JP4158956B2 - ルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質をコードする遺伝子、組み換え体dna及びルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質をコードする遺伝子、組み換え体DNA及びルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生物発光酵素ルシフェラーゼの基質であるルシフェリンは、ルシフェラーゼによる発光後オキシルシフェリンに変換される。ルシフェラーゼを用いたATP測定法は、医療や食品衛生分野で広く使われているが、基質として用いられるルシフェリンが高価であること、また、ルシフェラーゼ反応が反応後生成されるオキシルシフェリンにより阻害されることから、オキシルシフェリンの除去、またはルシフェリンへの再生がルシフェラーゼATP測定法の発展をさらに進めるものと考えられる。オキシルシフェリンをルシフェリンに再生することのできるホタル由来のタンパク質が見い出されている(U.S.Pat.No.5814504)が、ホタル体内からは、微量にしか抽出できず、工業的な利用は困難であった。
ルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質をルシフェリン−ルシフェラーゼ反応系に添加すれば、発光を持続させることができ、また使用するルシフェラーゼ及びルシフェリンの量を低減させることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質を生産する組み換え体を用い、ルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質の製造法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上記目的に鑑み鋭意検討を行なった結果、甲虫類由来のルシフェリン再生能力を有するタンパク質をコードする遺伝子の単離、及び遺伝子の構造を決定し、更にルシフェリン再生能力を有するタンパク質をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAを得ることに成功した。次いで、この組み換え体DNAを宿主細胞に含ませた形質転換体または形質導入体を培養すると、効率よくルシフェリン再生能力を有するタンパク質が生産されること等を見い出し、本発明を完成した。
【0005】
即ち、本願の第1の発明は、以下の(a)または(b)のタンパク質をコードする遺伝子である。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)アミノ酸配列(a)において1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質
本願の第2の発明は、以下の(a)または(b)のDNAからなる遺伝子である。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA
(b)(a)の塩基配列からなるDNAの相補鎖配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質をコードするDNA
本願の第3の発明は、上記ルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入したことを特徴とする組み換え体DNAである。
本願の第4の発明は、上記組み換え体DNAを含む形質転換体または形質導入体である。
本願の第5の発明は、上記の形質転換体または形質導入体を培地に培養し、培養物からルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質を採取することを特徴とするルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質の製造法である。
なお、以下では上記ルシフェリン再生能力を有するタンパク質を、単に「ルシフェリン再生酵素」と略称することがある。
また、ルシフェリン再生能力を有するタンパク質をコードするDNAまたはルシフェリン再生能力を有するタンパク質をコードし、さらに非翻訳領域を含むDNAを、「ルシフェリン再生酵素遺伝子」と略称することがある。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質をコードする遺伝子は、ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応を有する甲虫類より得ることができる。 本発明のルシフェリン再生能力を有するタンパク質をコードする遺伝子とは、発現したときにルシフェリン再生能力活性を有するものであればすべて含まれるが、好ましくは、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子、又は配列表の配列番号1に示される塩基配列からなる遺伝子が挙げられる。なお、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子とは、コドンの縮重を考慮すると種々の塩基配列が包含される。即ち、このような種々の塩基配列の中から、遺伝子発現系の諸要素、例えば宿主細胞の種類等による優先コドン、転写されたRNAにより形成される高次構造の回避などを考慮して選択すればよい。選択された塩基配列は、自然界からクローニングされたDNAであっても、人為的に化学合成されたDNAであってもよい。
【0007】
本発明のルシフェリン再生酵素遺伝子を取得するためには、先ず、ヘイケボタルから以下の方法で、poly(A)+RNAを調製する。甲虫類組織からの全RNAの抽出には、効率よく損傷の少ないRNAが得られるならば方法は制限されず、例えば、フェノール/SDS法、グアニジンイソチオシアネート/塩化セシウム法等、公知のいずれの方法によっても可能である。こうして得た全RNAからオリゴ(dT)担体を用いてpoly(A)+ RNAを分離できる。また、全RNAを抽出せずにpoly(A)+RNAを得 ることのできるキット(MPG Direct mRNA Purification Kit、CPG,IN C.社等)を使用してもよい。
【0008】
次いで、poly(A)+RNAを鋳型にし、オリゴ(dT)プライマー、ラ ンダムプライマー等を用い、逆転写酵素によって一本鎖cDNAを合成する。更に、グブラ−ホフマン(Gubler and Hoffman)法、オカヤマ−バーグ(Okayama−Berg)法(Molecular Cloning 2nd edition、Cold Spring Harbor press、1989)等により二本鎖cDNAを合成する。酵素遺伝子の発現量が少ない場合には、PCRを利用したcDNAライブラリー作製キット〔CapfinderPCR cDNA Library Construction Kit(CLO NTECH社)等〕を用いて、PCRによってcDNAを増幅してもよい。このようにして合成したcDNAは、平滑末端化、リンカーの付加、PCRによる制限酵素サイトの付加等を行なうことにより、ファージベクター、プラスミド等のクローニングベクターにクローニングできる。
【0009】
以上のようにして得られたcDNA又はcDNAライブラリーを鋳型としてPCR(polymerase chain reaction)を行なうことで、目的遺伝子の部分配列を得ることができる。このとき用いるプライマーにはルシフェリン再生酵素のアミノ 酸配列のどの部分に基づいてもよいが、コドンの縮重が少なくかつ複雑な高次構造を形成しないと思われる配列を選ぶのが望ましい。なお、コドンの縮重がある場合、混合プライマー又はイノシンを含むプライマーも使用することができる。PCRにより得られた増幅産物は、370ADNAシークエンス・システム(パーキン エルマー社製)を用いた塩基配列の解析により、ルシフェリン再生酵素遺伝子の一部であるか、容易に確認することができる。増幅産物がルシフェリン再生酵素遺伝子の一部であることが確認されたら、その配列からプライマーを作成し、5'RACE及び3'RACE (Rapid Amplification of cDNA End: PCR PROTOCOLS A Guide to Methods and Applications, ACADEMIC press INC.p28-38)を行なうことで、未知の5末端領域及び3'末端領域を決定することができる。以上の操作により、容易に完全長のルシフェリン再生酵素遺伝子の配列を決定することができる。なお、5'RACE、 3'RACEには、例えば、5'-Full RACE Core Set(TaKaRa社製)、 3'-Full RACE Core Set (TaKaRa社製)等を用いることができる。
【0010】
また、ストリンジェントな条件のハイブリダイゼーションにより、cDNAライブラリーからルシフェリン再生酵素遺伝子をスクリーニングすることも可能である。プローブに用いるDNA断片は、ルシフェリン再生酵素のアミノ酸配列に基 づいて合成したオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCRによって得ることができる。得られたDNA断片はラベルしてプローブとすることができる。ラベルにはラジオアイソトープ、ビオチン等、種々のものを用いることができるが、ランダムプライミング法でラベルすることが望ましい。なお、cDNAライブラリーの作成は、例えば、STRATAGENE社のZAP Express Vector Kitを用いて行なうことができる。DNA断片の標識と、ハイブリダイゼーションの検出は、例えば、DIG DNA標識・検出システム(ベーリンガー・マンハイム社製)等を用いて行なうことができる。
なお前述した“ストリンジェントな条件”とは、特異的なハイブリッドのみが選択的に形成され、シグナルが検出されるが、非特異的なハイブリッドは形成されない条件である。このような条件は、個々の生物種により若干異なるが、常法によりハイブリダイゼーションと洗いの際の塩濃度又は温度をいくつか検討するのみで容易に決定することができる。このような条件としては、例えば、ハイブリダイゼーションは、5×SSC、1.0 %(W/V)核酸ハイブリダイゼーション用ブロッキング試薬(ベーリンガ・マンハイム社製)、0.1 %(W/V) N-ラウロイルサルコシ ン、0.02 %(W/V)SDSを用い一晩(8〜16時間程度)で行なう。洗いは、0.1×SSC、0.1%(W/V)SDSを用い、SSC濃度は0.1倍までの範囲で、また温度は37℃での洗浄から始めて、65℃までの範囲で変化させ、固定されたDNA由来のシグナル がバックグラウンドと区別できるようになるまでメンブレンを洗浄したうえ、プローブの検出を行う。
【0011】
このような条件でハイブリダイズするようなDNAは、ルシフェリン再生酵素活性を有するポリペプチドをコードしている蓋然性が高いが、ルシフェリン再生酵素活性を失うような変異を有するものも含まれる。しかし、それらについては、形質転換を行なった後に、形質転換体のルシフェリン再生酵素活性の産生能を測定することにより容易に取り除くことが可能である。
【0012】
以上のような方法により、ルシフェリン再生酵素遺伝子を取得したのち、常法に従いベクターDNAに組み込む。用いるベクターDNAとしては、例えば、pUC19(宝酒造社製)、pBR322(宝酒造社製)、pT7Blue(Novagen社製)、pBluescript SK+(Stratagene社製)、pMAL-C2(NEW England Labs社製)等のプラスミ ドDNA、λENBL3(Stratagene社製)、λDASH II(フナコシ社製)等のバクテリオファージDNA等が挙げられる。得られた組み換え体DNAを用いて、例えば、大腸菌K-12、好ましくは大腸菌JM109(東洋紡社製)、DH 5α(東洋紡社製)、XL1-Blue(フナコシ社製)等を形質転換又は形質導入して夫々の形質転換体又は形質導入体を得る。宿主細胞としては、上記以外に、例えば、大腸菌K-12以外の大腸菌等の細菌、酵母、かび、放線菌、蚕、動物細胞等が用いられる。
【0013】
この形質転換は、例えば、D.M.Morrisonの方法(Method in Enzymology,68,326-331,1979)により行なうことができる。また、形質導入は、例えば、B.Hohnの方法(Method in Enzymology,68,299-309,1979)により行なうことができる。
上記形質転換体又は形質導入体より純化された新規な組み換え体DNAを得るには、例えば、P.Guerry等の方法〔J.Bacteriology、第116巻、第1064〜1066 頁(1973年)〕、D.B.Clewellの方法〔J.Bacteriology、第110巻、第667〜676頁(1972年)〕等により得ることができる。
更に、上記ルシフェリン再生酵素遺伝子を含有するDNAを用いて、後述の実施例1項目(9)に示す370ADNAシークエンス・ システム(パーキンエルマー社製)を用いてルシフェリン再生能力を有するタンパク質をコードする遺伝子の全塩基配列の解析を行ない(配列番号1参照)、次いで、前記塩基配列を有する遺伝子によって翻訳されるポリペプチドのアミノ酸の一次配列を確定する。(配列番号2参照)
なお、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数、好ましくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されており、かつ、ルシフェリン再生能力を有するアミノ酸配列をコードするルシフェリン再生能力を有するタンパク質遺伝子は、全て本発明に含まれる。
また配列番号2に示されるアミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上の相同性を有し、かつルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質をコードする遺伝子は、全て本発明に含まれる。
そして、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されており、かつ、ルシフェリン再生能力を有するアミノ酸配列をコードするルシフェリン再生能力を有するタンパク質遺伝子を得るには、如何なる方法でもよく、例えば、遺伝子に点変異または欠失変異を生じさせるための周知技術である部位特定変異誘導法、遺伝子を選択的に開裂し、次いで、選択されたヌクレオチドを除去または付加し、遺伝子を連結する方法、オリゴヌクレオチド変異誘導法等が挙げられる。
【0014】
上記のようにして得られたルシフェリン再生能力を有する形質転換体又は形質導入体、例えば、エッシェリシア属に属する菌株を用いてルシフェリン再生能力を有するタンパク質を生産するには、下記のようにして行なうことができる。上記微生物を培養するには、通常の固体培養法で培養してもよいが、なるべく液体培養法を採用して培養するのが好ましい。
また、上記微生物を培養する培地としては、例えば、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コーンステイープリカーあるいは大豆もしくは小麦麹の浸出液等の1種以上の窒素源に、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化第2鉄、硫酸第2鉄あるいは硫酸マンガン等の無機塩類の1種以上を添加し、更に必要により糖質原料、ビタミン等を適宜添加したものが用いられる。
なお、培地の初発pHは、7〜9に調整するのが適当である。また培養は、30〜42℃、好ましくは37℃前後で6〜24時間、通気撹拌深部培養、振とう培養、静置培 養等により実施するのが好ましい。培養終了後、該培養物よりルシフェリン再生能力を有するタンパク質を採取するには、通常の酵素採取手段を用いることができる。
【0015】
培養物から、例えば、濾過、遠心分離等の操作により菌体を分離し、洗菌する。この菌体からルシフェリン再生酵素を採取することが好ましい。この場合、菌体をそのまま用いることもできるが、超音波破砕機、フレンチプレス、ダイナミル等の種々の破壊手段を用いて菌体を破壊する方法、リゾチーム等の細胞壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶解する方法、トリトンX-100等の界面活性剤を用いて菌体から酵素を抽出する方法等により、菌体からルシフェリン再生酵素を採取するのが好ましい。
このようにして得られたルシフェリン再生酵素を含む菌体破砕液からルシフェリン再生酵素を単離するには、通常の酵素精製に用いられる方法が使用できる。例えば、硫安塩析法、有機溶媒沈澱法、イオン交換クロマトグラフ法、ゲル濾過クロマトグラフ法、吸着クロマトグラフ法、電気泳動法等を適宜組み合わせて行なうのが好ましい。
【0016】
ルシフェリン再生能力は、以下に示す方法により測定することができる。
(ルシフェリン再生能力測定法)
(試薬)
A 0.1mM オキシルシフェリン
B 0.01mM D-システイン
C 25mM グリシルグリシン+5.4mM 硫酸マグネシウム
D 10mM ATP(pH7.8)
E 5mg/ml ルシフェラーゼ
(手順)
1 下記反応混液を調製する。
0.005ml A
0.010ml B
0.085ml C
2 タンパク質溶液0.01mlを添加し、37℃で一定時間反応させる。
3 反応液0.01mlとC0.1mlを混合する。
4 下記ルシフェラーゼ混液を調整する。
10ml D
1ml E
5 項目3の混合液に項目4の混液を0.1ml添加し、ルミノメーターで発光量を測定する。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
(1)ヘイケボタルmRNAの調製
ヘイケボタル尾部10gを、乳鉢と乳棒で粉砕し、RNA抽出試薬ISOGEN(和光純薬社製)10mlに縣濁し、2700 r.p.m.で5分遠心分離することによりR NA画分を得た。これより、Current Protocols in MolecularBiology(WILEY Interscience,1989)記載の方法に従い、poly(A)+RNA 0.5mgを得た。
(2)プライマーの合成
本発明者等が別途取得した、ヘイケボタル由来のルシフェリン再生酵素(U.S. Pat. No.5814504, Example 3)をもとにプライマーを作製することにした。先 ず、ヘイケボタル由来のルシフェリン再生酵素をペプチダーゼで断片化し、これを逆相クロマトグラフィーに供しピークを分取した。得られた数種のペプチドについて、ABI470Aプロテインシークエンサー(パーキンエルマー製)を用いてア ミノ酸配列を決定した。このようにして決定したアミノ酸配列をもとにして、HR12(配列番号4)及びKN14(配列番号3)のプライマーを設計し、アマシャム ・ファルマシア・バイオテク株式会社のカスタムDNA受託サービスにて合成した 。
【0018】
(3) RT-PCR
反応液を、以下の組成で調整し、42℃で30分間逆転写反応を行なった後、99℃で5分間変性させ、5℃で保存した。
次いで、下記の組成で調製した反応液80μlを逆転写を行なったチューブに添加した。変性を94℃で30秒間、アニールを62℃で30秒間、伸長反応を72℃で1.5 分間を1サイクルとし、30サイクルの反応によりPCRを行なった。
PCR終了後、反応液をアガロースゲル電気泳動に供したところ、約600bpの位置に目的の増幅断片と思われるバンドが確認されたので、そのバンドを切り出しGENECLEAN II(BIO 101社製)にて精製した。
【0019】
(4) 精製したDNA断片を370ADNAシークエンス・システム(パーキンエルマー社製)にて塩基配列の決定及び解析を行なった。決定した塩基配列から予想されるアミノ酸配列に、(2)で得られたペプチド断片が含まれていることを確認し た。
(5) 3'-RACEによる下流領域の解析
先ず、上記のDNA配列解析よりプライマーを設計し、アマシャム・ファルマシアバイオテク社の受託サービスにより合成した(HN003、配列番号5)。これ と上記のmRNAと3'-Full RACE CoreSet(宝酒造社製)用いて3'-RACEを行 ない、3'未知領域の増幅を行なった。反応液をアガロース電気泳動にかけ、約400bpのDNA断片をRecoChip(宝酒造社製)で精製抽出し、DNAシークエンサ ーで塩基配列の決定及び解析を行なったところ、決定した塩基配列の5'領域に上記ルシフェリン再生能力を有するタンパク質をコードする遺伝子の配列と同じ配列を含んでいることが確認された。
【0020】
(6) 5'-RACEによる上流領域の解析
先ず、上記のDNA配列解析よりプライマーを設計し、アマシャム・ファルマシアバイオテク社の受託サービスにより合成した〔HR101(配列番号6)、 HR102 (配列番号7)、 HR103(配列番号8)、 HN104(配列番号9)、 HN105(配列番号10)〕。これと上記ヘイケボタルmRNAと5'-Full RACE CoreSet(宝酒造社製)用いてRT−PCRを行ない、5'未知領域の増幅を行なった。反応液をアガロース電気泳動にかけ、約300bpのDNA断片をRecoChip(宝酒造社製) で 精製抽出し、DNAシークエンサーで塩基配列の決定及び解析を行なった。 決定した塩基配列の3'領域に上記ルシフェリン再生能力を有するタンパク質をコードする遺伝子の配列と同じ配列を含むことが確認された。
(7)RT−PCRによる遺伝子断片の取得
上記3つの塩基配列より、翻訳開始コドンと終止コドンを推定し、N末領域とC末領域に相当する塩基配列のプライマーDNAをアマシャム・ファルマシア・バイオテク社の受託サービスにより合成した〔porf101(配列番号11), porf102(配列番号12)〕。これらと上記ヘイケボタルmRNAによりRT−PCRを行ない、反応液をアガロース電気泳動で解析した。その結果、約900bpのバ ンドが確認された。このバンドに含まれるDNA断片をRecoChip(宝酒造社製)で精製した。精製したDNA断片をプラスミドpT7Blue(Novagen社製)にクローニングし、得られたプラスミドでE. coli JM109を形質転換した。該形質転換株、即ち、大腸菌JM109(pHlre)は、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM
BP−7248として寄託されている。
【0021】
(8)活性の確認
大腸菌JM109(pHlre)菌体を、75μg/mlのアンピシリンを含むTY培地(1% バクトトリプトン、0.5% バクトイースト・エクストラクト、0.5% NaCl、pH7.0 )10mlにて37℃でクレット100まで振とう培養した後、IPTGを終濃度1mMとなるよう添加し、更に、4時間培養した。この培養液を氷上で冷却下、超音波破砕器(Ultrasonicgenerator、Nissei社製)を用いて20秒4回処理した。これをエッペンドルフチューブに入れ、微量遠心機を用い、12,000r.p.m.で10分間遠心分離し、上清画分及び沈殿画分に分離し、上清を別のエッペンドルフチューブに移しかえた。前述した酵素活性測定法によりルシフェリン再生能力を測定したところ、
ベクターのみ含む大腸菌が0.95 kcount/mlであるのに対し、JM109(pHlre)は8.6 kcount/mlとルシフェリン再生能力を有していた。
(9)ルシフェリン再生能力を有するタンパク質をコードする遺伝子の解析
大腸菌JM109(pHlre)のルシフェリン再生能力が確認されたので、pHlreの挿入断片にルシフェリン再生酵素遺伝子が含まれていることが明らかとなった。そこで、このプラスミドDNAについて370ADNAシークエンス・システム(パーキンエルマー社製)を用いて塩基配列の決定を行なった。決定した塩基配列を配列番号1に、また、該DNA配列から翻訳されると予想されるアミノ酸配列を配列番号2に夫々示した。ルシフェリン再生酵素遺伝子は、924bpのコーディング領 域を有し、307個のアミノ酸をコードしていた。
【0022】
実施例2
プラークハイブリダイゼーション
ZAP Express Vector Kit (STRATAGENE社製)を用いてヘイケボタルcDNAライブラリーを作製した。次いで、実施例1(3)のRT-PCRにより得られた 約600bpの増幅断片をテンプレート、HR12(配列番号4)、 KN14(配列番号3)をプライマーとして、PCRによりジゴキシゲニン(DIG)ラベルされたDNAプローブ を作製した。
条件は、0.2ml容量のPCR用チューブに滅菌蒸留水37.75 μl、10×バッファー5μl、プライマーDNAの100pmol/μl 溶液1 μl×2種、テンプレートDNA溶液1 μl、PCR DIGミックス10倍濃度(ベーリンガー・マンハイム社製)4μl 及びExTaq DNAポリメラーゼ0.25μl を入れ、混和した後、ミネラルオイル20μl を滴下しRoboCycler Gradient 96にセットした。1)95℃30秒、2)95℃30秒、3)62℃30秒、4)72℃40秒、2)〜4)を45サイクル、5)72℃2分のプログラムをセットし、反応を 実施した。反応液よりエタノール沈殿によって増幅断片を回収し、50μl のTEバッファーに溶解してDIGラベルプローブを得た。
【0023】
以上により作製した、ヘイケボタルcDNAライブラリー及びDNAプローブを用いてプラーク・ハイブリダイゼーションを行なった。キットのマニュアルに従い、5枚の寒天培地に1枚あたり約5×103個のプラークを形成させた。これらの寒天 培地上のプラークからHyBond-N+ナイロントランスファーメンブレン(アマシャム社製)に、メンブレンの説明書に従ってDNAをトランスファーした。なお、この際、非特異のシグナルを排除するために、1枚の寒天培地につき2枚のメンブレンにトランスファーを行なった。
上記メンブレンについて、作成したDIG-DNAプローブ、DIGシステム(ベーリン ガー・マンハイム社製)を用いて「DIGシステムを用いてハイブリダイゼーションを行うためのユーザーガイド」37-40頁、ベーリンガー・マンハイム社(1996)に 従ってハイブリダイゼーション・検出を行なった。
このスクリーニングにおいて陽性クローンの候補株を4株得た。得られた候補株について同様の二次スクリーニングを行ない、純化した陽性クローンを1株取得した。
このファージクローンについて、キットの説明書に従い、in vitro excision を行ない、プラスミドpHPとして回収した。
このプラスミドpHPで大腸菌JM109を形質転換し、形質転換体からプラス ミドDNAを調製し、塩基配列を解析するための試料とした。挿入cDNAの塩基配列の解析にはTaq DyeDeoxy Terminator Cycle Sequencing Kit(パーキンエルマー社製)を用いる従来公知の方 で行なった。この結果、挿入cDNAは配列表の配列番号1と同一の塩基配列を有することが明らかとなり、ヘイケボタル由来のルシフェリン再生酵素をコードする遺伝子であることが確認された。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、ルシフェリン再生能力を有するタンバク質を効率よく生産することができるので、本発明は、産業上極めて有用である。
【0025】
【配列表】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
Claims (5)
- 以下の(a)または(b)のタンパク質をコードする遺伝子。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)アミノ酸配列(a)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質 - 以下の(a)または(b)のDNAからなる遺伝子。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA
(b)(a)の塩基配列からなるDNAの相補鎖配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質をコードするDNA - 請求項1または2記載のルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質をコードする遺伝子をベクターDNAに挿入したことを特徴とする組み換え体DNA。
- 請求項3の記載の組み換え体DNAを含む形質転換体又は形質導入体。
- 請求項4記載の形質転換体又は形質導入体を培地に培養し、培養物からルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質を採取することを特徴とするルシフェリンを再生する能力を有するタンパク質の製造法。
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