JP3749697B2 - 介護用入浴装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被介護者が車椅子ユニットに乗ったまま浴槽ユニットと合体し、入浴できる介護用入浴装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
病院や介護施設等において、寝たきりの老人や肢体が不自由な人等の被介護者を入浴させる場合、被介護者を、寝床から搬送台に移し更衣室まで運び、脱衣後、浴槽あるいはシャワー台にまで移送している。入浴のたびに被介護者を移送したり搬送台に乗降させることは、被介護者のみでなく介護者にとっても肉体的精神的に大きな負担となる。
【0003】
このため、最近では、被介護者を車椅子あるいは搬送台ごと浴槽内に入れ、被介護者及び介護者の負担を軽減する入浴装置が種々提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような入浴装置は、複数人の介護者を必要とするか、介護者が1人で足りるものは、費用が掛かるのみでなく、広いスペースを必要とし、個人的家庭的使用は難しいことから、早急な改良が望まれている。
【0005】
また、被介護者が乗ったままの車椅子あるいは搬送台を浴槽内に入れる入浴装置では、車椅子等に被介護者が裸体で乗せられて運ばれるので、被介護者に精神的および肉体的に負担を強いることになる。特に、裸体のままで移動する時間および距離が長くなれば、被介護者の精神的負担はさらに増大し、入浴自体を拒む虞もある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、1人の介護者でも十分に取り扱うことができ、安価で、広いスペースを必要とせず、被介護者に精神的および肉体的負担を強いることがなく、快適に入浴できる入浴装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0008】
(1)本発明の介護用入浴装置は、移動用の台車部上に設けられた枠体部に着座シート部を載置してなる車椅子ユニットと、底面および該底面の周囲に立設する側壁を有し一部に切除部が形成された浴槽および当該浴槽を所定の高さに保持する脚部を有する浴槽ユニットと、を有する介護用入浴装置であって、前記着座シート部は、被介護者が着座する座部と、前記座部に対し傾動自在に取り付けられた足置部とを含み、前記車椅子ユニットは、前記座部に対し水平にされた状態の前記足置部が前記切除部から挿入され、前記浴槽の切除部を前記枠体部全体若しくは一部により閉鎖しシールすることにより前記浴槽ユニットと合体し、前記着座シート部は、前記車椅子ユニットと浴槽ユニットとが合体した状態において前記枠体部に対する連結または連結の解除が自在である
【0009】
(2)前記切除部は、前記浴槽の長手方向端部に形成した。
【0010】
(3)前記浴槽ユニットは、前記底面下方に、温水を前記浴槽内に供給する温水供給タンクと、体の洗浄による汚水を貯蔵する汚水貯蔵タンクとを含み、少なくとも、前記汚水貯蔵タンクは前記浴槽に対し着脱自在とした。
【0011】
(4)前記温水供給タンクは、前記浴槽に供給するための温水の温度を調節する温度調節器が内部に配置されている。
【0012】
(5)前記温水供給タンクは、空気の出し入れにより膜動する膜体が設けられており、当該膜体の変位により前記温水供給タンク内の温水を押し出して前記浴槽内に供給する。
【0013】
(6)前記浴槽ユニットは、前記膜体に空気を供給する空気供給手段を含む。
【0014】
(7)前記枠体部は、前記台車部上に載置された座面サポート部材と、該座面サポート部材に対し傾動自在に設けられた背面サポート部材とを含み、前記座面サポート部材及び背面サポート部材が前記浴槽の底面および側壁に形成された切除部にそれぞれ合致して前記浴槽を閉鎖しシールする。
【0015】
(8)前記着座シート部は、前記座部に対して回動自在に取り付けられた背もたれ部をさらに含み、前記車椅子ユニットと浴槽ユニットとの合体時に、前記座部及び足置部が座面サポート部材および/又は前記底面上を滑動し、前記座部に対する前記背もたれ部の起き上がり傾斜角を小さくする。
【0016】
(9)前記浴槽ユニットは、前記座部及び足置部の前記座面サポート部材および/又は浴槽底面上での滑動位置を固定する固定手段を有する。
【0019】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明は、浴槽と車椅子の両ユニットを合体することにより入浴装置を形成できるので、被介護者は車椅子ユニットに乗ったまま入浴でき、被介護者および介護者の負担を軽減できる。また、大掛かりな装置を必要とせず、浴槽と車椅子の両ユニットが合体できる空間だけあればよいため、個人的家庭的使用に適し、スペース的にもコスト的にも有利となる。さらに、足置部が座部に対し水平にされた状態で車椅子ユニットが浴槽と合体し、浴槽内で被介護者が半臥状態となるので、被介護者を容易に脱衣および着衣させることができ、入浴の際に被介護者が楽な姿勢を保つこともできる。加えて、浴槽が脚部により所定の高さに保持されるので、介護者は楽な姿勢で被介護者を洗うことができる。さらに、前記着座シート部は、前記車椅子ユニットと浴槽ユニットとが合体した状態において前記枠体部に対する連結または連結の解除が自在であるので、入浴時に着座シートの姿勢を容易に変更できる。
【0020】
請求項2に記載の発明は、切除部を浴槽の長手方向端部に形成したので、車椅子ユニットを水平状態等、被介護者を楽な姿勢状態として合体作業を行なうことができる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、温水供給タンクおよび汚水貯蔵タンクを有するので、体の洗浄等によって生じた汚水と体を温めるために使用する清浄な温水がそれぞれ独立に処理でき、一層快適な入浴が可能となる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、温水供給タンク内に温度調節器が配置されているので、温水供給タンク内の温水の温度を予め調節し、入浴の準備ができる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、温水供給タンク内に空気により膜動する膜体が設けられているので、膜体の変位により温水供給タンク内の温水が押し出され、短時間に浴槽に液体を供給でき、お湯張りに対する介護者の負担が軽減され、しかも冬期等のように外気温が低い時期でも被介護者に不快な思いをさせる虞もない。
【0024】
請求項6に記載の発明は、空気供給手段が浴槽ユニットに設けられているので、介護者等は空気供給を簡単にでき、負担も少ない。
【0025】
請求項7に記載の発明は、車椅子ユニットの座面サポート部材と背面サポート部材からなる枠体部が浴槽との間のシールを行なうので、この枠体部上に載置された着座シート部は枠体部とは独立し、被介護者の体形等に応じて自由に成形あるいは変形でき、被介護者も楽な姿勢を保つこともできる。また、浴槽と車椅子の合体時のシール性確保も容易となり、温水を供給時の漏れの虞もない。
【0026】
請求項8に記載の発明は、座部および足置部が座面サポート部材および浴槽の底面上を滑動できるので、水平面に対する背もたれ部の起き上がり傾斜角を調整でき、車椅子ユニット上での被介護者の姿勢を仰向けに近い状態等好みの姿勢にすることができ、入浴中の被介護者のリラクゼイション効果を高めることができる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、座面サポート部材等の上で座部および足置部が所定位置に停止されるので、水平面に対する背もたれ部の傾斜の調整でき、被介護者を好みの姿勢に安定的に保持することができ、入浴中の安全性も高めることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
<第1の実施の形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
図1は本発明の介護用入浴装置の全体を示す概略斜視図、図2は図1の断面図、図3は入浴装置の浴槽の平面図、図4は浴槽の切除部側から見た側面図である。
【0032】
本発明の介護用入浴装置1は、概して、図1、2に示すように、浴槽ユニット2と車椅子ユニット3とからなり、一部が切除された浴槽4に車椅子ユニット3を合体し、1つの完全な浴槽4とするものである。
【0033】
<浴槽ユニット>
これら各ユニットを説明するに当り、まず、浴槽ユニット2について説明する。
【0034】
図1において、浴槽ユニット2は、主として、浴槽4と、浴槽4を支持する脚部5とから構成されている。
【0035】
浴槽4は、図3および図4に示すように、矩形の底面41と、当該底面41の各辺に立設された側壁42と、底面41及び側壁42の一部を切除することにより形成した切除部43とから構成されている。切除部43は、浴槽4と車椅子ユニット3との合体時に、後述する車椅子ユニット3の座面サポート部材34および背面サポート部材35と合致する部分である。したがって、この切除部43は、車椅子ユニット3の挿入方向を考慮すれば、浴槽4の長手方向端部に形成することが好ましい。
【0036】
切除部43には、浴槽4と車椅子ユニット3との合体時に、浴槽4と車椅子ユニット3との間から水または温水が漏れないように、図中に黒塗りで示すシール部材431が設けられている。シール部材431は、車椅子ユニット3が圧接されたときに弾性変形し、そのシール性が向上するように、例えば、合成ゴム、合成樹脂、および布入ゴム等から構成することが好ましい。
【0037】
このシール性を維持するために、側壁42の切除部43近傍には係止部材432が設けられている。係止部材432としては、例えば、引掛け金具が好ましいが、場合によってはベルクロファスナ等も用いることができる。この係止部材432は、車椅子ユニット3側に固設された固定金具351と係止され、車椅子ユニット3と浴槽4の連結状態及び圧接状態を保持する。
【0038】
なお、浴槽4自体は、水切れを良くし、使用後の乾燥を早めるために、超撥水仕上げを施すことが好ましい。
【0039】
この浴槽4の外部には、側部に浴槽4を所定高さに支持する脚部5が当該浴槽4と一体に設けられている。勿論、脚部5は、浴槽4と別体であってもよいが、いずれにしても、この脚部5により保持される浴槽4の高さHは、作業性を考慮して60〜80cm程度に決定されることが好ましい。
【0040】
一方、浴槽4の内部は、図3に示すように、底面41に切除部43の対向側壁42まで延びる一対のガイドレール44が設置されている。これにより車椅子ユニット3との連結合体時に車椅子ユニット3をガイドしかつ浴槽4内における位置を決定する。
【0041】
また、この底面41には、浴槽4に給排湯するための給排湯口45と、入浴の際に体を洗ってできた汚水のみを排出するための汚水排出口46とが形成されている。汚水排出口46は、前記合体時の座部36の位置に対応する位置に開設され、シャワー等により被介護者の下半身を洗浄した後の汚水のみを後述の汚水貯蔵タンク7に取り込み易くしている。
【0042】
温水供給タンク6および汚水貯蔵タンク7は、具体的には図5、6、7に示ように構成されている。なお、図5は浴槽に給湯する前の温水供給タンク6の状態を示す断面図、図6は給湯後の状態を示す断面図、図7は配管系統を示す概略説明図である。
【0043】
図5に示すように、温水供給タンク6は、内部に水の温度を調節する温度調節器61と、当該温水供給タンク6内を仕切りかつ温度調節された温水を浴槽4に供給する膜体62が設けられ、側壁6aに空気導入管63、空気排出管64、給水管65および排水管66とが開設され、上壁6bに浴槽4の給排湯口45と着脱自在に連通された温水供給口67が設けられている。
【0044】
前記膜体62は、側部全体が温水供給タンク6の内周面略中央部に固定的に取り付けられた一枚の布あるいはゴム製のシート部材からなり、温水供給タンク6内を下部空間K1と上部空間K2に仕切っている。
【0045】
この膜体62は、常時は重力により温度調節器61と共に温水供給タンク6の底壁6cに付着した状態であるが、空気導入管63を介してコンプレッサ8から空気が供給されると、空気の圧力により温度調節器61と共に温水供給タンク6の上壁6bにまで上動し、上部空間K2内の温水を浴槽4に供給する。
【0046】
なお、膜体62としては、一枚のゴムあるいは布製のシート部材のみでなく、バルーンあるいは蛇腹状の樹脂製のもの等も使用でき、要は上下動あるいは膨張収縮等変位可能なものであればどのようなものであってもよく、また、膜体62の設置方式も横置きのみでなく、縦、斜め等どのようなものでもよい。前記空気供給手段としては、例示的にコンプレッサ8を挙げたが、これのみでなく、足ふみ式のふいご的なものや他の手段であってもよい。
【0047】
温水供給口67と給排湯口45を連通する配管80には、温水供給タンク6から浴槽4へ流れる水のみを通す弁81が設けられている。この弁81は、逆止弁とし、水圧により開閉するものであってもよいが、開閉作動弁とすることがより好ましい。この開閉作動弁は、図示しないワイヤを介して給排湯口用フットペダルと接続し、フットペダルの操作に連動して開閉させることにより、浴槽4から温水供給タンク6へ水が流れることを許容するものである。
【0048】
空気導入管63は、空気供給手段であるコンプレッサ8と接続され、供給された圧縮空気を膜体62の下部空間K1内に供給し、空気排出管64は、前記下部空間K1内の空気を外部に排出する。なお、空気排出管64には、下部空間K1内に空気供給するときに、空気が外部に流出しないようにする弁84が設けられているが、この弁84は、手動により開閉し、膜体62の空気を外部に排出することを許容するものであってもよい。
【0049】
温水供給タンク6の内部に設けられている前記温度調節器61は、例えば、コンセント611を介して、温水供給タンク6外から電力を得て、温水供給タンク6内の水を加熱する電気加熱式のヒーターである。なお、温度調節器61およびコンセント611には、防水加工を施すことが好ましい。
【0050】
温度調節器61の設置位置は、温水供給タンク6内に供給された水を加熱できるならば、どのような位置に設置してもよいが、本実施形態では、膜体62上に設けられている。このようにすれば、直接加熱できるので熱効率がよく、温水の供給時に邪魔にならず好ましい。
【0051】
水は、給水管65から温水供給タンク6内に供給され、入浴終了後に排水管66から排出される。給水管65や排水管66には、例えばホースを介して常時水道の蛇口に繋いでもよいが、温水供給タンク6内への水注入あるいは停止の円滑化を図るために、弁65a、66bあるいは栓を設けることが好ましい。
【0052】
また、温水供給タンク6を浴槽4から分離して搬送可能とするために、下部にキャスター68を設けてもよい。
【0053】
前記汚水貯蔵タンク7は、図5に示すように、浴槽4の汚水排出口46と連通する排出口71が上面に設けられている。汚水排出口46と汚水貯蔵タンク7とを連通する配管82にも、カップリングを設け着脱自在とすると共に、弁83を設けることが好ましい。このようにすれば、汚水の処理が容易となるからである。なお、この弁83も前述の弁81と同様にフットペダルを操作することによりワイヤ等を介して弁を開閉して、浴槽4から汚水貯蔵タンク7に水を流し、または、汚水貯蔵タンク7下部に設けられた搬送用キャスター72による移動時には汚水がこぼれないように閉じることが好ましい。
【0054】
<車椅子ユニット3>
図8は車椅子ユニット3の側面図、図9は車椅子ユニット3の背面図、図10は車椅子ユニットの各部を水平にした状態を示す図、図11は浴槽内で座部に対する背もたれ部の傾斜角を小さくした状態を示す側面図である。
【0055】
車椅子ユニット3は、図8、9に示すように、台車部33と、この台車部33上に載置された枠体部31と、被介護者を直接支える着座シート部32とから構成されている。
【0056】
まず、枠体部31は、座面サポート部材34及び背面サポート部材35からなり、背面サポート部材35が水平の座面サポート部材34に対し回動可能に取り付けられている。本実施形態の車椅子ユニット3は、枠体部31が前記浴槽4の切除部43を閉鎖するものであることから、背面サポート部材35の座面サポート部材34に対する傾きを所定の角度にしたときに、この切除部43に合致する形状を容易に選択できるように、回動可能とされている。
【0057】
なお、これら座面サポート部材34及び背面サポート部材35は、被介護者の体重を支えるのみでなく、浴槽4の一部を構成するものであることから、剛性を有しかつ耐水性のある板材あるいは金属板等で構成することが好ましい。
【0058】
この枠体部31を支える台車部33は、被介護者が手動操作可能とされた主輪331と、自在継手により支持されあらゆる方向に指向できる補助輪332と、これらを保持するフレーム333とから構成されている。
【0059】
このフレーム333は、その上部で前記座面サポート部材34及び背面サポート部材35と連結され、これらサポート部材34、35の上に着座シート部32が載置される。
【0060】
この着座シート部32は、被介護者が着座する矩形の座部36、背もたれ部37及び逆L字状の足置部38から構成されているが、座部36は前記座面サポート部材34上に、背もたれ部37は前記背面サポート部材35上にそれぞれ載置され、常時は両者一体となるように、例えば、引掛け金具あるいはベルクロファスナ等の適当な連結手段(図示せず)で連結されている。
【0061】
これら座部36、背もたれ部37及び足置部38は、後述するように、入浴時には浴槽4内に収納されるので、水に触れる部分に超撥水仕上げを施すか、あるいは速乾性のある材質を使用することが好ましく、また、座部36の側部には、座面と同じ水平位置から所定に起立位置まで傾動可能な肘置部362を設けることが好ましい。
【0062】
この車椅子ユニット3は、被介護者が搬送時、入浴時等に楽な姿勢をとることができる点を考慮し、着座シート部32の下部には移動ローラ361、381が設けられている。
【0063】
このような移動ローラ361、381を設けると、枠体部31と着座シート部32との連結を解くと、浴槽4の底面上を円滑に移動できる。場合によっては、図10に示す水平状態で移動し、その後、着座シート部32に対する背もたれ部37の起き上がり傾斜角θ(図11参照)を調節することも容易となる。
【0064】
この場合、前記移動ローラ361、381の移動を停止する固定手段(図示せず)を位置調節可能な設けると、座部36及び足置部38が座面サポート部材34上での滑動位置あるいは浴槽4の底面上での滑動位置を所望の位置に固定することができ、安定した姿勢で入浴できることになる。前記固定手段としては、例えば、浴槽ユニット2に設けられた、いわゆる車止め的な位置調節可能な突起、あるいは移動ローラ361、381の回動を停止するブレーキング部材等を用いることが好ましい。
【0065】
次に、介護用入浴装置の作用を説明する。
【0066】
まず、入浴の準備作業から行なう。温水供給タンク6および汚水貯蔵タンク7を浴槽4の下部にセットし、浴槽4の給排湯口45と温水供給タンク6の温水供給口67、汚水排出口46と汚水貯蔵タンク7の排出口71を連結する。また、コンプレッサ8を空気導入管63に接続し、空気排出管64の弁84を開いて大気開放とし、給水管65は水道の蛇口を連結し、排水管66の弁66aは閉じる。
【0067】
そして、温水供給タンク6内に、水道の蛇口より水を供給し、温度調節器61に給電して水の加熱を開始するかあるいは所定の温度にまで加熱された温水を直接温水供給タンク6内に入れる。これにより入浴準備が完了する。
【0068】
このようにして、所定温度の温水ができたところで、浴槽4と車椅子ユニット3とを合体する操作に入る。合体前の車椅子ユニット3の状態は、図8に示す姿勢であり、被介護者は、服を着たままの状態で車椅子ユニット3により浴槽ユニット2まで移動する。
【0069】
介護者は、足置部38を座部36とほぼ同じ高さになるように持ち上げ、被介護者が脚を伸ばし上半身を起こした状態、すなわち半臥状態にする。この状態で足置部38の先端を浴槽4の切除部43に向けて車椅子ユニット3を移動する。
【0070】
足置部38の先端が浴槽4の底面41上に差しかかると、移動ローラ381がガイドレール44に沿うように位置を決め、そのまま、ガイドレール44に沿って足置部38を滑動させる。ここでは、座部や足置部38は座面サポート部材35に対し移動しないように留められている。
【0071】
ただし、場合によっては、図10に示すように、水平に寝かせた状態で浴槽ユニット2まで移動してもよい。
【0072】
次に、介護者は、座面サポート部材34および背面サポート部材35が切除部43を閉鎖するように、座面サポート部材34に対する背面サポート部材35の傾斜状態を調節する。
【0073】
この調節後、枠体部31が浴槽4の切除部43に合致すると、浴槽4の引掛け金具432を車椅子ユニット3の固定金具351に係止する。これにより車椅子ユニット3と浴槽4の各シール部材が相互に圧接され、水漏れ防止状態の浴槽4となる。
【0074】
このようにして浴槽4と車椅子ユニット3との合体が完了すると、介護者は、座面サポート部材34あるいは浴槽4の底面上での座部36及び足置部38の位置が好ましい位置となるように固定手段を調節する。このようにして背もたれ部37の起き上がり傾斜角θを小さくできれば、被介護者の姿勢を仰向けに近い状態等好みの姿勢にすることができ、入浴中の被介護者のリラクゼイション効果を高めることができる。
【0075】
つまり、図11に示すように、浴槽4と車椅子ユニット3とを合体させた後、移動ローラ381および移動ローラ361をガイドレール44に沿って移動し、図2に示す状態からさらに傾斜させ、座部36に対する背もたれ部37の傾斜角θを小さくすれば、被介護者を仰向けに近い状態にすることができ、入浴中の被介護者のリラクゼイション効果を一層高めることができ、介護者による入浴の介助も容易になる。
【0076】
そして、半臥状態の被介護者を浴槽4内で脱衣させ、シャワーで被介護者の下半身を洗い、汚水を汚水貯蔵タンク7に貯溜する。ここに、汚水排出口46は座部の下方に設けられているので、この汚水は直ちに汚水排出口46より汚水貯蔵タンク7に排出され、貯溜される。
【0077】
下半身の洗浄中、介護者は、汚水排出口用フットペダルを押下して汚水排出口46の弁83を開き、汚水が浴槽4内に残らないようにシャワーで流しながら汚水貯蔵タンク7に排出する。下半身の洗浄が完了し、汚水が排出されると、前記フットペダルを離して、汚水排出口46の弁83を閉じる。
【0078】
本実施形態の介護用入浴装置1においては、車椅子ユニット3の座部36がおよそ浴槽4の高さとなるので、介護者も被介護者を楽に洗うことができ、また、介護者が半臥状態になるので、浴槽4内で被介護者を容易に脱衣および着衣させることができ、被介護者も楽な姿勢で入浴ができる。しかも、車椅子ユニット3と浴槽4が合体した状態では被介護者の四方が浴槽4および車椅子ユニット3に囲まれているので、脱衣の際にも被介護者が裸体を必要以上にさらすことがなく、被介護者に精神的および肉体的苦痛を与えることがない。
【0079】
なお、シャワーは、温水供給タンク6の温水を使用できるように構成してもよいが、当該浴槽ユニットを既設のシャワーの近くに予め配置し、このシャワーを用いて、下半身の洗浄を行なってもよい。
【0080】
次に、介護者は、コンプレッサ8のスイッチを入れ、膜体62に空気を供給し、膜体62を温水供給タンク6内で図6に示すように膨張させる。この膨張は、極めて短時間の間に行なわれるので、浴槽4内には温水供給タンク6内の温水100が速やかに注入される。つまり、温水供給タンク6内の温水100は、膜体62の膨張により温水供給タンク6内から押出され、温水供給口67、給排湯口45および給排湯口45の弁81を通じて浴槽4内に注入され、瞬時に浴槽4に温水100を張ることができる。
【0081】
したがって、本実施形態では、浴槽4に温水を張るのに、膜体62の膨張する速さで瞬時に浴槽4に温水100を供給でき、被介護者が体の冷え等の不快感をおぼえる前に温水を張ることができる。
【0082】
被介護者は、所定時間温水100に浸った後、その温水100で全身を洗浄する。洗浄の終了後、介護者は、排気管の弁84を開放し、膜体62内の空気を外部に排出すると共にフットペダルを作動して弁81を開放すると、膜体62が収縮すると共に浴槽4内の温水100が温水供給タンク6内に戻る。
【0083】
なお、この状態で被介護者の全身をもう一度シャワーで洗い流し、温水供給タンク6または汚水貯蔵タンク7に排水してもよい。
【0084】
このようにして入浴が終了すると、介護者は、被介護者の全身をバスタオルで拭き、さらに、車椅子ユニット3の座面サポート部材34、背面サポート部材35、座部36、背もたれ部37、足置部38、および浴槽4内を拭いて乾燥させる。この乾燥時に前記コンプレッサ8により浴槽4内に送風すれば、乾燥作業はより短時間で完了することになり好ましい。この乾燥作業の途中あるいは完了後、浴槽内で被介護者に着衣を施す。
【0085】
そして、車椅子ユニット3の背面サポート部材35背面で固定金具351に引掛けられている係止部材432を外し、車椅子ユニット3を浴槽4から離す。また、車椅子ユニット3の足置部38を回動させて座部36から垂下し、図7に示す状態としてベッド等に移送する。
【0086】
このように本実施形態では、車椅子ユニット3と浴槽4を合体して入浴装置を形成でき、しかも単一の介護者のみにより被介護者の入浴を介助できるので、被介護者が複数人いる介護施設等においても、簡単に被介護者を入浴させることができ、介護者の負担も軽減でき、また、入浴の際に被介護者の乗降がないため、被介護者の負担もない。さらに、温水供給タンク6および汚水貯蔵タンク7をそれぞれ複数個用意すれば、複数の被介護者が連続して入浴することも可能となる。
【0087】
特に、本実施形態の介護用入浴装置1は、浴槽ユニット2と車椅子ユニット3とを主な構成としているので、大掛かりな装置を必要とせず、安価で、浴槽4と車椅子ユニット3とが合体できる空間だけあれば十分で、個人的あるいは家庭的使用にも適している。
【0088】
また、車椅子ユニット3と浴槽4とを合体する際、介護者が半臥状態になるので、浴槽4内での脱衣や着衣が容易で、四方が浴槽4等に囲まれているので、被介護者に精神的および肉体的苦痛も極めてすくなく、しかも、汚水貯蔵タンク7が温水供給タンク6とは別個に設けられ、下半身洗浄による汚水を汚水貯蔵タンク7に排出した後、入浴用の温水を温水供給タンク6から浴槽4内に供給できるので、汚水と入浴水が混入することはなく、極めて衛生的でもある。
【0089】
本発明は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々変更使用することができる。例えば、前記フレーム333を、主輪331および補助輪332間距離を調整可能なように水平方向に伸長する入れ子式に形成し、主輪331を点線に示す位置から実線に示す位置にスライド可能に支持してもよい。主輪331および補助輪332間距離を伸長することによって、車椅子ユニット3の安定性を高めることができる。
【0090】
<第2の実施の形態>
次に、第1の実施の形態に変更を加えた介護用入浴装置について説明する。
【0091】
第2の実施の形態の介護用入浴装置は、第1の実施の形態で説明した構成を一部変更したものである。したがって、以下では、変更を加えた構成について詳細に説明し、第1の実際の形態と同様の構成には同様の参照番号を付してその説明を省略する。
【0092】
<浴槽ユニット2>
図12は入浴装置の浴槽40の平面図、図13は第2の実施の形態における入浴装置の断面図である。
【0093】
浴槽ユニット2は、主として、浴槽40と、浴槽40を支持する脚部5とから構成されている。
【0094】
浴槽40は、図12に示すように、矩形の底面41と、当該底面41の各辺に立設された側壁42と、該側壁42の一部を切除することにより形成した切除部47とから構成されている。この切除部47は、底面41には形成されず側壁42の一部にのみ形成されており、車椅子ユニット3の背面サポート部材35と合致する部分である。したがって、切除部47は、車椅子ユニット3の挿入方向を考慮すれば、浴槽40の長手方向端部に形成することが望ましい。
【0095】
また、図13に示すように、浴槽40は、底面41の一部に薄板部48が形成されている。この薄板部48は、底面41において、浴槽40端部の切除部47から底面41の中央に向かって座面サポート部材34とほぼ同じ長さに、他の部分に比べ薄く形成されている。
【0096】
薄板部48の厚さは、座面サポート部材34との間に隙間ができるように考慮して決定されている。ここで、座面サポート部材34と薄板部48との間の隙間は、入浴中などに薄板部48に大きな力が加えられた場合に座面サポート部材34が薄板部48を支持でき、かつ、浴槽ユニット2と車椅子ユニット3との円滑な合体を妨げない範囲で小さい方が望ましい。
【0097】
<車椅子ユニット3>
車椅子ユニット3は、第1の実施の形態とほぼ同様の構成を有している。すなわち、台車部33と、この台車部33上に載置された枠体部31と、被介護者を直接支える着座シート部32とから構成されている。そして、枠体部31は、座面サポート部材34及び背面サポート部材35からなる。
【0098】
背面サポート部材35は、座面サポート部材34に対し回動自在に取り付けられており、所定の姿勢で浴槽40の切除部43に合致する形状を有している。背面サポート部材35は、切除部43に合致する部分の表面にシール部材が取り付けられている。
【0099】
次に、第2の実施の形態における介護用入浴装置の作用を説明する。
【0100】
第2の実施の形態では、浴槽ユニット2に車椅子ユニット3を合体する際の作用が第1の実施の形態と異なるので、合体の際の作用について説明する。
【0101】
介護者は、被介護者を車椅子ユニット3に乗せて、浴槽ユニット2まで移動する。そして、足置部38が座部36とほぼ同じ高さになるように持ち上げ、被介護者が脚を伸ばし上半身を起こした状態、すなわち半臥状態にする。この状態で足置部38の先端を浴槽40の切除部47に向けて車椅子ユニット3を移動する。
【0102】
足置部38の先端が浴槽4の底面41上に差しかかると、移動ローラ381がガイドレール44に沿うように位置を決め、そのまま、切除部47に向けて車椅子ユニット3を移動する。車椅子ユニット3の移動に伴って、着座シート部32は、足置部38から浴槽4内に導入される。ここで、着座シート部32を支持していた座面サポート部材34は、着座シート部材32と分離され、底面41の薄板部48下部に誘導される。
【0103】
薄板部48と座面サポート部材34との間には隙間が設けられているので、座面サポート部材34が薄いタブ48下部に入り込む際に、これらの間に摩擦が生じず、車椅子ユニット3と浴槽ユニット2との合体は円滑に行うことができる。
【0104】
次に、介護者は、背面サポート部材35が切除部47を閉鎖するように、座面サポート部材34に対する背面サポート部材35の傾斜状態を調節する。
【0105】
この調節後、枠体部31が浴槽4の切除部43に合致すると、浴槽4の引掛け金具432を車椅子ユニット3の固定金具351に係止する。これにより背面サポート部材35と切除部47の各シール部材が相互に圧接され、水漏れ防止状態の浴槽4となる。
【0106】
以上のように、第2の実施の形態では、枠体部31のうち、座面サポート部材34が浴槽40の底面41下部に入り込み、背面サポート部材35のみで切除部47を封止する。したがって、切除部47は、第1の実施の形態に比べて小さく形成すれば足りる。切除部47が小さいので、封止するために必要なシール部材が少なくてすみ、より水漏れ防止を確実にすることができる。特に、浴槽40の底面41に切除部47を形成する必要がないので、水漏れの防止を容易にすることができる。
【0107】
また、着座シート部32が座面サポート部材34から分離して浴槽40内に導入されるので、着座シート部32の導入が容易となり、車椅子ユニット3と浴槽ユニット2との合体を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の入浴装置の全体を示す概略斜視図である。
【図2】 本発明の入浴装置の断面図である。
【図3】 入浴装置の浴槽の平面図である。
【図4】 浴槽の切除部側から見た側面図である。
【図5】 介護用入浴装置の浴槽に給湯する前の温水供給タンクの状態を示す断面図である。
【図6】 介護用入浴装置の浴槽に給湯した後の温水供給タンクの状態を示す断面図である。
【図7】 介護用入浴装置の配管系統を示す説明図である。
【図8】 介護用入浴装置の車椅子ユニットの側面図である。
【図9】 介護用入浴装置の車椅子ユニットの背面図である。
【図10】 車椅子ユニットの各部を水平にした状態を示す図である。
【図11】 浴槽内で座部に対する背もたれ部の傾斜を小さくした状態を示す側面図である。
【図12】 入浴装置の浴槽の平面図である。
【図13】 第2の実施の形態における入浴装置の断面図である。
【符号の説明】
1…介護用入浴装置、
2…浴槽ユニット、
3…車椅子ユニット、
4…浴槽、
5…脚部、
6…温水供給タンク、
7…汚水貯蔵タンク、
8…コンプレッサ、
31…枠体部、
32…着座シート部、
33…台車部、
34…座面サポート部材、
35…背面サポート部材、
36…座部、
37…背もたれ部、
38…足置部、
41…底面、
42…側壁、
43、47…切除部、
48…薄板部、
61…温度調節器、
62…膜体。

Claims (9)

  1. 移動用の台車部上に設けられた枠体部に着座シート部を載置してなる車椅子ユニットと、
    底面および該底面の周囲に立設する側壁を有し一部に切除部が形成された浴槽および当該浴槽を所定の高さに保持する脚部を有する浴槽ユニットと、
    有する介護用入浴装置であって、
    前記着座シート部は、被介護者が着座する座部と、前記座部に対し傾動自在に取り付けられた足置部とを含み、
    前記車椅子ユニットは、前記座部に対し水平にされた状態の前記足置部が前記切除部から挿入され、前記浴槽の切除部を前記枠体部全体若しくは一部により閉鎖しシールすることにより前記浴槽ユニットと合体し、
    前記着座シート部は、前記車椅子ユニットと浴槽ユニットとが合体した状態において前記枠体部に対する連結または連結の解除が自在である介護用入浴装置。
  2. 前記切除部は、前記浴槽の長手方向端部に形成したことを特徴とする請求項1に記載の介護用入浴装置。
  3. 前記浴槽ユニットは、前記底面下方に、温水を前記浴槽内に供給する温水供給タンクと、体の洗浄による汚水を貯蔵する汚水貯蔵タンクとを含み、
    少なくとも、前記汚水貯蔵タンクは前記浴槽に対し着脱自在としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の介護用入浴装置。
  4. 前記温水供給タンクは、前記浴槽に供給するための温水の温度を調節する温度調節器が内部に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の介護用入浴装置。
  5. 前記温水供給タンクは、空気の出し入れにより膜動する膜体が設けられており、当該膜体の変位により前記温水供給タンク内の温水を押し出して前記浴槽内に供給することを特徴とする請求項4に記載の介護用入浴装置。
  6. 前記浴槽ユニットは、前記膜体に空気を供給する空気供給手段を含むことを特徴とする請求項5に記載の介護用入浴装置。
  7. 前記枠体部は、前記台車部上に載置された座面サポート部材と、該座面サポート部材に対し傾動自在に設けられた背面サポート部材とを含み、
    前記座面サポート部材及び背面サポート部材が前記浴槽の底面および側壁に形成された切除部にそれぞれ合致して前記浴槽を閉鎖しシールすることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の介護用入浴装置。
  8. 前記着座シート部は、前記座部に対して回動自在に取り付けられた背もたれ部をさらに含み、前記車椅子ユニットと浴槽ユニットとの合体時に、前記座部及び足置部が座面サポート部材および/又は前記底面上を滑動し、前記座部に対する前記背もたれ部の起き上がり傾斜角を小さくすることを特徴とする請求項7に記載の介護用入浴装置。
  9. 前記浴槽ユニットは、前記座部及び足置部の前記座面サポート部材および/又は浴槽底面上での滑動位置を固定する固定手段を有することを特徴とする請求項8に記載の介護用入浴装置。
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