JP3577825B2 - 農作業機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、苗植付作業機を後部に装着した乗用型移植機や、ロ−タリ−耕耘作業機や薬剤散布機等を後部に装着した農用トラクタなどの農作業機の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平6−321129号公報に示されるように、左右一対の前輪と左右一対の後輪とを備えた走行車体の後部に作業機を装着し、該走行車体の前側に前記前輪を操向操作するステアリングハンドルを設けた農作業機があった。尚、この農作業機は、前記走行車体の前部にミッションケ−スを配設し、該ミッションケ−ス内に軸心が左右方向に向く動力伝達用の伝動軸を複数設け、前記ステアリングハンドルの回動操作により回動するステアリング軸を、前記ミッションケ−スの上部から該ケ−ス内に挿入してケ−ス内底部に向かって延ばし、且つ、該ステアリング軸を、ミッションケース内の前壁近傍の空間を利用して配設した構成となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、重量の重い作業機を機体の後部に装着した農作業機は、前後方向の重量バランスが後側寄りになる問題があり、この問題は、機体を軽量化するほど、顕著となる傾向があった。そこで、上記の従来機は、ミッションケ−スにステアリング軸が挿入する構成としているので、ミッションケ−スの前端位置がステアリング軸の位置より前側になるようミッションケ−スが位置させられ、機体の前後方向の重量バランスの改善を図ったものとなっている。しかし、この従来機は、ミッションケース内の前壁近傍の空間を利用してステアリング軸をミッションケ−ス内に挿入できたものであるから、そのステアリング軸に対してミッションケ−スを更に前寄りに配置しようとすると、ミッションケ−ス内に設けた軸心が左右方向に向く動力伝達用の伝動軸との干渉が問題となってきて、ミッションケ−スを容易に前寄り配置することはできず、前後重量バランスの改善を更に図ることは容易に行えなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記課題を解決するために、左右一対の前輪と左右一対の後輪とを備えた走行車体の後部に作業機を装着し、該走行車体の前側に前記前輪を操向操作するステアリングハンドルを設けた農作業機において、前記走行車体の前部にミッションケ−スを配設し、該ミッションケ−ス前部の左側をくぼんだ形状にし、該くぼんだ部分に入力軸と出力軸とが略同じ高さになるように油圧式無段変速装置を固着し、前記ミッションケ−ス内には最前に位置するミッションケース入力軸と該入力軸から作業機へ伝動する作業機伝動用の軸と該作業機伝動用の軸から車速切替ギヤ及び前輪デフを介して伝動される左右の前輪伝動軸とを軸心が左右方向に向くように設け、前記前輪デフを油圧式無段変速装置より後方に配置して左右の前輪伝動軸から左右それぞれの前輪アクスルケース内へ伝動する構成とし、前記ステアリングハンドルの回動操作により回動するステアリング軸を、前記ミッションケ−スの上部から該ケ−ス内に挿入してケ−ス内底部に向かって延ばして、ミッションケース入力軸より後側で作業機伝動用の軸より前側のミッションケ−ス内の空間に位置させて設け、前記ステアリング軸からの伝動により回転するピットマンア−ムと前輪アクスルケースの操向部とをタイロッドにより連結した構成としたことを特徴とする農作業機とした。
【0005】
【発明の作用及び効果】
この発明の農作業機は、ミッションケ−スにステアリング軸が挿入する構成として、ミッションケ−スの前端位置がステアリング軸の位置より前側になるようミッションケ−スを位置させられ、更に、ミッションケ−ス内に設けた軸心が左右方向に向く動力伝達用の伝動軸のうち最前に位置するミッションケース入力軸より後側で作業機伝動用の軸より前側のミッションケ−ス内の空間にステアリング軸を位置させて設けたので、従来機に比べ、ミッションケ−スを、ステアリング軸の位置に対して前側寄りに配置でき、よって、この農作業機は、機体重量を増大させずに機体の前後方向の重量バランスを更に向上できる。
【0006】
しかも、ミッションケ−ス前部の左側をくぼんだ形状にし、該くぼんだ部分に入力軸と出力軸とが略同じ高さになるように油圧式無段変速装置を固着し、左右幅が必要となる前輪デフを油圧式無段変速装置より後方に配置して左右の前輪伝動軸から左右それぞれの前輪アクスルケース内へ伝動する構成としたので、油圧式無段変速装置を上方に突出しない構成とすることができ、油圧式無段変速装置を機体の左右中央よりとなるよう配置してミッションケ−スと油圧式無段変速装置とで構成される動力伝達部を左右に偏らないように配置することにより、左右バランスの向上が図れる。
【0007】
【実施例】
この発明の一実施例を図面に基づき説明する。
図1は、農作業機の一例として乗用型の田植機1を示したものであり、この田植機は、走行車体2と農作業装置の一種である4条植えの苗移植装置3とを備えている。
【0008】
図1及び図2に示すように、走行車体2は、左右一対の前輪4,4及び後輪5,5が装着され、これらの前後輪4,4,5,5を駆動して走行する。走行車体2の左右方向の中央部に操縦席6を備え、該操縦席6の前側にステアリングハンドル7が設けられている。走行車体2の略中央に駆動源であるエンジン8が設けられ、このエンジン8の出力プ−リ8aから伝動ベルト9を介して中継プ−リ10aを駆動し、この中継プ−リ10aの駆動によりミッションケ−ス11に固着された油圧ポンプ10を駆動するようになっている。また、中継プ−リ10aから伝動ベルト12を介してHST(油圧式無段変速装置)13の入力プ−リ13aを駆動してミッションケ−ス11の左側に取り付けられている前記HST13を駆動し、該HST13からミッションケ−ス11へ動力を伝達するようになっている。該ミッションケ−ス11から左右の前輪アクスルケ−ス14,14にそれぞれ動力を伝達し前輪4,4を駆動する。また、ミッションケ−ス11から左右の後輪伝動軸15,15を介して左右の後輪伝動ケ−ス16,16にそれぞれ動力を伝達し後輪5,5を駆動する。また、ミッションケ−ス11から苗移植装置3の入力伝達軸17を介して苗移植装置3へ動力を伝達し、走行車体2の後側に設けた苗移植装置3を作動するようになっている。尚、苗移植装置3は、走行車体2の後部に設けた昇降リンク機構18を介して装着され、前記油圧ポンプ10からの油圧により作動する油圧昇降シリンダ19の伸縮により上下に昇降可能に設けられている。尚、前記油圧昇降シリンダ19への油路の切替は、走行車体の後部に設けられた油圧切替バルブ20により行うようになっている。
【0009】
尚、ミッションケ−ス11前部の左側はくぼんだ形状になっており、そのくぼんだ部分にHST13を固着して車輪の左右トレッド幅内に操舵される前輪4,4が干渉しないようにエンジン8からの動力伝達部の配置を図っている。よって、ミッションケ−ス11と該ミッションケ−ス11に固着したHST13とで構成される動力伝達部を左右に偏らないように配置して、左右バランスの向上を図っている。また、エンジン8から油圧ポンプ10へ動力を伝達するベルト9の上側にテンションプ−リ9aが設けられこのテンションプ−リ9aにより該ベルト9の前上部を走行車体2のステップ面に対して略平行とすることにより、ステップ21の低位置化が図れひいては操縦席6の低位置化が図れ、機体を低重心とすることができる。また、HST13の入力軸13bと出力軸13c(ミッションケ−ス入力軸22)を略同高さに配置してHST13を上方に突出しない構成としてステップ21の低位置化を図っている。
【0010】
また、走行車体2の略中央部には平面視三角形状のメインフレ−ム23が設けられており、該メインフレ−ム23は上側に前記エンジン8を搭載し前側に前記ミッションケ−ス11を固着した構成となっている。また、メインフレ−ム11の後部には、前記昇降リンク機構18が取り付けられると共に左右の後輪伝動ケ−ス16,16を固着した後輪5,5のロ−リングフレ−ム24が枢着され、走行車体2に対して後輪5,5が揺動自在に設けられている。このメインフレ−ム23の左右のフレ−ムパイプ23a,23aの中途部に前記油圧昇降シリンダ19の基点部19aが枢着されてエンジン8の下側に該シリンダ19を配置し、且つ機体側面視で該油圧昇降シリンダ19の一部を前記フレ−ムパイプ23aと重複させた構成となっており、油圧昇降シリンダ19ひいてはエンジン8を低位置に配置できる構成とすることによって機体の低重心化を図ることができる。さらに、油圧昇降シリンダ19の基点部19aの枢着点19bは、該シリンダのシリンダロッドの軸心部より上側に設けられており、該シリンダ19の低位置化を図っている。
【0011】
ところで、図2及び図3に示すように前記油圧ポンプ10の油圧回路は、油圧昇降シリンダ19への圧油供給回路とHST13のチャ−ジ回路とを備えている。すなわち、2連ポンプである前記油圧ポンプ10に油圧昇降シリンダ19への圧油供給用の吐出口10bとHST13のチャ−ジ回路用の吐出口10cが設けられている。前者の吐出口10bから配管25により油圧切替バルブ20に油圧を供給し、該バルブ20と油圧昇降シリンダ19(下降ロックバルブ26)とを配管27により連結されている。尚、油圧切替バルブ20から油圧タンク28ヘの戻り油の油路となる配管29を設けている。後者の吐出口10cからはフィルタ−30を介してHST13へ油を供給する配管31とHST13からの戻り油を油圧タンク28へ戻す配管32が設けられている。また、油圧タンク28から油圧ポンプ10への油路となる配管33が設けられている。これらの配管25,27,29,32,33は、機体の右側となるよう配索しており、機体の左側に設けられている伝動ベルト9,12等との干渉を防止している。
【0012】
苗移植装置3は、苗載置台40と植付伝動ケ−ス41及び各条の苗植付装置42,…とを備えている。また、苗移植装置の3の下部には、センタ−フロ−ト43及び両側部にサイドフロ−ト44,44を設けており、該フロ−ト43,44,44が圃場面を滑走するようになっている。尚、フロ−ト43,44,44は、左右方向の枢支軸45回りに回動自在に設けられており、この枢支軸45は植付深さ調節軸46aを回動させることにより苗植付装置42,…に対して上下し、前記植付深さ調節軸46aの回動角を植付深さ調節レバ−46により調節して圃場に対する植付深さを調節する構成となっている。また、苗移植装置3が圃場面に対して所定の高さに制御するために前記センタ−フロ−ト43の前後方向の傾斜角すなわち迎い角を検出する圃場面感知機構47が構成され、該圃場面感知機構47の作動に伴ってワイヤ48を介して前記油圧切替バルブ20が作動するようになっている。この圃場面感知機構47は、前記センタ−フロ−ト前部の上下動に伴って上下するフロ−トリンク47aとこのフロ−トリンク47aと枢支軸47bで枢着する感知リンク47cと該感知リンク47cの枢支軸47dを上下する平行リンク47eとを備えて構成され、前記フロ−トリンク47aが上下動すると前記感知リンク47cが枢支軸47d回りに回動し該感知リンク47cの他端に取り付けられた前記ワイヤ48を作動するようになっている。前記平行リンク47eは前記植付深さ調節レバ−46の操作に伴って作動するロッド46bにより位置が決定する。すなわち、植付深さに対応して植付伝動ケ−ス41に対する前記感知リンク47cの高さが設定された構成となっている。
【0013】
また、前記苗載置台40は、前記植付伝動ケ−ス41の両側から突出する横移動軸49に苗載置台取付部材50,50により取り付けられ、前記苗植付装置42,…の作動に伴って左右に往復移動し、苗植付装置42,…が苗載置台上のマット苗を一株づつ掻き取っていくようになっている。また、前記苗載置台40は、前記植付伝動ケ−ス41から突出する苗送り駆動軸51,51に取り付けられた苗送り駆動用カム51a,51aの回転駆動により、苗載置台40の左右移動の終端において苗載置台側に設けた苗送り駆動ア−ム52a,52aを駆動し、該苗送り駆動ア−ムの駆動により各条の苗送りベルト52を作動させ、マット苗を植付装置側に順次移送する公知の構成である。尚、この苗載置台40は、下部を苗植付装置42,…の苗掻き取り口を備える苗載置台スライド板53、上部を遊転ロ−ラ54,…が案内されるガイドレ−ル55により支持されて、左右移動可能な構成となっている。
【0014】
また、前記苗載置台スライド板53は苗取り量調節レバ−56によりプレ−ト57,…に沿って上下に移動可能に設けられており、このスライド板53の上下移動と共に苗載置台40を移動して、苗植付装置42,…の苗の掻き取り量を調節できるようになっている。尚、図1及び図4に示すように、前記植付深さ調節レバ−46及び前記苗取り量調節レバ−56は、植付伝動ケ−ス41の両側部に固着された左右のフレ−ム57,57の中途部に両フレ−ム57,57を連結するように設けられた横パイプ58に取り付けられたレバ−ガイド46a,56aのガイド溝に係合するように設けられ、苗移植装置3の左右方向中央部にある前記植付伝動ケ−ス41の空間部41aを貫通して操縦席6へ向けて設けられており、後輪5,5の左右トレッド幅内に配置されてオペレ−タが操縦席6から操作しやすい構成となっている。
【0015】
また、この苗移植装置3は、前記昇降リンク機構18の後部にある縦リンク18aに対して左右ロ−リング可能に設けられており、走行車体2の左右傾斜にかかわらず左右水平制御が可能となっている。その具体構成は、前記縦リンク18aに設けられたロ−リング軸受部に苗移植装置3の左右ロ−リング軸3aが嵌合し、前記縦リンク18aに設けられたロ−リングア−ム59に苗移植装置3の左右のフレ−ム57,57からロ−リングスプリング60,60が掛けられている。よって、前記ロ−リングア−ム59が電動モ−タ等により作動することでロ−リングスプリング60が引かれ、苗移植装置3が走行車体2に対して左右に傾くようになっている。圃場での畦際旋回等、苗移植装置3を上昇させたときは、昇降リンク機構18の左右の下リンク18b,18bを繋ぐ補強軸18cと前記横パイプ58とに掛けられた左右のロ−リングロックスプリング61,61が作用し、苗移植装置3の左右ロ−リングを規制する。
【0016】
また、操縦席6の前方のボンネット70には、左側にHSTレバ−71が設けられHST13の変速操作するようになっており、右側に植付・昇降レバ−72が設けられ前記油圧切替バルブ20を作動させることによる苗移植装置3の昇降操作や苗移植装置3の駆動の入切を行えるようになっている。また、ボンネット70の後側に有段変速操作である車速切替レバ−73があり、この車速切替レバ−73は、圃場内での苗の移植作業時に主に使用する植付速位置、路上走行時等で高速走行することができる移動速位置、走行車体の前後輪への動力の伝動を断つ中立位置があり、この車速切替レバ−73の操作によりミッションケ−ス内の前後輪の駆動伝達系の伝達比を変更できるようになっている。これらのHSTレバ−71、植付・昇降レバ−72、車速切替レバ−73は、操縦席6の前側にあるボンネット部に集中して設けられているため、オペレ−タが操作しやすいようになっている。図5に示すように、HST13の操作連繋構成は、前記HSTレバ−71に固着した回動軸71aと一体のア−ム71bから第一ロッド71cを介して回動支点71d回りに回動可能なL字具71eに連結し、該L字具71eの他端から第二ロッド71fを介してHST13のトラニオンア−ム13dに連結している構成である。よって、機体の左右方向に操作される前記トラニオンア−ム13dを機体の前後方向に操作するHSTレバ−71により操作できる。
【0017】
また、図5に示すように、苗移植装置3の駆動の入切の操作連繋構成は、前記植付・昇降レバ−72の操作により、該レバ−72に固着したカム72aにより後述する植付クラッチピン104をミッションケ−ス11から引き出したりミッションケ−ス内へ押し込んだりすることによって、苗移植装置3への動力伝達の入切をする構成である。また、ボンネット70の左側の下方に走行車体の前後輪4,4,5,5及び苗移植装置3ヘの動力の伝達を断つ主クラッチペダル74、該クラッチペダル74と略左右対称な位置に左右の後輪5,5をそれぞれ制動するためのブレ−キペダル75,75を設けている。尚、これらのペダル部分となるボンネット70の後側部はくぼんだ形状となっており、操縦席6に座ったオペレ−タがペダル操作をするために足を踏み入れやすくなっている。
【0018】
これより、ミッションケ−ス11内の伝動構成を図6に基づいて説明する。
ミッションケ−スの入力軸22はHSTの出力軸13cとスプラインにより噛み合ってミッションケ−ス11に入力される。前記入力軸22から湿式のクラッチ80の動力伝達により中途部が四角形状になっている軸81と一体回転するギヤ82を駆動し、該ギヤ82と噛み合う中継ギア83の駆動によりスプライン部を介して一体回転する軸84を駆動する。尚、前記湿式のクラッチ80は、前記クラッチペダル74により操作されるものである。
【0019】
苗移植装置3への伝動構成について説明する。前記軸84の駆動により該軸84の別のスプライン部を介して一体回転する主植付株間切替ギヤ85を駆動する。尚、該主植付株間切替ギヤ85は前記軸84に対して摺動可能に設けられている。また、前記主植付株間切替ギヤ85と噛み合うギヤ86によりワンウェイクラッチ87を介して軸88を駆動し、該軸88と一体回転する副植付株間切替ギア89を駆動する。尚、該副植付株間切替ギヤ89は前記軸88に対して摺動可能に設けられている。そして、前記副植付株間切替ギヤ89と噛み合うギア90と一体であるベベルギア91を駆動する。尚、前記ギヤ90及びベベルギヤ91は、軸84に対して遊転自在な構成である。前記ベベルギヤ91は植付伝達軸92と遊転自在に設けられたベベルギヤ93を駆動する。そして、該ベベルギヤ93のボス部の爪94と安全クラッチスプリング95により前記ベベルギヤ93方向に付勢された安全クラッチ体96の爪97とが噛み合った状態になっており、前記安全クラッチ体96が植付伝達軸92とスプライン部を介して一体回転する。この植付伝達軸92と一体回転する植付クラッチ駆動体98の爪部99と植付クラッチ受動体100のクラッチ爪101とが噛み合い、該植付クラッチ受動体100がキ−102を介して植付出力軸103と一体回転することにより該植付出力軸103を駆動する。よって、この植付出力軸103からミッションケ−ス外の入力伝達軸17を介して苗移植装置3へ動力を伝達する構成となっている。尚、前記植付・昇降レバ−72と連動する前記植付クラッチピン104の植付クラッチ受動体100との係合及び係合解除により、植付クラッチ受動体100のクラッチ爪101が植付クラッチ駆動体98のクラッチ爪99と噛み合う状態と噛み合いを解除する状態(植付クラッチ受動体100が後方に摺動された状態)とに切り替えることによって、苗移植装置3の駆動の入切をするようになっている。また、苗移植装置3が不慮にメカロックを起こしたとき苗移植装置3及び苗移植装置3への動力伝達系統が破損しないように、前記ベベルギヤ93のボス部の爪94と安全クラッチ体96の爪97の噛み合う面に植付伝達軸92の軸方向に対して傾斜を有しており、苗移植装置3の駆動に所定以上の負荷が生じると安全クラッチ体96の爪97が前記ベベルギヤ93のボス部の爪94と噛み合いを解除する状態(安全クラッチ体96が前方に摺動された状態)となり安全クラッチスプリング95が圧縮されて苗移植装置3への動力伝達が断たれる。
【0020】
次に、走行車体2の前後輪4,4,5,5への伝動構成について説明する。前記中継ギア83の駆動により軸105と一体回転するギヤ106を駆動する。そして、前記軸105とスプライン部を介して一体回転する車速切替ギヤ107を駆動する。この車速切替ギヤ107は、前記軸105に対して摺動可能に設けられており、前記車速切替レバ−73の切替操作により車速切替シフタ(図示していない)により摺動しサイドクラッチ軸108に溶接され該軸108と一体の車速切替従動ギヤ109との噛み合いを切り替えることにより車速を変速する。そして、前輪4,4の伝動構成は、前記車速切替従動ギア109から左側の後輪カウンタ軸111と遊転自在のカウンタギヤ112を介して前輪デフ113のデフケ−ス113aと一体のギア114に噛み合い、前輪デフ113から左右の前輪伝動軸115,116にそれぞれ動力を伝達する。この左右の前輪伝動軸115,116が、左右それぞれの前輪アクスルケ−ス14,14へ動力を伝達し前輪軸4a,4aを駆動する構成である。尚、左側の前輪伝動軸115と四角軸部で一体回転且つ軸方向に摺動可能なデフロック体117が設けられ、このデフロック体117に設けられた爪118がデフケ−ス113aに設けられた爪119に噛み合う状態と噛み合いが外れた状態とに切り替えることにより、左右の前輪4,4の差動可能状態と差動不能状態とに切り替わる。また、後輪5,5の伝動構成は、前記サイドクラッチ軸108からスプライン部を介して左右のクラッチアンドブレ−キ機構120,120へ動力を伝達する。クラッチアンドブレ−キ機構120,120は、前記ブレ−キペダル75,75の操作により後輪5,5への動力伝達を断つと共に後輪5,5を制動するものであり、複数のクラッチディスク及びブレ−キディスクを備えるものである。このクラッチアンドブレ−キ機構120,120の従動側と一体回転するギヤ121,121が左右それぞれの後輪カウンタ軸111,122と一体回転するギヤ123,123と噛み合って左右の後輪カウンタ軸111,122を駆動する。そして、後輪カウンタ軸111,122と一体回転するベベルギヤ124,124が後輪出力軸125,125と一体回転するベベルギヤ126,126と噛み合って後輪出力軸125,125を駆動し、ミッションケ−ス外の後輪伝動軸15,15を介して後輪伝動ケ−ス16,16へ動力を伝達し後輪軸5a,5aを駆動する構成である。
【0021】
また、図1及び図7に示すように、前記ステアリングハンドル7から前輪4,4の操向を伝達するステアリング軸130は、ミッションケ−ス11内を貫通するように設けられている。具体的には、ミッションケ−ス11の入力軸22より後側でミッションケ−ス内の前記軸84より前側に配置され、軸22及び軸84の左右幅内に納まるように配置されている。この構成とすることにより、車輪の左右トレッド幅の小さい走行車体2のミッションケ−ス11の配置を左右方向で機体の略中央にすると共に、ミッションケ−ス11を前記ステアリング軸130に規制されずに機体の前部に寄せられる。尚、前輪4,4の操向の伝達構成は、該ステアリング軸130の下部で一体回転するギア131からステアリングカウンタギア132を介して駆動するギア133と一体回転するピットマンア−ム134を回動させ、左右のタイロッド135,135により該ピットマンア−ム134と前輪アクスルケ−ス14,14の操向部を連結した構成である。
【0022】
よって、ミッションケ−ス11は、左右幅が必要となる後輪5,5への伝動部に対し、該伝動部の前方部分すなわち後輪5,5への伝動が左右に分岐される前記サイドクラッチ軸108より前方部分の左側をくぼんだ形状とし、そのくぼんだ部分にHST13を固着して該HST13を機体の左右方向の中央寄りとなるよう配置している。尚、ミッションケ−ス内において、左右幅が必要となる前輪デフ113を前記サイドクラッチ軸108より後方に配置し、ミッションケ−ス11の前部の左側をくぼんだ形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用型田植機の側面図
【図2】走行車体の平面断面図
【図3】油圧回路を示す図
【図4】苗移植装置の一部の平面図
【図5】HSTレバ−の操作連繋構成を示す正面図
【図6】ミッションケ−スの平面断面展開図
【図7】同上側面断面図
【符号の説明】
1…乗用型の田植機、2…走行車体、3…苗移植装置、7…ステアリングハンドル、1
1…ミッションケ−ス、14…前輪アクスルケース、13…HST(油圧式無段変速装置)、13b…HSTの入力軸、13c…HSTの出力軸、22…ミッションケ−ス入力軸、84…ミッションケ−ス内の伝動軸(作業機伝動用の軸)、107…車速切替ギヤ、113…前輪デフ、115,116…前輪伝動軸、105,108,111…ミッションケ−ス内の伝動軸、130…ステアリング軸、134…ピットマンア−ム、135…タイロッド
Claims (1)
- 左右一対の前輪と左右一対の後輪とを備えた走行車体の後部に作業機を装着し、該走行車体の前側に前記前輪を操向操作するステアリングハンドルを設けた農作業機において、前記走行車体の前部にミッションケ−スを配設し、該ミッションケ−ス前部の左側をくぼんだ形状にし、該くぼんだ部分に入力軸と出力軸とが略同じ高さになるように油圧式無段変速装置を固着し、前記ミッションケ−ス内には最前に位置するミッションケース入力軸と該入力軸から作業機へ伝動する作業機伝動用の軸と該作業機伝動用の軸から車速切替ギヤ及び前輪デフを介して伝動される左右の前輪伝動軸とを軸心が左右方向に向くように設け、前記前輪デフを油圧式無段変速装置より後方に配置して左右の前輪伝動軸から左右それぞれの前輪アクスルケース内へ伝動する構成とし、前記ステアリングハンドルの回動操作により回動するステアリング軸を、前記ミッションケ−スの上部から該ケ−ス内に挿入してケ−ス内底部に向かって延ばして、ミッションケース入力軸より後側で作業機伝動用の軸より前側のミッションケ−ス内の空間に位置させて設け、前記ステアリング軸からの伝動により回転するピットマンア−ムと前輪アクスルケースの操向部とをタイロッドにより連結した構成としたことを特徴とする農作業機。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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