JP4152060B2 - 水中油型乳化組成物及びこれを用いた可塑性乳化油脂組成物 - Google Patents

水中油型乳化組成物及びこれを用いた可塑性乳化油脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中油型乳化組成物及びこれを用いた可塑性乳化油脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
市場の本物志向の高まりにより、豊かな乳風味の食品が求められてきている。従来、こういった需要に対応し、マーガリン等の可塑性乳化油脂組成物に乳及び乳製品由来の風味を付与しようとする場合、マーガリン等の可塑性乳化油脂組成物に、乳やクリーム、バター、乳脂等を配合してきたが、乳やクリームを配合しても、十分な強さの乳風味が得られず、また、バターや乳脂を配合したものでは、乳脂肪風味を主体とした風味は強くなるが、乳風味があるとは言い難かった。また、フレーバーでの対応では、風味を強くすると自然な風味が損なわれる傾向があった。
【0003】
また、菓子やパン、その他の食品で乳風味を強調した食品を作りたい場合、マーガリン等の可塑性乳化油脂組成物の他に、乳やクリームを大量に配合し対応してきた。しかし、この方法では、手間やコストがかかるわりに、期待した程の豊かな乳風味は得られなかった。
【0004】
従って、本発明の目的は、乳脂肪の風味とは異なる豊かな乳風味を有する水中油型乳化組成物、並びに、食品の製造時に、乳やクリームを加えなくとも食品に豊かな乳風味を付与する可塑性乳化油脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究した結果、脱水工程及び冷凍変性工程を経た乳蛋白質を一定量含有する水中油型乳化組成物及びこれを用いた可塑性乳化油脂組成物が、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0006】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、脱水工程を経た乳蛋白質を含有する食品及び乳脂肪分を含有する水中油型乳化組成物を、該水中油型乳化組成物の凍結温度以下の温度で冷凍して冷凍変性させた水中油型乳化組成物であって、乳蛋白質を4〜50重量%及び乳脂肪分を20〜55.8重量%含有することを特徴とする水中油型乳化組成物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、上記水中油型乳化組成物を2〜80重量%含有することを特徴とする可塑性乳化油脂組成物を提供するものである。
【0008】
さらに、本発明は、加温した油脂に、上記水中油型乳化組成物を分散し、冷却、可塑化することを特徴とする可塑性乳化油脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の水中油型乳化組成物は、脱水工程及び冷凍変性工程を経た乳蛋白質を4〜50重量%含有する。
【0010】
上記水中油型乳化組成物は、上記のような乳蛋白質を4〜50重量%、好ましくは6〜15重量%、さらに好ましくは7〜10重量%含有する。乳蛋白質の含有量が4重量%未満では、乳脂肪球の保護効果が弱く、豊かな乳風味が得られない。また、乳蛋白質の含有量が50重量%を超えると、可塑性乳化油脂組成物に用いた場合、蛋白の硬い凝集物が発生し、可塑性乳化油脂組成物の製造が困難となる。
【0011】
上記乳蛋白質としては、例えばα−ラクトアルブミンやβ−ラクトグロブリン等のホエイタンパク質、カゼイン等が挙げられる。
【0013】
上記乳蛋白質を含有する食品としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、バター、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、ホエープロテインコンセートレート、トータルミルクプロテイン等が挙げられる。本発明では、上記の乳蛋白質を含有する食品の中から選ばれた1種又は2種以上を上記水中油型乳化組成物中に含有させることができる。
【0014】
上記水中油型乳化組成物は、必要により、油脂、水、乳化剤、増粘安定剤、糖類及び糖アルコール、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、卵及び各種卵加工品、穀類、豆類、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ナッツ類、果実、果汁、調味料等の呈味成分、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、着香料、保存料、日保ち向上剤、無機塩及び有機酸塩、pH調整剤、その他各種食品素材全般を配合してもよい。
【0015】
油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。上記油脂のうち、乳脂や植物油脂及び植物油脂を原料とした加工油脂を用いるのが好ましい。本発明においては、上記の油脂を単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0016】
乳化剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグルセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン類、サポニン類等が挙げられ、この中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができるし、必要が無ければ乳化剤を使用しなくても良い。
【0017】
増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、この中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができし、必要が無ければ増粘安定剤を使用しなくてもよい。
【0018】
次に、脱水工程及び冷凍変性工程を経た乳蛋白質を4〜50重量%含有する水中油型乳化組成物の脱水工程について説明する。上記脱水工程とは、例えば、遠心分離、チャーニングによるバターミルクの排出、乳酸菌発酵や加酸、加熱及び/又は酵素による凝乳後の乳清除去、限外濾過や逆浸透濾過等の濾過膜による脱水、減圧濃縮、乾燥が挙げられる。本発明では、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して行うことができる。
【0019】
脱水工程を行なう時期は、乳蛋白質を含有する水中油型乳化組成物を調製後、脱水工程を行なってもよい。又は、水中油型乳化組成物中に使用する乳蛋白質を含有する食品に対して脱水工程を行なってもよい。又は、脱水した乳蛋白質を含有する食品を水中油型乳化組成物に添加し、さらに脱水工程を行なってもよい。
【0020】
上記冷凍変性工程とは、脱水工程を経た乳蛋白質を4〜50重量%含有する水中油型乳化油脂組成物を、上記水中油型乳化油脂組成物の凍結温度以下の温度で冷凍変性させる工程をいい、例えば冷凍庫内で冷凍保管する等により冷凍変性工程を行なう。このときの温度は、好ましくは−10℃以下、さらに好ましくは−15℃以下である。
【0021】
冷凍変性の程度は、60℃程度の温水に冷凍した水中油型乳化油脂組成物中を一定時間、一定強度のプロペラ撹拌により溶解し、その後60メッシュ程度の篩で篩分けした時の篩上残存物の量を測定することで容易に判断できる。冷凍保管前後で、篩上残存物の量に変化が無ければ冷凍変性は進行しておらず、量が増えれば冷凍変性が進行していると判断できる。
【0022】
冷凍保管期間は、温度や水中油型乳化油脂組成物の組成により異なるが、概ね、7日間以上が好ましい。7日間より短いと、水中油型乳化油脂組成物の冷凍変性が不十分となりやすく、豊かな乳風味が得られにくくなる。
【0023】
本発明では水中油型乳化組成物を調製し、そして脱水工程を行なった後、冷凍変性工程を行なってもよい。又は、水中油型乳化組成物中に使用する乳蛋白質を含有する食品に対して脱水工程を行ない、これを用いて水中油型乳化組成物を調製し、そして冷凍変性工程を行なってよい。又は、脱水工程を行なった乳蛋白質を含有する食品を水中油型乳化組成物に添加し、さらに脱水工程を行ない、そして冷凍変性工程を行なってもよい。
【0024】
このようにして得られた脱水工程及び冷凍変性工程を経た乳蛋白質を4〜50重量%含有する水中油型乳化組成物の乳脂肪分は、20〜55.8重量%である。乳脂肪分が20重量%未満では、乳脂肪球間の凝集力が弱く、乳脂肪球表面蛋白質分子による乳脂肪球間結合も弱くなり、結果として豊かな乳風味が得られ難くなる。また、乳脂肪分が80重量%を越えると、水中油型の乳化を保ち難く、また乳脂肪分が蛋白質膜で覆われ難くなるため、豊かな乳風味が得られ難くなる。
【0025】
また、脱水工程及び冷凍変性工程を経た乳蛋白質を4〜50重量%含有する水中油型乳化組成物の水分は、好ましくは5〜75重量%、更に好ましくは15〜50重量%である。
【0026】
ここで、脱水工程及び冷凍変性工程を経た乳蛋白質を4〜50重量%含有する水中油型乳化組成物の具体的な製造例を以下に挙げる。
【0027】
まず、原料生乳をクラリファイヤーにて清浄化後、殺菌処理をする。殺菌条件は殺菌装置や温度によって異なるが、生乳に行う通常の殺菌条件を採用する。これを、50〜55℃に冷却後、続けて遠心分離機で乳脂肪分28〜32重量%のクリームと脱脂乳に分離する。
【0028】
クリームは、プレート殺菌機等により再度100±10℃で0.5〜5分間殺菌し、50〜60℃で真空脱気処理後、限外濾過濃縮装置を用いて乳脂肪分18〜70重量%となるまで脱水(濃縮)し、脱水されたクリームを得る。
【0029】
一方、脱脂乳は、限外濾過装置を用いて、蛋白質分6〜10重量%となるまで脱水(濃縮)し、脱脂濃縮乳とする。
【0030】
遠心分離と限外濾過により脱水された上記クリームと、上記脱脂濃縮乳を、重量比率でクリーム/脱脂濃縮乳=98/2〜70/30の比率で混合し、この混合物を掻き取り式熱交換機を用いて、115±2℃で0.5〜1分間殺菌し、25〜35℃まで冷却する。次に、必要によりチーズバット内で上記混合物に、各種乳酸連鎖菌や各種乳酸かん菌等の培養液からなる0.5〜2.0重量%のスターター、又は上記混合物100kgに対して0.5〜1.0gのレンネットを、各々単独で又は双方を組み合わせて接種し、均一に混合後、12〜16時間静置し、凝固させて凝固物とし、チーズバット内で撹拌して破砕してもよい。
【0031】
そして、限外濾過等にて乳清除去(脱水)し、必要によりクリーマー等で組織を均一なクリーム状とし、60〜100℃に加熱、圧力20〜200kg/cm2 で均質化し、熱い間に10kgの内装ポリ袋敷きの段ボール箱に充填包装し、−25℃の冷凍庫内で一晩保管冷却後、−10℃以下で冷凍保管する。得られた水中油型乳化油脂組成物は、乳脂肪分50.0〜65.0重量%、乳蛋白質4.0〜15.0重量%である。
【0032】
本発明の上記水中油型乳化組成物を可塑性乳化油脂組成物に使用する場合、可塑性乳化油脂組成物中の上記水中油型乳化組成物の含有量は、特に制限はないが、好ましく2〜80重量%、更に好ましくは5〜50重量%である。含有量が2重量%未満では、可塑性乳化油脂組成物の乳風味が不足し易く、また80重量%を超えると、可塑性乳化油脂組成物の製造時の配合槽等で、極端に粘度が上昇し、製造が困難となり易い。
【0033】
本発明の可塑性乳化油脂組成物で用いられる油脂としては特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0034】
可塑性乳化油脂組成物中の上記油脂の含有量は、特に制限はないが、好ましくは15〜85重量%、さらに好ましくは65〜80重量%である。
【0035】
次に、可塑性乳化油脂組成物に必要により含有させることができる成分について説明する。本発明の可塑性乳化油脂組成物には、乳化剤、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白卵及び各種卵加工品、水、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0036】
上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグルセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン類等が挙げられ、この中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、この中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0038】
本発明の可塑性乳化油脂組成物の乳化型は、0〜35℃の使用温度範囲で可塑性あれば、水中油型、油中水型、油中水中油型等どのような乳化形態であっても構わない。
【0039】
本発明の可塑性乳化油脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例として以下の方法が挙げられる。
【0040】
まず加温した油脂を含む油相に、脱水及び冷凍変性工程を経た乳蛋白質を4〜50重量%含有する水中油型乳化組成物を投入し、分散させる。これに、必要に応じ水相を混合し乳化する。乳化条件は、目的とする可塑性乳化油脂組成物の乳化型に応じ選択する。乳化後、必要により均質化処理を行う。こうして得られた乳化組成物は、次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法はタンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。次に、殺菌したもしくは殺菌しなかった乳化組成物を冷却可塑化する。冷却は徐冷却より急速冷却の方が滑らかな食感を得るために好ましい。急速冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造器やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイヤクーラーとコンプレクターの組み合わせが挙げられる。ここでの目的冷却温度は、油相含量、乳化型、配合油組成、冷却装置の種類等により変動するが、可塑性の乳化油脂組成物が得られるように設定する。
【0041】
また、本発明の可塑性乳化油脂組成物を製造する際の乳化槽から急冷可塑化するまでのいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、させなくても構わない。
【0042】
上記のようにして得られた、本発明の可塑性乳化油脂組成物は、スプレッド、調理、練り込み、折り込み等の用途に使用することができる。
【0043】
最後に、本発明の水中油型乳化組成物及びこれを用いた可塑性乳化油脂組成物の豊かな乳風味についてのメカニズムについて説明する。
【0044】
本発明の水中油型乳化組成物は、脱水工程を経て、高度に濃縮されているので、固形分の割合が高く、好ましくは24重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であるため、凍結時に冷凍変性が進行し易くなる。凍結により、水中油型乳化組成物中の蛋白質は、水和していた水の一部又は大部分を失い脱水されると考えられる。その結果、分子内架橋結合が切断されて高次構造が変化し、ポリペプチド鎖の疎水性官能基が分子表面に露出して遊離状態になるため、解凍後に蛋白質分子間架橋結合を生成し易い状態になると考えられる。また、脱水により凍結時の不凍結水中の塩類濃度が上昇し、塩析による蛋白質の構造変化をより促進しているとも考えられる。このため豊かな乳風味を有する水中油型乳化組成物となるのであると考えられる。
【0045】
また、本発明の水中油型乳化組成物は脱水工程を経ているので、乳脂肪含量が高くなる。そのため、乳脂肪球間の凝集力が強まり、乳脂肪球表面蛋白質分子による乳脂肪球間の蛋白質分子間結合も促進され、このため豊かな乳風味を有する水中油型乳化組成物となるのであるとも考えられる。
【0046】
本発明の水中油型乳化組成物を可塑性乳化油脂組成物に用いた場合には、以下のような現象が起きていると思われる。
【0047】
本発明の水中油型乳化組成物は、上記のような同一乳脂肪球表面の蛋白質分子間架橋結合を生成し易い状態となっているので、乳脂肪球の保護効果が高まっていると考えられる。このため水中油型乳化組成物を用いた可塑性乳化油脂組成物中において、乳脂肪球から乳脂肪が溶出せずに分散することとなると考えられる。これは、乳脂肪がカプセル化されたまま可塑性乳化油脂組成物に分散しているのと同様の状態と考えられ、局在した高濃度の乳脂肪とこれを覆う水溶性乳成分により、直接食べた時や、食品の加工に使用した時に豊かな乳風味をもたらすものと考えられる。また、水中油型乳化組成物を脱水することにより、乳脂肪含量が高くなるため、乳脂肪球間の凝集力が強まり、乳脂肪球表面蛋白質分子による乳脂肪球間の蛋白質分子間結合も促進され、この状態を残存したまま、可塑性乳化油脂組成物中に分散することとなると考えられる。このため豊かな乳風味をもたらされるものとも考えられる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。なお、表1〜3の「%」は、重量基準である。
【0049】
〔水中油型乳化組成物A、Bの製造例〕
原料生乳をクラリファイヤーにて清浄化後、HTST熱交換殺菌機にて、75℃の温度で15秒間殺菌し、55℃に冷却後、続けて遠心分離機で乳脂肪分30重量%のクリームと脱脂乳に分離した。
【0050】
クリームは、プレート殺菌機にて再度105℃で40秒間殺菌し、55℃で真空脱気処理後、限外濾過濃縮装置を用いて乳脂肪分65重量%となるまで脱水(濃縮)し、クリームを得た。
【0051】
一方、脱脂乳は、限外濾過装置を用いて、蛋白質分8重量%となるまで脱水(濃縮)し、脱脂濃縮乳とした。
【0052】
遠心分離と限外濾過により脱水された上記クリームと、限外濾過により脱水された上記脱脂濃縮乳を、重量比率でクリーム/脱脂濃縮乳=90/5の比率で混合し、この混合物を掻き取り式熱交換機を用いて、115℃で50秒間殺菌し、30℃まで冷却した。これを更に限外濾過に供し、75℃に加熱、圧力150kg/cm2 で均質化し、20〜25℃に冷却後10kgの内装ポリ袋敷きの段ボール箱に充填包装し、−25℃、24時間の急速冷凍を行い、さらに−18℃にて60日間冷凍保存して冷凍変性させたものを水中油型乳化組成物Aとした。また、均質化後5℃に5日間冷蔵保管したものを水中油型乳化組成物Bとした。
【0053】
得られた水中油型乳化組成物AとBの組成は、乳脂肪分55.8重量%、水分33.3重量%、乳蛋白質8.0重量%、固形分66.7重量%であった。
【0054】
〔水中油型乳化組成物C〜Hの製造例〕
表1に示した配合にて水中油型乳化組成物C〜Hを製造した。
まず、60℃に調温した水にMPC−80[DMV JAPAN製(脱脂乳より限外濾過で脱水し調製したトータルミルクプロテイン)水分5.0重量%、油分1.5重量%、乳蛋白質分80.5重量%、他13.0重量%]を加え、プロペラ撹拌にて溶解した。これに、プロペラ撹拌を続けたまま、60℃に調温、溶解した乳脂を除々に加え、水中油型に乳化した。得られた予備乳化組成物は、75℃に加熱し、15分間の保持後、圧力175kg/cm2 で均質化し、熱いうちに10kgの内装ポリ袋敷きの段ボール箱に充填包装し、0〜5℃の冷蔵保管庫で一晩保管した。
【0055】
得られたものを表1の冷凍条件にて冷凍したものを、水中油型乳化組成物C〜Hとした。また、得られた水中油型乳化組成物C〜Hの組成を表1に示した。
【0056】
(冷凍変性の有無)
冷凍変性の有無は、冷凍処理前後の水中油型乳化組成物10gを60℃に調温した温水100gに入れ、20分間、スリーワンモーターで一定強度のプロペラ撹拌を行い、その後60メッシュの篩にかけ、判断した。篩上残存物の量が増えているものを冷凍変性が有りとした。
【0057】
上記方法で水中油型乳化組成物A〜Hについて判断したところ、水中油型乳化組成物B以外はすべて冷凍変性が有りであった。
【0058】
【表1】
Figure 0004152060
【0059】
〔実施例1〜6及び比較例1〜3〕
表2と表3に示した水中油型乳化組成物と配合で、可塑性乳化油脂組成物を製造した。尚、実施例6は参考例である。
【0060】
可塑性乳化油脂組成物に使用する水中油型乳化組成物は、冷凍されたまま、段ボール箱及び内装ポリ袋から取り出し、予め、湘南機械製フローズンカッターで粉砕しておいた。
【0061】
マーガリン製造ラインの配合槽に大豆硬化油(融点37℃)、大豆油を入れ、70℃に加温した。これにレシチン、バターフレーバー、トコフェロールを溶解し、直ちに上記粉砕水中油型乳化組成物を投入、分散させた。これに水道水を加え、予備乳化組成物を得た。この予備乳化組成物は60℃に調温した。こうして得られた予備乳化組成物は40メッシュストレーナーを通し、掻き取り型熱交換機で、90℃に5分間保持殺菌した後、コンビネーターを通して急冷可塑化し、可塑性乳化油脂組成物を得た。但し、比較例3は凝集物が製造ラインのストレーナーに詰まり、可塑性乳化油脂組成物を製造できなかった。
【0062】
また得られた実施例1〜6及び比較例1〜2の可塑性乳化油脂組成物についての風味を10名のパネラーにて評価し、その結果を表2及び表3に示した。表2及び表3において、例えば(9/10)は、パネラー10人中9人が良好と回答したことを示す。
【0063】
〔比較例4及び5〕
表3に示した配合で、可塑性乳化油脂組成物を製造した。
まず、マーガリン製造ラインの配合槽に大豆硬化油(融点37℃)、大豆油、乳脂を入れ、70℃に加温した。これにレシチン、バターフレーバー、トコフェロールを加え、溶解した。これにMPC80を溶解した水道水(比較例4)又は牛乳(比較例5)を加え、予備乳化組成物を得た。この予備乳化組成物は60℃に調温した。こうして得られた予備乳化組成物は40メッシュストレーナーを通し、掻き取り型熱交換機で、90℃に5分間保持殺菌した後、コンビネーターを通して急冷可塑化し、可塑性乳化油脂組成物を得た。
【0064】
また、得られた比較例4と5の可塑性乳化油脂組成物についての風味を10名のパネラーにて評価し、その結果を表3に示した。表3において、例えば(9/10)は、パネラー10人中9人が良好と回答したことを示す。
【0065】
(評価)
実施例1〜6と比較例1〜2、4〜5を用いて、下記原料配合、製パン工程により食パンを製造した。
【0066】
<原料配合>
・中種
強力粉 70重量部
イースト 2重量部
イーストフード 0.1重量部
水 40重量部
・本捏
強力粉 30重量部
上白糖 5重量部
食塩 2重量部
粉乳 2重量部
水 20重量部
可塑性乳化油脂組成物 10重量部
【0067】
<製パン工程>
ミキシング(中種) L2M2
捏上温度(中種) 24℃
ホイロ(中種) 28℃、4時間
ミキシング(本捏) L3M2↓油脂添加L2M2H2
捏上温度(本捏) 28℃
フロアタイム 20分
分割重量 370G
ベンチタイム 20分
成形 モルダー、ワンローフ型
ホイロ条件 38℃、60分
焼成条件 200℃、30分
【0068】
上記の方法にて得られたパンの風味について10名のパネラーにて評価し、その結果を表2及び表3に示した。表2及び表3において、例えば(9/10)は、パネラー10人中9人が良好と回答したことを示す。
【0069】
【表2】
Figure 0004152060
【0070】
【表3】
Figure 0004152060
【0071】
【発明の効果】
本発明の水中油型乳化組成物は、豊かな乳風味を有し、可塑性乳化油脂組成物に使用した場合、乳脂肪の風味とは異なる、豊かな乳風味を付与することができる。また本発明の水中油型乳化組成物を用いた可塑性乳化油脂組成物を使用した食品は、乳やクリームを加えなくとも、それだけで食品に豊かな乳風味を有するものとすることができる。

Claims (4)

  1. 脱水工程を経た乳蛋白質を含有する食品及び乳脂肪分を含有する水中油型乳化組成物を、該水中油型乳化組成物の凍結温度以下の温度で冷凍して冷凍変性させた水中油型乳化組成物であって、乳蛋白質を4〜50重量%及び乳脂肪分を20〜55.8重量%含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
  2. 請求項1記載の水中油型乳化組成物を2〜80重量%含有することを特徴とする可塑性乳化油脂組成物。
  3. 加温した油脂に、請求項1記載の水中油型乳化組成物を分散し、冷却、可塑化することを特徴とする可塑性乳化油脂組成物の製造方法。
  4. 請求項2記載の可塑性乳化油脂組成物を用いた食品。
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