクジェット装置を用いた積層集積回路ユニットの電極製造の例が挙げられる。上記の文献に記載されている数十μmの電極に替えて、本発明の立体構造物を用いれば、さらに超小型化した積層集積回路ユニットの製造が可能である。
また、樹脂などで型取りし、立体構造の転写を利用した穴空き板を作ることも可能になる。これも、上記と同様に積層集積回路基板をはじめとした、超微細加工技術を要する分野に有用である。
2 金属電極線
3 流体(溶液)
4 シールドゴム
5 ノズルクランプ
6 ホルダー
7 圧力調整器
8 圧力チューブ
9 コンピュータ
10 任意波形発生装置
11 高電圧アンプ
12 導線
13 基板
14 基板ホルダー
15 ノズル外側の電極
100 基板
101 ノズル(針状流体吐出体)
102 超微細液滴(超微細径液滴)
103 液滴固化物
104 構造物
105 立体構造物
201 初期位置のノズル
201a 大幅に移動したノズル
201b 小幅に移動したノズル
201c さらに小幅に移動したノズル
202a ノズル201aから吐出させた超微細液滴
202b ノズル201bから吐出させた超微細液滴
202c ノズル201cから吐出させた超微細液滴
203 ノズル201で形成された立体構造物
203a ノズル201aで形成された立体構造物
203b ノズル201bで形成された立体構造物
203c ノズル201cで形成された立体構造物
Claims (28)
- 溶液が供給される微細径の針状流体吐出体の先端に近接して基板を配設するとともに、前記針状流体吐出体に任意波形電圧を印加することにより前記基板表面に対して流体の超微細径液滴を吐出させ、該液滴を基板へ飛翔、付着させ、付着後該流体液滴を固化することを特徴とする立体構造物の製造方法。
- 前記基板上に先に付着した液滴固化物に電界を集中させ、その上に、後から付着する液滴を積み重ねる請求項1記載の立体構造物の製造方法。
- 前記液滴固化物よりなる立体物の頂点に電界集中させ、前記立体物の頂点に前記飛翔液滴を堆積させ、立体物を成長させることを特徴とする請求項1または2記載の立体構造物の製造方法。
- 立体構造物の断面直径を、前記針状流体吐出体から吐出させた液滴の揮発性により制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
- 前記流体が金属超微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
- 前記流体が高分子溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
- 前記流体がセラミックス超微粒子を含む溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
- 前記流体がセラミックスのゾル−ゲル溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
- 前記流体が低分子溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
- 前記流体が、金属超微粒子を含む溶液、高分子溶液、セラミックス超微粒子を含む溶液、セラミックスのゾル−ゲル溶液、および低分子溶液からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む流体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
- 吐出する前記液滴のサイズが、直径15μm以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
- 前記液滴のサイズが、直径5μm以下であることを特徴とする請求項11記載の立体構造物の製造方法。
- 前記液滴のサイズが、直径3μm以下であることを特徴とする請求項11記載の立体構造物の製造方法。
- 前記液滴の乾燥固化時間が、2秒以下であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
- 前記乾燥固化時間が、1秒以下であることを特徴とする請求項14記載の立体構造物の製造方法。
- 前記乾燥固化時間が、0.1秒以下であることを特徴とする請求項14記載の立体構造物の製造方法。
- 前記液滴の飛翔速度が4m/s以上であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
- 前記飛翔速度が6m/s以上であることを特徴とする請求項17記載の立体構造物の製造方法。
- 前記飛翔速度が10m/s以上であることを特徴とする請求項17記載の立体構造物の製造方法。
- 前記流体の飽和蒸気圧未満の雰囲気において行われることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
- 吐出する前記流体の誘電率が1以上で有ることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の立体構造物の製造方法。
- 超微細粒径の液滴を固形化、積重ねて成長させてなる微細径の立体構造物。
- アスペクト比が2以上である請求項22記載の立体構造物。
- 前記アスペクト比が3以上である請求項23記載の立体構造物。
- 前記アスペクト比が5以上である請求項23記載の立体構造物。
- 前記液滴の粒径が直径15μm以下であることを特徴とする請求項22〜25のいずれか1項に記載の立体構造物。
- 前記液滴の粒径が直径5μm以下であることを特徴とする請求項26記載の立体構造物。
- 前記液滴の粒径が直径3μm以下であることを特徴とする請求項26記載の立体構造物。
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