JP4169390B2 - ポリ乳酸系樹脂シートの製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂シートの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自然環境下で生分解する樹脂組成物をカレンダー成形するポリ乳酸系樹脂シートの製造方法に係わり、特に、OA機器、AV機器、家庭用電気製品、レンズ等を収納、搬送、保管するためのトレイ用シート、電子部品を包装するためのキャリアテープ用シート、あるいは磁気カードやICカード用基材シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、OA機器、AV機器、家庭用電気製品、レンズ等を収納、搬送、保管するトレイ用シート、電子部品を包装するためのキャリアテープ用シート、あるいは磁気カードやICカード用基材シートとしては、ポリ塩化ビニル系樹脂シート、ポリスチレン系樹脂シートまたはポリエチレンテレフタレート系樹脂シート等の熱可塑性樹脂シートが用いられてきた。これら樹脂からなるシートあるいは成形品等は、環境問題の点から使用中は収納、搬送、保管に適したトレイ用シートとしての物性を有し、使用後は自然環境下で自然に分解するシートが要望されている。
【0003】
そこで、近年、土壌中、淡水中あるいは海水中等の自然環境下で自然に分解する生分解性樹脂が提案され、実用化に向けて種々の検討がなされてきた。例えば、生分解性樹脂として、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバリレートとの共重合体、ポリ乳酸系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂等のポリヒドロキシアルカノエート系樹脂、及びポリエチレンサクシネート、ポリブチルサクシネート、ポリブチルサクシネート・アジペート等のポリアルキルアルカノエート系樹脂等が挙げられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの生分解性樹脂をシート状に成形する方法としては、押出成形法とカレンダー成形法が挙げられるが、通常、生産性の劣る押出成形法で加工されている。これは、カレンダー成形法による加工が、カレンダー金属ロールからの溶融樹脂の剥離性が悪いので、シート加工が困難なためである。特に、得ようとする樹脂シートの厚さが薄くなると、カレンダー法ではさらに金属ロールからの樹脂シートの剥離性が悪化するため、薄い樹脂シートの加工が極めて困難であった。
【0005】
本発明の課題は、カレンダー成形法による成形加工に際し、優れた金属ロール剥離性を有し、極めて経済的に生産することができるとともに、環境問題にも対応できるポリ乳酸系樹脂シート製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリ乳酸系樹脂に特定量のシリコーンと滑剤を添加配合することにより、その目的を達成できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、残留モノマー量が5000ppm以下のポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、シリコーン及び滑剤をそれぞれ0.05〜2.95重量部の範囲で、かつこれらの合計量を3.0重量部以下添加配合してなる樹脂組成物をカレンダー成形するポリ乳酸系樹脂シートの製造方法である。
さらに、上記樹脂組成物を溶融してカレンダー成形するに際し、ポリ乳酸系樹脂及び樹脂組成物の含水率を2.0%以下として行なうことにより、上記ポリ乳酸系樹脂及び上記樹脂組成物のエステル結合の加水分解が抑制され、成形物の強度を十分に保持できる。
【0007】
このように本発明により得られるポリ乳酸系樹脂シートは、ポリ乳酸系樹脂、シリコーン及び滑剤を配合したポリ乳酸系樹脂組成物をカレンダー成形してなるもので、優れた機械的性質を有し、極めて経済的に生産することができるとともに、生分解性を兼ね備えた自然環境に良好なシートである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で使用されるポリ乳酸系樹脂は、乳酸単位を含む脂肪族ポリエステルである。この中にはポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸の共重合体、乳酸,脂肪族多価カルボン酸及び脂肪族グリコールからなる脂肪族ポリエステル、並びにこれらの混合物等が挙げられる。
【0009】
上記ポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸、あるいはL−乳酸とD−乳酸の混合物を脱水縮合して得られるものであるが、好ましくは乳酸の環状二量体であるラクチドを開環重合して得られるものである。物性面、耐熱性及び入手の容易さからL体の含有率が85%以上のものが好ましく、さらに好ましくは95%以上である。ラクチドには、L−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、さらにD−乳酸とL−乳酸が環状二量体化したメソ−ラクチドの混合物であるDL−ラクチドがあるが、ポリ乳酸は、これらの一種以上を開環重合して得られるものである。なお、ラクチドの開環重合が好ましいのは、ラクチドの重合が容易であり高重合度品が得られやすいためである。
ポリ乳酸は、重量平均分子量で20,000〜1,000,000、特には、50,000〜500,000が好ましい。重量平均分子量が20,000未満の場合は、シートとして実用的物性が得られず好ましくない。一方、重量平均分子量が1,000,000を超える場合は、シートへの成形加工性が悪い。
【0010】
乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体において、他のヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、ジメチルグリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、4−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシメチルカプロン酸等が挙げられ、またラクチド以外の環状エステルとしてはグリコシド、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。共重合体中に含まれる乳酸単位のモル比は50モル%以上であり、好ましくは80モル%以上の範囲である。このモル比が50モル%未満であるとシート強度及び生分解性が低下するので好ましくない。
【0011】
乳酸,脂肪族多価カルボン酸及び脂肪族グリコールからなる脂肪族ポリエステルにおいて、脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等及びこれらの無水物が挙げられる。脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0012】
本発明で用いるポリ乳酸系樹脂中の残留モノマー量は、5,000ppm以下、好ましくは3,000ppm以下である。この残留モノマーが5,000ppmを超えると金属ロールからの樹脂シートの剥離が困難となり好ましくない。
ポリ乳酸系樹脂は、カレンダーロールから剥離し難いため、シート成形を行なう場合は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、シリコーンと滑剤をそれぞれ0.05〜2.95重量部、好ましくは0.10〜2.50重量部の範囲で、かつこれらの合計量を3.0重量部以下となる割合で添加配合される。これらシリコーンと滑剤のそれぞれの割合が0.05重量部未満であると、添加した効果が不十分で金属ロールからの十分な剥離性が得られず、カレンダー法によるシートの成形加工が困難であり、逆にこれらのそれぞれの割合が、2.95重量部を超えると、シリコーン及び滑剤が浮き出すブリード現象を生じ、外観及び機械的物性に悪影響を及ぼす。また、シリコーンと滑剤との合計量が、3.0重量部を超えると、溶融混練物がカレンダーロールに転写されず、シートの成形を行なうことができないので好ましくない。
【0013】
ここで用いられるシリコーンは、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等のシリコーン及び変性シリコーンである。変性シリコーンとしては、例えば、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、メタクリル酸変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられるが、これら変性シリコーンは、シリコーンより好ましく、中でもメチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーンが好ましく採用される。
これらの例示したシリコーン及び変性シリコーンは、粘度測定法としてオストワルド法を用いた場合、25℃における粘度が100〜10,000cStの範囲にあるものが用いられる。この粘度が100cSt未満の場合、カレンダーロールからの剥離が困難となり好ましくない。一方、10,000cStを超える場合は、取り扱いが難しくなり好ましくない。
【0014】
本発明に用いられる滑剤としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸あるいはベヘニン酸等の脂肪酸、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムあるいはヒドロキシステアリン酸カルシウム等の炭素数12〜20の脂肪族金属塩、ステアリン酸亜鉛・ステアリン酸バリウム複合体、ステアリン酸鉛・ステアリン酸カルシウム複合体、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド等の脂肪族アミド、ペンタエリスリトールモノ・ジエステル、ペンタエリスリトール−テトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ペンタエリスリトール−アジピン酸−ステアレート・複合エステル(商品名:リケスターEW−200、リケスターEW−250、昭島化学工業社製)、ジペンタエリスリトール−アジピン酸−ステアリン酸・複合エステル(商品名:リケスターEW−100、昭島化学工業社製)等の複合エステルが挙げられる。
【0015】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂シートの機械的性質を損なわない程度に、上記成分の他に、ポリアルキルアルカノエート系樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂、あるいは充填剤を添加してもよい。
使用可能なポリアルキルアルカノエート系樹脂は、脂肪族多価カルボン酸またはその誘導体と脂肪族ジオールを構成成分として含み、生分解性を有するものであればよい。ポリアルキルアルカノエート系樹脂の重量平均分子量は100,000〜300,000の範囲が好ましく、この重量平均分子量が100,000未満では、シートとして実用的物性が得られず好ましくない。一方、重量平均分子量が300,000を超えると製造が困難で現実的でない。
【0016】
上記ポリアルキルアルカノエート系樹脂の構成成分とされる上記脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピロメリット酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸やこれらの無水物、誘導体等が挙げられ、これらの中から少なくとも1種が選択される。
【0017】
上記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサメチレングリコール等を挙げることができ、これらの中から少なくとも1種が選択される。いずれも炭素数2〜20までのアルキレン基、シクロ環基またはシクロアルキレン基を持つ化合物で、縮重合により製造される。また、溶融強度を向上させるため、分子鎖中に長鎖分岐構造を設ける目的で3以上の官能基を有する脂肪族カルボン酸、アルコールあるいはオキシカルボン酸を用いてもよい。3以上の官能基を有する成分としては、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、あるいはペンタエリスリトール、あるいはトリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0018】
ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂であるポリカプロラクトン系樹脂としては、アルコール等の活性水素を開始剤として、ε−カプロラクトンを用いて常温の開環重合で得られたものを使用することができる。この開始剤の官能基数としては、2官能基あるいは3官能基を有するものが好ましい。ポリカプロラクトンの数平均分子量は、5,000〜200,000の範囲、好ましくは10,000〜100,000の範囲である。この数平均分子量が5,000未満の場合は、シートとしての実用的物性が得られず好ましくない。一方、200,000を超える数平均分子量を有するポリカプロラクトンの製造は困難であり現実的でない。
【0019】
また、ポリ乳酸系樹脂に、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバリレートとの共重合体を添加することもできる。これには、例えば、水素細菌(Alculigens eutrophus)等の微生物によって産出された樹脂が例示される。
この樹脂の数平均分子量は、50,000〜1,000,000の範囲、好ましくは70,000〜90,000である。この数平均分子量が50,000未満の場合は、シートとしての実用的物性がほとんど発現されず、一方、1,000,000を超える樹脂の製造は困難である。また、3−ヒドロキシバリレートの重量比は5〜25モル%の範囲が好ましい。さらに、長鎖ヒドロキシアルカノエートを共重合してもよい。
上記樹脂の添加量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して100重量部未満である。この添加量が100重量部以上であるとポリ乳酸系樹脂の特性が失われるので好ましくない。
【0020】
本発明に用いられる樹脂組成物に必要に応じて添加される充填剤は、無機充填剤あるいは有機充填剤のいずれでもよい。
無機充填剤としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アンチモン等の酸化物、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、ケッチェンブラックEC、ファーネスブラック、アセチレンブラック等の導電性フィラーなどが挙げられる。
【0021】
有機充填剤としては、小麦、トウモロコシ、米等の穀物、バレイショ、サツマイモ、タピオカ等の芋類の澱粉、さらに、セルロース、キチン、キトサン等の多糖類が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いればよく、また無機充填剤と有機充填剤を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
これらの充填剤は、粒子同士の凝集及びポリ乳酸系樹脂との親和性を向上させる目的で、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、テトラオクチル−ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)−ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート等のチタネート系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤、3,5−ジメチル−1−ヘキシル−3−オール等のアセチレンアルコール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール(ポリオキシエチレン)エーテル等のアセチレングリコールを用いて、乾式法、湿式法あるいはインテグラルブレンド法を用いて表面改質してもよい。
【0023】
本発明に用いられる無機充填剤の平均粒径は、0.01〜10μmの範囲、好ましくは0.05〜5μmである。この平均粒径が0.01μm未満では、ポリ乳酸系樹脂中での充填剤の分散が悪く、逆に10μmを超えるとポリ乳酸系樹脂シートの靭性が低下する恐れがある。また、有機充填剤の平均粒径は、1〜60μmの範囲、好ましくは20〜40μmである。この平均粒径が1μm未満では、有機充填剤を作製するのは困難であり、逆に60μmを超えるとシートの靭性が低下する虞れがあるので好ましくない。
これらの充填剤の添加量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、50重量部以下、好ましくは30重量部以下である。この添加量が50重量部を超える場合は、ポリ乳酸系樹脂シートの柔軟性が失われる他に、真空成形、圧空成形あるいはプレス成形等の二次加工が困難となる。
【0024】
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂シートには必要に応じて、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ〕−1−ジメチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,6−ジ−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライル−ビス(2,6−ジ−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート等の界面活性剤、各種顔料、各種紫外線防止剤及びその他の添加剤を添加することもできる。
【0025】
ポリ乳酸系樹脂組成物の成形加工を行なう場合の該ポリ乳酸系樹脂及び樹脂組成物の含水率は2.0%以下、好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。この含水率が2.0%を超える場合は、ポリ乳酸系樹脂中のエステル系結合が溶融混練中に加水分解により分解して、得られたポリ乳酸系樹脂シートの強度が低下するため、実用上好ましくない。
【0026】
ポリ乳酸系樹脂シートは、含水率を2.0%以下に調節したポリ乳酸系樹脂、シリコーンオイル及び滑剤を加圧ニーダー中で溶融混練した後、直ちにミキシングロールで再び溶融混練してシート状成形物を作製する。このシート状成形物をペレタイザーで粉砕してペレット状成形物(以下、単にペレットと称する)とする。次いで、このペレットの含水率を2.0%以下に調節した後、押出機で溶融混練し、カレンダー成形機を用いてシートに成形する。
ポリ乳酸系樹脂シートの厚さは、通常100〜1,000μm、好ましくは300〜700μmの範囲内で選ばれる。ポリ乳酸系樹脂シートの厚さが、100μm未満の場合及び1,000μmを超える場合は、成形品の剛性および真空成形、圧空成形及びプレス成形等の二次成形後の型再現性が劣るので好ましくない。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の具体的態様を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
ポリ乳酸系樹脂、ポリアルキルアルカノエート系樹脂、無機充填剤、シリコーンオイル及び滑剤からなる表1(実施例1〜6)、表2(比較例1〜6)に示す各成分を、180℃に加熱された加圧ニーダーで20分間溶融混練後、直ちに180℃に加熱されたミキシングロールで5分間溶融混練を行ない、シート状成形物を作製した。このシート状成形物を室温で70℃以下まで冷却した後、ペレタイザーを用いて粉砕してペレットとした。このペレットを、シリンダー温度185℃に加熱された押出機に供給し、溶融混練を行ない、次いでカレンダー成形機を用いて、ロール温度200℃で、厚さ0.3mmまたは0.5mm、幅800mmのポリ乳酸系樹脂シートを成形して、下記の方法で評価し、その結果を表1及び表2に併記した。
【0028】
なお、各成分の明細は、次の通りである。
〈ポリ乳酸系樹脂〉
ポリ乳酸:ラクティ1012[島津製作所社製、商品名]
〈ポリアルキルアルカノエート系樹脂〉
ポリブチレンサクシネート:ビオノーレ1001[昭和高分子社製、商品名]
〈無機充填剤〉
重質炭酸カルシウム:ホワイトンS.B(平均粒径1.4μm)[白石カルシウム社製、商品名]
〈シリコーンオイル〉
メチルスチリル変性シリコーン:KF−410[信越化学工業社製、商品名]
粘度(オストワルド法;25℃)888cSt
〈滑剤〉
ベヘニン酸:EXL−5[旭電化工業社製、商品名]
【0029】
さらに、表1及び表2における各評価項目の評価方法は、次の通りである。
(1)ポリ乳酸系樹脂、及びポリ乳酸系樹脂、シリコーン、滑剤よりなる組成物の含水率
重量滴定式水分測定装置:三菱CA−06型(三菱化学社製、商品名)を用いて、温度200℃、N 追い出し法で測定した。
【0030】
(2)ロール剥離性
カレンダーロールからのシートの剥離性、及びロングラン製造に対する剥離安定性を○、×で次のように評価した。
○:剥離が容易で、ロングラン製造に対しても安定。
×:剥離性が悪く、安定製造が困難である。
【0031】
(3)ブリード試験
ポリ乳酸系樹脂シートを70℃に加熱したオーブン中に放置し、24時間後のシートの外観変化を目視により観察し、○、×で次のように評価した。
○:ブリードなし。
×:ブリード有り。
【0032】
(4)ポリ乳酸系樹脂シートの生分解性
土中20cmの深さに、ポリ乳酸系樹脂シートを埋設し、4月から9月までの6ヶ月間放置した後、取り出して外観変化を目視により観察し、○、×で次のように評価した。
○:外観変化が認められた。
×:外観変化が認められなかった。
【0033】
【表1】
Figure 0004169390
【0034】
【表2】
Figure 0004169390
【0035】
評価の結果、表1に示したように、ポリ乳酸系樹脂にシリコーンオイル及び滑剤を添加して得られた組成物は、優れたカレンダーロール剥離性を示し、ブリード現象も認められなかった。さらに、ポリ乳酸系樹脂とポリブチレンサクシネートとのポリマーアロイ及びこれに充填剤(重質炭酸カルシウム)を添加した複合材料も、同様にシリコーンオイルと滑剤を添加することによりカレンダー成形法でシートの成形が可能であった。これらのシートもブリード現象は認められなかった。
【0036】
シリコーンオイル及び滑剤が添加されていない比較例1、並びにシリコーンオイルと滑剤を併用していない比較例2及び比較例3は、ポリ乳酸系樹脂の溶融混練物がロールから剥離されず、ポリ乳酸系樹脂シートを成形することができなかった。また、シリコーンオイル及び滑剤の添加量が規定量より多い比較例4〜6は、溶融混練物がロールに転写することができず、シートを成形することができなかった。
【0037】
(比較例7)
実施例3で使用したペレットを温度60℃、湿度95%RHの恒温恒湿の室内に10日間放置して得られた含水率2.6%のペレットを、カレンダー成形機を用いてロール温度200℃でシート成形した。得られたシートは、使用に耐えうる強度を有していなかった。
【0038】
【発明の効果】
ポリ乳酸系樹脂にシリコーンと滑剤を添加した樹脂組成物は、カレンダー法により、ロール離れがよく安定してシート状に成形することができ、製造されたポリ乳酸系樹脂シートは、ブリード現象も認められず、自然環境下での分解が可能で、環境問題に好適である。
本発明により得られるポリ乳酸系樹脂シートは、カレンダー法による成形が可能なため、経済的に生産することができ、さらに、OA機器、AV機器、家庭電気製品、レンズ等を収納、搬送、保管するためのトレイ用シート、あるいは電子部品を包装するためのキャリアテープ用シート、磁気カードやICカード用基材シート等の各種分野にわたって使用できるので、その産業上の利用価値は極めて高い。

Claims (2)

  1. 残留モノマー量が5000ppm以下のポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、シリコーン及び滑剤をそれぞれ0.05〜2.95重量部の範囲で、かつこれらの合計量を3.0重量部以下添加配合してなる樹脂組成物をカレンダー成形することを特徴とするポリ乳酸系樹脂シートの製造方法。
  2. 請求項1に記載の樹脂組成物を溶融してカレンダー成形するに際し、ポリ乳酸系樹脂及び樹脂組成物の含水率を2.0%以下で成形することを特徴とするポリ乳酸系樹脂シートの製造方法。
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