JP4148758B2 - 難燃性有機樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は芳香族環含有有機樹脂と分岐状オルガノポリシロキサンとジオルガノポリシロキサンとからなる難燃性有機樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂に代表される芳香族環含有有機樹脂は、機械的強度、電気的特性等に優れているので、OA機器、電気・電子機器、自動車、建築・土木等の分野で使用されている。従来、かかる芳香族環含有有機樹脂を難燃化する方法としては、これらの有機樹脂に、塩素原子や臭素原子を含有する化合物を混和する方法が採用されてきた。ところが、この種の化合物を配合した有機樹脂組成物は、燃焼時に大量の黒煙が発生したり、人体に有害なガスあるいは金属等を腐食するガスが発生するという欠点があった。
【0003】
そのため、燃焼時に人体に有害なガスが発生しない難燃性ポリカーボネ−ト樹脂組成物が多数提案されている。例えば、特開平8−176425号公報では、エポキシ基含有シリコーン樹脂(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを加水分解して得られたポリグリシドキシプロピルシルセスキオキサン)と有機アルカリ金属塩を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。しかし、この組成物は、エポキシ基含有オルガノポリシロキサン中に含まれるエポキシ基の量が多いため、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物への配合安定性に劣り、その成形性が低下することがある等の問題点があった。また、特開平10−139964号公報では、芳香族ポリカーボネート樹脂に2官能性シロキサン単位(D単位)と3官能性シロキサン単位(T単位)からなり、重量平均分子量が10,000を超える高分子量のシリコ−ン樹脂を配合したポリカーボネート組成物が提案されている。しかし、この組成物は成形性に劣り、難燃性も不十分であるという問題点があった。また、このものを製造することは容易ではないという問題点があった。
【0004】
また、特開平11−140294号公報では、芳香族ポリカーボネート樹脂にフェニル基を80モル%以上含有するシリコ−ン樹脂(DT)を配合した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が提案されており、また、特開平11−222559号公報では、フェニル基とアルコキシ基を含有するシリコ−ン樹脂を配合した難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。しかし、この組成物も難燃性が十分とは言えず、用途によっては満足できるものではなかった。さらに、特開平11−140329号公報では、芳香族ポリカーボネート樹脂に、フェニル基とアルコキシ基を含有するシリコーン樹脂とシリカ粉末とを配合した難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。しかし、この樹脂組成物は、シリカ粉末を配合する必要性があり製造工程が煩雑である等の問題点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題点を解消するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明の目的は、成形性、難燃性に優れた有機樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、
「(A)芳香族環含有有機樹脂(100重量部)、
(B)平均分子式(1):
(R1 2SiO2/2a(R2SiO3/2b(SiO4/2c(R31/2d(HO1/2e(式中、R1、R2は炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数2〜12のアルケニル基および炭素原子数6〜12のアリ−ル基からなる群から選ばれる一価炭化水素基であり、R2中のアリ−ル基の含有量が20〜100モル%の範囲内にある。R3はアルキル基である。a、c、d、eは0または正数であり、bは正数である。)で示される分岐状オルガノポリシロキサン(0.01〜20重量部)、
および
(C)ジオルガノポリシロキサン(0.01〜5重量部)からなることを特徴とする、難燃性有機樹脂組成物」に関する。
【0007】
これを説明するに、(A)成分は芳香族環を含有する有機樹脂であればよくその種類等は特に限定されない。かかる芳香族環含有有機樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂およびそのアロイ、ポリフェニレンエ−テル樹脂およびそのアロイ、ポリアリレ−ト樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂,ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂,芳香族系液晶樹脂等の芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポフェニレンスルフィド樹脂、ポリスチレン樹脂,高衝撃ポリスチレン樹脂,ABS樹脂,AS樹脂等のスチレン系樹脂等の熱可塑性有機樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂,ビフェニル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が例示される。これらの中でも、芳香族ポリカーボネート樹脂およびそのアロイが好ましく用いられる。
【0008】
(B)成分の分岐状オルガノポリシロキサンは、本発明の特徴となる成分であり、後記する(C)成分と併用することにより、本発明組成物の難燃性を向上させる働きを有する。かかる(B)成分は、平均分子式(1):
(R1 2SiO2/2a(R2SiO3/2b(SiO4/2c(R31/2d(HO1/2e(式中、R1、R2は炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数2〜12のアルケニル基および炭素原子数6〜12のアリ−ル基からなる群から選ばれる一価炭化水素基であり、R2中のアリ−ル基の含有量が20〜100モル%の範囲内にある。R3はアルキル基である。a、c、d、eは0または正数であり、bは正数である。)で示される分岐状オルガノポリシロキサンである。
【0009】
(B)成分は、上記の通り、1分子中に、式:R2SiO3/2で示される3官能性シロキサン単位(T単位)を有し、必要に応じて、式:R1 2SiO2/2で示される2官能性シロキサン単位(D単位)、式:SiO4/2で示される4官能性シロキサン単位(Q単位)を含有するものであるが、これらのシロキサン単位に加えて、式:R1 3SiO1/2(式中R1は上記と同じ)で示される1官能性シロキサン単位(M単位)を含有することは、本発明の目的を損なわない限り差し支えない。
【0010】
(B)成分は、上記平均分子式(1)で示されるものであるが、これらの中でも、平均分子式(2):
(R1 2SiO2/2f(R2SiO3/2b(HO1/2e
(式中、R1、R2、b、eは前記と同じであり、fは正数である。)で示される分岐状オルガノポリシロキサン、または平均分子式(3):
(R2SiO3/2b(HO1/2e
(式中、R2、b、eは前記と同じである。)
で示される分岐状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0011】
上式中、R1、R2としては、具体的には、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,ヘプチル基等の炭素原子数1〜12のアルキル基;ビニル基,アリル基,ブテニル基,ペンテニル基,ヘキセニル基等の炭素原子数2〜12のアルケニル基;フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基等の炭素原子数6〜12のアリ−ル基が例示される。このうち、R2はアリ−ル基の含有量が20〜100モル%の範囲内にあることが必要であり、50〜100モル%の範囲内にあることが好ましい。また、R2のアリール基としてはフェニル基であることが好ましく、R2がフェニル基である場合はその含有量が20〜100モル%であることがさらに好ましい。これは、フェニル基の含有量が20モル%未満であると十分な難燃性が得られないからである。また、全置換基中のフェニル基の量は特に限定されないが20〜100モル%であることが好ましく、50〜90モル%であることがさらに好ましい。なお、本発明組成物に透明性が要求される場合には、全置換基中のフェニル基含有量が90モル%以上であることが好ましい。R3のアルキル基としては、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,ヘプチル基が例示される。
【0012】
(B)成分中のケイ素原子結合水酸基の含有量は多すぎると(A)芳香族環含有有機樹脂を加水分解する恐れがあるので、0〜8重量%の範囲内にあることが好ましく、1〜7重量%の範囲内にあることがより好ましい。また、(B)成分中には、 メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等で例示される炭素原子数1〜12のアルコキシ基が存在してもよい。
【0013】
また、(B)成分は、その重量平均分子量が300〜10,000であることが好ましい。重量平均分子量が10,000を超えると、その合成が困難であったり、本発明組成物の成形性が低下したりするなどの問題点が生じることがあるからである。この重量平均分子量は、通常、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって定量される。
【0014】
(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、0.01〜20重量部であり、好ましくは0.05〜10重量部であり、より好ましくは0.1〜5重量部である。この配合量が0.01重量部未満になると難燃性が低下し、また20重量部を超えると、本発明組成物の成形物の機械的強度が低下するためである。
【0015】
(C)成分のジオルガノポリシロキサンは本発明の特徴となる成分であり、上記(B)成分と併用することにより、本発明組成物の成形性を向上させ、難燃性を著しく向上させる働きをする。かかる(C)成分は、一般式(1);
4 3−SiO(R5 2SiO)n−SiR4 3
(式中、R4は一価炭化水素基、アルコキシ基および水酸基から選ばれる置換基であり、R5は一価炭化水素基であり、nは、25℃における粘度が、10〜1,000,000mPa・sとなる数である。)で示されるジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0016】
上記式中、R4の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基が例示される。また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブトキシ基が例示される。また、R5の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基が例示さる。そして、R5の内、50モル%以上がメチル基であることが必要であり、70モル%以上がメチル基であるであることが好ましく、90モル%以上がメチル基であることがさらに好ましい。nは、25℃における粘度が、10〜1,000,000mPa・sとなる数であり、20〜100,000mPa・sとなる数であることがより好ましい。
【0017】
かかるジオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、もう一方の分子鎖末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、もう一方の分子鎖末端がメトキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、もう一方の分子鎖末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がメトキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン等のジメチルポリシロキサン;分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、もう一方の分子鎖末端が水酸基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、もう一方の分子鎖末端がメトキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端がメトキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体;分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、もう一方の分子鎖末端が水酸基で封鎖されたジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、もう一方の分子鎖末端がメトキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等のジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサンが例示される。これらの中でも、ジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0018】
(C)成分であるジオルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合の一価炭化水素基は上述の通り、非置換の一価炭化水素基が代表的である。しかし、これらに加えて、γ−アミノプロピル等のアミノ基置換一価炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基等のメタクリル基置換一価炭化水素基、γ−ポリオキシエチレンプロピル基等のポリオキシエチレン基置換一価炭化水素基、エステル基置換一価炭化水素基等の置換一価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基を少量含むことは本発明の目的を損なわない限り差支えない。ただし、γ−グリシドキシプロピル基等のエポキシド置換の一価炭化水素基は含まない。
【0019】
本成分の配合量は、(A)成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、好ましくは0.05〜2重量部であり、より好ましくは0.1〜1重量部である。この配合量が0.01重量部未満の場合は得られた熱可塑性樹脂組成物に所望の難燃性を付与することができず、また、5重量部を超える場合は、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度が低下するためである。なお、(C)成分と(B)成分を併用すると、成形性が向上し、難燃性が向上する理由は充分に解明されていないが、(C)成分が、(A)成分と(B)成分の相溶化剤としての働きをして、(A)成分中に(B)成分が均一に分散するためと推定される。
【0020】
本発明組成物は上記(A)成分〜(C)成分からなるものであるが、本発明組成物の難燃性をさらに高めるために、これらの成分に加えて(D)有機酸もしくは有機酸エステルのアルカリ金属塩、または有機酸もしくは有機酸エステルのアルカリ土類金属塩を配合することができる。かかる(D)成分を構成する有機酸としては有機スルホン酸、有機カルボン酸が例示され、有機酸エステルとしては有機リン酸エステルが例示される。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムが例示され、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが例示される。これらの中でも、有機スルホン酸金属塩が好ましく用いられ、さらに、パーフロロアルカンスルホン酸金属塩、芳香族スルホンスルホン酸金属塩が好ましく用いられる。パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パ−フルオロメチルブタンスルホン酸ナトリウム、パ−フルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パ−フルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、 パ−フルオロオクタン−スルホン酸カリウムなどが挙げられる。芳香族スルホンスルホン酸金属塩の具体例としては、ジフエニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフエニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4−ジブロモジフエニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4 −ジブロモジフエニルースルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4−クロロ−4−二トロジフエニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフエニルスルホン−3,3−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。本成分の配合量は(A)成分100重量部に対して0.01〜1重量%である。
【0021】
本発明組成物は上記(A)成分〜(C)成分、あるいは(A)成分〜(D)成分からなるものであるが、本発明組成物の難燃性をさらに高めるためにこれらの成分に加えて、さらに(E)フッ素樹脂粉末を配合することができる。かかるフッ素樹脂粉末を構成するフッ素樹脂としては、フッ化エチレン樹脂(エチレンの水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された単量体の重合体、代表例、四フッ化エチレン樹脂粉末)、三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン六フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂が例示される。これらのフッ素樹脂粉末の形状は、一般に、球状であるが繊維状であってもよい。本成分の配合量は、通常、(A)成分100重量部に対して0.01〜5重量部である。
【0022】
本発明組成物には、(A)芳香族環含有有機樹脂に添加配合されることが公知とされる各種添加剤を配合することは本発明の目的を損なわれない限り差し支えない。かかる添加剤としては、ガラス繊維、ガラスビ−ズ、ガラスフレ−ク、カ−ボンブラック、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、シリカ、アスベスト、タルク、クレ−、マイカ、石英粉等の無機充填剤;各種合成樹脂、各種エラストマ−等の有機樹脂添加剤;ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などの酸化防止剤;脂肪族カルボン酸エステル、パラフィン、ポリエチレンワックスなどの滑剤;有機系あるいは無機系の各種顔料や着色剤;ベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤;ヒンダ−ドアミン系光安定剤などの光安定剤;リン系難燃剤などの各種難燃化剤;各種離型剤;各種帯電防止剤が例示される。
【0023】
本発明組成物は、上記(A)成分〜(C)成分、あるいは(A)成分〜(D)成分、あるいは(A)成分〜(E)成分を均一に混合することによって容易に製造される。かかる成分を混合するための装置としては、リボンブレンダ−、ヘンシェルミキサ−、バンバリ−ミキサ−、ドラムタンブラ−、単軸スクリュ−押出機、二軸スクリュ−押出機、コニ−ダ、多軸スクリュ−押出機等が例示される。ここで、上記成分の混合は200〜350℃の加熱下で混合することが好ましい。
【0024】
以上のような本発明組成物は、成形性および難燃性に優れるので、かかる特性を生かして家庭電器,自動車内装等のハウジング材料、電気電子部品材料などに好適に使用される。
【0025】
【実施例】
次に、本発明を実施例にて詳細に説明する。実施例中、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性はJIS−K7201「酸素指数法によるプラスチックの燃焼試験方法」に準じて酸素指数を測定した。また、もう一つの難燃性の指標として、アンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性評価を行った。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、以下のクラスに分けられる。
V−0 V−1 V−2
各試料の残炎時間 10秒以下 30秒以下 30秒以下
5試料の全残炎時間 50秒以下 250秒以下 250秒以下
ドリップによる綿の着火 なし なし あり
上に示す残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の,試験片が有炎燃焼を続ける時間の長さであり、ドリップによる綿の着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。なお、この本試験に用いた試験片の厚みは、3mmであった。
【0026】
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の成形性は、JIS−K7210に準じてメルトインデックス(MI値)を測定することにより評価した。この測定は1.2KGの荷重を用いて300℃で行なった。
【0027】
なお、実施例で使用した分岐状オルガノポリシロキサンSNR3、SNR4およびSNR5は、参考例1、参考例2および参考例3に記載された方法によって合成され、後記する表1に示す平均分子式を有し、表2に示す特性を有するものであった。尚、表1において、Meはメチル基を表し、Prはプロピル基を表し、Phはフェニル基を表し、DはMe2SiO2/2単位を表し、DPhはPh(Me)SiO2/2単位を表し、DPh2はPh2SiO2/2単位を表し、TPrはPrSiO3/2単位を表し、TPhはPhSiO3/2単位を表し、mは重量平均分子量が表2に示す値となる数である。また、実施例で使用した分岐状オルガノポリシロキサンの化学構造の解析は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)を用いて行い、重量平均分子量の測定はゲルパ−ミュエ−ションクロマトグラフィ−(GPC)を用いて行なった。この重量平均分子量は分子量既知の標準ポリスチレンに換算した値である。
【0028】
【参考例1】
分岐状オルガノポリシロキサン(SNR3)の合成
攪拌装置、冷却装置、滴下ロート、温度計を取り付けた2Lの4つ口フラスコにトルエン(180g)、イソプロピルアルコール(60g)、水(250g)を入れ、氷浴で冷却しながらフェニルトリクロロシラン(147g)、イソプロピルトリクロロシラン(52.8g)の混合溶液を滴下した。滴下終了後室温で30分攪拌した後、加水分解を完全に進行させるため3時間還流した。その後、静置して水層を除去した。引き続き水を加えて攪拌し静置して水層を除去する水洗操作を洗浄液が中性になるまで繰り返した。得られたトルエン溶液を共沸脱水により水分を除去した。冷却後、濾過して不溶物を除去した後、減圧蒸留によりトルエン等の低揮発分を除去して固体状の分岐状オルガノポリシロキサン115.2g(以下、SNR3)を得た。この分岐状オルガノポリシロキサンは、PhSiO3/2単位70モル%とC37SiO3/2単位30モル%とからなり、ケイ素原子結合水酸基を6.1重量%含有していた。また、その重量平均分子量は1,600であった。
【0029】
【参考例2】
分岐状オルガノポリシロキサン(SNR4)の合成
攪拌装置、冷却装置、滴下ロート、温度計を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、トルエン(110g)、メチルエチルケトン(40g)、水(40g)を入れた。ついで、フラスコを氷浴で冷却しながら、滴下ロートから、フェニルトリクロロシラン(114.8g)、ジメチルジクロロシラン(17.5g)、トルエン(40g)の混合溶液を滴下した。滴下終了後、室温で30分攪拌した後、加水分解を完全に進行させるために1時間還流した。冷却後、トルエン30mlを追加し静置して水層を除去した。引き続き、水を加えて攪拌し静置して水層を除去する水洗操作を3回繰り返した。さらにトルエン相に重曹水(重曹の4重量%水溶液)を加えて1時間還流した。冷却後、3回水洗して分岐状オルガノポリシロキサンのトルエン溶液を得た。この分岐状オルガノポリシロキサンのトルエン溶液の固形分を30重量%に調整し、これに水酸化カリウムの10%水溶液を0.8g加えた。ついで、エステルアダプターを取付けて発生する水を分離しながら還流した。還流開始4時間後に冷却し、酢酸で中和後、3回水洗し、乾燥固化して固体状の分岐状オルガノポリシロキサン(以下、SNR4)を得た。この分岐状オルガノポリシロキサンは、PhSiO3/2単位80モル%とMe2SiO2/2単位20モル%とからなり、ケイ素原子結合水酸基を3.4重量%含有していた。また、その重量平均分子量は4,000であった。
【0030】
【参考例3】
分岐状オルガノポリシロキサン(SNR5)の合成
攪拌装置、冷却装置、滴下ロート、温度計を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、トルエン90g、水430gを仕込み、80℃に加熱後、フェニルトリクロロシラン(169g)とジメチルジクロロシラン(26g)の混合溶液を滴下した。その後、加水分解を完全に進行させるために1時間還流した。冷却後静置して水層を除去し、引き続き水を加えて攪拌し静置して水層を除去する水洗操作を3回繰り返した。次にエステルアダプターを取り付けて発生する水を分離しながら1時間還流後室温まで冷却した。得られたオルガノポリシロキサン溶液を濾過して不溶物を除去し、乾燥固化して固体状の分岐状オルガノポリシロキサンを得た。得られた分岐状オルガノポリシロキサン(以下、SNR5)は、PhSiO3/2単位80モル%とMe2SiO2/2単位20モル%とからなり、ケイ素原子結合水酸基を1.7重量%含有していた。また、その重量平均分子量は、20,000であった。
【0031】
【表1】
Figure 0004148758
【0032】
【表2】
Figure 0004148758
【0033】
【実施例1〜8、比較例1〜8】
(A)成分として、芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂(出光石油化学株式会社製、商品名、タフロンA1900)あるいはポリカーボネート・ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂アロイ(帝人化成株式会社製、商品名、マルチロンT3011)を使用し、(B)成分として、参考例1〜参考例3で製造した分岐状オルガノポリシロキサンであるSNR3、SNR4あるいはSNR5を使用した。
(C)成分として、25℃における粘度が100mPa・sである両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(以下、SNR2)あるいは25℃における粘度が12,500mPa・sの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン)(以下、SNR1)を使用した。また、(D)成分としてパーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名、メガファックF114)を使用し、(E)成分としてフッ素樹脂粉末(ダイキン工業株式会社製のパーフルオロエチレン樹脂;商品名、ポリフロンMPA、FA−500)を使用した。そして、これらの成分を後記する表3〜表6に示す配合比率にて混合して難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を製造した。
【0034】
製造方法は次に示す通りであった。ポリカーボネート樹脂あるいはポリカーボネート・ABS樹脂アロイを混合装置(東洋精機製作所株式会社製、ラボプラストミル)に投入し、280〜320℃の温度条件下にて加熱して溶融した。ついで、分岐状オルガノポリシロキサンおよび/またはジメチルポリシロキサンを投入し混錬した。実施例5〜実施例7では、さらに、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウムおよび/またはフッ素樹脂を添加し混練した。このようにして難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を製造した。この組成物を成形性(MI値)を測定した。次いでこの組成物を成形温度280〜320℃にて射出成形した。得られた成形品について、難燃性を測定した。これらの測定結果を後記する表3と表4と表5と表6に記した。
【0035】
【表3】
Figure 0004148758
【0036】
【表4】
Figure 0004148758
【0037】
【表5】
Figure 0004148758
【0038】
【表6】
Figure 0004148758
【0039】
【発明の効果】
本発明の難燃性有機樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分および(C)成分からなり、特に(B)成分のアリール基を有する分岐状オルガノポリシロキサンと(C)成分のジオルガノポリシロキサンを同時に含有しているので、成形性に優れ、かつ、難燃性に優れているという特徴を有する

Claims (10)

  1. (A)芳香族環含有有機樹脂(100重量部)、
    (B)平均分子式(1):
    (R1 2SiO2/2a(R2SiO3/2b(SiO4/2c(R31/2d(HO1/2e(式中、R1、R2は炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数2〜12のアルケニル基および炭素原子数6〜12のアリ−ル基からなる群から選ばれる一価炭化水素基であり、R2中のアリ−ル基の含有量が20〜100モル%の範囲内にある。R3はアルキル基である。a、c、d、eは0または正数であり、bは正数である。)で示される分岐状オルガノポリシロキサン(0.01〜20重量部)、
    および
    (C)ジオルガノポリシロキサン(0.01〜5重量部)からなることを特徴とする、難燃性有機樹脂組成物。
  2. (A)成分が芳香族ポリカーボネート樹脂またはそのアロイである請求項1に記載の難燃性有機樹脂組成物。
  3. (B)成分が平均分子式(2):
    (R1 2SiO2/2f(R2SiO3/2b(HO1/2e(式中、R1、R2、b、eは前記と同じであり、fは正数である。)で示される分岐状オルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1に記載の難燃性有機樹脂組成物。
  4. (B)成分が、平均分子式(3):(R2SiO3/2b(HO1/2e(式中、R2、b、eは前記と同じである。)で示される分岐状オルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1に記載の難燃性有機樹脂組成物。
  5. (B)成分中のケイ素原子結合水酸基含有量が0〜8重量%であることを特徴とする、請求項1、請求項3または請求項4に記載の難燃性有機樹脂組成物。
  6. (B)成分中の、R1とR2に含まれるアリール基の合計が20〜100モル%であることを特徴とする、請求項1または請求項3に記載の難燃性有機樹脂組成物。
  7. (B)成分の重量平均分子量が300〜10,000であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性有機樹脂組成物。
  8. (C)成分が一般式(1):
    4 3−SiO(R5 2SiO)n−SiR4 3
    (式中、R4は一価炭化水素基、アルコキシ基および水酸基から選ばれる置換基であり、R5は一価炭化水素基であり、その内、50モル%以上はメチル基である。)で示され、エポキシド置換一価炭化水素基を含まないジオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性有機樹脂組成物。
  9. さらに、(D)有機酸もしくは有機酸エステルのアルカリ金属塩、または有機酸もしくは有機酸エステルのアルカリ土類金属塩(0.01〜1重量部)を含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の難燃性有機樹脂組成物。
  10. さらに、(E)フッ素樹脂粉末(0.01〜5重量部)を含有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の難燃性有機樹脂組成物。
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