JP4148382B2 - セラミックグリーンシートの加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、積層セラミック電子部品を製造する場合などに用いられる、キャリアフィルムにより一面が支持されたセラミックグリーンシートの加工方法に関し、詳しくは、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートにのみ貫通孔(例えば、ビアホールやスルーホールなどとして機能させるための穴)を形成するためのセラミックグリーンシートの加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
積層型コイル部品、積層基板、その他の種々の積層セラミック電子部品においては、通常、セラミック層を介して積層、配設された内部電極間(層間)の電気的接続を、セラミックグリーンシートに形成されたビアホール(貫通孔)を介して行っている。
【0003】
ところで、従来は、セラミックグリーンシートにビアホール(貫通孔)を形成するための加工方法として、金型とピンを用いてセラミックグリーンシートを打ち抜く方法が広く用いられている。
【0004】
しかし、上記の打ち抜き加工方法の場合、
(1)金型やピンの寸法精度が、貫通孔の精度に大きな影響を与えるため、金型及びピンの寸法や形状の精度を高く保たなければならず、設備コストの増大が避けられない、
(2)金型やピンは高価であるにもかかわらず、寿命が短く、定期的な交換が必要であり、交換に手間がかかる、
(3)加工部分の形状が変わると金型やピンを交換することが必要になり、しかも、交換後に、金型とピンの精密な調整が必要となり、手間がかかる、
(4)貫通孔の寸法が小さくなるにつれて、加工精度(形状精度)が低下する
というような問題点がある。
また、上記の方法には、キャリアフィルムにより一面が支持されたセラミックグリーンシートを打ち抜く場合に、図7に示すように、セラミックグリーンシート51に貫通孔51aが形成されるのみではなく、キャリアフィルム52にまで貫通孔52aが形成されてしまい、後工程で、層間接続及び配線パターンの形成のために、例えばスクリーン印刷法などにより導電ペーストを印刷する場合に、図8に示すように、キャリアフィルム52の貫通孔52aを通過して、セラミックグリーンシート51を支持するテーブル53に導電ペースト54が付着し、このテーブル53に付着した導電ペースト54が、図9に示すように、テーブル53上に残留し、スクリーン印刷の精度を低下させたり、他のセラミックグリーンシートに付着して不良発生の原因となったりするため、一層のセラミックグリーンシートにスクリーン印刷を行うたびに清掃が必要になり、効率が悪いという問題点がある。
また、図10に示すように、テーブル53からキャリアフィルム52とともにセラミックグリーンシート51を持ち上げた後、セラミックグリーンシート51からキャリアフィルム52を剥離する際に、貫通孔51a,52a内で内部導体(導電ペースト)54が剥がれて不良発生の原因になるという問題点がある。
【0005】
そこで、上記のような問題点を解消するために、レーザビームを用いて、キャリアフィルムにより一面が支持されたセラミックグリーンシートの所定の位置に、キャリアフィルムは貫通せず、セラミックグリーンシートにのみ貫通孔を形成することが可能な方法(レーザ加工法)が提案、実施されるに至っている(特開平7−193375号)。
【0006】
しかし、上記従来のレーザ加工法では、
(1)レーザ光のエネルギーを、キャリアフィルムに貫通孔が形成されないような大きさに調節するために、レーザ発振器の出力を抑えることが必要になり、繰り返して安定した加工を行うことが困難である、
(2)レーザ発振器の発信周波数、ガルバノスキャンミラーのスキャン速度、テーブルの移動速度などが加工速度を律速し、加工速度の向上が制約される(レーザ加工法の加工速度は、上述の金型とピンを用いる場合に比べて著しく遅く、通常は、数分の一程度、場合によっては十分の一以下である)
というような問題点がある。
【0007】
本願発明は、上記問題点を解決するものであり、キャリアフィルムにより一面が支持されたセラミックグリーンシートに貫通孔を形成する場合に、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートにのみ貫通孔を効率よく形成することが可能なセラミックグリーンシートの加工方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願発明(請求項1)のセラミックグリーンシートの加工方法は、
キャリアフィルムにより一面が支持されたセラミックグリーンシートに複数個の貫通孔を形成するためのセラミックグリーンシートの加工方法であって、
パルス状のレーザビームを放射するレーザ光源と、レーザビームを複数個のレーザビームに分光する回折格子と、レーザビームを所定の反射角度で反射させるガルバノスキャンミラーと、ガルバノスキャンミラーにより反射されたレーザビームを個々に集光する集光レンズと、セラミックグリーンシートを所定の位置関係となるように配設し、
レーザ光源から放射されたパルス状のレーザビームを、回折格子を通過させることにより、複数個のレーザビームに分光するとともに、セラミックグリーンシートは貫通するが、キャリアフィルムは貫通しないようなエネルギーに調整し、
分光され、エネルギーが調整された複数個のパルス状のレーザビームを、ガルバノスキャンミラーで反射させ、セラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面に照射して、セラミックグリーンシートに複数個の貫通孔を形成した後、
ガルバノスキャンミラーの反射角度を変化させて、セラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面へのレーザビームの照射を繰り返し、セラミックグリーンシートの異なる所定の位置に複数個の貫通孔を形成すること
を特徴としている。
【0009】
レーザ光源から放射されたパルス状のレーザビームを、回折格子を通過させて、複数個のレーザビームに分光するとともに、セラミックグリーンシートは貫通するが、キャリアフィルムは貫通しないようなエネルギーに調整し、この分光され、エネルギーが調整された複数個のレーザビームを、セラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面に照射することにより、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートにのみ確実に貫通孔を効率よく形成することが可能になる。
【0010】
なお、本願発明の方法において、「セラミックグリーンシートは貫通するが、キャリアフィルムは貫通しないようなエネルギーに調整し」とは、レーザビームを、セラミックグリーンシート側から照射した場合に、セラミックグリーンシートを厚み方向に貫通するが、キャリアフィルムについては貫通孔が形成されることのないような大きさのエネルギーになるように調整することを意味する概念である。
【0011】
なお、本願発明においては、分光後のレーザビームの形状、すなわち、加工対象物の照射面の形状(平面形状)には特別の制約はなく、種々の形状のレーザビームに分光することが可能である。
【0012】
本願発明の方法によれば、レーザビームを回折格子により分光して、分光された個々のレーザビームのエネルギーレベルを上記のように所定のレベルまで低下させるようにしているので、レーザ発振器の出力を低下させる必要がなくなる。その結果、レーザ発振器を安定した出力で稼働させることが可能になり、安定した加工を行って、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートにのみ貫通孔を効率よく形成することが可能になる。
そして、本願発明の方法のように、ガルバノスキャンミラーの反射角度を変化させて、レーザビームのセラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面への照射を繰り返すことにより、セラミックグリーンシートの所定の領域では、セラミックグリーンシートを移動させることなく、複数の位置で、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートに複数個の貫通孔を効率よく形成することが可能になる。
【0013】
また、請求項2のセラミックグリーンシートの加工方法は、
キャリアフィルムにより一面が支持されたセラミックグリーンシートに複数個の貫通孔を形成するためのセラミックグリーンシートの加工方法であって、
パルス状のレーザビームを放射するレーザ光源と、レーザビームを所定の反射角度で反射させるガルバノスキャンミラーと、レーザビームを複数個のレーザビームに分光する回折格子と、複数個に分光されたレーザビームを個々に集光する集光レンズと、セラミックグリーンシートを所定の位置関係となるように配設し、
レーザ光源から放射されるパルス状のレーザビームを、ガルバノスキャンミラーで反射させた後、
ガルバノスキャンミラーで反射されたレーザビームを、回折格子を通過させることにより、複数個のレーザビームに分光するとともに、セラミックグリーンシートは貫通するが、キャリアフィルムは貫通しないようなエネルギーに調整し、
分光され、エネルギーが調整された複数個のパルス状のレーザビームを、セラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面に照射して、セラミックグリーンシートに複数個の貫通孔を形成した後、
ガルバノスキャンミラーの反射角度を変化させて、セラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面へのレーザビームの照射を繰り返し、セラミックグリーンシートの異なる所定の位置に複数個の貫通孔を形成すること
を特徴としている。
【0014】
上記請求項1のセラミックグリーンシートの加工方法では、レーザビームを回折格子を通過させて、複数個のレーザビームに分光するとともに、セラミックグリーンシートは貫通するが、キャリアフィルムは貫通しないようなエネルギーに調整し、この分光およびエネルギー調整が行われたレーザビームを、ガルバノスキャンミラーで反射させてセラミックグリーンシートに照射するようにしているが、この請求項2のように、レーザビームをガルバノスキャンミラーで反射させた後、回折格子を通過させて、複数個のレーザビームに分光するとともに、セラミックグリーンシートは貫通するが、キャリアフィルムは貫通しないようなエネルギーに調整し、この分光され、エネルギーが調整された複数個のレーザビームを、セラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面に照射するように構成することも可能であり、その場合にも、上記請求項1の構成の場合と同様の効果を得ることができる。
【0015】
また、請求項3のセラミックグリーンシートの加工方法は、前記セラミックグリーンシートを移動させながら、パルス状のレーザビームの照射を繰り返すことを特徴としている。
【0016】
上記請求項1及び2においては、ガルバノスキャンミラーにより反射角度を変化させて、レーザビームのセラミックグリーンシートへの照射を繰り返すようにしているが、セラミックグリーンシートを移動させることにより、位置的な制約なしに広い領域で、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートの任意の位置に複数個の貫通孔を確実に形成することが可能になり、本願発明をより実効あらしめることができる。
【0017】
また、請求項4のセラミックグリーンシートの加工方法は、前記回折格子が、レーザビームの透過率の高い材料を用いて形成されていることを特徴としている。
【0018】
光学系、特に、回折格子に、レーザビームの透過率の高い材料を用いることにより、エネルギー効率を向上させることが可能になり、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートに複数個の貫通孔を効率よく形成することが可能になる。
【0019】
また、請求項5のセラミックグリーンシートの加工方法は、前記レーザ光源から放射されるレーザが、CO2レーザであることを特徴としている。
【0020】
CO2レーザは、セラミックグリーンシートを構成するセラミック自体による吸収率が低く、セラミック自体の変質などによる特性のばらつきを防止することが可能であるため、本願発明のセラミックグリーンシートの加工方法に用いるのに好適である。
【0021】
なお、CO2レーザは、上述のように、セラミックグリーンシートを構成するセラミック自体には吸収されにくいが、セラミックグリーンシートを構成するバインダなどに、CO2レーザの吸収率の高い物質を配合しておくことにより、CO2レーザを用いた場合にも、効率よくセラミックグリーンシートの加工(除去)を行うことが可能になる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を示してその特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0023】
[実施形態1]
図1は、本願発明の一実施形態にかかるセラミックグリーンシートの加工方法に用いた加工装置の概略構成を示す図である。
【0024】
この実施形態で用いた加工装置は、図1に示すように、キャリアフィルム20により一面(下面)が支持されたセラミックグリーンシート10を支持するとともに、所定の方向にセラミックグリーンシート10を移動させることができるように構成された支持手段(この実施形態ではXYテーブル)11と、パルス状のレーザビームを放射するレーザ光源1と、レーザ光源1から放射されたレーザビーム2を通過させて、セラミックグリーンシート10の所定の位置を除去して貫通孔15(図2(b))を形成することが可能で、かつ、キャリアフィルム20の一部のみを除去してキャリアフィルム20には未貫通の有底穴20aが形成される(すなわち、貫通孔は形成されない)ようなエネルギーを有する複数個のレーザビーム2aに分光する回折格子3と、回折格子3を通過し、分光されたレーザビーム2aを所定の反射角度で反射させるガルバノスキャンミラー4と、ガルバノスキャンミラー4により所定の反射角度で反射されたレーザビーム2aを個々に集光する集光レンズ5とを備えており、集光レンズ5を通過して集光されたレーザビームが、XYテーブル11上のセラミックグリーンシート10のキャリアフィルム20により支持されていない方の面(上面)に照射されるように構成されている。
【0025】
この加工装置は、さらに、レーザ光源1を駆動するレーザ光源駆動手段6、ガルバノスキャンミラー4の反射角度を変化させるガルバノスキャンミラー駆動手段7と、XYテーブル11を所定の方向に移動させて、その上に支持されたセラミックグリーンシート10を所定の方向に移動させるためのテーブル駆動手段(移動手段)12とを備えている。
【0026】
また、この加工装置においては、レーザ光源1として、パルス幅の短いCO2レーザを放射するレーザ光源が用いられている。また、回折格子3、ガルバノスキャンミラー4、及び集光レンズ5には、CO2レーザの吸収が少ないZnSeが用いられている。
【0027】
なお、この加工装置において、回折格子3は、レーザビーム2を、平面形状(照射面の形状)が略円形になるように、複数個に分光することができるように構成されている。
【0028】
次に、上記のように構成されたセラミックグリーンシートの加工装置を用いて、キャリアフィルム20により一面が支持されたセラミックグリーンシート10に貫通孔を形成する方法について、図1及び図2(a),(b)を参照しつつ説明する。
【0029】
(1)まず、NiCuZnフェライトを主成分とするセラミックに酢酸ビニル系バインダを添加し、ボールミルで混合した後、ドクターブレード法により、図2(a)に示すように、PET製で厚さが50μmのキャリアフィルム20上に、厚さが25μmのシート状に成形して、セラミックグリーンシート10を形成し、このセラミックグリーンシート10を、キャリアフィルム20とともに支持手段(XYテーブル)11上に載置する。
(2)そして、定格出力300Wの穴あけ用のCO2レーザ発生装置(図1)のレーザ光源1から放射されたパルス状のレーザビーム2を、回折格子3を通過させて、セラミックグリーンシート10の所定の位置を除去して貫通孔15(図2(b))を形成することが可能で、かつ、キャリアフィルム20の一部のみを除去してキャリアフィルム20に有底穴20aを形成することができるような(すなわち、貫通孔が形成されないような)エネルギーを有する複数個のレーザビーム2aに分光する。
(3)それから、分光されたパルス状のレーザビーム2aを、ガルバノスキャンミラー4で反射させてセラミックグリーンシート10のキャリアフィルム20により支持されていない方の面(上面)に照射し、セラミックグリーンシート10を貫通し、キャリアフィルム20の途中にまで達する穴30を形成する(すなわち、穴30は、セラミックグリーンシート10に形成された貫通孔15と、キャリアフィルム20に形成された有底穴20aから構成されている)。これにより、セラミックグリーンシート10の所定の位置が除去され、図2(b)に示すように、セラミックグリーンシート10に貫通孔15が形成されるとともに、キャリアフィルム20には未貫通の有底穴20aが形成される。
(4)それからさらに、ガルバノスキャンミラー4の反射角度を変化させて、レーザビーム2のセラミックグリーンシート10への照射を繰り返し、セラミックグリーンシート10の異なる所定の位置に貫通孔15を形成する。
(5)そして、(4)の、ガルバノスキャンミラー4の反射角度を変化させてレーザビーム2をセラミックグリーンシート10に照射する工程を繰り返し、セラミックグリーンシート10の所定の領域(ガルバノスキャンミラーの反射角度を変えることにより、異なる位置に貫通孔15を形成することができる領域)のすべてに貫通孔15を形成した後、XYテーブル11を所定量だけ移動させ、前記(2)〜(4)の工程を繰り返して、セラミックグリーンシート10の全体の所定の位置に複数個の貫通孔15を形成する。
【0030】
この実施形態の加工方法によれば、回折格子3を通過させて分光した、セラミックグリーンシート10の所定の位置を除去して貫通孔15を形成することが可能で、かつ、キャリアフィルム20の一部のみを除去してキャリアフィルム20に有底穴20aを形成することができるようなエネルギーを有する複数個のレーザビーム2aを、キャリアフィルム20により一面が支持されたセラミックグリーンシート10に照射するようにしているので、キャリアフィルム20を貫通することなく、セラミックグリーンシート10にのみ確実に貫通孔15を効率よく形成することができる。
【0031】
なお、従来のレーザ加工法では、レーザ発振器の出力を0.4mJまで落として加工することが必要で、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートにのみ貫通孔を形成することができる割合が、68%であったのに対して、上記実施形態の方法によれば、レーザ発振器の出力を2.3mJに維持して加工を行うことが可能であり、また、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートにのみ貫通孔を形成することができる割合は100%であった。
【0032】
次に、上述のように、セラミックグリーンシート10にのみ貫通孔15が形成され、キャリアフィルム20には未貫通の有底穴20aが形成された状態のセラミックグリーンシート10に導電ペーストを所定のパターンで配設した後、セラミックグリーンシート10をキャリアフィルム20から剥離する際の挙動について説明する。
【0033】
まず、図3に示すように、下面側がキャリアフィルム20により支持されて、XYテーブル11上に支持されたセラミックグリーンシート10の、貫通孔15を含む領域に、導電ペースト14をスクリーン印刷法により印刷する。このとき、導電ペースト14は、セラミックグリーンシート10の貫通孔15及びキャリアフィルム20の有底穴20aに充填される。
【0034】
そして、図4に示すように、キャリアフィルム20とともにセラミックグリーンシート10をXYテーブル11上から持ち上げた状態でも、導電ペースト14は、セラミックグリーンシート10の貫通孔15及びキャリアフィルム20の有底穴20aに充填された状態で保持される。
【0035】
その後、図5に示すように、セラミックグリーンシート10をキャリアフィルム20から剥離させる段階では、導電ペースト14が、セラミックグリーンシート10の貫通孔15に充填された部分と、キャリアフィルム20の有底穴20aに充填された部分の境界部で切断され、貫通孔15内に導電ペースト14が確実に充填された状態のセラミックグリーンシート10が得られる。したがって、このセラミックグリーンシートを積層することにより、内部導体が確実に接続された信頼性の高い電子部品を得ることが可能になる。
【0036】
なお、上記実施形態では、平面形状が円形の貫通孔を形成する場合を例にとって説明したが、本願発明において、貫通孔の形状に特別の制約はなく、方形、方形以外の多角形、楕円形など、回折格子の設計パターンを変更することにより、種々の形状の貫通孔を形成することができる。
【0037】
また、本願発明は、貫通孔を形成すべきセラミックグリーンシートの種類や用途に特別の制約はなく、例えば、積層型コイル部品や積層基板などに用いられるセラミックグリーンシートにビアホール用の貫通孔を形成する場合などに広く適用することが可能である。
【0038】
また、上記実施形態では、CO2レーザを用いているが、本願発明においては、他種類のレーザを用いることも可能である。
【0039】
また、上記実施形態では、パルス状のレーザビームを用いているが、場合によっては、パルス状のレーザビーム以外のレーザビームを用いることも可能である。また、前記実施形態では、分光された後のレーザビームのエネルギーの大きさを、セラミックグリーンシートを貫通するとともに、キャリアフィルムにも未貫通の有底穴が形成されるような大きさとした場合について説明したが、場合によっては、分光された後のレーザビームのエネルギーの大きさを、セラミックグリーンシートには貫通孔が形成されるが、キャリアフィルムには、貫通孔はもちろん、有底穴も形成されないような大きさとして、セラミックグリーンシートにのみ貫通孔を形成するように構成することも可能である。
【0040】
[実施形態2]
図6は、本願発明の他の実施形態にかかるセラミックグリーンシートの加工方法に用いた加工装置の概略構成を示す図である。
【0041】
この実施形態2の加工装置は、レーザビーム2が、先にガルバノスキャンミラー4で反射された後、回折格子3を通過して複数個のレーザビームに分光されるように構成されている。
【0042】
この実施形態2の加工装置は、回折格子3をガルバノスキャンミラー4と集光レンズ5の間に配設した点を除いては、上記実施形態1で用いた加工装置と同様に構成されており、また、かかる加工装置を用いてセラミックグリーンシートを加工する場合の加工方法も同様であることから、上記実施形態1の相当部分の説明を援用して、ここではその説明を省略する。なお、図6において、図1と同一符号を付した部分は、同一又は相当部分を示している。
この図6の加工装置を用いてセラミックグリーンシートを加工した場合にも、上記実施形態1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0043】
なお、本願発明は、上記の実施形態1,2によって限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0044】
【発明の効果】
上述のように、本願発明(請求項1)のセラミックグリーンシートの加工方法は、レーザ光源から放射されたパルス状のレーザビームを、回折格子を通過させて、複数個のレーザビームに分光するとともに、セラミックグリーンシートは貫通するが、キャリアフィルムは貫通しないようなエネルギーに調整し、この分光され、エネルギーが調整された複数個のレーザビームを、セラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面に照射するようにしているので、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートにのみ確実に貫通孔を効率よく形成することが可能になる。すなわち、本願発明の方法によれば、レーザビームを回折格子により分光して、分光された個々のレーザビームのエネルギーレベルを上記のように所定のレベルまで低下させるようにしているので、レーザ発振器の出力を低下させることが不要になり、レーザ発振器を安定した出力で稼働させることが可能になる。したがって、安定した加工を行い、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートにのみ確実に貫通孔を効率よく形成することが可能になる。
また、ガルバノスキャンミラーの反射角度を変化させて、レーザビームのセラミックグリーンシートへの照射を繰り返すようにしているので、セラミックグリーンシートの所定の領域では、セラミックグリーンシートを移動させることなく、複数の位置で、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートにのみ効率よく複数個の貫通孔を形成することが可能になる。
【0045】
また、請求項2のセラミックグリーンシートの加工方法のように、ガルバノスキャンミラーで反射されたレーザビームを、回折格子を通過させて、複数個のレーザビームに分光するとともに、セラミックグリーンシートは貫通するが、キャリアフィルムは貫通しないようなエネルギーに調整し、この分光され、エネルギーが調整された複数個のレーザビームを、セラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面に照射するようにした場合にも、上記請求項1の構成の場合と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、請求項3のセラミックグリーンシートの加工方法のように、セラミックグリーンシートを移動可能とすることにより、位置的な制約なしに広い領域で、セラミックグリーンシートの任意の位置に、キャリアフィルムを貫通することなく、複数個の貫通孔を確実に形成することが可能になり、本願発明をより実効あらしめることができる。
【0047】
また、請求項4のセラミックグリーンシートの加工方法のように、光学系、特に、回折格子に、レーザビームの透過率の高い材料を用いた場合、エネルギー効率を向上させることが可能になり、キャリアフィルムを貫通することなく、セラミックグリーンシートに複数個の貫通孔を効率よく形成することが可能になる。
【0048】
また、請求項5のセラミックグリーンシートの加工方法のように、レーザとして、CO2レーザを用いた場合、セラミックグリーンシートを構成するセラミック自体による吸収が少ないため、セラミック自体の変質などによる特性のばらつきを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の一実施形態(実施形態1)にかかるセラミックグリーンシートの加工方法に用いた加工装置の概略構成を示す図である。
【図2】 本願発明の一実施形態(実施形態1)において、図1の加工装置を用いてセラミックグリーンシートを加工する方法を説明するための図であり、(a)は加工前の状態を示す断面図、(b)は加工後の、セラミックグリーンシートに貫通孔が形成され、キャリアフィルムに有底穴が形成された状態を示す断面図である。
【図3】 貫通孔に導電ペーストが充填された状態のキャリアフィルム付きのセラミックグリーンシートを示す断面図である。
【図4】 図3のキャリアフィルム付きのセラミックグリーンシートをXYテーブルから持ち上げた状態を示す断面図である。
【図5】 図3のセラミックグリーンシートをキャリアフィルムから剥離した状態を示す断面図である。
【図6】 本願発明の他の実施形態(実施形態2)にかかるセラミックグリーンシートの加工方法に用いた加工装置の概略構成を示す図である。
【図7】 従来の方法でセラミックグリーンシートに貫通孔を形成した状態を示す断面図である。
【図8】 従来の方法で貫通孔を形成したセラミックグリーンシートに導電ペーストを印刷した状態を示す断面図である。
【図9】 従来の方法で貫通孔を形成したセラミックグリーンシートに導電ペーストを印刷した後、キャリアフィルムとともにセラミックグリーンシートをテーブルから持ち上げた状態を示す断面図である。
【図10】 導電ペーストを印刷したセラミックグリーンシートをキャリアフィルムから剥離した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 レーザ光源
2 レーザビーム
2a 分光されたレーザビーム
3 回折格子
4 ガルバノスキャンミラー
5 集光レンズ
6 レーザ光源駆動手段
7 ガルバノスキャンミラー駆動手段
10 セラミックグリーンシート
11 支持手段(XYテーブル)
12 テーブル駆動手段
14 導電ペースト
15 貫通孔
20 キャリアフィルム
20a 有底穴
30 穴

Claims (5)

  1. キャリアフィルムにより一面が支持されたセラミックグリーンシートに複数個の貫通孔を形成するためのセラミックグリーンシートの加工方法であって、
    パルス状のレーザビームを放射するレーザ光源と、レーザビームを複数個のレーザビームに分光する回折格子と、レーザビームを所定の反射角度で反射させるガルバノスキャンミラーと、ガルバノスキャンミラーにより反射されたレーザビームを個々に集光する集光レンズと、セラミックグリーンシートを所定の位置関係となるように配設し、
    レーザ光源から放射されたパルス状のレーザビームを、回折格子を通過させることにより、複数個のレーザビームに分光するとともに、セラミックグリーンシートは貫通するが、キャリアフィルムは貫通しないようなエネルギーに調整し、
    分光され、エネルギーが調整された複数個のパルス状のレーザビームを、ガルバノスキャンミラーで反射させ、セラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面に照射して、セラミックグリーンシートに複数個の貫通孔を形成した後、
    ガルバノスキャンミラーの反射角度を変化させて、セラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面へのレーザビームの照射を繰り返し、セラミックグリーンシートの異なる所定の位置に複数個の貫通孔を形成すること
    を特徴とするセラミックグリーンシートの加工方法。
  2. キャリアフィルムにより一面が支持されたセラミックグリーンシートに複数個の貫通孔を形成するためのセラミックグリーンシートの加工方法であって、
    パルス状のレーザビームを放射するレーザ光源と、レーザビームを所定の反射角度で反射させるガルバノスキャンミラーと、レーザビームを複数個のレーザビームに分光する回折格子と、複数個に分光されたレーザビームを個々に集光する集光レンズと、セラミックグリーンシートを所定の位置関係となるように配設し、
    レーザ光源から放射されるパルス状のレーザビームを、ガルバノスキャンミラーで反射させた後、
    ガルバノスキャンミラーで反射されたレーザビームを、回折格子を通過させることにより、複数個のレーザビームに分光するとともに、セラミックグリーンシートは貫通するが、キャリアフィルムは貫通しないようなエネルギーに調整し、
    分光され、エネルギーが調整された複数個のパルス状のレーザビームを、セラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面に照射して、セラミックグリーンシートに複数個の貫通孔を形成した後、
    ガルバノスキャンミラーの反射角度を変化させて、セラミックグリーンシートのキャリアフィルムにより支持されていない方の面へのレーザビームの照射を繰り返し、セラミックグリーンシートの異なる所定の位置に複数個の貫通孔を形成すること
    を特徴とするセラミックグリーンシートの加工方法。
  3. 前記セラミックグリーンシートを移動させながら、パルス状のレーザビームの照射を繰り返すことを特徴とする請求項1又は2記載のセラミックグリーンシートの加工方法。
  4. 前記回折格子が、レーザビームの透過率の高い材料を用いて形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックグリーンシートの加工方法。
  5. 前記レーザ光源から放射されるレーザが、CO2レーザであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックグリーンシートの加工方法。
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