JP4157429B2 - 溶接用裏当て金 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はビル等の鉄骨構造物を構成する鋼管柱(以下コラムという)を溶接する際に使用する溶接用裏当て金に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来ビル等の鉄骨構造物に使用されているコラムの多くは、丸形鋼管や角形鋼管が使用されている。
またこれらコラムは予め工場で製作した後建築現場へ搬入して組み立てられるが、長尺なものは輸送に制限を受けることから、輸送制限内の長さのコラムを予め工場で製作した後建築現場に搬入し、建築現場でコラムを長さ方向に突き合わせ溶接したり、各フロアー毎に設けたダイヤフラム介して各コラムを長さ方向に連結することにより所定の長さのコラムを得ており、コラムを突き合わせ溶接する場合、突き合わせ部の内側に裏当て金を当接して溶接を行っている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−15694号公報(段落0007、0012)
【特許文献2】
特開平11−90688号公報(段落0007、0025)
【0004】
前記特許文献1に記載された裏当て金は、突き合わせ溶接するコラムの溶接部内側に、コラムの内面に沿って枠状の裏当て金を設けると共に、裏当て金の両端間に設けたパイプにより裏当て金をコラム内面に仮止めすることにより、万力を必要とせずに裏当て金がコラムに仮止めできるため、作業能率の向上が図れる等の効果を有している。
また前記特許文献2に記載された裏当て金は、平板により形成された裏当て金用材料に、予め複数のV溝を形成して、このV溝形成部分より裏当て金を折り曲げることにより、溶接するコラムや台形パネルのコーナ部に沿った形状の裏当て金が容易に得られるようにしたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし前記特許文献1、2に記載された裏当て金は、何れもコラムや台形パネルの溶接部に形成された開先の内側を塞ぐように裏当て金を当接して溶接を行うことから、溶接時発生したガスが逃げ場を失って溶融金属内に気泡として残留することがあり、その結果溶接ビード内に溶接欠陥となる気泡が発生して溶接品質が著しく低下する等の問題がある。
【0006】
本発明はかかる従来の問題を改善するためになされたもので、裏当て金本体にスリット状のガス抜き溝を設けた溶接用裏当て金を提供して、溶接欠陥の発生を未然に防止することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の溶接用裏当て金は、鋼管よりなるコラムを突き合わせ溶接し、またはダイヤフラムを介してコラムを突き合わせ溶接する際に使用する溶接用裏当て金であって、コラムの内周面に外周面が当接するようにコラムの断面形状に合わせて裏当て金本体を形成し、かつ裏当て金本体の長手方向に間隔を置いて裏当て金本体の端面をコラムの軸線方向に切り欠くことにより、溶接時発生したガスを逃がす複数のガス抜きスリットを形成すると共に、コラムに対して裏当て金本体を位置決めする際に利用するため、端面からの長さが位置決め位置となるように長さを変えた複数のガス抜きスリットを形成し、かつガス抜きスリットの長さをガス抜きスリットに数字で表示したしたものである。
【0008】
前記構成により、コラム同士またはコラムとダイヤフラムを突き合わせ溶接した際に発生したガスは、ガス抜きスリットよりコラム内に逃げて溶融金属内に気泡として残留することがないため、溶接ビード内に溶接欠陥となる気泡が発生することがなく、これによって溶接品質の改善が図れると共に、溶融金属内に気泡が残留しないように神経を使いながら溶接作業を行う必要もないことから、作業能率も向上する。
また裏当て金本体の端面をコラムの軸線方向に切り欠くことにより、ガス抜きスリットを形成したことから、カッタ等の切断手段により簡単にガス抜きスリットが形成できるため、溶接欠陥の原因となる気泡を発生させることが少ない溶接用裏当て金が安価に得られる。
【0009】
さらに途中から断面形状が変化するコラムであっても、確実にガスの排出が行えるようになると共に、ガス抜きスリットの長さを予め裏当て金本体の端面から例えば6mm、7mmのように設定しておくことにより、コラムに裏当て金本体を仮付けする際の位置決め手段として利用することができる上、ガス抜きスリットの長さが6mmか、7mmかの判別がしにくい場合でも、ガス抜きスリットの開先端面からの長さを表示した数字によりスリットの長さが正確に把握できるため、裏当て金本体を位置決めする際の間違いを少なくすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
図1は溶接用裏当て金の斜視図、図2は図1のA−A線に沿う断面図、図3はコラムにダイヤフラムを溶接する際の分解斜視図、図4はコラムにダイヤフラムを溶接した状態の断面図である。
図1に示す裏当て金本体1は、鉄骨構造物を構成するコラム2を溶接する際に使用するもので、コラム2に丸形鋼管が使用されている場合は、図1に示すように環状に、また角形鋼管が使用されている場合は、図6に示すように角枠状に形成されている。
何れの場合も、コラム2と同材質の帯状鋼板を環状または角枠状に成形することにより形成されていて、コラム2の内周面に当接した際コラム2の内周面と裏当て金本体1の外周面との間に隙間が生じないように外径寸法や縦横寸法が設定されている。
【0018】
また裏金本体1の上部側角部を面取りすることにより、コラム2の溶接部に形成された開先2aとほぼ同角度の開先1aが形成されており、裏当て金本体1の上端側には、円周方向に間隔を存して複数のガス抜きスリット1bが形成されている。
これらガス抜きスリット1bは、溶接時発生するガスをコラム2の内側へ逃すことにより、ガスが溶融金属内に気泡となって残留するのを防止するもので、裏当て金本体1の上端面より開先1aのやや下方まで形成されており、帯状鋼板を環状または角枠状に成形する前に、カッタ等の切断手段を使用して予め所定の溝幅及び所定の長さに切り欠くことにより形成されている。
【0019】
なお前記ガス抜きスリット1bのピッチや溝幅、深さは、裏当て金本体1の寸法に応じて適切に設定されているが、例えば裏当て金本体1の高さがHが26mm、板厚tが9mm、直径DがΦ320mmの場合、ガス抜きスリット1bのピッチP15〜20mm、溝幅W2mm、深さLは6〜7mm程度に設定することが好ましいが、勿論これら数値に限定されるものではない。
また帯状鋼板を環状または角枠状に成形した後、カッタ等の切断手段を使用して裏当て金本体1にガス抜きスリット1bを形成しても勿論よい。
【0020】
次に前記第1の実施の形態になる裏当て金本体1を使用して、コラム2とダイヤフラム3を溶接する場合の作用を、図3及び図4を参照して詳述する。
コラム2を順次長さ方向へ連結する場合に使用されるダイヤフラム3は、鋼板によりコラム2の外径よりやや径の大きい円板状に形成されている。
このダイヤフラム3をコラム2の端部に溶接するに当たっては、まず図3に示すように裏当て金本体1をコラム2の端部内に嵌挿し、開先1aが図4に示すようにコラム2の端部より突出するように位置決めしたら、裏当て金本体1をコラム2の内周面に仮付けする。
【0021】
次に裏当て金本体1上にダイヤフラム3を載置して、コラム2の中心にダイヤフラム3の中心が一致するように芯合わせをしたら、コラム2とダイヤフラム3の溶接を開始するが、溶接中に発生するガスは、裏当て金本体1に形成されたガス抜きスリット1bより図4の矢印Bに示すようにコラム2内へと逃げるため、溶融金属内に気泡となって残留することがなく、これによって溶接ビード4内に溶接欠陥の原因となる気泡が発生することがないので、溶接品質の改善が図れるようになる。
またコラム2を長さ方向へ順次連結する場合は、コラム2に溶接されたダイヤフラム3に次のコラム2の端部を突き合わせて、前記と同様な方法でダイヤフラム3とコラム2を溶接すればよい。
【0022】
なお図5はガス抜きスリット1bの変形例を示すもので、この変形例のようにガス抜きスリット1bの長さを任意に変えてもよく、この場合ガス抜きスリット1bの長さを、開先1a側端面から6mmや、7mmにしておくことにより、後述する第2の実施の形態で説明する位置決め手段5としてもガス抜きスリット1bが利用できる。
この場合ガス抜きスリット1bの長さが6mmか、7mmかの判別がしにくいので、予め6mmのガス抜きスリット1bには「6」を、7mmのガス抜きスリット1bには「7」を刻印などの手段で形成しておくことにより、裏当て金本体1を位置決めする際の間違いを少なくすることができる。
またコラム2に図6に示すように角形鋼管を使用した場合は、裏当て金本体1も角枠状に形成してコラム2の内周面に密着させると共に、コラム2に溶接するダイヤフラム3も、コラム2の形状に合わせて角形に形成すればよい。
【0023】
一方図7ないし図9は、第2の実施の形態になる溶接用裏当て金を示すもので、次にこれを説明する。
なお前記第1の実施の形態になる溶接用裏当て金と同一部分は、同一符号を付してその説明は省略する。
図7ないし図9に示す第2の実施の形態では、裏当て金本体1をコラム2に仮付けする際の位置決めを容易にするため、予め裏当て金本体1の外周面に1本ないし複数本の位置決め手段5を、円周方向に形成している。
これら位置決め手段5は、裏当て金本体1の開先1a側端面から例えば6mmと7mm離れた位置に上下方向に間隔を存して形成されたもので、必要に応じて8mmの位置にも、もう1本形成されている。
【0024】
これら位置決め手段5は、断面が例えばV字型の凹溝からなる連続した直線や、点線、または破線、点線と破線の組み合わせ等により形成されたもので、例えば図9の(イ)ないし(ニ)に示す工程を経て裏当て金本体1が製作されている。
すなわち製作する裏当て金本体1の高さHと板厚tを有する図9の(イ)に示す定尺の帯鋼6を、必要な長さに切断して図9の(ロ)に示すような帯板部材6aを形成し、次に開先1aとガス抜きスリット1bを、図9の(ハ)に示すように形成する。
その後図9の(ニ)に示すように、一方のローラ7aの外周面に2条の突条7b、7cが突設されたローラ対7の間に帯板部材6aを通過させて、帯板部材6aの外周面に図9の(ホ)に示すように位置決め手段5を形成するもので、裏当て金本体1の開先1a側端面より例えば5mm、6mmの位置に正確に位置決め手段5が形成されるように、ローラ6aの外周面の突条7b、7bの位置が設定されており、位置決め手段5が点線や破線の場合は、突条7b、7cも点線や破線が形成できる形状となっている。
【0025】
以上のようにして開先1aとガス抜きスリット1b及び位置決め手段5の形成された帯板部材6aは、コラム2の内周面に裏当て金本体1を仮付けた際、裏当て金本体1とコラム2の内周面に隙間が生じないよう、コラム2の内周面の形状に合わせて環状に成形することにより裏当て金本体1を製作するもので、得られた裏当て金本体1は、図8に示すように前記実施の形態と同様に開先1aとガス抜きスリット1bが形成されている上、外周面に1本ないし複数本の位置決め手段が形成された構成となっている。
【0026】
次に前記構成の第2の実施の形態になる溶接用裏当て金の作用を説明すると、コラム2の端部にダイヤフラム3を溶接する場合、予めコラム2の端部内側に裏当て金本体1を仮付けするが、仮付けに当っては、まず裏当て金本体1をコラム2の端部内周面に嵌合したら、裏当て金本体1の外周面に形成されている位置決め手段5のうち、例えば上側の位置決め手段5にコラム2の端面が一致するよう裏当て金本体1の位置を調整する。
これによってコラム2の端面からに裏当て金本体1の突出量は、6mmとなるが、突出量を7mmにしたい場合は、下側の位置決め手段5にコラム2の端面が一致するよう裏当て金本体1の位置を調整すればよい。
【0027】
なおコラム2の端面からに裏当て金本体1の突出量は、コラム2の径や、施工業者により任意に設定可能であり、コラム2の端部の切断精度(直角度)が低い場合は、予め開先1a側の端面から8mmの位置にも位置決め手段5を形成した裏当て金本体1を製作してもよく、各位置決め手段5に予め「6」、「7」、「8」等の数字を刻印等の手段で表示しておけば、突出量を間違えて仮付けする心配が少ない。
以上のようにして裏当て金本体1の仮付けが完了したら、前記第1の実施の形態と同様の作業によりコラム2の端部にダイヤフラム3を溶接するもので、溶接中に発生するガスは、裏当て金本体1に形成されたガス抜きスリット1bよりコラム2内へと逃げるため、溶融金属内に気泡となって残留することがなく、これによって溶接ビード4内に溶接欠陥の原因となる気泡が発生することがないので、溶接品質の改善が図れるようになる。
【0028】
なお前記第2の実施の形態では、定尺の帯鋼を所定の寸法に切断した後、開先1aやガス抜きスリット1b、位置決め手段5を形成するようにしたが、定尺の状態で開先1aやガス抜きスリット1b、位置決め手段5を形成し、その後所定の寸法に切断してもよく、また開先1aやガス抜きスリット1b、位置決め手段5を形成する順序も特に限定されるものではないと共に、位置決め手段5は、ガス抜きスリット1bのない溶接用裏当て金に形成しても勿論よい。
さらに前記第1、第2の実施の形態では、ダイヤフラム3を介してコラム2を突き合わせ溶接する場合について説明したが、コラム2同士を突き合わせ溶接する際にも裏当て金本体1が使用でき、この場合裏当て金本体1の開先1aは不要であると共に、断面寸法の異なる異形コラム2を連結する場合に各コラム2の間に介在されるテーパ状コラムと各コラム2の溶接にも勿論上述した裏当て金本体1が使用できるものである。
何れの場合も、溶接中に発生したガスは、ガス抜きスリット1bよりコラム2内へ逃げるため、溶接ビード4内に気泡となって残留することがなく、これによって溶接欠陥のない品質の良好な溶接ビード4が得られるようになると共に、位置決め手段5により裏当て金本体1をコラム2の所定位置に容易、かつ短時間で精度よく仮付けすることができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明は以上詳述したように、突き合わせ溶接するコラムの内周面に外周面が当接するようにコラムの断面形状に合わせて裏当て金本体を形成すると共に、溶接時発生したガスを逃がす複数のガス抜きスリットを、裏当て金本体の長手方向に間隔を置いて形成したことから、コラム同士またはコラムとダイヤフラムを突き合わせ溶接した際に発生したガスは、ガス抜きスリットよりコラム内に逃げて溶融金属内に気泡として残留することがないため、溶接ビード内に溶接欠陥となる気泡が発生することがなく、これによって溶接品質の改善が図れると共に、溶融金属内に気泡が残留しないように神経を使いながら溶接作業を行う必要もないことから、作業能率も向上する。
【0031】
また裏当て金本体の端面をコラムの軸線方向に切り欠くことにより、ガス抜きスリットを形成したことから、カッタ等の切断手段により簡単にガス抜きスリットが形成できるため、溶接欠陥の原因となる気泡を発生させることが少ない溶接用裏当て金が安価に得られると共に、ガス抜きスリットの長さを任意に変化させれば、途中から断面形状が変化するコラムであっても、確実にガスの排出が行える上、ガス抜きスリットの長さを予め裏当て金本体の端面から例えば6mm、7mmのように設定しておくことにより、コラムに裏当て金本体を仮付けする際位置決め手段として利用することができる上、ガス抜きスリットの長さが6mmか、7mmかの判別がしにくい場合でも、ガス抜きスリットの開先端面からの長さを表示した数字によりスリットの長さが正確に把握できるため、裏当て金本体を位置決めする際の間違いを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態になる溶接用裏当て金の斜視図である。
【図2】図1のA−A線沿う断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態になる溶接用裏当て金を使用してコラムとダイヤフラムを溶接する際の分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態になる溶接用裏当て金を使用してコラムとダイヤフラムを溶接した状態の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態になる溶接用裏当て金の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態になる溶接用裏当て金の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態になる溶接用裏当て金の斜視図である。
【図8】図7のB−B線沿う断面図である。
【図9】(イ)ないし(ホ)は本発明の第2の実施の形態になる溶接用裏当て金の製造工程を示す説明図である。
【符号の説明】
1 裏当て金本体
1b ガス抜きスリット
2 コラム
2a 開先
3 ダイヤフラム
4 溶接ビード
5 位置決め手段

Claims (1)

  1. 鋼管よりなるコラムを突き合わせ溶接し、またはダイヤフラムを介してコラムを突き合わせ溶接する際に使用する溶接用裏当て金であって、前記コラムの内周面に外周面が当接するように前記コラムの断面形状に合わせて裏当て金本体を形成し、かつ前記裏当て金本体の長手方向に間隔を置いて前記裏当て金本体の端面をコラムの軸線方向に切り欠くことにより、溶接時発生したガスを逃がす複数のガス抜きスリットを形成すると共に、前記コラムに対して前記裏当て金本体を位置決めする際に利用するため、前記端面からの長さが位置決め位置となるように長さを変えた複数の前記ガス抜きスリットを形成し、かつ前記ガス抜きスリットの長さを前記ガス抜きスリットに数字で表示したことを特徴とする溶接用裏当て金。
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