JP4165873B2 - 木造小屋フレーム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、木造小屋組を構成する木造小屋フレームであり、特に、工場等で、予め小屋束、横架材、振れ止め、筋違、及び垂木固定部材が一体に組み付けられて施工現場に搬入されるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
木造建築物の小屋組では、梁上に小屋束を立て、該小屋束に母屋、棟木等の横架材を架設するとともに桁筋違や小屋筋違を取り付け、該横架材に垂木を固定し、該垂木に野地板を敷設することが一般的である。このような小屋組の施工は建物の施工現場においてなされるが、高所で各部材の位置決めや釘打ち等の作業を行うので作業者の危険度が高い。また、梁上での作業には熟練を要し、作業者の技量により寸法精度や固定強度に差が出易い。また各部材を施工現場において切断等するため、施工現場において廃材が発生するが、施工現場における廃材は極力少なくすることが望まれる。
【0003】
他方、母屋等の横架材に垂木を固定する場合には、所定勾配の垂木を支持する面積を確保するために、母屋に垂木掘りと呼ばれる切欠部を形成し、該切欠部に垂木を嵌めて垂木の両側から釘を斜め打ちして母屋に固定するが、このような斜めの釘打ちによる垂木の固定は、作業者の熟練により固定強度が異なり、安定した強度を得ることが難しく、また、高所での釘打ち作業が危険であるという問題がある。また、前述と同様に、施工現場における垂木掘り等の加工により廃材が生じるという問題もある。
【0004】
これに対し、複数の小屋束を横架材で連結した枠状の束フレームや、複数の垂木を枠状に連結した屋根フレーム等を連結して組立屋根ユニットとし、該組立屋根ユニットを建物に配置する施工方法が考案されている(特許文献1参照)。小屋組を構成する複数の部材をユニット化して工場等で予め一体としておくことにより、施工現場での作業を軽減できるとともに、廃材も少なくすることができるという利点がある。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−166288号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記施工方法において、束フレームや屋根フレーム等を施工現場に搬入し、前記組立屋根ユニットを地上で組み立てて建物に配置する場合には、建物に隣接して組立屋根ユニット相当分の空き地が必要となり、また、大型で相当な重量の組立屋根ユニットをクレーンで吊り上げながら軒桁や梁等の躯体の所定位置に精度よく位置決めして固定する作業は困難である。
【0007】
また、束フレーム等を躯体上で連結して固定する場合には、高所作業となるので、各フレーム間や部材間の連結ができるだけ簡易に行えることが望ましい。特に、垂木等を組み付けてなる屋根フレームに、予め野地板も一体とされている場合には、野地板の上方から垂木と横架材とに釘を打ちつけることは困難であるから、垂木の側方や母屋の下方から作業をすることとなるが、前述したように、垂木の側方から釘を斜め打ちすることは、作業者の熟練が必要であり、安定した固定強度を得ることが難しい。
【0008】
また、工場等で一体に組み付けられた束フレームや屋根フレームの寸法精度を施工現場で調整することは困難なので、施工現場へ搬入する間やクレーンで吊り上げる際に、束フレーム等に変形が生じないようにする必要がある。一方で、運搬時の積載効率を考えると、一体とされた束フレーム等は平面的なものであることが望ましい。
【0009】
本発明は、これらの点に鑑みてなされたものであり、運搬時の積載効率がよいとともに変形が生じ難く、また、横架材への垂木又は屋根パネルの固定を簡易且つ安全に行うことができる木造小屋フレームを提供することを目的とする。
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明に係る木造小屋フレームは、予め一体に組み付けられて施工現場に搬入される木造小屋フレームであって、所定間隔で配置された複数の小屋束の上端に角柱材からなる横架材が、下端付近に振れ止めが架設され、該小屋束のいずれかと隣接する小屋束又は前記横架材とに渡って筋違が架設され、前記横架材の各垂木固定位置に、横架材の上面に固定される第1の基部及び横架材の上面と側面の隅部に合致した状態で横架材の側面に固定される第2の基部と、前記第1の基部及び前記第2の基部からそれぞれ起立した高さの異なる1対の起立部、及び該1対の起立部の間に傾斜して架設された支持部を有し、所定勾配の垂木の底面を支持する垂木支持部と、該垂木支持部に立設されて垂木の側面に固定される垂木固定部とを備えてなる垂木固定部材が固定されたものである。振れ止め及び筋違により、横架材と小屋束との固定強度が高められて木造小屋フレームに変形が生じ難くなり、また、垂木固定部材により、垂木支持部に垂木又は屋根パネルを載置して位置調整等を行い、垂木の側方から垂木固定部に釘打ち等により垂木を固定することができる。
【0011】
また、前記各小屋束及び前記横架材を、前記振れ止め又は筋違の少なくともいずれかと連結させて枠体とすることが好ましい。該枠体とは、小屋束及び母屋と、振れ止め又は筋違の少なくともいずれかとが、例えば三角形や矩形の各辺を構成するように連結された状態のことをいい、これにより、木造小屋フレームの強度が一層高められ、運搬やクレーン等による吊り上げの際に、小屋束の振れや小屋束又は母屋の反り等の変形を防止するものとなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る木造小屋フレーム100の構成を示す斜視図であるが、図に示すように、本木造小屋フレーム100は、所定間隔で配置された複数の小屋束1と、各小屋束1の上端に架設された母屋(横架材)2と、各小屋束1の下端付近に架設された振れ止め3と、端に配置された小屋束1と母屋2とに渡って架設された筋違4と、母屋2の各垂木固定位置に夫々固定された垂木固定部材5とを具備してなるものである。本木造小屋フレーム100は、工場等において予め一体に組み付けられ、施工現場に搬入されて躯体に固定されることにより、木造小屋組を構成するものである。このように、木造小屋組の一部を予め一体としておくことにより、施工現場における作業工数が減少して工期を短縮することができる。また、高所作業も減り、作業の安全性が増す。
【0013】
小屋束1は、木製の角柱材であり、木造小屋組においては小屋梁上に立設されるものである。1つの木造小屋フレーム100における各小屋束1の垂直寸法は同一であり、これにより、小屋梁上において母屋2の長手方向が水平となるように支持するものとなる。木造小屋組においては、小屋梁上に複数の木造小屋フレーム100が組み付けられ、各木造小屋フレーム100の母屋2が屋根勾配に従って所定の高さに配置されるので、木造小屋組における複数の木造小屋フレーム100の小屋束1の垂直寸法は、かかる屋根勾配に従って夫々設定されている。また、一つの木造小屋フレーム100に配設すべき小屋束1の本数は特に限定されるものではなく、建物の屋根の大きさ等にあわせて適宜設定される。
【0014】
各小屋束1の上端に架設された母屋2も木製の角柱材であり、木造小屋組においては、母屋2が桁行方向に横架され、該母屋2に前記垂木固定部材5を介して垂木が固定されるものとなる。なお、図には示していないが、各小屋束1の上端には、母屋2との接合のためにほぞが形成されており、母屋2の小屋束1との接合位置には該ほぞを差し込むための孔が穿たれている。また、木造小屋フレーム100を木造小屋組の頂部に配設する場合には、母屋2に代えて棟木(横架材)を小屋束1の上端に架設する。
【0015】
一方、各小屋束1の下端付近には、振れ止め3が架設されている。該振れ止め3は、木製の平板材であり、各小屋束1の側面に釘打ちにより固定されている。木造小屋組においては、振れ止め3が小屋組の桁行方向の振れを防止するものとなる。本木造小屋フレーム100では、すべての小屋束1の下端付近に振れ止め3を架設しているが、必ずしもすべての小屋束1に架設する必要はなく、木造小屋組に求められる強度や他の木造小屋フレーム100との関係を考慮して、例えば中央の2本の小屋束1にのみ架設することとしてもよい。
【0016】
また、両端に配置された各小屋束1と母屋2とに渡って、斜材として筋違4が夫々架設されている。該筋違4は、木製の平板材であり、各小屋束1及び母屋2の側面に釘打ちにより夫々固定されている。木造小屋組においては、筋違4が小屋組を補強するものとなる。本木造小屋フレーム100では、小屋束1と母屋2間に筋違4を架設しているが、小屋束1間、即ち両端の各小屋束1と該小屋束1と隣接する中央の各小屋束1との間に渡って筋違4を斜材として架設してもよい。
【0017】
前記各小屋束1及び母屋2を、振れ止め3又は筋違4の少なくともいずれかと連結させて枠体とすることにより、振れ止め3及び筋違4が、木造小屋フレーム100が木造小屋組として構成された場合には、木造小屋の桁行き方向の振れを防止し、構造を補強するものとなり、木造小屋フレーム100の運搬やクレーン等による吊り上げの際には、木造小屋フレーム100自体の構造を補強し、特には小屋束1の振れや小屋束1及び母屋2の反り等の変形を防止して小屋束1と母屋2との寸法精度を維持するものとして機能する。本木造小屋フレーム100では、各小屋束1及び母屋2は、振れ止め3により矩形の枠体として構成され、更に該枠体が筋違4を斜材として補強されている。また、例えば前述したように、振れ止め3を中央の2本の小屋束1にのみ架設したとすれば、その2本の小屋束1と母屋2と振れ止め3とにより矩形の枠体が構成され、両端の各小屋束1は、母屋2と筋違4とにより三角形の枠体として夫々構成される。
【0018】
垂木固定部材5は、図2に示すように、母屋2の上面に固定される基部50A,50B上に、所定勾配の垂木の底面を支持する垂木支持部51が形成され、該垂木支持部51に、垂木の側面に固定する垂木固定部52が立設されてなるものである。このような垂木固定部材5は所定形状の鋼板に曲折、打ち抜き等の加工を施すことにより得ることができる。
【0019】
基部50Aには、その厚み方向に貫通孔53が穿設されており、母屋2の上面に接触させた状態で、該貫通孔53にボルトや釘等が挿通されて母屋2に貫入されることにより、垂木固定部材5が母屋2の上面に対して固定されるようになっている。一方、基部50Bは、鋼板が略直角に曲折された形状であり、母屋2の上面と側面の隅部に合致するものとなっている。該基部50Bの下端付近にも、その厚み方向に貫通孔54が穿設されており、母屋2の隅部に接触させた状態で、該貫通孔54にボルトや釘等を挿通して母屋2に貫入することにより、垂木固定部材5が母屋2の側面に対して固定できるようになっている。
【0020】
垂木支持部51は、図3に示すように、基部50Aから起立した起立部51aと、基部50Bから起立した起立部51bと、これら起立部51a,51bに架設された支持部51cとからなり、起立部51a,51bの高低差によって支持部51cが垂木の勾配αと略同等に傾斜したものとなっている。このような垂木支持部51により勾配αの垂木の底面を担持するように支持するものとなっている。
【0021】
垂木固定部52は、図2及び図3に示すように、鋼板が前記垂木支持部51の支持部51cから略直角に上方ヘ曲折されてなるものであり、該支持部51cと相まって、垂木の底面と側面の隅部に合致したものとなっている。該垂木固定部52には、その厚み方向に貫通孔55が穿設されており、垂木固定部52の内面を垂木の側面に接触させた状態で、該貫通孔55にボルトや釘等を挿通して垂木に貫入することにより、垂木固定部材5に垂木を固定できるようになっている。
【0022】
なお、垂木の上面には野地板が張られるので、垂木固定部52は、垂木の上面へ突出しないように、垂木の高さ寸法内のものとする。また、本実施の形態では、垂木支持部51の一側方にのみ垂木固定部52が立設されたものとしたが、垂木の両側面に接して垂木を挟入するように、垂木支持部51の両側方に垂木固定部52を立設すれば垂木の固定強度が高くなる。
【0023】
図4は母屋2に垂木固定部材5が固定された状態を示すものであるが、図に示すように、垂木支持部51の支持部51cが垂木の勾配と合致するようにして、基部50Aの底面と母屋2の上面とを接触させ、且つ基部50Bを母屋2の上面と側面の隅部に合致させた状態で、各貫通孔54に釘56を夫々挿入して母屋2に打ち込むことにより固定している。このようにして、木造小屋組に配設すべき垂木に対応して、母屋2の各位置に垂木固定部材5を夫々固定する。
【0024】
つぎに、本木造小屋フレーム100の固定方法について説明する。
工場等において予め組み付けられた木造小屋フレーム100を、トラック等の運搬車両に積載して施工現場へ搬入する。搬入後、クレーン等により吊り上げて躯体の所定位置に位置せしめて固定する。本木造小屋フレーム100は、小屋束1、母屋2、振れ止め3、及び筋違4が一平面をなすように枠体として組まれたものであるので、複数の木造小屋フレーム100を運搬車両の荷台に横積みや起立状態で列置することにより効率的に積載することができる。また、各小屋束1及び母屋2が、振れ止め3により矩形の枠体として構成されるとともに、筋違4により補強されているので、運搬時の振動や温度環境、吊り上げ時の負荷等により木造小屋フレーム100が変形等することがなく、工場等で組み付けられた際の寸法精度が維持され、施工現場において寸法調整のための加工を行う必要がない。
【0025】
図5は、木造住宅の躯体の一部を示しており、不図示の柱の上端に軒桁A及び小屋梁Bが組まれている。図には現れていないが、小屋梁Bは桁行方向に列設されており、本木造小屋フレーム100の小屋束1が該小屋梁B上に立設されて、母屋2が軒桁Aと同方向に横架される。また、木造小屋組の頂部となる位置には、小屋束1の上端に棟木6が架設された木造小屋フレーム100が固定される。軒桁A及び小屋梁Bが組まれた後、施工現場に搬入した各木造小屋フレーム100をクレーンで吊り上げ、図5に示すように、小屋梁B上に小屋束1を立設するように位置せしめて固定する。小屋梁Bと小屋束1との固定は公知且つ任意の固定方法による。このように、予め工場等において組み付けられた木造小屋フレーム100を施工現場に搬入して、小屋梁Bに固定することにより、施工現場における作業が少なくなり工期の短縮化を図ることができ、また、施工現場での廃材も少なくなる。また、各小屋束1及び母屋2が振れ止め3及び筋違4により補強されているので、木造小屋フレーム100の寸法精度が維持されて精度よく小屋梁Bに組み付けることができる。
【0026】
木造小屋フレーム100が配設された後、母屋2及び棟木6に垂木固定部材5を介して垂木が固定される。該垂木は、夫々単独で垂木固定部材5に固定され、その後、野地板が敷設されるものであっても、予め複数の垂木に野地板を敷設して一体とした屋根パネルを構成するものであってもよい。本実施の形態では、屋根パネルを構成する垂木を固定する場合について説明する。
【0027】
図6に示すように、屋根パネル7は、複数の垂木70が列設され、該垂木70の上面に野地板71が敷設されたものであり、前述したように小屋梁B上に配設された木造小屋フレーム100上に、クレーン等で吊り上げ、各木造小屋フレーム100の母屋2及び棟木6に固定された垂木固定部材5の垂木支持部51上に載置する。これにより、屋根パネル7が所定勾配に位置決めされる。その後、図7に示すように、垂木固定部材5の垂木固定部52の貫通孔55に釘56を挿通して垂木70に打ち込み、垂木70を固定する。該垂木固定部52により、垂木70に対して側方から釘56を打ちつけて垂木70を固定することができるので固定作業が容易であり、また、作業者は屋根パネル7の上側へ上がる必要がないので危険度が少ない。なお、軒桁Aについては、母屋2等と同様に垂木固定部材5を予め固定しておいて垂木70を固定しても、ひねり金物等の他の金物を用いて固定することとしてもよい。
【0028】
【発明の効果】
このように、本発明に係る木造小屋フレームによれば、所定間隔で配置された複数の小屋束の上端に横架材が、下端付近に振れ止めが架設され、該小屋束のいずれかと隣接する小屋束又は前記横架材とに渡って筋違が架設され、前記横架材の各垂木固定位置に垂木固定部材が固定されたので、振れ止め及び筋違により、横架材と小屋束との固定強度が高められて木造小屋フレームに変形が生じ難くなり、躯体への取付が簡易に行えるという利点がある。また、垂木固定部材により、垂木の側方から垂木固定部に釘打ち等により垂木を固定することができ、特に垂木と野地板とが一体となった屋根パネルの取付けが簡易且つ安全に行え、垂木の固定に技量差がなくなり確実なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【符号の説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る木造小屋フレーム100の構成を示す斜視図である。
【図2】垂木固定部材5の詳細な構成を示す拡大斜視図である。
【図3】垂木固定部材5の詳細な構成を示す側面図である。
【図4】母屋2に固定された垂木固定部材5を示す側面図である。
【図5】木造小屋フレーム100の固定方法を説明するための側面図である。
【図6】木造小屋フレーム100の固定方法を説明するための側面図である。
【図7】垂木固定部材5への垂木70の固定を説明するための正面図である。
【符号の説明】
100 木造小屋フレーム
1 小屋束
2 横架材
3 振れ止め
4 筋違
5 垂木固定部材
50A,50B 基部
51 垂木支持部
52 垂木固定部
Claims (2)
- 予め一体に組み付けられて施工現場に搬入される木造小屋フレームであって、
所定間隔で配置された複数の小屋束の上端に角柱材からなる横架材が、下端付近に振れ止めが架設され、該小屋束のいずれかと隣接する小屋束又は前記横架材とに渡って筋違が架設され、前記横架材の各垂木固定位置に、
横架材の上面に固定される第1の基部及び横架材の上面と側面の隅部に合致した状態で横架材の側面に固定される第2の基部と、
前記第1の基部及び前記第2の基部からそれぞれ起立した高さの異なる1対の起立部、及び該1対の起立部の間に傾斜して架設された支持部を有し、所定勾配の垂木の底面を支持する垂木支持部と、
該垂木支持部に立設されて垂木の側面に固定される垂木固定部とを備えてなる垂木固定部材が固定されたものであることを特徴とする木造小屋フレーム。 - 前記各小屋束及び前記横架材を、前記振れ止め又は筋違の少なくともいずれかと連結させて枠体としたことを特徴とする請求項1記載の木造小屋フレーム。
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