JP4151141B2 - ガラスペーストおよびそれを用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶ディスプレイなどのディスプレイの製造方法およびそれに用いるガラスペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、また大型化が容易であることからOA機器および広報表示装置などの分野に浸透している。さらに、高品位テレビジョンの分野などでの進展が非常に期待されている。
【0003】
このような用途拡大に伴って、微細で多数の表示セルを有するカラーPDPが注目されている。PDPは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に備えられた放電空間内で電極間にプラズマ放電を生じさせ、上記放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線を放電空間内の蛍光体に当てることにより表示を行うものである。この場合、放電の広がりを一定領域に抑え、表示を規定のセル内で行わせると同時に、均一な放電空間を確保するために隔壁(障壁またはリブともいう)が設けられている
従来、隔壁の形成方法としては、ガラスペーストをスクリーン印刷で印刷・乾燥し、この工程を多数回繰り返し、所定の高さにした後、焼成する方法、感光性ガラスペーストを用いてフォトリソグラフィ技術により形成する方法(例えば、特開平1−296534号公報、特開平2−165538号公報、特開平5−342992号公報、特開平6−295676号公報、特開平8−50811号公報)、感光性ペーストを転写紙上にコーティングした後、転写フィルムをガラス基板上に転写して形成する方法(例えば、特開平2−165538号公報)、フォトレジストの溝にガラスペーストを充填して形成する方法(例えば、特開平3−57138号公報、特開平6−295675号公報)や感光性有機フィルムを用いる方法(例えば、特開平4−109536号公報)、フォトリソ法で形成したサブトラクティブマスク層を介してサンドブラストや液体ホーニングにより隔壁を形成する方法(例えば、特開平6−314543号公報、特開平7−282730号公報、特開平7−85792号公報)などがある。
【0004】
しかしながら、いずれの方法でも基板サイズが大型化し、生産枚数が増えると、隔壁に欠陥が発生し、高品質なプラズマディスプレイパネルが製造できないという問題を生じている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、大面積かつ高品質なプラズマディスプレイパネルを安定して製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、ガラス粉末を含む無機粉末と有機成分からなからなり、界面活性剤を含むプラズマディスプレイパネルの隔壁形成用ガラスペーストであって、該プラズマディスプレイパネルの隔壁形成用ガラスペーストとガラス基板の接触角が45°以下であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの隔壁形成用ガラスペーストによって達成される。
【0007】
また、本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、上記ガラスペーストを基板上に塗布した後、隔壁を形成する工程を含むプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、ガラス粉末を含む無機粉末と有機成分からなるガラスペーストを基板上に塗布してガラスペースト被膜を形成する工程、該ガラスペースト被膜を加工して隔壁用パターンを形成する工程を含む。通常の場合は、さらに少なくとも焼成工程を含む。また、各工程中に、乾燥等の目的で、50〜300℃に加熱する工程を導入しても良い。
【0009】
ガラスペーストは、無機粉末および有機成分を必須とするが、さらにそれらに加えることのできる成分を含めて以下に説明する。
【0010】
本発明における無機粉末としては、ガラスやセラミックスを用いるものが好ましく、特に有用となるのは、無機粉末として、ガラス粉末を用いた場合である。本発明におけるガラス粉末としては、主として低融点ガラス粉末からなることが好ましい。
【0011】
ガラス粉末は、50〜400℃の熱膨張係数が50〜90×10-7であることが好ましい。また、ガラス中に酸化珪素が3〜60重量%、酸化ホウ素が5〜50重量%の範囲で配合することによって、電気絶縁性、強度、熱膨張係数、絶縁層の緻密性などの電気、機械および熱的特性を向上することができる。低融点ガラス粉末のガラス転移温度は、430〜500℃、ガラス軟化点は、470〜580℃であることが好ましい。ガラス転移温度が500℃、ガラス軟化点が580℃より高いと高温で焼成しなければならず、焼成の際に基板に歪みが生じることがあるからである。また、ガラス転移温度が430℃、ガラス軟化点が470℃より低いガラスの場合、緻密な隔壁層が得られず、隔壁の剥がれ、断線、蛇行の原因となる。ガラス粉末の粒子径は、作製しようとする隔壁の線幅や高さを考慮して選ばれるが、50体積%粒子径(平均粒子径D50)が1〜6μm、最大粒子サイズが30μm以下、比表面積1.5〜4cm2/gであることが好ましい。
【0012】
また、焼成時の形状を安定させるために耐火物フィラーを添加してもよい。耐火物フィラーとしては、500〜650℃程度の焼成温度で軟化しないものが広く使用でき、高融点ガラスや、アルミナ、マグネシア、カルシア、コージュライト、シリカ、ムライト、ジルコン、ジルコニア等のセラミック粉末が例示できる。感光性ガラスペーストの場合には、耐火物フィラーとして高融点ガラスが好適に用いられる。PDPの外光反射を低減し、実用上のコントラストを上げるために隔壁を暗色にする場合には、耐火性の黒色顔料として、Co−Cr−Fe、Co−Mn−Fe、Co−Fe−Mn−Al、Co−Ni−Cr−Fe、Co−Ni−Mn−Cr−Fe、Co−Ni−Al−Cr−Fe、Co−Mn−Al−Cr−Fe−Si等の顔料を用いてもよい。一方、蛍光体の発光を有効にパネル前面に導く目的で隔壁を白くする場合には、耐火性の白色顔料としてチタニアなどを用いてもよい。
【0013】
本発明のペーストに使用される有機成分とは、ペーストから無機粉末を除いた部分のことであり、ペースト中の0.5〜50重量部を占める。有機成分は、バインダー樹脂、有機溶剤、界面活性剤などからなり、必要に応じて、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、消泡剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤などの添加剤成分を加えることで構成されている。
【0014】
また、感光性ガラスペースト法で隔壁を形成する場合の有機成分は、感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーのうち少なくとも1種類から選ばれた感光性成分およびバインダー樹脂、光重合開始剤、有機溶剤、界面活性剤から主としてなり、これに必要に応じて増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、消泡剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤などの添加剤成分を加えることで構成される。
【0015】
バインダー樹脂は、焼成時に酸化、分解または気化し、炭化物が隔壁中に残存しないことが必要であり、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等のセルロース系樹脂、または、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の重合体もしくは共重合体からなるアクリル樹脂、ポリ−α−メチルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリブテン等が好ましく用いられる。
【0016】
有機溶剤は、用いるバインダー樹脂に対して良溶媒であることが好ましく、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート等が例示できる。溶剤の選定は、溶剤の揮発性と使用するバインダー樹脂の溶解性を主に考慮して選定して選定される。バインダー樹脂に対する溶剤の溶解性が低いと固形分比が同一でも塗工液の粘度が高くなってしまい、塗布特性が悪化するという問題が生じる。溶剤の含有率は、少なすぎると隔壁形成材料の粘度が高くなりすぎ隔壁形成材料内の気泡を抜くことが困難となり、レベリング不良により塗布面の平滑性が不良となる。反対に多すぎる場合には、分散粒子の沈降が速くなり、隔壁形成材料の組成を安定化することが困難となったり、乾燥に多大なエネルギーと時間を要する等の問題を生じ、好ましくなく、好適には25〜50重量%である。
【0017】
本発明においては、隔壁の欠陥の原因が、ガラスペーストの塗布特性が適正な範囲にないことにより、ガラスペースト被膜にヘコミ(Cratering)やハジキ(Cissing)などが発生することに由来することを見いだした。
【0018】
本発明のガラスペーストは、ガラス基板との接触角が45°以下であることが重要となる。45°を越えると基板に塗布したガラスペースト被膜にヘコミ(Cratering)やハジキ(Cissing)などが発生する。接触角の下限は、塗膜の端部のタレ(Runs)防止の点から20°以上が好ましい。
【0019】
接触角は、静止ガラスペーストの自由表面が基板に接する場所でガラスペースト面と基板とのなす角(ガラスペーストの内部にある角をとる)をいう。接触角は、一般の接触角計を用いて測定できる(例えば、協和界面科学社製CA−D型)が、測定条件で接触角の値が変化するので注意を要する。ここでは、測定するガラスペーストの液滴の大きさを1.5mmφ、ガラスペーストの粘度を15,000cps/25℃、測定温度を25℃、ガラスペーストを測定基板に滴下してから測定するまでの時間を1分、とした値である。また、測定基板には、ソーダガラスを用いた場合である。
【0020】
基板とガラスペーストの接触角を調整するためには、ガラスペースト中に界面活性剤を添加することが好ましい。接触角を45°以下とするためには、式(1)に示す比界面張力が0.5以下のものが好適に使用できる。
【0021】
比界面張力=(活性剤水溶液−鉱油の界面張力)/(水−鉱油の界面張力)(1)
ここで、鉱油は、ケロシンを用い、25℃で測定した値とする。
【0022】
界面活性剤は、無機粉末、バインダー、有機溶剤の組み合わせによっては分散し難いものが多く、注意が必要である。特に、使用する有機溶剤に溶ける界面活性剤の中から選定するのが好ましい。
【0023】
好ましくは、ノニオン活性剤、ポリマー系活性剤である。具体的には、ノニルフェニルエーテル系、オクチルフェニルエーテル系、アルキルアリルエーテル系、高分子エーテル系、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリアクリル酸塩、ビニル−マレイン酸共重合物の塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物の塩、分岐カルボン酸部分エステル系などが挙げられるがこれらに限定されない。本発明のガラスペーストでは、これらを1種または2種以上使用するのが好ましい。界面活性剤は、ガラスペーストに対し、0.01〜10重量%の範囲で添加するとよい。より好ましくは、0.02〜5重量%の範囲である。添加量が0.01重量%より少ない場合、塗れ性を向上させる効果がなく、10重量%より多い場合、有機溶剤に溶解しきれず、分散不良となることがある。
【0024】
添加剤としては、可塑剤、増粘剤、有機溶媒、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤等が必要に応じて用いられる。このうち可塑剤としては、フタル酸エステル類、セバチン酸エステル類、リン酸エステル類、アジピン酸エステル類、グリコール酸エステル類、クエン酸エステル類等が一般に用いられる。可塑剤の添加率が高すぎると樹脂の柔軟性が増し、例えばサンドブラスト法で隔壁で隔壁を形成する場合、サンドブラストによる研削速度が遅くなるので、可塑剤の添加量は、樹脂量に対して重量比で1/5以下が好ましい。
【0025】
次に感光性ガラスペースト法で隔壁を形成する場合の有機成分について説明する。
【0026】
感光性モノマーとしては、活性な炭素−炭素2重結合を有する化合物が多く用いられている。官能基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物が応用できる。アクリレートまたはメタクリレート官能基を有する多官能化合物には多様な種類の化合物が開発されているので、それらから反応性、屈折率などを考慮して選択することが可能である。
【0027】
感光性ガラスペーストを構成する有機成分として、光反応で形成される硬化物の物性の向上やペーストの粘度の調整などの役割を果たす成分としてオリゴマーまたはポリマーが用いられる。そのオリゴマーまたはポリマーは、炭素−炭素2重結合を有する化合物から選ばれた成分の重合または共重合により得られる。
【0028】
共重合するモノマーとしては、不飽和カルボン酸などの不飽和酸を共重合することによって、感光後にアルカリ水溶液での現像性を向上することができる。不飽和カルボン酸の具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物などが挙げられる。
【0029】
こうして得られた側鎖にカルボキシル基などの酸性基を有するポリマーもしくはオリゴマーの酸価(AV)は50〜180、さらには70〜140の範囲が好ましい。酸価が180を越えると、現像許容幅が狭くなる。また、酸価が50以下になると未露光部の現像液に対する溶解性が低下するようになるため現像液濃度を濃くすることになり露光部まで剥がれが発生し、高精細なパターンが得られにくくなる。
【0030】
以上に示したポリマーもしくはオリゴマーに対して、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、感光性をもつ感光性ポリマーや感光性オリゴマーとして用いられる。
【0031】
好ましい光反応性基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。
【0032】
このような側鎖をオリゴマーやポリマーに付加させる方法は、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させて作る方法がある。
【0033】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0034】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネートなどがある。
【0035】
また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜1モル等量付加させることが好ましい。
【0036】
感光性ガラスペーストでは、分子内にカルボキシル基と不飽和2重結合を含有する重量平均分子量500〜10万のオリゴマーもしくはポリマーを10〜90重量%を有機成分中に含有させてあるものが好ましい。
【0037】
バインダー成分が必要な場合にはポリマーとして、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ブチルメタクリレート樹脂などを用いることができる。
【0038】
感光性ガラスペーストの有機成分は、感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーあるいはバインダーを含有するが、これらの成分はいずれも活性光線のエネルギー吸収能力はないので、光反応を開始するためには光重合開始剤や増感剤を加え。
【0039】
感光性ガラスペーストによるパターン形成は、露光された部分の感光性成分(モノマー、オリゴマー、ポリマー)を重合および架橋させて溶剤不溶性にすることであり、上記のように感光性を示す官能基はラジカル重合性であるため、その光重合開始剤はラジカル種を発生するものから選んで用いられる。
【0040】
光重合開始剤の具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニルプロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組み合わせなどが挙げられる。
【0041】
感光性ガラスペーストでは、これらを1種または2種以上使用するのが好ましい。光重合開始剤は、感光性成分に対し、0.05〜10重量%の範囲で添加されているとよい。重合開始剤の量が少なすぎると、光感度が不良となり、光重合開始剤の量が多すぎる場合には、露光部の残存率が小さくなるおそれがある。
【0042】
光重合開始剤と共に増感剤を使用し、感度を向上させたり、反応に有効な波長範囲を拡大することができる。
【0043】
増感剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールなどが挙げられる。
【0044】
なお、増感剤の中には光重合開始剤としても使用できるものがある。増感剤を感光性ガラスペーストに添加する場合、その添加量は感光性成分に対して通常0.05〜10重量%である。増感剤の量が少なすぎれば光感度を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多すぎれば露光部の残存率が小さくなる恐れがある。
【0045】
感光性ガラスペーストをガラス基板に塗布する時の粘度を塗布方法に応じて調整するために有機溶媒が使用される。このとき使用される有機溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチルラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0046】
感光性ガラスペーストについても前述の界面活性剤の添加が重要になる。
さらに、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、消泡剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤などが必要に応じて添加される。
【0047】
このようなガラスペーストあるいは感光性ガラスペーストは、各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラや混練機で均質に混合分散し作製する。
【0048】
ガラスペーストの粘度は無機微粒子、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤など添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は2000〜20万cps(センチ・ポイズ)である。例えば、ガラス基板への塗布をスピンコート法で行う場合は、2000〜5000cpsが好ましい。スクリーン印刷法で1回塗布して膜厚10〜20μmを得るには、5万〜20万cpsが好ましい。ブレードコーター法やダイコーター法などを用いる場合は、1万〜5万cpsが好ましい。このようなガラスペーストを基板上に全面塗布、もしくは部分的に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーターなどの方法を用いることができる。
【0049】
塗布した後、通風オーブン、ホットプレート、IR乾燥炉など任意のものを用いて乾燥し、ガラスペーストの被膜を形成する。
【0050】
隔壁の形成は、任意の方法を用いて行うことができる。例えば、フォトリソ法で形成したサブトラクティブマスク層を介してサンドブラストや液体ホーニングにより隔壁を形成する方法では、該ガラスペーストの被膜上にサンドブラスト耐性を有する感光性薄膜を形成した後、形成したい隔壁に応じた所定の遮光部を有する露光マスクを置き、該感光性薄膜を露光マスクを介し、選択的に露光する。次に、この露光済みの感光性薄膜を現像液により現像し、サンドブラスト処理時のマスクパターンを得る。次に、マスクパターン形成済みの試料に対しその上方から適切な粒度の研磨剤を吹き付ける(サンドブラスト処理を行う)。これにより、ガラスペースト皮膜のマスクパターンで覆われていない部分は、上記サンドブラスト処理によって除去される。次に、マスクパターンを好適な方法により除去し、ガラスペースト皮膜の残存部分の焼成を行い隔壁を形成する。
【0051】
また、感光性ガラスペースト法、すなわち感光性ガラスペーストを用いてフォトリソグラフィ技術により形成する方法では、感光性ガラスペースト被膜を上記のように塗布、乾燥した後、露光装置を用いて露光を行う。露光は通常のフォトリソグラフィで行われるように、フォトマスクを介して露光する方法が一般的である。また、フォトマスクを用いずに、レーザ光などで直接描画する方法を用いても良い。感光性ガラスペースト法は、高精細かつ大面積のパターンを短い工程で簡便に形成できるため好ましい。
【0052】
露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機などを用いることができる。また、大面積の露光を行う場合は、ガラス基板などの基板上に感光性ペーストを塗布した後に、搬送しながら露光を行うことによって、小さな露光面積の露光機で、大きな面積を露光することができる。
【0053】
この際使用される活性光源は、例えば、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザ光などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みによって異なるが、1〜100mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて0.01〜30分間露光を行う。
【0054】
露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行うが、この場合、浸漬法やスプレー法、ブラシ法で行う。現像液には、感光性ペースト中の有機成分が溶解可能である有機溶媒を用いる。また、該有機溶媒にその溶解力が失われない範囲で水を添加してもよい。感光性ペースト中にカルボキシル基などの酸性基をもつ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム水溶液などが使用できる。
【0055】
次に焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素などの雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やローラー式の連続型焼成炉を用いることができる。
【0056】
焼成温度は400〜1000℃で行う。ガラス基板上にパターン加工する場合は、520〜610℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行う。
【0057】
以上のようにして得られた隔壁上に蛍光体層を形成して背面用とし、前背面のガラス基板と合わせて封着し、ヘリウム、ネオン、キセノン等の希ガスを封入することによって、PDPのパネル部分を製造できる。さらに、駆動用のドライバーICを実装することによって、PDPを製造することができる。
【0058】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中の濃度(%)は重量%である。
【0059】
本発明の実施例および比較例に使用した材料を以下に示す。
【0060】
実施例1
まず、溶媒(1)250g中にアルキルアリルエーテル系の界面活性剤”ノイゲン”EA141(第一工業製薬社、比界面張力0.084)1gを添加し、攪拌した後、ガラス粉末800g、ポリマー(1)200g、可塑剤50gを混合して、3本ローラーで混合・分散して、粘度10000cpsのガラスペーストを得た。得られたガラスペーストと基板の接触角を測定したところ、41°であった。
【0061】
次に、基板上にドクターブレードを用いて塗布した後、クリーンオーブンで80℃、120分間乾燥させた。乾燥後のガラスペースト被膜の膜厚は160μmであった。
【0062】
乾燥後のガラスペースト被膜の表面を観察したところ、ヘコミやハジキのないものであった。さらに、10枚の基板を用いて塗布、乾燥を繰り返したが、ヘコミやハジキなどは観察されなかった。
【0063】
次に、340×260×2.8mmサイズのガラス基板(PD−200;旭硝子(株)製)を使用してAC(交流)型プラズマディスプレイパネルの背面板を形成した。
【0064】
基板上に、書き込み電極として、感光性銀ペーストを用いてフォトリソグラフィー法により、ピッチ140μm、線幅60μm、焼成後厚み4μmのストライプ状電極を形成した。この基板に誘電体ペーストをスクリーン印刷法により塗布した後、550℃で焼成して、厚み10μmの誘電体層を形成した。
【0065】
さらに、誘電体層上に上記のガラスペーストを用いて、フォトリソ法で形成したサブトラクティブマスク層を介してサンドブラスト法により、パターン形成後、570℃で15分間焼成し、ピッチ140μm、線幅20μm、高さ100μmのストライプ状の隔壁パターンを形成した。形成した隔壁パターンを観察したところ、欠損は観察されなかった。
【0066】
このようにして形成された隔壁に、赤、青、緑に発光する蛍光体ペーストをスクリーン印刷法を用いて塗布、その後焼成(500℃、30分)して隔壁の側面および底部に蛍光体層を形成した。
【0067】
次に、前面板を以下の工程によって作製した。まず、背面板と同じガラス基板上に、ITOをスパッタ法で形成後、レジスト塗布し、露光・現像処理、エッチング処理によって厚み0.1μm、線幅200μmの透明電極を形成した。また、黒色銀粉末からなる感光性銀ペーストを用いてフォトリソグラフィー法により、焼成後厚み10μmのバス電極を形成した。電極はピッチ140μm、線幅60μmのものを作製した。
【0068】
さらに、電極形成した前面板上に透明誘電体ペーストを20μm塗布し、430℃で20分間保持して焼き付けた。次に形成した透明電極、黒色電極、誘電体層を一様に被覆するように電子ビーム蒸着機を用いて、厚みは0.5μmのMgO膜を形成して前面板を完成させた。
【0069】
得られた前面ガラス基板を、前記の背面ガラス基板と貼り合わせ封着した後、放電用ガスを封入し、駆動回路を接合してプラズマディスプレイを作製した。このパネルに電圧を印加して表示を行った。隔壁の欠点に由来するクロストークなどの表示欠陥はなく良好な表示状態を示した。
【0070】
実施例2
まず、溶媒(2)7.5g、ポリマー(2)37.5g、モノマー15g、光重合開始剤4g、酸化防止剤0.02g、有機染料0.01gおよびアルキルアリルエーテル系の界面活性剤”ノイゲン”EA141(第一工業製薬社、比界面張力0.084)0.1gの各成分を50℃に加熱しながら溶解し、冷却後、ガラス粉末70gを加え、3本ローラーで混合・分散して、粘度12000cpsの感光性ガラスペーストを得た。得られた感光性ガラスペーストと基板の接触角を測定したところ、39°であった。
【0071】
次に、基板上にドクターブレードを用いて塗布した後、クリーンオーブンで80℃、120分間乾燥させた。乾燥後のガラスペースト被膜の膜厚は170μmであった。
【0072】
乾燥後のガラスペースト被膜の表面を観察したところ、ヘコミやハジキのないものであった。さらに、10枚の基板を用いて塗布、乾燥を繰り返したが、ヘコミやハジキなどは観察されなかった。
【0073】
次に、プラズマディスプレイパネルを隔壁をフォトリソグラフィー法で作製した以外は、実施例1と同様にして作製した。このパネルに電圧を印加して表示を行ったところ、隔壁の欠点に由来するクロストークなどの表示欠陥はなく良好な表示状態を示した。
【0074】
実施例3
界面活性剤に高分子エーテル系”エパン”U−103(第一工業製薬社、比界面張力0.006)を用いる他は実施例1と同様にしてガラスペーストを作製した。得られたガラスペーストと基板の接触角を測定したところ、38°であった。
【0075】
次に、基板上にドクターブレードを用いて塗布した後、クリーンオーブンで80℃、120分間乾燥させた。乾燥後のガラスペースト被膜の膜厚は160μmであった。
【0076】
乾燥後のガラスペースト被膜の表面を観察したところ、ヘコミやハジキのないものであった。さらに、10枚の基板を用いて塗布、乾燥を繰り返したが、ヘコミやハジキなどは観察されなかった。
【0077】
次に、プラズマディスプレイパネルを実施例1と同様にして作製した。このパネルに電圧を印加して表示を行ったところ、隔壁の欠点に由来するクロストークなどの表示欠陥はなく良好な表示状態を示した。
【0078】
実施例4
界面活性剤に分岐カルボン酸部分エステル”ブンサン”G−200(共栄社科学社、比界面張力0.012)を用いる他は実施例2と同様にして感光性ガラスペーストを作製した。
【0079】
得られたガラスペーストと基板の接触角を測定したところ、38°であった。
【0080】
次に、基板上にドクターブレードを用いて塗布した後、クリーンオーブンで80℃、120分間乾燥させた。乾燥後のガラスペースト被膜の膜厚は170μmであった。
【0081】
乾燥後のガラスペースト被膜の表面を観察したところ、ヘコミやハジキのないものであった。さらに、10枚の基板を用いて塗布、乾燥を繰り返したが、ヘコミやハジキなどは観察されなかった。
【0082】
次に、プラズマディスプレイパネルを隔壁をフォトリソグラフィー法で作製した以外は、実施例1と同様にして作製した。このパネルに電圧を印加して表示を行ったところ、隔壁の欠点に由来するクロストークなどの表示欠陥はなく良好な表示状態を示した。
【0083】
比較例1
界面活性剤を用いない他は実施例1と同様にしてガラスペーストを作製した。得られたガラスペーストと基板の接触角を測定したところ、51°であった。
【0084】
次に、基板上にドクターブレードを用いて塗布した後、クリーンオーブンで80℃、120分間乾燥させた。乾燥後のガラスペースト被膜の膜厚は160μmであった。
【0085】
乾燥後のガラスペースト被膜の表面を目視で観察したところ、ヘコミやハジキが多数見られた。さらに、10枚の基板を用いて塗布、乾燥を繰り返したところ、10枚すべてにヘコミやハジキが観察された。
【0086】
次に、プラズマディスプレイパネルを隔壁を実施例1と同様にして作製した。このパネルに電圧を印加して表示を行ったところ、隔壁の欠点に由来するクロストークなどの表示欠陥が、50カ所以上見られた。
【0087】
比較例2
界面活性剤に”ノイゲン”EA50(第一工業製薬社、比界面張力0.570)を用いる他は実施例1と同様にしてガラスペーストを作製した。得られたガラスペーストと基板の接触角を測定したところ、48°であった。
【0088】
次に、基板上にドクターブレードを用いて塗布した後、クリーンオーブンで80℃、120分間乾燥させた。乾燥後のガラスペースト被膜の膜厚は160μmであった。
【0089】
乾燥後のガラスペースト被膜の表面を目視で観察したところ、ヘコミやハジキが数カ所見られた。
【0090】
次に、プラズマディスプレイパネルを隔壁を実施例1と同様にして作製した。このパネルに電圧を印加して表示を行ったところ、隔壁の欠点に由来するクロストークなどの表示欠陥が、25カ所に見られた。
【0091】
【発明の効果】
ガラス基板との接触角が45°以下となるガラスペーストを用いることにより、ヘコミやハジキ等のないガラスペースト被膜を得ることができ、欠陥のない大面積かつ高品質のプラズマディスプレイパネルを安定して提供できる。
Claims (4)
- ガラス粉末を含む無機粉末と有機成分からなり、界面活性剤を含むプラズマディスプレイパネルの隔壁形成用ガラスペーストであって、該プラズマディスプレイパネルの隔壁形成用ガラスペーストとガラス基板の接触角が45°以下であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの隔壁形成用ガラスペースト。
- 該プラズマディスプレイパネルの隔壁形成用ガラスペーストとガラス基板の接触角が20°以上45°以下であることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイパネルの隔壁形成用ガラスペースト。
- 前記有機成分が感光性成分を含むことを特徴とする請求項1または2記載のプラズマディスプレイパネルの隔壁形成用ガラスペースト。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネルの隔壁形成用ガラスペーストを基板上に塗布してガラスペースト被膜を形成する工程、該ガラスペースト被膜を加工して隔壁用パターンを形成する工程を含むことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
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