以下、本発明に係る介護用入浴装置の一実施例について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜図4はいずれも本介護用入浴装置の全体構成を示す要部の概略側面図であって、図1は浴槽収納時の状態、図2は車椅子に乗った入浴者を浴槽内に移す又はその逆に浴槽内から車椅子に乗せる際の状態(以下、本状態を「セッティング状態」という)、図3はセッティング状態から更に浴槽を傾けた入浴時の状態(以下、本状態を「標準入浴状態」という)、図4は図2において浴槽の蓋体を開放した状態、をそれぞれ示している。また図5は、本介護用入浴装置の一部である、専用の車椅子の外観正面図(A)及び外観側面図(B)である。
本介護用入浴装置は、大別して、被介護者である入浴者が腰掛けた姿勢で浴槽内に収容される浴槽12を備えた本体装置1と、該浴槽12内に入浴者を収容する又はその逆に該浴槽内から退出させるために使用される専用の車椅子2とから成る。
本体装置1においては、最後部に支柱10が立設され、その支柱10の上部に最大で約200L程度の容量の貯湯槽11を備える。貯湯槽11上面までの高さ、つまり本体装置1の全高は、日本における一般的な家屋の天井の高さである2400mm以下となるように2300mm程度に抑えられており、いわゆる在宅介護の場での設置が考慮されている。この貯湯槽11の下方には前壁及び後壁が底面の中央に向けて傾斜するように形成された底浅型の浴槽12が、最底部よりもやや前方に設けられた左右一対の浴槽ローラ13と、後壁に突出して設けられた軸支部14とにより支持されている。後述するように軸支部14はモータの動作により上下動し、それによって浴槽12の後部側を押し下げ又は引き上げる。支柱10の下方には、後方に向かって上向きに傾斜した傾斜案内部15が設けられ、軸支部14が上下動して浴槽12の後部を引き上げ又は押し下げるときに、浴槽ローラ13は傾斜案内部15に沿って登る又は下るようになっている。
浴槽12は、図3に示すような標準入浴状態において上方を向く上面が開口(上面開口12a)しているが、その後方側の入浴者が頭を突出させる開口部12bを除いては蓋体16により閉鎖可能となっている。蓋体16は、図4に示すように、浴槽12の両側壁面後端に一端が軸支されたアーム18により蝶動自在に設けられており、アーム18はガススプリング19によって適宜の力で上向きに付勢されている。蓋体16は、図2に示すように浴槽12の上面開口12aに密着した状態では図示しないロック機構により閉鎖状態を維持するが、人の手によってそのロックが解除され上向きの力が付与されると、ガススプリング19の付勢力によってゆっくりと開放し、最終的には図4に示すように完全に開放した状態となる。すなわち、図4の状態では、浴槽12の上面開口12aは前方を指向しており、後述するようにして前方から入浴者Pを浴槽12内に移す、又は逆に入浴者Pを浴槽12内から前方に退去させることができる。
図6は本体装置1の浴槽12を傾動させるための軸支部14周辺の要部の斜視図である。浴槽12の後壁に突設された支持片部12cには水平な軸体20が回動自在に貫通しており、その軸体20の両端は可動体21に固定されている。可動体21は、垂直に延伸して設置されたねじ軸23のねじ溝に噛み合うボールねじナット22を備えており、ねじ軸23がモータ24により回転駆動されると、ボールねじナット22に内装されているボールはねじ軸23のねじ溝に沿って螺旋状に転動し、これによって可動体21はねじ軸23に沿って上又は下に移動する。その結果、軸体20及び支持片部12cを経て浴槽12の後部は引上げ又は押し下げられる。
なお、図6中において、可動体21の一方の側面には磁石25が取り付けられ、それに近接する支柱10には垂直方向に4個のリードスイッチ26が設置されており、可動体21が上下動する際にその位置に応じてこれらリードスイッチ26が適宜に導通するように構成されているが、その作用については後で詳しく述べる。
図5に示すように、車椅子2は、左右一対で小径の前輪213と、同じく左右一対で大径の後輪212とを備える台車部210と、その台車部210上において後方にスライド移動可能であって入浴者が腰を掛ける座席部220と、から成る。座席部220は、後述するように内部に複数のローラを備えた左右一対の横基底部221の後端に背もたれ支柱223が設けられ、該背もたれ支柱223と基底部221との間に肘掛け部222が設けられている。また横基底部221には入浴者が足裏を乗せるための足置き部が設けられている。この一対の横基底部221の間にはメッシュ状の座面225が、また背もたれ支柱223の内側にもメッシュ状の背もたれ226が適度な張力で張設されている。このように座面225及び背もたれ226がメッシュ状であることにより、水や空気が自由に通過するため、座面225及び背もたれ226に接触した入浴者の体表面に水や空気が容易に当たる。また、背もたれ支柱223には、介護者が給湯量の設定を行う際の目安とするべく3段階の水位マーク227が指標されている。
次に、車椅子2の座席部220のスライド機構、及び浴槽12内に入浴者を移送する又はその逆に浴槽内から退去させる際の動作について、図5に加えて図7〜図11を参照して説明する。
車椅子2の台車部210の左右一対の支柱部211の上には、後方が開放した細長い略U字状の案内レール214が固定されている。座席部220の横基底部221には、案内レール214を両側から挟み込む円板部228aとその間で案内レール214に上下が接する摺動部228bとを有する台車部用ローラ228が、前後方向に適宜の間隔で4個設けられており、更に、そのうちの3個の台車部用ローラ228の内側には別に浴槽用ローラ229が設けられている。この台車部用ローラ228が案内レール214に沿って前後方向に転動することにより、座席部220は台車部210上を前後にスライド移動するが、このとき浴槽用ローラ229は機能していない。一方、浴槽12の内側壁面には、セッティング状態においてほぼ水平になる浴槽内レール12dが形成されており、座席部220が浴槽12内に在る状態では、浴槽用ローラ229が浴槽内レール12d上を走行することにより座席部220はスライド移動する。このとき台車部用ローラ228は浴槽12内で浮いた状態となっており機能していない。
図8に示すように、車椅子2の座席部220に腰を掛けている入浴者Pを図4に示すように蓋体16が開放されている浴槽12内に移送させる場合には、次のようにする。
まず、図8に示すように、浴槽12に対して車椅子2を後ろ向きに近付けていって、車椅子2の台車部210の後方に設けられている鉤状の台車側掛止片215を本体装置1のストッパ176に掛合させることにより、台車部210を本体装置1に対して仮に固定する。このような状態から、介護者が座席部220又は入浴者Pを後方側へ、つまり浴槽12の方向へと押すと、台車部用ローラ228が案内レール214に沿って転動し、座席部220は入浴者Pを乗せたまま後方へスライド移動する。
移動に伴って図10(A)に示すように最後尾の台車部用ローラ228は案内レール214を外れるが、そのときに他の3個の台車部用ローラ228は案内レール214に乗っているため、座席部220はほぼ水平状態を維持する。図10(B)に示すように、最後尾から2番目の台車部用ローラ228が案内レール214を外れる前に、最後尾の浴槽用ローラ229は浴槽内レール12dの上に乗る。従って、この状態から更に座席部220を後方側に移動させてゆくとき暫くの間は、座席部220の後方側は浴槽用ローラ229、前方側は台車部用ローラ228によって支持される(図11(A)参照)。
図11(B)に示すように、先頭の台車部用ローラ228が案内レール214を外れる前に、先頭から2番目の浴槽用ローラ229は浴槽内レール12dの上に乗る。従って、その後は浴槽用ローラ229が浴槽内レール12d上を移動することにより、座席部220は入浴者Pを乗せたまま浴槽12内に収容される。そして、座席部220が完全に浴槽12内に収容されたとき、図4に示すように、浴槽12の前方には台車部210のみが残される。
なお、入浴が終了した後に浴槽12内から車椅子2の台車部210上に座席部220を戻す際には、上記説明と全く逆の手順を踏めばよい。
さて、上述のように車椅子2の台車部210を本体装置1に固定するために、本体装置1には固定用のストッパ176を設けるが、浴槽12を収納した状態ではこうしたストッパが前方に突出したままであると、邪魔でつまずいたりするおそれもある。そこで、本実施例の介護用入浴装置では、浴槽12の傾動に伴ってストッパを前後方向に進退させるストッパ伸縮機構17を設けている。図12はストッパ伸縮機構17の構成を示す側面図である。すなわち、傾斜案内部15の両側方には第1部材171の一端が軸支され、その他端には第2部材172の一端が軸支されており、その他端には床面に接触して転動するローラ173が備えられている。
傾斜案内部15と第1部材171との連結部、及び、第1部材171と第2部材172との連結部には、それぞれねじりコイルばね174、175が設けられ、外部から何ら力が加わらないとき、2個のねじりコイルばね174、175の付勢力によって、ローラ173が傾斜案内部15に近接するように第1部材171、第2部材172は共に起立している(図12(A)参照)。これにより、これら部材は後方に後退し邪魔にならない。浴槽12が収納状態からセッティング状態にまで傾けられるとき、上述したように傾斜案内部15を浴槽ローラ13が下ってくる。浴槽ローラ13には浴槽12の重量が掛かっているから、浴槽ローラ13によって第1部材171は押されて倒れ、ローラ173が前方に転動して第2部材172も倒れながら、それら両部材171、172は全体としてハ字状に広がりつつ延伸する。それにより、最終的には第1、第2部材171、172は図12(B)に示すようにほぼ一直線状に延伸し、ストッパ176が前方に進出して且つ上を指向する。
図13は本体装置1の浴槽収納状態における全体側面図(A)及び正面図(B)である。図13(B)に示すように、本体装置1の貯湯槽11の下の傾斜面31で、正面に向かって左側には、本体装置1における各種動作の操作を行う操作パネル30が設けられている。
図14は操作パネル30の拡大図である。操作パネル30には電源スイッチ301を始め、セッティング操作キー302、収納操作キー303、貯湯槽湯量確認表示器305、貯湯槽湯温表示器を伴う貯湯槽湯温設定キー306、湯温確認キー307、スタートキー308、入浴時間表示器を伴う入浴時間設定キー309、浴槽角度選択表示器を伴う浴槽角度設定キー310、(浴槽内)湯量選択表示器を伴う湯量設定キー311、気泡発生指示キー313、入浴剤投入指示キー316、使いきり指示キー317、ボディーシャンプー投入指示キー318、などの各種の操作キーや表示器が備えられている。
図13(B)に示すように、浴槽12が収納された状態では、操作パネル30の右側の一部は浴槽12の後方側に隠れてしまうため、操作できないことはないものの表示は見えにくく操作がしにくい。そこで、本実施例の介護用入浴装置では、操作パネル30の中で、浴槽収納状態において操作する必要があるキー、電源スイッチ301、セッティング操作キー302、収納操作キー303、貯湯槽湯量確認表示器305、貯湯槽湯温設定キー306、については左側に集約されている。そのため、操作性を損なうことがない。なお、本体装置1の左側面には湯を噴出するシャワーヘッド32が設けられ、操作パネルの30下側には、シャワーバルブ33とシャワー湯温調整ツマミ34とが設けられている。
次いで、本装置における浴槽への給湯及び浴槽からの排水を行うための構成について説明する。
図15は本介護用入浴装置における給水・排水用の配管構成図、図16は主として給湯経路を示す構成図、図17及び図18は排水経路を示す側面図である。
図15において、外部の給湯器に至る給湯管40及び水道栓に至る給水管41は2個の混合弁(サーモミキシングバルブ)42、43に接続され、一方の第2混合弁43で適宜混合されて湯温が調整された湯がシャワー配管44を経てシャワーヘッド32から吐き出される。他方の第1混合弁42で適宜混合されて湯温が調整された湯は電磁弁である貯湯弁45を経て貯湯槽11内に供給されるとともに、途中にバイパス弁47が設けられたバイパス管46を経て給湯管48へ接続されている。
貯湯槽11の内底部には給湯管48が連結された給湯穴と排湯管49が連結された排湯穴とが設けられ、それぞれトルクモータ51、53の動作に応じて開閉する給湯弁50、排湯弁52が設けられている。図16に示すように、給湯弁50は、椀を伏せた形状の弁体501とトルクモータ51の動作に応じてプーリ503に牽引されるチェーン502と、弁体501の下方を大気と連通する連通管504とを備える。
例えば、トルクモータ51が作動しプーリ503が回転してチェーン502を牽引すると、水圧に抗して弁体501を引き上げる。このとき連通管504を通して空気が給湯管48に送り込まれるため、給湯管48内が負圧にならず、弁体501は円滑に持ち上がり、貯湯槽11から給湯管48へと湯が流れ込む。一方、トルクモータ51の動作が停止されてチェーン502が緩むと、水圧によって弁体501は閉鎖するが、このとき連通管504を通して空気が給湯管48から抜けるため、弁体501は給湯穴を確実に閉鎖する。なお、排湯弁52の動作も同様である。
給湯管48の途中には、ボディーシャンプーや入浴剤を自動的に投入するための液体投入装置がそれぞれ設けられている。液体投入装置は、例えば液体である入浴剤の貯留ボトル55と、該貯留ボトル55から液体を吸い上げて給湯管48内へと送給するポンプ56とから成る。ポンプ56としては、モータが回転することによりローラがチューブを押し潰し、チューブをしごきながら液体をローラの回転と同方向に送り出す、いわゆるチューブポンプが用いられる。なお、本装置ではボディーシャンプーと入浴剤との液体投入装置を別個に設けているが、クラッチ機構等を用いて、1個のポンプがボディーシャンプーボトルと入浴剤ボトルとから切替式に液体を吸引・送給する構成としてもよい。こうして、給湯管48を通して供給された湯は給湯口12eから浴槽12内に吐き出される。
浴槽12に溜まった水の外部への排出は、浴槽12の前部底面に設けられた排水口12fを通して行われる。この排水口12fは伸縮自在である蛇腹状の排水管59を介して外部の排水溝に接続されており、排水口12fに近接して設けられた排水バルブ58が開くと、浴槽12内から排水管59へと水が流れ込んで外部へと排出される。この排水口12fは図1、図3に示すように、浴槽収納状態や標準入浴状態においては浴槽12の最低部に位置しているわけではなく、セッティング状態でのみ浴槽12の最低部となる。そのため、浴槽12から完全に水を排出するためには、セッティング状態で排水バルブ58を開く必要がある。
また、浴槽12への給湯時や入浴時に湯が浴槽12から溢れ出すと、本体装置1周辺の床面を濡らしてしまう。そこで、浴槽12からの湯の溢れを防止するために、図18に示すように、浴槽12の内壁に2箇所の溢出口12g、12hを設けているほか、蓋体にも1箇所の溢出口16aを設けている。浴槽12の2箇所の溢出口12g、12hは浴槽12の側壁の内部に形成されている溢流管12jを経て排水管59に接続されており、溢出口12g、12hよりも高い位置まで水位が上昇すると、溢出口12g、12hに流れ込んだ湯が溢流管12j及び排水管59を経て外部へと排出される。一方、蓋体16に設けられている溢出口16aは蓋体16の内部に形成されている溢流管16bと、蓋体16を閉鎖したときに該溢流管16bと接続される浴槽12側の溢流管12jとを介して排水管59へと送られる。
蓋体16の溢流管16bの出口開口16dと浴槽12の側壁上縁に設けられている入口開口との接続部は、図16に示すようになっており、出口開口16dの周縁のフランジ16cが入口開口の内側にまで突出するように構成されている。これにより、出口開口16dから吐き出された湯が確実に溢流管12j内に入り、蓋体16と浴槽12との密着面に回り込んで外部に浸出することを防止することができる。
また、本実施例の介護用入浴装置では、気泡発生用のエアポンプ60が設けられ、該エアポンプ60から送給される空気は2つに分岐されて、一方は浴槽12内に気泡を送り込む気泡発生器61、他方は貯湯槽11内に気泡を送り込む気泡発生器62に接続されている。前者は主として入浴時に入浴者の身体表面の洗浄効果(或いは軽度のマッサージ効果)を意図したものであり、後者は貯湯槽11内での湯の撹拌による湯温の均一化を目的としている。
なお、図15において、第1混合弁42の出口、貯湯槽11内、給湯管48及び浴槽12内には、それぞれサーミスタから成る湯温検知用の温度センサ63、64、65、66が設けられている。更にまた、貯湯槽11内には湯が満杯になったか否かを検知するために貯湯槽水位センサ67が、浴槽12内には浴槽12に貯留した水の水位を検知するための浴槽内水位センサ68が設けられている。
図19は本実施例の介護用入浴装置の電気系の全体構成図である。制御の中心にはマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略す)80が据えられ、操作パネル30に設けられた各操作キー30aからキー入力信号が、貯湯槽水位センサ67及び浴槽内水位センサ68から水位検知信号が、混合弁温度センサ63、貯湯槽温度センサ64、給湯管温度センサ65及び浴槽内温度センサ66から温度検知信号が、座高検知センサ70から座高検知信号が、浴槽位置検知スイッチ26から浴槽12の位置に応じた検知信号が、それぞれマイコン80に入力される。マイコン80は周知のようにRAMやROMを内蔵しており、ROMには後述するような動作に関する制御プログラムが予め格納されている。上記のような各種信号を受けつつ制御プログラムを実行する過程で、負荷駆動部81を介して、浴槽傾動用モータ24、給湯用トルクモータ51、排湯用トルクモータ53、エアポンプ60、貯湯槽11への給湯を制御する貯湯弁45、貯湯槽11へ供給する湯の温度を制御する第1混合弁42、バイパス弁47、シャワー用の湯の温度を制御する第2混合弁43、浴槽12に貯留した湯を排出するための排水バルブ58、浴槽12に供給する湯に入浴剤を混入させる入浴剤投入ポンプ56a、同じく浴槽12に供給する湯に浴用液体石鹸を混入させるボディーシャンプー投入ポンプ56bなどを駆動する。
図20はマイコン80と複数の浴槽位置検知スイッチ26との関係を示す回路構成図である。図20中で示した4個の浴槽位置検知スイッチ26は、それぞれ図6に描いたリードスイッチである。
また、本介護用入浴装置では、浴槽12を収納状態とセッティング状態との間で傾動させる際に、例えば外部からのノイズ等によって仮にマイコン80が暴走した場合でも、異常な動作が起きて介護者や周囲の人の安全を脅かすことがないように考慮されている。図21はモータ24の駆動に関連した要部の回路構成図である。
モータ24は電磁リレー84及び極性切替用スイッチ83を介して電源82に接続されている。極性切替用スイッチ83はマイコン80からの制御信号により切り替えられ、モータ24の回転方向を変えることにより、浴槽12(可動体21)の上昇又は下降を切り替える。電磁リレー84のコイルには、セッティング操作キー302及び第3ホトカプラTR3を含む電流供給回路と、収納操作キー303及び第2ホトカプラTR2を含む電流供給回路と、スイッチ85及び第1ホトカプラTR1を含む電流供給回路とが並列に接続されており、いずれかの電流供給回路から電流が供給されると、電磁リレー84はオンしてモータ24に駆動電流が供給されるようになっている。
図22は図21中のスイッチ85の構成を示す図であり、(A)は本体装置全体の側面図、(B)は浴槽を除いた状態での正面図、(C)は(B)中の要部の拡大図である。ねじ軸23に沿って上下動する可動体21の一方の側面に位置する支柱10には、図22(C)に示すように、段差86aが設けられた案内壁86が形成されており、可動体21の側面に設けられたスイッチ85の可動片は、段差86aよりも上にあるときには案内壁86から力を受けず、段差86aよりも下にあるときには案内壁86から押圧力を受ける。そのため、スイッチ85は、可動体21が段差86a近傍よりも上に位置するとき(図22(A)中のH1の範囲にあるとき)には開成し、可動体21が段差86a近傍よりも下に位置するとき(図22(A)中のH2の範囲にあるとき)には閉成する。
スイッチ85の開閉は、マイコン80の入力ポートPi1の信号で検知可能である。スイッチ85が閉成しているときには第1ホトカプラTR1の出力トランジスタは導通しているから、他の2つの電流供給回路の動作のいかんに拘わらず、マイコン80の出力ポートPo1に出力される信号によって電磁リレー84の開閉動作を制御することができる。すなわち、マイコン80の自発的な制御によってモータ24の動作、つまり浴槽12の傾動動作を行うことが可能である。
これに対し、可動体21がH1の範囲にあってスイッチ85が開成しているときには第1ホトカプラTR1の出力トランジスタは遮断されているから、この電流供給回路は電磁リレー84の開閉制御に寄与し得ない。一方、他の2つの電流供給回路に含まれるホトカプラTR2、TR3の出力トランジスタはそれぞれ、収納操作キー303、セッティング操作キー302が押されているときにのみ導通するから、たとえマイコン80の出力ポートPo2、Po3の出力がコイルに電流を供給する電位であったとしても、収納操作キー303又はセッティング操作キー302が押さない限り電磁リレー84はオンしない。従って、可動体21がH1の範囲にある場合には、浴槽12を傾動させるには、人の手による収納操作キー303又はセッティング操作キー302の押圧操作が必ず必要であり、マイコン80の不具合等による異常動作が発生した場合でも安全性を損なうことが軽減される。
収納操作キー303又はセッティング操作キー302を押している間だけモータ24が作動するため、浴槽12の傾動作業の途中で介護者が危険を感じてキーから手を離せば、すぐに浴槽12の傾動は停止する。従って、その点においても高い安全性を確保することができる。
また、可動体21がH2の範囲にあるとき、浴槽12の傾動はマイコン80の制御で行われ、通常、浴槽12の最大傾動位置は図3に示すような標準入浴状態、すなわち、浴槽12の開口部12bの上縁がほぼ水平になる位置であるが、マイコン80の暴走やボールねじナット等の機械部品の破損が生じた場合でも浴槽12の上記位置から更に大きく傾くことがないように、ねじ軸23の下端部には可動体21に当接して、それ以上の下降を禁止する機械的なストッパ27を設置している。
また、本介護用入浴装置では、浴槽12内に適宜量の湯を溜め、その中に入浴者が浸かるようにして入浴を行うから、例えば入浴者の肩胛骨程度まで湯に浸かることを意図した場合に入浴者の体格、特に座高によって必要とする湯量が相違する。こうした入浴者の体格の相違に対応するため、後述するように湯量設定を可能としているものの、座高が極端に低いような者が浴槽12内に収容された場合には、顔が湯に浸かる可能性がある。そのため、この入浴装置では使用対象者の身長を例えば140cm程度以上に限定しているが、座高の相違等による体格の個人差に対応するため、及び一層の安全性の向上を図るために、座高検知センサ70を設けている。
図23は座高検知センサ70の構成を示す腰部の概略図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。浴槽12に収容された入浴者P又はP’の頭部を挟み込むように、その両側には赤外線発光部70aと赤外線受光部70bとが配置されている。その発光部70a及び受光部70bの設置高さは、図3に示したような標準入浴状態において、入浴者として適格な体格を有する者(例えば図23中のP’)であれば、その頭部によって照射赤外光が遮断されるような高さに設定される。従って、入浴者として不適格な体格を有する者(例えば図23中のP)が入浴しようとした場合、その頭部は照射赤外光を遮らず、受光部70bは赤外光を受光するため、この座高検知センサ70の検知信号により、不適格な入浴者であることを自動的に識別することができる。
次に、上記構成を有する本実施例の介護用入浴装置の動作について、順次説明する。
まず、介護者が本介護用入浴装置を使用して入浴者を入浴させる際の一連の手順について、図24〜図27に示すフローチャートを参照しながら説明する。初期状態として本体装置1の浴槽12は、図1に示すように、所定の収納位置にあるものとする。
まず、介護者は本体装置1の操作パネル30で電源スイッチ301を押して電源を投入する(ステップS1)。すると、マイコン80を始めとする電気回路に電力が供給され、マイコン80では所定の制御プログラムが起動して初期設定処理を実行する。その結果、セッティング操作キー302の受付けが可能となり、介護者が該操作キー302を押すと、押している間だけ負荷駆動部81を介して浴槽傾動用モータ24を駆動する。これにより、可動体21は下降して浴槽12は上面開口12aが上向きになるように傾動し始める。そして浴槽12が所定のセッティング位置に到達するとモータ24が停止して、セッティングが完了する(ステップS2)。
次に、介護者は貯湯槽湯温設定キー306で適宜の湯温を設定する(ステップS3)。この設定を受けて、第1混合弁42により湯と水との混合比率が調整されつつ、貯湯弁45が開放されることによって貯湯槽11への貯湯が開始される(ステップS4)。そして、貯湯槽水位センサ67からの検知信号によって満水が検知されると、貯湯弁45が閉鎖されて貯湯槽11への貯湯が停止される(ステップS5,S6)。貯湯が終了すると各種操作キーの受付けが可能となり(ステップS7)、介護者は入浴時間設定キー309、浴槽角度設定キー310、湯量設定キー311により、半身浴入浴時間、全身浴入浴時間、全身浴浴槽角度、全身浴湯量をそれぞれ適宜に設定するほか、必要に応じて、使いきり指示キー317、入浴剤投入指示キー316、ボディーシャンプー投入指示キー318、気泡発生指示キー313を操作することにより、使いきり運転、入浴剤の自動投入、ボディーシャンプーの自動投入、気泡発生などの指示を行う(ステップS8)。
こうした全ての設定を行った後に、介護者は入浴者Pを浴槽12内に収容し、蓋体16を閉じる(ステップS9)。すなわち、例えばベッドに横たわっている入浴者Pを車椅子2の座席部220に座らせ、その車椅子2を浴槽12の前方から浴槽12に近づけ、台車部210を本体装置1に対して仮に固定する。その状態で車椅子2の座席部220を入浴者Pを乗せたまま後方にスライド移動させて、浴槽12内に移動させる。入浴者Pが完全に浴槽12内に収容された後、蓋体16を降ろしてロックを掛ければ、入浴者Pが開口部12bから頭部を出した状態で浴槽12は蓋体16で密閉される。
ここまでが入浴の準備作業であって介護者が関与する作業が多いが、これ以降は基本的には本介護用入浴装置の自動運転によって入浴に関する動作が遂行される。この運転を開始するために、介護者はスタートキー308を押す(ステップS10)。このキー操作を受けて、マイコン80では、まず使いきり運転の指示の有無をチェックする(ステップS11)。使いきり運転は、基本的には、当該入浴者の入浴終了後に他の者が入浴しないことを前提としているため、貯湯槽11の湯を使い切ってしまうものである。
この使いきり運転の指示がある場合には、次いで全身浴入浴時間が0分であるか否かを判定する(ステップS12)。使いきり運転であって全身浴入浴時間がゼロ、つまり半身浴のみを行う場合には、この直後の浴槽12への給湯後に貯湯槽11への湯の補充を行う必要はないため、貯湯槽11への貯湯を禁止する(ステップS13)。一方、使いきり運転でない、或いは、使いきり運転であっても全身浴入浴時間がゼロでない場合には、直接ステップS14へと進み、給湯用トルクモータ51を駆動して給湯弁50を開放することにより、貯湯槽11から浴槽12への給湯を開始する。上記ステップS13による貯湯禁止が設定されていない場合には、浴槽12への給湯によって貯湯槽11内の水位が下がると、その分だけ新たな湯が貯湯槽11へと補給されるが、この点は後で説明する。
給湯開始後、入浴剤投入の指示の有無を判定し(ステップS15)、入浴剤投入の指示がある場合には入浴剤投入ポンプ56aを作動させる(ステップS16)。また、ボディーシャンプー投入の指示の有無を判定し(ステップS17)、ボディーシャンプー投入の指示がある場合にはボディーシャンプー投入ポンプ56bを作動させる(ステップS18)。入浴剤投入ポンプ56aやボディーシャンプー投入ポンプ56bが作動すると、予め容器に収容されていた入浴剤やボディーシャンプーが容器内から吸い上げられ、給湯管48の途中に混入される。そのため、浴槽12内に湯が吐き出される時点で湯には入浴剤やボディーシャンプーが混入しており、そうした湯が浴槽12内に溜まって徐々に水位が上昇してゆく。
マイコン80は浴槽内水位センサ68により浴槽12内の水位を監視し、その水位が予め定められた半身浴水位に到達したと判定されると(ステップS19でYes)、給湯弁50を閉じることにより給湯を停止する(ステップS20)。このときの水位は、浴槽12内に収容されている入浴者Pの腰部から下が浸る程度の水位である。そして、その後に始めに介護者により設定された半身浴入浴時間の減算が開始され、その残時間がゼロになるまで減算が続行される(ステップS21、S22)。半身浴入浴時間がゼロになると、排水バルブ58を開いて浴槽12内の湯を排出する(ステップS23)。半身浴入浴時には図17に示すように浴槽12はセッティング状態に位置しており、排水口12fは浴槽12内の最低部にあるので、浴槽12内の湯は全てが排出される。
次いで、マイコン80は負荷駆動部81を介して浴槽傾動用モータ24を再び駆動し、浴槽12を更に一層傾動させる(ステップS24)。そして、介護者により始めに設定された浴槽角度(厳密には4段階の傾きに応じた浴槽角度)に到達したならば(ステップS25でYes)、モータ24を停止することによって浴槽12の傾動を停止させる(ステップS26)。停止後、浴槽12の傾きが最大であるか否か(本実施例では傾きが最大であるのは図3に示した標準入浴状態)を判定し(ステップS27)、傾きが最大である場合には、座高検知センサ70の検知信号に基づいて、入浴者Pの体格、具体的には座高が本装置に適格であるのか否かを判定する(ステップS28)。
本装置では、自動的に給湯を行うため、浴槽12に貯留される湯が最低水位であっても、入浴者の座高が非常に低く且つ浴槽12を最大に傾けた場合には、顔の一部が湯に浸る恐れがある。そこで、ステップS28で入浴者の体格の適格性をチェックし、不適格であるとみなした場合には、ブザー30cの鳴動などによるエラー報知を行い(ステップS29)、介護者に対してその旨を知らせる。これにより、安全性を非常に高いものとしている。
入浴者Pの体格が適格であるときには、次に、使いきり運転の指示の有無をチェックする(ステップS30)。使いきり運転が指示されている場合には、この直後の浴槽12への給湯後に貯湯槽11への湯の補充を行う必要はないため、貯湯槽11への貯湯を禁止する(ステップS31)。一方、使いきり運転でない場合には、直接ステップS32へと進み、給湯用トルクモータ51を駆動して給湯弁50を開放することにより、貯湯槽11から浴槽12への給湯を開始する。上記ステップS31による貯湯禁止が設定されていない場合には、浴槽12への給湯によって貯湯槽11内の水位が下がると、その分だけ新たな湯が貯湯槽11へと補給される。
続いて、上記ステップS15〜S18と同様のステップS33〜S36の処理により、入浴剤やボディーシャンプーの投入が指示されている場合には、これらを給湯する湯に混入させる。そして、マイコン80は浴槽内水位センサ38により浴槽12内の水位を監視し、その水位が全身浴水位に到達したと判定されると(ステップS37でYes)、給湯弁50を閉じて給湯を停止する(ステップS38)。そして、介護者により始めに設定された全身浴入浴時間の減算が開始され、その残時間がゼロになるまで減算が続行される(ステップS39、S40)。全身浴入浴時間がゼロになると、排水バルブ58を開いて浴槽12内の湯を排出し始めるとともに、浴槽傾動用モータ24を駆動して浴槽12をセッティング位置に戻す(ステップS41)。
浴槽12がセッティング位置に戻ると(ステップS42でYes)、モータ24を停止させて浴槽12の傾動を停止する(ステップS43)。上記のように浴槽12が全身浴入浴状態の位置にあるときには浴槽12の排水口12fは必ずしも最低部にあるとは限らないないが、浴槽12がセッティング位置に戻ったときには必ず最低の位置となる。そのため、浴槽12がセッティング位置に戻ってから暫時経過後には、浴槽12内の湯は全てが排出される。その後に、ブザー30cの鳴動等により、介護者に対して入浴終了報知を行う(ステップS44)。これにより介護者が離れた位置に居ても、入浴終了時にすぐにその旨を認識できるから、入浴者Pが入浴終了後の状態で放置されることがない。
その後、浴槽12内への入浴者Pの収容作業時と逆の手順で、介護者は蓋体16を開き、入浴者Pを乗せたま座席部220を浴槽12内から車椅子2の台車部210上にスライド移動させる。そして、車椅子2の台車部210の仮固定を解除して、車椅子2を本体装置1から離脱させる(ステップS45)。引き続き、別の入浴者の入浴を行う場合には、上記ステップS8(設定条件を変更する場合)又はステップS9へと戻ればよいが、入浴を行わない場合には、介護者は浴槽12を収納位置まで戻すために収納操作キー303を押す。上述したように収納操作キー303を押している間だけ浴槽傾動用モータ24は駆動され、軸支部14により浴槽12の後部が引き上げられて浴槽12は収納位置に戻る(ステップS46)。収納位置まで達するとモータ24は停止し、収納操作キー303を押してもそれ以上動作しなくなる。最後に、介護者は電源スイッチ301を押して本体装置1の電源を遮断し(ステップS47)、入浴に係る全ての作業を終了する。
本介護用入浴装置の基本的な動作は上述した通りであるが、次に、特徴的な制御動作についてそれぞれフローチャートを参照しつつ詳細に説明する。
〔浴槽のセッティング及び収納時の制御〕
図28は、本介護用入浴装置における、浴槽収納位置からセッティング位置、或いはその逆にセッティング位置から格納位置まで浴槽を傾動させる際の制御動作を示すフローチャートである。この動作に関しては、図21及び図22に示した構成が関連する。
まず、マイコン80は入力ポートPi1の入力信号のレベルにより、スイッチ85のオン・オフ、つまりその時点で可動体21がマイコン非制御範囲H1にあるか否かを判定する(ステップS51)。マイコン非制御範囲H1でない場合にはマイコン非制御範囲H2にある筈なので、ここでの制御対象ではないのでそのまま終了して他の処理に戻る。マイコン非制御範囲H1にある場合には、入力ポートPi3の入力信号のレベルにより、セッティング操作キー302が押されているか否かを判定する(ステップS52)。 セッティング操作キー302が押されている場合には、更に入力ポートPi2の入力信号のレベルにより、収納操作キー303が押されているか否かを判定する(ステップS53)。ここで、収納操作キー303が押されていると判定された場合には、 セッティング命令と収納命令の両方が同時に出されていることになり、いずれの動作が正しいか不明であるため、ブザー30cの鳴動等によるエラー報知を行う(ステップS54)。
ステップS53にて収納操作キー303が押されていないと判定された場合には、その時点で浴槽12がセッティング位置に到達しているか否かを判定し(ステップS55)、セッティング位置に到達していない場合には、浴槽傾動用モータ24を正転方向に回転駆動させることにより軸支部14を下降させ、浴槽12の傾きを大きくする(ステップS56)。これに対し、ステップS55でセッティング位置に到達していると判定された場合には、浴槽12を傾動させる必要はないため、モータ24を停止させたまま(ステップS59)処理を終了する。
上記ステップS52でセッティング操作キー302が押されていないと判定されると、入力ポートPi2の入力信号のレベルにより、収納操作キー303が押されているか否かを判定し(ステップS57)、収納操作キー303が押されていないと判定されるとそのまま処理を終了する。収納操作キー303が押されている場合には、その時点で浴槽12が収納位置に到達しているか否かを判定し(ステップS58)、収納位置に到達していない場合には、浴槽傾動用モータ24を逆転方向に回転駆動させることにより軸支部14を上昇させ、浴槽12の傾きを大きくする、つまり起立させる(ステップS60)。ステップS58で収納位置に到達していると判定された場合には、浴槽12を傾動させる必要はないため、モータ24を停止させたまま(ステップS59)処理を終了する。
以上のような処理を繰り返し行うことにより、セッティング操作キー302又は収納操作キー303が押されている間だけモータ24は正転又は逆転方向に駆動され、浴槽12が傾動し、操作キー302又は303を押すのを止めるとその傾動は停止する。
〔浴槽角度可変時の制御〕
図29は、上記ステップS14〜S23なる処理により達成される半身浴入浴が終了し、その後、全身浴入浴に移行するために浴槽12の角度を変化させる際の制御動作を示すフローチャートである。
まず、マイコン80は浴槽角度設定キー310で設定された4段階の浴槽角度の選択情報を取り込み(ステップS61)、それに応じて停止位置に対応した浴槽位置検知スイッチSWaを決める(ステップS62)。すなわち、本実施例では、図6及び図20に示すように支柱10に高さ方向に離間して設けられた4個の浴槽位置検知スイッチ26のいずれか1個を選択する。そして、その時点でそのスイッチSWaがオンしているか否かを判定する(ステップS63)。該スイッチSWaがオンしている場合には、所望の位置に可動体21が位置しており、浴槽12の傾きは選択された状態になっていると判断できるので、そのまま処理を終了する。
ステップS63でスイッチSWaがオフしていると判定されると、浴槽傾動用モータ24を正転方向に駆動し(ステップS64)、浴槽12を更に傾けるように移動させる。そして、その駆動開始から所定の許容時間が経過したか否かを判定し(ステップS65)、経過していなければ、スイッチSWaがオンしたか否かを判定する(ステップS66)。スイッチSWaがオンしている場合には浴槽12が所望の角度になったと判断できるから、そこでモータ24を停止して(ステップS67)処理を終了する。
ステップS66でスイッチSWaがオフであると判定された場合には、4個の浴槽位置検知スイッチ26の中でスイッチSWaよりも上に位置する他の0個以上のスイッチ(図29中ではSWa+で表す)がオンしているか否かを判定する(ステップS68)。スイッチSWa+がオンしている場合には浴槽12の傾きが不足していると判断できるから、モータ24を正転方向に駆動して(ステップS69)ステップS65へと戻る。
一方、ステップS68でスイッチSWa+がオンしていないと判定された場合には、今度は、スイッチSWaよりも下に位置する他の1個以上のスイッチ(図29中ではSWa-で表す)がオンしているか否かを判定する(ステップS70)。スイッチSWa-がオンしている場合には浴槽12は傾き過ぎであると判断できるから、浴槽12を起立させるようにモータ24を逆転方向に駆動し(ステップS71)ステップS65へと戻る。
上記ステップS65で許容時間を経過したと判定された場合には、所定の許容時間内に浴槽12が所望の角度にならなかった訳であるから、モータ24の動作不良、浴槽12の傾動動作に対する障害物の存在等、何らかの不具合がある可能性がある。そこで、モータ24を停止し、ブザー30cの鳴動等によるエラー報知を行う(ステップS72)。
以上の制御により、全身浴入浴時に浴槽12を所定の角度に正確に制御し、且つ制御不能な場合にはその旨を介護者に知らせることができる。なお、本実施例では、実用性を考えて全身浴入浴時の浴槽12の角度を4段階に設定可能としているが、より細かく角度設定を行えるようにしてもよい。また、浴槽位置検知スイッチとして磁気的なリードスイッチの代わりに、光学的なスイッチを用いたり、そのほかの様々な位置検出方法を利用できることは当然である。
〔湯温キー入力設定時の制御〕
図30は、上記ステップS3において貯湯槽の湯温をキー操作により設定する際の詳細な制御を示すフローチャートである。
介護者が貯湯槽湯温設定キー306を操作すると(ステップS81でYes)、マイコン80は湯温設定の待機中であるか否かを判定する(ステップS82)。待機中でない場合には湯温設定を変更できない期間であるから、キー操作を受け付けることなく終了する。待機中である場合には、貯湯槽湯温設定キー306の操作に応じて湯温の表示を変更する(ステップS83)。このときにはスタートキーの受付けは禁止状態としている。
湯温設定キー306の操作を受け付けた後、介護者により湯温確認キー307が押されたことを認識すると(ステップS84でYes)、その操作を受けて湯温設定を完了し、つまりその時点での設定湯温を登録し(ステップS85)、スタートキー308の受付禁止を解除する(ステップS86)。湯温確認キー307が押されない場合には、スタートキー308の受付禁止が解除されないため、介護者は必ず湯温の確認が求められることになる。それによって、誤った湯温設定や意図せぬ高温又は低温の湯温設定のまま給湯が行われてしまうことを防止することができ、入浴者に対する高い安全性を保証することが可能となる。
〔貯湯槽の貯湯及び湯温制御〕
図31は、上記ステップS4〜S6による初期的な貯湯槽11への貯湯時、及び、浴槽12へ給湯を行うことによって貯湯槽11内の水位が低下したときに湯を補充するために行われる貯湯槽11への貯湯時の、湯温制御を示すフローチャートである。
処理が開始されると、まず、マイコン80は貯湯槽水位センサ67であるスイッチがオフ状態であるか否かを判定する(ステップS91)。該スイッチがオフ状態である場合には貯湯槽11内の水位が満水水位に達していないと判断できるから、第1混合弁42で湯温を制御しつつ貯湯弁45を開放して貯湯槽11内への貯湯を開始する(ステップS92)。具体的には、上記設定湯温になるように、給湯管40を通して供給される高温水と給水管41を通して供給される常温水とを第1混合弁42において適宜の比率で混合し、その混合によって得られた湯を貯湯弁45を介して貯湯槽11に導入する。そして、上記スイッチがオンしたことを検知したならば(ステップS93でYes)、貯湯弁45を閉鎖して貯湯を停止する(ステップS94)。
次いで、その時点でエアポンプ60による気泡を発生中であるか否かを判定し(ステップS95)、気泡発生中でない場合にはエアポンプ60を作動させて貯湯槽11内に気泡を送給する(ステップS96)。それによって貯湯槽11内で湯が撹拌されるため、貯湯槽11内での湯温の均一性を高めることができる。一方、気泡発生中である場合には、エアポンプ60を停止して気泡発生を停止させる(ステップS97)。
その後、貯湯槽温度センサ64からの温度検知信号を読み込み、その貯湯槽湯温T1と設定湯温T2とを比較する。そして、貯湯槽湯温T1と設定湯温T2との温度差ΔT(=|T1−T2|)が7℃以上である場合には(ステップS98でYes)、貯湯槽11内の満水水量の約90%の湯を排出するように、排湯用トルクモータ53を駆動して所定時間だけ排湯弁52を開放する(ステップS99)。また、上記温度差ΔTが7℃未満で4℃以上である場合には(ステップS100でYes)、満水水量の約50%の湯を排出するように所定時間だけ排湯弁52を開放する(ステップS101)。更にまた、温上記度差ΔTが4℃未満で2℃以上である場合には(ステップS102でYes)、満水水量の約20%の湯を排出するように所定時間だけ排湯弁52を開放する(ステップS103)。そして、上記温度差ΔTが2℃未満である場合には、そのまま貯湯槽11内の湯を保持する。
上記ステップS99、S101又はS103のように貯湯槽11内の湯の一部を排出した場合には貯湯槽11内の水位は下がるから、上記のような処理が繰り返されると、新たに温度調整された湯が貯湯弁45を経て貯湯槽11に導入される。従って、例えば貯湯槽11内の湯が使用されてから時間が経って貯湯槽11内の湯の温度が或る程度下がると、冷めた湯の一部は廃棄され、新たに設定湯温に調整された湯が補給されることになる。従って、貯湯槽11内にほぼ常時満水水量の湯を貯留しつつ、その湯温を適度な範囲に維持することができる。もちろん、貯湯槽11内に貯留した湯を加温するためのヒータを備える構成とすれば、冷めた湯を廃棄する必要はなくなる。
〔浴槽への給湯湯量制御〕
本装置では、介護者が湯量設定キー311で3段階の水位のいずれかを選択することにより、入浴時に浴槽12に溜める湯量が決まるようになっている。この湯量設定キー311の表示の3段階は座席部220の背もたれ支柱223に指標されている水位マーク227に対応している。しかしながら、同一の水位マーク227であっても、全身浴の入浴時の浴槽角度によってその高さは変わるため、浴槽内水位センサ68で検知される水位と比較する水位レベルを浴槽角度に応じた調整しないと、介護者が意図したような水位までの湯を供給することができない。具体的に言うと、図33(A)に示すようにセッティング状態にあるとき(ここでは浴槽角度50°)の水位マーク227の高さと、図33(B)に示すように標準入浴状態にあるとき(ここでは浴槽角度20°)の水位マーク227の高さは大きく異なり、前者では最下段の水位マークの高さが後者では最上段の水位マークの高さに相当する。
図32はこうした浴槽角度に応じた水位調整を加えた給湯湯量制御のフローチャートである。まず、マイコン80は介護者により予め選択された浴槽角度の設定値(ここでは、20°,30°,40°及び50°の4種類)を読み出す(ステップS111)。次に同じく介護者により予め選択された湯量レベル(ここでは、上記水位マーク227に対応した3段階でL1、L2、L3とする)を読み出す(ステップS112)。そして、読み出された湯量レベルが最も低いL3であるか否かを判定し(ステップS113)、L3でない場合、つまりL1又はL2である場合には、それぞれ湯量レベルを1段階ずつ引き下げてL1→L2、L2→L3と変更する(ステップS114)。
一方、湯量レベルがL3である場合には、浴槽角度が20°又は30°であるか否かを判定し(ステップS115)、浴槽角度が20°又は30°である場合、つまり、標準入浴状態か又はそれに近い状態である場合には、湯量レベルをL1に設定する(ステップS116)。また、浴槽角度が20°又は30°でない場合には、次に浴槽角度が40°であるか否かを判定し(ステップS117)、浴槽角度が40°である場合には、つまり、よりセッティング状態(半身浴状態)に近い状態である場合には、水位マーク227の位置が浴槽角度20°又は30°であるときよりも高くなるため、湯量レベルを一段階低いL2に設定する(ステップS118)。浴槽角度が40°でない場合には、浴槽角度は50°、つまりセッティング状態であって水位マーク227の位置は相対的に最も高くなるから、湯量レベルをL3に維持する。
以上のようにして浴槽角度に応じて湯量レベルを調整した後、浴槽12の傾きに拘わらず、L1〜L3なる湯量レベルに相当する3段階の水位を設定し、給湯時にその水位に到達したときに給湯を停止する(ステップS119〜S121)。これにより、浴槽12の傾きが大きい(上記浴槽角度が小さい)場合でも、浴槽12内の湯量が異常に少なくなることがなく、全身浴に好適な湯量を確保することができる。
なお、上記実施例は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行えることは明らかである。