身体障害者や老齢者、或いは病弱者など、起き上がることが困難であったり自力のみでは入浴したりすることができない者(以下「被介護者」という)が、介護者の助力の下に入浴するために、従来より様々な形態の入浴装置が開発されている。例えば特許文献1、非特許文献1に記載の介護用入浴装置では、非使用時に浴槽が貯湯槽の下方にほぼ垂直に起立した状態で収納されるように構成されている。専用の車椅子は台車部と座席部とが分離可能であり、浴槽の上面開口が斜め上方に向く位置まで浴槽を傾動させた状態で、被介護者が座った座席部を台車部から分離させて浴槽内にスライド移動させる。その後に、浴槽の上面開口が更に上方を向くように浴槽を傾動させ、それから浴槽の中に湯を溜めて被介護者が湯に浸るようにしている。こうした入浴装置は、介護の現場において介護者の労力を大幅に軽減し、入浴者にも快適な入浴を提供することができるという大きな利点を有している。
しかしながら、上記入浴装置は基本的には介護施設などでの設置及び使用を前提としているため、装置が大掛かりであって、浴槽は収納式であるものの装置の全高は高いものとなり、重量もかなり大きい。そのため、こうした装置を一般家庭に設置するのは容易ではない。今後、高齢化社会の急速な進展に伴い、在宅看護の重要性も一層増してくることが予想される。そのため、一般家庭でもこうした入浴装置の必要性が増大することが考えられるが、一般家庭での設置を考えた場合、一層の低価格化、コンパクト化、及び軽量化が要求される。しかしながら、そのためには次に述べるような幾つかの課題がある。
上記入浴装置では、上述の如く、被介護者が座した車椅子は台車部とその上の座席部とが分離可能となっており、入浴者を乗せた車椅子を浴槽に近づけていって所定の位置まで来ると、座席部が台車部から分離して入浴者を乗せた状態で浴槽内にスライド移動する。これにより、台車部は浴槽の外側に留まり、座席部のみが浴槽内に入る。通常、台車部には走行時に巻き込まれたゴミや塵芥等の様々な異物が付着しているが、上記のような分離構造によってこうした異物が浴槽内に持ち込まれることを防止することができ、清潔さを確保することができる。
しかしながら、台車部と座席部とが分離可能であるような車椅子はその構造が複雑になるためコストが高くなり、入浴装置の価格を引き上げる一因となっている。また、浴槽に近づいた車椅子の台車部が浴槽の外側で固定された後に入浴者を乗せた座席部のみが移動するため、そうした移動に伴う振動や衝撃が発生し易く、入浴者に不快感を抱かせることがある。また、介護者自身もそうした振動や衝撃が小さいように注意深く作業を行うことが求められ、そうした点での心理的な負担が大きい。こうしたことから、座席部と台車部とが一体化した簡単な構成でありながら、清潔さを保つために、入浴時に台車部は浴槽の外側に位置することが望まれる。
台車部と座席部とが一体となった車椅子であって、入浴者を浴槽内に収容した際に台車部が浴槽の外側に位置する構成を採った入浴装置としては、例えば特許文献2に記載のものが知られている。この文献に記載の入浴装置では、浴槽外側に位置する台車部に立設された支柱により座席部の背もたれが吊り下げ支持されており、入浴者が座席部に座った状態で座席部のみが浴槽内に収容されるようになっている。しかしながら、この構成の場合、入浴時に入浴者が肩まで湯に浸かることができるように車椅子の座席部の背もたれが大きく後方に倒れた形態となっており、入浴者は半仰位の姿勢のまま浴槽内に出入りするようになっている。そのため、車椅子が非常に大きくなってしまい、車椅子の移動に制約が生じて、一般家庭のように狭い設置場所での使用は困難である。また、背もたれが倒れたままであるため、入浴者がこの車椅子に乗り移ったり車椅子から退出したりする際の姿勢に無理がある。
また、介護レベルが軽度であって例えば車椅子で自力走行が可能であるような被介護者は、できるだけ介護者の手を煩わせないで一人で入浴したいという要望も強い。しかしながら、上記特許文献1、2に記載の入浴装置では、入浴者の自力操作による入浴は考慮されておらず、実質的に一人で入浴することは不可能であった。
また、上記特許文献1、2に記載の入浴装置は、少なくとも介護者の助力によって専用の車椅子に移動可能な者しか入浴することができない。即ち、寝たきり等であって車椅子に乗ることが困難な重度の介護レベルの被介護者には対応していない。こうした被介護者を入浴させるためには、従来、ストレッチャー式の大掛かりな介護バスや吊り下げ式の介護バスが使用されているが、こうした装置は非常に大掛かりであって設置場所も制約を受け、価格も非常に高価である。そのため、軽度の介護レベルの被介護者が気軽に利用できる入浴装置において重度レベルの被介護者の入浴にも対応が可能であれば、入浴装置が一層有効に活用できる。
また、上記特許文献1に記載の入浴装置では、収納式の浴槽の上部に1回の入浴に必要な湯量を賄うことができる貯湯槽を配置している。それによって、入浴者が浴槽内に収容された後、その入浴者が肩まで浸かることができる程度の湯を浴槽内に短時間で供給することができる。したがって、湯が溜まるまでの時間が短く、入浴者に対し寒さなどの不快感を与えることが少ないという利点がある。しかしながら、通常、浴槽の必要湯量は200L近くになるため貯湯槽のサイズは大きなものとなり、また満杯時に貯湯槽は非常に重くなるため、この重量を支えるための構造体もかなり頑強なものが必要である。装置のコンパクト化を図るためには、貯湯槽のサイズをできるだけ小さくすることが好ましいが、その場合、浴槽に湯を満杯に溜めるまでに時間を要し、入浴者に寒さ等の不快感を与えるのみならず、場合によっては入浴者の体調を損ねるおそれもある。
特開2004-81379号公報
特開平11-226077号公報
"高機能収納式介護浴槽「hirb」"、三洋電機バイオメディカ株式会社、[online]、[平成16年9月27日検索]、インターネット、〈URL : http://www.sanyo-biomedical.co.jp/kokunai/seihin/hirb.htm〉
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、装置のコンパクト化及び構造の簡単化を図るとともに、使用時は車椅子の台車部が浴槽の外側に配置されることによって清潔さを確保することができる車椅子入浴装置を提供することにある。また、本発明の他の目的とするところは、入浴者が楽な姿勢で車椅子に乗り降りすることができる車椅子入浴装置を提供することにある。また、本発明の他の目的とするところは、車椅子での自力走行が可能であるような人が介護者の助力を受けることなく自力で入浴することができる車椅子入浴装置を提供することにある。また、本発明の他の目的とするところは、寝たきりの被介護者等、車椅子に乗ることが困難な人でも介護者の介護の下に簡便に入浴することができる車椅子入浴装置を提供することにある。さらにまた、本発明の他の目的とするところは、入浴者に与える寒さ等の不快感をできるだけ回避しつつ、浴槽内に供給する湯を貯めておく貯湯槽の容量を小さくすることでコンパクト化を図ることができる車椅子入浴装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された第1発明に係る車椅子入浴装置は、
a)前方が開放した固定浴槽と、非使用時には該固定浴槽と重なるように前方が開放した状態で固定浴槽の内側又は外側に収納され、使用時には該固定浴槽の前方にせり出すように移動して該固定浴槽と連続して浴槽を形成する可動浴槽と、を備える本体部と、
b)腰を掛けた状態の入浴者をそのまま前記収納状態にある浴槽内に収容するために前記本体部に対して所定位置にセットされる専用の車椅子であって、入浴者が腰を掛ける座席部と、セット時に前記浴槽の両側縁上方に位置する肘掛け部と、セット時に前記浴槽の両側縁外方に位置する後輪を含む台車部と、前記両肘掛け部から内方に延出して前記座席部が浴槽内に収容されるように支え持つ座席支持部と、を備える車椅子と、
から成り、前記浴槽が収納状態であるときに前記車椅子の座席部に腰掛けた状態の入浴者が該浴槽内に収容された後に、前記可動浴槽を移動させて湯が貯留可能な浴槽を形成し、そのときに前記台車部は該浴槽の外側に位置するようにしたことを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された第2発明に係る車椅子入浴装置は、入浴者が腰を掛ける専用の車椅子と、該車椅子に座した入浴者が湯に浸るための浴槽と、を具備する車椅子入浴装置において、
a)前記浴槽内に供給する湯を予め温度調整して貯留しておくための貯留槽と、
b)該貯湯槽内の湯を前記浴槽内へ供給するための給湯路を含む給湯手段と、
c)前記給湯路とは別に、前記貯湯槽内の湯を前記浴槽の所定位置に配設された噴射穴から噴射させるための湯噴射手段と、
d)前記貯湯槽から前記浴槽への給湯の初期に、まず前記湯噴射手段により貯湯槽内の湯を浴槽内に噴射して入浴者の身体に湯を掛けるようにし、その後に、前記給湯手段により貯湯槽内の湯を浴槽内に供給する給湯制御手段と、
を備えることを特徴としている。
第1発明に係る車椅子入浴装置では、車椅子の座席部に入浴者が座った状態で該車椅子を本体部に対し所定位置にセットすると、そのときに入浴者を乗せた座席部は浴槽の両側縁上方に位置する両肘掛け部から内方に延出する座席支持部により支持され、収納された浴槽内に浮かぶような状態で保持される。車椅子の台車部は両後輪が浴槽を両側から挟むように両側縁外方に配置されており、前輪も後輪と同じように浴槽の側方に配置されるか或いはごく小径である場合には可動浴槽の下方に配置される。いずれにしても台車部はその全体が浴槽の外方に位置し、可動浴槽の移動の妨げにもならない。そして、車椅子が所定位置にセットされることで入浴者が浴槽内に収容されると、可動浴槽を移動させて浴槽を形成する。
この第1発明に係る車椅子入浴装置によれば、車椅子は座席部と台車部とが一体化され、構造が簡単であってそのサイズはコンパクトでありながら、入浴のために本体部の所定位置にセットされたときには台車部は浴槽の外方に配置されるため、台車部に付着している異物が浴槽内に持ち込まれることも防止できる。また、浴槽も固定浴槽と可動浴槽とから成り非使用時には両者が重なるので、サイズがコンパクトになる。
また第1発明に係る車椅子入浴装置においては、前記車椅子にあって、座席支持部は、座席部の座面の下側を担持する左右方向に略水平に延伸する座面支持体と、座席部の背もたれの背面を支え受ける背もたれ支持体とを含み、前記背もたれ支持体は前後方向にスライド移動可能であって、その移動に伴って座席部が座面支持体を支点として回動することにより座席部がリクライニングする構成とすることが好ましい。
この構成によれば、車椅子が浴槽の外側にあるときには車椅子の背もたれを立てて入浴者が該車椅子に容易に乗り移れる又は逆に退出できるようにすることができ、入浴時には背もたれを倒してくつろいだ姿勢で入浴することができる。また、入浴時に座席部をリクライニングさせることで、浴槽内に貯留する湯量をできるだけ少なくしつつ入浴者が肩まで湯に浸かるようにすることができる。また、こうしたリクライニングを達成するために、背もたれ支持体をスライド移動しさえすればよいので、構造も複雑にならずコストも安価で済む。
また、具体的な実施態様として、前記車椅子にあって前記背もたれ支持体には前記座席部が通常の起立位置に在るときにその位置を保持する保持機構が付設され、前記本体部には、車椅子が前記所定位置にセットされた状態で前記保持機構の保持を解除するとともに前記背もたれ支持体をスライド移動させる移動機構を備える構成とするとよい。
この構成によれば、車椅子が浴槽の外側にあって入浴者が乗り降りしたり移動したりする際には保持機構により座席部は安定して背もたれが起立した状態を維持し、車椅子が本体部に対して所定位置にセットされた状態、つまり入浴の準備の段階では保持機構の保持が解除されて座席部がリクライニング可能となる。したがって、必要のないときに意図せずに車椅子がリクライニングしてしまうことを回避できるので、入浴者の安全を確保することができる一方、車椅子が所定位置にセットされたときに例えば介護者が保持機構を解除するような手間が不要になるので、介護者の負担の軽減にもなる。
また、第1発明に係る車椅子入浴装置では、前記台車部の後輪は、前記座席部に座った状態の標準的な体格の入浴者が走行操作できる程度の大径の車輪であって、車椅子が前記所定位置にセットされたときに両後輪は前記本体部の両側方に露出した状態となっている構成とすることができる。
この構成によれば、車椅子を本体部の所定位置にセットする際、及び逆に所定位置にセットされた状態の車椅子を退出させる際に、入浴者が自ら後輪を手で把持して走行操作することができる。したがって、最も介護者の手を煩わす作業の一つである浴槽への収容・退出が入浴者の自力で行えるので、可動浴槽の移動や給湯などの一連の行程を自動化しておくことにより、軽度の介護レベルの人が自力で入浴することが可能となる。
さらにまた、第1発明に係る車椅子入浴装置では、前記車椅子に代えて、入浴者を仰位姿勢で保持するハンモック状の専用の搬送車を使用した入浴を可能とした構成とすることもできる。
この構成によれば、上記のような比較的軽度の介護レベルの人が利用し得る入浴装置を利用して、寝たきり等の重度の介護レベルの人も介護者の介護の下に入浴することが可能となる。したがって、必ずしも従来のような大掛かりな入浴装置を備えなくても被介護者を入浴させることができ、特に様々な介護レベルの被介護者が入居しているような介護施設において入浴装置の有効活用を図ることができる。
第2発明に係る車椅子入浴装置では、入浴者が収容された浴槽内に給湯を行う際に、給湯制御手段は、まず湯噴射手段により貯湯槽内で温度調整が成された湯を浴槽内に噴射して入浴者の身体にできるでけ満遍なく掛けるようにする。それによって、入浴者の身体を湯で温めると同時に入浴者の身体を予洗いして、後で浴槽内に溜める湯の汚れを軽減することができる。湯噴射手段では湯をシャワー状又は霧状に入浴者に掛けるため、湯の使用量は少なくても効率的に入浴者の身体を温めることができる。暫くの間、湯噴射手段による掛け湯を行った後、今度は給湯手段により貯湯槽内の湯を浴槽内に供給する。なお、このときには湯噴射手段による湯の噴射を停止してもよいし続行してもよい。
給湯手段により浴槽に湯が溜まるまでは少し時間が掛かるが、第2発明に係る車椅子入浴装置によれば、浴槽内に湯が溜まる前に入浴者の身体を湯で温めておくことができるので、入浴者に対し寒さ等の不快感を与えることを軽減することができる。
また第2発明に係る車椅子入浴装置において、湯噴射手段による湯の噴射期間の、特に当初には、浴槽内に落ちた湯はかなり汚れているおそれがあるから、浴槽に溜めるのはあまり好ましくない。そこで、第2発明に係る車椅子入浴装置は、好ましくは、前記浴槽内から湯を外部に排出する排水手段をさらに備え、前記給湯制御手段は前記湯噴射手段による湯の噴射の開始から暫くの間は該排水手段による排水を行い、湯の噴射終了後又は湯の噴射を所定時間行った後に排水を停止して前記給湯手段による給湯を開始する構成とするとよい。
この構成によれば、掛け湯の最初の汚れた湯を排水手段により排出し、その後に浴槽内に溜める湯が極端に汚れることを防止することができる。これによって、入浴者は快適に入浴することができ、清潔さも確保することができる。
なお、第2発明に係る車椅子入浴装置では、前記貯湯槽の貯留湯量は前記浴槽の標準的な必要湯量よりも少なく、給湯前に前記貯湯槽に貯留されていた湯量で不足する分は、外部から供給される湯を前記貯湯槽に一旦導入した後に前記給湯手段により浴槽に供給する構成とすることができる。
即ち、給湯の最初にまず入浴者の身体を湯で温めるので、貯湯槽に貯留されている湯が給湯手段により全て浴槽内に供給されたときに入浴者の身体が半分程度しか湯に浸らなくても、外部から供給された湯が貯湯槽を通して浴槽に追加供給されて入浴者の肩が浸る程度に水位が上がるまで、寒さ等の不快感を入浴者に感じさせることを軽減することができる。それによって、予め湯を貯留しておく貯湯槽のサイズを小さくすることができ、装置のコンパクト化に大きく寄与するとともに貯湯時の重量の軽減も図ることができる。
以下、本発明に係る車椅子入浴装置の一実施例について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施例の車椅子入浴装置の全体構成を示す外観図であり、(a)は上面図、(b)は右側面図である。図2は本実施例の車椅子入浴装置の一部である、専用の車椅子の外観図であり、(a)は右側面図、(b)は正面図、(c)は上面図である。図3及び図4は本実施例の車椅子入浴装置を利用した入浴の準備に関わる動作を示す図である。
この車椅子入浴装置は、大別して、入浴者が湯に浸かる浴槽を形成する本体部10と、入浴者が腰掛けた姿勢で浴槽内に位置するための専用の車椅子50とから成る。
まず車椅子50について図2を参照して説明する。車椅子50にあっては、前後方向に水平に延伸する肘掛け部52と垂直に延伸する肘掛け支柱部51とが一体化され、本発明における台車部として、肘掛け支柱部51の下端に設けられたL字状の脚部支持体53の前部に小径の前輪54、後端に大径の後輪55が設けられている。これらは左右が一対であって、左右の肘掛け部52の前部内側にはL字状の吊下げ支持体59がそれぞれ固着され、左右の吊下げ支持体59の下端の間には、左右方向に水平に延伸する座面支持体60が取り付けられている。図2(a)に示すように、側方から見たとき座面支持体60の位置は肘掛け支柱部51と重なる位置とされている。また、左右の肘掛け部52の後部内側には、後述するように前後方向に移動可能な背もたれ支持体61が左右方向に水平に延伸した状態で架設されている。座面56と背もたれ57とが一体化された座席部58は、座面56の前縁下面側において座面支持体60に対し回動可能に取り付けられ、背もたれ57の背面側において背もたれ支持体61に当接することで位置決めが成されている。
即ち、座席部58の背もたれ57は背もたれ支持体61に寄りかかった状態となっている。図2は背もたれ支持体61が最も前方に位置している状態であって、通常、この状態で背もたれ支持体61は、本発明における保持機構に相当する後述するようなストッパ機構により制止されている。このとき座席部58は最も起立しており、この状態で入浴者Pが車椅子50に乗り移ったり、移動したりする。図2(a)の状態から上記ストッパ機構による制止が解除されて背もたれ支持体61が肘掛け部52に沿って後方にスライド移動すると、図3に示すように、その移動に伴って座席部58は座面支持体60を支点として後方側に倒れてゆく。そして、背もたれ支持体61が最後方までスライド移動した状態では、図4(b)に示すように、座席部58は最大限リクライニングして座席部58に座っている入浴者Pは半仰位の状態となる。もちろん、図2(a)と図4(b)との状態の間の任意の位置で背もたれ支持体61を外力によって制止させることにより、座席部58の傾き、つまりは座席部58に座った入浴者Pの仰位の程度を任意に定めることができる。
なお、左方の肘掛け部52の上面には、本装置の操作を行うための赤外線リモコン式の操作部62が、取り外し可能に設けられている。
次に本体部10について図1、図3及び図4を参照して説明する。本体部10にあって、入浴者が浸かる湯を貯めるための浴槽は、前方が開放された固定浴槽13と、その固定浴槽13の両側面上前端からそれぞれ内方に延設された軸15を中心に揺動自在に設けられた可動浴槽14とから成る。固定浴槽13は枠体11により堅強に保持されており、枠体11の両側面には外装を成す側面板12が取り付けられている。
本装置の非使用時や入浴者の浴槽への収容及び退出時には、図1に示す如く可動浴槽14は固定浴槽13の内側に完全に収容され、固定浴槽13及び可動浴槽14の前方が開放状態となる。一方、使用時(入浴時)には、可動浴槽14は前方に引き出されるように軸15を中心に揺動され、図4に示すように可動浴槽14が最も前方に引き出された状態では、固定浴槽13の上縁端と可動浴槽14の上縁端(前縁端)とがほぼ一直線状になる。このとき、可動浴槽14の後縁端と固定浴槽13の前縁端との間の接続箇所は図示しないシール部材により水密性が確保され、固定浴槽13と可動浴槽14とから成る略半円筒状の浴槽の内側に湯を貯留することができる。
枠体11の内部にあって固定浴槽13の後方には、上述した浴槽内に供給する湯を予め貯めておくための貯湯槽16が配置され、そのほか、貯湯槽16から浴槽内へと湯を送るためのポンプ17や、図示しない配管、電気回路などが設置されている。また、枠体11の上面後部には左右一対の油圧シリンダ18が設けられており、油圧シリンダ18のシリンダアーム18aは水平前方に延伸している。固定浴槽13の両側方に位置する枠体11の上面の高さは、車椅子50の肘掛け部52の下面よりも僅かに低い位置に設定されており、しかもその前面は車椅子50の後輪55が内側に収容されるように開口している。したがって、図1に示すように、可動浴槽14が固定浴槽13内に完全に収容された状態で、本体部10の前面から後ろ向きに車椅子50を近づけてゆくと、左右の両後輪55は左右の側面板12の内側にそれぞれ収納され、両肘掛け部52は枠体11の上に位置することになる。このとき、前輪54及び後輪55は浴槽の外側に位置し、入浴者Pを乗せた座席部58のみが吊下げ支持体59で両側から吊り下げられ、且つ後方が背もたれ支持体61で支持された状態で浴槽内に収容されることになる。
上述したように、車椅子50の背もたれ支持体61は、車椅子50が浴槽内の所定位置に収容されていない状態では確実にその位置が固定され、車椅子50が浴槽内の所定位置に収容された後にスムーズに且つ適度な速度で後方にスライド移動する必要がある。そのための背もたれ支持体61のストッパ機構及びスライド移動機構について、図5により説明する。図5は、車椅子50を本体部10に収容する際の、左側の肘掛け部52と枠体11との関係を水平断面で示した図である。
図5(a)に示すように、車椅子50の肘掛け部52の内側にあって、背もたれ支持体61の端部(この図では左端部のみを示しているが右端部側も同様)にはコイルばね61bが内装された可動キャップ61aが取り付けられている。外部から力が加わらない状態では、コイルばね61bの付勢力により可動キャップ61aは最大限外方に突出しており、肘掛け部52の外側面に設けられた、可動キャップ61aの外径よりも一回り大きな内径を有するストッパ穴52bから飛び出すことで背もたれ支持体61を制止している。これにより、上述したように、車椅子50での移動や浴槽への収容・退出時には背もたれ支持体61は最も前方の位置に確実に固定されており、入浴者Pが背もたれ57に寄りかかっても座席部58が後方へと倒れることはない。なお、肘掛け部52の内部にあって、背もたれ支持体61はコイルばね52cにより前方に引っ張られている。
本体部10の枠体11にあって肘掛け部52の外側となる所定の位置には本発明における移動機構の一部としての傾斜ガイド11aが形成されている。車椅子50が本体部10の浴槽内に収容されるとき、図5(a)→(b)→(c)と順に示すように、車椅子50の移動に伴い肘掛け部52も移動して来る(図5では右方向への移動)。この移動に伴い、背もたれ支持体61の端部の可動キャップ61aは傾斜ガイド11aに当接し力を受ける。すると、コイルばね61bが収縮して可動キャップ61aは徐々に内方に押し込まれてゆき、図5(c)に示すように傾斜ガイド11aの終点では可動キャップ61aはストッパ穴52b内に押し込まれる。即ち、これによって可動キャップ61aとストッパ穴52bとの係合による背もたれ支持体61の制止は解除されるため、背もたれ支持体61は肘掛け部52の内面に水平方向に長く形成された長穴52aの範囲でスライド移動可能となる。
図5(c)に示したように、背もたれ支持体61の制止が解除された状態が、車椅子50が浴槽内に収容される所定位置である。このとき、本発明における移動機構の一部である油圧シリンダ18のシリンダアーム18aの前端に背もたれ支持体61が当接するから、背もたれ支持体61はシリンダアーム18aに支えられて後方にはスライド移動しない。つまり、入浴者Pを乗せた車椅子50を浴槽内の所定位置に収容しただけでは座席部58が後方に倒れ込むことはない。この状態から、油圧シリンダ18が駆動されてシリンダアーム18aが後方に引かれ始めると、入浴者Pが背もたれ57に寄りかかる押圧力によってコイルばね52cが伸び始め、図5(d)に示すようにシリンダアーム18aの後退に伴って背もたれ支持体61も長穴52aに沿って後方にスライド移動する。即ち、座席部58は後方に傾動し始める。座席部58の傾動速度は油圧シリンダ18の動作によって制御することができる。
なお、背もたれ支持体61はコイルばね52cによって前方に付勢されているから、図4(b)に示すように傾動した座席部58を元の位置に戻すべくシリンダアーム18aが伸張する際に、コイルばね52cは背もたれ支持体61の前方へのスライド移動を補助する。これによって、背もたれ支持体61はスムーズにスライド移動し、元の位置に戻ったときに可動キャップ61aがストッパ穴52bに確実に係合する。
次いで、本入浴装置における浴槽への給湯及び浴槽からの排水を行うための構成について図6を参照して説明する。図6は本入浴装置における給水・排水用の配管構成図である。
図6において、図示しない外部の給湯器に至る給湯元管20及び水道栓に至る給水元管21は2個の混合弁(サーモミキシングバルブ)22、23に接続され、一方の第2混合弁23で適宜混合されて湯温が調整された湯がシャワー配管24を経てシャワーヘッド25から吐き出される。他方の第1混合弁22で適宜混合されて湯温が調整された湯は電磁弁である貯湯弁26を経て貯湯管27を通って貯湯槽16内に供給される。貯湯槽16の内底部には、逆止弁29を介して固定浴槽13の給湯口13bに接続される第1給湯管28が連結されており、その入口にはトルクモータ30の動作に応じて開閉する給湯弁31が設けられている。なお、図示しないが、第1給湯管28の途中には、ボディーシャンプーや入浴剤を自動的に投入するためのチューブポンプを含む液体投入装置がそれぞれ設けられている。
また、貯湯槽16の内底部にはポンプ17の吸入口に接続される第2給湯管32も接続されており、ポンプ17の吐出口は第1電磁弁33を介して第1給湯管28の逆止弁29下流側に接続され、第2電磁弁34を介して溢水管35に接続され、さらに第3電磁弁36を介してシャワー給湯管37に接続されている。溢水管35は貯湯槽16内の所定水位以上の湯を外部に排出するための管路である。シャワー給湯管37は図4に示したように固定浴槽13の適宜の位置に設けられた複数の噴射穴13aに接続されている。この噴射穴13aの設置位置及び噴射の向きは、浴槽内に収容された入浴者Pの身体にできるだけ満遍なく湯が掛かるように考慮されている。即ち、ポンプ17、シャワー給湯管37、噴射穴13aが相まって本発明における湯噴射手段として機能する。一方、第2給湯管32とともにポンプ17も本発明における給湯手段として機能する。
一方、浴槽内に溜まった湯の外部への排出は、固定浴槽13の前部底面に設けられた、排水弁38によって開閉される排水口13cを通して行われる。この排水口13cは排水管39を介して外部の排水溝に接続されており、排水弁38が開放されると浴槽内から排水管39へと水が流れ込んで外部へと排出される。なお、図6において、第1混合弁22の出口、貯湯管27内、貯湯槽16内及び固定浴槽13内には、それぞれサーミスタから成る湯温検知用の温度センサ40、41、42、43が設けられている。更にまた、貯湯槽16内には湯が満杯になったか否かを検知するために貯湯槽水位センサ44が、浴槽には浴槽に貯留した水の水位を検知するための浴槽内水位センサ45が設けられている。
図7は本実施例の入浴装置の電気系の全体構成図である。制御の中心にはマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略す)70が据えられ、操作部62に設けられた各操作キーからキー入力信号が、貯湯槽水位センサ44及び浴槽内水位センサ45から水位検知信号が、混合弁温度センサ40、貯湯管温度センサ41、貯湯槽温度センサ42、及び浴槽内温度センサ43から温度検知信号が、それぞれマイコン70に入力される。マイコン70は周知のようにRAMやROMを内蔵しており、ROMには後述するような動作に関する制御プログラムが予め格納されている。上記のような各種信号を受けつつ制御プログラムを実行する過程で、負荷駆動部71を介して、可動浴槽移動モータ72、油圧シリンダ18、給湯用トルクモータ30、貯湯槽16から湯を吸引するポンプ17、貯湯槽16への給湯を制御する貯湯弁26、貯湯槽16へ供給する湯の温度を制御する第1混合弁22、シャワー用の湯の温度を制御する第2混合弁23、ポンプ17により吐出される湯を開閉する第1乃至第3電磁弁33、34、35、浴槽内の水を排出する排水弁38などをそれぞれ駆動する。
本実施例の入浴装置では、浴槽に収容された入浴者が肩まで浸る程度の湯量は150〜170L程度であるが、湯を予め貯めておく貯湯槽16の容量はその湯量の半分程度の70〜80Lである。これにより、貯湯槽16のサイズは小さくなるものの、貯湯槽16に満杯に貯留した湯を全て浴槽内に供給しても入浴者の腹部程度までしか湯が溜まらず、浴槽内に湯を満杯にするまでには時間を要する。この場合に特に問題になるのは、浴槽内に湯が満杯になるまでに時間が掛かることによって入浴者が寒さを感じ、最悪の場合に、それが原因で入浴者が体調を崩すことである。
そこで、本実施例の入浴装置では、浴槽への給湯時に特徴的な制御を実行することにより、貯湯槽16の容量が小さくても入浴者が寒く感じることがないように配慮している。次に、本実施例の入浴装置を使用して入浴を行う場合の、給湯終了時までの一連の作業手順と本装置の動作について、図8のフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、介護者の助力により被介護者が入浴する場合を例に挙げて説明する。
いま貯湯槽16内には、予め定めた適度な温度の湯がその容量一杯に貯留されているものとする。その状態で、介護者は入浴者Pを浴槽内に収容する。即ち、浴槽外において入浴者Pを車椅子50の座席部58に座らせて、その車椅子50を本体部10の前方から後ろ向きに近づけていって、図1に示すように、座席部58に入浴者Pを乗せたまま固定浴槽13内に移動させる。上述の通り、このとき前輪54及び後輪55はいずれも浴槽の両側方外側に位置しており、浴槽内には入らない。したがって、車輪に巻き込まれているゴミや塵埃などが浴槽内に持ち込まれることがない。
上述したように車椅子50が所定位置まで到達すると、車椅子50の背もたれ支持体61の制止は解除され、シリンダアーム18aで支持された状態となる。なお、このときに車椅子50が前方に動き出してしまうことを防止するため、車椅子50を所定位置で保持する機構を設けてもよい。具体的には、車椅子50が所定位置に達したときに前輪54や後輪55をロックする機構を設ければよい。
車椅子50を所定位置まで押し込むことで入浴者Pを浴槽内に収容した後、介護者は操作部62で入浴のスタートキーを押す(ステップS1)。このキー操作を受けて、マイコン70は負荷駆動部71により油圧シリンダ18を駆動し、シリンダアーム18aを所定速度で引き込んでゆくことにより、背もたれ支持体61を後方にスライド移動させる。これにより、上述したように背もたれ支持体61が後方に移動するに伴い座席部58が後方に傾動してゆき(図3)、最終的には図4に示すように座席部58が最大限傾いて入浴者Pは半仰位となる(ステップS2)。これと同時又は前後して、可動浴槽移動モータ72を作動させ、可動浴槽14を軸15を中心に前方に回動させ、最終的には図4に示すように固定浴槽13と可動浴槽14とから成る浴槽を形成する(ステップS3)。
その後、浴槽内への給湯を開始する。即ち、マイコン70は第1及び第2電磁弁33、34を閉鎖する一方、第3電磁弁36を開放し(ステップS4)、ポンプ17を作動させる(ステップS5)。ポンプ17は貯湯槽16に貯留されている湯を吸引して吐出し、シャワー給湯管37を経て複数の噴射穴13aから一斉に湯がシャワー状に噴出して入浴者Pの身体に掛かる。それによって、入浴者Pの身体を温めることができるとともに、入浴者Pの身体表面の汚れを軽く洗い流すことができる。入浴者Pの身体に掛かって浴槽内に落ちた湯は、排水口13cを経て排水管39から排出される。
所定時間、噴射穴13aからの湯の噴射の後(ステップS6でYES)、排水弁38を閉鎖するとともに、給湯用トルクモータ30を作動させて給湯弁31を開く。給湯弁31が開くと、貯湯槽16内に貯留されている湯は重力によって、第1給湯管28を通り給湯口13bから浴槽内に供給される。貯湯槽16内では湯が減少して水位が下がると、貯湯弁26が開放されて新しい湯が貯湯槽16内に補充される。このとき浴槽内にはその底部から湯が溜まってゆくため、最初は入浴者Pの臀部や脚先などが湯に浸かるだけである。したがって、この給湯の間にも、噴射穴13aからの湯のシャワー噴射を継続して、入浴者Pの身体に湯を掛け続けて身体が冷えるのを防止するとよい。
貯湯槽16は固定浴槽13の後方にほぼ同じ高さに設置されているため、貯湯槽16内の水位と浴槽内の水位とがほぼ等しくなると、それ以上、浴槽内へ湯を送り込むことができなくなる。そこで、貯湯槽水位センサ44又は浴槽内水位センサ45の検知信号により、上記のように両水位がほぼ等しくなる水位レベルに達したことを検知すると(ステップS9でYES)、第3電磁弁36を閉じる一方、第1電磁弁33を開放し、ポンプ17により吸引した湯を給湯口13bから浴槽内に送り込むように切り替える(ステップS10)。このとき、逆止弁29の作用により、貯湯槽16への湯の逆流は避けられる。
上述したように給湯の開始時点で貯湯槽16に貯留されていた湯を全て浴槽に送り込んでも、湯は浴槽内の半分程度しか溜まらず、それ以降は貯湯管27を通して貯湯槽16に供給された湯がポンプ17により吸引されて浴槽に供給される。したがって、浴槽に半分程度の湯が溜まるまでの時間は比較的短いが、それ以降の湯の増え方は遅くなる。しかしながら、先に入浴者Pの身体は掛け湯によって温められているので、浴槽内に湯が満杯になるまでに或る程度の時間が掛かったとしても、入浴者Pはそれほど寒さを感じることがない。
そして、浴槽内水位センサ45の検知信号により浴槽内に所定水位の湯が溜まったことが検知されると(ステップS11でYES)、ポンプ17を停止するとともに給湯弁31及び第1電磁弁33を閉鎖し(ステップS12)、浴槽内への給湯を停止する。なお、浴槽内に入浴剤やボディーシャンプーを投入する必要がある場合には、給湯弁31が開いた後に入浴剤投入ポンプ、ボディーシャンプー投入ポンプを作動させ、予め容器に収容されていた入浴剤やボディーシャンプーを容器内から吸い上げて第1給湯管28を通る湯に混入させればよい。
以上のようにして本実施例の入浴装置では、貯湯槽16に貯留可能な湯の量をできるだけ少なくすることにより本体部10のコンパクト性を達成しつつ、浴槽に湯を溜める時間をあまり長くせずに済み、しかも浴槽内に湯が溜まるまでの待ち時間に入浴者Pに不快感を与えることを軽減できる。
なお、上記実施例において車椅子の座面56及び背もたれ57は湯が通過可能であることが好ましいから、適宜の穴を形成した板状部材や布などから形成することができる。また、図9に示すように、車椅子50の座面56及び背もたれ57として、支持枠の内側にメッシュ状のシートを適度な張力で張設した構成としてもよい。このように座面56及び背もたれ57がメッシュ状であることにより、水や空気が自由に通過するため、座面56及び背もたれ57に接触した入浴者Pの体表面に水や空気が容易に当たる。
また、上述したような車椅子では、寝たきり等であって座席部に腰掛けることができないような重度の介護レベルの被介護者を入浴させることは困難である。そうした場合に、上記の車椅子50に代えて図10に示すような搬送車80を利用することにより、重度の介護レベルの被介護者を本体部10を用いて入浴させることができる。図10では図2の車椅子50と同一の構成要素には同一符号を付している。この搬送車80では、前輪54の前にさらに補助前輪82を取り付けた台車81に肘掛け支柱部51が立設され、座面支持体60と背もたれ支持体61とにより湾曲形状の支持枠83が保持され、その支持枠83の内側にはメッシュ状のシート84が張設されている。即ち、このシート84がハンモック状のベッドになっており、入浴者Pの身体を安定して包み込むことができる。
次に、本発明の他の実施例(第2実施例)による車椅子入浴装置を図11〜図13により説明する。図11は第2実施例による車椅子入浴装置に使用される車椅子50の右側面図、図12は車椅子50を本体部10に収容した状態での正面図、図13は車椅子50を本体部10に収容した状態での上面図及び右側面図である。上記実施例と同一又は相当する構成要素には同一の符号を付して対応関係を明確にしている。
上記実施例の入浴装置は、基本的に介護者の助力の下で被介護者が入浴することを想定しているため、例えば車椅子での自力走行が可能であるような人が自力で(つまり一人)で入浴することが困難であった。これに対し、この第2実施例の入浴装置は、そうした介護者による助力を前提とせずに自力での入浴に配慮したものである。
図11及び図12により明らかなように、この実施例の車椅子50では、後輪55はその径が非常に大きくなっているとともに、肘掛け部52の直下ではなく外側に設けられており、座席部58に座った入浴者Pが後輪55を把持して回動させ、自力で前進又は後退し易いようになっている。また、図12及び図13に示すように、入浴者Pが座した座席部58が本体部10の固定浴槽13内に収容されるように車椅子50が所定位置にセットされたとき、左右の両後輪55は枠体11の側面を覆う側面板12の外側に露出する。これにより、枠体11が邪魔にならずに入浴者Pは車椅子50の後輪55を操作することができる。もちろん、後輪55の大きさに拘わらずこうした構成とすることも可能である。
なお、上記実施例はいずれも本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。