JP4162411B2 - 排ガス中のメタンの酸化用触媒及び排ガス中のメタンの酸化除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素を過剰に含む燃焼排ガス中の炭化水素、特にメタンの酸化除去に用いられる、ハニカム状酸化用触媒及び酸化除去方法に関する。ここで、酸素を過剰に含むとは、該排ガスが、それが含む炭化水素や一酸化炭素等の還元性成分を完全酸化するに足る量以上に、酸素や窒素酸化物などの酸化性成分を含むことを意味する。
【0002】
【従来の技術】
排ガス中の炭化水素の酸化除去用触媒として、白金やパラジウム等の白金族金属を担持した触媒が高い性能を示すことが知られている。たとえば、特開昭51-106691号公報にはアルミナ担体に白金とパラジウムを担持した排ガス浄化用触媒が開示されている。しかしこれらの触媒を用いても、天然ガスの燃焼排ガスのようにメタンが炭化水素の主成分である場合には,メタンの化学的安定性が高いために十分な浄化率が得られないという問題がある。さらに燃焼排ガス中には通常硫黄酸化物などの阻害物質が共存し、活性が経時的に著しく劣化することが避けられない。灯油や軽油などの石油系燃料は、通常含硫黄化合物を含む。また本来ほとんど硫黄化合物を含まない天然ガス燃料であっても、通常の都市ガスには、付臭剤として硫黄を含む化合物が添加されている。これらの含硫黄有機化合物は燃焼によって硫黄酸化物を生成する。ランパート(Lampert)らは、アプライドキャタリシスB:エンバイロンメンタル(Applied Catalysis B: Environmental)14巻211-223頁(1997年)に、パラジウム触媒を用いたメタン酸化の結果を報告しているが、わずかに0.1 ppmの二酸化硫黄の存在が、数時間のうちに触媒活性をほとんど失わせることを示し、硫黄酸化物の存在が活性に大きな影響を与えることを明らかにしている。また山本らは、平成8年度触媒研究発表会講演予稿集(平成8年9月13日発行)においてアルミナに白金及びパラジウムを担持した触媒を用いた都市ガス燃料の排ガス中の炭化水素の酸化除去の結果を報告しているが、100時間程度の間に顕著な活性の低下が見られる。さらに、特開平8-332392号公報は、酸素過剰な排ガス中の低濃度炭化水素用酸化触媒として、ハニカム基材にアルミナ担体を介してパラジウムを7g/l以上で且つ白金を3〜20 g/l担持した触媒を開示している。しかし、この触媒を用いても、長期の耐久性は十分ではなく、活性の経時的な劣化は避けられない。このように従来技術の大きな問題点は、メタンに対して高い除去率が得られないこと、さらに硫黄酸化物が共存するような条件で除去率の大幅な低下が起こることである。
【0003】
このような実状に鑑みて、特開平11-319559号公報にはパラジウムまたはパラジウム及び白金を担持したジルコニアが、硫黄酸化物共存下でも高いメタン酸化活性を維持する触媒として開示されている。また、特開2000-225344号公報には、パラジウムまたはパラジウム及び白金を担持したジルコニアをコートしたハニカム状触媒の製造方法が開示されている。しかしながら、この触媒を用いても、特に400℃あるいはそれ以下の温度域で高いメタン除去率を得るためには、多くの触媒量を要することが問題となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる状況に鑑みて行われたものであって、その主な目的とするところは、燃焼排ガス中に少なくとも水蒸気若しくは硫黄酸化物を含む場合であっても、メタンを含有し酸素を過剰に含む当該燃焼排ガス中のメタンの除去において、低い温度でも高い活性を有するハニカム状酸化用触媒及び酸化除去方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ジルコニアに、イリジウム及び白金を担持した触媒が、硫黄酸化物による活性阻害に対して高い抵抗性を示して耐久性が向上し、燃焼排ガスの条件下においても安定して高いメタン酸化性能を維持するとともに、低温域での活性にも優れていることを見出した。
また、排気ガス浄化用触媒は通常ハニカム形状で用いられるため、ハニカム状触媒の製造方法について、さらに検討を進めたところ、ハニカム触媒を製造するにあたって、特定の製造方法を用いることにより高活性なハニカム状触媒を得ることができることを見出した。
本発明はかかる知見に基づき完成されたもので、ジルコニアにイリジウム及び白金を担持した粉体触媒を調製し、次いで該粉体触媒にバインダーを加えてスラリーとしてハニカム状の耐火性基材上にコートすることにより製造され、少なくとも水蒸気若しくは硫黄酸化物を含むメタン含有燃焼排ガス中のメタンを酸化除去するための酸化用触媒を提供する。
また、本発明は、ジルコニアにイリジウム及び白金を担持した粉体触媒を調製し、次いで該粉体触媒にバインダーを加えてスラリーとしてハニカム状の耐火性基材上にコートすることにより製造された酸化用触媒に、少なくとも水蒸気若しくは硫黄酸化物を含むメタン含有燃焼排ガスを接触させ、当該メタン含有燃焼排ガス中のメタンを酸化除去する燃焼排ガス中のメタンの酸化除去方法を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のハニカム状触媒の製造方法は、まずジルコニア粉体にイリジウムを担持した粉体状触媒を調製し、次いで、この粉体状触媒に必要に応じてバインダーを加えてスラリーとし、これに耐火性基材を浸漬することによって、イリジウムを担持したジルコニアを耐火性基材にコートすることを特徴とする。
ジルコニアの比表面積は、あまりに低いとイリジウムを高分散に保つことができなくなる一方、あまりに高表面積でも、使用中に酸化ジルコニウム担体の焼結が進行して活性が不安定となるおそれがあるので、2〜60 m2/gの範囲とするのがよく、5〜30 m2/gの範囲であることがより望ましい。このようなジルコニアとしては、市販の触媒担体用ジルコニアを用いても良く、水酸化ジルコニウムを600〜1000℃で焼成して用いても良い。
ジルコニアへのイリジウムの担持は、イリジウムイオンを含む溶液にジルコニアを浸漬し、乾燥、焼成することによって行う。水溶液で行う場合には、塩化イリジウム酸やヘキサアンミンイリジウム塩化物([Ir(NH3)6]Cl3)など水溶性のイリジウム化合物を純水に溶解したものを用いれば良い。この他、トリス(アセチルアセトナト)イリジウムをアセトンやクロロホルムに溶解した有機溶媒で行うこともできるが、溶媒の可燃性や毒性のため作業性には劣る。
本発明の触媒は、イリジウムに加えてさらに白金を担持する。この場合、白金塩とイリジウム塩の混合により沈殿を生じることもあるので、先ずイリジウムを担持した後、乾燥、仮焼してから白金を担持するような逐次的な方法で担持しても良い。白金とイリジウムを同時に担持する場合には、塩化イリジウム酸と塩化白金酸を混合溶解した水溶液などが使用できる。
イリジウムの担持量は、少なすぎると触媒活性が低く、また多すぎるとイリジウムの粒径が大きくなり担持されたイリジウムが有効に使われなくなるので、好ましくはジルコニアの重量に対して1〜20%、より好ましくは3〜10%で、ハニカム状触媒としての体積当たりの担持量が5〜50g/l、より好ましくは10〜30g/lとする。
白金を加える際には、少なすぎれば効果が現れず、多すぎても活性金属としてのイリジウムの機能を阻害するおそれがあるので、イリジウムに対する重量比で2乃至100%とするのが好ましく、より好ましくは5乃至50%の範囲である。
イリジウムにジルコニアを担持した後、焼成して粉体触媒を得る。焼成時に流通するガスは、通常の空気でよいが、空気あるいは酸素と、窒素などの不活性ガスとを適宜混合したガスを用いても良い。ただし、あまりに酸素濃度の高い場合、焼成中にイリジウムの揮散が促進されるおそれがある。焼成温度は高すぎると、担持された貴金属の粒成長が進んで高い活性が得られない。逆に低すぎても焼成の効果が無く触媒の使用中に貴金属の粒成長が進んで安定した活性が得られないおそれがある。従って、安定して高い活性をうるためには、焼成の温度は450℃から650℃の範囲とするのがよく、より好ましくは550℃から600℃の範囲とするのがよい。
【0007】
ハニカム状耐火性基材としては、コージェライト、ムライトなどの酸化物系基材や、ステンレス薄板を巻回して製造されるメタルハニカムなどが用いられる。ハニカムのサイズは特に制限されないが、あまりに目が小さいと、圧力損失が大きくなる上、アッシュなど固形分による物理閉塞のおそれがある一方、目が大きいときには、ガスとの接触表面積が小さく十分な性能が得られないおそれがある。従って、1平方インチ(6.45平方センチ)当たりの貫通口の数が50〜400とするのが良く、70〜210の範囲とするのがより好ましい。
粉体状触媒をコートする方法としては、たとえば、ジルコニアゾルや、オキシ硝酸ジルコニウムなどをバインダーとして添加し、必要に応じて粘度調整のために澱粉やメチルセルロースなどを添加した水溶液に混合してボールミル等でスラリー状とし、このスラリー中に前記のハニカム状耐火性基材を浸漬し、引き上げて乾燥・焼成する方法が例示できる。コートは、所望のコート量が得られるまで、必要に応じて繰り返してもよい。コート量は、少なすぎれば活性が不十分となり、多すぎてもコート層の表面より遠い部分は有効に作用しないために経済的に不利となるため、ハニカム基材の1平方インチ当たりの貫通口の数が200の場合で、ジルコニアとしてのハニカム触媒1リットル当たりのコート量を100〜900g/lとするのが良く、150〜400 g/lとするのがより好ましい。ハニカム基材の貫通口の数が200よりも多いばあいは、前記の値よりも多くすることができ、少ない場合には前記の値よりも少なくする。例えば、貫通口の数が100の場合では、コート量を50〜450g/lとするのが良く、75〜200 g/lとするのがより好ましい。
ジルコニアゾルや、オキシ硝酸ジルコニウムをバインダーとして添加する場合、その量は、ジルコニアとしての粉体触媒との重量比で5〜20%程度とするのがよい。少なすぎると効果がなく、多すぎれば触媒活性点がバインダーで被覆されるので触媒性能が低下する。
粉体触媒をコートしたあと400℃〜600℃程度、より好ましくは550℃〜600℃の温度で、空気中焼成することによりバインダーが分解・焼結して強固なコート膜が形成される。
【0008】
【実施例】
以下、実施例に基づき、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
ジルコニア(東ソー社製;TZ-0;比表面積15m2/g)10gを、シスジニトロジアンミン白金[Pt(NO2)2 (NH3)2]0.33 gを69%硝酸 0.5mlに加熱溶解した溶液と、8.8重量%のイリジウムを含有する塩化イリジウム酸水溶液5.8gと、純水30mlとを混合溶解した溶液に浸漬、蒸発乾固し、400℃で2時間焼成して粉体状触媒を得た。
この粉体触媒10.7gにジルコニアゾル(日産化学社製;NZS-30A;ジルコニアとして31重量%含有)10g、水50mlを加えボールミルで混合してスラリーを調製した。これに、1平方インチ当たり200の貫通口を有するコージェライトハニカムを、浸漬し引き上げて乾燥する工程を繰り返して粉体触媒をコートし、次いで600℃で4時間焼成した。ハニカムの単位体積当たりのジルコニアのコート量は210g、担持量はIrが8.2g/l, Ptが3.2g/lであった。
【0009】
この触媒のメタン酸化性能を排ガスを模擬した条件で測定した。ハニカム触媒1.5mlを充填した触媒層を400℃に保って、メタン1000ppm, 酸素10%, 二酸化炭素6%、水蒸気10%、二酸化硫黄8ppm、残部窒素のガスを、GHSV(ガス時間当たり空間速度)40,000h-1の条件で流通して、触媒層前後のメタン濃度をガスクロマトグラフで分析し、触媒層におけるメタン転化率を算出した。
【0010】
結果を表1に示す。10時間後で20%のメタン転化率を保っていた。
実施例2
実施例1と同様の方法で、触媒1リットル当たり、ジルコニアを500g, イリジウムを29g、白金を15g担持する触媒を調製した。実施例1と同様の方法でメタン転化率の経時変化を測定したところ、40時間後まで約35%のメタン転化率で安定に推移した。
実施例3
実施例1と同様の方法で、触媒1リットル当たり、ジルコニアを340g, イリジウムを26g、白金を13g担持する触媒を調製した。実施例1と同様にしてメタン転化率の経時変化を測定したところ、約35%のメタン転化率で安定に推移した。
比較例1
ジルコニア(東ソー社製;TZ-0;比表面積15m2/g)15g、ジルコニアゾル(日産化学社製;NZS-30A;ジルコニアとして31重量%含有)30g、水45mlをボールミルで混合してスラリーを調製した。これに、1平方インチ当たり200の貫通口を有するコージェライトハニカムを、浸漬し引き上げて乾燥する工程を繰り返してジルコニアをコートし、次いで600℃で4時間焼成した。ジルコニアのコート量はハニカム1リットル当たり370gであった。
8.8重量%のイリジウムを含有する塩化イリジウム酸水溶液とジニトロジアンミン白金を硝酸に溶解した溶液とを混合し、0.037gのイリジウムと0.019gの白金を含む1mlの水溶液を調製した。この溶液を、前記のジルコニアコートハニカム(1.5ml)に吸収・乾燥を繰り返して、イリジウムおよび白金を担持したハニカム触媒を得た。ハニカムの単位体積当たりの担持量はIrが25g/l, Ptが13g/lであった。
【0011】
実施例1と同様の方法で、このハニカム触媒のメタン酸化性能を測定した。40時間後にはメタン転化率は約20%まで低下した。ジルコニアコート量およびイリジウムと白金の担持量がほぼ同等の実施例3と比べてメタン酸化性能が劣ることが明らかである。
比較例2
ジルコニア(東ソー社製;TZ-0;比表面積15m2/g)10g、ジルコニアゾル(日産化学社製;NZS-30A;ジルコニアとして31重量%含有)10g、水30mlと8.8重量%のイリジウムを含有する塩化イリジウム酸水溶液5.9gとを混合し、さらにジニトロジアンミン白金0.43gを69%硝酸0.6mlに加熱溶解した溶液を加え、ボールミルで混合してスラリーを調製した。これに、1平方インチ当たり200の貫通口を有するコージェライトハニカムを、浸漬し引き上げて乾燥する工程を繰り返してイリジウム、白金、ジルコニアをコートし、次いで600℃で4時間焼成した。このハニカム触媒は1リットル当たり、ジルコニアを210g, イリジウムを8.1g、白金を4.0g担持していた。実施例1と同様の方法でメタン転化率の経時変化を測定したところ、測定開始1時間後で4%に過ぎなかった。ジルコニアコート量およびイリジウムと白金の担持量がほぼ同等の実施例1と比べてメタン酸化性能が著しく劣ることがわかる。
【0012】
【表1】
【0013】
以上の結果から、予めジルコニア粉体にイリジウム及び白金を担持した粉体状触媒を調製し、次いで、この粉体状触媒にバインダーを加えてスラリーとし、これに耐火性基材を浸漬することによって製造される実施例の触媒が安定して高い活性を示す一方、耐火性基材にジルコニアをコートし、ついでイリジウムを担持して製造した(比較例1)あるいは、ジルコニア、バインダー、およびイリジウム塩を混合してスラリーとしたものに耐火性基材を浸漬して、耐火性基材にジルコニアおよびイリジウムを同時に付着させる方法で製造した(比較例2)触媒の活性レベルは低いことが明らかである。
【0014】
【発明の効果】
本発明のメタンの酸化用触媒は、燃焼排ガス条件のような水蒸気を大量に含む排ガス条件にあっても高いメタン酸化活性を持ち、また硫黄酸化物による活性阻害に対して高い抵抗性を持つために、例えば400℃程度といった比較的低い温度であっても高いメタン酸化性能が長期にわたって高く維持される。
Claims (2)
- ジルコニアにイリジウム及び白金を担持した粉体触媒を調製し、次いで該粉体触媒にバインダーを加えてスラリーとしてハニカム状の耐火性基材上にコートすることにより製造され、少なくとも水蒸気若しくは硫黄酸化物を含むメタン含有燃焼排ガス中のメタンを酸化除去するための酸化用触媒。
- ジルコニアにイリジウム及び白金を担持した粉体触媒を調製し、次いで該粉体触媒にバインダーを加えてスラリーとしてハニカム状の耐火性基材上にコートすることにより製造された酸化用触媒に、少なくとも水蒸気若しくは硫黄酸化物を含むメタン含有燃焼排ガスを接触させ、当該メタン含有燃焼排ガス中のメタンを酸化除去する燃焼排ガス中のメタンの酸化除去方法。
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