JP4547962B2 - 汚染土壌及び地下水の浄化方法 - Google Patents
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Description
炭素数が6以上の直鎖状飽和モノカルボン酸を主成分とし、特に粒径100mm以内の粒子状に成形し、主に廃水処理に用いる脱窒素促進剤およびこの脱窒素促進剤を用いた水処理方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
さらに浄化処理剤についても、従来の栄養塩類では、例えば水に対する溶解度が高く、この場合供給した栄養塩(の消費量)の地下水への溶出が早く(多く)、したがって頻繁に栄養塩の追加(継続)投与が必要であった。また、炭素数が10以上の脂肪酸は地下水への溶出が遅く、汚染部での最適量の溶出が管理できなく、地下水の流速が、例えば地下水が1日8センチも流れる場所では対応が難しく、地下水が年に数センチ程度の流れの場所での浄化に限られる。したがって、地下水の流速が遅い場所での栄養塩の過剰注入は、湖沼や内海などの閉鎖系水系等では、過剰栄養化によるプランクトン、藻、赤潮等の異常発生をまねく問題を生じることになり、管理システムの混乱・煩雑さをまねく等々の課題も派生することになる。ここに、浄化処理剤の溶解度が最適で、常時処理が安定し、メンテナンスが楽なものが切望されていた。
つまり、施工費用が比較的安いバイオレメデエーション法に注目し、特定の栄養塩を選定した嫌気性微生物処理によって原位置での土壌及び地下水の汚染の浄化を促進せしめ、
炭素数が6以上の直鎖状飽和モノカルボン酸を主成分とした栄養塩(カプロン酸、ペンタンカルボン酸、ブチル酢酸、エナント酸、エナンチル酸、ヘキサンカルボン酸、ペンチル酢酸、カプリル酸、ヘプタンカルボン酸、ヘキシル酢酸、ペラルゴン酸、オクタンカルボン酸、ヘプチル酢酸等)を汚染領域の上流側に注入することにより、汚染領域全てを最適期間内に安定して浄化でき、たとえ長期に亘る工期であってもメンテナンスフリーな工法を用いた浄化方法を提供する。
前記鉛直注入井戸を前記汚染部及びその前記拡散域の前記地下水流の上流側に、
前記水平注入井戸を前記汚染部及びその前記拡散域の中心部をほぼ貫くように、かつ縦断する地下水流方向に沿って、
前記栄養塩の注入によって浄化された前記注入域の前記地下水を揚水する水平揚水井戸を前記水平注入井戸の両側に対向し、かつ前記汚染部及びその前記拡散域を囲んで、
前記観測井戸を前記汚染部及びその前記拡散域の前記地下水流の下流側に、
それぞれ設置してなるものである。
また、栄養塩槽内の栄養塩は、鉛直注入井戸及び水平注入井戸と水平揚水井戸との間に形成されるショートサーキット的な流れをなし、かつ、汚染領域を囲って流れ、汚染物質を浄化処理することができる。つまり、鉛直注入井戸及び水平注入井戸から栄養塩が注入され、かつ水平揚水井戸が注入域の地下水を揚水することで栄養塩の拡散が加速され、汚染物質の浄化が有効に行われる。
つまり、炭素数が6以上の直鎖状飽和モノカルボン酸を主成分とする栄養塩は、地下水に対して徐々に溶解する(富栄養塩化にならない)ものであり、長期に亘るような場合においても常に安定して注入・供給ができ、したがって、嫌気性微生物の活性化・増殖による有機塩素系化合物の分解を長期に安定・最適化できるものとなる。
(参考例1)
図1は、本発明の参考例1の水平注入井戸による汚染土壌及び地下水の浄化工法の概要を示し、(A)は、その模擬的平面図、(B)は、同断面図である。
図1において、1は有機塩素化合物で汚染された汚染部(汚染源)を示し、その汚染(汚染部1)の拡散域2は、地下水流のある帯水層5の地下水流(水流方向を→印で示す、以下同じとする)や浸透・溶解等によってその汚染(汚染部1)が拡散された領域を示し、帯水層5を中心として土壌4にも及んでいる状態を示す。なお、以降の説明において、汚染部1及びその拡散域2を汚染領域(仮に定義する。以下同じとする)と称する。
有機塩素化合物(又は、揮発性有機化合物VOC)には、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ホルムアルデヒド、トルエン、ベンゼン、キシレンなどさまざまな物質がある。これらは化学的に安定していて分解しにくい性質があり、産業界で種々の用途に普及した反動として、今や特に土壌及び地下水の汚染の原因ともなっている。
10は上記栄養塩を注入(供給)する鉛直注入井戸を示し、その設置は土壌4及び帯水層5を鉛直に掘削して、その先端は難透水層(一般的に言われている不透水層、又は不透水性岩体等も含む)6に達している。そしてその配置(設置)は、汚染領域の地下水流の上流側に設置される。
栄養塩槽7内に貯留された栄養塩は、注入機8、開閉弁(図示は、省略する)等の操作によって、鉛直注入井戸10(の鉛直部)及び水平注入井戸11(の水平部)から汚染領域の土壌4及び帯水層5全体に行きわたるように注入/供給[鉛直注入井戸10及び水平注入井戸11、帯水層5(注入域3)内の注入方向を→印で示す、以下同じとする]され、地下水流(又は/および溶解性)や浸透・溶解等を利用して注入域3となる。すなわち図1に示すように、栄養塩が汚染部1、拡散域2を通過する方向の(地下水の水量・流速が加速された)流れとなり、注入域3は、鉛直注入井戸10及び水平注入井戸11によって汚染領域を大きく囲って(図示は省略するが、平面的にも大きく囲って)形成され、汚染の浄化処理が為される。すなわち注入された栄養塩によって、土壌4及び帯水層5中に自然条件(溶存酸素濃度DO値の極めて低い嫌気性環境)下で生態している嫌気性微生物を増殖かつ活性化させ、つまり揮発性有機化合物による汚染領域の汚染物質をバイオ的に安定して分解(還元的脱塩素化反応による浄化、無害化)処理する工法となる。
そして、改めて言うまでもないが、観測井戸9は、帯水層5の注入域3の地下水を採取又は揚水(揚水方向を→印で示す、以下同じとする)等によって種々の測定を行う。例えば、
1)ORP計(酸化還元電位計)を用いて酸化・還元電位を測定し、栄養塩の注入量の適否(浄化効果)の測定・判定が為される。
また、詳細な説明は省略するが、別に制御装置を設けて、上述のデータ検知・測定(入力)部、演算・分析・判定(出力)部等によって、最適な栄養塩の種別(や配合)や供給・注入量(や流量)、注入時期、後述の揚水量(流量)、地下水の返送量、工期推定、メンテナンス時期等の制御ができることは自明のことである。このことは当然に、無人化の遠隔制御、管理化への展開・拡大が容易となる。
なお、汚染領域に対する鉛直注入井戸10、水平注入井戸11(後述の21,31)、観測井戸9、後述の水平揚水井戸(22,32)の配置は、上述のとおり、地下水流方向の上流〜下流を基本とし、有効(理想)である。が、これだけに限定せず(詳細な記述はしない)、現場の汚染状況に応じて自在に為される(必ずしも、上流〜下流を基本としない任意の配置)ことは自明のことである。例えば、汚染領域の広がりや汚染状況に応じて、複数の各井戸で囲んで並べて設置したりする。この場合、各井戸の注入・揚水の量・時期を個々の井戸毎に設定・制御すれば、浄化処理がより一層最適化されることは自明である。
炭素数が6以上のカルボン酸には、例えばカプロン酸、ペンタンカルボン酸、ブチル酢酸、エナント酸、エナンチル酸、ヘキサンカルボン酸、ペンチル酢酸、カプリル酸、ヘプタンカルボン酸、ヘキシル酢酸、ペラルゴン酸、オクタンカルボン酸、ヘプチル酢酸等が上げられる
また、炭素数の上限は特に設ける必要はないが、工業的に大量に入手可能なものとしては炭素数が18程度までと考えられる(が必ずしも、炭素数が18以下のものに限られるものではないことは言うまでもない)。炭素数が大き過ぎると、水溶解性が更に悪く(溶解に時間がかかり)なり、栄養塩としての効果(実効性)が低くなる。
また、本願のカルボン酸は、直鎖状構造を有し、さらには、飽和モノカルボン酸であることが好ましい(これらの基本的な内容等については、特開2000−334492号公報に記載されている)。
帯水層5の地下水は硝酸態窒素が多いため、嫌気性微生物の栄養塩となるが、窒素成分だけでは活性できなく、C成分である炭素数が6以上の直鎖状飽和モノカルボン酸を適量投入することで、嫌気性微生物(分解菌)の活性化が促進され、微生物による水素と塩素の交換が活発になり、安定して汚染領域を浄化(無害化処理)できる(適量投入の判断はORP計の測定等による)。
したがって、注入機8は、栄養塩槽7から鉛直注入井戸10、水平注入井戸11を経て、上記のような栄養塩を選定・供給して注入域3を形成することになる(後述の実施例1,2についても同様である)。
以上の説明により、バイオ工法分類の中の一つである「鉛直井戸による浄化処理工法」は既に知られた工法であるが、本願の特徴は、この栄養塩を特定することにより、新たに特異な効果を生じることになる。
図2(実施例1)において、前述の図1(参考例1)と相違するのは、水平揚水井戸22が新たに追加・設置されるだけである。
したがって、水平揚水井戸22に関わる(他の同一名称・符号については、実施例1および参考例1の概要は同一であり重複するので、その説明は省略する)ことを以下に説明する。
すなわち、水平注入井戸21は、図1と同様に汚染領域の中心部をほぼ貫くように、かつ縦断する地下水流方向に沿って設置されている。これに対して、水平揚水井戸22は、鉛直注入井戸10及び水平注入井戸21によって栄養塩が注入され、浄化された注入域3の地下水を揚水(揚水方向を→印で示す、以下同じとする)するように水平注入井戸21の両側に対向(並行)し、かつ汚染領域を囲み、かつ縦断する地下水流方向に沿って配置・設置される。
なお、水平揚水井戸22の他の用途としては、例えば、1)前述の参考例1と同様に観測(機能)を兼用したり、浄化処理が十分な場合、1)揚水して外部に放流したり、2)揚水しなかったり、また、浄化処理が不十分で再処理が必要な場合、1)地下水を汲み上げて別の同処理施設へ回送したり、2)元の鉛直注入井戸10から帯水層5に戻して返送・循環(再浄化)させたりすること等、種々に使い分けても良い。
図3(実施例2)において、前述の図2(実施例1)と相違するのは、図2の水平注入井戸21、水平揚水井戸22が、図3においては、汚染領域に対する配置が入れ換わり、水平揚水井戸32、水平注入井戸31となることだけである。
したがって、水平注入井戸31、水平揚水井戸32に関わる(他の同一符号については、両実施例および参考例1の概要は同一であり重複するので、その説明は省略する)ことを以下に説明する。
すなわち、水平揚水井戸32は、図1,2の水平注入井戸11,21と同様に汚染領域の中心部をほぼ貫くように、かつ縦断する地下水流方向に沿って設置されている。これに対して、水平注入井戸31は、鉛直注入井戸10及び水平注入井戸31によって栄養塩が注入され、浄化された注入域3の地下水を揚水(揚水方向を→印で示す、以下同じとする)するように水平揚水井戸32の両側に対向(並行)し、かつ汚染領域を囲み、かつ縦断する地下水流方向に沿って配置・設置される。
なお、水平揚水井戸32の他の用途としては、例えば、1)前述の参考例1と同様に観測(機能)を兼用したり、浄化処理が十分な場合、1)揚水して外部に放流したり、2)揚水しなかったり、また、浄化処理が不十分で再処理が必要な場合、1)地下水を汲み上げて別の同処理施設へ回送したり、2)元の鉛直注入井戸10から帯水層5に戻して返送・循環(再浄化)させたりすること等、種々に使い分けても良い。
2 拡散域
3 注入域
4 土壌
5 帯水層
6 難透水層
7 栄養塩槽
8 注入機
9 観測井戸
10 鉛直注入井戸
11,21,31 水平注入井戸
22,32 水平揚水井戸
Claims (2)
- 炭素数が6以上の直鎖状飽和モノカルボン酸を主成分とした栄養塩を貯留する栄養塩槽と、
前記栄養塩を注入機によって土壌及び地下水の汚染部及びその拡散域に注入/浄化する鉛直注入井戸及び水平注入井戸と、
前記栄養塩の注入によって前記土壌及び前記地下水の注入域の浄化状態を監視する鉛直の観測井戸とにより、
注入された前記栄養塩によって嫌気性微生物を増殖かつ活性化させ、揮発性有機化合物による前記汚染部および前記拡散域の前記揮発性有機化合物を分解処理する工法を用いた汚染土壌及び地下水の浄化方法であって、
前記鉛直注入井戸を前記汚染部及びその前記拡散域の前記地下水流の上流側に、
前記水平注入井戸を前記汚染部及びその前記拡散域の中心部をほぼ貫くように、かつ縦断する地下水流方向に沿って、
前記栄養塩の注入によって浄化された前記注入域の前記地下水を揚水する水平揚水井戸を前記水平注入井戸の両側に対向し、かつ前記汚染部及びその前記拡散域を囲んで、
前記観測井戸を前記汚染部及びその前記拡散域の前記地下水流の下流側に、
それぞれ設置してなる汚染土壌及び地下水の浄化方法。 - 炭素数が6以上の直鎖状飽和モノカルボン酸を主成分とした栄養塩を貯留する栄養塩槽と、
前記栄養塩を注入機によって土壌及び地下水の汚染部及びその拡散域に注入/浄化する鉛直注入井戸及び水平注入井戸と、
前記栄養塩の注入によって前記土壌及び前記地下水の注入域の浄化状態を監視する鉛直の観測井戸とにより、
注入された前記栄養塩によって嫌気性微生物を増殖かつ活性化させ、揮発性有機化合物による前記汚染部および前記拡散域の前記揮発性有機化合物を分解処理する工法を用いた汚染土壌及び地下水の浄化方法であって、
前記鉛直注入井戸を前記汚染部及びその前記拡散域の前記地下水流の上流側に、
前記栄養塩の注入によって浄化された前記注入域の前記地下水を揚水する前記水平揚水井戸を前記汚染部及びその前記拡散域の中心部をほぼ貫くように、かつ縦断する地下水流方向に沿って、
前記水平注入井戸を前記水平揚水井戸の両側に対向し、かつ前記汚染部及びその前記拡散域を囲んで、
前記観測井戸を前記汚染部及びその前記拡散域の前記地下水流の下流側に、
それぞれ設置してなる汚染土壌及び地下水の浄化方法。
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