JP4161443B2 - 金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは、製膜性に優れ、剛性が高く、金属化を行った際に金属膜との接着性に優れ、かつ金属光沢の得られやすい金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
二軸配向ポリプロピレンフィルムは、優れた防湿性、強度、透明性、表面光沢により包装用フィルムとして広範に用いられており、ディスプレー時に金属光沢による見栄えを良くし、ガスバリア性能を向上させ、紫外線などの外部光線による内容物の変質を抑える目的で、アルミニウムなどの金属を蒸着する(金属化)ことも広く行われている。
【0003】
しかし二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面は不活性であり、金属化の際の金属膜と基材フィルムとの接着性を向上させるために、コロナ放電処理や火炎処理などの処理により表面を活性化することが一般に行われている。
【0004】
コロナ放電処理の効果を向上させる目的で、米国特許4、297、187号公報には窒素と二酸化炭素の混合ガス中でコロナ放電処理を行うことが開示されている。これらのコロナ放電処理の手法によれば、処理強度を上げることで表面はより活性化され金属膜と基材フィルム表層との接着強度は向上するが、同時に基材の劣化が生じ、基材フィルム表層部と基材フィルム内部との剥離が生じやすく、接着強度の向上効果には限界があることが知られている。また、処理強度を上げすぎるとブロッキングが生じやすくなることが知られている。
【0005】
また米国特許4、345、005号公報には、アイソタクチックポリプロピレン樹脂の基層の少なくとも片面に共押出で形成された、約2%から約4%のエチレンを含むエチレン・プロピレン共重合樹脂層にコロナ放電処理し金属蒸着された金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムの開示がある。
【0006】
さらに米国特許4、357、383号公報には、基層上にエチレンと炭素量3〜6のα−オレフィン0.25〜15重量%のランダム共重合体層を形成した上に金属層を形成した複層金属化包装用フィルムの開示がある。また同様に、金属酸化物蒸着用二軸配向ポリプロピレン複合フィルムとして、特開平9−94929号公報には、蒸着を行うべき表層のポリオレフィン樹脂の結晶融解熱量が30〜85J/gのものの開示があり、このための樹脂として、ポリプロピレン系共重合体、シンジオタクチックポリプロピレン樹脂、エチレンとα−オレフィンの共重合体、およびそれらの樹脂とアイソタクチックホモポリプロピレンあるいはポリプロピレン共重合体のブレンド樹脂が挙げられている。
【0007】
さらには特開平6−67285号公報と、特開平6−126281号公報には、金属化を行うべき表層を、シンジオタクチックポリプロピレンか、シンジオタクチックポリプロピレンとアイソタクチックポリプロピレンの混合樹脂層とすることが開示されている。
【0008】
これら表層樹脂のうち共重合樹脂を表層に積層することにより金属膜と表層樹脂との接着性が向上するが、共重合樹脂は一般に融点が低いことから、製膜時に縦延伸ロールに粘着するなどの製膜上の制約が大きく、粘着痕による光沢の低下が問題となる。また融点が低いことにより金属化を行った際に、金属の凝集熱や蒸発源からの輻射熱により金属膜が白化しやすく、金属光沢が得られにくいという問題もあった。同様に表層がシンジオタクチックポリプロピレンからなる場合、特開平7−89022号公報に示されるように融解温度が低くなり、共重合樹脂と同様に耐熱性に係わる問題を生じることが知られている。
【0009】
さらに、米国特許4、419、410号公報には、配向ポリプロピレンフィルムにおいて、高立体規則性ポリプロピレンに比較的低立体規則性のポリプロピレンが積層され、有機滑剤や静電防止剤の発現性を促進する技術の開示があるが、上記米国特許4、345、005号公報や特公平8−18404に示されるように、これら添加剤のうち特に有機滑剤の添加は蒸着膜との接着性を悪化させることが公知であり、該技術を金属化用二軸配向ポリプロピレンに適用することはできなかった。
【0010】
また米国特許4、888、237号公報には、キシレン溶解分が10重量%を越えないアイソタクチックホモポリマーを少なくとも50重量%含む表層に火炎処理が施され、その上に金属化されたフィルムの開示がある。該アイソタクチックホモポリマーは実質的に6%を越えないアタクチシティを有する通常のポリプロピレンホモポリマーであり、6%〜15%のアタクチシティを有するホモポリマーを含有する場合は50%までが好ましい旨の記載があり、この様なポリマーを用いることで火炎処理との組み合わせで接着性が大きく改善されることが開示されている。しかし、コロナ放電処理では接着性の改善効果が認められないとあり、簡便なコロナ放電処理によっても接着性の改善できる表層樹脂はなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、二軸配向ポリプロピレンの優れた剛性を保持し、上述の従来の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムでは達成し得なかった2つの相反する特性、すなわち金属化した際の金属膜とフィルム基材との接着性を改善しながら、優れた光沢の金属化フィルムとすることができる金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明者らは、従来技術による表層樹脂の結晶融解熱量の低さが接着性に寄与するものの、耐熱性に劣ることが各種欠点を導出することに思い至り、本発明を成し遂げたものである。
【0013】
本発明は、かかる課題を解決するために、アイソタクチックポリプロピレンからなる基層の少なくとも片面に、結晶融解に伴う吸熱の主ピークが155〜163℃にあり、結晶融解熱量が20〜90J/gであり、メソペンタッド分率が60〜88%のアイソタクチックポリプロピレンを主体とした樹脂であるポリプロピレン系樹脂からなる表層が積層され、該表層の濡れ張力が33〜55mN/mである金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供し、またその製造方法として、アイソタクチックポリプロピレンからなる基層の少なくとも片面に、結晶融解に伴う吸熱の主ピークが155〜163℃にあり、結晶融解熱量が20〜90J/gであり、メソペンタッド分率が60〜88%のアイソタクチックポリプロピレンを主体とした樹脂であるポリプロピレン系樹脂からなる表層を共押出しにより積層し、冷却固化後、二軸配向せしめ、該表層に表面活性化処理を施す金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の基層を形成する樹脂は、結晶性のアイソタクチックポリプロピレン樹脂である。該アイソタクチックポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率は88%以上が好ましい。メソペンタッド分率とは、アイソタクチック立体構造の全体に占める割合であり、13C−NMRで測定される。メソペンタッド分率が88%未満であると、二軸配向ポリプロピレンフィルムの剛性が低くなり、加工性に劣る。より好ましくはメソペンタッド分率は90%以上である。
【0015】
また基層のアイソタクチックポリプロピレン樹脂のアイソタクチック度は85%以上であることが好ましい。アイソタクチック度とは沸騰n−ヘプタンで抽出した際の非溶解分の重量割合である。アイソタクチック度が85%未満であると、キシレンやn−ヘキサンなどの溶媒による溶出分が多くなりすぎ、包装用フィルムとして不適となる場合がある。基層のアイソタクチックポリプロピレン樹脂のアイソタクチック度は88%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。また、該ポリプロピレン樹脂のメルトフローインデックス(MFI)は、1〜10g/10分であることが、製膜性の観点から好ましく、2.5〜6g/10分がより好ましい。
【0016】
該基層の樹脂としてはアイソタクチックポリプロピレン樹脂単独が好ましいが、該基層に目的に応じポリプロピレン系共重合樹脂などが積層される場合があり、これら共重合樹脂などが回収され該基層に再使用される場合、本発明における目的を損なわない範囲で他の共重合樹脂が含有されても良い。
【0017】
該基層の少なくとも片面に積層される表層樹脂は、結晶融解に伴う吸熱の主ピークが155〜163℃にあり、結晶融解熱量が20〜90J/gであるポリプロピレン系樹脂である。
【0018】
本発明の重要なポイントとして、表層のポリプロピレン系樹脂の結晶融解に伴う吸熱のピーク温度が比較的高いことが挙げられ、本発明の表層のポリプロピレン系樹脂の結晶融解に伴う吸熱の主ピークが155〜163℃にあることが重要である。
【0019】
この場合の主ピークとは単一の吸熱ピークのみ観察される場合はその単一ピークそのものを、複数の吸熱ピークが観測される場合はピーク面積全体の2/3以上を占めるものを指す。結晶融解に伴う吸熱のピーク温度の上限はポリプロピレン固有の特性値として規定されるが、結晶融解に伴うピーク温度の下限は、金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムの製膜性と、金属化時の耐熱性に大きく影響し、結晶融解に伴うピーク温度が低すぎると従来技術のごとき製膜時のロールへの粘着や、金属化後の金属光沢の低下の問題が生じる場合がある。本発明の表層のポリプロピレン系樹脂の結晶融解に伴う吸熱の主ピークは、157〜162℃にあることが好ましく、158〜162℃にあることがより好ましい。副ピークが155℃未満に観察される場合は、そのピークが140℃以上にあることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明の表層のポリプロピレン系樹脂の結晶融解に伴う吸熱のすべてのピークが155〜163℃にあることが、製膜性と、金属化時の耐熱性のために好ましい。
【0021】
本発明の表層のポリプロピレン系樹脂の結晶融解熱量は20〜90J/gであることが必要である。通常のアイソタクチックポリプロピレン樹脂の結晶融解熱量が100J/g以上であるのに対し、本願発明の表層樹脂として使用するポリプロピレン系樹脂の結晶融解熱量は小さいことがポイントである。結晶融解熱量が大きすぎると、金属膜との接着性に劣る。結晶融解熱量が小さすぎると金属化の際に耐熱性に劣る。本発明の表層のポリプロピレン系樹脂の結晶融解熱量は30〜85J/gが好ましく、40〜85J/gがより好ましい。
【0022】
表層のポリプロピレン系樹脂の結晶融解に伴う吸熱の主ピークと結晶融解熱量を本発明の範囲とするには、樹脂の選定が重要である。従来技術のごときポリプロピレン系共重合樹脂単独では、例えばエチレン・プロピレン・ランダム共重合体においては、エチレン共重合量と共に結晶融解熱量が低下する。しかし同時に融解温度も急激に低下するため、本発明の範囲とすることは困難である。しかし重合の条件によっては達成可能であり、ポリプロピレン系共重合樹脂単独を本発明の範囲から排除するものではない。
【0023】
本発明において、表層樹脂として好適なものは、メソペンタッド分率が60〜88%であるアイソタクチックポリプロピレン樹脂を主体としたものである。メソペンタッド分率60〜88%であるアイソタクチックポリプロピレン樹脂に、結晶融解に伴う吸熱のピークが140〜163℃にあるポリプロピレン系共重合樹脂が重量割合で1/3を上限に混合されたものも好ましく使用できる。さらに本発明において好ましい表層樹脂としては、メソペンタッド分率が60〜88%であるアイソタクチックポリプロピレン樹脂と結晶融解に伴う吸熱のピークが155〜163℃にあるポリプロピレン系共重合樹脂の混合物である。最も好ましいのは、メソペンタッド分率が60〜88%であるアイソタクチックポリプロピレン単独である。
【0024】
本発明における表層樹脂を製造するための方法としては,通常のチーグラーナッタ系触媒で外部ドナーの選定と外部ドナーの減量,特定のメソペンタッド分率を制御するための生産管理技術もポイントとなる。
【0025】
メソペンタッド分率が60%未満では、樹脂のゴム成分が増大するためか、表層の光沢が得られず、また金属化の際の耐熱性に劣ることで白化が生じる場合がある。メソペンタッド分率が88%を越えると金属膜との接着性に劣る場合がある。本発明の表層樹脂のアイソタクチックポリプロピレンのメソペンタッド分率は65〜85%がより好ましく、68〜83%が最も好ましい。メソペンタッド分率をかかる値とするには、本発明のメソペンタッド分率を有するアイソタクチックポリプロピレンを選定するか、異なったメソペンタッド分率の2種以上のアイソタクチックポリプロピレン樹脂を混合することで達成できる。
【0026】
アイソタクチックポリプロピレンの分子量分布Mw/Mnは2〜6の範囲が製膜性と耐溶剤性のために好ましく、2.3〜5がより好ましく、2.4〜4が最も好ましい。
【0027】
本発明の表層樹脂として用いるポリプロピレン系樹脂のMFIは1〜20g/10分であることが、基層との積層性のため好ましい。
【0028】
本発明の表層の厚みは0.25μm以上であり、かつ基層の厚みの半分以下であることが好ましい。表層の厚みが0.25μm未満であると膜切れなどにより均一な積層が困難となり、接着性の改善効果が小さくなる場合がある。厚みが大きすぎると、機械特性に及ぼす表層の寄与が大きくなり、ヤング率の低下を引き起こし、金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムが張力に対して伸びやすくなり加工性に劣る場合がある。本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムの縦方向のヤング率は1.3GPa以上が好ましく1.5GPa以上がより好ましい。
【0029】
本発明の表層樹脂には脂肪酸アミドなどの有機滑剤は添加しない方が金属膜の接着性のために好適であるが、滑り性を付与し作業性や巻き取り性を向上させるために、有機架橋性粒子や無機粒子を少量添加することは許容される。このための有機架橋性粒子には、架橋シリコーンや架橋ポリメチルメタクリレート粒子などが挙げられ、無機粒子にはゼオライトや炭酸カルシウム、酸化ケイ素、リン酸カルシウムなどを例示することができる。
【0030】
本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムの表層の表面粗さは特に限定されないが、中心線表面粗さ(Ra)として、0.03〜0.3μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2μmである。Raが小さすぎると、滑り性に劣り、巻き取り性に劣る場合があり、Raが大きすぎると、金属化した後の光沢性に劣る場合がある。
【0031】
本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面光沢は135%以上が蒸着後の金属光沢の麗美性のために好ましく、より好ましくは138%以上である。
【0032】
また本発明の表層樹脂には、極性基を実質的に含まない石油樹脂および極性基を実質的に含まないテルペン樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を表層樹脂100重量部に対し20重量部を上限に添加することは、金属膜との接着性をさらに強固にすることができ、より好ましい。20重量部を越えて添加した場合は、滑り性が悪くなり、ブロッキングなどの問題を生じる場合がある。
【0033】
極性基を実質的に含まない石油樹脂とは、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SO3Y、YはH、Naなど)などおよびそれらの変成体などからなる極性基を有さない石油樹脂、すなわち石油系不飽和炭化水素を直接原料とするシクロペンタジエン系、あるいは高級オレフィン系炭化水素を主原料とする樹脂である。
【0034】
本発明において表層樹脂にこれら樹脂を添加する場合は、表層樹脂の耐熱性を低下させないために、添加する樹脂の示差熱量分析計にて測定したガラス転移温度は50℃以上が好ましく、より好ましくは76℃以上である。また、該石油樹脂に水素を付加させ、その水添率を80%以上、好ましくは95%以上とした水添石油樹脂が特に好ましい。さらに、表層のポリプロピレン系樹脂との相溶性の観点から該石油樹脂は非晶性(すなわち示差走査熱量計にて該石油樹脂を測定したときに実質的に結晶融解が観測されない)が好ましく、また数平均分子量は1000以下が好ましい。
【0035】
極性基を実質的に含まないテルペン樹脂とは、水酸基(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ケトン基(−CO−)、カルボキシル基(−COOH)、ハロゲン基、スルホン酸基(−SO3Y、YはH、Naなど)などおよびそれらの変成体などからなる極性基を有さないテルペン樹脂、すなわち(C5H8)nの組成の炭化水素およびそれから導かれる変成化合物である。なお、nは2〜20程度の自然数である。テルペン樹脂のことを別称してテルペノイドと呼ぶこともある。代表的な化合物名としては、ピネン、ジペンテン、カレン、ミルセン、オシメン、リモネン、テルピノレン、テルピネン、サビネン、トリシクレン、ビサボレン、ジンギペレン、サンタレン、カンホレン、ミレン、トタレン、などがあり、その水添率を80%以上、好ましくは90%以上とするのが望ましく、特に水添βピネン、水添ジペンテンなどが好ましい。
【0036】
本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上記表層に表面活性化処理が施される。表面活性化処理として、公知のコロナ放電処理や火炎処理を用いることができるが、コロナ放電処理が簡便な手法として好ましい。コロナ放電処理の場合、空気中や、窒素ガス中、炭酸ガスと窒素ガスの混合ガス中での処理などを採用することができるが、これらの中では、炭酸ガスと窒素ガスの混合ガス中での処理が、低い処理強度(電力)で金属膜との接着力を強固にすることができるため、より好ましい。
【0037】
これら表面活性化処理後の表層の濡れ張力は、33〜55mN/mの範囲であることが必要であり、35〜50mN/mの範囲がより好ましい。濡れ張力が小さいと金属膜との接着性に劣り、濡れ張力が大きすぎると、表面近傍の基材の劣化により表層部が剥離しやすくなり、接着強度がかえって低下する。
【0038】
本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、基層の少なくとも片面に上述の表層樹脂が積層されるが、基層樹脂の片面に該表層が積層され、反対の面には必要に応じ、第3の層が積層されても良い。第3の層の樹脂としては、ヒートシール性を付与するには、例えばポリプロピレン系共重合体が積層される。また、滑り性を付与するには、ポリプロピレン系樹脂に有機架橋粒子あるいは無機粒子が添加されたものや、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体と高密度ポリエチレンの混合物などが積層されることが好ましい。これら反対面の第3の層表面は必要に応じ、コロナ放電処理などで活性化することが行われる。
【0039】
本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、アイソタクチックポリプロピレンからなる基層の少なくとも片面に、結晶融解に伴う吸熱の主ピークが155〜163℃にあり、結晶融解熱量が20〜90J/gであるポリプロピレン系樹脂からなる表層を共押出しにより積層し、冷却固化後、二軸配向せしめ、該表層に表面活性化処理を施すことで製造することができる。
【0040】
共押出とは、基層および表層の樹脂を、必要に応じ反対面層の樹脂と共にそれぞれの押出機に供給し、溶融させた後必要に応じ濾過フィルターを経、短管内あるいは口金内で合流させ、口金から押し出すことをいう。口金の形状はスリットダイであってもよく、リング状口金であっても良く、スリットダイの場合は、冷却ドラムに巻き付けて冷却固化させ、その後逐次二軸あるいは同時二軸により、リング状ダイの場合は、気流による冷却を経て、同時二軸延伸され、さらに表面活性化処理が施され本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムが製造される。
【0041】
本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、アルミニウム、銀、クロム、亜鉛など金属が蒸着されることにより、金属膜との接着性に優れ、金属光沢に優れた金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムとすることができる。中でもアルミニウムを蒸着することが、経済性と衛生性、ガスバリア性能のために好ましい。
【0042】
本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムと金属膜との接着強度は、80g/cm以上が好ましく、100g/cm以上がさらに好ましい。
【0043】
金属化後の表面光沢は、60°光沢値で、780%以上が好ましく、800%以上がさらに好ましい。
【0044】
以下に、本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法の一例について説明するが、本発明は下記製造方法により制約を受けるものではない。
【0045】
本発明の基層のアイソタクチックポリプロピレン樹脂および表層のポリプロピレン系樹脂を準備し、これらを別々の押出機に供給して230〜290℃の温度で融解させ、濾過フィルターを経た後、短管あるいは口金内で合流せしめ、目的とするそれぞれの積層厚みでスリット状口金から押し出し、金属ドラムに巻き付けてシート状に冷却固化せしめ未延伸積層フィルムとする。この場合冷却用ドラムの温度は30〜60℃としフィルムを結晶化させることが好ましい。この未延伸積層フィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。延伸方法は、逐次二軸延伸法、または同時二軸延伸法を用いることができる。逐次二軸延伸法の場合、次に未延伸フィルムを115〜145℃の温度に加熱し、長手方向に4〜7倍に延伸した後、冷却し、次いでテンター式延伸機に導入し140〜170℃で幅方向に7〜11倍に延伸した後、155〜170℃で弛緩熱処理し冷却する。さらに、空気あるいは窒素あるいは炭酸ガスと窒素の混合雰囲気中で、コロナ放電処理した後、巻き取り、本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムとする。
【0046】
{特性値の測定法}
本発明の特性値は以下の方法で測定した。
【0047】
(1)アイソタクチック度(%)
樹脂を60℃以下の温度のn−ヘプタンで2時間抽出し、ポリプロピレンへの添加物を除去する。その後130℃で2時間真空乾燥する。これから重量W(mg)の試料を取り、ソックスレー抽出器に入れ沸騰n−ヘプタンで12時間抽出する。次に、この試料を取り出しアセトンで十分洗浄した後、130℃で6時間真空乾燥しその後常温まで冷却し、重量W’(mg)を測定し、次式
アイソタクチック度=(W’/W)×100(%)
で求めた。
【0048】
(2)メルトフローインデックス(MFI:g/10分)
ASTM−D−1238に準じて230℃、2.16kgの条件で測定した。
【0049】
(3)結晶融解吸熱のピーク温度(℃)と結晶融解熱量(J/g)
Seiko Instruments社製熱分析装置RDC220型に、5mgの表層樹脂をアルミニウムパンに封入して装填し、20℃/分の速度で昇温し、結晶融解吸熱のピーク温度を求めた。また、吸熱ピークの面積により、同社製熱分析システムSSC5200の内蔵プログラムを用い結晶融解熱量を算出した。2種以上の樹脂の混合物で吸熱ピークが複数の場合は、それぞれの結晶融解熱量の和を結晶融解熱量とした。
【0050】
(4)メソペンタッド分率(%)
基材樹脂あるいは表層樹脂をo−ジクロロベンゼン−D6に溶解させ、JEOL製JNM−GX270装置を用い、共鳴周波数67.93MHzで13C−NMRを測定した。得られたスペクトルの帰属およびメソペンタッド分率の計算については、T.Hayashiらが行った方法(Polymer、29、138〜143(1988))に基づき、メチル基由来のスペクトルについて、mmmmmmピークを21.855ppmとして各ピークの帰属を行い、ピーク面積を求めてメチル基由来全ピーク面積に対する比率を百分率で表示した。詳細な測定条件は以下のとおりである。
【0051】
測定濃度:15〜20wt%
測定溶媒:
o−ジクロロベンゼン(90wt%)/ベンゼン−D6(10wt%)
測定温度:120〜130℃
共鳴周波数:67.93MHz
パルス幅:10μ秒(45°パルス)
パルス繰り返し時間:7.091秒
データ点:32K
積算回数:8168
測定モード:ノイズデカップリング。
【0052】
(5)濡れ張力(mN/m)
JIS K6782法で求めた。
【0053】
(6)ヤング率(GPa)
ASTM D882−64Tに基づき求めた。
【0054】
(7)フィルムの表面光沢(%)
JIS Z8741法に基づき、スガ試験機製ディジタル変角光沢度計UGV−5Dを用い、60°鏡面光沢度として求めた。
【0055】
(8)蒸着フィルムの表面光沢(%)
金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムを連続式真空蒸着装置に装填し、電子ビーム加熱方式の蒸発源からアルミニウムを蒸発させ、フィルムを連続的に走行させながら、光学濃度(−log(光線透過率))を1.3〜1.4の範囲でアルミニウムを蒸着した。この金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムを上記JIS Z8741に基づき表面光沢を求めた。
【0056】
(9)接着強度(g/cm)
金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムの金属化面に、20μm厚の二軸配向ポリプロピレンフィルム(東レ製S645)をポリウレタン系接着剤を用いて貼り合わせ、40℃で48時間放置後、15mm幅で東洋ボールドウィン製テンシロンを用い、剥離速度10cm/分で90°剥離により測定した。
【0057】
【実施例】
本発明を実施例により説明する。
【0058】
実施例1
本発明の基層の樹脂として、アイソタクチックポリプロピレン(アイソタクチック度:96%、MFI:2.5g/10分、メソペンタッド分率:92%)のものを準備し、表層樹脂として、アイソタクチックポリプロピレン(アイソタクチック度:86%、MFI:2.8g/10分、メソペンタッド分率:74%、結晶融解に伴う吸熱のピーク温度:161℃、結晶融解熱量:77J/g)80重量%とエチレン共重合量4.8重量%のエチレン・プロピレン・ランダム共重合体(結晶融解に伴う吸熱のピーク温度:146℃、結晶融解熱量:73J/g)20重量%の混合物、表層の反対面のヒートシール樹脂としてエチレン・プロピレン・ブテン共重合体(エチレン共重合量:1.5重量%、ブテン共重合量:15重量%)に有機架橋粒子滑剤として平均粒径3μmの架橋シリコーン粒子(平均粒径は電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて観察した粒子100個の長径を測定し、その平均値とした)0.15重量%を添加したものとを、それぞれ別々の押出機に供給し、270℃で溶融押出し、濾過フィルターを経た後、短管内で表層/基層/ヒートシール層となるように合流せしめ、スリット状口金から押し出し、40℃に加熱した金属ドラムに巻き付けてシート状に成形した。
【0059】
このシートを135℃の温度に加熱し、長手方向に5倍に延伸して冷却後、引き続きテンター式延伸機に導き、165℃で加熱し、幅方向に9倍延伸後、165℃の温度で幅方向に10%の弛緩を与えつつ熱処理して冷却した。さらに大気中でコロナ放電処理を15W分/m2の処理強度で実施し巻き取った。フィルムの厚みは、表層/基層/ヒートシール層:1μm/19μm/2μmとした。表層の濡れ張力は37mN/mであった。表層樹脂の結晶融解に伴う吸熱の主ピーク温度は161℃であり、結晶融解熱量は76J/gであった。
【0060】
実施例2、3、4
表層樹脂を、表1に示すようなメソペンタッド分率、結晶融解に伴う吸熱のピーク温度、結晶融解熱量を有するアイソタクチックポリプロピレンとした以外は、実施例1と同じ条件で製膜し、評価した。
【0061】
実施例5、6
基層樹脂のアイソタクチックポリプロピレンのメソペンタッド分率を、表1のように変えた以外は実施例2と同じ条件で製膜し、評価した。
【0062】
実施例7、8
実施例2と同じ製膜条件で製膜し、最後のコロナ放電処理を、5W分/m2としたものを実施例7、炭酸ガス(20体積%)+窒素ガス(80体積%)の雰囲気で50W分/m2で処理したものを実施例8とした。それぞれの濡れ張力は34mN/m、52mN/mであった。
【0063】
実施例9、10
積層構成を、表層/基層/ヒートシール層:0.5μm/19.5μm/2μmとした以外は実施例2と同じ条件で製膜したものを実施例9、表層/基層/ヒートシール層:2μm/18μm/2μmとした以外は同じ条件で製膜したものを実施例10とした。
【0064】
実施例11
実施例2に用いたアイソタクチックポリプロピレン樹脂100重量部に対し、石油樹脂(トーネックス社製エスコレッツ5320HC)を10重量部添加したものを表層樹脂とした以外は、実施例1と同様に製膜したものを実施例11とした。
【0065】
実施例12、13
積層構成を、表層/基層/ヒートシール層:0.2μm/19.8μm/2μmとした以外は実施例2と同じ条件で製膜したものを実施例12、表層/基層/ヒートシール層:7μm/13μm/2μmとした以外は実施例2と同じ条件で製膜したものを実施例13とした。
【0066】
実施例14
表層の樹脂を、実施例2で用いたアイソタクチックポリプロピレン80重量%と、エチレン共重合量1.3重量%のエチレン・プロピレン・ランダム共重合体(結晶融解に伴う吸熱のピーク温度:159℃、結晶融解熱量101J/g)20重量%の混合樹脂とした以外は、実施例1と同じ条件で製膜したものを実施例14とした。混合樹脂の結晶融解に伴う吸熱のピーク温度は160℃、結晶融解熱量は82J/gであった。
【0067】
実施例15
表層の樹脂を、実施例2で用いたアイソタクチックポリプロピレン80重量%と、シンジオタクチックポリプロピレン(結晶融解に伴う吸熱のピーク温度:132℃、結晶融解熱量:42J/g)20重量%の混合樹脂とした以外は実施例1と同じ条件で製膜したものを実施例15とした。混合樹脂の結晶融解に伴う吸熱の主ピーク温度は161℃、結晶融解熱量は70J/gであった。
【0068】
上記実施例の構成を表1に、これらのフィルムおよび金属化フィルムの特性を表2に示した。
【0069】
表2に示すように、本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ヤング率が高く、フィルムの表面光沢が高く、また金属化した後の金属光沢に優れ、接着強度に優れるという特長を有する。実施例6で明らかなように、基層のアイソタクチックポリプロピレンのメソペンタッド分率が低いと、ヤング率が低くなる傾向がある。実施例11で明らかなように表層樹脂に石油樹脂を添加した場合、接着性がさらに向上し、より好ましい。実施例12で明らかなように、表層の積層厚みが小さい場合、膜切れによると思われる光沢度の低下や、接着強度の低下が認められる場合がある。また、実施例13で明らかなように、表層の積層厚みを大きくしすぎると、ヤング率が低くなる傾向がある。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
比較例1
表層の樹脂を実施例1のアイソタクチックポリプロピレン30重量%とエチレン共重合量4.8重量%のエチレン・プロピレン・ランダム共重合体70重量%の混合物とした以外は実施例1と同じ条件で製膜したものを比較例1とした。結晶融解に伴う吸熱の主ピークは146℃、結晶融解熱量は74J/gであった。
【0073】
比較例2、3
表層のアイソタクチックポリプロピレンとして、メソペンタッド分率、融解温度、結晶融解熱量をそれぞれ92%、162℃、118J/gのものを用いた以外は、実施例1と同様の条件で製膜したものを比較例2、58%、154℃、18J/gとしたものを比較例3とした。
【0074】
比較例4、5、6
表3に示す、エチレン・プロピレン・ランダム共重合体を表層に用いた以外は実施例1と同じ条件で製膜したものを比較例4、5、6とした。
【0075】
比較例7
表層樹脂として、実施例15で用いたアイソタクチックポリプロピレン20重量%と、シンジオタクチックポリプロピレン80重量%を混合したものを用いたものを比較例7とした。表層樹脂の結晶融解に伴う主ピーク温度は132℃であり、結晶融解熱量は49J/gとなった。
【0076】
比較例8、9
実施例2と同様の製膜を行い、最後のコロナ放電処理を行わなかったものを比較例8、炭酸ガス(20体積%)+窒素ガス(80体積%)の雰囲気で100W分/m2で処理したものを比較例9とした。それぞれの濡れ張力は32mN/m、57mN/mとなった。
【0077】
比較例の構成を表3に、これらフィルムおよび金属化フィルムの特性を表4に示した。
【0078】
表4に示すように、これら比較例では、ヤング率が不十分であるか、表面光沢や金属光沢が不十分であるか、接着強度が不十分であるかの問題が生じる。すなわち、比較例1、7では、結晶融解に伴う吸熱の主ピーク温度が低く、耐熱性に劣るためフィルム表面の荒れが生じ、金属化後の金属光沢が得られにくく、比較例2では、結晶融解熱量が高すぎるため接着強度が低く、比較例3では結晶融解熱量が低すぎるため、フィルム表面の荒れが生じ、金属化後も金属光沢が得られないという問題が生じる。また、エチレン・プロピレン・ランダム共重合体では、本発明の融解温度、結晶融解熱量の関係が得られにくく、結晶融解熱量の低下に対して融解温度の低下が顕著で、比較例の選定範囲では接着性と表面光沢の両立が不可能であった。比較例8、9により、接着強度発現のためには、本発明の濡れ張力が必要であることがわかり、濡れ張力が大きすぎてもフィルム基材中での剥離が原因と推定される接着力の低下が発生する。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【発明の効果】
本発明の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、金属化を行う表層の融解温度のピーク値と結晶融解熱量および、濡れ張力を特定の値とすることで、従来技術では達成できなかった、製膜時のロール粘着の懸念がない製膜プロセスを提供し、金属化後の金属光沢と接着強度を発現することができる。
Claims (7)
- アイソタクチックポリプロピレンからなる基層の少なくとも片面に、結晶融解に伴う吸熱の主ピークが155〜163℃にあり、結晶融解熱量が20〜90J/gであり、メソペンタッド分率が60〜88%のアイソタクチックポリプロピレンを主体とした樹脂であるポリプロピレン系樹脂からなる表層が積層され、該表層の濡れ張力が33〜55mN/mである金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
- アイソタクチックポリプロピレンからなる基層に積層されるポリプロピレン系樹脂の結晶融解に伴う吸熱のすべてのピークが155〜163℃にある請求項1に記載の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
- 表層のポリプロピレン系樹脂が、メソペンタッド分率が60〜88%のアイソタクチックポリプロピレンである請求項1または2に記載の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
- 基層のアイソタクチックポリプロピレンのメソペンタッド分率が88%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
- 表層の樹脂が、極性基を実質的に含まない石油樹脂および極性基を実質的に含まないテルペン樹脂から選ばれる少なくとも1種をポリプロピレン系樹脂100重量部に対し20重量部を上限に添加したものである請求項1〜4のいずれかに記載の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
- 表層の厚みが0.25μm以上であり、かつ基層の厚みの半分以下である請求項1〜5のいずれかに記載の金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
- アイソタクチックポリプロピレンからなる基層の少なくとも片面に、結晶融解に伴う吸熱の主ピークが155〜163℃にあり、結晶融解熱量が20〜90J/gであり、メソペンタッド分率が60〜88%のアイソタクチックポリプロピレンを主体とした樹脂であるポリプロピレン系樹脂からなる表層を共押出しにより積層し、冷却固化後、二軸配向せしめ、該表層に表面活性化処理を施す金属化用二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法。
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