JP4156223B2 - リニアスケール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、相対的に移動している二物体間の移動量を測定する光学式のリニアスケールにおいて、分割点毎の波形値を記憶した分割位置テーブルを利用して、スケールの検出位置に対応して変化しているアナログ信号を、デジタル的な信号演算によって処理し、リアルタイムで移動情報を示す出力信号を発生するのに好適なリニアスケールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
工作機械等において、被加工物に対する工具の相対的な移動量を高い精度で正確に測定し、その測定値を迅速にシリアルデータとして出力することが要請されている。
そのひとつの例として、光学格子を2枚重ね合わせることにより得られるモアレ縞を利用した光学式スケールに適用した場合の概要を以下に述べる。
この光学式スケールは、図8に示すように透明のガラススケール100の一面に透光部と非透光部が所定のピッチで配列するよう格子(刻線)を設けたメインスケール101と、透明のガラススケール102の一面に透光部と非透光部が所定のピッチで配列するよう格子(刻線)を設けたインデックススケール103とを有し、同図(a)に示すように、このメインスケール101にインデックススケール103を微小間隔を持って対向させると共に、同図(b)に示すように、メインスケール101の格子に対し微小角度傾けられるようにインデックススケール103の格子を配置している。
【0003】
このように配置すると、スケールの移動に応じて図9に示すモアレ縞が発生する。このモアレ縞の間隔はWとなり、間隔W/2毎に暗い部分あるいは明るい部分が発生する。この暗い部分あるいは明るい部分は、メインスケール101に対し、インデックススケール103が相対的に左右に移動すると上から下、あるいは下から上に移動していく。この場合、メインスケール101及びインデックススケール103の格子のピッチをP、相互の傾斜角度をθ[rad]とすると、モアレ縞の間隔Wは、
W=P/θ
と示され、ピッチPは光学的にモアレ縞の間隔Wをθ倍に拡大して検出することができる。すなわち、格子が1ピッチ移動すると、モアレ縞はWだけ変位するが、ピッチPはWのθ倍となるので、モアレ縞の位相変化を検出することによってピッチP内の移動量を高い精度で測定することができるようになる。
【0004】
そこで、図10に示すように光電変換素子110によってモアレ縞を検出すると、モアレ縞の位置がAの状態となっていると、光電変換素子110に照射される光量は最も多くなり、光電変換素子110に流れる電流は最大値I1となる。次に、相対的に移動してBの状態になると光電変換素子110に照射される光量はやや減少し、その電流はI2 となり、更に、移動してCの状態になると光電変換素子110には最も少ない光量が照射され、その電流も最も小さいI3 となる。そして、更に移動してDの状態になると光電変換素子110に照射される光量はやや増加し、その電流はI2 となり、Eの状態になるまで移動すると、再び最も光量の多い位置となり、元の電流値I1 に戻る。
このように、光電変換素子110に流れる電流は正弦波状に変化すると共に、その変化が1周期経過した時に、格子のピッチPだけメインスケール101とインデックススケール103とが相対的に移動したことになる。
【0005】
また、図11に示すように、90度、または一周期(間隔W)と90゜ずらせて2つの光電変換素子111、112を設けると、A相の光電変換素子111に流れる電流に対してB相の光電変換素子112に流れる電流は、図11に示すように90゜変位した電流となる。すなわち、A相の光電変換素子111に流れる電流をSin波とすると、B相の光電変換素子112に流れる電流はCos波となる。
この場合、メインスケール101とインデックススケール103との相対的な移動方向により、A相の光電変換素子111に流れる電流に対するB相の光電変換素子112に流れる電流の位相は90゜進相あるいは90゜遅相となるため、90゜ずらせて配置した2つの光電変換素子を設けることで相対的な移動方向を検出することができる。
【0006】
スケールの1ピッチ分(刻線の間隔)の相対的移動で、上記のように光電変換素子からサイン波形状のいわゆるリサージュ波形が得られる。
このリサージュ波形を位相変調させてスケールの1ピッチを内挿するためのパルス信号(刻線の1ピッチ内を分割したスケールの絶対位置のデータ)を得ることもできるが、この方法ではリニアスケールの移動に対し1サイクル分のデータを得た後にパルスを発生するので、リアルタイムで信号を出力することができない。
【0007】
このために、スケールの1ピッチの移動量を示している正弦波状のリサージュ波形のレベルを分割数に応じて標本化し、標本化したデジタル信号からリサージュ波形の位相を検出する際に、パターンテーブルを参照して、スケールの1ピッチを内挿値とするデータを読み出すことが行われる。
この場合は、スケールの1ピッチを検出する検出手段の移動速度やその検出感度の影響を受けることなく、1ピッチ内を内挿するA相パルス信号及びB相パルス信号をほぼリアルタイムで出力することができる。
【0008】
A相信号をB相信号で除した商B/Aを利用した例を図13のブロック図を参照して説明する。この図において、1はガラス製のメインスケール2に対して光を照射する光源、3はインデックススケールに相当するスリット、4はメインスケール2及びスリット3を透過した光のモアレ縞を受光して電気信号に変換する光電変換素子を示す。
この光電変換素子4からは前記した図12に示すように90度の位相差を有する正弦波状のA相信号及びB相信号がリサージュ波形として出力され、それぞれ所定のレベルに増幅するアンプ5a、5bに供給されている。
【0009】
アンプ5(a、b)の出力はサンプリング回路11(a、b)およびA/D変換器12(a、b)からなるデジタル前処理回路10に供給され、スケールの移動情報を発生するA/B相信号発生回路20に供給される。
A/B相信号発生回路20は図示されているようにデジタルフイルタ21、B/A比率演算部22、象限確認部23、A/B相パターンテーブル24、出力バッフア25、及びタイミングクロック発生部26によって構成されている。
【0010】
上記したようにメインスケール2に対してインデックススケールが1ピッチ移動すると、図12に示すように1ピッチの移動量を1サイクルとするA相信号のリサージュ波形と、B相信号のリサージュ波形が出力され、この1サイクル分の動きに対して、例えば、20分割可能な周期のサンプリングパルスがデジタル前処理回路10に供給され、デジタル信号に変換される。
A相信号のサンプリングデータDAと、B相信号のサンプリングデータDBは、それぞれデジタルフイルタ21を通った後、A相またはB相のPAM信号AP、BPとしてB/A比率計算部22に供給される。
【0011】
B/A比率計算部22は、PAM信号APとB相のPAM信号BPの商B/Aを算出し、この商B/Aの演算値D2を次のA/B相パターンテーブル部24に供給する。
また、DA、DBのデジタル信号の極性を判断して波形の属する象限を決定する象限信号識別データD0、D1を象限確認部23より出力する。
そしてこの象限識別データD0、D1と前記した演算値D2に基づいて、A/B相パターンテーブル部24から出力パターンデータD3、D4が読み出され、この出力パターンデータD3、D4を出力バッフア部25に供給してA、B相パルス信号列を形成する。
【0012】
ここで、図14はスケールの1ピッチを20分割した場合のA/B相パターンテーブル24の格納データを模式的に示しており、象限の項には各位相に対応する象限識別データD0、D1の値が格納され、変化率(B/A)の項には、各位相に対応する演算値D2のそれぞれの値が格納されている。右端の出力パターンの項には、各位相毎の出力パターンデータD3、D4が格納されている。
象限確認部23より出力された象限信号識別データD0、D1と、B/A比率計算部22から出力された演算値D2を格納値と比較して、演算値D2の変化から位相の変化を捉え、相当する出力パターンデータD3、D4を出力する。
【0013】
即ち、A/B相パターンテーブル24は出力される象限識別データD0、D1の値が、例えば(0、0)であれば第1象限であることを決定し、次に演算値D2が3.08から1.38に変化した瞬間に、位相が18度から36度に変化したことが確認され、該当する出力パターンデータD3、D4が1、0から1、1に変化して、殆どリアルタイムで読み出される。
このように、A/B相パターンテーブル24には、例えばスケールの1ピッチを20分割して内挿するときは、リサージュ波形の位相が18度推移する毎に参照、比較される象限信号識別データD0、D1、演算値D2、出力パターンデータD3、D4が格納されている。
なお、演算値D2が0で割られる場合は(実際の演算を避けて)div0と表示されている。
【0014】
ところで、格納データ中の変化率(B/A)の値は三角関数の真数(図14の場合はCotとなる)と考えて良く、0〜π/4(第1象限)の値を持っていれば、他の第2、3、4象限の変化率(B/A)の値は正負の符号を入れ替えたり、数値を逆にπ/4から0に向かって読み出すなどすると求めることができる。これは、サンプリング数を大きくしてスケールを細かく分割した場合でも同様であるから、A/B相パターンテーブルは0〜π/4を持っていればよい。従って通常は0〜π/4(第1象限)のデータとしてメモリ数を少なくしている。
【0015】
本例ではA/B相パターンテーブルとして説明したが、A相信号とB相信号の商を取らず、(波高値やバイアスを安定させて)A相(B相)用のパターンテーブルを使用することもできる。この場合、図14の変化率(B/A)の欄は、ほぼ、Sin、Cos等の関数値となる。今後、これらのパターンテーブル類を総称して分割位置テーブルと呼び、A相(B相)の示す数値を(特に演算されていない場合でも)演算値D2として統一する。
このような分割位置テーブルをROMとして作成しておけば、A相、B相、A/B等の演算値D2の値が分割位置テーブルの変化率のある値と一致したときに即座に出力パターンデータD3、D4を出力し、ほぼ、リアルタイムで出力バッフア部25からA、B相パルス信号列を形成し、送出することができる。
【0016】
ところで、一般ユーザがリニアスケールを選択する場合、分解能が大きなファクタとなる。ここで分解能とはリニアスケールで読みとれる最小の寸法差(最小表示幅)を指し、例えば、分解能が0.1μm、1μm、2μmなどと呼ぶ。
従って、リニアスケールの刻線ピッチと分割数および分解能(最小表示幅)との間には次の
〔 刻線ピッチ(μm)/分割数= 分解能(最小表示幅)(μm)〕
の関係があり、カタログには分解能が示され、分割数は記入されないのが普通である。
1例として、市場に供給されているリニアスケールのある機種のカタログから、この刻線ピッチと分解能の組み合わせ例を示すと図15の表(a)のようになり、分解能は0.1〜10.0μmの7種類あり、刻線ピッチと分解能から計算した分割数は20〜400の6種類に達している。また、市場から要求される分解能が小さくなる傾向にあり、刻線ピッチの種類の増加も考えられるので、同図の表(b)に示すように、今後、採用が想定される分割数は更に増加することが予想される。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、分割位置テーブルは分割数によってそれぞれ作成する必要があるので、新しい分割数が必要となると、新しく採用された分割数に対応した分割位置テーブルを作成せねばならない。分割位置テーブルの新規作成には多大の手間が必要であり、新規作成のための工数増は新製品のコストアップとなり、作成に要する期間はそのまま発売時期の遅れに直結する等の問題が発生している。
さらに、分割位置テーブルのROMを搭載した回路基板が多種類になり、サービス用保守部品の在庫増をもたらすことも問題である。
【0018】
本発明は、各種のリニアスケールに要求される多くの分割数に対応可能な、分割位置テーブルの共通化を図ることを目標としている。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような問題点を解決するために、少なくとも長さ方向に等間隔で目盛られている刻線を有するメインスケールと、
前記メインスケールに対して移動可能に配置され、前記刻線の1ピッチに対して正弦波状のA相信号、及びB相信号を発生する検出手段と、
この検出手段から出力されたA相信号、及びB相信号をスケールの分解能に対応する周期でサンプリングして、デジタル信号に変換するA/D変換手段と、
このA/D変換手段で変換された上記A相信号、およびB相信号から、分割位置テーブルのアドレスを生成するアドレス生成手段と、
このアドレス生成手段からアドレスを供給されて、A/B相パターンデータを出力する分割位置テーブルと、
この分割位置テーブルから出力されたA/B相パターンデータによって、前記リニアスケールの移動量に対応したA相パルス信号、およびB相パルス信号を形成する信号処理手段とを備え、
前記A/D変換手段は、入力されたA相及びB相のリサージュ波形をデジタル信号に変換して、A相のPAM信号PAとB相のPAM信号PBをアドレス生成手段のオフセット補正回路と象限チェック回路に供給し、
前記アドレス生成手段は、デジタル化されたPA、PB信号の符号を判定して存在する象限を特定する象限チェック回路と、この象限チェック回路で決定された象限に対応した分割数をオフセット数として加算するオフセット補正回路と、前記オフセット補正回路の出力と象限チェック回路の出力が加えられ分割テーブルのアドレスを生成するROMアドレス生成回路とを有し、
前記分割位置テーブルには1種類または複数種類の最大分割数を有し、この最大分割数は少なくとも所定の分割数の個数に等しい数の2を約数として含み、
前記信号処理手段は、分割位置テーブルからのA/B相パターンデータである分割データが出力される分割データ読み込み回路と、この分割データ読み込み回路から出力されるデータを右シフトして所望の分割数に分割するデータ補正回路とを有し、
このデータ補正回路の出力と前回の分割データ回路に保存されている移動開始時の位置データである前回移動の最終位置データとを加算することでアブソリュート量を得るリニアスケールを提供する。
【0020】
また、本発明のリニアスケールは、前記分割位置テーブルが、前記最大分割数が640または800の何れか、または、その何れも有する。さらに、前記分割位置テーブルは分割数を設定する分割数選択手段を有する。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態の1例を説明するブロック図である。(a)はリニアスケールから得られるA相、B相の信号をA/D変換し、必要な処理を行って外部のNC装置等に信号列を出力する過程を示し、(b)は光学式リニアスケールに適用したときのA相、B相の信号発生過程を示す。
(b)において、1はガラス製のメインスケール2に対して光を照射する光源、3はインデックススケールに相当するスリット、4はメインスケール2及びスリット3を透過した光のモアレ縞を受光して電気信号に変換する光電変換素子を示す。光源1、スリット3、光電変換素子4で検出手段を形成する。
この光電変換素子4からは前記した図11に示すように90度の位相差を有する正弦波状のA相信号及びB相信号がリサージュ波形として出力され、ブロック図(a)の左端に印加される。
【0022】
A相信号及びB相信号はそれぞれIV変換回路31a、31bを経て電圧に変換され、所定のレベルに増幅するアンプ5a、5bに供給されている。
なお、IV変換回路31a、31b、アンプ5a、5b間でスケールの移動速度等に伴う出力の変動及びバイアスを補償され、一定波高値となり、上下の波高も等しくされている。
アンプ5a、5bの出力はA/D変換器12a、12bに供給され、分割数に対応したサンプリングレートのデジタル信号に変換される。
入力されたA相及びB相のリサージュ波形が、クロックの立ち上がり点でサンプルされ、クロックの立ち下がり点でA/D変換されて、例えば8ビットのデジタル信号に変換される。
IV変換回路31(a、b)、アンプ5(a、b)、A/D変換器12(a、b)でA/D変換手段を構成する。
【0023】
デジタル信号に変換されたA相信号のサンプリングデータと、B相信号のサンプリングデータは、図2に示すように階段状に上下するA相の8ビットのPAM信号PAとB相のPAM信号PBとなり、オフセット補正回路32、象限チェック回路33に供給される。
【0024】
オフセット補正回路32、象限チェック回路33の機能を図3、図4を参照して説明する。
PA、PBは図3(a)の模式図に示すように、反時計方向に廻転する動径44のA軸(x軸)とB軸(y軸)への射影と考えられる。廻転につれて動径44は1象限(0)、2象限(1)、・・・と象限を移動して行く。
同図(c)に略図を示すように、PAはCosの曲線を示し、PBはSinを示す。図ではBは90゜進相している。このとき、スケールは相対的に正方向に移動していると仮定する。
【0025】
動径がどの象限に存在するかは、各象限毎のA、Bの正負の符号を比較すれば求めることができる。従って、その正負の符号は(b)表のようになる。デジタル化されたPA、PBが供給されると、象限チェック回路33内でPA、PBの符号を判定し、存在する象限を特定する。
なお、相対的なスケールの移動方向の(正負の)特定と同時に動径の存在する象限を求めるには、例えば、A、Bの変化の傾向(増加または減少)を併用してもよい。
【0026】
動径の位置は(a)の角θで表されるから、全円周(2π)を適当な数に分割し、それぞれの分割点に相当するPA、PBの値を記憶した分割位置テーブルを用意すれば、PA、PBの値から角θを求めることができる。
【0027】
(c)に示すようにPAはCos、PBはSinの曲線であるから、第2、第3、第4象限のそれぞれの値は、第1象限(0)のCos、Sin曲線のどちらかを選択し、適当な符号を付けて示すことができる。即ち、第1象限(0)の値さえあれば全円周に渡って、角θを求めることができる。
同図(d)の破線のように(c)の曲線を折り返して比較すれば、第1象限のA、Bの曲線の値に正負の符号を付けた(e)を容易に得ることができる。
【0028】
図4の模式図は、1例として、円周の320分割毎に動径の位置を示すようなテーブルを模式的に示したもので、0〜79番が第1象限(0)、81〜159番が第2象限(1)、・・・となる。なお、ここではA、B軸は手前の象限に含ませている。
上述のように、分割位置テーブルは0〜79までの分割数に対応しているので、PA、PBの値と分割位置テーブルを比較して、例えば動径が45°の位置で分割数40であることが判明したとする。
実際の動径の存在象限によって、動径の角度は45°、(45°+90°)、(45°+180°)、(45°+270°)の何れかであり、同図(b)の表のように0°、90°、180°、270°に対応する分割数0、80、160、240をオフセット数として加算すればよい。
オフセット補正回路32で、上述の象限チェック回路33で決定された象限に対応した上記のオフセット数が加算される。
【0029】
オフセット補正回路32の出力(D2)、象限チェック回路33の出力(D0、D1)はROMアドレス生成回路34に加えられ、生成されたアドレスが分割位置テーブル35に送出される。
オフセット補正回路32、象限チェック回路33、およびROMアドレス生成回路34でアドレス生成手段を構成する。
【0030】
分割位置テーブル35の内容は、図14でA/B相パターンテーブルの説明を行ったように、象限識別データD0、D1と、演算値D2から出力パターンデータD3、D4が読み出される。ここで演算値D2(変化率)としては、前例のA、B相の商のCot類似の波形や、A相およびB相の波形(SinあるいはCosの真数に近い)の値が使用される。分割位置テーブル35には象限識別データD0、D1と、演算値D2に対応するより分類された出力パターンデータD3、D4が格納されている。また、0による除算を表示するdiv0も使用され、通常は0〜π/2(第1象限)のデータとしてメモリ数を少なくしていることも図14と同様である。
【0031】
ここで、本発明では分割位置テーブル35の記憶装置として、書き換え可能なフラッシュEPROMが使用されているが、これはフラッシュEPROMが容量が大きく小型な点で採用されたもので、通常のROMで不都合無く使用できる。
【0032】
分割位置テーブル35から象限識別データD0、D1と、演算値D2に対応する分割データ(D3、D4)、いわゆるA/B相パターンデータが分割データ読み込み回路37に出力される。
更に、象限チェック回路33と分割データ読み込み回路37の出力がデータ補正回路36に加えられる。分割位置テーブル35の最大分割数から実際に使用する分割数に変換するシフト操作も、データ補正回路36で行ってもよい。象限チェック回路33からの出力も、データ補正回路36に追加され、動径の存在象限の確認等も行われる。
【0033】
移動開始時の位置データ、即ち、前回移動の最終位置データは前回の分割データ回路39に保存されており、移動量算出回路38に於いて、前回のデータを加算するとアブソリュート量が得られる。
表示0を乗り越えて移動する場合に起こる正負の符号反転等の処理はゼロクロス処理回路40で行われる。
分配クロック生成回路41により、スケール2の移動速度に対応した分配クロック(パルス)が生成され、パルス分配器42を介してスケールの進行方向を加味(up、down )した信号がA/B相変換回路43に加えられる。
データ補正回路36、分割データ読み込み回路37、移動量算出回路38、前回の分割データ回路39、ゼロクロス処理回路40、分配クロック生成回路41、パルス分配器42、および、A/B相変換回路43で信号処理手段を構成する。
【0034】
図5に示すように、A/B相変換回路43からスケールが移動をしているときに、スケールの移動方向と移動量を示すA相パルス信号(A)とB相パルス信号(B)がリアルタイムで出力され、スケールが停止するとその値が保持される。そしてスケールが再び順方向に移動すると、その移動速度に対応した周期でA相パルス信号(A)及びB相パルス信号(B)が出力される。
この場合、スケールが停止後に逆送すると図6に示すようにA相パルス信号(A)がB相パルス信号(B)より遅れた状態になり、スケールの移動方向を検知することができる。
そして、この各A/B相パルス信号がスケールの分解能を示す信号としてNC工作機械等にサーボ信号としてフィードバックされることになる。
【0035】
ところで、既に説明したように、リニアスケールの刻線ピッチと分割数および分解能(最小表示幅)との間には〔刻線ピッチ(μm)/分割数= 分解能(最小表示幅)(μm)〕の関係があり、図15の表から、既に市場に供給されているリニアスケールと今後の製品を想定して分割数を書き出すと20分割から800分割までの9種類となる。
基本的に、異なる分割数の分割位置テーブルは別のロムとして作成しなくてはならず、分割位置テーブルも9種類必要となる。
【0036】
分割数のある程度大きなマスタテーブルを1個用意して計算により必要な分割点を算出する方法も考えられるが、分割位置テーブルを使用する目的が、スケールの移動に伴ってリアルタイムで信号を送出するためなので、分割点を定めるのに複雑な計算をしている時間的余裕はなく、コスト上も特別の計算回路を組み込むことは避けたい。
そこで、レジスタ内容の桁移動のみのシフト操作を利用すれば、所要時間も短く、複雑な計算を行う必要もない。周知のように、2進デジタルコード信号を右へ1桁シフトすると2で割ることと同じになるから、最大分割数のテーブルから必要な分割数がシフト操作のみで得られると所要時間も少なく、計算回路を特に設ける必要もない。
【0037】
分割位置テーブル35の最大分割数から右シフト操作のみで得られる分割数は、最大分割数に1/2、1/4、1/8、・・・、を乗じたものとなる。逆に言えば、最大分割数は所要の分割数のそれぞれ(2の冪乗倍)である必要がある。または最大分割数が2の冪乗(2、4、8、16・・・)の約数を持てば良い。約数中で必要な2の個数(冪数)の最大は最小の分割数により定まる。
【0038】
1例として、先の図15の表(a)、(b)から必要とされる分割数を書き出すと、20、40、80、160、200、320、400、640、800の9個となる。
ここで、20、40(20×2)、80(40×2)、160(80×2)、320(160×2)、640(320×2)の1系列が構成され、別に200、400(200×2)、800(400×2)の1系列が構成される。
従って、第1の系列は640=(20×2×2×2×2×2)=(20×25)=(定数×2の冪乗)と書くことができ、この系列から得る所要の分割数は5個であるので冪数は5となる。
【0039】
同様に、第2の系列は800=(200×2×2)=(200×22)であり、(定数×2の冪乗)と書いたときに、定数は200、所要の分割数は2個であるので冪数は2となる。
このように、最大分割数は所要の分割数の個数に相当する2を約数として含む必要がある。また、この例で見るように定数に約数として2を含んでも良い。
【0040】
図7の表は、上記の例の分割位置テーブルの最大分割数を640と800の2種類とした場合を示している。左端にシフト操作で得られる分割比を記し、系列1、2を分割数の少ない順に記入している。括弧内は分割数のそれぞれの数値の2進数表記を示している。
2進数の表示では右へ1桁シフトして(2で割って)末尾の0が1個づつ消えて行く様子が示されている。
なお、表の場合は定数(20、200)の約数として2を含んでいるので、更に小さい分割数もシフト操作のみで得ることができる。例えば100、50、10等も必要があれば分割数として使用できる。
【0041】
このように、〔最大分割数=定数×2の冪乗〕となるような最大分割数を持った分割位置テーブルを作っておけば、〔2の冪乗〕の冪数だけの種類の分割数が得られる。図14の9種の分割数に対応するには、最大分割数が640及び800の2種類の分割位置テーブルをROMとして記憶すればよく、ROMとしては1種類で済む。予め、640と800の2種類の分割位置テーブルを作成することにより、以降は新規に分割位置テーブルを作成することはない。
なお、分割位置テーブルは第1象限のみのデータを持てば良いので、最大200(800/4)のアドレスは8ビットで済み、この程度の最大分割数が手頃である。
【0042】
通常は、図1の回路説明で述べたように、信号処理手段内のデータ補正回路36で必要なシフト処理を行うので、分割位置テーブル側に特定の分割数を選択する分割数選択手段を設けなくて良い。
リニアスケールの刻線ピッチと分解能を決めれば、分割数は一義的に定まるので、個別の機械向けには、刻線ピッチと分解能の決定された段階で分割位置テーブルの分割数を1種類に特定してもよい。分割位置テーブル近傍に取り付けられた、例えばディップスイッチ等の分割数選択手段により分割数を選択することができる。
分割位置テーブルの搭載された保守用基板には上記の分割数選択手段を取り付けておき、現地でも必要な分割数を選択可能にすれば、シフト機能のない回路の場合でも保守用基板としては1種類の在庫で全てのリニアスケールのサービスに対応可能となる。
【0043】
上記実施例は光学式のリニアスケールのモアレ縞を検出したA、B相信号からスケールの1ピッチを内挿したA、B相パルス信号を得るようにしたが、光学スケールに限ることなく、例えば、磁気目盛を検出して同様にA、B相信号が得られるようなリニアスケール等に対しても本発明の手法を適用することができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明は以上のように、従来リニアスケールの刻線ピッチと分解能によって定まる分割数に対し、その都度その分割数に対応したロムとして分割位置テーブルを作成し、各機械毎に分割位置テーブルのロムを搭載していたのに対し、基本的には2種類の分割数のロムで分割位置テーブルを構成するので、その都度新たな分割位置テーブルを形成する必要がない。
従って、新しい分割位置テーブル形成の期間が不要なことによる新製品納期の短縮、開発工数の削減の効果が大きい。
【0045】
また、最大分割数から必要な分割数までダウンする操作はシフト操作のみで行えるので、必要な分割数の分割位置テーブルに記憶された必要な分割数に対応するアドレスの指定に時間が掛からず、リアルタイムで出力をなすことができ、リニアスケールの性能向上に寄与すること大である。
また、スケールの移動位置に対応した信号がリアルタイムで出力されるので、工作機械等の制御信号として、精度の高い信号を供給することができるという利点を有する。
【0046】
更に、サービス用の分割位置テーブルを含む回路部分は基本的に1種類となるので、特に交換用サービス基板の在庫圧縮に効果をもたらす。在庫管理の手間の削減、在庫コストの減少等経済的効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリニアスケールの実施の形態の1例を示すブロック図である。
【図2】A相、B相のアナログ信号をデジタル化するときの一例を示す波形図である。
【図3】 リニアスケールの出力のアドレスを求める方法を説明する図表である。
【図4】 データ補正の方法及びオフセットを説明する模式図である。
【図5】スケールが順方向に移動したときのパルス列信号波形図である。
【図6】スケールが逆方向に移動するときのパルス列信号の波形図である。
【図7】 本発明のリニアスケールの装備する分割位置テーブルの最大分割数の1例を示す図表である。
【図8】 光学式スケールの説明図である。
【図9】 光学的なモアレ縞の説明図である。
【図10】モアレ縞の変化と出力信号の波形図である。
【図11】A相、B相信号発生用の光電変換素子の配置例である。
【図12】A相、B相信号の波形図である。
【図13】A/B相パターンテーブルを参照してA、B相パルス信号を発生する、リニアスケールのブロック図の1例である。
【図14】A/B相パターンテーブルに格納するデータの説明図である。
【図15】分割数の種類を示す図表である。
【符号の説明】
1 LED、2 ガラススケール、3 インデックススケールのスリット、
4 光電変換素子、5a・5b アンプ、
10 デジタル前処理回路、11a・11b サンプリング回路、12a・12b A/D変換器、20 A/B相信号処理部、21 デジタルフイルタ、22B/A相比率計算部、23 象限確認部、24 A/B相パターンテーブル、25 出力バッフア、26 タイミング発生部、30 分割位置テーブル、
CLK サンプリングパルス、DA A相信号のサンプリングデータ、DB B相信号のサンプリングデータ、AP A相PAM信号、BP B相のPAM信号、D2 演算値、D0・D1 象限信号識別データ、D3・D4 出力パターンデータ、

Claims (3)

  1. 少なくとも長さ方向に等間隔で目盛られている刻線を有するメインスケールと、
    前記メインスケールに対して移動可能に配置され、前記刻線の1ピッチに対して正弦波状のA相信号、及びB相信号を発生する検出手段と、
    この検出手段から出力されたA相信号、及びB相信号をスケールの分解能に対応する周期でサンプリングして、デジタル信号に変換するA/D変換手段と、
    このA/D変換手段で変換された上記A相信号、およびB相信号から、分割位置テーブルのアドレスを生成するアドレス生成手段と、
    このアドレス生成手段からアドレスを供給されて、A/B相パターンデータを出力する分割位置テーブルと、
    この分割位置テーブルから出力されたA/B相パターンデータによって、前記リニアスケールの移動量に対応したA相パルス信号、およびB相パルス信号を形成する信号処理手段とを備え、
    前記A/D変換手段は、入力されたA相及びB相のリサージュ波形をデジタル信号に変換して、A相のPAM信号PAとB相のPAM信号PBをアドレス生成手段のオフセット補正回路と象限チェック回路に供給し、
    前記アドレス生成手段は、デジタル化されたPA、PB信号の符号を判定して存在する象限を特定する象限チェック回路と、この象限チェック回路で決定された象限に対応した分割数をオフセット数として加算するオフセット補正回路と、前記オフセット補正回路の出力と象限チェック回路の出力が加えられ分割テーブルのアドレスを生成するROMアドレス生成回路とを有し、
    前記分割位置テーブルには1種類または複数種類の最大分割数を有し、この最大分割数は少なくとも所定の分割数の個数に等しい数の2を約数として含み、
    前記信号処理手段は、分割位置テーブルからのA/B相パターンデータである分割データが出力される分割データ読み込み回路と、この分割データ読み込み回路から出力されるデータを右シフトして所望の分割数に分割するデータ補正回路とを有し、
    このデータ補正回路の出力と前回の分割データ回路に保存されている移動開始時の位置データである前回移動の最終位置データとを加算することでアブソリュート量を得るリニアスケール。
  2. 前記分割位置テーブルは、前記最大分割数が640または800の何れか、または、その何れも有する請求項1のリニアスケール。
  3. 前記分割位置テーブルは、分割数を設定する分割数選択手段を有する請求項1または2のリニアスケール。
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