JP4168657B2 - 苗移植機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、前輪及び後輪を有する走行車体の後側に昇降機構を介して苗植付部を装着した苗移植機に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記苗移植機において、走行車体の前輪車軸と後輪車軸との間にエンジン(原動機)を配置した構成のものがある。一般に、この構成の苗移植機は、走行車体の重心が比較的後方に位置するので、苗植付部を上昇させたときの前後バランスが悪くなるという問題がある。また、エンジンの上側には座席が設置されているため、エンジン及びその周辺のメンテナンスを行いにくいという問題点もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、湿田用の苗移植機では走行車体のホイールベースを長めにするのが好ましい場合がある。そこで、苗移植機のホイールベースを長くするとともに、それを利用して上記従来の苗移植機における問題点を解決することが本発明の課題である。加えて、走行車体から苗植付部への伝動を入・切する植付クラッチを収容した植付クラッチケースの適正な配置を工夫すること、並びに走行車体上から苗植付部の苗載台への苗補給作業をしやすくすることも本発明の課題である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成した。すなわち、本発明にかかる苗移植機は、走行車体の後側に昇降機構を介して苗植付部を装着した苗移植機において、走行車体の前輪車軸と後輪車軸との間で、かつ側面視で後輪と前後方向の間隔をおいた前輪車軸寄りの位置に原動機を配置し、走行車体から苗植付部への伝動を入・切する植付クラッチを収容した植付クラッチケースを側面視で原動機と後輪との間に配置し、さらに上下に貫通する開口部を有するステップを原動機より後側かつ後輪より前側に配置している。
【0005】
また、この苗移植機は、上記構成に加えて、さらに前記植付クラッチケースはステーに連結部材で連結され、この連結部材に一体形成されたレバー支持部に、植付クラッチケース内の伝動比を調節する株間変更レバーの回動支点軸が支持されており、前記後輪車軸には後輪及びラグを設けていない補助後輪が設けられ、さらに前輪を操向操作するハンドルの操作に連動して旋回内側の後輪の駆動を切る機構として、ハンドルに連結されるステアリング出力軸に連動アームを取り付け、回動自在の連動プレートの左右端部とサイドクラッチを操作するシフタアームとを操作ロッド及びスプリングを介して連結し、連動アームに設けたローラに案内させながら回動自在の連動プレートを左右に回動させて旋回内側の操作ロッドを引いて旋回内側のサイドクラッチを「切」にする機構を設け、前記連動プレートには前後方向の長穴を設けて該長穴に支持軸を嵌合するとともに、該連動プレートを前後に移動させる調節ねじを設けて該調節ねじにより連動プレートを前後に移動させると、スプリングのセット長が変更され、サイドクラッチが「切」になるタイミングが変化するように構成している。
【0006】
【発明の効果】
本発明の構成とすると、原動機の位置が全体的に前寄りとなり、機体の重量バランスが向上するとともに、原動機の後方に空間ができるので、原動機及びその周辺のメンテナンスを行いやすくなるという効果がある。また、原動機と後輪との間に配置したステップに足を掛けて、走行車体上から苗植付部の苗載台への苗補給作業がしやすくなるという効果を奏する。このステップは上下に貫通する開口部を有するので、ステップ上に泥が残らず、掛けた足が滑りにくい。ステップは上記位置にあるので、ステップから落下する泥が原動機周辺及び後輪にかからない。
【0007】
特に、植付クラッチケースが側面視で原動機と後輪との間に独立して配置されるので、当該植付クラッチケースのメンテナンスを行いやすくなるという効果を奏する。
【0008】
また、株間変更レバーの操作に対する高い剛性を確保でき、しかも補助後輪にはラグが設けられていないので、旋回時の泥押しを少なくできる。さらに、調節ねじの操作で左右のスプリングのセット長を変更できるので、サイドクラッチのタイミング調節が容易となるという効果を奏する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1乃至図3は苗移植機の一例である乗用田植機を表している。この乗用田植機1は、走行車体2の後方に昇降機構3を介して10条植えの苗植付部4が昇降可能に装着されている。
【0010】
四輪駆動車両である走行車体2は、機体の前部にミッションケース10を配し、該ミッションケースの左右側方に設けた前輪ファイナルケース11,11から外向きに突出する前輪車軸12a,12aに前輪12,12を取り付けている。また、ミッションケース10の背面部に左右一対のメインフレーム13,13の前端部を固着し、該メインフレームの後端部にローリング自在に支持された左右の後輪ギヤケース14,14から外向きに突出する後輪車軸15a,15aに主後輪15,15及び補助後輪16,16,17,17を取り付けている。なお、補助後輪16,16,17,17を内側にスライドさせられるように構成されている。
【0011】
エンジン(原動機)20はメインフレーム13,13の上に搭載されている。そのエンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21及び第二ベルト伝動装置22によってミッションケース10へ伝達される。ミッションケース10に伝達された回転動力は、該ケース内のトランスミッションにて変速された後、走行動力と植付動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース11,11に伝達されて前輪12,12を駆動するとともに、残りが後輪伝動軸23,23を介して後輪ギヤケース14,14に伝達されて後輪15,15,16,16,17,17を駆動する。また、植付動力は、第一植付伝動軸24を介して走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に一旦伝達され、さらに植付クラッチケース25から第二植付伝動軸26を介して苗植付部4へ伝達される。
【0012】
前記植付クラッチケース25は図4に示す内部構造になっている。第一植付伝動軸24に連結した入力軸90から第二植付伝動軸26に連結した植付クラッチ軸91へ、株間変速ギヤ92,…,93,…を介して回転動力が伝達される。駆動側の株間変速ギヤ92,…はそれぞれ独立に入力軸90に回転自在に嵌合し、シフタキー94を介していずれか一つだけが入力軸90と一体化されている。一方、従動側の株間変速ギヤ93,…は互いに一体に形成されており、クラッチピン95aで操作される植付クラッチ95を介して伝動入切自在に植付クラッチ軸91と連結されている。株間変更レバー96で操作するシフトロッド94aを摺動させるとこれと一体のシフタキー94がスライドし、有効な株間変速ギヤ92,93の組み合わせが変更される。これにより、入力軸90からから植付クラッチ軸91への伝動比を4段階に調節することができる。
【0013】
この植付クラッチケース25は、図5及び図6に示すように、後述するリヤステップ38の支持フレーム38aから右側に水平に設けた上下一対のステー97,97に取り付けられている。また、上側ステー97と植付クラッチケース25の後部とが連結部材98で連結されており、この連結部材98に一体形成されたレバー支持部98aに前記株間変更レバー96の回動支点軸が支持されている。この構成であると、植付クラッチケース25の取付強度が高いだけでなく、株間変更レバー96の操作に対する高い剛性を確保できる。植付クラッチケース25は機体右側の側面視でエンジン20と後輪15,16,17との間に位置し、周囲に他の部材がないので、メンテナンスが容易である。
【0014】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット32があり、その上方に前輪12,12を操向操作するハンドル33が設けられている。
【0015】
エンジンカバー30及びボンネット32の左右両側は、人が移動可能なメインステップ35になっている。メインステップ35の後部は高くなっている。また、メインステップ35の左右外側でエンジンカバー30の側方部には、メインステップ35とほぼ同レベルの拡張ステップ36,36が設けられている。拡張ステップ36,36の後部も高くなっている。そして、この左右の拡張ステップ36の外側下方に、拡張ステップに乗降するための足掛け37,37が取り付けられている。
【0016】
さらに、メインステップ35及び拡張ステップ36,36の後側には、これらの後部と同じ高さでリヤステップ38が設けられている。また、リヤステップ38の左右両側には、補助リヤステップ39,39が設けられている。リヤステップ38及び補助リヤステップ39,39は枠体に左右方向の桟を掛け渡した形状をしており、靴に付着した泥が桟と桟の間の開口部を通って落下するようになっている。リヤステップ38及び補助リヤステップ39,39はエンジン20より後側かつ後輪15,15,16,16,17,17より前側に配置されているので、落下した泥がエンジン周り及び後輪にかからない。リヤステップ38及び補助リヤステップ39,39に足を掛けた場合、足が桟に引っ掛かることにより前後方向に滑りにくい。また、図7に示すように桟の上面が凹凸に形成されているので、左右方向にも滑りにくい。なお、補助リヤステップ39,39は、収納のため内側に折りたたみ可能になっている。
【0017】
リヤステップ38及び補助リヤステップ39,39の上方で、かつ平面視で前部が重複する前後位置には、補給用の苗箱を載置しておく苗枠40が設けられている。この苗枠40の内側にはローラ41,…が前後2列設けられており、載置されている苗箱を楽に左右移動させられる。なお、苗枠40の左右端部40a,40aは内側に折りたたみ可能になっている。
【0018】
符号44は線引きマーカで、起立転倒可能に設けられており、圃場を折り返しながら作業を行うときに次行程で通る側が転倒し、次行程で機体の左右中心が通る位置を圃場表土面に線引きする。符号45はサイドマーカで、前行程で植付けた最外側の既植条の位置を示す。符号46はスペースマーカで、伸縮自在かつ左右に転倒可能に設けられており、通常は起立させて機体の左右中心を示す指標となり、適当な長さに伸ばした状態で機体側方に転倒させると機体側方の対象物、例えば畦までの距離を示す指標となる。符号48は、スペースマーカ46を転倒させたとき、これを下から支えるスペースマーカ受けである。
【0019】
昇降機構3は、メインフレーム13の後端部に固定して設けたリンクベースフレーム50に回動自在に取り付けられた上リンク51及び下リンク52,52を備え、これら上下リンクの後端部に縦リンク53が連結されている。そして、縦リンク53の下端部から後方に突出する軸受部に苗植付部側に固着した連結軸54が回転自在に挿入連結され、苗植付部4が連結軸54を中心にしてローリング自在に装着される。基部側がメインフレーム13に固着した支持部材に枢支され、ピストンロッド側が上リンク51の基部に一体に設けたスイングアーム56の下端部に連結されている油圧シリンダ57を伸縮させると、各リンク51,52,52が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。上記苗植付部昇降用の油圧シリンダ57はエンジン20よりも後方に配置されているので、そのメンテナンスが容易である。
【0020】
苗植付部4は、フレームを兼ねる伝動ケース60、マット状の苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口に供給する苗載台61、該苗載台によって供給される一株分の苗を分割して取り出して圃場に植え付ける植付条数分の苗植付装置62,…、左右並列に配置されたフロート63,…等を備えた公知の構成である。植付クラッチ95を「入」にして苗植付部4を駆動するとともに、フロート63,…が泥面に接地する位置まで苗植付部4を下降させ、走行車体2を前進させると、フロート63,…が泥面を滑走して整地し、その整地跡に苗植付装置62,…が苗載台61の苗を植付ける。
【0021】
この苗移植機1は、圃場の端部でフロート63,…を接地させた状態で旋回する。この際、走行車体1が若干旋回外側に傾くので、外側のフロート63は泥に潜り気味となる。このため、図8に示すように、最外側のフロートの前部外周縁に泥が上面に乗り上がるのを防止する立縁部63aが形成されている。
【0022】
また、この苗移植機1は、ハンドル33を操作すると旋回内側の後輪の駆動が自動的に切れるようになっている。このため、ブレーキ操作をすることなくハンドル操作だけで、旋回内側の後輪(補助後輪16)を支点にした円滑な旋回を行える。旋回の中心となる補助後輪16は、旋回時の泥押しが少ないようにラグが設けられていない。
【0023】
なお、ラグのある後輪を2個以上並んで配置させる場合、旋回時に2個の後輪に間に泥が詰まって持ち上がるのを防ぐため、図9に示すようにそれぞれの後輪15,16のラグ15a,16aの位相を変えるとよい。
【0024】
なお、この苗移植機1の苗植付部4は、苗載台61の左右外側2条分づつを内側に折りたたむとともに、左右外側2条の苗植付装置62を後方に回動させて、運搬時や格納のために左右幅を縮小させられるようになっている。また、機体の左右幅縮小時、走行車体2については、補助後輪16,16,17,17を内側へスライドさせ、補助リヤステップ39,39を内側に折りたたみ、苗枠40の左右端部40a,40aは内側に折りたたみ、線引きマーカ44,44及びサイドマーカ45,45を後方へ回動させる。
【0025】
図10乃至図12はハンドル操作に連動して旋回内側の後輪の駆動を切る機構を表している。ハンドル33とパワーステアリング装置を介して連結するステアリング出力軸70にはピットマンアーム71が前向きに取り付けられ、このピットマンアーム71と左右の前輪ファイナルケース11,11に設けたアームとがタイロッド72,72を介して連結されている。ハンドル33の操作に応じてステアリング出力軸70が回動し、その回動が前輪ファイナルケース11,11に伝えられて前輪12,12が操向される。ここまでは公知の構成である。
【0026】
また、ステアリング出力軸70には連動アーム74が後向きに取り付けられ、さらに該連動アームの後端部に連動プレート75が回動自在に支持され、この連動プレート75の左右端部とミッションケース内のサイドクラッチ76,76を操作するシフタアーム77,77とが操作ロッド78,78を介して連結されている。ステアリング出力軸70が回動すると、連動アーム74に設けたローラ74aに案内させながら連動プレート75が左右に移動し、それにより、ハンドル33の操作方向(旋回内側)の操作ロッド78が引かれて、同じ側のシフタアーム77が回動する。したがって、ハンドル33を操作すると、旋回内側のサイドクラッチ76が「切」になるのである。
【0027】
連動プレート75の支持部の構造は、次のようになっている。すなわち、連動プレート75の下側に下側プレート80が重ねて設けられ、連動アーム75に固定した支持軸81が下側プレート80の丸穴80aと連動プレート75の前後方向の長穴75aとに嵌合している。下側プレート80は調節ねじ82によって連動プレート75に固定されている。調節ねじ82のねじ込み量を変えると、連動プレート75が前後に移動し、連動プレート75の動作を操作ロッド78,78に伝えるスプリング83,83のセット長が変更される。これにより、サイドクラッチ76が「切」になるタイミングが変わる。このように、一つの調節ねじ82の操作で左右のスプリング83,83のセット長を変更できるので、サイドクラッチのタイミング調節が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】苗移植機の側面図である。
【図2】苗移植機の平面図である。
【図3】走行車体の一部を省略した平面図である。
【図4】植付クラッチケースの内部構造を示す断面図である。
【図5】植付クラッチケースの平面図である。
【図6】植付クラッチケースの側面図である。
【図7】リヤステップ及び補助リヤステップの桟の形状を示す図である。
【図8】最外側のフロートの(a)平面図、及び(b)側面図である。
【図9】後輪のラグの位置を示す平面図である。
【図10】サイドクラッチ操作機構の斜視図である。
【図11】サイドクラッチ操作機構の平面図である。
【図12】図11のS−S断面図である。
【符号の説明】
1 乗用田植機(苗移植機)
2 走行車体
3 昇降機構
4 苗植付部
12 前輪
12a 前輪軸
15,16,17 後輪
15a 後輪軸
20 エンジン(原動機)
25 植付クラッチケース
38 リヤステップ
39 補助リヤステップ
95 植付クラッチ
Claims (1)
- 走行車体の後側に昇降機構を介して苗植付部を装着した苗移植機において、走行車体の前輪車軸と後輪車軸との間で、かつ側面視で後輪と前後方向の間隔をおいた前輪車軸寄りの位置に原動機を配置し、走行車体から苗植付部への伝動を入・切する植付クラッチを収容した植付クラッチケースを側面視で原動機と後輪との間に配置し、さらに上下に貫通する開口部を有するステップを原動機より後側かつ後輪より前側に配置し、前記植付クラッチケースはステーに連結部材で連結され、この連結部材に一体形成されたレバー支持部に、植付クラッチケース内の伝動比を調節する株間変更レバーの回動支点軸が支持されており、前記後輪車軸には後輪及びラグを設けていない補助後輪が設けられ、さらに前輪を操向操作するハンドルの操作に連動して旋回内側の後輪の駆動を切る機構として、ハンドルに連結されるステアリング出力軸に連動アームを取り付け、回動自在の連動プレートの左右端部とサイドクラッチを操作するシフタアームとを操作ロッド及びスプリングを介して連結し、連動アームに設けたローラに案内させながら回動自在の連動プレートを左右に回動させて旋回内側の操作ロッドを引いて旋回内側のサイドクラッチを「切」にする機構を設け、前記連動プレートには前後方向の長穴を設けて該長穴に支持軸を嵌合するとともに、該連動プレートを前後に移動させる調節ねじを設けて該調節ねじにより連動プレートを前後に移動させると、スプリングのセット長が変更され、サイドクラッチが「切」になるタイミングが変化するように構成したことを特徴とする苗移植機。
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