JP4167556B2 - 液封防振装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車のエンジンマウント等に使用する液封防振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液封エンジンマウントにおいて、主液室と副液室を弾性仕切り膜(弾性仕切部材)で区画して、主液室の内圧変動を吸収する技術は種々公知である。
【0003】
【特許文献1】
特許第2799953号公報
【特許文献2】
特公昭60−53213号公報
【0004】
図7は、従来の液封エンジンマウントの概略構造を原理的に示し、公知のゴム等からなる防振用の弾性体であるインシュレータ1とダイアフラム2により液室を形成し、この液室を仕切部材3で主液室5と副液室6に区分し、これらを仕切部材3に設けたオリフィス通路4で連通し、仕切部材3の中央部に弾性仕切り膜7を設けてある。符号9aはエンジン側へ取付けるための第1の取付金具、9bは車体側へ取付けるための第2の取付金具である。
【0005】
このような液封エンジンマウントに要求される理想的な特性は、車両のアイドル振動域である低振幅時に主液室5の内圧を0に近くして低動バネとし、車両の乗り心地に影響する振動域である高振幅時には主液室5の内圧が最大になることで高減衰化することである。これを弾性仕切り膜7で実現するには、主液室5の内圧が低圧時で弾性仕切り膜7のバネ定数が限りなく0に近く、高圧時で無限大になるよう非線形変化することが必要となる。
【0006】
上記特性を実現するため弾性仕切り膜7には非線形特性を付与してある。弾性仕切り膜7部分を拡大した図8に示すように、円形の弾性仕切り膜7の副液室6側に中央部から外周方向へ突出する押し当て脚8を一体に形成し、仕切部材3の一部に設けた脚押し当て壁3aへ押し当てたものである(特許文献1参照)。符号3bと3cは膜支持部であり、弾性仕切り膜7と共に仕切部材3を構成する剛体部である。
【0007】
図8は振動が入力しない初期状態、図9は振動が入力した内圧上昇時を示す。図9に示すように、主液室5の内圧が高まると弾性仕切り膜7が副液室6側へ突出するように変形して内圧を吸収するとともに、その変位量の増大に伴って押し当て脚8の先端が脚押し当て壁3aへ強く押し当てられるため、その反力により弾性仕切り膜7のバネ定数を非線形的に変化させる。これを図10に実線で示す。
【0008】
また、このような非線形的変化を実現するものとして、液体流動用の開口を備えるとともに間隔をもって対向配置された一対の変位規制板間に可動板を移動可能に収容し、低振幅時では可動板を変位規制板に密着させない範囲で振動させることにより、変位規制板を通して液体移動を実現し、高振幅時には可動板を変位規制板へ密接して液体移動を止めるものもある(特許文献2参照)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記の図8に示す弾性仕切り膜7の構造において、押し当て脚8は斜めに突出しているため、弾性仕切り膜7の中央部における変形の割合が圧倒的に大きく、押し当て脚8による規制は相対的に小さくなるから、図10に示す理想的な非線形特性(仮想線)を実現させることは困難であった。そこでこのような形式において、非線形特性をより顕著にすることが望まれる。さらに、上記従来例のように、弾性仕切り膜を支持斜面により支持する形式でも、非線形特性を改善できるが、弾性仕切り膜の弾性変形規制後さらに非線形特性を期待することができないから、弾性変形規制後も引き続き非線形特性を実現し、広範囲の内圧変動に対して非線形にすることが望まれる。
また、上記可動板形式のものは変位規制板との接離時騒音を低減することが要求されていた。そこで本願発明はこのような要請の実現を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願発明は、防振用の弾性体であるインシュレータを壁の一部とする液室を設け、その内部を弾性仕切部材にて主液室と副液室に区画し、主液室と副液室をオリフィス通路で連結した液封防振装置において、前記弾性仕切部材は、弾性仕切り膜とその周囲部分を支持する膜支持部とを備え、前記弾性仕切り膜は、その外周部分に設けられ前記主液室の内圧変動に応じて弾性変形する薄肉の主変形部と、この主変形部より内周側部分から前記副液室側へ向かって斜めに突出する押し当て脚とを備え、前記主液室の内圧変動に応じて、前記主変形部は前記膜支持部の一部でかつ前記弾性仕切部材の中心軸線と平行な方向に対面配置された前記変形規制斜面部へ当接支持されて弾性変形を規制されるとともに、前記弾性仕切り膜の前記主変形部よりも外周側に厚肉の固定端部を設け、この固定端部を前記膜支持部で圧縮して挟持することにより、初期状態にて前記弾性仕切り膜に初期たるみを与え、さらに前記押し当て脚は、その周囲に配置されかつ前記膜支持部の一部である前記弾性仕切部材の脚押し当て部へ前記弾性仕切部材の径方向内方から押し当てられて圧縮されることを特徴とする。
【0011】
【発明の効果】
弾性仕切り膜の外周部分を薄肉の主変形部とし、仕切部材の膜支持部材に対して主液室の内圧(正圧及び負圧の絶対値、以下同)が小さいとき、変形規制斜面部との間にクリアランスを有し、主変形部が自由に弾性変形できるため、バネを比較的弱くすることができる。それより内圧が大きくなると、主変形部が弾性仕切り膜の中心軸線方向へ対向配置されている膜支持部材に押し当てられて弾性変形を規制されるため、弾性仕切り膜の中央側であるより厚肉部分が弾性変形するようになり、急激にバネが高くなる。その結果、バネの非線形特性を改善できる。また、変形規制開始後、弾性仕切り膜は弾性変形量が増大するのに応じて変形規制斜面部との接触点を中心側へ移動させるので、支持スパンが次第に短くなり、弾性仕切り膜のバネを次第に上げる。
【0012】
また、弾性仕切り膜の主変形部よりも外周側に厚肉の固定端部を設け、この固定端部を膜支持部で圧縮して挟持することにより、初期状態にて弾性仕切り膜に初期たるみを与えたので、初期たるみが解消されるまでバネを発生しない。したがって初期段階のバネをゼロにできるから、さらなる小振幅時の低バネを実現し、かつ非線形特性を向上させることができる。
さらに、弾性仕切り膜の副液室側に押し当て脚を設け、弾性仕切り膜の弾性変形により脚押し当て部へ弾性仕切り膜の径方向内方から押し当てて圧縮することによりバネが上がるので、これによってもバネの非線形特性を改善できる。しかも、押し当て脚の圧縮を主として主変形部の弾性変形規制後に行わせることによって非線形変化を広い内圧変動範囲にて実現できる。
【0013】
変形規制斜面部を弾性仕切り膜に対して副液室側に設ければ、主液室へ振動入力する正圧による弾性変形に対して有効に非線形特性を発揮する。主液室に設ければ戻り時の負圧による弾性変形に対して有効に非線形特性を発揮する。両方に設ければ、正圧及び負圧のいずれによる弾性変形にも有効に非線形特性を発揮することができる。
変形規制斜面部を主液室側と副液室側の双方へ設ければ、弾性仕切り膜の正圧及び負圧による各変形に対応できる。このとき、変形規制斜面部形状を主液室側と副液室側の双方を同一にしても異ならせてもよい。異ならせれば正圧時と負圧時において弾性仕切り膜の異なる変形に対して適切に対応できる。
また、押し当て脚と膜支持部との間に初期状態にて初期クリアランスを設ければ、この初期クリアランスを解消して押し当てられた段階からバネが上がるのでバネの非線形特性を改善できる。
【0014】
さらに、弾性仕切り膜の中央部に前記主変形部よりも弾性変形しにくくするための中央部変形規制構造を設ければ、弾性仕切部材の中央部が小さな内圧では弾性変形せず、内圧が所定以上になったとき弾性変形するようになるから、やはりバネの非線形特性を改善できる。
また、弾性仕切り膜の主変形部よりも外周側に厚肉の固定端部を設け、この固定端部を膜支持部で圧縮して挟持することにより、初期状態にて弾性仕切り膜に初期たるみを与えれば、初期たるみの解消する範囲までバネを発生しないので、やはりバネの非線形特性を改善できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて実施形態を説明する。図1〜4は第1実施例に係り、図1は本実施例の適用された液封エンジンマウントにおける仕切部材部分近傍を示す拡大断面図、図2は仕切部材部分をさらに拡大した図、図3は作用図、図4は効果を示すバネ特性グラフである。なお、本例の全体構造は図7と同様であり、前記従来例と共通部が多いため、前記の従来例と共通する部分については共通符号を用いる。
【0016】
図1において、弾性仕切り膜7は中央部に中央厚肉部10を有するとともに、その外周部である固定端部25は押さえ部材20の一部で略逆J字状断面をなす部分と、脚押し当て壁3aの上部角形断面の支持頭部22の間で挟持固定される。押さえ部材20は仕切部材3の上部側を構成する部材であるが、厚肉をなし、外周部にオリフィス通路4を形成している。図中の符号4aはオリフィス通路4の入り口、4bは同出口である。押さえ部材20の一部である押さえ部材先端部21と脚押し当て壁3aの上端部に形成された略三角形断面の支持頭部22の間に主変形部12が位置する。主変形部12は弾性仕切り膜7の一部で中央厚肉部10と固定端部25の間の部分である。
【0017】
図2は弾性仕切り膜7の径方向断面における主変形部近傍を拡大して示し、仮想線は非圧縮時における主変形部12の形状を示す。この図において、 押し当て脚8の先端8aは、振動入力前の初期状態で脚押し当て壁3aへ押し当てられず、寸法sなる初期クリアランスが設けられている。この初期クリアランスは中央厚肉部10が弾性変形するとともに解消され、押し当て脚8の先端8aが脚押し当て壁3aへ押し当てられるようになっている。
【0018】
支持頭部22の上面は、中心線C(図1)へ向かって斜め下がりの斜面をなす変形規制斜面部23をなす。この変形規制斜面部23は図示の断面にてテーパー状でも曲面でもよい。曲面の場合は中心側ほど傾斜角度がきつくなるように変化させる。また、変形規制斜面部23は膜支持部3cの一部として一体に形成され、連続するリング状もしくは、複数の独立した突出部を所定間隔でリング状に配設したものである。但し変形規制斜面部23は膜支持部3cと別体に構成して結合一体化したものでもよい。
【0019】
変形規制斜面部23と主変形部12との間に初期状態で略三角形断面の空間24を形成している。この空間24は小振幅の振動では解消されずに存在するが、ある程度の大振幅振動によって主変形部12の変形量が大きくなり、かつ中央厚肉部10が下方へ変位したりさらには弾性変形すると、主変形部12が変形規制斜面部23へ押し当てられることにより解消される。
【0020】
主変形部12は、薄肉部分になっており、弾性仕切り膜7が変形するとき最初に変形開始する部分であって弾性仕切り膜7の初期バネを決める部分であり、所定のバネ定数となるよう肉厚等を調整されている。
【0021】
弾性仕切り膜7のうち、主変形部12よりもさらに外側部分は図の上下方向へ延びる固定端部25をなし、押さえ部材先端部21と支持頭部22の間に圧縮固定される。固定端部25と主変形部12は略T字断面をなし、固定端部25は上部26及び下部27を有する。上部26は押さえ部材20に形成された環状溝28に嵌合され、下部27は支持頭部22と一体の部材に形成された環状凹部29に嵌合される。主変形部12の上下には若干のクリアランス11が形成されている。
【0022】
固定前の非圧縮状態では、仮想線で示すように、上部26は環状溝28の上端部よりも長く上方へ突出し、下部27は環状溝凹部29の下端部よりも長く下方へ突出する。したがって、固定部25は押さえ部材20と仕切部材3との間に固定されると、仮想線で示す圧縮前の状態から上下方向より圧縮されて図示の実線状態になっている。なお、本実施例では下部27よりも上部26側の圧縮量が大きくなっている。
【0023】
この固定部25に対する圧縮によって、主として弾性仕切り膜7の主変形部12をたるませて前記初期たるみを形成させることになる。また、この圧縮程度を調節する締め代調節によって初期たるみの調節が可能になる。特に、上部26と下部27をそれぞれ弾性仕切り膜7の中央に向けて予め傾斜させておくことにより、略矢形に屈曲させれば、圧縮時のたるみを大きくすることができる。また、固定部25の外周側全体が押さえ部材20の内面へ密着して径方向外方への膨出を規制され、内周側が押さえ部材先端部21と支持頭部22の間を開放されるため、主変形部12へ膨出傾向になる。
【0024】
このとき初期状態よりも実際の主変形部12は、副液室6側へ若干傾斜するように膨出してたわむ。任意位置におけるこの変化量Dを初期たわみ量とする。なお、初期たわみによって主変形部12が膨出する方向、すなわちたわみ方向は副液室6又は主液室5側のいずれでもよく、たわみ量及びたわみ方向は初期設定によって任意にできる。したがって、たるみの程度は目的とする非線形特性に応じて自由に設定できる。
【0025】
弾性仕切り膜7は、初期たるみが解消されるまでバネを発生しない。したがって初期段階のバネをゼロにできるから、さらなる小振幅時の低バネを実現し、かつ非線形特性を向上させることができる。なお、主変形部12のたるみ量は、主液室5の内圧上昇に対して弾性仕切り膜7のバネ定数がゼロ(0)の範囲を決定する。したがって、たるみ量の調節によって弾性仕切り膜7のバネ定数を非線形的に立ち上げるポイントを任意に調節可能になる。また、この初期たるみ構造は前記各実施例に適用できる。
【0026】
図3に示すように、Aの初期状態では、主変形部12と変形規制斜面部23の間に空間24が形成され、かつ押し当て脚8の先端8aと脚押し当て壁3aの間に初期クリアランスが形成されている。
【0027】
Bに示す小振幅時には、主変形部12が弾性変形により変形規制斜面部23へ近接するが空間24はまだ残っている。押し当て脚8の先端8aと脚押し当て壁3aの間における初期クリアランスはあまり変化がない。したがって、この段階における弾性仕切り膜7のバネは、ほぼ主変形部12のものであって、比較的弱い状態である。
【0028】
Cに示す大振幅時には、主変形部12が空間24を解消して変形規制斜面部23へ押し当てられる。また中央厚肉部10が弾性変形を開始し、ほぼ同時に押し当て脚8の先端8aが脚押し当て壁3aに押し当てられて圧縮される。このため弾性仕切り膜7のバネが急激に増大し、顕著な非線形特性を生じる。
【0029】
この変形規制開始後、弾性仕切り膜7は弾性変形量が増大するのに応じて変形規制斜面部23との接触点を中心側へ移動させるので、支持スパンが次第に短くなり、弾性仕切り膜7のバネを次第に上げる。
【0030】
また、弾性仕切り膜7は初期状態で初期たるみが形成されているので、このたるみが解消されるまで主変形部12におけるバネを発生しない。したがって初期段階のバネをゼロにできるから、さらなる小振幅時の低バネを実現し、かつ非線形特性を向上させることができる。
【0031】
そのうえ、初期状態で押し当て脚8の先端8aを脚押し当て壁3aへ押し当てずに初期クリアランスを形成したので、この点でも非線形特性を改善できる。しかも、弾性部材である押し当て脚8を、その押し当て方向と略直交する方向の面である脚押し当て壁3aで受け止めるので、打音を少なくして、騒音を低減できる。
【0032】
なお、初期クリアランスを形成せず、先端8aを予め脚押し当て壁3aへ押し当てておくこともできる。このようにしても、主変形部12の弾性変形が規制されるまでは、先端8aは脚押し当て壁3a上を図の上下方向へ摺動することが主体的であって、ほとんど圧縮が生じないようにすることができる。また、先端8aの圧縮は、初期クリアランスを形成する場合、又はしない場合のいずれであっても、内圧が主変形部12の弾性変形規制されるときよりも大きくなったとき主体的になる。
【0033】
図4はバネ曲線を示すグラフであり、縦軸にバネ定数K,横軸に内圧Pを示す。この図に明らかなように、設定圧A、すなわちたるみを解消した時点から実線で示すように急激に高バネとなるから、
バネ曲線は顕著な非線形変化を示す。仮想線が従来例であり、この差分だけの非線形改善を示す。また、設定圧Aより低い領域をアイドル域とすれば、この領域を著しく低バネにできる。
【0034】
また、固定部25における締め代調節によって、中央厚肉部10のたるみ量調節が可能になる。したがって、たるみ量調節を容易かつ正確に行うことができる。
【0035】
図5は、第2実施例に係る図2と同様の断面図であり、弾性仕切り膜7の中央部に、板バネなどの金属板やプラスチック板等の剛性部材10aをインサート等によって一体化したものであり、これにより弾性仕切り膜7の中央部を中央部変形規制構造にすることができ、図4に破線で示すように顕著な非線形特性になる。しかも弾性仕切り膜7を薄くして軽量化できる。また、剛性部材10aは弾性変形しにくい部材であるから、押し当て脚8の付け根部分のうち少なくとも外周面側は、剛性部材10aの外周より外側に位置させることが好ましい。
【0036】
なお、 弾性仕切り膜7の中央部を高剛性にするための構造は種々可能であり、例えば、剛性部材10aをインサートせず重ね合わせて一体化したものでもよい。また、剛性部材10aの剛性は、弾性仕切り膜7の中央部における肉厚が主変形部12の肉厚のせいぜい2倍程度のときの剛性よりも高ければ、その程度は任意である。剛性部材10aを設けることにより、その剛性を自在に調整することができる。これはインサートによる一体化時でも、別体品を重ね合わせ等によって相互に固定したものでも同様である。
【0037】
図6は第3実施例に係る図3と同様部位の断面図である。この図において、
変形規制斜面部23は、副液室6側の第1変形規制斜面部30と、主液室5側の第2変形規制斜面部40を備える。これらは弾性仕切り膜7を挟んでその中心軸線と平行な方向にて対面している。第1変形規制斜面部30の斜面31は第2変形規制斜面部40の斜面41よりも傾斜角度が大きくなっている。それぞれの傾斜角をα、βとすれば、α<βである。このため主液室5側からの入力(正圧という)に対する比較的大きな弾性変形に対応できる。一方、戻り時には主液室5内に負圧が発生し、弾性仕切り膜7を主液室6側へ弾性変形させるが、この場合の弾性変形は比較的小さいため、斜面41の角度を小さくする。
【0038】
また、初期状態にて、第1変形規制斜面部30の斜面31と第2変形規制斜面部40の斜面41は、最も弾性仕切り膜7の主変形部12へ接近する基部32,42がいずれも主変形部12に対してクリアランスを形成している。このクリアランスのうち基部32,42近傍となる最小部分を初期クリアランス33,43とする。主変形部12が基部32,42と接触する前と接触後ではバネが大きく変化するから、これによっても非線形特性の改善に寄与する。
さらに、第1変形規制斜面部30の外周部と下部27の内周側にも初期クリアランス34を設けることによっても非線形特性を改善できる。
【0039】
なお、本願発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の原理において種々に変形や応用が可能である。例えば、変形規制斜面部23は、図6に示すように、第1変形規制斜面部30と第2変形規制斜面部40を上下に一対で設けることも、図1〜3に示すように第1変形規制斜面部30のみを設けることもでき、さらには主液室5側に第2変形規制斜面部40のみを設けることもできる。上下に一対で設ける場合は、いずれか一方を他方に対して異なる曲面か傾斜角の異なるテーパー面としてもよい。さらには上下を同じにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の要部を原理的に示す拡大断面図
【図2】弾性仕切部材の外周部をさらに拡大した図
【図3】作用図
【図4】効果を示すバネ特性グラフ
【図5】第2実施例の要部拡大断面図
【図6】第3実施例の要部拡大断面図
【図7】従来の液封エンジンマウントの概略構造を原理的に示す図
【図8】従来例における要部の拡大断面図
【図9】従来例の作用図
【図10】従来例の特性図
【符号の説明】
1:インシュレータ、2:ダイアフラム、3:仕切部材、4:オリフィス通路、5:主液室、6:副液室、7:弾性膜、8:押し当て脚、10:中央厚肉部、11:外周固定部、12:主変形部
Claims (5)
- 防振用の弾性体であるインシュレータを壁の一部とする液室を設け、その内部を弾性仕切部材にて主液室と副液室に区画し、主液室と副液室をオリフィス通路で連結した液封防振装置において、
前記弾性仕切部材は、弾性仕切り膜とその周囲部分を支持する膜支持部とを備え、前記弾性仕切り膜は、その外周部分に設けられ前記主液室の内圧変動に応じて弾性変形する薄肉の主変形部と、この主変形部より内周側部分から前記副液室側へ向かって斜めに突出する押し当て脚とを備え、
前記主液室の内圧変動に応じて、前記主変形部は前記膜支持部の一部でかつ前記弾性仕切部材の中心軸線と平行な方向に対面配置された前記変形規制斜面部へ当接支持されて弾性変形を規制されるとともに、
前記弾性仕切り膜の前記主変形部よりも外周側に厚肉の固定端部を設け、この固定端部を前記膜支持部で圧縮して挟持することにより、初期状態にて前記弾性仕切り膜に初期たるみを与え、
さらに前記押し当て脚は、その周囲に配置されかつ前記膜支持部の一部である前記弾性仕切部材の脚押し当て部へ前記弾性仕切部材の径方向内方から押し当てられて圧縮され、この押し当て脚の圧縮が、前記主変形部の前記副液室側に向かう弾性変形規制後に主として行われることを特徴とする液封防振装置。 - 前記変形規制斜面部は、前記弾性仕切り膜に対して前記主液室側もしくは前記副液室側のいずれか一方側又は前記主液室側及び前記副液室側の双方に設けられることを特徴とする請求項1の液封防振装置。
- 前記変形規制斜面部は、前記弾性仕切り膜に対して前記主液室側及び前記副液室側の双方に設けられるとともに、これら前記主液室側及び前記副液室側の変形規制斜面部形状が同一又は異なることを特徴とする請求項2に記載した液封防振装置。
- 初期状態にて、前記押し当て脚が前記脚押し当て部に対して非接触となる初期クリアランスを設けたことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載した液封防振装置。
- 前記弾性仕切り膜の中央部に前記主変形部よりも弾性変形しにくくするための中央部変形規制構造を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載した液封防振装置。
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