JP4210810B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族系エポキシ樹脂等の分子中に芳香環を含む合成樹脂を主成分とする難燃性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
難燃性樹脂組成物は、例えば電気・電子機器部品、建材、自動車部品、日用品等の製品に多く使われている。これらの樹脂組成物は、一般的に、有機ハロゲン化合物又はこれと三酸化アンチモンとを添加することにより難燃性が付与されている。
【0003】
しかし、これらの難燃性樹脂組成物は燃焼時に有害なハロゲン系ガスを発生するという欠点があった。
【0004】
これに対して、有害ガスを発生しないシリコーン樹脂を添加することで難燃性が付与されることが知られている。
【0005】
特開昭54−36365号公報には三官能性シロキサン単位を80重量%以上含有するシリコーン樹脂を添加する難燃性樹脂組成物が記載されている。しかし、有機樹脂として芳香族ポリカーボネート樹脂や芳香族系エポキシ樹脂については何ら記載されておらず、また有機樹脂との溶融加工性を重視して、実質的に架橋性官能基をほとんど含有しない、室温以上の軟化温度を示す比較的高分子量のシリコーン樹脂を使用しているため、難燃化効果が小さく、シリコーン樹脂を有機樹脂100重量部に対して10〜300重量部添加する必要があり、有機樹脂の特性を損なってしまうという問題があった。
【0006】
特表昭59−500099号、特開平4−226159号、特開平7−33971号公報には単官能性シロキサン単位と四官能性シロキサン単位からなるシリコーン樹脂を添加した難燃性樹脂組成物が、特開平6−128434号公報にはビニル基を持つシロキサン単位を含有するシリコーン樹脂を添加した難燃性樹脂組成物が記載されている。しかしながら、いずれの組成物においても十分な難燃効果を得るためにはシリコーン樹脂の添加量を多くしたり、水酸化アルミニウム等の無機充填材やハロゲン及びリン化合物を併用することが必要である。
【0007】
このように、シリコーン樹脂を添加する場合、添加量を多くしないと十分な難燃効果が得られないが、添加量を多くすると樹脂組成物の成形性や機械的強度等の諸物性が大幅に低下してしまうという課題があり、より難燃効果の大きいシリコーン樹脂添加剤、又はシリコーン樹脂と併用して効果を向上させられる添加剤の開発が検討されてきた。
【0008】
特開平8−176425号公報にはエポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンと有機スルホン酸のアルカリ金属塩を添加した難燃性樹脂組成物が、特開平8−176427号公報にはフェノール性水酸基含有オルガノポリシロキサンで変性したポリカーボネート樹脂と有機アルカリ金属塩を添加した難燃性樹脂組成物が記載されている。また、特開平9−169914号公報には石油系重質油類又はピッチ類をシリコーン化合物と併用して難燃効果を向上させた組成物が記載されている。しかし、特殊な有機官能基を持ったシリコーン樹脂は高価であったり、製造工程が複雑化したりすることによるコストアップに見合うほどの十分な難燃化効果は得られず、更なる改善が望まれている。
【0009】
また、ポリカーボネート樹脂の耐熱酸化性の改良を目的に、比較的低コストで導入可能なアルコキシ官能基を持つシリコーン樹脂を添加すると効果的であることが知られている。特開昭54−102352号公報には下記に示すアルコキシ基を含有するシリコーン樹脂を添加する熱可塑性樹脂組成物が記載されている。アルコキシ基含有率が大きいシロキサンほどネットワークを形成するため耐熱酸化性が優れているが、前者はフェニル基を含有しないため難燃性が不十分であり、後者の含フェニル基低分子量オルガノシロキサンを添加した場合も、溶融加工時や燃焼時の熱で気化することによる有効成分の減少が激しく、難燃化効果は不十分であった。
【0010】
【化1】
【0011】
特開平6−306265号公報には、芳香族ポリカーボネートと、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩と、アルコキシ基及びフェニル基に更にビニル基を導入した有機シロキサン樹脂を含有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が提案されているが、実際に使用している有機シロキサン樹脂は有機置換基中のフェニル基の含有率は低く、難燃性は不十分であった。また、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩を配合しないと難燃性を達成することが困難であるとされている。なお、特開平6−306265号公報には、アルコキシ基、ビニル基及びフェニル基を有する有機シロキサンを必須成分として含有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が記載されており、炭素数1〜5のアルコキシ基が使用できる旨述べられているが、アルコキシ基の炭素数あるいは反応性が難燃性、透明性等の特性に与える効果については言及しておらず、実施例においてはアルコキシ基としてメトキシ基を有する化合物が例示されているにすぎない。
【0012】
従って、本発明の第一の目的は、上記のような特殊な架橋性有機官能基を持っていないオルガノポリシロキサンを添加して、火災発生時や焼却処分時に有害ガスを発生しない、安全で環境負荷の少ない難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の第二の目的は、オルガノオキシ基を官能基とした安価なオルガノポリシロキサンの中から、特定の構造を持つものを選択することで、少量の添加でも十分な難燃効果が得られる低コストの難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の第三の目的は、特定の構造のオルガノオキシ基含有オルガノポリシロキサンを使用して、樹脂組成物の成形性、成形品の外観や光学的透明度及び機械的強度等の諸物性の低下がほとんどない難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、芳香族ポリカーボネート樹脂や芳香族系エポキシ樹脂等の分子中に芳香環を含む合成樹脂に、分子中にフェニル基と炭素数3〜6のオルガノオキシ基とをケイ素原子に結合する必須の置換基として含有し、ケイ素原子に結合する全有機基及びオルガノオキシ基の酸素原子を介してケイ素原子に結合する有機基の合計重量中に占めるフェニル基の割合が30〜80重量%であり、全分子中のオルガノオキシ基含有量が5〜40重量%である液状のオルガノポリシロキサンを少量添加することにより、難燃性、ドリップ防止性が付与され、また光学的透明性を確保することも可能であり、しかもハロゲン、リン、アンチモン等を含有しなくとも高い難燃性が得られるので、燃焼時に有害なガスを発生させないことも可能であり、更に上記オルガノポリシロキサンは少量の添加で難燃効果が得られるため、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族系エポキシ樹脂等の芳香環を含む合成樹脂本来の性能を低下させないものであることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0016】
従って、本発明は、
(A)分子中に芳香環を含む合成樹脂として芳香族ポリカーボネート樹脂又は芳香族エポキシ樹脂 100重量部、
(B)分子中にフェニル基と炭素数3〜6のオルガノオキシ基とをケイ素原子に結合する必須の置換基として含有する液状のオルガノポリシロキサン
0.1〜10重量部
を含有してなり、上記(B)成分のオルガノポリシロキサンが、ケイ素原子に結合する全有機基及びオルガノオキシ基の酸素原子を介してケイ素原子に結合する有機基の合計重量中に占めるフェニル基の割合が30〜80重量%であり、全分子中のオルガノオキシ基含有量が5〜40重量%であることを特徴とする難燃性樹脂組成物
を提供する。
【0017】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明で使用される(A)成分の分子中に芳香環を含む合成樹脂は、フェノール、スチレン、フタル酸などの芳香族化合物を原料として製造される樹脂であり、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、芳香族系エポキシ樹脂、芳香族系ポリエステル樹脂などが使用される。中でも芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族系エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0018】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、2価フェノールとホスゲン又は炭酸ジエステルの反応により製造されるものを用いることができる。2価フェノールとしては、ビスフェノール類が好ましく、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。また、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの一部又は全部を他の2価フェノール化合物で置換してもよい。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン以外の2価フェノール化合物は、例えば、ハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどの化合物である。これらの2価フェノールのホモポリマー又は2種以上のコポリマー、あるいはこれらのブレンド品であってもよい。
【0019】
なお、ポリカーボネート樹脂としては、メチレンクロライドを溶媒として用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量が16000〜30000の範囲のものが好適である。
【0020】
芳香族系エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、各種硬化剤により硬化可能な合成樹脂であり、従来から知られている種々のエポキシ樹脂を使用することができる。例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。特に、溶融粘度の低いビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂が好ましく、必要により他のエポキシ樹脂を併用することが好ましい。
【0021】
(B)成分の液状のオルガノポリシロキサンは、分子中にフェニル基とオルガノオキシ基をケイ素原子に結合する必須の置換基として含有するものを使用する。このオルガノポリシロキサンは、分子中のオルガノオキシ基中の炭化水素部分を含む全有機置換基(即ち、ケイ素原子に結合する全有機基及びオルガノオキシ基の酸素原子を介してケイ素原子に結合する有機基)中で、フェニル基の占める割合を重量換算で30〜80%とすることが必要である。この場合、本発明における上記のフェニル基含有量とは以下のように定義される。即ち、(B)成分のオルガノポリシロキサンが下記平均組成式(2)
(C6H5)mRnSi(OR’)pO(4-m-n-p)/2 (2)
(式中、Rはフェニル基とオルガノオキシ基以外の有機置換基で、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、更に好ましくはメチル基、R’は炭素数3〜6のアルキル基を示す。)
で表わされるものであるとき、
フェニル基含有量(重量%)=
{MW(C6H5)×m×100}
/{MW(C6H5)×m+MW(R)×n+MW(R’)×p}
で示され、本発明においてはこのフェニル基含有量が30〜80重量%、特に40〜75重量%の範囲であるオルガノポリシロキサンを使用する(なお、MWは有機基の分子量を示す)。フェニル基の割合が少なすぎると、分子中に芳香環を含む合成樹脂との相溶性が低下するため、分散性が不足して樹脂組成物の外観(透明性)及び衝撃強度が不良となるし、フェニル基が少なくなるために難燃効果も低下する。一方、フェニル基の割合が多すぎると、芳香環を含む合成樹脂との相溶性が高くなりすぎて、燃焼時の表面移行性が悪くなるため、この場合も難燃効果が低下してしまう。
【0022】
なお、上記式(2)において、m,n,pは0.4≦m≦2.0、0≦n≦1.5、0.2≦p≦2.0、0.95≦m+n+p≦3.0を満たすものから選択することが好ましい。
【0023】
また、このオルガノポリシロキサン中のオルガノオキシ基は、燃焼時のドリップを抑える効果のあるものであるが、このオルガノオキシ基としては、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、フェノキシ基等から選択される同一又は異なる炭素数3〜6のアルコキシ基又はフェノキシ基とすることが必要である。メトキシ基、エトキシ基等の炭素数が3未満のアルコキシ基では難燃効果が十分でなく、また難燃性樹脂組成物が高湿度条件下に置かれた場合に、加水分解反応性が高すぎるために容易に吸湿水分と反応してアルコールを生成させ、樹脂組成物の透明性を大幅に損なう(耐湿性に劣る)結果となる。一方、アルコキシ基の炭素数を6より大きくした場合も、難燃効果のさらなる向上が見られないばかりか、相対的に分子中のフェニル基含有量が減少する方向に働いて、分散性及び難燃性に悪影響を与えてしまう。反応性、難燃性の点からは、イソプロポキシ基、2−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜6の2級及び/又は3級のアルコキシ基とすることが好ましい。
【0024】
(B)成分のフェニル基及びオルガノオキシ基含有オルガノポリシロキサンは、架橋性有機官能基を必須としないにもかかわらず、組成物全体の10重量%以下の少量添加で難燃性を付与できる。この組成物を燃焼させた場合、オルガノオキシ基の酸化分解架橋により、オルガノポリシロキサンと芳香環を含む合成樹脂が結合して燃焼部周辺に固定化され、更にオルガノポリシロキサンに高含有率で含まれるフェニル基は、芳香環を含む合成樹脂との間で、各々がもつ芳香環相互のカップリングにより不燃性のSi−Cセラミック層を容易に形成し、高い難燃効果を発現すると考えられる。
【0025】
この難燃化機構が有効に働くために必要なオルガノオキシ基含有量は、全分子中の含有率で示され、オルガノポリシロキサンの前記平均組成式(2)に基づき、以下のように定義される。
オルガノオキシ基含有量(重量%)=
{MW(OR’)×p×100}/MW(オルガノポリシロキサン)
【0026】
このオルガノオキシ基含有量は、少なすぎると難燃化効果が十分でないし、多すぎると前記の耐湿性が劣るようになるとともに、やはり相対的に分子中のフェニル基含有量が減少して、分散性及び難燃性に悪影響を与えるため、5〜40重量%の範囲とすることが必要であり、好ましくは10〜30重量%である。
【0027】
(B)成分のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、410未満では低分子量体の含有率が高くなって、芳香環を含む合成樹脂と溶融混合する際に系外に揮発する成分が多くなり、難燃効果が発揮されないし、2000を超えると分散性が不良となって、樹脂組成物の透明性、衝撃強度が低下すると共に、燃焼時の表面移行性が悪くなって、この場合も期待される難燃効果が発現しないため、410以上2000以下とすることがよい。特に好ましくは450以上1800以下である。
【0028】
また、(B)成分のオルガノポリシロキサンは、そのフェニル基含有量、オルガノオキシ基含有量あるいは分子量分布等を好適な範囲にコントロールするために、分子中に下記式(1)
R1R2R3SiO1/2 (1)
で示される一官能性シロキサン単位を含むものであってもよい。ここで、R1,R2,R3は同一又はそれぞれ異なるものであってもよい炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基より選択され、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、フェニル基などが例示されるが、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0029】
この場合、特には(B)成分のオルガノポリシロキサンは、上記の一官能性シロキサン単位を含めて、分子中にフェニル基とオルガノオキシ基以外のケイ素原子に結合する有機置換基としてメチル基のみを含有するものであることが、製造の容易さ及びコスト面からは好ましい。なお、前出の特開平6−306265号公報に記載されているビニル基の効果については、本発明の検討において確認を行ったが、難燃効果等の特性向上は認められていない。
【0030】
本発明においては、(A)成分の分子中に芳香環を含む合成樹脂100重量部に対して、(B)成分のオルガノポリシロキサンの配合量が少なすぎると難燃効果が不足するし、多すぎると難燃効果の向上が見られないばかりか、衝撃強度等の機械的特性の低下が大きくなるため、0.1〜10重量部とすることが必要であり、好ましくは0.2〜5重量部である。
【0031】
本発明で使用する(B)成分のオルガノポリシロキサンは、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、目的とするオルガノポリシロキサンの分子構造及び分子量に従って、フェニル基を有するオルガノクロロシラン類に適宜のアルコールと水を反応させた後、必要に応じて添加した有機溶媒、副生する塩酸や低沸分を除去することによって、部分的に縮合したフェニル基とオルガノオキシ基を含有するオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0032】
また、フェニル基と炭素数3〜6のアルコキシ基を含有するアルコキシシラン類を出発原料とする場合には、やはり目的とするオルガノポリシロキサンの分子量に従って、所定量の水を添加して部分的に加水分解反応を進行させる方法とすることが可能で、この場合には、塩酸、酢酸等の酸触媒又はアンモニア、水酸化ナトリウム等の塩基性触媒を使用することが好ましく、副生するアルコール等の不純物を除去することによって、同様にオルガノポリシロキサンを得ることができる。いずれの場合においても、フェニル基含有量、オルガノオキシ基の種類と含有量及び分子量は、各原料の種類と使用量を変化させることによって調整することが可能である。これらのオルガノポリシロキサンは、いずれも燃焼時には有害なガスを発生させることがない。
【0033】
本発明にかかる難燃性樹脂組成物には、更に良好な難燃性を付与する点から、有機スルホン酸金属塩を配合することが好ましい。有機スルホン酸金属塩としては、脂肪族スルホン酸金属塩、芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩の金属としては、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、アルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムなどが挙げられる。有機スルホン酸金属塩は、2種以上の混合物であってもよい。
【0034】
有機スルホン酸金属塩としては、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩、芳香族スルホンスルホン酸金属塩などが挙げられる。中でも好ましいのは、前者のパーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩である。パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ金属塩、パーフルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ金属塩、炭素数1〜8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ土類金属塩などである。
【0035】
パーフルオロアルカン−スルホン酸の具体例としては、パーフルオロメタン−スルホン酸、パーフルオロエタン−スルホン酸、パーフルオロプロパン−スルホン酸、パーフルオロブタン−スルホン酸、パーフルオロヘキサン−スルホン酸、パーフルオロヘプタン−スルホン酸、パーフルオロオクタン−スルホン酸などが挙げられる。
【0036】
芳香族スルホンスルホン酸金属塩としては、好ましくは芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられ、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩は重合体であってもよい。
【0037】
芳香族スルホンスルホン酸金属塩の具体例としては、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンのナトリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンのカリウム塩、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
【0038】
有機スルホン酸金属塩の配合量は、芳香環を含む合成樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部の範囲が好ましい。有機スルホン酸金属塩の配合量が0.01重量部未満であると配合効果が十分でなく、5重量部を超えると熱安定性が低下するおそれがある。有機スルホン酸金属塩の配合量は、上記範囲の中では0.02〜4重量部が好ましく、特に好ましいのは0.05〜3重量部である。
【0039】
本発明にかかる難燃性樹脂組成物に、更にポリフルオロエチレンを配合すると、最終的に得られる難燃性樹脂組成物の燃焼時のドリップを防止し、難燃性を向上させることができる。配合できるポリフルオロエチレンとしては、例えば、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが挙げられ、難燃性樹脂組成物中に容易に分散させることができ、かつ、樹脂同士を結合して繊維状構造を作る傾向を示すものである。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、ASTM規格でタイプ3に分類される。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社よりテフロン6J又はテフロン30Jとして、及びダイキン化学工業社よりポリフロンとして市販されているものなどが挙げられる。
【0040】
ポリフルオロエチレンの配合量は、基体樹脂の芳香環を有する合成樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部の範囲で選ぶのが好ましい。ポリフルオロエチレンの配合量が0.01重量部未満であると配合効果が不十分であり、5重量部を超えるとこの難燃性樹脂組成物から得られる成形品の外観が低下するおそれがある。芳香環を有する合成樹脂に対し配合するポリフルオロエチレンの量は、上記範囲の中では0.02〜4重量部が好ましく、中でも0.03〜3重量部が特に好ましい。
【0041】
また、本発明の難燃性樹脂組成物は、補強剤として無機充填材を配合することができる。例えば溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維等が挙げられる。これら無機充填材の平均粒径や形状は特に限定されないが、成形性及び流動性の面から平均粒径が5〜40μmの球状の溶融シリカが特に好ましい。配合する場合は、(A)成分の芳香環を含む合成樹脂100重量部に対して400〜1200重量部が適当である。400重量部未満では補強効果があまり期待できず、1200重量部を超えると成形性に悪影響を与えるおそれがある。なお、合成樹脂と無機充填材との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを配合することが好ましい。このようなカップリング剤の例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシランが挙げられる。ここで、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に限定されるものではない。
【0042】
本発明の難燃性樹脂組成物には、更に必要に応じて、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、分散剤、滑剤、増粘剤、低応力剤、ワックス類、着色剤等の通常配合されるものを配合することができる。
【0043】
これらの各成分は、それぞれ計量混合され、従来のゴムやプラスチックのための装置と方法が利用できる。即ち、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合撹拌機を用いて各成分を十分混合分散させた後、バンバリロール、押出機等の溶融混練機で混練し、目的物を得ることができる。
【0044】
成形方法としては、例えば射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、真空成形法が挙げられる。
【0045】
【実施例】
以下、調製例及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記調製例で得られた各オルガノポリシロキサンにおける全有機置換基中のフェニル基含有量(重量%)と全分子中のオルガノオキシ基含有量(重量%)は、NMR測定データより前出の下記式によって計算し、また重量平均分子量はGPC測定データよりポリスチレン標準試料で作成した検量線を用いて換算した。
【0046】
フェニル基含有量(重量%)=
{MW(C6H5)×m×100}
/{MW(C6H5)×m+MW(R)×n+MW(R’)×p}
オルガノオキシ基含有量(重量%)=
MW(OR’)×p×100/MW(オルガノポリシロキサン)
【0047】
〔調製例1〕
撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコにフェニルトリクロロシラン423g(2モル)を仕込んだ。滴下ロートに2−ブタノール333g(4.5モル)を仕込み、フラスコ内へ撹拌しながら1時間で滴下し、アルコキシ化反応中に発生する塩化水素ガスを系外へ除去しながら反応を進めた。滴下終了後、更にオイルバスで加熱して内温40℃で撹拌を1時間続けて熟成した。次に、滴下ロートに水18g(1モル)を仕込み、フラスコ内へ撹拌しながら1時間で滴下し、加水分解縮合反応中に発生する塩化水素ガスを系外へ除去しながら反応を進めた。滴下終了後、更に内温40℃で撹拌を1時間続けて熟成し、引き続き減圧蒸留により過剰分の2−ブタノール、未反応の水、塩化水素を除去して、液体の2−ブトキシ基含有オルガノポリシロキサン−1を420g得た。
【0048】
〔調製例2〕
調製例1において、1Lフラスコにフェニルトリクロロシラン423g(2モル)とトリメチルクロロシラン217g(2モル)を仕込み、滴下ロートに2−ブタノール185g(2.5モル)を仕込んでアルコキシ化し、引き続き滴下ロートに水54g(3モル)を仕込んで加水分解縮合反応させた以外は同様に調製し、液体の2−ブトキシ基含有オルガノポリシロキサン−2を430g得た。
【0049】
〔調製例3〕
調製例1において、1Lフラスコにフェニルトリクロロシラン212g(1モル)とジフェニルジクロロシラン253g(1モル)とトリメチルクロロシラン109g(1モル)を仕込み、滴下ロートに2−ブタノール185g(2.5モル)を仕込んでアルコキシ化し、引き続き滴下ロートに水36g(2モル)を仕込んで加水分解縮合反応させた以外は同様に調製し、液体の2−ブトキシ基含有オルガノポリシロキサン−3を440g得た。
【0050】
〔調製例4〜14〕
調製例1と同様の調製方法において、使用するオルガノクロロシランとアルコールの種類、オルガノクロロシランとアルコール及び水の仕込み量(モル比)を変化させて、各種のアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン−4〜14を得た。
【0051】
上記調製例1〜14によって得られたオルガノポリシロキサン−1〜14の各種物性値を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
〔実施例1〜9,比較例1〜9〕
表2の配合で、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対してオルガノポリシロキサンを1重量部、芳香族系エポキシ樹脂100重量部に対してオルガノポリシロキサンを10重量部添加し、自動乳鉢で予備混合した後、単軸の押出機で溶融混練(混練温度:280℃)を行った。実施例8においては、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウムを0.5重量部添加した。また、比較例9においては、特開平6−306265号公報の実施例に記載されているメトキシ基、ビニル基、及びフェニル基を有するオルガノシロキサンKR−219(信越化学工業(株)製,商品名)を同添加量で使用した。
【0054】
芳香族ポリカーボネート樹脂は三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製ユービロンS−3000(粘度平均分子量21000)を用い、芳香族エポキシ樹脂は油化シェル(株)製YX4000HK(エポキシ当量190)にフェノール樹脂硬化剤として三井東圧化学(株)製XL−225−3L(フェノール当量168)を同重量部添加したものを使用した。
【0055】
難燃性の評価は、アンダーライターズ・ラボラトリーズ・INCの定めている規格(UL94:機器部品用プラスチック材料の燃焼性試験の規格)に準拠し、2.0mm厚の板を成形して使用した。
【0056】
光学的透明性は、可視吸光光度計を用いた。試験片は厚さ10mmの成形板を用い、厚さ方向の光路長10mm当たりの可視光透過率を測定し、オルガノポリシロキサンを添加していない試験片に対する各試験片の透過率の比により評価した。透過率の比が70%以上のものを○、70%未満のものを×とした。
結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
〔実施例10〕
芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製,ユービロンS−3000,粘度平均分子量21000)100重量部に対して、オルガノポリシロキサン−2を1重量部、有機スルホン酸金属塩(パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩,大日本インキ化学工業社製,商品名:メガファックF114)0.05重量部を添加し、実施例1と同様の評価を行った。但し、燃焼試験片については1.6mm厚みで評価を行った。
【0059】
〔実施例11〕
実施例10のオルガノポリシロキサン−2をオルガノポリシロキサン−3に変更した以外は実施例10と同様の評価を行った。
【0060】
〔実施例12〕
実施例10のオルガノポリシロキサン−2をオルガノポリシロキサン−6に変更した以外は実施例10と同様の評価を行った。
【0061】
〔実施例13〕
実施例10のオルガノポリシロキサン−2をオルガノポリシロキサン−7に変更した以外は実施例10と同様の評価を行った。
【0062】
〔比較例10〕
実施例10のオルガノポリシロキサン−2をオルガノポリシロキサン−10に変更した以外は実施例10と同様の評価を行った。
【0063】
〔比較例11〕
実施例10のオルガノポリシロキサン−2をオルガノポリシロキサン−11に変更した以外は実施例10と同様の評価を行った。
以上の結果を表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
〔実施例14〕
芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、オルガノポリシロキサン−2を1重量部、有機スルホン酸金属塩(パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩,大日本インキ化学工業社製,商品名:メガファックF114)0.05重量部、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン;ダイキン工業社製,商品名:ポリフロンF−201L)を添加し、実施例1と同様の評価を行った。但し、燃焼試験片は0.8mm厚みで評価を行った。
結果を表4に示す。
【0066】
【表4】
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、分子中に芳香環を含む合成樹脂に特定構造のオルガノポリシロキサンを含有させたことにより、燃焼時に有害ガスを発生せずに樹脂の難燃化が達成され、成形品の光学的透明性も維持できる。
Claims (8)
- (A)分子中に芳香環を含む合成樹脂として芳香族ポリカーボネート樹脂又は芳香族エポキシ樹脂 100重量部、
(B)分子中にフェニル基と炭素数3〜6のオルガノオキシ基とをケイ素原子に結合する必須の置換基として含有する液状のオルガノポリシロキサン
0.1〜10重量部
を含有してなり、上記(B)成分のオルガノポリシロキサンが、ケイ素原子に結合する全有機基及びオルガノオキシ基の酸素原子を介してケイ素原子に結合する有機基の合計重量中に占めるフェニル基の割合が30〜80重量%であり、全分子中のオルガノオキシ基含有量が5〜40重量%であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。 - (B)成分のオルガノポリシロキサンのオルガノオキシ基が炭素数3〜6の2級及び/又は3級アルコキシ基である請求項1記載の組成物。
- (B)成分のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量が410〜2000である請求項1又は2記載の組成物。
- (B)成分のオルガノポリシロキサンが、分子中に下記式(1)
R1R2R3SiO1/2 (1)
(式中、R1,R2,R3は互いに同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を示す。)
で示される単位を含有するものである請求項1乃至3のいずれか1項記載の組成物。 - (B)成分のオルガノポリシロキサンが、フェニル基とオルガノオキシ基以外のケイ素原子に結合する置換基としてメチル基のみを含有する請求項1乃至4のいずれか1項記載の組成物。
- (A)成分の分子中に芳香環を含む合成樹脂100重量部に対して有機スルホン酸金属塩を0.01〜5重量部配合した請求項1乃至5のいずれか1項記載の組成物。
- 有機スルホン酸塩が、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩である請求項6記載の組成物。
- (A)成分の分子中に芳香環を含む合成樹脂100重量部に対してポリフルオロエチレンを0.01〜5重量部配合した請求項1乃至7のいずれか1項記載の組成物。
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