JP4163783B2 - アルミナ−炭化珪素質耐火物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炉内溶融物に対して優れた耐食性を示し、塵、産業廃棄物等の溶融炉の内張りに好適に用いられるアルミナ−炭化珪素質耐火物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般の家庭から出た塵や産業廃棄物の焼却炉には、耐食性のためには高アルミナ耐火物が、また、難付着性と高耐食性のためには炭化珪素質耐火物が使用されている。
【0003】
近年、かかる焼却処理された後の焼却灰の埋め立て地不足から、塵や廃棄物やそれらの焼却灰を一気に溶融処理する方法が実現しつつある。しかしながら、溶融炉の内張り耐火物の使用条件は、焼却炉と比較して炉内温度が高く、かつ溶融物に接触するため厳しくなる。そのため、一般的な高アルミナ耐火物では耐食性が大幅に不足することになり、その改善策としてクロム成分を含有せしめて耐食性を高めたクロム含有アルミナ耐火物が採用されてきている。
【0004】
しかしながら、このクロム含有アルミナ耐火物は、溶融炉の操業条件下において十分な耐食性を示すものの、溶融炉への炉内装入物中にアルカリ成分が存在する場合、六価クロムの発生を避けることができず環境衛生上の問題を生じ、クロムフリー化が求められる。
【0005】
一方、炭化珪素質耐火物としては、その結合形態が粘土を使用したクレイボンド等の酸化物系や、Siを使用して還元雰囲気で焼成したβ−SiCボンド、窒素雰囲気で焼成して得られる窒化珪素ボンド等が知られている。しかしながら、これらの炭化珪素質耐火物は、一般的な耐食性には優れているものの、塵や産業廃棄物の溶融炉に使用する場合、溶融物にアルカリ成分や、酸化鉄成分や溶融鉄が多く含まれているため、その耐食性が損なわれる問題がある。
【0006】
このアルミナ−炭化珪素質耐火物は製銑用高炉の内張としても使用されている。これは、炭化珪素質耐火物にAlを添加し使用条件下の雰囲気中に存在する窒素を利用してAlNやSIALON等のボンドを形成させるものであり、十分な耐食性を示す。しかしながら、塵や産業廃棄物を溶融処理する溶融炉の炉内雰囲気は、製銑用高炉より高温であること、溶融物にアルカリ成分が含まれていること、間欠操業により適度の耐スポーリング性が必要とされること等から、製銑用高炉で用いられている耐火物をそのまま塵及び産業廃棄物の溶融炉に適用することには無理がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の解決課題は、比較的低温の処理条件下は勿論のこと、高温でかつ炉内溶融物との接触条件下においても高耐食性を維持し、炉内補修時などの間欠操業下でも十分な耐スポーリング性を示す塵及び産業廃棄物溶融炉用の内張りに適したクロムフリーの耐火物を得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、製銑用高炉で用いられ、溶銑との接触条件下においても高耐食性を示すアルミナ−炭化珪素質耐火物に、所定量のSiC粉末を添加して耐食性と耐スポーリング性を確保し、且つ、所定量のAlの配合によって耐スポーリング性を確保しながら耐食性を大幅に向上し、さらに、所定量のSiの添加によってAl添加に伴う消化の問題を耐食性、耐スポーリング性の低下を防止しながら解消した。
【0009】
さらに、適正温度範囲で熱処理し、樹脂を硬化させることで、十分に樹脂ボンドを形成し、使用中の加熱によりカーボンボンドの形成を図り、塵及び産業廃棄物溶融炉用内張り耐火物としての最適化を図ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は炭化珪素粉末の使用量が10〜60重量%であり、SiとAlとの混合粉末、及び/又はSiとAlの合金粉末が、Siとして0.5〜8重量%であり、かつ、Alとして1〜10重量%であり、残部が主にアルミナ粉末からなる配合物を樹脂を使用して混練、成形後、90〜400℃で熱処理したアルミナ−炭化珪素質耐火物である。
【0011】
炭化珪素粉末の使用量が10重量%未満であると炉内溶融物に多く含まれるアルカリ成分の影響を受け、耐食性、耐スポーリング性共に不足する。炭化珪素粉末の使用量が60重量%を越えると、溶融物に多く含まれる酸化鉄成分や溶融鉄の影響を受け、耐食性が低下する。
【0012】
配合するSiとAlとの混合粉末及び/又はSiとAlとの合金粉末中のAlの使用量が、Alとして1重量%未満であると、使用中に形成されるAlNやSIALON等のボンド形成量が不足して耐食性が劣ることになる。また、10重量%を越えるとボンドが過剰に形成されて耐スポーリング性が劣る。
【0013】
同じく、配合するSiとAlとの混合粉末及び/又はSiとAlとの合金粉末中のSiの使用量がSiとして0.5重量%未満であると、使用中に形成されるボンドがAlN主体となり、炉の補修時など炉の操業の停止時間中の温度が低下している間の耐火物に消化の問題を生じる。また、Siの使用量が8重量%を越えると、Si系のボンド生成量が多くなり耐食性が低下し、同時に耐スポーリング性も低下する。
【0014】
AlとSiは、それぞれの所定量を混合物として添加するだけではなく、合金として添加しても、また、併用して添加してもSi成分とAl成分が所定量含まれておりさえすればその効果に差異はない。
【0015】
本発明のアルミナ−炭化珪素質耐火物は、成形後熱処理して使用する。その熱処理温度が90℃以上で、バインダー樹脂内での残存する揮発分のため使用中に耐火物の組織が劣化し、耐食性が低下するのを防止できる。また、400℃未満で熱処理することで、バインダー樹脂の分解を抑え、耐火物の強度の不足と、耐食性の低下が防止できる。
【0016】
バインダーとして樹脂を使用するのは、AlやSiを使用しているため、熱処理時及び使用時の問題発生を防止することにある。例えば、燐酸系や水ガラス系バインダーを使用すると、金属との反応により混練時に水素ガスを発生する。また粘土−水系では使用した水とAlが熱処理中に反応し、水素ガスが発生する。バインダー樹脂としては、コスト、作業性などの条件からフェノール樹脂、フラン樹脂、ピッチ変性フェノール樹脂等が望ましいが、もちろんこれらに限定するものではなく、性状、作用においてこれらと同等の樹脂が使用可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
表1から表3に示す割合の配合物を混練し、成形圧が2トン/cm2で、形状が230×100×65mmにオイルプレスで成形し、特に指定する場合を除いては200℃で熱処理をして試作品を作成し、その見かけ気孔率、圧縮強さ、それに侵食試験結果としての溶損状態、さらにはスポーリングの剥落回数を調べた。
【0019】
侵食試験は、特に指定する場合を除いてLPGと空気によるバーナー加熱の横型回転侵食試験装置を使用して、CaO/SiO2比(C/S比)が0.4、Fe2O3が8.5重量%、アルカリ分が8.5重量%の塵焼却灰溶融物を想定したスラグを投入し、1600℃で30分毎にスラグを取り換え、そのサイクルを20回繰り返して実施した。この侵食試験のサイクルは、20回連続ではなく、実験室の都合及び実操業における連続運転でない場合の影響も考慮して、10回のサイクルの繰り返し試験実施後一旦完全に冷却し、解体することなくそのまま翌日、再度10回のサイクルの侵食試験を継続した後に溶損程度を評価した。
【0020】
溶損指数は、Al2O3量が95重量%の焼成アルミナれんがの溶損量(厚み減少寸法)を100として個々の耐火物の溶損量を指数化して求めた。溶損指数が小さくなるほど耐食性が良好であることを示す。
【0021】
スポーリングテストは、50×50×230mmの試料を切り出してカーボン粉末中に埋め込み1500℃で再度熱処理した後に、1500℃の溶融銑鉄中に90秒浸漬し、直ちに5秒水冷しその後空冷する処理サイクルを15回繰り返して剥落発生時のサイクル回数で評価した。発生時のサイクル回数が大きいほど耐スポーリング性が良好であることを示す。溶融銑鉄中に浸漬する前に高温で再度の熱処理を施すのは、再度の熱処理を行うことにより、初期の熱処理後残存する揮発分を取り除き、爆裂の発生を防止するためである。揮発分を残した状態で溶融金属中に囲まれるような状態は、実際の使用条件下では起こり得ない。
【0022】
標準用に作成したAl2O3が95重量%の焼成アルミナれんがの品質は、気孔率が14.6%、圧縮強さが150MPa、溶損指数が100、剥落時のサイクル回数が5回である。
【0023】
【表1】
表1は、炭化珪素粉末の添加量と特性の関係を示す。炭化珪素粉末の添加量が10重量%を越えた実施例1の場合を、炭化珪素粉末の添加量が10重量%未満の比較例1の場合と比較すると、実施例1の耐食性は充分であるのに対して、比較例1は耐食性が低下している。これは、炭化珪素粉末の添加量が10重量%未満ではスラグ中のアルカリ性分の影響によるものである。また、炭化珪素粉末の添加量が60重量%以下の実施例5と60重量%を越えた比較例2とを比較すると、実施例5の場合は耐食性は充分であるのに対して、比較例2は耐食性が低下している。このことは、炭化珪素粉末の添加量が60重量%を越えると、スラグ中の酸化鉄の影響のため耐食性が低下することを意味する。また、実施例1と実施例2、さらに、実施例3と実施例4とを比較すると、炭化珪素粉末の粒度構成は最大粒子径を3mmとして比較的自由に選べることが分かる。その他、同表に示すように、炭化珪素粉末の添加量を適正範囲内にすることで耐食性、耐スポーリング性ともに優れた耐火物が得られることが判る。
【0024】
【表2】
表2は、Al粉末とSi粉末のそれぞれの添加量と耐火物の特性の関係を示す。同表において、Siの添加量が0.5重量%以上の実施例6と0.5重量%未満の比較例3を対比すると、実施例6の場合は、侵食試験において十分な耐食性を示し、また、スポーリングテストでも何らの亀裂も発生しなかったのに対して、比較例3の場合は、侵食試験後の侵食厚みの測定ができず、またスポーリングテストでは試験前の再度の加熱処理時に亀裂が発生したためテストを行うことができなかった。これは、Siの添加量が0.5重量%未満では、加熱中に生じるAlNに対するSiによる消化防止効果が不足したことによる。また、Siの添加量の上限の8重量%に近い実施例7と、8重量%を越える比較例4を対比すると、実施例7の場合、耐食性、耐スポーリング性が共に低下することもない。これに対して、比較例4の場合は、耐食性、耐スポーリング性共に低下している。これは、Siの添加量が8重量%を越えるとβ−SiC等のSi系ボンドが過剰に生成したことによる。さらに、Alの添加量が1重量%を越える実施例8と1重量%未満の比較例5を対比すると、実施例8の場合の耐食性は十分であるのに対して、比較例5の場合は耐食性が低下している。これはAlNのようなAl系ボンドの生成が不足することによる。その他、表2に示すように、AlとSiの添加量を適正範囲内にとることで、耐火物に消化現象を生じさせることなく耐食性、耐スポーリング性ともに優れた耐火物が得られることが判る。
【0025】
【表3】
表3は、Alの添加量の上限である10重量%を越えた場合の影響を実施例9と比較例6とによって示し、また、他はAlとSiの添加の形態の特性に及ぼす影響についての調査結果を示す。
【0026】
まず、実施例9と比較例6との対比において、実施例9はAlの添加量が10重量%以下の例の9重量%であり、耐スポーリング性は優れたものとなるが、比較例6はAlの添加量が10重量%を越えた例の11重量%であり、この場合は耐スポーリング性が低下している。これはAl系ボンドの生成が過剰となることによる。
【0027】
また、実施例10はAlとSiを合金の形で添加したものであり、また、実施例11はAl単体とAlとSiとの合金を混合して添加した例を示す。ともに、ボンドの形成にはいささかの支障もなく機能を発することが分かる。さらに、同表3によって、添加するAl粉末とSi粉末それぞれの粒度構成が適当範囲で変化しても、またAlとSiの混合物の形で添加しても合金の形でも、もしくはその併用の形でも、添加効果に差異は見られない。
【0028】
【表4】
表4は、耐火物の熱処理温度が特性に与える影響を調べた結果である。
【0029】
表1の実施例3の素地を、耐火物の硬化状態を比較する目的で、表4に示した温度で熱処理を施した。
【0030】
まず、比較例7に示すように、熱処理温度が90℃より低い80℃の場合には取り扱い時の強度が不足傾向となる。これは、樹脂の硬化が不十分であることによる。また樹脂ボンドが未発達のまま使用時に高温にさらされると、カーボンボンドが十分にできないために耐食性が低下する。この熱処理温度が90℃以上で400℃までの範囲内にある実施例14から実施例16の場合には取り扱い時の強度も耐食性も優れたものとなる。また、比較例8に示すように、450℃で熱処理すると、硬化後の樹脂の分解が進行し、気孔率が上昇し、強度が低下する。その結果、取り扱い時の強度も不足し、耐食性も低下する。
【0031】
成形方法については、オイルプレスに限定するものではなく、フリクションプレス、ランマープレス、C.I.P等の中から、れんが成形個数、形状、能率を考慮して適宜選択すればよい。
【0032】
成形圧についても、成形能率、成形体の品質を考慮して適宜選択すればよい。
【0033】
【発明の効果】
本発明によって、比較的低温の条件下は勿論のこと、高温でかつ炉内溶融物との接触条件下においても高耐食性を維持し、炉内補修時などの間欠操業下でも十分な耐スポーリング性を示す、塵及び産業廃棄物溶融炉用の内張りに適したクロムフリーの耐火物が得られる。
Claims (1)
- 炭化珪素粉末が10〜60重量%と、SiとAlの混合粉末および/又はSiとAlの合金の粉末がSiとして0.5〜8重量%とAlとして1〜10重量%と、残部がアルミナ粉末からなる配合物を、樹脂を使用して混練し、成形後、90〜400℃で熱処理した塵及び産業廃棄物溶融炉の内張り用のアルミナ−炭化珪素質耐火物。
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JP08224598A JP4163783B2 (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | アルミナ−炭化珪素質耐火物 |
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JP08224598A Expired - Fee Related JP4163783B2 (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | アルミナ−炭化珪素質耐火物 |
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1998
- 1998-03-27 JP JP08224598A patent/JP4163783B2/ja not_active Expired - Fee Related
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