JP2007090331A - 排ガス中のメタンの酸化除去用触媒および排ガス中のメタンの酸化除去方法 - Google Patents

排ガス中のメタンの酸化除去用触媒および排ガス中のメタンの酸化除去方法 Download PDF

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Abstract

【課題】メタン、硫黄酸化物および過剰の酸素を含む燃焼排ガス中のメタンの酸化除去において、低い温度でも高いメタン分解能を発揮する触媒、ならびに、この触媒を用いた排ガス中のメタンの酸化除去方法を提供する。
【解決手段】メタン、硫黄酸化物および過剰の酸素を含む燃焼排ガス中のメタンを酸化除去するための触媒であって、2〜60m2/gの比表面積を有する単斜晶の酸化ジルコニウム担体に白金およびルテニウムを担持してなる触媒;ならびに、メタン、硫黄酸化物および過剰の酸素を含む燃焼排ガス中のメタンを酸化除去する方法であって、該排ガスを350℃〜450℃の温度で、前記触媒に接触させる方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、メタン、硫黄酸化物および過剰の酸素を含む燃焼排ガス中のメタンの酸化除去用触媒および酸化除去方法に関する。
本明細書において、「過剰の酸素を含む」とは、本発明の触媒に接触させる被処理ガス(燃焼排ガス)が、そこに含まれる炭化水素、一酸化炭素などの還元性成分を完全に酸化するのに必要な量以上に、酸素、窒素酸化物などの酸化性成分を含んでいることを意味する。
排ガス中の炭化水素の酸化除去触媒として、白金、パラジウムなどの白金族金属を担持した触媒が高い性能を示すことが知られている。例えば、アルミナ担体に白金とパラジウムとを担持した排ガス浄化用触媒が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、このような触媒を用いても、メタン発酵ガスや天然ガスの燃焼排ガスのように、排ガス中の炭化水素の主成分がメタンである場合には、メタンが高い化学的安定性を有するために、十分なメタン除去が達成されないという問題がある。
さらに、燃焼排ガスには、燃料中に含まれている硫黄化合物に由来する硫黄酸化物などの反応阻害物質が必然的に含まれているので、触媒表面に反応阻害物質が析出することにより、触媒活性が経時的に著しく低下することは避けがたい。
例えば、ランパートら(Lampert et al.)は、パラジウム触媒を用いてメタン酸化を行った場合に、わずかに0.1ppmの二酸化硫黄が存在するだけで、数時間内にその触媒活性がほとんど失われることを示して、硫黄酸化物の存在が触媒活性に著しい悪影響を与えることを明らかにしている(非特許文献1参照)。
さらに、過剰量の酸素が存在する排ガスに含まれる低濃度炭化水素の酸化用触媒として、ハニカム基材上にアルミナ担体を介して7g/l以上のパラジウムおよび3〜20g/lの白金を担持した触媒も開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、この触媒を用いても、長期にわたる耐久性は十分ではなく、触媒活性の経時的な劣化が避けられない。
このように、従来技術の大きな問題点は、メタンに対して高い除去率が得られないこと、さらに硫黄酸化物が共存する条件下では除去率が大きく低下することである。
このような実状に鑑みて、ジルコニア担体にパラジウムまたはパラジウムと白金とを担持させた触媒が、硫黄酸化物共存下でも高いメタン酸化活性を維持し続けることが開示されている(特許文献3参照)。しかしながら、この触媒は、特に約400℃以下の低温域でのメタン酸化活性が低いため、低温で十分な性能を確保するには多量の触媒を必要とする。
メタンを含有し酸素を過剰に含む燃焼排ガス中の炭化水素の浄化用触媒であって、酸化ジルコニウムに、白金、パラジウム、ロジウムおよびルテニウムからなる群より選択される少なくとも1種ならびにイリジウムを担持してなり、比表面積が2〜60m2/gである触媒が、硫黄酸化物共存下で、400℃程度という低い温度であっても高いメタン酸化活性を維持し続けることも開示されている(特許文献4参照)。しかしながら、この触媒は、非常に希少な貴金属であるイリジウムを必須とする点が実用上の課題となる。
メタンの酸化には、パラジウムが有効であるというのが定説であった(非特許文献2、非特許文献3参照)のに対し、パラジウムを含まず、酸化スズからなる担体に白金のみを担持した触媒が、燃焼排ガス中のメタンの酸化除去に活性を示すことが示されている文献もある(特許文献5参照)。しかしながら、この触媒でも400℃以下でのメタン除去性能は十分とは言えない上に、高価な白金を多量に必要とする点も実用上の課題となる。
一方、クエン酸を使用する特定の方法により、活性アルミナなどの無機質担体に白金およびロジウムの少なくとも1種とイリジウムおよびルテニウムの少なくとも1種とを併せて担持させた排気ガス浄化用触媒を製造する方法が開示されている(特許文献6参照)。この文献によれば、イリジウムおよび/またはルテニウムが、白金および/またはロジウムと融点の高い固溶体を形成するので、得られた触媒の耐熱性が向上するとされている。しかしながら、この文献は、得られた触媒のNOx転化率が改善されたことを示すのみで、排気ガスに含まれる炭化水素の中でも特に難分解性のメタンの酸化分解については、一切教示していない。
Pt,Rh,PdおよびRuなどを活性アルミナなどに担持した触媒がメタンの燃焼に活性を示す文献もあるが(特許文献7参照)、具体的な反応成績は、アルミナにパラジウムを担持した触媒についてしか示されていない。
PdおよびRuをゼオライトに担持した触媒が排ガス中の窒素酸化物をメタンを用いて還元除去する反応に活性を示すことも開示されているが(特許文献8参照)、その長期的な耐久性は不明である。
Pdと、Ru、Ir,Cuから選ばれる少なくとも1種の金属元素とをアルミナに担持した触媒が排ガス中のメタンの酸化除去に活性を示すことも知られているが(特許文献9参照)、その長期的な耐久性は不明である。
PdおよびRuを硫酸根ジルコニアに担持した触媒が排ガス中の窒素酸化物をメタンを用いて還元除去する反応に活性を示すことが開示されている文献もあるが(特許文献10参照)、400℃付近の低温におけるメタン除去率は十分ではない。
特許文献11には、Rhを担持した硫酸根ジルコニアと白金および/またはRuを担持した無機担体とを混合してなる触媒が、排ガス中の窒素酸化物をメタンを用いて還元除去する反応に活性を示すことが開示されている。しかしながら、この触媒のメタン除去率は十分なものではない。
特許文献12には、化学式La3.6Ru4O13で示されるペロブスカイト型ルテニウム酸ランタンがメタンの酸化除去に活性を示すことが示されているが、その性能は十分なものではない。
特許文献13には、水蒸気存在下においてもメタンを還元剤に用いて高い脱硝率でNOxを分解できると共に、メタンを高い酸化率で分解できる排ガス浄化方法として、所定の上流段触媒に加え、炭化水素を酸化分解するために、パラジウム、ルテニウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも一種を担体に対する担持量0.1〜10%で金属酸化物担体に担持してなる触媒を用いる方法が開示されている。該金属酸化物担体としては、硫酸根を含むジルコニア担体、タングステンを含むジルコニア担体、ジルコニア担体等が例示されている。しかしながら、反応成績は、タングステンを含むジルコニアあるいはチタニアを担体とし、これにPdとともにRuを担持したものを下流段触媒とした場合しか示されていない。
特開昭51-106691号公報 特開平8-332392号公報 特開平11-319559号公報 国際公開公報WO2002/040152 特開2004-351236号公報 特開平3-98644号公報 特開平5-195757号公報 特開平11-128747号公報 特開平11-137998号公報 特開2001-104792号公報 特開2002-45697号公報 特開2003-321225号公報 特開2004-160283号公報 アプライド キャタリシス B:エンバイロンメンタル(Applied Catalysis B: Environmental),第14巻,1997年,p.211-223 インダストリアル アンド エンジニアリング ケミストリー(Industrial and Engineering Chemistry),第53巻,1961年,p.809-812 インダストリアル アンド エンジニアリング ケミストリー プロダクト リサーチ アンド ディベロップメント(Industrial and Engineering Chemistry Product Research and Development),第19巻,1980年,p.293-298
本発明の課題は、メタン、硫黄酸化物および過剰の酸素を含む燃焼排ガス中のメタンの酸化除去において、低い温度でも高いメタン分解能を発揮する触媒、ならびに、この触媒を用いた排ガス中のメタンの酸化除去方法を提供することにある。
本発明は、下記に示すとおりの排ガス中のメタンの酸化除去用触媒および排ガス中のメタンの酸化除去方法を提供するものである。
項1. メタン、硫黄酸化物および過剰の酸素を含む燃焼排ガス中のメタンを酸化除去するための触媒であって、2〜60m2/gの比表面積を有する単斜晶の酸化ジルコニウム担体に白金およびルテニウムを担持してなる触媒。
項2. メタン、硫黄酸化物および過剰の酸素を含む燃焼排ガス中のメタンを酸化除去する方法であって、該排ガスを350℃〜450℃の温度で、2〜60m2/gの比表面積を有する単斜晶の酸化ジルコニウム担体に白金およびルテニウムを担持してなる触媒に接触させる方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の触媒は、燃焼排ガス中のメタンの酸化除去用触媒であって、担体としての酸化ジルコニウムに、触媒活性成分としての白金およびルテニウムを担持してなる(ただし、イリジウムを担持しない)ことを特徴とする。
担体である酸化ジルコニウムの表面積が小さすぎる場合には、触媒活性成分を高分散に保つことができなくなる。一方、表面積が大きすぎる場合には、酸化ジルコニウムの熱安定性が十分でなく、触媒の使用中に酸化ジルコニウム自体の焼結が進行するおそれがある。
酸化ジルコニウムの比表面積(本明細書においては、BET法による比表面積を言う)は、通常2〜60m2/g程度であり、好ましくは5〜30m2/g程度である。
酸化ジルコニウムの結晶形は単斜晶(本明細書においては、実質的に単斜晶である場合を含む)であり、質量基準で10%以下の正方晶および立方晶の酸化ジルコニウムを含んでいても良い。なお、結晶相含有比率の測定には、X線回折測定などの公知の方法が適用できる。
このような酸化ジルコニウムは、例えば、市販の触媒担体用ジルコニア(ただし、セリウムやイットリウム等の添加物を含まないもの)あるいは水酸化ジルコニウムを、空気などの酸化雰囲気下において、550℃〜1000℃程度、好ましくは600℃〜800℃程度で焼成する方法により調製することができる。
触媒担体には、コージェライト等の支持体への付着性や焼結性の改善のため、アルミナ、シリカなどの酸化ジルコニウム以外の微量の成分を含んでいても良いが、これらの成分は質量基準で2%を超えないことが望ましい。
酸化ジルコニウムに対する触媒活性成分の担持量は、少なすぎる場合には触媒活性が低くなるのに対し、多すぎる場合には粒径が大きくなって、担持された触媒活性成分が有効に利用されなくなる。
ルテニウムの担持量は、酸化ジルコニウムに対する質量比で通常0.5〜20%程度であり、好ましくは1〜5%程度である。
白金の担持量は、酸化ジルコニウムに対する質量比で通常0.1〜5%程度であり、好ましくは0.5〜2%程度である。また、白金の担持量は、ルテニウムに対する質量比で2〜100%程度とすることが好ましく、5〜50%程度とすることがより好ましい。
本発明の触媒は、例えば、ルテニウムイオンおよび白金イオンを含む溶液を酸化ジルコニウムに含浸させ、乾燥して焼成することにより得られる。
含浸操作は、クロロ錯体、アンミン錯体、硝酸塩などの水溶性化合物を純水に溶解することにより調製した水溶液を用いて行っても良く、あるいはアセチルアセトナト錯体などの有機金属化合物をアセトンなどの有機溶媒に溶解した有機溶媒溶液を用いて行っても良い。
水溶性化合物としては、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、ヘキサアンミンルテニウム硝酸塩、トリニトラトニトロシルルテニウム、塩化白金酸、テトラアンミン白金硝酸塩、ジニトロジアンミン白金などが例示される。なお、溶解度が低く、純水に溶解して所望の濃度が得られない場合は、溶解性を高めるために、希硝酸やアンモニア水を添加しても良い。
また、有機金属化合物としては、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)白金などが例示される。
含浸操作において、金属化合物の種類によっては、混合により沈殿を生じることがある。このような場合には、酸化ジルコニウム担体に対し、順次異なる金属を担持させても良い。例えば、担体に第1の活性成分を担持し、必要ならば、乾燥した後あるいは乾燥および仮焼した後に、第2の活性成分の担持操作を行うことができる。
含浸時間は、所定の担持量が確保される限り、特に制限されないが、通常1〜50時間程度、好ましくは3〜20時間程度である。
次いで、所定の金属成分を担持させた酸化ジルコニウムを、必要に応じて蒸発乾固または乾燥させた後に、焼成する。
焼成は、空気の流通下に行えばよい。あるいは、空気または酸素と窒素などの不活性ガスとを適宜混合したガスなどの酸化性ガスの流通下において行っても良い。
焼成温度は、高すぎる場合には、担持された金属の粒成長が進んで高い活性が得られない。逆に、低すぎる場合には、焼成が十分に行われないので、触媒の使用中に担持された金属粒子が粗大化して、安定した活性が得られないおそれがある。従って、安定して高い触媒活性を得るためには、焼成温度は、450〜650℃程度とするのが好ましく、500〜600℃程度とするのがより好ましい。
焼成時間は、特に制限されないが、通常1〜50時間程度であり、好ましくは3〜20時間程度である。
本発明の触媒は、ペレット状やハニカム状などの任意の形状に成形して用いても良く、耐火性ハニカム上にウオッシュコートして用いてもよい。好ましくは、耐火性ハニカム上にウオッシュコートして用いる。
耐火性ハニカム上にウオッシュコートする場合には、上記の方法で調製した触媒をスラリー状にしてウオッシュコートしても良く、あるいは、あらかじめ酸化ジルコニウムを耐火性ハニカム上にウオッシュコートした後に、上記の含浸手法に従って活性成分を担持しても良い。いずれの場合にも、必要に応じて、バインダーを添加することができる。
本発明の触媒の比表面積は、通常2〜60m2/g程度であり、好ましくは5〜30m2/g程度である。
本発明の方法が処理対象とするのは、メタン、硫黄酸化物および過剰の酸素を含む燃焼排ガスである。燃焼排ガス中には、エタン、プロパンなどの低級炭化水素や一酸化炭素、含酸素化合物などの可燃性成分が含まれていても差し支えない。これらはメタンに比して易分解性なので、本発明の方法により、メタンと同時に容易に酸化除去できる。
排ガス中の可燃性成分の濃度は、特に制限されないが、高すぎる場合には触媒層で極端な温度上昇が生じ、触媒の耐久性に悪影響を及ぼす可能性があるので、メタン換算で約5000ppm以下とするのが好ましい。
本発明の排ガス中のメタンの酸化除去方法は、上記のようにして得られた触媒を用いることを特徴とする。
触媒の使用量が少なすぎる場合には、有効な浄化率が得られないので、ガス時間当たり空間速度(GHSV)で200,000h-1以下となる量を使用するのが好ましい。一方、ガス時間当たり空間速度(GHSV)を低くするほど触媒量が多くなるので、浄化率は向上するが、GHSVが低すぎる場合には、経済的に不利であり、また触媒層での圧力損失が大きくなる。従って、GHSVの下限は、1000h-1程度とするのが好ましく、5,000h-1程度とするのがより好ましい。
被処理ガスである排ガス中の酸素濃度は、酸素を過剰に含む限り特に制限されないが、体積基準として約2%以上(より好ましくは約5%以上)であって且つ炭化水素などからなる還元性成分の酸化当量の約5倍以上(より好ましくは約10倍以上)の酸素が存在するのが好ましい。
排ガス中の酸素濃度が極端に低い場合には、反応速度が低下するおそれがあるので、予め所要の量の空気、酸素過剰の排ガスなどを混ぜてもよい。
本発明の排ガス中のメタンの酸化除去触媒は、高い活性を有するが、排ガス処理温度が低すぎる場合には、活性が下がり、所望のメタン転化率が得られない。一方、処理温度が高すぎる場合には、触媒の耐久性が悪化するおそれがある。
触媒層の温度は、通常300〜500℃程度であり、好ましくは350〜450℃程度である。
また、被処理ガス中の炭化水素の濃度が著しく高いときには、触媒層で急激な反応が起こって、触媒の耐久性に悪影響を及ぼすので、触媒層での温度上昇が、通常約150℃以下、好ましくは約100℃以下となる条件で行うのが好ましい。
燃焼排ガス中には、体積基準で通常5〜15%程度の水蒸気が含まれているが、本発明によれば、このように水蒸気を含む排ガスに対しても、有効なメタン酸化除去が達成される。
また、燃焼排ガス中には、触媒活性を著しく低下させる硫黄酸化物が通常含まれるが、本発明の触媒は、硫黄酸化物による活性低下に対して特に高い抵抗性を示すので、体積基準で0.1〜30ppm程度の硫黄酸化物が含まれる場合でも、メタン転化率には実質的に影響がない。
本発明によれば、排ガス中のメタンの酸化除去を低廉に行うことが可能となる。また、メタン発酵ガスや天然ガス系都市ガスなどの燃焼排ガスや各種プロセスガスなどの硫黄酸化物を含有する排ガスを本発明の方法で処理することにより、排ガス中に含まれるメタンを酸化除去して、その反応熱を回収してエネルギーとして有効利用できるので、地球環境の改善にも寄与する。
本発明の触媒は、水蒸気や硫黄酸化物による活性阻害に対して非常に優れた抵抗性を示すので、燃焼排ガスのように水蒸気を大量に含み、且つ硫黄酸化物を含む排ガスにおいて、低い温度でも高いメタン酸化活性を発揮する。
また、本発明の触媒は、比較的廉価なルテニウムを主たる活性金属としているので、高価な貴金属の使用量を低減でき、経済性にも優れている。
以下、実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
酸化ジルコニウム(日本電工社製「N-PC」、比表面積28m2/g)を空気中で800℃で6時間焼成して、焼成酸化ジルコニウム(比表面積15m2/g、単斜晶)を得た。この焼成酸化ジルコニウムは、質量基準で95%以上が単斜晶からなっていることをX線回折測定により確認した。ヘキサアンミンルテニウム硝酸塩(Ru(NH3)6(NO3)3)およびテトラアンミン白金硝酸塩(Pt(NH3)4(NO3)2)を純水に加熱溶解して、Ruとして1.5gおよびPtとして0.3gを溶解する水溶液を調製し、この水溶液を前記の焼成酸化ジルコニウム(30g)に含浸させた。蒸発乾固後、空気中で550℃で6時間焼成して5%Ru-1%Pt/ジルコニア触媒を得た。この触媒の比表面積は15m2/gであり、X線回折測定によりジルコニアの95%以上が単斜晶であることがわかった。
比較例1
テトラアンミン白金硝酸塩を用いなかった他は実施例1と同様にして、5%Ru/ジルコニア触媒を得た。
比較例2
テトラアンミン白金硝酸塩を純水に加熱溶解して、Ptとして0.8 gを溶解する水溶液を調製し、この水溶液を実施例1と同様にして得た焼成酸化ジルコニウム(40g)に含浸させた。蒸発乾固後、空気中で550℃で6時間焼成して2%Pt/ジルコニア触媒を得た。
比較例3
硝酸パラジウムおよびテトラアンミン白金硝酸塩を、少量の硝酸を加えた純水に溶解して、Pdとして3gおよびPtとして0.6gを溶解する水溶液を調製し、この水溶液を実施例1と同様にして得た焼成酸化ジルコニウム(60g)に含浸させた。蒸発乾固後、空気中で550℃で6時間焼成して5%Pd-1%Pt/ジルコニア触媒を得た。
比較例4
ヘキサアンミンイリジウム硝酸塩(Ir(NH3)6(NO3)3)およびテトラアンミン白金硝酸塩を純水に溶解して、Irとして2.25gおよびPtとして0.45gを溶解する水溶液を調製し、この水溶液を実施例1と同様にして得た焼成酸化ジルコニウム(45g)に含浸させた。蒸発乾固後、空気中で550℃で6時間焼成して5%Ir-1%Pt/ジルコニア触媒を得た。
比較例5
ヘキサアンミンイリジウム硝酸塩、テトラアンミン白金硝酸塩、ヘキサアンミンルテニウム硝酸塩および28%アンモニア水0.5 mlを純水に溶解して、Ir、RuおよびPtを、それぞれ金属換算で0.6g、0.12gおよび0.12g溶解する水溶液を調製し、この水溶液を実施例1と同様にして得た焼成酸化ジルコニウム(12g)に含浸させた。蒸発乾固後、空気中で550℃で6時間焼成して5%Ir-1%Ru-1%Pt/ジルコニア触媒を得た。
実施例2(活性評価試験)
実施例1および比較例1〜5において調製した触媒をそれぞれ打錠成形した後、各成形体1.5ml(約1.4g)を石英製反応管(内径14mm)に充填した。次いで、メタン1200ppm、酸素10%、水蒸気10%(いずれも体積基準)および残部窒素からなる組成を有するガスを、毎時120リットル(標準状態における体積)の流量で反応管に流通し(=GHSV(ガス時間当たり空間速度)として80,000h-1)、触媒層温度375℃、400℃、425℃および450℃におけるメタン転化率を測定した(初期転化率)。反応層前後のガス組成は、水素炎イオン化検知器を有するガスクロマトグラフにより測定した。その後、触媒層温度を450℃に保ったまま、反応ガスに二酸化硫黄3ppmを添加して反応を継続し、20、60、140、300時間後のメタン転化率を同様に各温度で測定した。
メタン転化率(%)の測定結果を表1に示す。ここで、メタン転化率とは、以下の式によって求められる値である。
CH4転化率(%)=100×(1−CH4-OUT/CH4-in)
式中、「CH4-OUT」とは触媒層出口のメタン濃度を示し、「CH4-in」とは触媒層入口のメタン濃度を示す。
Figure 2007090331
表1から明らかなように、本発明の触媒(実施例1)は、低温でも高い性能を示す上に、実質的に硫黄酸化物によって阻害を受けない。さらに、300時間後の活性が初期活性とほとんど変わらないことから示されるように、長期にわたって安定した触媒活性を維持する。
酸化ジルコニウムにルテニウムのみを担持した触媒(比較例1)は、ほとんど活性を示さない。また、白金のみを担持した場合(比較例2)には、初期活性はある程度あるものの、経時的な活性低下が著しい。
Pd-Pt/ジルコニア触媒(比較例3)は、初期活性は非常に高いものの、硫黄酸化物の影響が比較的大きく、450℃より低い温度では活性は十分ではない。
本発明の触媒(実施例1)は、資源的に希少なIrを含まないにもかかわらず、Ir-Pt/ジルコニア触媒(比較例4)あるいはIr-Ru-Pt/ジルコニア触媒(比較例5)と同等の活性を示すと共に、耐久性に関しては、これらよりもむしろ優れていることが明らかである。
この耐久性について以下に詳述する。図1は、375℃におけるメタン転化率と耐久試験時間(二酸化硫黄を添加後の450℃におけるガス流通時間)との関係を示す。触媒の劣化は、時間の対数に対して直線関係になることが多いため、横軸は対数スケールとした。線形近似による近似直線を併せて示した。実施例1の触媒(Ru-Pt/ジルコニア触媒)では、劣化はほとんど見られない。これに対し、比較例3の触媒(Pd-Pt/ジルコニア触媒)は、メタン転化率の値自体も低いが、さらに経時的な劣化傾向も見られる。比較例4の触媒(Ir-Pt/ジルコニア触媒)および比較例5の触媒(Ir-Ru-Pt/ジルコニア触媒)は、メタン転化率自体は、実施例1の触媒(Ru-Pt/ジルコニア触媒)よりやや高いものの、経時的な劣化が大きいため、1000時間程度を過ぎると、実施例1の触媒(Ru-Pt/ジルコニア触媒)よりも性能が下回ると推定される。燃焼排ガスの浄化用触媒には、通常10,000時間以上の寿命が求められる。従って、全使用期間を通じて判断すれば、本発明の触媒の方が高い性能が得られることになり、本発明の触媒の優位性は明らかである。
実施例3
Ruとして15質量%を含有するトリニトラトニトロシルルテニウム水溶液(硝酸18質量%含有)16.7gを純水20gで希釈し、シスジニトロジアンミン白金(Pt(NO2)2(NH3)2)0.82gを加えて加熱溶解した。この溶液に、実施例1と同様にして得た焼成酸化ジルコニウム(50g)を15時間浸漬した。蒸発乾固後、空気中で550℃で6時間焼成して5%Ru-1%Pt/ジルコニア(2)触媒を得た。
実施例4
Ruとして15質量%を含有するトリニトラトニトロシルルテニウム水溶液(硝酸18質量%含有)15gを純水20gで希釈し、シスジニトロジアンミン白金(Pt(NO2)2(NH3)2)0.15gを加えて加熱溶解した。この溶液に、実施例1と同様にして得た焼成酸化ジルコニウム(45g)を15時間浸漬した。蒸発乾固後、空気中で550℃で6時間焼成して5%Ru-0.2%Pt/ジルコニア触媒を得た。
実施例5
シスジニトロジアンミン白金(Pt(NO2)2(NH3)2)を0.37gとした他は実施例4と同様にして、5%Ru-0.5%Pt/ジルコニア触媒を得た。
実施例6
シスジニトロジアンミン白金(Pt(NO2)2(NH3)2)を1.48gとした他は実施例4と同様にして、5%Ru-2%Pt/ジルコニア触媒を得た。
実施例7
シスジニトロジアンミン白金(Pt(NO2)2(NH3)2)を2.22gとした他は実施例4と同様にして、5%Ru-3%Pt/ジルコニア触媒を得た。
実施例8
水酸化ジルコニウム(林純薬工業社製、ZrO2として79質量%含有)を空気中で550℃で6時間焼成して、酸化ジルコニウム(比表面積41m2/g)を得た。この酸化ジルコニウムは、質量基準で単斜晶91%および正方晶9%からなっていることがX線回折測定によりわかった。Ruとして15質量%を含有するトリニトラトニトロシルルテニウム水溶液(硝酸18質量%含有)5gを純水10gで希釈し、シスジニトロジアンミン白金(Pt(NO2)2(NH3)2)0.25gを加えて加熱溶解した。この溶液に、前記の酸化ジルコニウム(15g)を15時間浸漬した。蒸発乾固後、空気中で550℃で6時間焼成して5%Ru-1%Pt/ジルコニア(3)触媒を得た。
実施例9(活性評価試験)
実施例3〜8の触媒について、実施例2と同様にして活性評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2007090331
触媒調製条件の違い(用いた金属化合物など)もあり、活性レベルにはわずかな違いがあるものの、実施例3の5%Ru-1%Pt/ジルコニア(2)触媒も、5%Ru-1%Pt/ジルコニア触媒(実施例1)と同様に、活性の経時的安定性が優れており、且つ硫黄酸化物の影響を実質的に受けないことが明らかである。
Pt担持量(ジルコニアに対する質量比;以下同様)を0.2%(実施例4)から3%(実施例7)まで増加させると、活性レベルは次第に向上する。ただし、2%(実施例6)を超えると、活性はPt担持量に見合っては向上しなくなるので、性能と経済性を考慮すると、Ptの担持量は、酸化ジルコニウムに対する質量比で0.5〜2%程度とするのが好ましいことがわかる。
比表面積41m2/gで9%の正方晶を含む酸化ジルコニウム担体を用いて調製された5%Ru-1%Pt/ジルコニア(3)触媒(実施例8)は、5%Ru-1%Pt/ジルコニア(2)触媒(実施例3)に比較すれば、活性レベルはやや劣るものの、活性の経時的安定性に優れ、且つ硫黄酸化物の影響を実質的に受けないことでは変わらない。
比較例6
テトラアンミン白金硝酸塩を希アンモニア水(NH3 1質量%)に溶解して、Ptとして0.72gを溶解する水溶液を調製し、この水溶液を実施例1と同様にして得た焼成酸化ジルコニウム(12g)に含浸させた。蒸発乾固後、空気中で550℃で6時間焼成して6%Pt/ジルコニア触媒を得た。
比較例7
硝酸セリウム(III)6水和物(Ce(NO3)3・6H2O)63.6gを純水74gに溶解して水溶液を調製した。水酸化ジルコニウム(林純薬工業社製、ZrO2として87.6wt%含有)100gをこの水溶液に15時間浸漬した後、ロータリーエバポレータで蒸発乾固し、さらに120℃の乾燥器で3時間乾燥し、最後に空気中で700℃で6時間焼成してセリア-ジルコニア担体を得た。このセリア-ジルコニア担体の比表面積は34m2/gであり、X線回折の結果、少なくとも80%は正方晶であることがわかった。
担体としてこのセリア-ジルコニア担体を用いた他は実施例8と同様にして、5%Ru-1%Pt/セリア-ジルコニア触媒を得た。
比較例8
担体としてNa型ZSM-5(スイスChemie Uetikon社製、SiO2/Al2O3比 30、Na 2.5質量%)を用いた他は実施例8と同様にして、5%Ru-1%Pt/Na-ZSM-5触媒を得た。
比較例9
比較例8で用いたものと同じNa型ZSM-5を、5倍等量の酢酸アンモニウム水溶液を用いて、60℃で6時間イオン交換した後、500℃で焼成して、H型ZSM-5(Na 0.1質量%)とした。この担体を用いた他は実施例8と同様にして、5%Ru-1%Pt/H-ZSM-5触媒を得た。
比較例10
触媒担体用チタニア(サンゴバン−ノートン社製「XT25376」、3mm押し出し成形品、比表面積141m2/g)を、乳鉢で粉砕した。この担体を用いた他は実施例8と同様にして、5%Ru-1%Pt/チタニア触媒を得た。
比較例11
触媒担体用チタニア(石原産業社製「MC-50」、比表面積62m2/g)を用いた他は実施例8と同様にして、5%Ru-1%Pt/チタニア(2)触媒を得た。
比較例12
触媒担体用アルミナ(サンゴバン−ノートン社製「SA6276」、3mm球状成形品、比表面積230m2/g)を800℃で6時間焼成した後、破砕してふるいで粒径を約1mmに揃えた(比表面積179m2/g)。この担体を用いた他は実施例8と同様にして、5%Ru-1%Pt/アルミナ触媒を得た。
比較例13(活性評価試験)
比較例6〜12の触媒について、実施例2と同様にして活性評価を行った。ただし、比較例12の触媒については、打錠成形せず、そのままの形で活性評価に用いた。触媒量は、いずれも1.45gとした。触媒の体積は、6%Pt/ジルコニア触媒(比較例6)が1.5ml、5%Ru-1%Pt/セリア-ジルコニア触媒(比較例7)が1.6ml、5%Ru-1%Pt/Na-ZSM-5触媒(比較例8)が2.6ml、5%Ru-1%Pt/H-ZSM-5触媒(比較例9)が3.0ml、5%Ru-1%Pt/チタニア触媒(比較例10)が2.0ml、5%Ru-1%Pt/チタニア(2)触媒(比較例11)が2.2ml、5%Ru-1%Pt/アルミナ触媒(比較例12)が3.5mlであった。ガス流量は、いずれの触媒の評価でも、実施例2と同じく毎時120リットル(標準状態における体積)としたので、GHSVとしては34,000h-1(5%Ru-1%Pt/アルミナ触媒)〜80,000h-1(6%Pt/ジルコニア触媒)である。結果を表3に示す。
Figure 2007090331
Ptのみを酸化ジルコニウム担体に担持した場合は、Ptの担持量を高めることにより、初期活性は高まるものの、経時的な劣化は回避できず、20時間後には、本発明の触媒より低い活性レベルに低下する(比較例6)。酸化ジルコニウムを主成分とする担体でも、他の成分が共存したり、単斜晶以外の成分が多く存在する担体では、活性も耐久性も劣る(比較例7)。
ゼオライトを担体とした場合は(H型ゼオライトでは比較的高い初期活性が得られているが)、硫黄酸化物による被毒が大きく、耐久性は乏しい(比較例8、比較例9)。
チタニアやアルミナを担体とした場合は、初期活性が低い上に、耐久性も乏しい(比較例10〜12)。
メタン転化率と耐久試験時間との関係を示す図である。

Claims (2)

  1. メタン、硫黄酸化物および過剰の酸素を含む燃焼排ガス中のメタンを酸化除去するための触媒であって、2〜60m2/gの比表面積を有する単斜晶の酸化ジルコニウム担体に白金およびルテニウムを担持してなる触媒。
  2. メタン、硫黄酸化物および過剰の酸素を含む燃焼排ガス中のメタンを酸化除去する方法であって、該排ガスを350℃〜450℃の温度で、2〜60m2/gの比表面積を有する単斜晶の酸化ジルコニウム担体に白金およびルテニウムを担持してなる触媒に接触させる方法。
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