JP4162707B2 - 鉛フリーソルダペースト - Google Patents

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Description

本発明は、電子機器のはんだ付けに使用するソルダペースト、特にSn−Zn系鉛フリーソルダペーストに関する。
電子部品のはんだ付け方法としては、鏝付け法、フロー法、リフロー法、等がある。
鏝付け法とは、脂入りはんだ線をはんだ付け部にあてがい、該はんだ線をはんだ鏝で加熱溶融することにより、はんだ付けを行う方法である。この鏝付け法は、はんだ付け部一箇所毎にはんだ付けを行うため生産性に問題があり、大量生産には適さない。
フロー法は、プリント基板のはんだ付け面を溶融はんだに接触させてはんだ付けを行うものであり、一回の作業でプリント基板全体のはんだ付けができるという生産性に優れたはんだ付け方法である。しかしながら、このフロー法は、ピッチ間が狭い電子部品に対しては、はんだが跨って付着するというブリッジを形成したり、或いは熱に弱い電子部品に対しては溶融はんだが直接電子部品に接触するため、電子部品が熱損傷して機能劣化を起こしたりすることがあった。またプリント基板のはんだ付け面にコネクターのような接続部品が搭載されていると、溶融はんだがコネクターの穴の中に侵入して使用できなくなるという問題もある。
リフロー法は、はんだ粉とフラックスからなるソルダペーストをプリント基板の必要箇所だけに印刷法や吐出法で塗布し、該塗布部に電子部品を搭載してからリフロー炉のような加熱装置でソルダペーストを溶融させて電子部品とプリント基板をはんだ付けする方法である。このリフロー法は、一度の作業で多数箇所のはんだ付けができるばかりでなく、狭いピッチの電子部品に対してもブリッジの発生がなく、しかも不要箇所にははんだが付着しないという生産性と信頼性に優れたはんだ付けが行えるものである。
ところで従来のリフロー法に用いられていたソルダペーストは、はんだ粉がPb-Sn合金であった。このPb-Sn合金は、共晶組成(Pb-63Sn)では融点が183℃であり、熱に弱い電子部品に対しても熱影響が少なく、またはんだ付け性に優れているため未はんだやディウエット等のはんだ付け不良の発生も少ないという特長を有している。このPb-Sn合金を用いたソルダペーストではんだ付けされた電子機器が古くなったり、故障したりした場合、機能アップや修理をせず廃棄処分されていた。プリント基板を廃棄する場合、焼却処分でなく埋め立て処分をしていたが、埋め立て処分をするのは、プリント基板の銅箔にはんだが金属的に付着しており、銅箔とはんだを分離して再使用することができないからである。この埋め立て処分されたプリント基板に酸性雨が接触すると、はんだ中のPbが溶出し、それが地下水を汚染するようになる。そしてPbを含んだ地下水を長年月にわたって人や家畜が飲用するとPb中毒を起こすことが懸念されている。そこで電子機器業界からはPbを含まない所謂「鉛フリーはんだ」が強く要求されてきている。
鉛フリーはんだとは、Snを主成分としたものであり、現在使われている鉛フリーはんだは、Sn-3.5Ag(融点:221℃)、Sn-0.7Cu(融点:227℃)、Sn-9Zn(融点:199℃)、Sn-58Bi(融点:139℃)等の二元合金の他、これらにAg、Cu、Zn、Al、Bi、In、Sb、Ni、Cr、Co、Fe、Mn、P、Ge、Ga等の第三元素を適宜添加したものである。なお本発明でいう「系」とは、合金そのもの、或いは二元合金を基に第三元素を一種以上添加した合金である。例えばSn-Zn系とは、Sn-Zn合金そのもの、或いはSn-Znに前述第三元素を一種以上添加した合金であり、Sn-Ag系とはSn-Ag合金そのもの、或いはSn-Agに前述第三元素を一種以上添加した合金である。
Sn-Ag系鉛フリーはんだやSn-Cu系鉛フリーはんだ等は、融点が220℃以上であるため、ソルダペーストにしてリフロー法に使用すると、リフロー時のピーク温度が250℃以上となってしまい、電子部品やプリント基板を熱損傷させてしまうという問題があった。
Sn-Biの共晶系鉛フリーはんだは、融点が139℃近辺であり、ソルダペーストにしてリフロー法に使用してもピーク温度は200℃以下であるため、電子部品やプリント基板への熱影響は全くない。しかしながらこのBiを大量に含む鉛フリーはんだは、融点が低すぎることから耐熱性に問題があった。つまり電子機器のケース内が使用時にコイルやパワートランジスター等の発熱で高温になると、該鉛フリーはんだではんだ付けしたプリント基板のはんだ付け部は、接合強度が低下して剥離してしまう恐れがあった。また脆いBiを大量に含有しているPbフリーはんだは、はんだ付け部に少しの衝撃が加わっただけで簡単に剥離してしまうという問題もあった。
Sn-9Zn共晶の鉛フリーはんだは、融点が199℃であり、従来のPb-Sn共晶はんだの融点に近いものであるため、ソルダペーストにしてリフロー法に使用してもピーク温度が230℃以下ですみ、電子部品やプリント基板に対する熱影響も少ない。しかしながら、Sn-9Zn共晶のソルダペーストは、銅のはんだ付け部に対してはんだ付け性が悪く、はんだが付着しない「未はんだ」や、濡れていても部分的にはじいた状態となる「ディウエット」等のはんだ付け不良が発生することがあった。このようなはんだ付け不良は、接合強度を弱くするばかりでなく、外観を悪くするものである。またSn-9Zn共晶のソルダペーストは、銅ランドのプリント基板や銅製リードのはんだ付けを行った後、長年月経過すると、腐食によりはんだが黒く変色し、また銅箔や銅ランドの界面から剥離することがあった。はんだ付け部の剥離は、電子機器における故障の原因となる。さらにSn-9Zn共晶のソルダペーストは、はんだ付け時に微小なチップ部品が立ち上がるというチップ立ちも発生していた。プリント基板でチップ立ちが起こると、これを組み込んだ電子機器が全く機能を果たせなくなってしまうものである。
そこでSn-9Zn共晶のソルダペーストにおける問題点を改良するために、第三元素を添加したSn-Zn系鉛フリーはんだが各種提案されている。例えばはんだ付け性を改良したものとしては、Sn-Zn共晶近辺の合金にBiを添加したSn-8Zn-3Bi鉛フリーはんだ使用のソルダペーストがあり、このソルダペーストは現在多く使用されている。またSn-9Zn共晶近辺の合金にAgを添加して耐食性を向上させた鉛フリーはんだが本願出願人らから提案されている。
Sn-Zn系鉛フリーはんだは、融点が従来のSn-Pbはんだに近いこと、なおかつ人に対する必須成分であるZnを使用しているため、他の鉛フリーはんだに比較して人体に有害でないこと、ZnはIn、Ag、Biなどに比較して地球上の埋蔵量が多く、単価も安いことなど他の鉛フリーはんだに比較して優れた特性を持っている。そのためはんだ付け性が悪いにもかかわらずソルダペースト用のはんだとして、特にSn-Ag系鉛フリーはんだでは部品の耐熱性がないため使用できないプリント基板に使用されている。
しかしSn-Zn系鉛フリーはんだは、一般的に使用されるFR-4などのCuランドのプリント基板ではんだ付けを行った後、高温に放置するとはんだ付けの接合強度が低下する問題があった。これは、ZnとCuとの反応性が高いためCuランドの基板を使用した場合、高温の状態を長く続けるとSn-Zn系鉛フリーはんだ中のZnが合金層を通過してCu中に入り込み、カーケンダルダルボイドと呼ばれる金属間化合物とはんだ間に多数のボイドを発生させる(非特許文献1参照)。つまりボイドの発生は、はんだ付けの接合強度を低下させて信頼性が損なわれるようになる。そのためSn-Zn系鉛フリーはんだを使用するときは、CuランドにNiめっきを施してNiのバリアを作る必要性があるが、Niはぬれ性が悪いためNiの上にAuめっきを施さないと使用できない。それ故、Sn-Zn系鉛フリーはんだを使用する場合、Auめっきが必須となることから、電子機器の製造コストが高騰する問題が生じていた。
また、Sn-Zn系鉛フリーはんだをCuランドのプリント基板にはんだ付けしたときに温度とともに接合強度を低下させる要因として湿度がある。湿度が高いと合金相からZnが溶出し酸化物を形成し、その酸化物とはんだの界面でクラックが生じる。この現象は、湿度が80%以上になると温度が100℃以下でも顕著に現れる。
Sn-Zn系鉛フリーはんだとCuとの高温下でのはんだ付け強度を向上させる方法として、Sn-Zn系鉛フリーはんだ粉末に、1B族の金属を粉末として添加する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、Sn-Zn系鉛フリーはんだ粉末に添加する1B族の金属粉末は、Sn-Zn系鉛フリーはんだ粉末に対して1割以上存在しているため、リフローのピーク温度を上げないとはんだが溶融せず、従来のSn-Pbはんだとほぼ同一の温度プロファイルでリフロー可能であるというSn-Zn系鉛フリーはんだの利点を無くしてしまう。
また、Sn-Zn系鉛フリーはんだに微量のAlを添加することにより高温下でのCuとのはんだ付け強度を向上させる方法が提案されている(特許文献2)。しかしAlは酸化し易い金属であるため、はんだ粉末の製造時に他の成分より先に酸化してしまい、量産でこの文献で開示されている0.002%〜0.008質量%の成分を維持管理することは困難である。また、Sn-Zn系鉛フリーはんだの微量のAlの添加は、高温下のはんだ付け強度の向上には効果があるが、耐湿には効果がなく、85℃、85%RHなどの高温、高湿度には耐えられない。
本出願人は、Sn-Zn系鉛フリーはんだとCuとの高温下(→あくまで高温高湿下であり、150℃等の高温下は関係ありません。高温高湿の定義はありませんが60℃/90%RHや85℃/45%〜85%RHです。特に85℃/85%RHでの課題です)でのはんだ付け強度を向上させる方法として、ソルダペーストのフラックス中に流動パラフィンやパラフィンワックスを添加したSn-Zn系鉛フリーはんだソルダペースト(特許文献3)を開示している。
また、Sn-Zn系鉛フリーはんだ粉末表面にアミンを吸着させてリフロー時のプリヒートによるはんだ粉末の酸化を防止するSn-Zn系鉛フリーはんだ粉末(特許文献4)も開示している。
特開2002-224880号公報 米国特許第6361626号公報 特開2005-21958号公報 特開2001-212692号公報
ところで前述のようにSn-Zn系合金とCuを接合して高温、高湿下に曝されると、はんだの接合強度が著しく低下する問題があった。そのため一般的に使用されるFR-4のようなCuランドの基板が使用できず、高価なAuめっきのプリント基板が必須で製造コストが押し上げられていた。またCuとの接合にSn-Zn系合金に微量の添加元素を加えて高温下の強度を維持する方法もあるが、Sn-Zn系合金に微量の添加元素はぬれ性を悪くするという問題があった。ソルダペーストのフラックス中に流動パラフィンやパラフィンワックスを添加したSn-Zn系鉛フリーはんだソルダペーストは、高温下の強度については優れた効果を示すものであるが、フラックス中に添加された流動パラフィンやパラフィンワックスは、はんだ付け後のフラックス残渣中にほとんど残り、防湿効果を期待するために流動パラフィンやパラフィンワックスの量を多く添加するとソルダペーストの残渣が多くなってしまい、外観的に違和感があるという問題点があった。
また、Sn-Zn系鉛フリーはんだソルダペーストではんだ付けすると、高温、高湿下に置かれたときにはんだ付けしたセラミックコンデンサーが絶縁抵抗の劣化を起こすという問題点もあった。
本発明者らは、Sn-Zn系の鉛フリーソルダペーストにおいて、はんだ付けされた箇所が高温、高湿環境下において発生する接合強度の劣化やはんだ付けしたセラミックコンデンサーの絶縁抵抗の劣化原因が、Znの腐食によるものであること、はんだ付け後のフラックス残渣を中性および塩基性にすることにより、Znの実測腐食領域図でのZn−H2O系の不動態化領域にコントロールすることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
Sn-Zn系鉛フリーはんだではんだ付けしたCuのはんだ付け部の強度が低下する原因は、銅とはんだの界面に酸化されやすいCu-Znの合金層が生成されるためである。従来のSn-Pbはんだ、Sn-Ag系鉛フリーはんだおよびSn-Bi系鉛フリーはんだなどは、Cuとはんだ付けされるときにはんだ中のSnとCuが反応してSn-Cuの合金層を形成する。しかし、Sn-Zn系鉛フリーはんだでCuをはんだ付けした場合ではCu-Znの合金層が形成される。 Cu-Zn合金相は、高温高湿環境下におかれると合金相からZnが溶出し、Znの酸化物が生成される。このためそのZnの酸化物とはんだの界面にクラックが生じ、最後には接合界面で剥離するようになる。はんだそのものも同様にZnの酸化物が生成されるために強度が劣化する。
接合強度の低下を起こす現象は、Sn-9Znの2元合金だけでなくSn-Zn系鉛フリーペーストの組成としてよく使用されているSn-3Bi-8Znの組成でも発生する。従来は、特許文献1、2のようにSn-Zn系鉛フリーはんだに微量の1B族の金属やアルミなどを添加することによって強度低下を防ぐ方法がとられていた。しかしこれらの方法は、平均的な湿度である40〜60%の環境下で、高温の場合を想定している。はんだ付け部が100℃以上の高温に曝されることは車載部品および電源部品などを除けばほとんど無く、日本では湿度が80%以上になるような高湿度下での環境の方が多い。
前述のように、Sn-Zn系鉛フリーはんだの強度低下の発生原因がZnのイオン化である。そこで本発明では、Zn+イオンが発生しないようにソルダペーストのフラックスにはんだ付け後のフラックス残渣のpHを中性および塩基性に調整する材料を添加することによりZnに不動態膜を形成させZnの溶出を抑制させることで、はんだ付け部の強度低下を防止している。Zn-H2O系の不動態化領域であるpHにフラックス残渣のpHを調整することで、Zn(OH)2の不動態膜を形成させることによりはんだ付け部の強度が低下を防止している。Zn−H2O系の不動態はフラックス残渣が、中性若しくは塩基性領域で無ければ形成されない。本発明では、フラックス残渣中にZn−H2O系の不動態を形成させることによりSn-Zn系鉛フリーはんだの強度低下だけでなく、チップコンデンサーの絶縁劣化にも有効である。Sn-Zn系鉛フリーはんだの強度低下を起こさないためにはフラックス残渣のpHを塩基性に偏らせることが重要であるが、ソルダペースト自体のフラックスが塩基性に偏ると、はんだ付け時にはんだボールが発生して、はんだ付け不良を起こしやすい。つまり、はんだボールが少なく良好なはんだ付けを得るためには、ソルダペースト自体のフラックスは酸性域に偏らせた方が良い。本発明では、この相反する課題を解決するためのはんだ付け後のフラックス残渣のpHを調整する材料として、グアニジン誘導体を見出した。
グアニジンは(NH2)C=NHの構造を持つアミンで、そのアミノ基のHを置換したグアニジン誘導体は有機ゴムの加硫促進剤などに使用されている。グアニジン誘導体は、アミノ基のHを芳香族炭化水素で置換しており、融点が150℃前後であって耐熱性が高い。このグアニジン誘導体は、アミンとしての塩基性は強く、熱によって分解させにくいためフラックス残渣にも確実に残る性質がある。またグアニジン誘導体は、有機酸と同等のはんだ付け性がある。その為はんだ付け後のフラックス残渣をpH値7〜11とすることができ、はんだ付け性も良い。
本発明は、グアニジン誘導体であればすべて同じ作用効果を呈するが、より好ましくは1,3ジフェニルグアニジン、1,3ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニドを用いると良い。これらのグアニジン誘導体は、単独で用いても良いし、二つ以上混合して用いても良い。これらのグアニジン誘導体はフラックス残渣のpHを調整するだけでなく、ソルダペーストでのはんだ付け性にも優れている。一般的にフラックス中のアミン類の添加は、フラックスを塩基性に偏らせるので活性剤の働きが阻害される。しかしながら、本発明のグアニジン誘導体は活性剤の作用を阻害しない。
本発明は、Sn-Zn系鉛フリーはんだ合金粉末とフラックスを混練したソルダペーストにおいて、フラックス中にグアニジン誘導体が添加されていることを特徴とするソルダペーストである。
本発明におけるSn-Zn系合金粉とは、Sn-Znの二元合金粉のほか、該二元合金粉に他の元素を添加した三元以上の合金粉も含まれる。
本発明のソルダペーストを用いることにより、高温・多湿下の環境でもSn-Zn系鉛フリーはんだ合金で発生する接合強度の低下を防止することができ、一般的な鉛フリーはんだ合金として使用されているSn-Ag-Cu系はんだ合金では、温度が高くて使用できないような耐熱性のない電子部品を高い信頼性をもって使用可能となる。
本発明に使用するグアニジン誘導体は、特許文献4などとは異なりフラックスのpHを調整するものなので、必ずフラックスと共存させて使用される。特許文献4のはんだ粉末の被覆に使用されるアミン量では、フラックス残渣のpHを調整するだけの量が足りず、粉末に被覆して用いるような使用方法はできない。
本発明のフラックスに添加するグアニジン誘導体の量が10質量%未満では、フラックス残渣のpHを中性または塩基性に維持することができないので、高温、高湿環境下における接合強度が低下する。フラックスに添加するグアニジン誘導体が30質量%を超えてしまうと、はんだ付け前のフラックスが塩基性に偏ってしまい、はんだボールが多くなる。そのため本発明に使用するグアニジン誘導体の量は、合計で10〜30質量%が好ましい。さらにより好ましくは、グアニジン誘導体の量が合計で15〜20質量%のときである。
本発明では、ソルダペーストのフラックスにアミンとしてグアニジン誘導体の他に比較的低温で反応するアミンを添加することもできる。本発明のグアニジン誘導体の他に添加できるアミンとして、ジプロピルアミン,トリプロピルアミン,ジヘキシルアミン,トリヘキシルアミン,デシルアミン,ジデシルアミン,ウンデシルアミン,ジウンデシルアミン,ドデシルアミン,ジドデシルアミン,ヘキサデシルアミン,オクタデシルアミン,シクロヘキシルアミン,ジシクロヘキシルアミン,ポリオキシエチレンジシクロヘキシルアミン,ジメチルアニリン,ジフェニルアミン,トリフェニルアミン等があげられる。
本発明に使用するグアニジン誘導体は、流動パラフィンまたはパラフィンワックスと共存させることによって、さらに高温、高湿下のはんだ接合強度の低下を防止することができる。流動パラフィンまたはパラフィンワックス自体は中性であり、ソルダペーストのフラックス中に添加しても、フラックス残渣のpHをほとんど変化させない。ソルダペーストのフラックス中に流動パラフィンまたはパラフィンワックスを添加することにより、フラックス残渣の表面に水分を通過させない層を形成して、湿気とはんだ合金と隔離することによりはんだ合金のイオン化を防止して、さらに高温、高湿下のはんだ接合強度の低下を防止する。本発明に流動パラフィンまたはパラフィンワックスを添加するときは、ソルダペーストのフラックス中に5〜20質量%するのが好ましい。本発明に添加する流動パラフィンまたはパラフィンワックスは、それぞれが単独で添加しても良いし、これらを一緒に使用しても良い。
Sn-Zn系鉛フリーはんだはぬれ性が悪く、なおかつ本発明ではフラックス残渣のpHを7.0〜11としなければならない。本発明のソルダペーストに一般的にフラックスの活性剤として使用されるアミンのハロゲン化水素酸塩を用いると、フラックス残渣のpHが上昇(酸性域)してしまう。本発明の活性剤として適するのは、フラックス中のpHを酸性域に偏らせない有機ハロゲン化合物が適している。有機ハロゲン化合物の好適な例として、脂肪族の有機ハロゲン化合物として、ヘキサブロモシクロドデカン、trans−2,3ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノールがある。また、脂肪族の有機ハロゲン化合物ではないが、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートも好適である。
本発明における有機ハロゲン化合物および芳香族アミン、複素環アミンなどのアミンの添加は、単独で添加しても効果が期待できる。さらにこれらを同時に添加することにより、流動パラフィンおよびパラフィンワックスのはんだ付け性に対する欠点を補い、相乗効果が期待できる。
Sn-Zn系鉛フリーはんだの組成として、一般的なSn-3Bi-8ZnおよびSn-9Znの組成を用いた。フラックス配合は表1に示す。
1.ソルダペースト配合
Sn-3Bi-8ZnおよびSn-9Znはんだ粉末(20〜40μm) 88質量%
フラックス (表1に配合を記載) 12質量%
フラックスおよびはんだ粉末を混和してソルダペーストを作り、その特性を比較した。実施例および比較例の試験結果も表1に示す。
Figure 0004162707
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1.フラックス残渣のpH試験方法
1.) JISH3100に規定された50×50×0.5mmの銅版に6.5mmφの穴の空いたメタルマスクを用いて、実施例および比較例のソルダペーストを印刷する。 2.) 試験銅板をプリヒート温度150〜170℃、90秒、ピーク温度220℃、200℃以上30秒、酸素濃度3000ppmのリフロー条件で、リフローはんだ付けを行う。
3.) 放冷後、スパチュラ等で残渣を掻き落とし残渣を集める。
4.) かき集めた残渣の1%水溶液を煮沸し、冷却後pHを測定する。
2.剪断強度試験
1.) 試験基板に1005チップコンデンサーをマウンターで搭載する。
2.) 試験基板をプリヒート温度150〜170℃、90秒、ピーク温度220℃、200℃以上30秒、酸素濃度3000ppmのリフロー条件で、リフローはんだ付けを行う。
3.) 試験基板を放冷後、剪断強度試験機を用いて、テストスピード 300μm/sec、テスト高さ 15μmの条件で剪断強度を測定する。
3.絶縁劣化試験
1.) 試験基板に1608Cコンデンサー(静電容量1μF、定格電圧6.3V)をマウンターで搭載する。
2.) 試験基板をプリヒート温度150〜170℃、90秒、ピーク温度220℃、200℃以上30秒、酸素濃度3000ppmのリフロー条件で、リフローはんだ付けを行う。
3.) 試験基板を放冷後、85℃/85%RH環境下で6.3Vの電圧を印可して、絶縁抵抗を500hまで測定する。測定電圧6.3Vとした。
4.) 絶縁劣化試験の判定基準は、1×107 Ω以下を不合格と判断した。
本発明のソルダペーストは85℃、85%RHの環境下でも強度の劣化が少なく、絶縁抵抗もほとんど低下しなかった。それに対して、比較例のソルダペーストは85℃、85%RHの環境下の強度低下および絶縁抵抗の低下が見られた。
本発明のソルダペーストは、Sn-Zn系の鉛フリーソルダペーストだけでなく、一般的な鉛フリーはんだ合金にも使用可能である。

Claims (4)

  1. Sn−Zn系鉛フリーはんだ合金粉末とフラックスを混練したソルダペーストにおいて、フラックス中にアミンとして、グアニジン誘導体を10〜30%含有することを特徴とするSn−Zn系鉛フリーソルダペースト。
  2. 前記グアニジンの誘導体は、1,3ジフェニルグアニジン、1,3ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニドであることを特徴とする請求項1に記載のSn−Zn系鉛フリーソルダペースト。
  3. 前記フラックスは、ハロゲンフリーのフラックスを用いることを特徴とする請求項1及び2に記載のSn−Zn系鉛フリーソルダペースト。
  4. 請求項1に記載のソルダペーストを用いたはんだ付け方法において、はんだ付け後のフラックス残渣のpHを7〜11とすることを特徴とするSn−Zn系鉛フリーソルダーペーストのはんだ付け方法。
JP2008501086A 2006-09-22 2007-09-21 鉛フリーソルダペースト Active JP4162707B2 (ja)

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