JP4160728B2 - ハロゲン化有機化合物を含む汚染物の浄化方法及び浄化装置 - Google Patents

ハロゲン化有機化合物を含む汚染物の浄化方法及び浄化装置 Download PDF

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Description

発明の属する技術分野
本発明は、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を効果的に浄化することができる浄化方法及び浄化装置に関し、特に、塩素化有機化合物を含む、土壌、底質、汚泥、汚泥の間隙水、地下水のような水などの汚染物を、化学反応、又は、化学反応及び生物的反応を組み合わせた還元性脱ハロゲン化反応によって、ハロゲン化有機化合物を効率的に分解し浄化することができる浄化方法及び浄化装置に関する。
関連技術
1998年1月29日に日本国特許庁に出願された国際出願、PCT/JP/98/00363、「ハロゲン化有機化合物による汚染物を浄化する方法」の全ての開示は、本特許出願に援用される。
近年、電子機器金属部品の脱脂・洗浄剤やドライクリーニングの洗浄剤として広く使用されているテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、ジクロロエチレンなどのハロゲン化有機化合物による土壌・地下水の汚染が次々と報告されている。特に、最近では、焼却設備から排出されるダイオキシンや、PCBなどによる汚染が注目されている。これらのハロゲン化有機化合物は、自然界で容易に分解されず、難水溶性であるために、汚染域において土壌中での蓄積、地下水への浸透が生じ易い。また、ハロゲン化有機化合物は、肝障害を引き起し、発がん性を有することが知られている。そこで、土壌等に含まれる塩素化有機化合物等のハロゲン化有機化合物を分解し、無害化することが望まれている。
最近、ハロゲン化有機化合物で汚染された土壌、地下水等を浄化する方法として、微生物処理法(バイオレメディエーション)が注目されている。該微生物処理法は、費用対効果並びに安全性が高い。しかし、該微生物処理法では、以下に記載する如く、処理が長期間になり、分解できる物質の種類や濃度が限定されてしまうという問題がある。
該微生物処理法の一例として、メタン資化性菌やトルエン・フェノール分解菌、アンモニア酸化細菌、アルケン資化性菌によるトリクロロエチレンの好気的分解処理法が知られている。しかし、この方法には、1)分解反応が不安定であること、2)分解対象物質の範囲が極めて狭いこと、3)テトラクロロエチレンや四塩化炭素といった高塩素化物質には分解作用を有しないという欠点がある。
一方、多くの嫌気性微生物は、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、四塩化炭素等の高度に塩素化された有機化合物を分解でき、広範な適用がある。しかし、1)微生物の増殖が非常に遅いこと、2)嫌気的分解過程で毒性の強い中間代謝産物が生成・蓄積すること等の欠点がある(内山裕夫・矢木修身、バイオサイエンスとインダストリー、1994年、第52巻、第11号、第879〜884頁)。
一方、化学反応によりハロゲン化有機化合物を分解する技術として、金属鉄による塩素化有機化合物の還元的処理が報告されている(先崎哲夫、有機塩素化合物汚染地下水の処理−金属鉄付着活性炭による低温下での処理技術、「PPM」、1995年、第26巻、第5号、第64〜70頁)。そこで、本発明者は、微生物の炭素源がない状態において、土壌中に金属鉄を添加して脱塩素化試験を試みた。しかし、微生物が培養されてない条件、特に、還元雰囲気及び中性条件が維持されない場合には、脱塩素化反応は認められなかった。また、FeCl、FeCl、FeSOといった鉄塩を金属鉄の代わりに添加した場合であっても、脱塩素化反応は認められなかった。
さらには、金属鉄と高圧空気を汚染土壌中に注入してハロゲン化有機化合物を鉄粉と反応させて無機化し、無害化処理する方法が報告されている(特開平8−257570号)。この方法においても空気注入設備の問題やハロゲン化有機化合物揮散の恐れがあるなどの問題がある。さらには、高圧空気を用いるため、コスト上の問題が生じ、実用的でない。
また、脱ハロゲン化触媒作用を持つ天然物質と微生物処理とを組み合わせて、土壌や地下水を汚染した有機塩素化合物を除去する方法が報告されている(日経バイオテク」(日経BP社発行)1996年10月7日発行、第361号、第14〜15頁)。しかし、具体的な天然物質及び微生物については一切記載されていない。
米国特許第5,411,664号には、繊維性有機物及び鉄等の多価金属粒子を汚染物に添加することによるハロゲン化有機化合物の分解方法が記載されている。しかし、この米国特許には、還元鉄、鋳鉄、合金、水溶性還元剤等の還元剤については記載されていない。また、還元剤を添加後に、汚染物を還元雰囲気に保持することは記載されていない。
更にまた、実験室において、還元剤、栄養源及び汚染物を均一に混合することは容易である。これに対して、現実に土壌等の汚染物を原位置で浄化するためには、多量の還元剤及び栄養源を混合することになり土木工事が必要となる。また、均一に混合することは必ずしも容易ではない。更に、混練の際の条件が、ハロゲン化有機化合物の分解率に影響を与えることも想定される。特に、1m以上の体積、特に10m以上の体積の汚染物を浄化するためには、混練方法に工夫が必要となる。
さらに、従来、土壌等の汚染物を原位置で浄化するためには、汚染帯水層の下流側で少量の揚水を行い、揚水した地下水に汚染物質の浄化処理を施した後に汚染物質分解微生物の栄養源を溶解させ、上流側の不飽和土壌又は帯水層に再注入する方法が一般的であった。しかし、この方法では、揚水した汚染水を地下浸透規制濃度以下に浄化しなければ再注入できないため、地上での浄化設備を併設する必要があり、コストが増大するという問題がある。また、注入する正常な水によって汚染地下水の流れが迂回するなどの現象が生じ、注入した栄養源が地下水と十分に混合しないという問題もある。
発明の概要
したがって、本発明の目的は、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を効率的に且つ簡易に浄化できる汚染物浄化方法及び浄化装置を提供することにある。特に、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物、特に土壌及び地下水を原位置で効率的に且つ簡易に浄化できる浄化方法及び浄化装置を提供することにある。
本発明の一側面では、汚染物、例えば、土壌中の汚染物を通過するように、水を循環させる。一方、本発明の他の側面では、このように水を循環させることを要しない。
本発明の一側面では、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化する汚染物の浄化方法であって、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤が、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源と水を含有する栄養液を還元する還元工程と、前記還元工程の後に、還元された栄養液を前記汚染物に導入する導入工程と、を含む浄化方法が提供される。また、前記還元工程の後、好ましくは直後に、前記導入工程が行われることが好ましい。
本発明のこの側面の浄化方法は、化学反応及び生物的分解反応を組み合わせて、ハロゲン化有機化合物を分解して、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化することができるものであり、還元工程の後、好ましくは直後に、還元された栄養液を汚染物に導入することによって栄養液の還元状態を維持し、もって微生物活性を高め、より効率よく汚染物を浄化することができるものである。ここで、還元工程の直後とは、栄養液の還元状態を維持するに十分な程度に短い時間の経過後、の意である。
前記導入工程で、井戸、地中壁、浸透マス、トレンチ又は窪みが用いられることが好ましい。
前記還元工程は、前記栄養液を、固体状態であり且つ水に不溶性又は難溶性である前記還元剤に接触させる接触工程を含むことが好ましい。
あるいは、前記還元工程は、前記栄養液を水溶性の前記還元剤を含む水溶液と混合する混合工程を含むことが好ましい。
また、前記導入工程において、前記還元された栄養液は、地表に設けられた深い窪み、例えば、井戸、地中壁を介して前記汚染物に導入される、ことが好ましい。もっとも、透水性のよい地質では、浅い窪みを介して導入してもよい。
ハロゲン化有機化合物を含む地下水を循環させる工程を更に有し、前記地下水を循環させる間に、前記還元工程及び前記導入工程を有することが好ましい。
本明細書にて、ハロゲン化有機化合物とは、フッ化有機化合物、塩化有機化合物、臭化有機化合物、ヨウ化有機化合物をいう。特に、地下水及び土壌の汚染源として問題となっているテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、ジクロロエチレン等の脂肪族化合物、及びペンタクロロフェノール等の芳香族化合物等を対象とするが、これらに限られない。
また、上記汚染物とは、地下水、土壌、底質、汚泥、コンポスト、堆肥化有機物、廃棄物、排水等を含む。
上記栄養液に含有される上記従属栄養型嫌気性微生物の栄養源と水との比率は、特に制限がない。なお、上記従属栄養型嫌気性微生物の栄養源は、浄化すべき汚染物中の微生物特性に応じて、適宜選択することができる。
上記従属栄養型嫌気性微生物としては、メタン生成細菌(例えば、Methanosarcina属、Methanothrix属、Methanobacterium属、Methnobrevibacter属)、硫酸還元細菌(例えば、Desulfovibrio属、Desulfotomaculum属、Desulfobacterium属、Desulfobacter属、Desulfococcus属)、硝酸還元細菌(例えば、Bacillus属、Lactobacillus属、Aeromonas属、Streptococcus属、Micrococcus属)、酸生成細菌(例えば、Clostridium属、Acetivibrio属、Baceroides属、Ruminococcus属)、通性嫌気性細菌(例えば、Bacillus属、Lactobacillus属、Aeromonas属、Streptococcus属、Micrococcus属)等を好ましく挙げることができる。特に、Bacillus属、Pseudomonas属、Aeromonas属、Streprococcus属、Micrococcus属は、酸化態窒素還元活性を有するので、好ましい。
上記従属栄養型嫌気性微生物がメタン生成細菌である場合に好ましく用いることができる上記栄養源の例を下記表1及び表2に示す。
Figure 0004160728
Figure 0004160728
ミネラル1液とは、1リットルの蒸留水中に、6gのKHPOが含有している液をいう。
ミネラル2液とは、1リットルの蒸留水中に、6gのKHPO、6gの(NHSO、12gのNaCl、2.6gのMgSO・7HO、及び、0.16gのCaCl・2HOが含有している液をいう。
微量ミネラル液とは、1リットルの蒸留水中に、1.5gのニトリロ三酢酸、3.0gのMgSO・7HO、0.5gのMnSO・2HO、1.0gのNaCl、0.1gのFeSO・7HO、0.1gのCoSO又はCoCl、0.1gのCaCl・2HO、0.1gのZnSO、0.01gのCuSO・5HO、0.01gのAlK(SO、0.01gのHBO、及び、0.01gのNaMoO・2HOが含有している液をいう。まず、ニトリロ三酢酸をKOHでpH6.5にしつつ溶解させ、次いで、他のミネラルを添加する。最終的には、KOHによりpHが7.0に調整されている。
微量ビタミン液とは、1リットルの蒸留水中に、2mgのビオティン(biotin)、2mgの葉酸(folic acid)、10mgのピリドキシン(pyridoxine)・塩酸、5mgのチアミン・塩酸、5mgのリボフラビン(riboflavin)、5mgのニコチン酸(nicotinic acid)、5mgのDL−パントテン酸カルシウム(calcium pantothenate)、0.1mgのビタミンB12、5mgのp−アミノ安息香酸、及び、5mgのリポ酸(lipoic acid)を含有している液をいう。
Figure 0004160728
上記従属栄養型嫌気性微生物が硫酸還元細菌である場合に好ましく用いることができる上記栄養源の一例を下記表3に示す。
Figure 0004160728
Figure 0004160728
上記従属栄養型嫌気性微生物が硝酸還元細菌である場合に好ましく用いることができる上記栄養源の一例を下記表4に示す。
Figure 0004160728
また、上記栄養源として、有機態炭素及び有機態炭素の20〜50重量%、より好ましくは20〜30重量%の酸化態窒素を含有する培地を用いると、上記化学反応及び生物的反応に関与する微生物群を変化させ、硫化鉄等による土壌の黒変、メタンガスの発生並びにメルカプタン等の悪臭ガスの生成を抑制することができるので、好ましい。さらに、窒素ガスが発生するので、発生する水素ガスが希釈されるという利点もある。上記酸化態窒素は、硝酸塩の形態であることが好ましく、硝酸塩としては、硝酸アルカリ金属塩、硝酸アルカリ土類金属塩、硝酸鉄、硝酸チタン、硝酸マンガン、硝酸アルミニウム又は硝酸マグネシウムを好ましく挙げることができる。特に、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム又は硝酸カルシウムを好ましく用いることができる。また、有機態炭素は、水溶性の有機炭素源であることが好ましい。上記有機炭素源としては、糖類、有機酸若しくはその誘導体、低級アルコール、モラセル廃液、若しくは醸造廃液又はこれらの混合物を好ましく挙げることができる。
本発明で用いる上記還元剤について、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mVよりも高い場合には、十分な還元力が得られず好ましくない。一方、上記標準電極電位が−2400mVよりも低い場合には、還元力が強すぎて水素ガスを発生するおそれがあり危険であるため好ましくない。25℃における標準水素電極に対する標準電極電位(E°)を下記表5に示す。
Figure 0004160728
Figure 0004160728
上記還元剤としては、固体状態であり且つ水に不溶性又は難溶性の還元剤又は水溶性の還元剤を好ましく用いることができる。
固体状態の還元剤としては、還元鉄、鋳鉄、鉄−シリコン合金、チタン合金、亜鉛合金、マンガン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、カルシウム合金、チタン−シリコン合金、チタン−アルミニウム合金、亜鉛−アルミニウム合金、マンガン−マグネシウム合金、アルミニウム−亜鉛−カルシウム合金、アルミニウム−スズ合金、アルミニウム−シリコン合金、カルシウム−シリコン合金からなる群より選ばれた少なくとも一種の還元剤を好ましく挙げることができる。
固体状態の還元剤として還元鉄を用いた場合には、還元鉄表面にハロゲン化有機化合物の吸着が起こり、同時に還元鉄表面において金属側と環境側との条件の差違によってアノードとカソードとの分極が生じて、電流が流れ、これに伴って、アノードでは下記式1に示すように、鉄が鉄イオンとなって溶出し、カソードには電子が流入して、還元反応が生じる。
式1
Fe→Fe2++2e
還元剤として鋳鉄を用いた場合には、鋳鉄に含有されているグラファイトが表面に付着しており、このグラファイトがカソードとして作用し、鉄がアノードとして作用する。還元剤として合金を用いた場合には、合金を組成する金属元素の標準電極電位に応じて、アノードとカソードとに分極する。なお、合金の場合には、より還元雰囲気を維持しやすく、ハロゲン化有機化合物との電位差がより大きくなるので、脱ハロゲン化反応が促進される。
また上記還元剤として、固体状態であり且つ水に不溶性又は難溶性の還元剤を用いる場合には、上記還元工程において、上記栄養液を上記還元剤に接触させる接触工程を含むことが好ましい。上記接触工程を含むことにより、水に不溶性又は難溶性の還元剤と上記栄養液とを十分に反応させることができ、栄養液を還元することができる。
上記固体状態の還元剤としては、500μm以下の粒径を有する粉末を好ましく挙げることができる。
一方、水溶性の還元剤としては、有機酸若しくはその誘導体、次亜リン酸若しくはその誘導体、又は有機酸又は次亜リン酸と鉄、チタン、亜鉛、マンガン、アルミニウム又はマグネシウムとからなる塩、又は硫化物塩を好ましく挙げることができる。
有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、フェノール酸若しくはその誘導体等を好ましく挙げることができる。カルボン酸としては、1〜20の炭素原子を有し且つ水酸基で置換されていてもよいモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸を好ましく挙げることができる。具体的には酢酸、クエン酸、テレフタル酸等が好ましく、特に、クエン酸等の2〜10の炭素原子を有する脂肪族トリカルボン酸が好ましい。フェノール酸の誘導体としては、ポリヒドロキシアリールを好ましく挙げることができる。ポリヒドロキシアリールとしては、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。また、有機酸の誘導体としては、塩、エステル、アミド、酸無水物等を好ましく挙げることができる。
次亜リン酸の誘導体としては、塩、エステル等を好ましく挙げることができるが、塩が特に好ましい。
上記水溶性の還元剤を用いる場合には、固体状態の還元剤を用いる場合と比較して、ハロゲン化有機化合物との接触効率が飛躍的に増大し、脱ハロゲン化反応が促進される。また、水溶性の還元剤は土壌等に浸透するため、井戸等の導管や地中壁を用いて注入することができる。さらに、浄化運転中の還元状態に応じて、還元剤を添加して還元状態を容易に回復することもできる。
また上記水溶性の還元剤を用いる場合には、上記還元工程において、上記栄養液を上記還元剤を含む水溶液と混合する混合工程を含むことが好ましい。上記混合工程を含むことにより、水溶性の還元剤と上記栄養液とを十分に反応させることができ、栄養液を還元することができる。
上記導入工程において、上記還元された栄養液は、地表に設けられた深い窪みを介して、汚染物中に導入されることが好ましい。ここで、深い窪みとは、地中に挿入設置された導管、井戸、地中壁などを含む概念である。深い窪みが導管又は井戸である場合には、多数の貫通孔からなるストレーナ部を少なくと一部に含むことが好ましい。また、地中壁とは、深い溝をいい、典型的には、溝が崩壊しないように、溝の中に砂、砂利等の透水性の高い充填剤が埋められて形成されており、優れた通気性及び透水性を呈するものである。
一方、透水性の良い地質では、浸透マス、トレンチのような浅い窪みを介して導入してもよい。透水性の良い地質は、例えば、砂、礫、軽石等からなる地層が挙げられる。トレンチの深さは、その地質がどれだけ崩壊し易いかに依存する。例えば、車両等が通る場所の近傍では、約20ないし30センチの深さ又はそれ以上の深さであってもよい。あるいは、車両等が通らず、地質が安定している場所では、約1m以上の深さであってもよい。トレンチの壁部は、崩壊しないように補強してもよいし、補強しなくてもよい。
また、本発明によれば、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤により、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源と水とを含有する栄養液を還元する還元手段と、前記汚染物中に還元された栄養液を導入する導入部を介して、前記汚染物中に還元された栄養液を導入する導入手段とを有する、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化する浄化装置が提供される。
上記還元剤及び栄養液としては、上述の還元剤及び栄養液を好ましく用いることができる。
上記還元手段は、上記還元剤が固体状態であり且つ水に不溶性又は難溶性である場合には、上記栄養液と上記還元剤とを接触させるための接触装置を含むことが好ましい。一方、上記還元剤が水溶性である場合には、上記還元手段は、上記栄養液と上記還元剤を含む水溶液とを混合する混合装置を含むことが好ましい。いずれの場合も、栄養液を還元剤により十分に還元することができる。
また、上記導入部は、地表に形成された深い窪みであることが好ましい。ここで、深い窪みとは、上述のように、地中に挿入設置された導管、井戸、地中壁などを含む概念である。一方、透水性の良い地質では、浸透マス、トレンチのような浅い窪みを介して導入してもよい。
前記還元手段が、通水性の充填剤が埋められた地中壁を含み、前記充填剤の少なくとも一部として、前記還元剤が用いられていることが好ましい。
還元剤は、砂、砂利のような粒状であってもよいし、粒状でなくてもよい。例えば、砂、砂利等と同等の粒径を有する鉄粉等の金属粉を充填剤として用いても良い。あるいは、充填剤には、砂、砂利等と、鉄粉等の金属粉とが含まれていても良い。あるいは、充填剤には、砂、砂利等の充填剤と、水に不溶性又は難溶性の還元剤とが含まれていても良い。この場合には、例えば、砂、砂利等の充填剤が地中壁の主成分となり、通気性、通水性を保持し、還元剤が通気性、通水性を損なわない程度に含まれいる。例えば、50重量%以下の還元剤が含まれており、30重量%以下の還元剤が含まれていてもよく、例えば、20重量%以下の還元剤が含まれていても良い。地中壁は、その上部を封じられていてもいなくてもよい。あるいは、後述するように、深い窪みではなく、浅い窪みであってもよい。
上記導入手段は、ポンプを有することが好ましい。
さらに、上記浄化装置は、汚染物を上記導入部に導入する揚水手段を有し、汚染物を循環処理することが好ましい。この場合には、汚染物が複数回、還元手段に混合されることにより、より十分に脱ハロゲン化され得る。
本発明の他の側面では、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化する汚染物の浄化方法であって、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤により水を還元する水還元工程と、上記還元工程において還元された水と、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源とを接触させ、前記栄養源を含む混合液を得る、接触工程と、上記接触工程で得られた混合液を上記汚染物に添加する添加工程と、を含む浄化方法が提供される。
一実施態様では、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化する汚染物の浄化方法であって、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤により水を還元する水還元工程と、上記還元工程において還元された水と、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源とを混合する、混合工程と、上記混合工程で得られた混合液を上記汚染物に添加する添加工程と、を含む浄化方法が提供される。
ここで、栄養源が液体、即ち、栄養源を含む水であってもよいし、固体であってもよい。固体の場合には、例えば、コンポスト、堆肥、余剰汚泥、有機物含有率が高い底泥、有機性廃棄物等の固体有機物を用いることができる。
以下、栄養源が栄養液である実施形態を主に説明する。即ち、本発明において、上記還元工程において還元された水を従属栄養型嫌気性微生物の栄養源を含有する栄養液に添加して栄養液を還元する栄養液還元工程と、上記栄養液還元工程において還元された栄養液を上記汚染物に添加する工程と、を含むことが好ましい。しかし、還元された水と、粉体等の固体、ゾル状、ゲル状の栄養源とを混合又は接触させてもよい。固体の栄養源としては、例えば、コンポスト、オカラ、ビールかす等の有機性廃棄物、腐植土等をそのまま用いることもできるし、これらを固形状、又は半固形状に固めたものを用いることもできる。
栄養源が固体である場合には、水、あるいは、すでに還元剤を通過し、還元された水を固体栄養源に接触させることにより、栄養源を水に溶け込ませても良い。例えば、固体栄養源を保持する槽又は固体栄養源を充填した充填塔に水を通過させてもよい。
還元剤及び栄養液としては、上述の還元剤及び栄養液を好ましく用いることができる。
前記水還元工程、前記接触工程又は前記添加工程で、井戸、地中壁、浸透マス、トレンチ又は窪みが用いられることが好ましい。
本発明の他の側面では、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化する方法であって、前記汚染物を通過するように、水を循環させる循環工程と、循環している水を25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤で還元する還元工程と、を含む浄化方法が提供される。
本明細書では、前記「汚染物」とは、汚染源を含む土壌、地下水、汚泥、底質、コンポスト、堆肥化有機物、廃棄物、排水、その他ハロゲン化有機化合物によるすべての汚染物を含み、特に、汚染源を含む土壌、地下水、汚泥その他ハロゲン化有機化合物によるすべての汚染物を含む。
また、前記「水」とは、ハロゲン化有機化合物等の汚染源を含有する水及び前記還元工程により還元された後の水を含む。具体的には、いわゆる地下水の他、汚泥や土壌、水田、底泥中の自由水並びに地表部等の系外より汚染物中に供給される水溶液としての水を含む。
本発明のこの側面の浄化方法は、水、特に地下水を循環させて、この循環中の水に還元剤による還元工程を繰り返し行わせしめることにより、還元作用のみで水及び水に接触する汚染物、特に底質、汚泥、土壌などを浄化することができるものである。
上記還元工程は、土壌中で行われることが好ましい。還元工程を土壌中で行うことにより、汚染された地下水を地上に揚水する必要がなくなり低コストで浄化することができる。また、汚染された地下水を揚水することにより発生するかもしれない二次汚染を防止することもできる。
上記循環工程は、土壌中の水を取り込む工程と、水を土壌中に排出する工程と、を有することが好ましい。かかる循環工程により、地下水組成に対して急激な変化を与えずに、汚染された地下水を徐々に浄化することができる。
上記還元剤は、固体状態であり且つ水に不溶性又は難溶性であることが好ましい。かかる還元剤を用いることにより、還元剤の顕著な減少を招かずに、循環される汚水を繰り返し還元することができるので、低コストで汚水を土壌中で浄化することができる。また、このように循環させているうちに、物理的に汚染物を洗浄することにより、浄化することもできる。
あるいは、上記還元剤は、水溶性の還元剤であることが好ましい。水溶性の還元剤を用いる場合には、土壌中への還元剤の浸透が期待される。
また、本発明の浄化方法においては、上記還元剤を添加する還元剤添加工程を含むことが好ましい。さらに、上記還元剤添加工程は、地表で行われることが好ましい。地表では、取り扱いが容易だからである。あるいは、土壌中で行われても良い。例えば、上述したように、地中壁の充填剤に還元剤を混合してもよい。
循環させる前の水に、更に、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源を接触させる栄養源接触工程を有することが好ましい。
循環している水に、更に、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源を接触させる栄養源接触工程を有していても良い。
栄養源は、栄養源を含有する栄養液として添加することが、取扱い上、好ましい。以下、栄養源を栄養液として添加する実施形態を主に説明する。しかし、粉体等の固体、ゾル状、ゲル状の栄養源を循環している水に添加してもよい。
このように栄養源を用いる実施態様では、水、特に地下水を循環させて、この循環中の水に還元剤及び栄養液を添加することで、還元剤による化学反応及び栄養液により活性化された嫌気性微生物による生物的分解反応を繰り返し行わせしめることにより、水及び水に接触する汚染物、特に底質、汚泥、土壌などを効率よく浄化することができるものである。
上記添加工程において、上記還元剤の添加と上記栄養液の添加とは、いずれが先であってもよい。重要なことは、汚染物と接触する際に、上記栄養液が還元状態に維持されていることである。このように栄養液を還元状態に維持することで、微生物活性を高めることができ、より効率よく汚染物を浄化することができる。
また、上記栄養液に含有される上記従属栄養型嫌気性微生物の栄養源と水との比率は、特に制限がない。なお、上記従属栄養型嫌気性微生物の栄養源は、浄化すべき汚染物中の微生物特性に応じて、適宜選択することができる。上記従属栄養型嫌気性微生物としては、上述したものを用いることができる。
土壌中の水を取り込む前記工程で、井戸、地中壁、浸透マス、トレンチ又は窪みが用いられることが好ましい。
また、水を土壌中に排出する前記工程で、井戸、地中壁、浸透マス、トレンチ又は窪みが用いられることが好ましい。
上記水溶性の還元剤を用いる場合には、固体状態の還元剤を用いる場合と比較して、ハロゲン化有機化合物との接触効率が飛躍的に増大し、脱ハロゲン化反応が促進される。また、水溶性の還元剤は土壌等に浸透するため、井戸等の導管や地中壁、浸透マス、トレンチ、浅い窪みを用いて注入することができる。さらに、浄化運転中の還元状態に応じて、還元剤を添加して還元状態を容易に回復することもできる。
また上記水溶性の還元剤を用いる場合には、上記添加工程において、上記栄養液と上記還元剤を含む水溶液とを混合することが好ましい。こうして、水溶性の還元剤と上記栄養液とを十分に反応させることができ、栄養液を十分に還元した状態に維持することができる。
一方、上記添加工程において、上記栄養液は、地表に設けられた深い窪みを介して、汚染物中に導入されることが好ましい。ここで、深い窪みとは、地中に挿入設置された導管、井戸、地中壁などを含む概念である。深い窪みが導管又は井戸である場合には、多数の貫通孔からなるストレーナ部を少なくとも一部に含むことが好ましい。また、地中壁とは、深い溝をいい、典型的には、溝が崩壊しないように、溝の中に砂、砂利等の透水性の高い物質が埋められて形成されており、優れた通気性及び透水性を呈するものである。このとき、上述のように、固体状態の還元剤を地中壁の充填剤に用いても良い。あるいは、栄養液の導入の際には、浸透マス、トレンチや浅い窪みを用いてもよい。
本発明の他の側面では、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化する装置であって、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤と、前記汚染物中又は前記汚染物の下流に位置する吸水部と、前記吸水部の上流であって、前記汚染物中又は前記汚染物の上流に位置する排水部と、を有し、水を前記吸水部、前記還元剤及び前記排水部の間で循環させて、前記汚染物を浄化することを特徴とする浄化装置が提供される。例えば、水は、吸水部、還元剤、排水部という順序に流れ、排水部から土壌中に排出され、重力又は地下水の流れに沿って、吸水部から再び吸水される。吸水部は、好ましくは、帯水層に配置される。
前記還元剤が、固体状態であり且つ水に不溶性又は難溶性である還元剤を含むことが好ましい。
前記還元剤が、水溶性の還元剤を含むことが好ましい。
前記還元剤は、前記吸水部と排水部との間に位置づけられていることが好ましい。地下水は、まず、吸水部から吸水され、次いで、ポンプ等により還元剤にまで運ばれ、次いで、還元剤で還元され、そして、還元された地下水が排水部から排出されるからである。排出された水は、重力又は地下水の流れ等により、給水部に移動しうる。
前記還元剤は、還元剤槽に保持されていることが好ましい。還元剤槽は土壌中に設けられてもよいし、地表に設けられても良い。
前記吸水部又は前記排水部は、井戸、地中壁、浸透マス、トレンチ又は窪みに設けられていることが好ましい。水の循環に関連して、ポンプを有することが好ましい。例えば、吸水部と排水部との間にポンプが配置されていてもよい。あるいは、吸水部の上部にポンプが配置されていてもよい。
従属栄養型嫌気性微生物の栄養源を更に有することが好ましい。循環させる前の水を栄養源に接触させることが好ましい。水を前記吸水部、前記還元剤、前記栄養源及び前記排水部の間で循環させて、前記汚染物を浄化することが好ましい。例えば、水は、吸水部、還元剤、栄養源、排水部という順序、又は、吸水部、栄養源、還元剤、排水部という順序に流れ、排水部から土壌中に排出され、重力又は地下水の流れに沿って、吸水部から再び吸水される。
栄養源を保持する栄養源槽を更に有することが好ましい。
本発明の他の側面では、ハロゲン化有機化合物を含む汚染土壌を浄化する浄化装置であって、前記汚染土壌の上部又は上流の地表に形成された窪みと、前記窪みに配置された、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤と、前記還元剤の上部に配置される、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源とを含む、ハロゲン化有機化合物を含む汚染土壌を浄化する浄化装置が提供される。
例えば、地表に、トレンチ等の浅い窪みを掘り、窪みの下部に第1層として、還元剤を充填し、その上部に従属栄養型嫌気性微生物の栄養源を第2層として充填してもよい。この場合には、窪みは、土壌中のハロゲン化有機化合物を含む汚染物の上部又は上流に設ける。地下水や、水道水をこの第2層の上部から散布してもよい。あるいは、このように散布することなく、雨水が第2層に流れ込むようにしてもよい。これにより、散布された水又は雨水が、まず栄養源を通過し、前記栄養源を含む水となり、次いで、還元剤で還元される。そして、還元された水が土壌に染み込み、土壌中の汚染物に届き、浄化することになる。
また、前記還元剤が固体であることが好ましい。前記栄養源が固体であることが好ましい。固体栄養源として、コンポスト、堆肥、余剰汚泥、有機物含有率が高い底泥、有機性廃棄物等の固体有機物を用いることが好ましい。
前記還元剤及び前記栄養源がそれぞれ層状に配置され、前記栄養源からなる層が前記還元剤からなる層を被覆していてもよい。固体栄養源が還元剤を被覆することになるので、還元剤が空気中の酸素を還元することで消費することを防止することができる。
発明の好ましい実施の形態
以下、添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1及び図2は、本発明の一実施態様の浄化装置を設置した状態を示す概略図である。
図1において、土壌は、地下水面4の上部の通気層1と、地下水面4の下部の帯水層2とを有している。帯水層2の下部には、難透水性層3が位置している。
帯水層2の一部がハロゲン化有機化合物で汚染された土壌2aであり、土壌2a中に含まれる地下水も同様にハロゲン化有機化合物で汚染されている。
図1に示す浄化装置Aは、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤により、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源と水とを含有する栄養液を還元する還元手段10と、前記汚染物中に還元された栄養液を導入する導入部20を介して、前記汚染物中に還元された栄養液を導入する導入手段30とを備える。ここで、上記還元剤は、固体状態の還元剤(以下、固体還元剤と称す)であり、例えば、鉄粉を好ましく用いることができる。鉄は、ステンレス鋼、鋳鉄、炭素鋼、還元鉄などの形態であってもよい。
また、還元剤としては、還元鉄、鋳鉄、鉄−シリコン合金、チタン合金、亜鉛合金、マンガン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、カルシウム合金、チタン−シリコン合金、チタン−アルミニウム合金、亜鉛−アルミニウム合金、マンガン−マグネシウム合金、アルミニウム−亜鉛−カルシウム合金、アルミニウム−スズ合金、アルミニウム−シリコン合金、カルシウム−シリコン合金からなる群より選ばれた少なくとも一種の還元剤を好ましく用いることができる。
上記栄養源は、浄化すべき汚染物中の微生物特性に応じて適当な栄養源を用いることができる。上記従属栄養型嫌気性微生物がメタン生成細菌である場合に好ましく用いることができる上記栄養源の一例を下記表6及び表7に示す。
Figure 0004160728
ミネラル1液とは、1リットルの蒸留水中に、6gのKHPOが含有している液をいう。
ミネラル2液とは、1リットルの蒸留水中に、6gのKHPO、6gの(NHSO、12gのNaCl、2.6gのMgSO・7HO、及び、0.16gのCaCl・2HOが含有している液をいう。
微量ミネラル液とは、1リットルの蒸留水中に、1.5gのニトリロ三酢酸、3.0gのMgSO・7HO、0.5gのMnSO・2HO、1.0gのNaCl、0.1gのFeSO・7HO、0.1gのCoSO又はCoCl、0.1gのCaCl・2HO、0.1gのZnSO、0.01gのCuSO・5HO、0.01gのAlK(SO、0.01gのHBO、及び、0.01gのNaMoO・2HOが含有している液をいう。まず、ニトリロ三酢酸をKOHでpH6.5にしつつ溶解させ、次いで、他のミネラルを添加する。最終的には、KOHによりpHが7.0に調整されている。
微量ビタミン液とは、1リットルの蒸留水中に、2mgのビオティン(biotin)、2mgの葉酸(folic acid)、10mgのピリドキシン(pyridoxine)・塩酸、5mgのチアミン・塩酸、5mgのリボフラビン(riboflavin)、5mgのニコチン酸(nicotinic acid)、5mgのDL−パントテン酸カルシウム(calcium pantothenate)、0.1mgのビタミンB12、5mgのp−アミノ安息香酸、及び、5mgのリポ酸(lipoic acid)を含有している液をいう。
Figure 0004160728
Figure 0004160728
上記従属栄養型嫌気性微生物が硫酸還元細菌である場合に好ましく用いることができる上記栄養源の一例を下記表8に示す。
Figure 0004160728
上記従属栄養型嫌気性微生物が硝酸還元細菌である場合に好ましく用いることができる上記栄養源の一例を下記表9に示す。
Figure 0004160728
また、上記栄養源として、有機態炭素及び有機態炭素の20〜50重量%、より好ましくは20〜30重量%の酸化態窒素を含有する培地を用いると、上記化学反応及び生物的反応に関与する微生物群を変化させ、硫化鉄等による土壌の黒変、メタンガスの発生並びにメルカプタン等の悪臭ガスの生成を抑制することができ、さらに、窒素ガスが発生するので、発生する水素ガスが希釈される。上記酸化態窒素は、硝酸塩の形態であることが好ましく、硝酸塩としては、硝酸アルカリ金属塩、硝酸アルカリ土類金属塩、硝酸鉄、硝酸チタン、硝酸マンガン、硝酸アルミニウム又は硝酸マグネシウムを好ましく用いることができる。特に、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム又は硝酸カルシウムを好ましく用いることができる。また、有機態炭素は、水溶性の有機炭素源であることが好ましく、糖類、有機酸若しくはその誘導体、低級アルコール、モラセル廃液、若しくは醸造廃液又はこれらの混合物を好ましく用いることができる。
上記還元手段10は、上記固体還元剤を含有し、地上に位置づけられた固体還元剤接触槽10である。上記導入部20は、固体還元剤接触槽10から還元された栄養液(以下、還元栄養液と称す)を受け取り且つ汚染物中に該還元栄養液を導入する地中に設置された導管20であり、典型的には井戸である。上記導入手段30は、導管20内に上記還元栄養液を送り込む注入ポンプ30である。
さらに本実施形態の浄化装置Aは、浄化すべき汚染物中の微生物特性に応じた栄養液を調整するための栄養液調整槽40を具備する。栄養液調整槽40と固体還元剤接触槽10との間は、第1の栄養液供給ライン41で連結されている。固体還元剤接触槽10と導管20との間は、第2の栄養液供給ライン42で連結されている。導管20の下部には、固体還元剤接触槽10から第2の栄養液供給ライン42を介して供給された上記還元栄養液を汚染物中に浸透させるためのストレーナ部21が設けられており、該ストレーナ部21が地中の帯水層2内に位置づけられるように、導管20は地中に設置されている。
上記ストレーナ部とは、導管の壁面を貫通する多数の貫通孔である。ストレーナ部の開口率は、10〜50%が好ましく、特に20〜40%であることが好ましい。導管は、さらに、ストレーナ部に巻かれた金網と、ストレーナ部以外の導管の壁面に巻かれたパッカ(図示せず)と、を具備する。該金網は、導管内部に砂利等が侵入することを防止するものであり、該パッカは、導管を地中に固定する際に膨張するものであり、パッカが吸水することにより膨張するものと、パッカにガスを注入して膨張するものとがある。
導管20の設置は、以下の手順で行われる。すなわち、ボーリング機械で堀削して深い穴を形成し、堀削完了後、ボーリング機械を穴から引き抜く。次いで、穴の中に、下部にストレーナ部21が形成されており開口頂部20aと閉鎖底部20bとを有する好ましくはステンレス鋼製の導管20を挿入する。次いで、典型的には、土壌中の水分により、導管20に巻かれているパッカ(図示せず)が膨張する。さらにケイ砂等を入れて、導管20の周りの空隙を埋め、最後に、地表面近傍にセメントを流し込み固めて、導管20の設置が完了する。
上記固体還元剤接触槽10は、図2(a)に示すように、第1の栄養液供給ライン41が固体還元剤接触槽10の頂部10aに連結されていても、図2(b)に示すように、第1の栄養液供給ライン41が固体還元剤接触槽10の底部10bに連結されていてもよい。上記固体還元剤接触槽10は、下部に設けられた支持床11と、支持床11に支持されている固体還元剤接触部12と、固体還元剤接触部12の上方の第1の空隙部13と、固体還元剤接触部12の下方の第2の空隙部14と、を含む。上記固体還元剤接触部12は、砂礫などの担体と、該担体に担持又は担体に混合された上記固体還元剤とを含む。ここで固体還元剤は、例えば、500μm以下の大きさの粉末である。上記支持床11は、栄養液を通過させるが上記固体還元剤を通過させない程度の大きさの多数の小さな孔を有する。支持床は、例えば、ステンレス鋼から構成される板状部材である。上記第1の空隙部13及び第2の空隙部14は、第1の栄養液供給ライン41から供給された栄養液が上記固体還元剤接触部12に常に所望の速度で流れるために十分な大きさである。
図2(a)に示すように、第1の栄養液供給ライン41が固体還元剤接触槽10の頂部10aに連結されている場合には、固体還元剤接触槽10の頂部10aに供給された栄養液は自重により、固体還元剤接触部12を貫通して流れ、還元される。一方、図2(b)に示すように、第1の栄養液供給ライン41が固体還元剤接触槽10の底部10bに連結されている場合には、固体還元剤接触槽10の頂部10aに連結されている第2の栄養液供給ライン42にポンプ等を設けて、強制的に吸引する必要がある。
また、図2(a)に示すように、第2の栄養液供給ライン42に三方コック43を設けて、三方コック43を介して逆洗時通水ライン44を連結させることもできる。この場合には、逆洗時通水ライン44を介して、固体還元剤接触槽10内部に下部から上部に洗浄水を通水することによって、固体還元剤接触部12を逆洗することができる。これにより、固体還元剤接触部12及び支持床11の細孔の目詰まりを防止することができる。
図2(a)又は図2(b)に示す固体還元剤接触槽10の構造は、固体栄養源接触槽の構造として用いることもできる。上記固体還元剤接触部12に、担体と上記固体還元剤とを充填する代わりに、従属栄養型嫌気性微生物の固体栄養源を単独で又は更に担体と共に充填すればよい。固体栄養源接触槽に水を通すことにより、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源を含む水を得ることができる。そして、このような固体栄養源接触槽を図1の栄養液調整槽40の代わりに又は栄養液調整槽40とともに用いても良い。
あるいは、上記固体還元剤接触部12に、担体と、上記固体還元剤と、従属栄養型嫌気性微生物の固体栄養源とを充填してもよい。そして、このような固体還元剤接触槽を図1の栄養液調整槽40の代わりに又は栄養液調整槽40とともに用いても良い。固体栄養源接触槽及び従属栄養型嫌気性微生物の固体栄養源も含む固体還元剤は、本発明の他の実施形態にも同様に適用できる。
本実施形態の浄化装置Aを用いるハロゲン化有機化合物で汚染された地下水や土壌などの汚染物の浄化方法は、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤が、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源と水とを含有する栄養液を還元する還元工程と、前記還元工程の後、好ましくは直後に、還元された栄養液を前記汚染物に導入する導入工程と、を含む。上記還元工程は、固体還元剤接触槽10内部で行われ、上記導入工程は、導管20にて行われる。詳細には、まず、栄養液調整槽40に、適当な栄養剤と水とを添加して十分に攪拌して栄養液を調整する。なお、添加する水の量には制限がなく、井戸近傍の地下水位が上昇して地表に達しない範囲で、任意に設定することができる。
次に、調整された栄養液は、第1の栄養液供給ライン41を介して、注入ポンプ30により、固体還元剤接触槽10に供給される。固体還元剤接触槽10に供給された栄養液は、固体還元剤接触部12を通過しながら固体還元剤と接触して、還元される。十分に還元された還元栄養液は、支持床11の小さな孔及び第2の空隙部14を通過して、第2の栄養液供給ライン42を介して、還元状態に維持されたまま、導管20に流し込まれる。導管20に流し込まれた還元栄養液は、導管20の下方に形成されているストレーナ部21を介して汚染物中に浸透して、汚染物に含有されているハロゲン化有機物と反応して脱ハロゲン化すると同時に、汚染物中に存在する従属栄養型嫌気性微生物の活性を高め、微生物による生物分解反応を促進して、汚染物を浄化する。
次に、本発明の浄化装置の第2の実施形態を図3に示す。図3は、還元剤として水溶性還元剤を用いた浄化装置を設置した状態を示す該略図である。水溶性還元剤としては、有機酸若しくはその誘導体、次亜リン酸若しくはその誘導体、又は有機酸又は次亜リン酸と鉄、チタン、亜鉛、マンガン、アルミニウム又はマグネシウムとからなる塩、又は硫化物塩を好ましく用いることができる。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、フェノール酸若しくはその誘導体等を好ましく用いることができる。カルボン酸としては、1〜20の炭素原子を有し且つ水酸基で置換されていてもよいモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸を好ましく用いることができる。具体的には酢酸、クエン酸、テレフタル酸等が好ましく、特に、クエン酸等の2〜10の炭素原子を有する脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
上述した表5に示すように、ギ酸、シュウ酸については、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVではなく、本発明の還元剤に該当しない。しかし、ギ酸、シュウ酸の誘導体、例えば、これらの塩については、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVの範囲であり、本発明の還元剤に該当する場合があり得る。
フェノール酸の誘導体としては、ポリヒドロキシアリールを好ましく用いることができる。ポリヒドロキシアリールとしては、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。また、有機酸の誘導体としては、塩、エステル、アミド、酸無水物等が好ましい。次亜リン酸の誘導体としては、塩、エステル等を好ましく用いることができるが、塩が特に好ましい。
本実施形態の浄化装置Bは、還元手段が水溶性還元剤混合装置100であり、水溶性還元剤タンク150と、還元剤供給ライン151と、還元剤供給ライン151に設けられているポンプ160を含む点を除いて、図1に示した第1の実施形態と同じである。図1と同じ要素には、同じ符号を付して示す。水溶性還元剤混合装置100は、栄養液調整槽140からの第1の栄養液供給ライン141と、水溶性還元剤タンク150からの還元剤供給ライン151と、を受け入れる。本実施形態において、水溶性還元剤混合装置100は、ラインミキサ100である。水溶性還元剤混合装置100と地中に設置された導管20との間には、第2の栄養液供給ライン142が連結されている。導管20は、下方に形成されているストレーナ部21を有する。
本実施形態の浄化装置Bを用いる汚染物の浄化方法は、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤が、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源と水とを含有する栄養液を還元する還元工程と、前記還元工程の後、好ましくは直後に、還元された栄養液を前記汚染物に導入する導入工程と、を含む。上記還元工程は、水溶性還元剤混合装置100内で行われ、上記導入工程は、導管20にて行われる。詳細には、まず、栄養液調整槽140に、浄化されるべき汚染物中の微生物特性に応じた培地及び水を添加し、十分に攪拌する。一方、水溶性還元剤タンク150には、汚染物に応じた水溶性還元剤を入れておく。栄養液は、栄養液調整槽140から、第1の栄養液供給ライン141を介して、ポンプ130により、水溶性還元剤混合装置すなわちラインミキサ100に供給される。水溶性還元剤は、水溶性還元剤タンク150から還元剤供給ライン151を介して、ポンプPにより、水溶性還元剤混合装置すなわちラインミキサ100に供給される。ラインミキサ100にて、栄養液と水溶性還元剤は十分に混合されて、栄養液は還元される。還元栄養液は、第2の栄養液供給ライン142を介して導管20に流し込まれ、導管20の下方のストレーナ部21を介して汚染物に浸透して、汚染物に含有されているハロゲン化有機化合物と化学反応を起こして脱ハロゲン化すると同時に、汚染物中の微生物活性を高めて、生物分解反応を促進して、汚染物を浄化することができる。
次に、本発明の第3の実施形態を図4に概略的に示す。本実施形態の浄化装置Cは、図1に示す浄化装置Aの導管20の代わりに、一対の傾斜部220c及び220dと、帯水層2に横方向に挿入されているストレーナ部221と、を有する導入部220を備える点を除いて、図1に示す浄化装置Aと同様の構成である。第1の傾斜部220cは、地表に位置づけられている開口端部220aを有し、該開口端部220aから第2の栄養液供給ライン241を介して、固体還元剤接触槽210にて還元された栄養液を受け入れる。ストレーナ部221は、帯水層2内に水平に位置づけられており、還元栄養液を帯水層2内に通過させる。第2の傾斜部220dは、地表に突出する閉鎖端部220bを有する。あるいは、固体還元剤接触槽210の代わりに、図3に示す水溶性還元剤混合装置100を用いても良い。
図4に示すいわゆる水平井戸は、図4A及び図4Bのようにして施工することができる。まず、水平掘り機械250を用いて、地表の入り口252から出口254に向けて、水平に穴を掘る。穴が掘り終わったときには、リーマが出口254から地表に出ることになる。
ついで、図4Bに示すように、出口254からフレキシブルパイプ220c等を穴に入れ、掘削時のリーマを入り口252から引っ張る。そうすると、リーマが穴を通って入り口252から引戻され、フレキシブルパイプが穴の中に配置されることになる。最後に、所望により、出口254を埋めても良い。
本実施形態の浄化装置Cを用いる汚染物の浄化方法は、ストレーナ部221から垂直方向に還元栄養液が流出する点を除いて、第1又は第2の実施形態と同様である。本実施形態の浄化装置C及び浄化方法は、浄化すべき汚染物を含む地下水又は土壌等の真上の地表面に、工場など建物がある場合に有効である。
なお、図4では、ストレーナ部221は水平方向に伸びているが、ストレーナ部が傾斜していてもよい。また、施工方法によっては、傾斜部220dを省略することもできる。
ストレーナ部が傾斜している場合を図4Cに示す。図4と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。汚染部2aの上部に建物9がある場合には、建物の内部から垂直に井戸を掘ることができない。この場合には、建物の外側から汚染部2aに向かって斜め井戸222を掘ってもよい。斜め井戸222の端部には、ストレーナ部223を設け、ストレーナ部223は好ましくは汚染部2aに届いている。還元槽210で還元された栄養液が斜め井戸222のストレーナ部223を介して、汚染部2aに流入し、栄養液に伴う生物学的脱ハロゲン化及び還元剤に伴う化学的脱ハロゲン化の相乗効果により汚染部を浄化する。
次に、本発明の第4の実施形態及び第5の実施形態を図5及び図6に概略的に示す。本実施形態は、還元栄養液循環処理型の浄化装置Dである。ここで、図5は、還元剤として固体還元剤を用いた場合、図6は還元剤として水溶性還元剤を用いた場合を示す。
図5に示されている浄化装置Dは、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤により、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源と水とを含有する栄養液を還元する還元手段310と、前記汚染物中に還元された栄養液を導入する導入部320を介して、前記汚染物中に栄養液を導入する導入手段330と、汚染物を前記導入部320に導入する揚水手段360と、を備える。上記還元剤は上述の固体還元剤を用いることができる。上記栄養源は、浄化すべき汚染物中の微生物活性に応じて、適当な栄養源を用いることができる。上記還元手段310は、固体還元剤接触部310である。上記導入部320は、地中に設置された導管320である。上記導入手段330は、注入ポンプ330である。上記揚水手段360は、水中ポンプ360である。
導管320の頂部320aは、その内部を外気から遮断するために、密閉されていることが好ましい。所望により、導管320の内部の圧力を上昇することができる。
さらに、浄化装置Dは、地上に設けられた栄養液調整槽340と、栄養液調整槽340にて調整された栄養液を固体還元剤接触部310まで供給する第1の栄養液供給ライン341を含む。上記注入ポンプ330は、第1の栄養液供給ライン341に設けられている。
浄化装置Dにおいて、上記固体還元剤接触部310は、導入部すなわち導管320内に位置づけられている。固体還元剤接触部310は、砂礫などの担体と該担体に担持された固体還元剤とを含む。導管320は、壁面に形成された複数の孔からなる上部ストレーナ部321及び下部ストレーナ部322を有する。上部ストレーナ部321と下部ストレーナ部322とは、導管320の壁面において互いに離隔した部位に形成されており、下部ストレーナ部322が帯水層2内に位置づけられるようになされている。上部ストレーナ部321は帯水層2内に配置されていてもよいし、通気層1内に配置されていてもよい。上部ストレーナ部321が地下水面4の少し上の通気層1に配置されている場合に、浄化装置Dの運転が開始するときには、地下水面4が局地的に変動し、上部ストレーナ部321の位置が帯水層2になることもありうる。
固体還元剤接触部310は、上部ストレーナ部321と下部ストレーナ部322との間に位置づけられている。水中ポンプ360は、固体還元接触部310の下方で、下部ストレーナ部322の上方の位置に、導管320内に設けられており、帯水層2から地下水を導管320内に汲み上げる。固体還元剤接触部310の上方で、上部ストレーナ部321の下方には、ラインミキサ370が位置づけられている。下部ストレーナ部322は、汚染物特に地下水を導管320内部に導入するための貫通孔として機能する。上部ストレーナ部321は、固体還元剤接触部310において還元された栄養液を汚染物内に導入するための貫通孔として機能する。
ラインミキサ370は、水中ポンプ360により、下部ストレーナ部322を介して、帯水層2から汲み上げられ、そして、固体還元剤接触部310において還元された地下水と、栄養剤供給ライン241を介して注入された栄養液と、を混合する。
本実施形態の浄化装置Dを用いる地下水の浄化方法は、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤が、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源と水とを含有する栄養液を還元する還元工程と、前記還元工程の後、好ましくは直後に、還元された栄養液を前記汚染物に導入する導入工程と、を含む。上記還元工程は、固体還元剤接触部310にて行われ、上記導入工程は、導管320にて行われる。
詳細には、まず、地下水中の微生物特性に応じた適当な培地と水とを栄養液調整槽340にて攪拌混合して、栄養液を調整する。次いで、栄養液を第1の栄養液供給ライン341を介して、導管320内の固体還元剤接触部310に供給して、固体還元剤と接触させて還元する。還元された栄養液は、ラインミキサ370を通過して、上部ストレーナ部321を介して帯水層2内の地下水中に導入される。
同時に、固体還元剤接触部310には、水中ポンプ360により、下部ストレーナ部322を介して、帯水層2から汚染地下水が導管320内に汲み上げられる。汲み上げられた汚染地下水は、固体還元剤接触部310にて、固体還元剤及び還元栄養液と接触し、さらに、ラインミキサ370に送られて十分に混合される。
あるいは、栄養液を第1の栄養液供給ライン341を介して、固体還元剤接触部310の上部に注入する。一方、汲み上げられた汚染地下水は、固体還元剤接触部310にて、還元される。そして、栄養液と還元された地下水とがラインミキサ370で十分に混合される。
こうして、ハロゲン化有機化合物で汚染された地下水は、還元剤による脱ハロゲン化反応及び活性化された微生物による生物分解反応を受けて浄化される。浄化された地下水は、上部ストレーナ部321を介して、再び帯水層2に戻される。そして、上部ストレーナ部321から排出された、浄化された地下水は重力により下方に移動し、再び、下部ストレーナ部322から汲み上げられる。
このように、地下水は、帯水層2と導管320との間で循環するので、汚染部2aには還元剤及び従属栄養型嫌気性微生物の栄養源が供給され、還元剤による化学反応と、活性化された従属栄養型嫌気性微生物による生物分解反応との組み合わせにより、脱ハロゲン化が進行する。
あるいは、図5Aに示すように、ラインミキサ370は、ポンプ360及び固体還元剤接触部310の間に配置されてもよい。即ち、導管320の内部に、下から上に、下部ストレーナ部322、ポンプ360、ラインミキサ370、固体還元剤接触部310及び上部ストレーナ部321の順序に配置してもよい。図5Aでは、栄養液供給ライン341は、ポンプ360とラインミキサ370との間まで延びており、栄養液をポンプ360とラインミキサ370との間に注入することができる。
ポンプ360が下部ストレーナ部322から地下水を汲み上げ、この地下水に栄養液が注入され、ラインミキサ370で地下水及び栄養液が混合される。そして、栄養液を含有する地下水が還元剤で還元され、次いで、上部ストレーナ部321から排出される。
あるいは、図5Bに示すように、ラインミキサを省略してもよい。即ち、導管320の内部に、下から上に、下部ストレーナ部322、ポンプ360、固体還元剤接触部310及び上部ストレーナ部321の順序に配置してもよい。栄養液供給ライン341は、ポンプ360の下部まで延ばし、栄養液をポンプ360の下部に注入してもよい。この場合には、下部ストレーナ部322から吸い込まれた地下水と栄養液とは、ポンプ360の内部で混合することができる。
あるいは、栄養液供給ライン341は、固体還元剤接触部310の上部又は下部まで延ばし、栄養液を固体還元剤接触部310の上部又は下部に注入してもよい。この実施形態では、配管の内部を地下水及び栄養液が移動する過程で地下水と栄養液とが自然に混合することになる。栄養液を固体還元剤接触部310の上部又は下部に注入する場合、特に、ポンプ360より上部に栄養液を注入する場合には、栄養液供給ライン341の内部に地下水が逆流することを防止するための逆止弁を設けることが好ましい。
ラインミキサを省略した場合には、あるいは、導管320の内部に、下から上に、下部ストレーナ部322、固体還元剤接触部310、ポンプ360、上部ストレーナ部321の順序に配置してもよい。
図6は、還元剤として水溶性還元剤を用いる場合の循環処理型の浄化装置Eを示す概略図である。浄化装置Eは、浄化装置Dの固体還元剤接触部310を含まず、ラインミキサ410、水溶性還元剤タンク450及び還元剤供給ライン451を含む点などで、図5に示す浄化装置Dと異なる。すなわち、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤により、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源と水とを含有する栄養液を還元する還元手段410と、前記汚染物中に還元された栄養液を導入する導入部420を介して、前記汚染物中に還元された栄養液を導入する導入手段430と、汚染物を前記導入部420に導入する揚水手段460と、を備える。水溶性還元剤としては、上述の水溶性還元剤を用いることができ、栄養源は、汚染物中の微生物活性に応じて適当な栄養源とすることができる。また、上記還元手段410は、地表に設けられたラインミキサ410である。上記導入部420は、地中に設置された導管420である。上記揚水手段460は、導管420内に設けられた水中ポンプ460及び下部ストレーナ部422である。
さらに浄化装置Eは、地上に設けられた栄養液調整槽440と、栄養液調整槽440から延びる第1の栄養液供給ライン441と、第1の栄養液供給ライン441に設けられている注入ポンプ430と、水溶性還元剤タンク450と、水溶性還元剤タンク450から延びる還元剤供給ライン451と、還元剤供給ライン451に設けられている注入ポンプ455と、を備える。第1の栄養液供給ライン441及び還元剤供給ライン451は、地表に設けられているラインミキサ410に連結されている。導管420の内部には、図5と異なって、栄養液を還元する還元手段が設けられていない。
本実施形態の浄化装置Eを用いて、地下水を浄化するには、まず、地下水中の微生物特性に応じた培地と水とを栄養液調整槽440にて調整すると同時に、水溶性還元剤タンク450に適当な水溶性還元剤を入れておく。次いで、第1の栄養液供給ライン441から栄養液を、還元剤供給ライン451から水溶性還元剤を、ラインミキサ410に供給し、ラインミキサ410内で混合させる。ラインミキサ内で栄養液は水溶性還元剤により還元される。
還元された栄養液は、管423を介して、導管420内に配置されているラインミキサ470の下方に供給される。一方、水中ポンプ460により、下部ストレーナ部422を介して地下水を導管420内に導入する。水中ポンプ460は、導管420内に導入された地下水及び還元された栄養液をラインミキサ470に導入し、ラインミキサ470内で両者を混合させる。地下水及び還元された栄養液の混合物は、上部ストレーナ部421を介して帯水層2内に浸透し、下部ストレーナ部422を介して水中ポンプ460により導管420に再び汲み上げられる。こうして、還元栄養液及び地下水の循環が生じ、この循環の間に、汚染された地下水は還元剤による脱ハロゲン化反応と活性化された従属栄養型嫌気性微生物による生物分解反応とを受けて、浄化される。
図7は、本発明の第6実施形態を示す概略図である。本実施形態は、図5又は図6の上部ストレーナ部及び下部ストレーナ部の代わりに、それぞれストレーナ部を有する井戸が一対設けられている点を除いて、図5又は図6に示す実施形態と同様であり、循環処理型の浄化装置Fを示す。浄化装置Fは、還元手段510と、導入部520を介して還元栄養物を導入する導入手段530と、揚水手段560と、を備える。ここでは、還元剤として固体還元剤を用いる場合を示す。上記還元手段510は、固体還元剤接触槽510である。上記導入部520は、一対の注入井戸520、520’である。上記栄養物導入手段530は、揚水井戸580の下方に位置づけられている水中ポンプ560である。
浄化装置Fは、栄養液調整槽540と、栄養液調整槽540から栄養液を固体還元剤接触槽510を経由して、注入井戸に送り込む注入ポンプ530と、栄養液調整槽540と固体還元剤接触槽510との間を連結する第1の栄養液供給ライン541と、固体還元剤接触槽510から延びて注入井戸520、520’に受け入れられる第2の栄養液供給ライン542と、揚水井戸580と、揚水井戸580を介して水中ポンプ560により汲み上げられた汚染物を栄養液調整槽540に導入する汚染物導入ライン543と、を含む。固体還元剤接触槽510の構造は、図2(a)及び図2(b)において説明したものと同様である。注入井戸520,520’は、それぞれ開放頂部520a、520a’と、閉鎖底部520b、520b’と、下方に形成された多数の開孔からなるストレーナ部521、521‘と、を有する。揚水井戸580は、開放頂部580cと、閉鎖底部580bと、下方に形成された多数の開孔からなるストレーナ部522と、を有し、閉鎖底部580bに位置付けられた水中ポンプ560を含む。注入井戸520、520’及び揚水井戸580は、それぞれのストレーナ部521、521’、522が帯水層2内に位置付けられるように、また、一対の注入井戸520の間に揚水井戸580が位置付けられるように、地中に設置されている。
もっとも、注入井戸520、520’のストレーナ部521、521’は通気層1に配置されていてもよい。注入井戸520、520’のストレーナ部521、521’は、揚水井戸580のストレーナ部522の上流に配置されていることが好ましい。特に、揚水手段560により、地下水が汲み上げられたときに、注入井戸520、520’のストレーナ部521、521’は、地下水の流れに対して、揚水井戸580のストレーナ部522の上流に配置されていることが好ましい。
本実施形態の浄化装置Fは、一対の注入井戸520,520’のストレーナ部521、521’を介して帯水層2中に導入された還元栄養液が、注入井戸520,520’の間に位置付けられている揚水井戸580のストレーナ部522を介して帯水層2から揚水井戸580内に導入され、大きな水位勾配を作れるので循環速度が増大する。また、汚染物は揚水井戸580と注入井戸520,520’との間を循環するので、汚染物の拡散が防止される。さらに、汚染部位の大きさに応じて、注入井戸520,520’及び揚水井戸580の設置場所を変えることができる。
なお、本実施形態は、固体還元剤を用いる場合を示したが、水溶性還元剤を用いる場合には、上記固体還元剤接触槽510の代わりに、水溶性還元剤混合部510’を用いてもよい。
図8は、図7に示した第6の実施形態と同様の循環処理型の浄化装置Gであって、浄化すべき汚染物を含む土壌の上に工場などの障害物がある場合の適用例を示す概略図である。浄化装置Gは、還元手段610と、導入部620を介して還元栄養液を汚染物に導入する導入手段630と、揚水手段660と、を備える。還元手段610は、固体還元剤接触槽又は水溶性還元剤混合槽610である。導入手段620は、開放頂部620aと、閉鎖底部620bと、下方に形成された多数の開孔からなるストレーナ部621と、を含む注入井戸620である。導入手段630は、注入ポンプ630である。揚水手段660は、水中ポンプ660である。注入ポンプ630は、栄養液調整槽640から栄養液を供給する第1の栄養液供給ライン641に設けられている。第1の栄養液供給ライン641は、固体還元剤接触槽又は水溶性還元剤混合槽610に連結されている。固体還元剤接触槽又は水溶性還元剤混合槽610は、第2の栄養液供給ライン642に連結され、第2の栄養液供給ライン642は、注入井戸620に受け入れられる。揚水井戸680は、開放頂部680aと、閉鎖底部680bと、下方に形成された多数の開孔からなるストレーナ部622と、を有し、閉鎖底部680bに位置付けられた水中ポンプ660を含む。揚水井戸680と栄養液調整槽640との間は、汚染物供給ライン643で連結されている。
注入井戸620と揚水井戸680とは、帯水層2中において、注入井戸620が地下水の流れの上流側に、揚水井戸680が地下水の流れの下流側に、それぞれ位置付けられて設置されている。注入井戸620と揚水井戸680との間の隔離距離は、地上にある障害物の大きさにより適当に選択される。
本実施形態の浄化装置Gを用いて、地下水を浄化する場合には、栄養液調整槽640から第1の栄養液供給ライン641を介して固体還元剤接触槽610に供給し、栄養液を還元した後、還元栄養液を第2の栄養液供給ライン642を介して注入井戸620に導入され、下方のストレーナ部621を貫通して帯水層2内の汚染物中に導入される。帯水層2内で地下水は注入井戸620から揚水井戸680に向かって流れるので、帯水層2からは汚染物及び浄化された汚染物が水中ポンプ660により揚水井戸680内に導入され、次いで汚染物供給ライン643を介して栄養液調整槽640に導入される。こうして、障害物があって直接には還元栄養液を導入することができない汚染物を浄化することができる。また、注入井戸620を相対的に浅い位置に設置して、揚水井戸680を相対的に深い位置に設置する場合には、地下水の流れに加えて、注入井戸620から流出した還元栄養液の自重により揚水井戸680に流入するので、循環速度が増大する、という利点がある。また、本実施形態は、帯水層2の厚さが大きい場所で使用するときに有効である。
図9は、本発明の第8の実施形態を示す概略図である。図9では、地上に工場などの障害物があり、且つ帯水層2の厚さがあまり大きくない場所での適用例を示す。本実施形態の浄化装置Hは、還元手段710と、導入部720を介して還元栄養液を導入する導入手段730と、を備える。還元手段710は、固体還元剤接触槽又は水溶性還元剤混合槽である。導入部720は、開放端部720aと、開放端部720aから斜めに地中に延びる第1の傾斜部720cと、第1の傾斜部720cに連結されており帯水層2に水平に挿入されている水平部720eと、水平部720eに連結されており地上に向かって斜めに延びる第2の傾斜部720dと、第2の傾斜部720dの地上側端部である閉鎖端部720bと、を有する。開放端部720aは、固体還元剤接触槽710から延びる第2の栄養液供給ライン742を受け入れる。第1の傾斜部720cは、帯水層2の地下水の流れの下流側に位置付けられている。第2の傾斜部720dは、帯水層2の地下水の流れの上流側に位置付けられている。閉鎖端部720bは地上に突出して密閉されている。水平部720eは、下流側ストレーナ部721a、水中ポンプ760及びラインミキサ770及び上流側ストレーナ部721bをこの順序に含む。水中ポンプ760は、帯水層2から汚染地下水を下流側ストレーナ部721aを介して、水平部720e内に吸入して、ラインミキサ770に供給する。吸入された汚染地下水は、ラインミキサ770にて、第2の栄養液供給ライン741から供給された還元栄養液と混合されて浄化される。ラインミキサ770にて混合された還元栄養液及び浄化された地下水は、上流側ストレーナ部721bを介して再び帯水層2内に戻される。上記導入手段730は、栄養液調整槽740からの第1の栄養液供給ライン741に設けられている注入ポンプ730である。
本実施形態の浄化装置Hは、地上に工場などの障害物があり且つ帯水層2の地下水の厚さが小さい場合に有効であり、汚染地下水を揚水せずに循環させることができるので、揚水処理が不要である、という利点がある。
なお、図9では、水平部221は水平方向に伸びているが、水平部が傾斜していてもよい。また、施工方法によっては、傾斜部720dを省略することもできる。
図9に示すように、水平部720eは汚染土壌2aの下方に位置してもよいし、あるいは、水平部720eが汚染土壌2aの中央を水平方向に貫いてもよく、水平部720eが汚染土壌2aの中央を水平方向に貫くことが好ましい。特に、上流側ストレーナ部721b及び下流側ストレーナ部721aは、それぞれ、地下水の流れ790に対して、汚染土壌2aより上流及び下流に位置することが好ましく、汚染土壌2aより、若干、上流及び下流に位置することが更に好ましい。
図10は、本発明の第9の実施形態を示す。第9の実施形態の浄化装置Iは、還元手段すなわち固体還元剤接触部810が地上ではなく、帯水層2中に水平に位置付けられている水平部820eに位置付けられている点を除いて、図9に示す第8の実施形態と同様の構成である。即ち、水平部820eは、下流側ストレーナ部821a、水中ポンプ860及びラインミキサ870、及び上流側ストレーナ部721bをこの順序に含む。
水中ポンプ860は、帯水層2から汚染地下水を下流側ストレーナ部821aを介して、8平部720e内に吸入して、ラインミキサ870に供給する。吸入された汚染地下水は、ラインミキサ870にて、第2の栄養液供給ライン841から供給された栄養液と混合される。ラインミキサ870にて混合された栄養液及び地下水は、固体還元剤接触部810により還元され、次いで、上流側ストレーナ部821bを介して再び帯水層2内に戻される。
この場合には、第8の実施形態で得られる利点の他に、地下水が繰り返し還元剤と接触することにより、より十分な脱ハロゲン化反応を起こすことができる、という利点がある。
図10に示すように、水平部820eは汚染土壌2aの下方に位置してもよいし、あるいは、水平部820eが汚染土壌2aの中央を水平方向に貫いてもよく、水平部820eが汚染土壌2aの中央を水平方向に貫くことが好ましい。特に、上流側ストレーナ部821b及び下流側ストレーナ部821aは、それぞれ、地下水の流れ890に対して、汚染土壌2aより上流及び下流に位置することが好ましく、汚染土壌2aより、若干、上流及び下流に位置することが更に好ましい。
図11は、本発明の第10の実施形態を示す。本実施形態の浄化装置Jは、浄化装置Gの注入井戸620及び揚水井戸680の代わりに、注入壁920及び揚水壁980からなる一対の地中壁を利用する点を除いて、図8に示す第7の実施形態と同様の構成である。地中壁920及び980は、同様の構造であるから、地中壁920を例にして、地中壁の構造を説明する。地中壁920は、開放端部920aと、地中に掘られた深い溝920cと、底部920bと、からなる。深い溝920cには、溝が崩れないように、砂又は砂利等の通気性・通液性に優れた要素が埋没されている。地中壁920の深い溝920cは、地中壁の側壁を形成するが、上記通気性・通液性の優れた要素が堆積して形成されているので、壁面全体がストレーナ部と同様の機能を奏する。したがって、地中壁920を導入部として用いる場合には、いずれの部分からも栄養液が帯水層2中に導入される。一方、地中壁980は底部980bに、帯水層2から地下水を汲み上げる水中ポンプ960を含み、底部980b近辺から地下水が揚水壁980内に導入される。地中壁920及び980を用いる場合には、注入壁920のいずれの部分からも還元栄養液が帯水層2中に導入され、揚水壁980の下方から水中ポンプ960によって地下水が汲み上げられるので、帯水層2の地下水の水位が高く、水位勾配が小さい場合に、水平方向の広範囲にわたって還元栄養液を拡散できる、という利点がある。
図12(a)、図12(b)及び図12(c)は、水位等高線を実線で、地下水流線を矢印で示す。図12(a)及び図12(b)は、ストレーナ部を有する井戸を用いた場合の水位等高線及び地下水流線を示す。水位勾配が大きい場合には図12(a)に示すように、栄養液が水平方向に広く拡散することができる。一方、水位勾配が小さい場合には図12(b)に示すように、栄養液の水平方向への拡散は限られる。これは、ストレーナ部からの流出量が小さく、水位勾配を上回る水平方向への拡散効果が得られないからである。
しかし、水位勾配が小さい場合であっても、地中壁を用いることにより、広範囲にわたって水平方向への拡散を行わせることができる。図12(c)は、地中壁を用いた場合の水位等高線及び地下水流線を示す。地中壁では、栄養液の流出が地中壁全体から生じるので、広範囲にわたって水平方向への拡散を行わせることができる。
本発明の浄化装置及び浄化方法の一側面によれば、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を効率的に且つ簡易に浄化することができる。特に、還元された栄養液により従属栄養型微生物の活性を高めることによる良好な生物分解反応と、還元剤による脱ハロゲン化反応と、を組み合わせることで、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を良好に浄化することができる。
また、本発明の一側面の浄化装置及び浄化方法によれば、現場にて簡易に且つ連続的に、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化することができる。
図13及び図14は、本発明の一実施態様の浄化装置を設置した状態を示す概略図である。
図13において、土壌は、地下水面4の上部の通気層1と、地下水面4の下部の帯水層2とを有している。帯水層2の下部には、難透水性層3が位置している。帯水層2の一部がハロゲン化有機化合物で汚染された土壌2aであり、土壌2a中に含まれる地下水も同様にハロゲン化有機化合物で汚染されている。
図13に示す浄化装置Kは、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤を保持する還元槽1010と、吸水部1022及び排水部1021を有し、少なくとも前記吸水部1022が汚染物中の流動可能な水に満たされた部位すなわち本実施形態においては帯水層2中に位置づけられるハウジング1020と、を備え、地下水を帯水層2及びハウジング1020の間で循環するように構成されている。ここで、上記還元剤は、固体状態の還元剤(以下、固体還元剤と称す)であり、例えば、鉄粉を好ましく用いることができる。鉄は、ステンレス鋼、鋳鉄、炭素鋼、還元鉄などの形態であってもよい。
また、還元剤としては、還元鉄、鋳鉄、鉄−シリコン合金、チタン合金、亜鉛合金、マンガン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、カルシウム合金、チタン−シリコン合金、チタン−アルミニウム合金、亜鉛−アルミニウム合金、マンガン−マグネシウム合金、アルミニウム−亜鉛−カルシウム合金、アルミニウム−スズ合金、アルミニウム−シリコン合金、カルシウム−シリコン合金からなる群より選ばれた少なくとも一種の還元剤を好ましく用いることができる。
上記吸水部1022は、ハウジング1020の下部壁面に設けられている多数の貫通孔からなるストレーナ部である。上記排水部1021は、ハウジング1020のほぼ中央部壁面に設けられている多数の貫通孔からなるストレーナ部である。もっとも、排水部1021の位置は、ハウジング1020の中央部に限定されるものではなく、ハウジング1020を吸水部1022が帯水層2内に位置づけた際に、排水部1021が帯水層2の上部若しくは帯水層2のわずかに上方に位置づけられるように形成されていればよい。ストレーナ部の開口率は、10〜50%が好ましく、特に20〜40%であることが好ましい。
ハウジング1020は、さらに、ストレーナ部に巻かれた金網と、ストレーナ部以外の導管の壁面に巻かれたパッカ(図示せず)と、を具備する。該金網は、ハウジング1020内部に砂利等が侵入することを防止するものであり、該パッカは、ハウジング1020を地中に固定する際に吸水して膨張するものである。なお、ハウジング1020を土壌中に垂直方向に設置する場合には、以下の手順で行われる。すなわち、ボーリング機械で堀削して深い穴を形成し、堀削完了後、ボーリング機械を穴から引き抜く。次いで、穴の中に、ハウジング1020を挿入する。すると、ハウジング1020の外周壁に巻かれているパッカ(図示せず)が、ハウジング1020と土壁との間に存在する水分を吸収して膨張する。さらにケイ砂等を入れて、ハウジング1020の周りの空隙を埋め、最後に、地表面近傍にセメントを流し込み、固めて、ハウジング1020の設置が完了する。
上記還元槽1010は、図14に示すように、下部に設けられた支持床1011と、支持床1011に支持されている固体還元剤接触部1012と、固体還元剤接触部1012の上方の第1の空隙部1013と、固体還元剤接触部1012の下方の第2の空隙部1014と、を含む。上記固体還元剤接触部1012は、砂礫などの担体と、該担体に担持された上記固体還元剤とを含む。ここで固体還元剤は、例えば、500μm以下の大きさの粉末である。上記支持床1011は、地下水を通過させるが上記固体還元剤を通過させない程度の大きさの多数の小さな孔を有する。支持床は、例えば、ステンレス鋼から構成される板状部材である。上記第1の空隙部1013及び第2の空隙部1014は、地下水が上記固体還元剤接触部1012に常に所望の速度で流れるために十分な大きさである。
本実施形態の浄化装置Kを用いるハロゲン化有機化合物で汚染された地下水及び土壌の浄化方法は、地下水を循環させる循環工程と、循環している地下水を25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤で還元する還元工程と、を含む。
上記循環工程において、帯水層2の地下水は、ハウジング1020下部の吸水部1022を介してポンプPによりハウジング1020内に取り込まれ、ハウジング1020中央部の排水部1021を介して帯水層2内に排出される。そして、地下水は、重力により、帯水層2中を上部から下部に移動する。
上記還元工程において、ハウジング1020内に取り込まれた地下水は、還元槽1010を貫通する際に、還元剤と接触して、還元される。詳細には、地下水は、還元槽1010下部から還元槽1010内部に流入し、第2の空隙部1014及び支持床1011の小さな孔を貫通して、還元剤接触部1012に至り、ここで還元される。還元剤接触部1012にて還元された地下水は、第1の空隙部1013を経て、再びハウジング1020内部に戻され、排水部1021から帯水層2に流出し、土壌を洗浄する。
次に、本発明の浄化装置の第12の実施形態を図15に示す。図15は、還元剤として水溶性還元剤を用いた浄化装置を設置した状態を示す該略図である。水溶性還元剤としては、有機酸若しくはその誘導体、次亜リン酸若しくはその誘導体、又は有機酸又は次亜リン酸と鉄、チタン、亜鉛、マンガン、アルミニウム又はマグネシウムとからなる塩、又は硫化物塩を好ましく用いることができる。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、フェノール酸若しくはその誘導体等を好ましく用いることができる。カルボン酸としては、1〜20の炭素原子を有し且つ水酸基で置換されていてもよいモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸を好ましく用いることができる。具体的には酢酸、クエン酸、テレフタル酸等が好ましく、特に、クエン酸等の2〜10の炭素原子を有する脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
上述した表1に示すように、ギ酸、シュウ酸については、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVではなく、本発明の還元剤に該当しない。しかし、ギ酸、シュウ酸の誘導体、例えば、これらの塩については、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVの範囲であり、本発明の還元剤に該当する場合があり得る。
フェノール酸の誘導体としては、ポリヒドロキシアリールを好ましく用いることができる。ポリヒドロキシアリールとしては、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。また、有機酸の誘導体としては、塩、エステル、アミド、酸無水物等が好ましい。次亜リン酸の誘導体としては、塩、エステル等を好ましく用いることができるが、塩が特に好ましい。
本実施形態の浄化装置Lは、還元剤として水溶性の還元剤を用い、地表に設けられた還元剤添加手段1030をさらに備えている点を除いて図13に示す実施形態と同様である。図13と同じ要素には、同じ符号を付して示す。
還元剤添加手段1030は、水溶性還元剤タンク1031と、水溶性還元剤タンク1031からハウジング1021内の還元槽1010まで延びる還元剤供給ライン1032と、還元剤供給ライン1032上に設けられているポンプP3、とを含む。必要に応じて、ラインミキサ(図示されていない)を還元剤供給ライン1032に設けてもよい。
本実施形態の浄化装置Lを用いる汚水の浄化方法は、まず、水溶性還元剤タンク1031から還元剤供給ライン1032を介して、ポンプP3により、水溶性の還元剤を還元槽1010に添加する工程を備える点を除いて、浄化装置Kを用いる汚水の浄化方法と同様である。
本実施形態の浄化装置Lを用いて、地下水及び土壌を浄化するには、まず、還元剤供給ライン1032から水溶性還元剤を、管1029を介して、ハウジング1020内に配置されているラインミキサ1070の下方に供給される。一方、水中ポンプ1060により、下部ストレーナ部1022を介して地下水をハウジング1020内に導入する。水中ポンプ1060は、ハウジング1020内に導入された地下水及び水溶性還元剤をラインミキサ1070に導入し、ラインミキサ1070内で両者を混合させ、地下水を還元する。還元された地下水は、上部ストレーナ部1021を介して帯水層2内に浸透し、土壌を洗浄した後、下部ストレーナ部1022を介して水中ポンプ1060によりハウジング1020内に再び汲み上げられる。こうして、地下水の循環が生じ、この循環の間に、汚染された地下水は還元剤により分解し、浄化される。また、この地下水には、還元力が与えられる。
次に、本発明の第13の実施形態を図16に概略的に示す。本実施形態の浄化装置Mは、浄化すべき汚染土壌、地下水の上に工場などの障害物がある場合に有効である。浄化装置Mは、ハウジング1120aが、帯水層2内に水平に位置づけられている点を除いて、図13に示す実施形態と同様である。同じ要素には、同じ符号を付して説明する。
本明細書では、井戸には、ハウジング1120aで示されるようないわゆる水平井戸、及び、図4Cの斜め井戸222も含まれる。
ハウジング1120aには、地下水の下流側に吸水部を構成するストレーナ部1122が形成されており、地下水の上流側に排水部を構成するストレーナ部1121が形成されている。ハウジング1120aは、吸水部1122に近接する部位にポンプPを含み、排水部1121に近接する部位に還元槽1110を含む。また、必要に応じて、ハウジング1120aの両端部に地表との連通管1120b及び1120cを設けてもよい。
即ち、ハウジング1120a内では、地下水を吸引するためのストレーナ部1122、ポンプ1160、地下水を還元するための還元槽1110、ラインミキサー1170、還元された地下水を排出するためのストレーナ部1121がこの順序で設けられている。もっとも、還元槽1110の内部で、地下水が還元剤に十分に接触することができる場合などには、ラインミキサー1170を省略することができる。
本実施形態の浄化装置Mによる地下水及び土壌の浄化は、吸水部1122を介して吸引された地下水をポンプPにより、還元槽1110を貫通して排水部1121から再び帯水層2内に戻す工程を繰り返すことにより、地下水が浄化装置M内を循環する間に還元槽1110内の還元剤と繰り返し反応して還元され、還元された地下水が繰り返し土壌を洗浄することでなされる。
また、吸水部1122を相対的に水位の低い部位に設置して、排水部1121を相対的に水位の高い位置に設置する場合には、地下水の流れに加えて、排水部1121から流出した地下水に含まれる還元剤イオンの自重により、循環速度が増大する、という利点がある。また、本実施形態は、帯水層に厚みがある場所で使用するときに有効である。
さらに、本発明の第14の実施形態を図17に概略的に示す。本実施形態の浄化装置Nは、吸水部を構成するストレーナ部1222と水中ポンプPとを有する揚水井戸1280と、吸水部から吸引された地下水を案内する地下水供給ライン1243と、地下水供給ライン1243に連結されており地表に設けられている還元槽1210と、還元槽1210から還元剤を含む地下水を案内する還元剤供給ライン1242と、還元剤供給ライン1242からの還元剤を受け入れ、排水部すなわちストレーナ部1221及び1221’を有する一対の注入井戸1220及び1220’と、を備える。ここで、排水部を具備する一対の注入井戸1220及び1220’は、水位の比較的高い帯水層2内に位置づけられており、吸水部を具備する揚水井戸1280は、水位の比較的低い帯水層2内に位置づけられている。
揚水井戸1280の吸水部1222を介して吸引された地下水は、ポンプPにより、地下水供給ライン1243を介して地表に設けられている還元槽1210まで揚水されて、還元槽1210内で還元剤と接触し還元作用を受け、次いで、還元剤供給ライン1242を介して注入井戸1220及び1220’の排水部1221及び1221’から帯水層2内部に戻される。この工程を繰り返すことにより、汚染された地下水は、吸水部1222、還元槽1210及び排水部1221及び1221’の間で循環しながら、徐々に還元されて浄化される。
第14の実施形態は、帯水層及び不飽和層の層厚が比較的大きな場所においては、特に大きな水位勾配を作れるので循環速度が増大して、浄化効率が上昇する。また、汚染された地下水は揚水井戸1280と注入井戸1220,1220’との間を循環するので、汚染物の拡散が防止される。さらに、汚染部位の大きさに応じて、注入井戸1220,1220’及び揚水井戸1280の設置場所を変えることができる。
なお、本実施形態は、固体還元剤を用いる場合を示したが、水溶性還元剤を用いる場合には、上記還元槽1210の代わりに、図15に示したような水溶性還元剤タンク、水溶性還元剤供給ライン及びラインミキサを用いてもよい。
また、図17に示した実施形態では一対の注入井戸を用いているが、注入井戸は1本でもよければ、2本以上、例えば、3本以上であってもよい。また注入井戸の代わりに地中壁を用いてもよい。地中壁とは、いわば井戸が横方向に伸びて、地中で壁になったものである。開放端部と、地中に掘られた深い溝と、底部と、からなる。深い溝の内部には、溝が崩れないように、典型的には、砂又は砂利等の通気性・通液性に優れた要素が埋没されている。地中壁の深い溝は、地中壁の側壁を形成するが、上記通気性・通液性の優れた要素が堆積して形成されているので、壁面全体がストレーナ部と同様の機能を奏する。
なお、上述した実施形態においては、地下水を循環させて、地下水及び土壌を浄化する例について説明したが、循環されるべき対象物は地下水に限られず、浄化されるべき対象物は地下水及び土壌に限られない。
本発明の他の側面の浄化装置及び浄化方法によれば、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を効率的に且つ簡易に浄化することができる。特に、水を汚染物中の流動可能な水に満たされた部位と浄化装置との間(上述した実施例においては地下水を帯水層2と浄化装置1との間)で循環させながら還元することにより、急激な水質変化を生じさせることなく、脱ハロゲン化された水を汚染物中に戻し、徐々に汚染物中のハロゲンイオン濃度を減少させることができ、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を良好に浄化することができる。
また、本発明の他の側面の浄化装置及び浄化方法によれば、現場にて簡易に且つ連続的に、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化することができる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図18は、本発明の一実施形態の浄化装置を設置した状態を示す概略図である。図19は、図18の実施形態における水供給ラインと還元剤槽との連結の一実施形態の断面図である。
図18において、土壌は、地下水面4の上部の通気層1と、地下水面4の下部の帯水層2とを有している。帯水層2の下部には、難透水性層3が位置している。帯水層2の一部がハロゲン化有機化合物で汚染された土壌2aであり、土壌2a中に含まれる地下水も同様にハロゲン化有機化合物で汚染されている。
図18に示す浄化装置1300は、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤を保持する還元剤槽1310と、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源を含有する栄養液槽1340と、吸水部1322及び排水部1321を有し少なくとも前記吸水部1322が汚染物中の流動可能な水に満たされた部位すなわち本実施形態においては帯水層2中に位置づけられる浄化槽1320と、を備え、地下水を帯水層2及び浄化槽1320の間で循環するように構成されている。上記栄養源は、浄化すべき汚染物中の微生物特性に応じて適当な栄養源を用いることができる。
上記吸水部1322は、浄化槽1320の下部壁面に設けられている多数の貫通孔からなるストレーナ部である。上記排水部1321は、浄化槽1320のほぼ中央部壁面に設けられている多数の貫通孔からなるストレーナ部である。もっとも、排水部1321の位置は、浄化槽1320の中央部に限定されるものではなく、浄化槽1320を吸水部1322が帯水層2内に位置づけるように設置した際に、排水部1321が帯水層2の上部若しくは帯水層2のわずかに上方に位置づけられるように形成されていればよい。ストレーナ部の開口率は、10〜50%が好ましく、特に20〜40%であることが好ましい。
浄化槽1320の吸水部1322の上方には、揚水ポンプ1360が設置されており、吸水部1322を介して帯水層2から地下水を浄化槽1320内部に吸引し、さらに浄化槽1320の長手方向に沿って揚水するようになされている。
揚水ポンプ1360の上方には、還元剤槽1310が設けられている。還元剤槽1310は、図19に示すように、下部に設けられた支持床1311と、支持床1311に支持されている固体還元剤接触部1312と、固体還元剤接触部1312の上方の第1の空隙部1313と、固体還元剤接触部1312の下方の第2の空隙部1314と、を含む。上記固体還元剤接触部1312は、砂礫などの担体と、該担体に担持された上記固体還元剤とを含む。ここで固体還元剤は、例えば、500μm以下の大きさの粉末である。上記支持床1311は、地下水を通過させるが上記固体還元剤を通過させない程度の大きさの多数の小さな孔を有する。支持床は、例えば、ステンレス鋼から構成される板状部材である。上記第1の空隙部1313及び第2の空隙部1314は、地下水が上記固体還元剤接触部1312に常に所望の速度で流れるために十分な大きさである。
還元剤槽1310の上方には、ラインミキサ1370が設けられている。ラインミキサ1370は、還元剤槽1310を貫通して還元された地下水と、栄養液槽1340から供給された栄養液とを混合するために設けられている。ラインミキサ1370としては、特に限定されることなく、慣用のラインミキサを用いることができる。
上記栄養液槽1340は、図18に示すように、浄化槽1320の外部であって、地表部に設けられている。栄養液槽1340には、通常の撹拌手段が設けられており、上述の栄養源を所望に応じて撹拌調整するようになされている。栄養液槽1340には、調整された栄養液を浄化槽1320内部に導入するための栄養液供給ラインE1が連結されている。栄養液供給ラインE1には、栄養液を栄養液槽1340から浄化槽1320に導入するためのポンプ1330が設けられている。
浄化槽1320は、図18に示された実施形態においては地中に設置された井戸であり、ストレーナ部に巻かれた金網と、ストレーナ部以外の導管の壁面に巻かれたパッカ(図示せず)と、を具備する。該金網は、浄化槽1320内部に砂利等が侵入することを防止するものであり、該パッカは、浄化槽1320を地中に固定する際に吸水して膨張するものである。なお、浄化槽1320すなわち井戸を土壌中に垂直方向に設置する場合には、以下の手順で行われる。すなわち、ボーリング機械で堀削して深い穴を形成し、堀削完了後、ボーリング機械を穴から引き抜く。次いで、穴の中に、浄化槽1320を挿入する。すると、浄化槽1320の外周壁に巻かれているパッカ(図示せず)が、浄化槽1320と土壁との間に存在する水分を吸収して膨張する。さらにケイ砂等を入れて、浄化槽1320の周りの空隙を埋め、最後に、地表面近傍にセメントを流し込み、固めて、浄化槽1320の設置が完了する。
本実施形態の浄化装置1300を用いるハロゲン化有機化合物で汚染された地下水及び土壌の浄化方法は、地下水を循環させる循環工程と、循環している地下水を25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤及び従属栄養型嫌気性微生物の栄養液を添加する工程と、を含む。
上記循環工程において、帯水層2の地下水は、浄化槽1320下部の吸水部1322を介して揚水ポンプ1360により浄化槽1320内に取り込まれ、浄化槽1320中央部の排水部1321を介して帯水層2内に排出される。そして、地下水は、重力により、帯水層2中を上部から下部に移動する。
次いで、浄化槽1320内に取り込まれた地下水が還元剤槽1310を貫通する際に、上記地下水に上記還元剤及び上記栄養液が添加される。詳細には、地下水は、還元剤槽1310下部から還元剤槽1310内部に流入し、第2の空隙部1314及び支持床1311の小さな孔を貫通して、還元剤接触部1312に至り、ここで還元剤が添加され、地下水は還元される。還元剤接触部1312にて還元された地下水は、第1の空隙部1313を経て、再び浄化槽1320内部に戻される。次いで、ラインミキサ1370にて、還元された地下水には、栄養液供給ラインE1から浄化槽1320内部に導入された栄養液が添加される。こうして、還元剤及び栄養液が添加された地下水は、排水部1321から帯水層2に流出して、土壌を洗浄する。なお、例えば、ラインミキサ1370は必須の要素ではなく、省略することができる。
次に、本発明の浄化装置の第15の実施形態を図20に示す。図20は、還元剤として水溶性還元剤を用いた浄化装置を設置した状態を示す該略図である。
ここで、水溶性還元剤としては、有機酸若しくはその誘導体、次亜リン酸若しくはその誘導体、又は有機酸又は次亜リン酸と鉄、チタン、亜鉛、マンガン、アルミニウム又はマグネシウムとからなる塩、又は硫化物塩を好ましく用いることができる。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、フェノール酸若しくはその誘導体等を好ましく用いることができる。カルボン酸としては、1〜20の炭素原子を有し且つ水酸基で置換されていてもよいモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸を好ましく用いることができる。具体的には酢酸、クエン酸、テレフタル酸等が好ましく、特に、クエン酸等の2〜10の炭素原子を有する脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
上述した表1に示すように、ギ酸、シュウ酸については、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVではなく、本発明の還元剤に該当しない。しかし、ギ酸、シュウ酸の誘導体、例えば、これらの塩については、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVの範囲であり、本発明の還元剤に該当する場合があり得る。
フェノール酸の誘導体としては、ポリヒドロキシアリールを好ましく用いることができる。ポリヒドロキシアリールとしては、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。また、有機酸の誘導体としては、塩、エステル、アミド、酸無水物等が好ましい。次亜リン酸の誘導体としては、塩、エステル等を好ましく用いることができるが、塩が特に好ましい。
本実施形態の浄化装置1400は、還元剤として水溶性の還元剤を用い、還元剤槽1410が地表に設けられている点を除いて図18に示す実施形態と同様である。図18と同じ要素には、1400番台において同じ符号を付して示す。
還元剤槽1410には、ポンプPを含む還元剤供給ラインC1が接続されている。栄養液槽1440には、ポンプ1430を含む栄養液供給ラインE1が接続されている。本実施形態においては、還元剤供給ラインC1と栄養液供給ラインE1とが接続されるラインミキサMが設けられており、還元剤と栄養液とはここで混合されるようになされている。しかし、ラインミキサMはなくてもよい。
本実施形態の浄化装置1400を用いる汚染物の浄化方法は、地表部で、還元剤と栄養液とを混合してから、循環中の水に添加する点を除いて、浄化装置1300を用いる汚染物の浄化方法と同様である。すなわち、帯水層2から浄化槽1420の吸水部1422を介して浄化槽1420内部に導入された水は、揚水ポンプ1460により浄化槽1420の長手方向に沿って揚水され、排水部1421を介して帯水層2内に戻る。一方、地表部では、還元剤槽1410から還元剤供給ラインC1を介してラインミキサMに水溶性の還元剤が供給され、栄養液槽1440から栄養液供給ラインE1を介してラインミキサMに栄養液が供給されて、ラインミキサMにて還元剤と栄養液とが混合される。混合された還元剤と栄養液とは、浄化液供給ラインC2を介して浄化槽1420内部のラインミキサ1470下方まで導入される。ここで、還元剤及び栄養液は、循環中の地下水に添加される。還元剤及び栄養液を添加された地下水は、還元力及び栄養源を与えられ、排水部1421を介して帯水層2内に戻されて、還元反応及び生物分解反応により汚染物を浄化することができる。なお、例えば、ラインミキサ1470は必須の要素ではなく、省略することができる。
次に、本発明の第16の実施形態を図21に概略的に示す。本実施形態の浄化装置1500は、浄化すべき汚染土壌、地下水の上に工場などの障害物がある場合に有効である。浄化装置1500は、浄化槽1520が、帯水層2内に水平に位置づけられている浄化部1520aと、栄養液供給ラインE1を案内する第1の連通部1520bと、第2の連通部1520cと、を備える点を除いて、図18に示す実施形態と同様である。同じ要素には、1500番台で同じ符号を付して説明する。
浄化槽1520の浄化部1520aには、地下水の下流側に吸水部を構成するストレーナ部1522が、地下水の上流側に排水部を構成するストレーナ部1521が、それぞれ形成されている。浄化槽1520の浄化部1520aは、吸水部1522に近接する部位に水中ポンプ1560を含み、排水部1521に近接する部位に還元剤槽1510を含む。
すなわち、図示した実施形態においては、浄化槽1520内に、地下水を吸引するためのストレーナ部1522、ポンプ1560、ラインミキサ1570、地下水を還元するための還元剤槽1510、還元された地下水を排出するためのストレーナ部1521がこの順序で設けられている。しかし、還元剤槽1510とラインミキサ1570との設置順序は逆でもよく、また、還元剤槽1510の内部で、地下水が還元剤に十分に接触することができる場合などには、ラインミキサ1570を省略することもできる。
栄養液の供給は、地表に設けられている栄養液槽1540から延びる栄養液供給ラインE1を介してなされる。栄養液供給ラインE1は、図示された実施形態においては、浄化槽1520の第1の連通部1520bにより案内されているが、第2の連通部1520cにより案内される構成でもよい。第1の連通部1520bを介して栄養液が供給される場合は、吸水部1522近傍にてなされるので、吸水された地下水に直接、栄養液が添加され、次いで、栄養液を含む地下水に還元剤が添加されることになる。一方、第2の連通部1520cを介して栄養液が供給される場合は、排水部1521近傍にてなされるので、地下水に還元剤が添加された後、栄養液が添加されることになる。
本実施形態の浄化装置1500による地下水及び土壌の浄化は、吸水部1522を介して吸引された地下水をポンプ1560により浄化槽1520の長手方向に沿って帯水層2内の地下水の流れ90に対して逆流させながら、栄養液供給ラインE1から供給された栄養液を添加し、還元剤槽1510を貫通させることにより還元剤を添加し、排水部1521から再び帯水層2内に戻す工程を繰り返すことによりなされる。すなわち、地下水が浄化装置1500内を循環する間に、栄養液及び還元剤槽1510内の還元剤とが繰り返し添加され、還元されて栄養液を添加された地下水を循環させることで、繰り返し土壌を浄化することができる。
また、吸水部1522を相対的に水位の低い部位に設置して、排水部1521を相対的に水位の高い位置に設置する場合には、地下水の流れ90に加えて、排水部1521から流出した地下水に含まれる還元剤イオンの自重により、循環速度が増大する、という利点がある。
さらに、本発明の第17の実施形態を図22に概略的に示す。本実施形態の浄化装置1600は、還元剤槽1610が地表部に設けられている点を除いて図21に示す第16の実施形態と同様である。同じ要素には、1600番台で同じ符号を付して示す。
図示された実施形態において、還元剤槽1610は、栄養液を保持するための栄養液槽1640から栄養液供給ラインE1を受け入れ、浄化槽1620内部に栄養液及び還元剤を導入するための浄化液供給ラインC2を連結している。浄化液供給ラインC2は、第1の連結部1620bに沿って設けられ、浄化槽1620の浄化部1620aまで、栄養液及び還元剤を案内する。
本実施形態の浄化装置1600を用いる汚染物の浄化は、浄化部1620aと帯水層2との間で循環している地下水に、栄養液及び還元剤を一緒に添加することによりなされる点を除いて、上述した第16の実施形態における浄化方法と同様に行われる。
図22の実施形態では、地表に設けられている栄養液槽1640内の栄養液がポンプ1630により、還元剤槽1610に導入されている。しかし、この順序が逆になっていてもよい。即ち、還元剤槽を通過して、還元された水に栄養液または栄養源を添加してもよい。このような実施形態は、例えば、図29に記載されている。
次に、本発明の第18の実施形態を図23に概略的に示す。本実施形態の浄化装置1700は、浄化槽1720が、吸水部を構成するストレーナ部1722と水中ポンプ1760とを有する揚水井戸1720aと、排水部すなわちストレーナ部1721b及び1721cを有する一対の注入井戸1720b及び1720cと、を備え、還元剤槽1710及び栄養液槽1740が地表部に設けられており、吸水部1722から吸引された地下水を還元剤槽1710まで案内する地下水供給ラインWと、還元剤槽1710から還元剤を含む地下水を栄養液槽1740に導入する還元剤供給ラインC1と、栄養液槽1740から還元剤及び栄養液を浄化槽1720の注入井戸1720b及び1720c内部に導入する浄化液供給ラインC2と、を備える。ここで、排水部を具備する一対の注入井戸1720b及び1720cは、水位の比較的高い帯水層2内に位置づけられており、吸水部を具備する揚水井戸1720aは、水位の比較的低い帯水層2内に位置づけられている。
第18の実施形態において、汚染物の浄化は以下のように行われる。
揚水井戸1720aの吸水部1722を介して吸引された地下水は、ポンプ1760により、地下水供給ラインWを介して、還元剤槽1710まで揚水されて、還元剤槽1710内で還元剤を添加され同時に還元作用を受け、次いで、還元剤供給ラインC1を介して、栄養液槽1740に導入されて栄養液を添加され、次いで、浄化液供給ラインC2を介して、浄化槽1720の注入井戸1720b及び1720cの排水部1721b及び1721cから帯水層2内部に戻される。そして、栄養液は、帯水層2の水位勾配に従って、揚水井戸1720aの周囲の汚染部2aに到達する。
汚染部2aは、浄化液により物理的に洗浄されることによっても浄化される。また、浄化液には還元作用があるので、汚染物2a中のハロゲン化化合物が還元反応、即ち、化学反応でも分解する。更に、浄化液には、栄養液も含まれていることから、ハロゲン化化合物を分解する微生物が増殖し、微生物的にもハロゲン化化合物が分解される。
第18の実施形態は、帯水層2及び通気層1の層厚が比較的大きな場所においては、特に大きな水位勾配を作れるので循環速度が増大して、浄化効率が上昇する。また、汚染された地下水は揚水井戸1720aと注入井戸1720b,1720cとの間を循環するので、汚染物の拡散が防止される。さらに、汚染部位の大きさに応じて、注入井戸1720b,1720c及び揚水井戸1720aの設置場所を変えることができる。
図24は、本発明の第19の実施形態を示す。本実施形態における浄化装置1800は、還元剤槽1810と、栄養液槽1840との順番を入れ替えた点を除いて、図23に示す第18の実施形態と同様である。第18及び第19の実施形態では、還元剤及び栄養液を地下水とともに循環させている。このような場合には、循環させるに従って、還元剤及び栄養液のいずれを先に添加するかという順序の重要性が小さくなる。
同様の要素には、1800番台で同じ符号を付して示す。なお、ここでは図23と異なる構成に関する説明だけを述べ、同じ構成に関する説明は割愛する。
揚水井戸1820aの吸水部1822を介して吸引された地下水は、ポンプ1860により、地下水供給ラインWを介して、栄養液槽1840に導入されて栄養液が添加され、次いで、栄養液供給ラインE1を介して、還元剤槽1810に導入されて、還元剤槽1810内で還元剤を添加され同時に還元作用を受け、次いで、浄化液供給ラインC2を介して、浄化槽1820の注入井戸1820b及び1820cの排水部1821b及び1821cから帯水層2内部に戻される。
なお、図23及び図24に示す第18及び第19の実施形態では、固体還元剤を用いる場合を示したが、水溶性還元剤を用いる場合には、上記還元剤槽1710及び1810の代わりに、図20に示したような還元剤槽及びラインミキサMを用いてもよい。
また、図23及び図24に示した実施形態では一対の注入井戸を用いている。しかし、注入井戸の数には制限がなく、注入井戸は1本でもよければ、2本以上、例えば、3本以上であってもよい。同様に、揚水井戸の数にも制限がなく、揚水井戸は1本でもよければ、2本以上、例えば、3本以上であってもよい。例えば、二本以上の揚水井戸と一本又は二本以上の注入井戸を用いても良い。あるいは、一本の揚水井戸と一本又は二本以上の注入井戸を用いても良い。
また、揚水井戸と注入井戸との位置関係も制限されない。図23及び図24のように、揚水井戸が2本以上の注入井戸の間に配置されていてもよい。逆に、注入井戸が2本以上の揚水井戸の間に配置されていてもよい。
更に、1本又は2本以上の揚水井戸の周囲を囲むように、3本以上の注入井戸が配置されていてもよい。逆に、一本又は2本以上の注入井戸の周囲を囲むように、3本以上の揚水井戸が配置されていてもよい。ここで、3本以上と記載しているのは、2本の井戸が周囲を囲むと言い難いからである。
図25及び図26は、それぞれ、第20及び第21の実施形態を示す。何れの場合にも、1本の注入井戸及び1本の揚水井戸を用いて、地下水を循環させている。同じ要素には、それぞれ1900番台及び2000番台の同じ符号を付して示し、説明は適宜、省略する。図25及び図26に示す浄化装置1900及び2000は、浄化すべき汚染物を含む土壌の上に工場などの障害物がある場合に特に有効である。
図25では、揚水井戸1920aの吸水部1922を介して吸引された地下水は、ポンプ1960により、地下水供給ラインWを介して、還元剤槽1910に導入される。地下水は、還元剤槽1910内で還元剤により還元作用を受け、次いでラインC1を介して栄養液槽1940に導入され、栄養液が添加される。栄養液が添加された地下水は、更に、ポンプ1930により、浄化液供給ラインC2を介して、注入井戸1920bの排水部1921から帯水層2内部に戻される。帯水層2では、地下水の流れ90に沿って、浄化液が汚染部2aに到達する。
汚染部2aは、浄化液により物理的に洗浄されることによっても浄化される。また、浄化液には還元作用があるので、汚染物2a中のハロゲン化化合物が還元反応、即ち、化学反応でも分解する。更に、浄化液には、栄養液も含まれていることから、ハロゲン化化合物を分解する微生物が増殖し、微生物的にもハロゲン化化合物が分解される。
図26に示す本発明の第21の実施形態では、還元剤槽2010と、栄養液槽2040との順番を入れ替えた点を除いて、図25に示す第20の実施形態と同様である。第20及び第21の実施形態では、還元剤及び栄養液を地下水とともに循環させている。このような場合には、循環させるに従って、還元剤及び栄養液のいずれを先に添加するかという順序の重要性が小さくなる。
次に、一対の井戸の代わりに一対の地中壁を用いた場合の第22及び第23の実施形態を図27及び図28に示す。本実施形態の浄化装置は、地中壁を用いている点を除いて、図25及び図26に示す実施形態と同様である。同じ要素には、それぞれ2100番台2200番台の同じ符号を付して示し、同じ構成要素に関する説明は割愛する。ここで、地中壁とは、いわば井戸が横方向に伸びて、地中で壁になったものであり、開放端部と、地中に掘られた深い溝と、底部と、からなる。深い溝の内部には、溝が崩れないように、典型的には、砂又は砂利等の通気性・通液性に優れた要素が埋没されている。地中壁の深い溝は、地中壁の側壁を形成するが、上記通気性・通液性の優れた要素が堆積して形成されているので、壁面全体がストレーナ部と同様の機能を奏する。
浄化装置2100において、一方の地中壁2120aは吸水部として、他方の地中壁2120bは排水部として作用する。地中壁の壁面は上述のように壁面全体がストレーナ部と同様の作用をするので、壁面のいずれの部分からも地下水を吸水でき、栄養液及び還元剤を大量に添加することができる。地中壁を用いる場合には、帯水層2の地下水の水位が高いか、帯水層の厚さが薄く、大きな水位勾配が形成できない場合に、水平方向の広範囲にわたって還元剤及び栄養液を拡散できる、という利点がある。
汚染部2aは、浄化液により物理的に洗浄されることによっても浄化される。また、浄化液には還元作用があるので、汚染物2a中のハロゲン化化合物が還元反応、即ち、化学反応でも分解する。更に、浄化液には、栄養液も含まれていることから、ハロゲン化化合物を分解する微生物が増殖し、微生物的にもハロゲン化化合物が分解される。
次に、本発明の別の実施形態を図29及び図30に示す。図29及び図30に示す実施形態は、地下水が循環する循環型ではなく、帯水層2中に、還元剤及び栄養液を添加するものである。
図29に示す浄化装置2300は、還元剤槽2310と、浄化すべき汚染物中の微生物特性に応じた栄養液を調整するための栄養液槽2340と、浄化槽2320と、を具備する。還元剤槽2310には、水タンクTから水を供給する水供給ラインW1と、栄養液槽2340に還元剤を含有する水を供給する還元剤供給ラインC1と、が連結されている。栄養液槽2340には、浄化槽2320に還元された栄養液を供給する栄養液供給ラインE1が連結されている。浄化槽2320の下部には、供給された還元剤及び栄養液を汚染物中に浸透させるストレーナ部2321が設けられており、該ストレーナ部2321が地中の帯水層2内に位置づけられるように、浄化槽2320は地中に設置されている。
上記還元剤槽2310は、図29に示すように、水供給ラインW1が還元剤槽2310の頂部2310aに連結されていても、上述した図19に示すように、水供給ラインW1が還元剤槽1310の底部1310bに連結されていてもよい。
図30に示す還元剤槽2410は、下部に設けられた支持床2411と、支持床2411に支持されている固体還元剤接触部2412と、固体還元剤接触部2412の上方の第1の空隙部2413と、固体還元剤接触部2412の下方の第2の空隙部2414と、を含む。上記固体還元剤接触部2412は、砂礫などの担体と、該担体に担持された上記固体還元剤とを含む。ここで固体還元剤は、例えば、500μm以下の大きさの粉末である。上記支持床2411は、水を通過させるが上記固体還元剤を通過させない程度の大きさの多数の小さな孔を有する。支持床は、例えば、ステンレス鋼から構成される板状部材である。上記第1の空隙部2413及び第2の空隙部2414は、水供給ラインW1から供給された水が上記固体還元剤接触部2412に常に所望の速度で流れるために十分な大きさである。
図29及び図30に示すように、水供給ラインW1が還元剤槽2410の頂部2410aに連結されている場合には、還元剤槽2410の頂部2410aに供給された水は自重により、固体還元剤接触部2412を貫通して流れ、還元される。一方、図19に示すように、水供給ラインWが還元剤槽1310の底部1310bに連結されている場合には、還元剤槽1310の頂部1310aに連結されている還元剤供給ラインC1にポンプ等を設けて、強制的に吸引する必要がある。
また、図30に示すように、還元剤供給ラインC1に三方コックV1を設けて、三方コックV1を介して逆洗時通水ラインPLを連結させることもできる。この場合には、逆洗時通水ラインPLを介して、還元剤槽2410内部に下部から上部に洗浄水を通水することによって、固体還元剤接触部2412を逆洗することができる。これにより、固体還元剤接触部2412及び支持床2411の細孔の目詰まりを防止することができる。
本実施形態の浄化装置2400を用いるハロゲン化有機化合物で汚染された地下水や土壌などの汚染物の浄化方法は、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤により水を還元する水還元工程と、上記還元工程において還元された水を従属栄養型嫌気性微生物の栄養源を含有する栄養液に添加して栄養液を還元する栄養液還元工程と、前記栄養液還元工程において還元された栄養液を前記汚染物に添加する工程と、を含む。上記水還元工程は、還元剤槽2410内部で行われ、上記栄養液還元工程は、栄養液槽2440内部で行われる。なお、還元剤槽2410に添加する水の量には制限がなく、井戸近傍の地下水位が上昇して地表に達しない範囲で、任意に設定することができる。
詳細には、まず水タンクTから水供給ラインW1を介して還元剤槽2410に水を供給する。供給された水は、還元剤槽2410を通過しながら、還元剤と接触して還元剤により還元され、あるいは還元剤を溶かして取り入れ、還元剤供給ラインC1を介して栄養液槽2440に供給される。次に、還元された水及び還元剤を含む水は、栄養液槽2440内で、栄養液と接触して栄養液を還元しながら、浄化液供給ラインC2を介して、注入ポンプ2430により、浄化槽2420内に供給される。還元された栄養液は、浄化槽2420の下方に形成されているストレーナ部2421を介して汚染物中に浸透して、汚染物に含有されているハロゲン化有機物と反応して脱ハロゲン化すると同時に、汚染物中に存在する従属栄養型嫌気性微生物の活性を高め、微生物による生物分解反応を促進して、汚染物を浄化する。
次に、本発明のさらに別の実施形態を概略的に図31に示す。図31に示す実施形態は、浄化槽が帯水層2内に水平におかれている点を除いて、図29に示す実施形態と同様の構成である。同様の要素には、2500番台の同じ符号を付して示す。
本実施形態の浄化装置2500において、浄化槽2520は、一対の傾斜部2520b及び2520cと、帯水層2に水平方向に横たわるストレーナ部2521を有する浄化部2520aと、を備える。第1の傾斜部2520bには、浄化液供給ラインC2を介して、還元された栄養液を受け入れる。ストレーナ部2521は、帯水層2内に水平に位置づけられており、還元された栄養液を帯水層2内に通過させる。第2の傾斜部2520dは、地表に突出する閉鎖端部を有する。
なお、図31では、ストレーナ部2521は水平方向に伸びているが、ストレーナ部は傾斜していてもよい。また、施工方法によっては、第2の傾斜部2520cを省略することもできる。
本実施形態の浄化装置2500を用いる汚染物の浄化方法は、ストレーナ部2521から垂直方向に還元栄養液が流出する点を除いて、図29に示す実施形態と同様である。本実施形態の浄化装置2500及び浄化方法は、浄化すべき汚染物を含む地下水又は土壌等の真上の地表面に、工場など建物がある場合に有効である。
なお、図29及び図31に示す実施形態においても、還元剤として固体還元剤だけでなく、水溶性還元剤を用いることもできる。
本発明の他の側面の浄化装置及び浄化方法によれば、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を効率的に且つ簡易に浄化することができる。特に、水を汚染物中の流動可能な水に満たされた部位と浄化装置との間、例えば、上述した実施例においては地下水を帯水層2と浄化装置との間、で循環させながら還元することにより、急激な水質変化を生じさせることなく、脱ハロゲン化され且つ還元力を与えられた水を汚染物中に戻し、徐々に汚染物中のハロゲンイオン濃度を減少させることができ、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を良好に浄化すると共に、栄養液を還元状態で与えることにより、従属栄養型微生物の活性を高めることができ、化学反応及び生物分解反応との組み合わせにより、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を良好に浄化することができる。
また、本発明の他の側面の浄化装置及び浄化方法によれば、現場にて簡易に且つ連続的に、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化することができる。
図32は、本発明の浄化装置の他の実施形態を示す。地表に、トレンチのような浅い溝、又は、窪み2610を掘る。溝は、溝が延びる方向に比べて、幅が相対的に狭いものであるが、窪みでは、幅が狭くても広くても良い。即ち、トレンチ、溝は窪みに含まれる。
この窪みの下部に第1層として、還元剤2620、好ましくは固体還元剤を充填し、その上部に従属栄養型嫌気性微生物の栄養源2630、好ましくは固体栄養源を第2層として充填する。窪みは、土壌中のハロゲン化有機化合物を含む汚染物2602の上部又は上流に設ける。ライン2640を介して、帯水層から揚水した地下水や、水道水をこの栄養源2630の上部から散布してもよい。あるいは、このように散布することなく、雨水が栄養源2630に流れ込むようにしてもよい。地下水の場合には、上述したように、ストレーナ部を有する揚水井戸、又は、地中壁等から、ポンプ等により地下水を汲み上げれば良い。
これにより、散布された水又は雨水が、まず栄養源を通過し、前記栄養源を含む水となる。即ち、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源と水を含有する栄養液が形成される。次いで、この栄養液が還元剤2620で還元される。そして、重力により、還元された栄養液が土壌に染み込み、土壌中の汚染物に導入され、汚染物を浄化することになる。
栄養源としては固体栄養源が好ましく、固体栄養源としては、例えば、コンポスト、堆肥、余剰汚泥、有機物含有率が高い底泥、有機性廃棄物等の固体有機物を用いることが好ましい。固体栄養源が還元剤を被覆することになり、還元剤が空気中の酸素と接触するのを低減することができる。従って、この配置により、還元剤が空気中の酸素を還元することにより、消耗することを防止することができる。
あるいは、地下水の流れに対して、汚染物2602の下流に揚水井戸を設け、この揚水井戸から地下水を汲み上げ、地下水をライン2604から栄養源2630の上部に散布してもよい。
図32では、窪み2610は地表2604より低く形成されている。しかし、窪みは地表2604より高く形成されていてもよい。
図33は、本発明の他の実施形態を示す。窪み2710を形成するために、窪み2710となる部分2710の周囲に隆起部2712を形成する。窪み2710の底2714は、地表2704とほぼ同一の面上であってもよいし、地表2704より高くてもよいし、低くてもよい。
この窪み2710の下部に第1層として、還元剤2720、好ましくは固体還元剤を充填し、その上部に従属栄養型嫌気性微生物の栄養源2730、好ましくは固体栄養源を第2層として充填する。ライン2740を介して、帯水層から揚水した地下水や、水道水をこの栄養源2730の上部から散布してもよい。あるいは、このように散布することなく、雨水が栄養源2730に流れ込むようにしてもよい。
これにより、散布された水又は雨水が、まず栄養源を通過し、前記栄養源を含む水となる。即ち、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源と水を含有する栄養液が形成される。次いで、この栄養液が還元剤2720で還元される。そして、重力により、還元された栄養液が土壌に染み込み、土壌中の汚染物に導入され、汚染物を浄化することになる。
隆起部2712を繰り返し配置し、複数の窪み2710を繰り返し形成してもよい。窪みの底面の形状には制限がなく、四角形、円形等であってもよい。
あるいは、地下水の流れに対して、汚染物2702の下流に揚水井戸を設け、この揚水井戸から地下水を汲み上げ、地下水をライン2704から栄養源2730の上部に散布してもよい。
図32及び図33の実施形態では、特に、ラインを省略した場合には、雨が降る毎に汚染物を自然に浄化することができ、ポンプ等の動力が不要である。
【図面の簡単な説明】
図1は、固体還元剤を用いる本発明の第1の実施形態を示す概略図である。
図2(a)及び図2(b)は、固体還元剤接触槽の内部構造を示す概略図である。
図3は、水溶性還元剤を用いる本発明の第2の実施形態を示す概略図である。
図4は、地上に障害物がある場合に適用される本発明の第3の実施形態を示す概略図である。
図4A及び4Bは、水平井戸の作成方法を示す概略図である。
図4Cは、斜め井戸を用いる本発明の他の実施形態を示す概略図である。
図5は、循環処理型の浄化装置を用いる本発明の第4の実施形態を示す概略図である。
図5A及び図5Bは、本発明の他の実施形態を示す部分図である。
図6は、循環処理型の浄化装置を用いる本発明の第5の実施形態を示す概略図である。
図7は、揚水循環型の浄化装置を用いる本発明の第6の実施形態を示す概略図である。
図8は、揚水循環型の浄化装置を地上に障害物がある場合に適用する本発明の第7の実施形態を示す概略図である。
図9は、循環処理型の浄化装置を地上に障害物がある場合に適用する本発明の第8の実施形態を示す概略図である。
図10は、固体還元剤との反復接触を可能とする循環処理型の浄化装置を地上に障害物がある場合に適用する本発明の第9の実施形態を示す概略図である。
図11は、地中壁を用いる本発明の第10の実施形態を示す概略図である。
図12は、水位勾配と水平方向への拡散との関係を示す説明図である。
図13は、固体還元剤を用いる本発明の第11の実施形態を示す概略図である。
図14は、固体還元剤を用いた場合の還元槽の内部構造を示す概略図である。
図15は、水溶性還元剤を用いる本発明の第12の実施形態を示す概略図である。
図16は、本発明の第13の実施形態を示す概略図である。
図17は、本発明の第14の実施形態を示す概略図である。
図18は、固体還元剤を用いる本発明の第14の実施形態を示す概略図である。
図19は、固体還元剤を用いた場合の還元剤槽の一実施形態の内部構造を示す断面図である。
図20は、水溶性還元剤を用いる本発明の第15の実施形態を示す概略図である。
図21は、本発明の第16の実施形態を示す概略図である。
図22は、本発明の第17の実施形態を示す概略図である。
図23は、本発明の第18の実施形態を示す概略図である。
図24は、本発明の第19の実施形態を示す概略図である。
図25は、本発明の第20の実施形態を示す概略図である。
図26は、本発明の第21の実施形態を示す概略図である。
図27は、本発明の第22の実施形態を示す概略図である。
図28は、本発明の第23の実施形態を示す概略図である。
図29は、本発明の第24の実施形態を示す概略図である。
図30は、固体還元剤を用いた場合の還元剤槽の一実施形態の内部構造を示す断面図である。
図31は、本発明の第25の実施形態を示す概略図である。
図32は、本発明の第26の実施形態を示す概略図である。
図33は、本発明の第27の実施形態を示す概略図である。

Claims (18)

  1. ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化する方法であつて、
    前記汚染物を通過するように、水を循環させる循環工程と、
    循環している水を25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤で還元する還元工程と、
    循環している水に従属栄養型嫌気性微生物の栄養源を接触させる栄養源接触工程と、
    を含み、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源を含む還元された水を前記汚染物と接触させて浄化する浄化方法。
  2. 前記還元工程は土壌中で行われる、請求項に記載の浄化方法。
  3. 前記還元工程は、水に不溶性又は難溶性である固体還元剤によりなされる、請求項に記載の浄化方法。
  4. 前記還元工程は、水溶性の還元剤によりなされる、請求項に記載の浄化方法。
  5. 前記循環工程は、土壌中の水を取り込む工程と、水を土壌中に排出する工程と、を有する請求項1〜4のいずれかに記載の浄化方法。
  6. 前記循環工程において、土壌の帯水層内で水を循環させる、請求項1〜5のいずれかに記載の浄化方法。
  7. 前記循環工程において、土壌中の水の取り込み及び/又は土壌中への水の排出は、井戸、地中壁又は土壌中に埋設されている導管を用いて行われる、請求項5又は6に記載の方法。
  8. ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化する装置であって、
    25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤を保持する還元剤槽と、
    従属栄養型嫌気性微生物の栄養源を保持する栄養源槽と、
    吸水部と、排水部と、が設けられている導管と、
    を具備し、前記吸水部から吸水した水に、前記還元剤槽からの還元剤及び前記栄養源槽からの栄養源を接触させ、前記排水部から排水し、再び前記吸水部から吸水して、水を循環させる、浄化装置。
  9. 前記還元剤槽中に保持されている還元剤は、水に不溶性又は難溶性の固体還元剤である、請求項に記載の装置。
  10. 前記還元剤槽中に保持されている還元剤は、水溶性の還元剤である、請求項に記載の装置。
  11. 前記導管は、吸水部と排水部とが土壌中帯水層中に位置づけられるように設けられている、請求項8〜10のいずれかに記載の装置。
  12. 前記導管は、井戸、地中壁、水平井戸又は斜め井戸から選択される、請求項8〜11のいずれかに記載の装置。
  13. 前記導管は、吸水部を有する揚水井戸と、排水部を有する注入井戸と、の少なくとも一対の井戸である、請求項12に記載の装置。
  14. 前記導管は、少なくとも前記栄養源槽と接続されている導入部と、土壌中帯水層中に位置づけられる水平部又は斜め部と、を具備し、該水平部又は斜め部に前記吸水部と排水部とが設けられている水平井戸又は斜め井戸である、請求項12に記載の装置。
  15. 前記水の循環はポンプによってなされる、請求項8〜14のいずれか1項に記載の装置。
  16. 前記還元剤槽及び前記栄養源槽は地上に設けられている、請求項8〜15のいずれか1項に記載の装置。
  17. 前記還元剤槽は、前記導管内に設けられている、請求項8〜15のいずれかに記載の装置。
  18. 前記還元剤槽は、槽の上下部にそれぞれ空隙部を具備し、該下部の空隙部の上に還元剤を保持する有孔支持床が位置づけられ、該空隙部にそれぞれ流体連通する配管が接続されている、請求項8〜16に記載の装置。
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