JP4165858B2 - tert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物とその製法およびtert−アミロキシシアノビフェニル化合物とその製法、並びにシアノヒドロキシビフェニル化合物の製法 - Google Patents
tert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物とその製法およびtert−アミロキシシアノビフェニル化合物とその製法、並びにシアノヒドロキシビフェニル化合物の製法 Download PDFInfo
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬、染料、電子材料、液晶材料などの中間体として有用なシアノヒドロキシビフェニル化合物の製造前駆体となる、新規なtert−アミロキシハロゲノベンゼンに関する。
【0002】
【従来の技術】
シアノヒドロキシビフェニル化合物の製造方法については、従来よりいくつかの製造方法が知られている。
【0003】
▲1▼4−アセトキシビフェニルをヨード化して4−アセトキシ−4’−ヨードビフェニルを調製し、さらにヨード基をシアノ化し、アセトキシ基を加水分解して4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルを合成する方法(特開平8−169868号公報)。この方法では、シアン化銅を使用するため、取り扱いに問題がある。
▲2▼水素化ナトリウム、tert−アミルアルコール、ニッケル(II)ジアセテート、2,2’−ビピリジン、ヨウ化カリウムから調製したニッケル錯体を用いて、ハロゲン化アリールのクロスカップリング反応により、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルを合成する方法[ジャーナル オブ オルガニック ケミストリー(J.Org.Chem.)、第54巻,第4844頁、1989年]。この方法では、ニッケル錯体の調製が困難であり、また副生成物(ホモカップリング体)も多い。
▲3▼4−クロロベンゾニトリルと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを、光反応によりカップリングさせ、さらに、芳香環から脱tert−ブチル化を行い、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルを合成する方法[ジャーナル オブオルガニック ケミストリー(J.Org.Chem.)、第59巻,第4482頁、1994年]。光反応の装置が必要で、しかも位置異性体が多い。
▲4▼4−メトキシフェニルボロン酸と、3−ブロモベンゾニトリルとを、パラジウム触媒および塩基の存在下でカップリング反応を行ない、さらにメトキシ基の脱保護を塩化メチレン中、−78℃で、三臭化ホウ素を用いて行ない、3−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルを得る方法(国際公開特許WO97/20815号公報)がある。しかしながら、この方法では、−78℃の低温で、特殊な試薬である三臭化ホウ素を用いて脱保護を行うので特殊な装置を必要とし、しかも取り扱いが困難でかつ高価な三臭化ホウ素を使用しなければならないという問題点がある。
▲5▼同様のメトキシ基の脱保護反応には、濃臭化水素、酢酸中で還流する方法[ジャーナル オブ オルガニック ケミストリー(J.Org.Chem.)、第6巻,第852頁、1941年]もある。しかし、この方法では、シアノ基が加水分解し、カルボン酸になってしまうという問題点がある。一方、n−アルコキシ基が脱保護しにくいことを利用し、4’−n−アミルオキシ−4−カルボン酸ビフェニルに、五塩化リン、p−トルエンスルホン酸アミドを加え加熱し4’−n−アミルオキシ−4−シアノビフェニルを合成する例もある(特開昭51−75050号公報)。
▲6▼アルデヒドを保護した4−ブロモベンズアルデヒドと、p−アルコキシフェニルマグネシウムハライドとのカップリング反応を経て、アルデヒドの脱保護、ホルミル基のシアノ化および加水分解を行い4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル化合物を合成する方法(国際公開特許WO98/37059号公報)。4−フェニルフェノールを出発物質としてカルボン酸を経由し5段階で、シアノヒドロキシビフェニル化合物を合成する方法(国際公開特許WO98/37060号公報)。しかしながら、これら文献は、どちらも反応工程が長いなど工業的に行うには問題点があった。
▲7▼tert−ブトキシフェニル金属化合物と4−ハロゲノベンゾニトリル化合物のクロスカップリング反応から4−tert−ブトキシ−4’−シアノビフェニルを合成し、酸触媒の存在下で脱イソブテン反応させて4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルを合成する方法(特開2000−344727号報)。しかしながら、この方法では、フェノール性水酸基の保護反応(t−ブトキシ化)にイソブチレンガス(気体)を使用するため、取扱いが煩雑である。さらに、脱イソブテン反応(脱保護反応)の加水分解条件が厳しいという欠点を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のシアノヒドロキシビフェニル化合物の合成法は、前記したような様々な問題点があり、そのためこれらに代る工業的に有利な製法の開発が望まれている。したがって、本発明は、これらの従来の方法に代わり、シアノヒドロキシビフェニル化合物の工業的に有利な製法の新規な前駆体であるtert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を続けた。その結果、シアノヒドロキシビフェニル化合物(4)を工業的に製造する上で、前駆体として新規化合物である、tert−アミロキシハロゲノベンゼン(6)およびtert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)を使用して反応させることが極めて有用であることを見出した。
【0006】
つまり、ハロゲノフェノール化合物(5)と2−メチル−2−ブテンから新規前駆体であるtert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物(6)を製造し、このtert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物(6)から合成されるtert−アミロキシフェニルホウ素化合物(2)(第1工程)と、ハロゲノベンゾニトリル化合物(1)とを、遷移金属触媒および塩基の存在下に反応(第2工程)させることにより、シアノヒドロキシビフェニル化合物(4)の前駆体であるtert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)を簡便に、かつ高収率、高純度で製造することができることを見出した。さらに、tert-アミロキシフェニルホウ素化合物(2)を単離精製することなく、上記第1工程と第2工程を連続して行い、tert−アミロキシシアノビフェニル化合物をより簡便に、かつ高収率、高純度で製造できることを見出した。そして、このtert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)を穏やかな酸性条件下で加水分解(第3工程)することにより、シアノヒドロキシビフェニル化合物(4)を効率よく、高収率かつ高純度に得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
なお、化合物名の( )内番号は、以下に示す一般式等の番号を示す。以下でも同様である。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)下記一般式(1)
【化18】
(式中、Xは塩素原子、臭素原子または沃素原子を示す。)
で表されるハロゲノベンゾニトリル化合物と、下記一般式(2)
【化19】
(式中、nは0、1、2の整数を示す。)
で表されるホウ素化合物とを、遷移金属触媒および塩基の存在下で反応させることを特徴とする、下記一般式(3)
【化20】
で表されるtert−アミロキシシアノビフェニル化合物の製法。
【0009】
(2)下記一般式(3)
【化21】
で表されるtert−アミロキシシアノビフェニル化合物を酸性条件下で加水分解することを特徴とする、下記一般式(4)
【化22】
で表されるシアノヒドロキシビフェニル化合物の製法。
【0010】
(3)下記一般式(5)
【化23】
(式中、Xは塩素原子、臭素原子または沃素原子を示す。)
で表されるハロゲノフェノール化合物と、2−メチル−2−ブテンとを酸触媒の存在下で反応させることを特徴とする、下記一般式(6)
【化24】
(式中、Xは塩素原子、臭素原子または沃素原子を示す。)
で表されるtert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物の製法。
【0011】
(4)下記一般式(6)
【化25】
(式中、Xは塩素原子、臭素原子または沃素原子を示す。)
と金属マグネシウムとから合成される下記一般式(7)で表されるtert−アミロキシフェニルマグネシウムハライド化合物
【化26】
(式中、Xは、塩素原子、臭素原子または沃素原子を示す。以下「グリニャール試薬」ということがある。)と、下記一般式(8)
【化27】
(式中、Rは炭素数が1〜6のアルキル基を示す。)
で表されるホウ酸トリ−n−アルキルエステルとを反応させ、加水分解することによって得ることができる、下記一般式(2)
【化28】
(式中、nは0、1、2の整数を示す。)
で表されるホウ素化合物を単離することなく、反応溶液のままで下記一般式(1)
【化29】
で表されるハロゲノベンゾニトリルと一工程で反応させることを特徴とする、下記一般式(3)
【化30】
で表されるtert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)の製法。
【0012】
(5)下記一般式(3)
【化31】
(式中、tert−アミロキシ基はフェニル基の2’位、3’位、4’位のいずれかに結合し、シアノ基はフェニル基の3位または4位のいずれかに結合している。)
で表されるtert−アミロキシシアノビフェニル化合物。
【0013】
(6)前記一般式(3)で表されるtert−アミロキシシアノビフェニル化合物が、下記式(9)
【化32】
で表される4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニル。
【0014】
(7)下記一般式(6)
【化33】
(式中、Xは塩素原子、臭素原子または沃素原子を示し、tert−アミロキシ基は2’位、3’位、4’位のいずれかに結合している。)
で表されるtert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物。
【0015】
(8)前記一般式(6)で表されるtert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物が次式(10)
【化34】
(式中、Xは塩素原子、臭素原子または沃素原子を示す。)
で表されることを特徴とする、4−tert−アミロキシハロゲノベンゼン。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のtert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物(6)、tert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)およびその製法並びにシアノヒドロキシビフェニル化合物(4)の製法を詳細に説明する。
【0017】
[1]tert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物(6)の製造
本発明に係るtert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物(6)は、下記一般式(5)で表されるハロゲノフェノール化合物と、2−メチル−2−ブテンとを、硫酸などの酸触媒存在下で反応させることにより製造することができる。
【0018】
【化35】
(式中、Xは前記と同じ。)
【0019】
このtert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物(6)は、ホウ素化合物(2)の製造に重要な化合物である。
【0020】
上記ハロゲノフェノール化合物(5)と2−メチル−2−ブテンの反応は、特に溶媒を加えずに行うこともできるが、有機溶媒中で行うこともできる。そのような有機溶媒としては、たとえば、トルエン、ベンゼンなどの炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
【0021】
有機溶媒の使用量は、化合物(5)に対して、重量比で0.5〜2倍量の範囲であることが好ましく、特に等量であることが好ましい。
【0022】
反応に用いられる酸触媒は、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、三フッ化ホウ素などが挙げられる。これらの酸触媒中、硫酸が特に好ましい。
【0023】
酸触媒の使用量は、化合物(5)に対して0.5モル%〜2モル%が好ましく、特に1モル%であることが好ましい。
【0024】
2−メチル−2−ブテンの使用量は、化合物(5)に対して、1〜5モル倍量が好ましく、特に2モル倍量であることが好ましい。
【0025】
反応温度は−15℃〜25℃の範囲で実施できるが、特に0℃〜10℃の範囲で反応させることが好ましい。
【0026】
一般式(6)で表されるtert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物の具体例として、
▲1▼2−tert−アミロキシクロロベンゼン、
▲2▼3−tert−アミロキシクロロベンゼン、
▲3▼4−tert−アミロキシクロロベンゼン、
▲4▼2−tert−アミロキシブロモベンゼン、
▲5▼3−tert−アミロキシブロモベンゼン、
▲6▼4−tert−アミロキシブロモベンゼン、
などが挙げられるが、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0027】
[2]tert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)の製造
本発明におけるtert−アミロキシビフェニル化合物の製造経路は以下に示すとおりである。
【0028】
(第1工程)
【化36】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0029】
(第2工程)
【化37】
(式中、Xは塩素原子、臭素原子または沃素原子であり、nは0、1、2の整数である)
【0030】
(第1工程)
前記一般式(2)で表されるホウ素化合物(2)は、一般式(6)で表されるtert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物から合成される一般式(7)で表されるtert−アミロキシフェニルマグネシウムハライド化合物と、(RO)3Bで表されるホウ酸トリ−n−アルキルエステル(8)とを反応させて得られる生成物を加水分解することによって得ることができる。
【0031】
上記のグリニャール試薬(7)は、通常のグリニャール試薬の調製法により調製でき、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエンなどを単独または2種類以上組み合わせた溶媒中で、上記tert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物とマグネシウムと反応させることで合成できる。tert−アミロキシハロゲノベンゼン化合物のハロゲンとしては、臭素原子または塩素原子が好ましい。このハロゲン化合物中のtert−アミロキシ基の位置は、2位、3位、4位のいずれでもよい。
【0032】
また、式(RO)3B で表されるホウ酸トリ−n−アルキルエステル(8)は、炭素数が1〜6のものが使用できるが、なかでも炭素数が4〜6であるものが好ましい。
【0033】
なお、これらのホウ酸トリ−n−アルキルエステルは、たとえば、アルコールまたはナトリウムアルコキシドと、ホウ酸、無水ホウ酸または塩化ホウ酸との反応により合成することができる。
【0034】
ホウ素化合物(2)の合成に係るグリニャール試薬と、ホウ酸トリ−n−アルキルエステル(8)との反応は、有機溶媒中で行なうことが好ましく、このような有機溶媒としては、たとえば、ペンタン、ヘキサンなどの飽和炭化水素、トルエンなどの芳香族炭化水素、エーテル類などが挙げられる。
【0035】
このようなグリニャール試薬とホウ酸トリ−n−アルキルエステルとの反応は、上記溶媒中で、−50〜40℃の温度で行なうのが好ましい。このグリニャール試薬とホウ酸トリ−n−アルキルエステルとの反応により、ホウ素化合物(2)を得る場合の、好ましい反応温度は、上記ホウ素化合物(2)において、n=0で表されるトリ(tert−アミロキシフェニル)ボランを得る場合は、反応温度は−10〜40℃であることが好ましい。n=1で表されるジ(tert−アミロキシフェニル)ボリン酸を得る場合は、反応温度は−10〜40℃であることが好ましく、n=2で表されるモノ−tert−アミロキシフェニルボロン酸を得る場合は、反応温度は−50〜−30℃であることが好ましい。
【0036】
上記ホウ素化合物(2)において、n=0で表されるトリ(tert−アミロキシフェニル)ボラン、n=1で表されるジ(tert−アミロキシフェニル)ボリン酸、n=2で表されるモノ−tert−アミロキシフェニルボロン酸をそれぞれ合成するには、反応させるグリニャール試薬とホウ酸トリ−n−アルキルエステルの使用の割合を調製することにより、所望のホウ素化合物(2)を得ることができる。具体的には、上記ホウ素化合物(2)において、n=0で表されるトリ(tert−アミロキシフェニル)ボランを得るには、グリニャール試薬1モルに対して、ホウ酸トリ−n−アルキルエステル0.2〜0.4モル、好ましくは0.25〜0.35モルを使用することが望ましく、n=1で表されるジ(tert−アミロキシフェニル)ボリン酸を得るには、グリニャール試薬1モルに対して、ホウ酸トリ−n−アルキルエステル0.45〜0.7モル、好ましくは0.5〜0.7モルを使用することが望ましく、n=2で表されるモノ−tert−アミロキシフェニルボロン酸を得るには、グリニャール試薬1モルに対して、ホウ酸トリ−n−アルキルエステル0.8〜3モル、好ましくは0.9〜2モルを使用することが望ましい。
【0037】
上記のようにしてグリニャール試薬とホウ酸トリ−n−アルキルエステルとの反応で得られた化合物は、酸性条件下で加水分解することにより、ホウ素化合物(2)を得ることができる。このような加水分解で使用する酸は特に限定されず、各種の酸の存在下で行うことができ、たとえば、塩酸、希硫酸などを使用することができる。
【0038】
(第2工程)tert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)の製造
第1工程で得られるホウ素化合物(2)は、単離精製してハロゲノベンゾニトリル化合物(1)との反応に用いてもよいし、上記のような方法で得られたホウ素化合物(2)の含有液を単離精製せずに、該含有液をそのままあるいは濃縮した含有液をそのままハロゲノベンゾニトリル化合物(1)との反応に使用することもできる。
【0039】
なお、上記ホウ素化合物(2)の代りに、これらホウ素化合物から誘導される塩、エステル類、もしくはモノ−tert−アミロキシフェニルボロン酸の脱水体であるトリス(tert−アミロキシフェニル)ボロキシンなどのホウ酸無水物もハロゲノベンゾニトリル化合物(1)との反応に用いることができる。
【0040】
本発明においては、上記のようにして合成したホウ素化合物(2)とハロゲノベンゾニトリル化合物(1)とを、遷移金属触媒、塩基の存在下に反応させて、tert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)を得る。これらの触媒、塩基、原料であるハロゲノベンゾニトリル化合物(1)およびホウ素化合物(2)は同時に仕込んで反応させてもよいし、必要に応じてこれらの触媒、塩基、ハロゲノベンゾニトリル化合物(1)およびホウ素化合物(2)のうち1種または2種以上の混合物を滴下して反応させてもよい。
【0041】
本発明に係るハロゲノベンゾニトリル化合物(1)とホウ素化合物(2)との反応では、溶媒を特に加えずに行うこともできるし、溶媒中で行うこともできる。たとえば、水、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどの炭素数が1〜6のアルコール類からなる群から選ばれる1または2種類以上の溶媒が挙げられる。
【0042】
本発明に係る遷移金属触媒としては、各種遷移金属触媒を使用することができるが、このうち下記に例示するようなパラジウム触媒またはニッケル触媒を用いることが好ましい。
【0043】
パラジウム触媒としては、
▲1▼ テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、
▲2▼ ビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(II)クロライド、
▲3▼ 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)クロライド、
▲4▼ 1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンパラジウム(II)クロライド、
▲5▼ 1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンパラジウム(II)クロライド、
▲6▼ 1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンパラジウム(II)クロライド
などが挙げられる。このうち、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を使用することが特に好ましい。
【0044】
ニッケル触媒としては、
▲1▼ 1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンニッケル(II)クロライド、
▲2▼ 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンニッケル(II)クロライド、
▲3▼ 1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンニッケル(II)クロライド、
▲4▼ 1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンニッケル(II)クロライド
などが挙げられる。このうち、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンニッケル(II)クロライドを使用することが特に好ましい。
【0045】
本発明において、パラジウム触媒を使用する場合は、水と水以外の溶媒を併用するのが好ましく、特にテトラヒドロフランと水の混合溶媒を使用することが更に好ましい。また、ニッケル触媒の場合は、非水系で使用することが好ましい。
【0046】
これら遷移金属触媒は、単独に使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これら遷移金属触媒の使用量は、ハロゲノベンゾニトリル化合物 1モルに対し、0.1〜10モル%であることが好ましく、0.2〜2モル%であることが更に好ましい。
【0047】
本発明において塩基としては、具体的には、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、リン酸塩などが挙げられ、より具体的には、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸三カリウムなどの水溶性の塩基性化合物が挙げられる。これらは単独に使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これら塩基の使用量は、ハロゲノベンゾニトリル化合物 1モルに対し、0.5〜5モル倍であることが好ましく、1〜3モル倍であることが更に好ましい。
【0048】
このような、tert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)を得る反応では、ホウ素化合物(2)のホウ素一原子に結合するtert−アミロキシフェニル基の数により、ハロゲノベンゾニトリル化合物(1)とホウ素化合物(2)の使用割合が変わる。
【0049】
ホウ素化合物(2)において、n=0で表されるトリ(tert−アミロキシフェニル)ボランを用いる場合は、トリ(tert−アミロキシフェニル)ボランの使用量は、使用するハロゲノベンゾニトリル化合物1モルに対し、0.1〜0.5モルが好ましく、更に好ましくは0.3〜0.4である。n=1で表されるジ(tert−アミロキシフェニル)ボリン酸を用いる場合は、ジ(tert−アミロキシフェニル)ボリン酸の使用量は、使用するハロゲノベンゾニトリル化合物1モルに対し、0.5〜1.0モルが好ましく、更に好ましくは0.5〜0.8である。n=2で表されるモノ−tert−アミロキシフェニルボロン酸を用いる場合は、モノ−tert−アミロキシフェニルボロン酸の使用量は、使用するハロゲノベンゾニトリル化合物1モルに対し、0.8〜1.5モルが好ましく、更に好ましくは1.0〜1.5である。
【0050】
本発明においては、tert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)のうち、出発原料であるハロゲノベンゾニトリル化合物(1)のハロゲン原子とシアノ基とがメタ位またはパラ位に結合した場合に得られる、tert−アミロキシシアノビフェニル化合物のtert−アミロキシ基がフェニル基の2’位、3’位または4’位のいずれかに結合し、シアノ基がフェニル基の3位または4位のいずれかに結合するtert−アミロキシシアノビフェニル化合物が好ましい。具体例として、
▲1▼2’−tert−アミロキシ−3−シアノビフェニル、
▲2▼2’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニル、
▲3▼3’−tert−アミロキシ−3−シアノビフェニル、
▲4▼3’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニル、
▲5▼4’−tert−アミロキシ−3−シアノビフェニル、
▲6▼4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニル、
などが挙げられるが、本発明はこれらの例示のみに限定されるものではない。このうち特に、4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニル化合物が好ましい。
【0051】
[3]シアノヒドロキシビフェニル化合物(4)の製造
本発明におけるシアノヒドロキシビフェニル化合物(4)の製造経路は以下に示すとおりである。
【0052】
(第3工程)
【化38】
【0053】
tert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)に対して、酸性条件下で加水分解することにより、tert−アミロキシ基の保護基であるtert−アミル基を脱保護させてシアノヒドロキシビフェニル化合物を得ることができる。
【0054】
この反応で用いるtert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)は、前記(第2工程)で得られるtert−アミロキシシアノビフェニル化合物を含有した反応液をそのままかあるいは適度に濃縮等をしてそのまま用いてもよいし、tert−アミロキシシアノビフェニル化合物を精製してもよい。
【0055】
本発明において、tert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)のうち、tert−アミロキシシアノビフェニル化合物のtert−アミロキシ基がフェニル基の2’位、3’位または4’位のいずれかに結合し、シアノ基がフェニル基の3位または4位のいずれかに結合するシアノビフェニル化合物を使用することが好ましい。
【0056】
tert−アミロキシシアノビフェニル化合物からのtert−アミロキシ基の脱保護は、酸性条件下で行う。このような脱保護反応に使用する酸としては、硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸、トリフロロメタンスルホン酸トリメチルシラン、ヨウ化トリメチルシランなどが挙げられる。このうち、工業的には安価で取り扱いの容易な希硫酸が好ましい。
【0057】
このようなtert−アミロキシ基の脱保護反応は、たとえば酸触媒として硫酸水を使用する場合、tert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)に、室温条件下で、硫酸水の濃度が30〜90%であることが好ましく、更に好ましくは60〜80%、特に好ましくは65〜70%の硫酸水を添加して行う。
【0058】
このようなtert−アミロキシ基の脱保護反応は、有機溶媒中で行なうのが好ましく、たとえば、トルエン、テトラヒドロフランなどの有機溶媒が好ましく、特にテトラヒドロフランが好ましい。この溶媒の使用量は、tert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)の重量の0.5〜2.0倍の量で、好ましくは0.8〜1.5倍の量である。
【0059】
このようにしてtert−アミロキシ基の脱保護反応を経て得られる、シアノヒドロキシビフェニル化合物を含有した反応液を水洗した後、たとえばシアノヒドロキシビフェニル化合物のNa塩として取り出したり、あるいは溶媒を留去しシリカゲルクロマトグラフィーや再結晶法などにより精製して、目的物であるシアノヒドロキシビフェニル化合物(4)を得ることができる。
【0060】
従来の保護基であるn−ブトキシ基のようなn−アルコキシ基の脱保護反応では、特殊な試薬あるいは濃臭化水素などの強酸を必要とし、しかも還流下という厳しい反応条件で行う必要があり、反応途中で副反応を伴うなどの問題点があったのに比べ、本発明に係るtert−アミロキシシアノビフェニル化合物(3)の脱保護反応は、室温下に希硫酸などを添加することにより容易に行うことができる。
【0061】
【発明の効果】
本発明に係るtert−アミロキシシアノビフェニル化合物の製造方法によれば、効率的な製造工程によりtert−アミロキシシアノビフェニル化合物を高収率かつ高純度に得ることができる。また、本発明に係るシアノヒドロキシビフェニル化合物の製造方法によれば、温和な条件下で効率よくシアノヒドロキシビフェニル化合物を高収率かつ高純度に得ることができる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例により本発明は限定されるものではない。
【0063】
実施例1 [4−tert−アミロキシブロモベンゼンの製造]
還流冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四頚フラスコを窒素置換し、4−ブロモフェノール17.3g(0.1モル)、p−トルエンスルホン酸・一水和物0.19g(0.001モル)、2−メチル−2−ブテン14.0g(0.2モル)およびトルエン20mlを加え、この混合溶液を10〜15℃で約2時間攪拌した。反応終了後に反応液に10%NaOH水溶液を加え、未反応の4−ブロモフェノールを除去し、得られた有機層を水10mlで2回洗浄し減圧条件で溶媒を留去し、粗組成物17.3gを得た。これを蒸留(105℃/4mmHg)により精製し、精製品14.5gを得た。収率59.9%であった。得られた精製品を以下に示したごとくの1H−NMR、質量分析により同定(以下の実施例でも同様)し、この精製品が4’−tert−アミロキシブロモベンゼンであることを確認した。精製品の純度は99.9%[ガスクロマトグラフィー(以下「GC」と略す。)より]であった。
【0064】
【0065】
実施例2 [4−tert−アミロキシクロロベンゼンの製造]
還流冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四頚フラスコを窒素置換し、4−クロロフェノール12.9g(0.1モル)、p−トルエンスルホン酸・一水和物0.19g(0.001モル)、2−メチル−2−ブテン14.0g(0.2モル)およびトルエン20mlを加え、この混合溶液を10〜15℃で約2時間攪拌した。反応終了後に反応液に10%NaOH水溶液を加え、未反応の4−クロロフェノールを除去し、得られた有機層を水10mlで2回洗浄し減圧条件で溶媒を留去し、粗組成物14.3gを得た。これを蒸留(96℃/5mmHg)により精製し、精製品10.9gを得た。収率54.9%であった。得られた精製品を1H−NMR、質量分析により同定し、この精製品が4’−tert−アミロキシクロロベンゼンであることを確認した。精製品の純度は99.9%(GCより)であった。
【0066】
【0067】
実施例3 [4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニルの製造]
還流冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四頚フラスコを窒素置換し、4,4’−ジ(tert−アミロキシフェニル)ボリン酸2.1g(0.006モル)、4−クロロベンゾニトリル1.5g(0.011モル)、リン酸三カリウム6.9g(0.033モル)およびテトラヒドロフラン10mlを加え、これに1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンニッケル(II)クロライド0.061g(0.11ミリモル)を加えた後、この混合溶液を還流温度で約2時間攪拌した。反応終了後に反応液を室温まで冷却した後、トルエン10mlおよび水10mlを反応液に加えて分液した。さらに、得られた有機層を水10mlで2回洗浄し減圧条件で溶媒を留去し、粗組成物3.3gを得た。これをシリカゲルクロマトグラフィー[展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/5(v/v)]により精製し、2.88gの精製結晶を得た。収率98.7%(4−クロロベンゾニトリルより)であった。得られた精製結晶を1H−NMR、質量分析により同定し、この精製結晶が4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニルであることを確認した。精製結晶の純度は99.0%(GCより)であり、結晶の融点は、102〜104℃であった。
【0068】
【0069】
実施例4 [4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニルの製造]
還流冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四頚フラスコを窒素置換し、このフラスコに4−tert−アミロキシフェニルボロン酸2.08g(0.010モル)、4−ブロモベンゾニトリル1.64g(0.009モル)、テトラヒドロフラン10ml,水酸化ナトリウム0.72g(0.018モル)および水1gを導入した。これにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.21g(0.18ミリモル)を加えた後、この混合溶液を還流温度で10時間攪拌還流した。反応終了後に反応液を室温まで冷却した後、トルエン10mlおよび水10mlを加えて分液した。さらに、得られた有機層を水10mlで2回洗浄し減圧条件で溶媒を留去し、粗生成物2.75gを得た。これを、シリカゲルクロマトグラフィー[展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/5(v/v)]により精製し、精製結晶2.34gを得た。収率は98.0%(4−ブロモベンゾニトリルより)であった。得られた精製結晶を1H−NMR、質量分析により同定し、この精製結晶が4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニルであることを確認した。精製結晶の純度は99.1%(GCより)であり、結晶の融点は、102〜104℃であった。
【0070】
実施例5 [4’−tert−アミロキシ−シアノビフェニルの製造]
還流冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四頚フラスコを窒素置換し、このフラスコに4−tert−アミロキシフェニルボロン酸2.5g(0.012モル)、4−クロロベンゾニトリル1.5g(0.011モル)、テトラヒドロフラン10mlおよびリン酸三カリウム6.9g(0.033モル)を導入した。これに1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンニッケル(II)クロライド0.061g(0.11ミリモル)を加え、この混合溶液を還流温度で10時間攪拌した。反応終了後に反応液を室温まで冷却した後、トルエン10mlおよび水10mlを加えて分液した。さらに、得られた有機層を水10mlで2回洗浄し減圧条件で溶媒を留去し、粗組成物3.02gを得た。これをシリカゲルクロマトグラフィー[展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/5(v/v)]により精製し、精製結晶2.84gを得た。収率は97.3%(4−クロロベンゾニトリルより)であった。得られた精製結晶を1H−NMR、質量分析により同定し、この精製結晶が4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニルであることを確認した。精製結晶の純度は99.0%(GCより)であり、結晶の融点は、102〜104℃であった。
【0071】
実施例6 [4’−tert−アミロキシ−シアノビフェニルの製造]
還流冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四頚フラスコを窒素置換し、このフラスコに4−tert−アミロキシフェニルボロン酸無水物(ボロキシン)2.3g(0.004モル)、4−クロロベンゾニトリル1.5g(0.011モル)、テトラヒドロフラン10mlおよびリン酸三カリウム6.9g(0.033モル)を導入した。これに1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンニッケル(II)クロライド0.061g(0.11ミリモル)を加え、この混合溶液を還流温度で5時間攪拌した。反応終了後に反応液を室温まで冷却しトルエン10mlおよび水10mlを加えて分液した。さらに、得られた有機層を水10mlで2回洗浄し減圧条件で溶媒を留去し、粗組成物3.12gを得た。これをシリカゲルクロマトグラフィー[展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/5(v/v)]により精製し、精製結晶2.80gを得た。収率は95.9%(4−クロロベンゾニトリルより)であった。得られた精製結晶を1H−NMR、質量分析により同定し、この精製結晶が4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニルであることを確認した。精製結晶の純度は99.0%(GCより)であり、結晶の融点は、102〜104℃であった。
【0072】
実施例7 [4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニルの製造]
還流冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四頚フラスコを窒素置換し、これにマグネシウム1.5g(0.062モル)、少量の臭化エチルを入れて撹拌し、マグネシウムを活性化した。次いで、4−tert−アミロキシクロルベンゼン6.2g(0.031モル)をテトラヒドロフラン9mlとトルエン5mlの混合溶媒に溶解させた溶液を、フラスコ中の溶液の温度が70℃になるようにして5時間かけて滴下ロートで滴下した。滴下後、フラスコ中の溶液の温度が70℃のままで2時間撹拌し、グリニャール試薬として4−tert−アミロキシフェニルマグネシウムクロライドを得た。このグリニャール試薬をトルエン4mlに希釈したホウ酸トリ−n−ヘキシルエステル6.6g(0.021モル)中に35〜45℃で1時間かけて滴下し、滴下後、35〜45℃で1時間攪拌した。反応終了後、この反応液に、30℃以下で10%硫酸水溶液11.9gを加えて加水分解し分液した。得られた有機層を1%硫酸水溶液9mlで洗浄し、さらに水9mlで2回洗浄した。その結果、4,4’−ジ(tert−アミロキシフェニル)ボリン酸を主成分とするホウ素化合物のテトラヒドロフラン/トルエン溶液27.8gを得た。還流冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四頚フラスコを窒素置換し、このフラスコに上記の方法で合成した、4,4’−ジ(tert−アミロキシフェニル)ボリン酸を含む反応液を27.8g、4−クロロベンゾニトリル3.6g(0.026モル)およびリン酸三カリウム16.6g(0.078モル)を導入した。この混合溶液に1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンニッケル(II)クロライド0.15g(0.26ミリモル)を加え、溶液を還流温度で2時間攪拌した。反応終了後、反応液を室温まで冷却しトルエン25mlおよび水25mlを加えて分液した。さらに、得られた有機層を水25mlで2回洗浄し減圧条件で溶媒を留去し、粗組成物6.3gを得た。これをシリカゲルクロマトグラフィー[展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/5(v/v)]により精製し、精製結晶6.81gを得た。収率は98.7%(4−クロロベンゾニトリルより)であった。得られた精製結晶を1H−NMR、質量分析により同定し、この精製結晶が4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニルであることを確認した。精製結晶の純度は99.0%(GCより)であり、結晶の融点は、102〜104℃であった。
【0073】
実施例8 [4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルの製造]
還流冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四頚フラスコを窒素置換し、このフラスコに4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニル2.65g(0.010モル)、テトラヒドロフラン3mlと70%硫酸水1.5g(0.011モル)を導入し、20〜30℃で4時間攪拌した。反応終了後、水3mlおよびトルエン3mlを反応液に加えて分液し、得られた有機層を水3mlで3回洗浄し減圧条件で溶媒を留去し、粗結晶を2.25g得た。これをシリカゲルクロマトグラフィー[展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=5/1(v/v)]により精製し、白色結晶1.87gを得た。収率は94.4%(4’−tert−アミロキシ−4−シアノビフェニルより)であった。得られた精製結晶を1H−NMR、質量分析により同定し、この精製結晶が4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルであることを確認した。精製結晶の純度は99.0%(GCより)であり、結晶の融点は、194〜195℃であった。
【0074】
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