JP4170570B2 - 高熱伝導性フィラー及びその用途 - Google Patents

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  • Structures Or Materials For Encapsulating Or Coating Semiconductor Devices Or Solid State Devices (AREA)

Description

【0001】
本発明は、半導体封止材用エポキシ樹脂への充填材として、耐湿信頼性の優れた高熱伝導性フィラーに関する。また、その他の電子・電気機器等の絶縁封止材、各種基板用等の充填材として用いられるフィラーに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のICの高機能化及び高速化の進展に伴いICの発熱量は増大傾向にある。これを受けて高放熱特性を有する封止材に対する要求が高まっており、封止材を構成するマトリックス(エポキシ樹脂)、フィラーの両面より高熱伝導化が検討されている。更にパッケージ方式の面からも、放熱フィンを取り付けることによる高放熱特性が検討されてきている。
この中でフィラーの高熱伝導化においては、原料自身が高い熱伝導性を示す酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム等が使用されている。
【0003】
酸化アルミニウムは水分と反応せず高い安定性を示すので、EMC用途には好ましいが、原料自身の熱伝導率は30W/m・Kレベルで、窒化ケイ素や窒化アルミニウムに比べて低いため、樹脂組成物の熱伝導率を上げるためには、充填率を上げなければならないが、そうすると流動性が犠牲になるため、広範な普及には至っていない。
【0004】
窒化アルミニウムは熱伝導率が100W/m・K以上と高いことから、EMC用途において高充填しなくても放熱特性を高めることが可能な反面、水分に対する活性が高く、加水分解でアンモニアが生じることによる耐湿信頼性等に問題があり、高熱伝導性フィラーの原料として本格的に普及するに至っていない。
【0005】
窒化アルミニウムの原料自身の高熱伝導性を生かしながら、上記問題点を克服すべく種々の取り組みがなされてきた。特開平6−209057号公報では窒化アルミニウムの焼結体の多結晶あるいは単結晶粉末を用いることが開示されており、焼結処理により窒化アルミニウム粒子の高熱伝導化が図れるものの、粉砕処理により比表面積が大きくなり、シランカップリング剤等で被覆しなければ、耐湿信頼性を得ることができない。
【0006】
また、特開平9−59125及び特開平9−62454に、窒化アルミニウム粉末をシラン化合物をバインダーとして造粒・焼結する方法が開示されている。本方法では窒化アルミニウムの表面がシラン化合物によりコーティングされるため、耐湿信頼性の向上が期待されるが。しかし、シラン化合物から熱分解で形成される酸化ケイ素層と原料窒化アルミニウム(母材)には熱膨張率に差があるため、酸化ケイ素層の破壊が生じ、窒化アルミニウムの表面が露出してしまい、十分な耐湿信頼性を発現することが難しい。また、造粒しているために、焼結すると造粒物中に空隙が残存し、熱伝導率の低下につながる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、窒化アルミニウムの原料自身の高熱伝導率を維持しつつ、耐湿信頼性にも優れた高熱伝導性フィラー、及びそれを充填した半導体封止材用樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は半導体封止材用の高熱伝導性フィラー及びその樹脂組成物に関するものであり、窒化アルミニウム焼結体粉末を一定条件の水分存在下に暴露させてベーマイト皮膜を形成させ、ベーマイト皮膜のOH基をシランカップリング剤と反応させて被覆することにより、窒化アルミニウム焼結体粉末の熱伝導性を維持しつつ、耐湿信頼性の改善を図るものである。
【0009】
本発明の具体的構成は、窒化アルミニウム焼結体粉末の表面に、OH基の数が2〜5個/nm2となるようにベーマイト皮膜を形成させ、さらにシランカップリング剤を被覆してなる表面被覆窒化アルミニウム焼結体粉末からなる高熱伝導性フィラーである。さらに上記の高熱伝導性フィラーが充填されてなるエポキシ樹脂組成物である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
【0011】
本発明で使用される窒化アルミニウム焼結体粉末は、例えば、原料窒化アルミニウム粉末にイットリア等の焼結助剤を0.5〜10%程度添加し、成形後に窒素、アルゴン等の非酸化性雰囲気下、温度1600〜2000℃で焼結された窒化アルミニウム焼結体を粉砕して得ることができる。
【0012】
窒化アルミニウム焼結体は微粉末にするほど、活性の高い表面層の露出、すなわち比表面積が大きくなるため、耐湿信頼性が低下する傾向にある。本発明者らは微粉化後も表面を安定化させ耐湿信頼性を高めるべく検討を進めた結果、窒化アルミニウム焼結体粉末の表面に一定数のOH基を有すべくAlO(OH)で示されるベーマイト皮膜を形成させ、この皮膜のOH基とシランカップリング剤とを反応させて表面被覆することにより、窒化アルミニウム焼結体粉末の表面層が安定し、耐湿信頼性が向上することを見出した。
【0013】
一方、本発明に用いられる窒化アルミニウム焼結体粉末の熱伝導率の指標として、固溶酸素量及び不均一歪みが挙げられる。しかしながら、前者の測定はイットリア等の酸化物の存在下では困難である。
本発明でいう不均一歪みとは、窒化アルミニウム結晶の不完全性を表す指標であり(例えば「X線回折の手引き 改訂第四版」 理学電機株式会社発行1993年6月15日 第76頁参照)、焼結や粉砕等の処理中に、結晶格子中に欠陥や転移が生じたり、酸素が固溶することによって変化する。本発明者らは不均一歪みの値が小さいほど、窒化アルミニウム粉末の熱伝導率が高くなり、さらには上記のような表面被覆処理を行うことにより、耐湿信頼性も向上することを経験的に見出した。不均一歪みの値が0.01以下であることが好ましい。
【0014】
窒化アルミニウム焼結体粉末表面のベーマイト皮膜は、当該粉末を一定の水分存在下に暴露させることにより形成可能であるが、形成されたベーマイト皮膜のOH基の数を適切に制御する必要がある。好ましいOH基の数としては2〜5個/nm2であり、OH基の数が5個/nm2を超えると生成したOH基をすべてシランカップリング剤と反応させることが困難となり、残存したOH基によって耐湿信頼性が低下し、またベーマイト皮膜が厚肉化して、熱伝導率の低下も起こりうる。一方、OH基の数が2個/nm2未満では粉体表面を完全に被覆できるだけの十分な量のシランカップリング剤と反応することができず、未被覆の活性表面が残り、水分と反応して耐湿信頼性が低下してしまうことがわかった。
そこで、窒化アルミニウム焼結体粉末を湿度30〜50%の雰囲気下、0.3〜0.5MPa加圧状態で10〜30分間処理することにより、表面OH基の数を好ましい範囲とすることができることを見出した。
【0015】
上記のように窒化アルミニウム焼結体粉末の表面に形成されたベーマイト皮膜のOH基の数はカールフィッシャー水分測定装置によって測定される。具体的には試料1gを500℃の水分気化装置に入れ15分間保持する。500℃で熱分解・気化したベーマイト皮膜のOH基が、窒素ガス気流下でカールフィッシャー試薬と反応して生成する水分の定量を行い、水分子数の2倍量をOH基の数として粉末比表面積あたりの個数(個/nm )としてOH基の数を表す。
【0016】
窒化アルミニウム表面に形成されたベーマイト皮膜の確認は、IRスペクトル分析(3300〜3800cm-1域)によるOH基の検出により行うことができ、更に当該粉体表面のXPS分析を併用すれば定量的な同定を行うことができる。すなわち、XPSにより検出したAl、N、Oの原子数の相対値からAl基準でN、Oの原子数比率を算出し、表面層を構成するAlN及びAlO(OH)のN及びO比率を各々a、bと仮定すると、式、a+b=1=Al原子数比率、 a=N原子数比率、が成立する。そこで該式から、O原子数比率bが求まり、表面層におけるベーマイト被膜形成比率を算出することができる。
【0017】
ベーマイト皮膜が形成された該窒化アルミニウム焼結体粉末を、さらにシランカップリング剤で被覆して表面安定化を図る必要がある。その被覆方法は、例えば気相蒸着法、CVD法等の公知の方法を用いることができる。すなわち、シランカップリング剤を気化・蒸発させ、ベーマイト皮膜が形成された窒化アルミニウム焼結体粉末の表面で凝縮・縮合反応を起こさせることによって表面被覆を行う。窒化アルミニウム焼結体粉末の表面に形成されたベーマイト皮膜のOH基とシランカップリング剤が反応して被覆層が形成され、その結果カップリング剤の炭化水素基により粉末表面は疎水性となり、撥水効果が得られ、加水分解反応が妨げられることによって、耐湿信頼性が向上させられるものである。
【0018】
シランカップリング剤による表面被覆の方法は、具体的には、加熱密閉炉を窒素等の不活性ガス雰囲気下とし、シランカップリング剤を噴霧したベーマイト皮膜が形成された窒化アルミニウム焼結体粉末を投入して流動層を形成させる。あるいはベーマイト皮膜が形成された窒化アルミニウム焼結体粉末を投入して流動層を形成させた後に、シランカップリング剤を流動層に直接噴霧して添加しても良い。次いで炉内温度をシランカップリング剤の気化温度以上で、窒化アルミニウム焼結体粉末の表面に生成したベーマイト皮膜のOH基を熱分解させない温度域(200℃以下)にし、30分反応させることによって表面被覆が形成される。
【0019】
シランカップリング剤の添加量は、当該窒化アルミニウム焼結体粉末表面のベーマイト皮膜が有するOH基と当該シランカップリング剤が1:1で結合するとして、OH基の数に対して、2〜5倍量を添加する。添加量が5倍量を超えると、表面被覆粉末同士の凝集が顕著となるので好ましくない。また2倍量未満であると未反応のOH基が残るため、水分に対する活性が高くなり、耐湿信頼性が不十分となる。
【0020】
好ましいシランカップリング剤としてはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(被覆面積353m2/g)、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(被覆面積314m2/g)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(被覆面積330m2/g)、メチルトリメトキシシラン(被覆面積560m2/g)等が挙げられる。
【0021】
耐湿信頼性の指標としては、上記のようにして得られる高熱伝導性フィラーの加水分解速度を用いた。加水分解度は、高熱伝導性フィラーを温度80℃、湿度95%以上の条件下に24時間静置した後、(1)式の反応で、窒化アルミニウムが水酸化アルミニウムに変化したと仮定し、試験前後の酸素量の差から算出する。本発明で得られる高熱伝導性フィラーの好ましい加水分解度は5.0%以下である。
AlN+3H2O=Al(OH)3+NH3 (1)
【0022】
このようにして得られた表面被覆窒化アルミニウム焼結体粉末は、分級処理等により粒度分布を制御することができるが、封止材用途として用いるときには、平均粒子径1μm以下、好ましくは0.6μm以下の微粉末と併用することができる。その置換率は最大20%、好ましくは15%以下である。平均粒子径1μm以下の微粉末としては、球状酸化アルミニウム又はシリカ微粉末が挙げられる。
【0023】
本発明により得られた表面被覆窒化アルミニウム焼結体粉末は、被覆により活性表面の水分との接触が妨げられるため、これを含んでなる高熱伝導性フィラーを樹脂に充填して得られる樹脂組成物は、窒化アルミニウム焼結体自身の高熱伝導性が発現すると共に、耐湿信頼性の向上したものとなる。本発明の表面被覆窒化アルミニウム焼結体粉末は、最終樹脂組成物中、50〜90体積%程度充填される。
【0024】
本発明で使用される樹脂組成物の樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS( アクリロニトリル−アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム−スチレン)樹脂等を挙げることができる。
【0025】
これら樹脂の中でも、特に1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂が好ましい。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等のグリシジルエーテル、フタル酸やダイマー酸等の多塩基酸とエポクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル酸エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、アルキル変性多官能エポキシ樹脂、β−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、1,6−ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、2,7−ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビスヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、ハロゲンを導入したエポキシ樹脂等である。特に、耐湿信頼性や耐ハンダリフロー性の点からは、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格のエポキシ樹脂等が好ましい。
【0026】
エポキシ樹脂の硬化剤については、エポキシ樹脂と反応して硬化させるものであれば特に限定されず、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、クロロフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、イソプロピルフェノール、オクチルフェノール等の群から選ばれた1種又は2種以上の混合物をホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はパラキシレンとともに酸化触媒下で反応させて得られるノボラック型樹脂、ポリパラヒドロキシスチレン樹脂、ビスフェノールAやビスフェノールS等のビスフェノール化合物、ピロガロールやフロログルシノール等の3官能フェノール類、無水マレイン酸、無水フタル酸や無水ピロメリット酸等の酸無水物、メタフェニレンジアミン、ジアミノフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン等を挙げることができる。
【0027】
本発明の樹脂組成物には、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進させるために硬化促進剤を配合することができる。その硬化促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等がある。
【0028】
本発明の樹脂組成物には、熱伝導性、耐湿信頼性、高流動性に影響のない範囲であれば、次の成分を必要に応じて配合することができる。例えば、シリコーンゴム、ポリサルファイドゴム、アクリル系ゴム、ブタジエン系ゴム、スチレン系ブロックコポリマーや飽和型エラストマー等のゴム状物質、、熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、更にはエポキシ樹脂、フェノール樹脂の一部又は全部をアミノシリコーン、エポキシシリコーン、アルコキシシリコーンなどで変性した樹脂等の低応力化剤、Sb23、Sb24、Sb25等の難燃助剤、ハロゲン化エポキシ樹脂やリン化合物等の難燃剤、カーボンブラック、酸化鉄、染料、顔料等の着色剤が挙げられる。天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィン等の離型剤を添加することができる。
【0029】
本発明に被覆の目的で用いられるものとは別に、樹脂への拡散・濡れ性を良くする目的で、高熱伝導性フィラーを樹脂に混合するときに、表面処理剤を用いてもよい。例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等の疎水性シラン化合物やメルカプトシラン等のシランカップリング剤、Zrキレート、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等の表面処理剤が挙げられる。
【0030】
とくに、高い耐湿信頼性や高温放置安定性が要求される場合には、各種イオントラップ剤の添加が有効である。イオントラップ剤の具体例としては、協和化学社製 商品名「DHF−4A」、「KW−2000」、「KW−2100」や東亞合成化学工業社製 商品名「IXE−600」などである。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、上記諸材料をブレンダーやミキサーで混合した後、加熱ロール、ニーダー、1軸又は2軸押出機、バンバリーミキサーなどによって溶融混練し、冷却後に粉砕することによって製造することができる。本発明の樹脂組成物を用いて半導体を封止するには、トランスファーモールド、マルチプランジャー等の公知の成型法を採用すればよい。
【0032】
【実施例】
以下、本発明について実施例、比較例を用いて更に詳しく説明する。
【0033】
窒化アルミニウム焼結体の粉末の製造
質量基準で平均粒子径4.1μmの窒化アルミニウム粉末(電気化学工業社製「AP−50」)100部と酸化イットリウム粉末(三菱化学製、比表面積20m2/g)5部の混合粉を圧力20MPaをかけて直径50mmの成形体とし、窒素雰囲気下、表1に示す温度で焼結した。
【0034】
次いで、窒化アルミニウム焼結体をジョークラッシャー、ロールクラッシャーの順で粗粉砕した後、窒素ガスを封入したボールミルにて微粉砕し、JIS篩により74μm以下の粉末となるように粉砕した。なお、粉砕時間によって粒度を調製し、表1に示す平均粒子径、比表面積を有する窒化アルミニウム焼結体粉末のサンプルA〜Dを得た。また、各粉末サンプルの不均一歪みを後記の方法によって測定した。それらの結果を表1に示す。
【0035】
〔実施例1〜4〕
窒化アルミニウム焼結体粉末サンプルA〜Dを室温、湿度40%の雰囲気下、0.4MPa加圧状態で20分間処理し、表2に示す数の表面OH基を有するベーマイト皮膜を形成させた。ベーマイト皮膜の表面OH基数はカールフィッシャー法により測定・算出した。ベーマイト皮膜の確認は、IRスペクトル分析(3300〜3800cm-1域)と、粉体表面のXPS分析とによって行った。
【0036】
次いで、ベーマイト皮膜が形成された窒化アルミニウム焼結体粉末を、そのまま加熱密閉炉に輸送して窒素ガス雰囲気下で、200℃に加熱して、流動層を形成させた。シランカップリング剤としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを、窒化アルミニウム焼結体粉末の全表面を被覆するの必要な量の3倍量を流動層中に直接噴霧した後、さらに30分間反応させ表面被覆を行ないフィラーを得た。シランカップリング剤による被覆量はLECO社製C/S分析計(赤外吸収法)によりカーボン量として定量した。また、後記の方法で加水分解度を測定した。その結果を表2に示す。
【0037】
〔比較例1〜4〕
表1に示すサンプルA及びCを用い、湿度40%、0.4MPaで、比較例1及び2は5分間、比較例3及び4は40分間処理して、表2に示す数のOH基数を有するベーマイト皮膜を形成させた以外は、実施例1〜4と同様にシランカップリング剤被覆を行い、フィラーを得た。結果を表2に示す。
【0038】
〔比較例5、6〕
表1に示すサンプルA及びCについて、ベーマイト皮膜を形成させず、シランカップリング剤被覆のみを実施例1〜4と同様に行い、フィラーを得た。結果を表2に示す。
【0039】
不均一歪み:
X線回折法による修正Hall法により測定した。試料のKα1とKα2の回折線を多重ピーク分離し、真の半値幅βは実測半値幅Bと機械的半値幅bに対して、β2=B2−b2であるとする。bはSiO2の回折線から求める。βは結晶子径と不均一歪みより決まり、歪みがGauss分布に従うとすると、(2)式の関係が成り立つ。
【0040】
β2/tan2θ=Kλβ/(εtanθ・sinθ)+4η2 (2)
ここで、K:定数(=0.9)、
λ:CuKα線の波長(1.54A)、
η:不均一歪み、ε:結晶子径である。
従って、(3)式をプロットし、その切片より4η2を求めて不均一歪みを算出する。
Kλβ/(εtanθ・sinθ)とβ2/tan2θ (3)
【0041】
加水分解度:
試料を温度80℃、相対湿度95%以上の条件下に24時間静置した後、粉末の酸素量を測定して評価した。試験前後の酸素量の差は(4)式により、窒化アルミニウムが水酸化アルミニウムに変化したと仮定し、試験前後の酸素量の差を窒化アルミニウムが水酸化アルミニウムに変化したときの理論酸素量(61.5%)で割った値を加水分解度とした。
AlN+3H2O=Al(OH)3+NH3 (4)
【0042】
〔実施例5〜8〕
実施例1〜4で得られたフィラーを、表3に示される樹脂組成物に内割で70体積%充填し、以下の方法に従って熱伝導率を測定した。その結果を表4に示す。
【0043】
熱伝導率:
樹脂組成物を直径28mm、厚さ3mmの円盤状に成型した後、熱伝導率測定装置(アグネ社製「ARC−TC−1型」)を用い、温度傾斜法にて室温で測定した。
【0044】
【表1】
Figure 0004170570
【0045】
【表2】
Figure 0004170570
【0046】
【表3】
Figure 0004170570
【0047】
【表4】
Figure 0004170570
【0048】
表2及び表4から明らかなように、本発明によれば、従来の窒化アルミニウム焼結体粉末に比べて耐湿信頼性に優れた高熱伝導性フィラー及びそれを充填してなる樹脂組成物が得られることわかった。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、窒化アルミニウム焼結体粉末にベーマイト皮膜を形成させ、さらにシランカップリング剤で被覆することにより、耐湿信頼性に優れた熱伝導性フィラー及びそれを充填した封止材用の樹脂組成物が提供される。

Claims (7)

  1. 窒化アルミニウム焼結体粉末の表面に、OH基の数が2〜5個/nmとなるようなベーマイト皮膜を形成させ、さらにシランカップリング剤で被覆してなる表面被覆窒化アルミニウム焼結体粉末からなる高熱伝導性フィラー。
  2. シランカップリング剤が、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、又はメチルトリメトキシシランである請求項1記載の高熱伝導性フィラー。
  3. 被覆される窒化アルミニウム焼結体粉末の不均一歪みが0.01以下である請求項1又は請求項2記載の高熱伝導性フィラー。
  4. 窒化アルミニウム焼結体粉末を、湿度30〜50%、0.3〜0.5MPaの加圧状態で10〜30分間処理して、ベーマイト被覆を形成させ、次いでシランカップリング剤で被覆することを特徴とする高熱伝導性フィラーの製造方法。
  5. シランカップリング剤が、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、又はメチルトリメトキシシランである請求項4記載の高熱伝導性フィラーの製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項記載の高熱伝導性フィラーを含有するエポキシ樹脂組成物。
  7. 請求項記載の樹脂組成物からなる半導体封止材。
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