上述したエアロバイクやトレッドミルのような運動補助装置では、膝関節の屈伸を伴ったり、膝関節に使用者の自重よりも大きな負荷が作用したりするから、使用者が膝痛を持つ場合には採用することができない。一方、乗馬を模擬する運動補助装置では、使用者が座席に着座するから膝への負担はなく、また本発明者らがPET(ブドウ糖に陽電子を放出する物質を組み込んだ薬剤を静脈注射し、コンピュータトモグラフィによって画像化する技術)で計測した結果によれば、大腿部の内転筋を中心とした部位での糖代謝の増加が見られているが、大腿部の内転筋は大腿部の伸筋群に比較すると体積が半分程度であって、糖代謝の促進効果については大腿部の伸筋群を筋収縮させる場合に比較すると効果が小さく、しかも乗馬運動を模擬する装置を用いて大腿部の筋肉に負荷をかけようとすれば、鞍状の座席に載った使用者が座席を大腿部で挟み込むように筋肉を緊張させる必要があるから、この目的で使用する場合には負担の大きい運動になる。さらに、膝痛を改善するために膝周辺の筋肉を強化する目的では使用することができない。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、膝痛を持つ使用者でも大腿部の筋肉の筋収縮を伴う運動を可能とし、結果的に生活習慣病の改善に寄与する運動補助装置を提供することにある。
請求項1の発明は、定位置に設置される架台と、使用者の自重の少なくとも一部が大腿部を含む脚部に作用する形で使用者の身体の一部を支持するように架台に取り付けられた支持部と、使用者の足位置と重心位置との相対位置の変位により使用者の自重で脚部に作用する負荷が変化するように支持部を架台に対して可動に結合し、かつ足位置と重心位置との相対位置の変位方向が膝関節の屈伸方向に制限されるように支持部の可動方向を制限する結合機構部とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、使用者の自重の一部を支持部で支えた状態で大腿部を含む脚部に使用者の一部の自重を作用させることによって大腿部を含む脚部の筋肉に負荷を与えることができ、比較的軽い負荷で脚部の筋収縮を促すことができる。すなわち、軽い負荷ながらも糖代謝を促進するのに有効である大腿部の筋収縮を促すから、筋力の低下や関節痛などによって運動機能が低下している使用者でも容易に使用することができる上に継続的に利用しやすく、継続的に使用すれば生活習慣病の改善に寄与する。しかも、支持部が架台に対して可動に結合され、かつ足位置と重心位置との相対位置の変位方向が膝関節の屈伸方向に制限されるから、膝の中心と第2指とを結ぶ方向に制限して負荷をかけることが可能になり、このような方向に作用する負荷であれば変形性膝関節症のように膝関節に痛みがある使用者であっても、痛みや症状の悪化のような悪影響を与えることなく使用することが可能になる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記結合機構部が前記支持部の可動方向を足位置と重心位置との相対位置の変位方向が片脚ずつの膝関節の屈伸方向になるように制限することを特徴とする。
この構成によれば、片脚ずつ負荷をかけることができ、たとえば一方の脚を休ませることが可能になるとともに、両脚を揃えて両脚に均等に負荷を作用させる場合に比較すると最大負荷を高めることが可能になる。また、一般に両脚を揃えて負荷を与えると左右の筋力差や左右の膝関節の痛みの程度の差異などによって一方の脚に他方の脚よりも大きい負荷が作用して、左右の脚に均等に負荷を与えることができない場合があるが、片脚ずつに負荷を与えることによって、両脚に均等に負荷を与えることが可能になる。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記結合機構部が前記支持部の可動範囲を膝関節の屈曲範囲が伸展位置から45度までの範囲になるように制限することを特徴とする。
この構成によれば、変形性膝関節症のように関節に痛みがある場合でも痛みや症状の悪化のような悪影響を与えることなく使用することが可能になる。
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記支持部が上端部において使用者の臀部を支持する支柱体であって、支柱体の下端部が前記結合機構部を介して前記架台に対して揺動可能に結合されていることを特徴とする。
この構成によれば、使用者が支柱体の上端部に臀部を載せることによって使用者の自重の一部が支柱体により支えられ、この状態で支柱体を揺動させることによって使用者の大腿部を含む脚部に負荷を与えて筋収縮を促すことができる。すなわち、スクワット運動に類似した運動になるが、使用者の一部の自重は支柱体によって支持されるから膝関節への負担が少なく、変形性膝関節症などであって膝に痛みがある場合でも使用可能になる。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記結合機構部が駆動源を備え、前記支柱体を駆動源の駆動力により強制的に揺動させることを特徴とする。
この構成によれば、使用者は支柱体の上に臀部を載せているだけで支柱体を駆動源によって揺動させることができるから、使用者が積極的に身体を動作させることなく使用者の脚部への負荷の大きさを強制的に変化させることができ、いわゆる他動的な運動によって筋収縮を促すことができる。すなわち、筋力の低下によって歩行に支障があるような使用者であっても使用することが可能になる。また、支柱体を駆動源によって強制的に揺動させるから、能動的に努力する必要なく繰り返し負荷をかけることができる。
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記支持部が、上端部において使用者の臀部を支持する支柱体と、使用者の足を載せる足置台とからなり、支柱体の下端部が前記結合機構部を介して前記架台に対して揺動可能に結合され、足置台は前記結合機構部とは別の結合機構部を介して架台に対して水平方向と垂直方向との少なくとも一方向に移動可能に結合されていることを特徴とする。
この構成によれば、使用者が支柱体の上端部に臀部を載せることによって使用者の自重の一部が支柱体により支えられ、この状態で支柱体を揺動させることによって使用者の大腿部を含む脚部に負荷を与えて筋収縮を促すことができる。しかも、足置台の水平方向と垂直方向との少なくとも一方向における位置が移動可能であるから、使用者の脚長に応じて足置台の位置を調節したり、支柱体の揺動に伴って足置台の位置を変化させたりすることが可能になる。とくに、支柱体の揺動に伴って足置台の位置を変化させる場合には、支柱体が揺動しても膝の屈曲角度が変化しないように足置台の位置を変化させることが可能であって、この場合には等尺性収縮に近い運動が可能になるから、膝関節の屈伸による膝への負担が少なくなる。つまり、使用者の一部の自重が支柱体によって支持されるから膝関節への負担が少ないのはもちろんのこと、膝関節の屈伸を伴わずに筋収縮が可能になるから、変形性膝関節症などであって膝に痛みがある場合でも使用可能になる。
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記結合機構部が、前記支柱体を強制的に揺動させる第1の駆動源と、前記足置台を強制的に移動させる第2の駆動源とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、使用者は支柱体の上に臀部を載せているだけで支柱体が第1の駆動源によって揺動させることができるから、使用者が積極的に身体を動作させることなく使用者の脚部への負荷の大きさを強制的に変化させることができ、いわゆる他動的な運動によって筋収縮を促すことができる。すなわち、筋力の低下によって歩行に支障があるような使用者であっても使用することが可能になる。しかも、足置台も第2の駆動源によって移動させることができるから、第1の駆動源と第2の駆動源との関係を適宜に調節することによって、使用者の脚部への負荷の大きさを変化させたり、膝関節への負荷を少なくしながらも大腿部の筋収縮を促したりすることが可能になる。
請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記第1および第2の駆動源の動作を同期させる制御部が付加されたことを特徴とする。
この構成によれば、第1および第2の駆動源の動作を同期させたことによって、使用者の脚部に作用する負荷の大きさを変化させながらも膝関節の屈曲角度がほとんど変化しないように動作させることが可能になる。その結果、膝関節に痛みを有している使用者であっても、膝関節の屈伸を伴うことなく使用することが可能になる。
請求項9の発明は、請求項4ないし請求項8の発明において、前記支柱体が伸縮自在であって、伸縮長を強制的に変化させる駆動源を備えることを特徴とする。
この構成によれば、支柱体の伸縮長の変化によって膝関節の屈曲角度を変化させることができるから、使用者の脚部に作用させる負荷の大きさを調節することができる。また、使用者の脚長に応じて使用者の臀部の位置を調節することが可能になる。
請求項10の発明は、請求項4ないし請求項9の発明において、前記支柱体が、前記結合機構部を介して前記架台に結合されるポスト部と、ポスト部の上端部に配置され使用者の臀部を載せるシート部と、ポスト部に対するシート部の平行移動と回転移動との少なくとも一方を許容する形でポスト部に対してシート部を結合する保持機構部とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、支柱体を構成しているポスト部とシート部とが保持機構部を介して移動可能に結合されているから、支柱体が揺動する際に、シート部が移動することによって使用者の重心位置の変化を大きくすることができ、たとえば使用者の脚部に作用する負荷が増加する方向にポスト部が傾くときに、シート部の移動によって使用者の重心位置をずらすようにすれば、シート部が移動しない場合よりも脚部に作用する負荷を増加させることが可能になる。また、逆に脚部に作用する負荷を軽減するようにシート部を移動させることも可能である。
請求項11の発明は、請求項10の発明において、前記保持機構部が前記ポスト部に対して前記シート部を1つの軸回りに傾斜可能として成ることを特徴とする。
この構成によれば、たとえばポスト部が傾いたときにポスト部に対してシート部も傾けるようにすれば、シート部を傾けない場合に比較して脚部に作用する負荷が増減する。しかも、シート部の移動は1つの軸回りで生じるから、簡単な構造で実現できる。
請求項12の発明は、請求項11の発明において、前記保持機構部が駆動源を備え、前記シート部の傾斜角度を駆動源の駆動力により強制的に変化させることを特徴とする。
この構成によれば、支柱部の揺動時にシート部の傾斜角度を強制的に変化させることによって、使用者の脚部に作用する負荷の大きさを時間経過に伴って変化させることができる。
請求項13の発明は、請求項10の発明において、前記保持機構部が前記ポスト部の長手方向に交差する面内で前記シート部を一方向にスライド可能として成ることを特徴とする。
この構成によれば、たとえばポスト部が傾いたときにポスト部に対してシート部をスライドさせるようにすれば、シート部をスライドさせない場合に比較して脚部に作用する負荷が増減する。しかも、シート部の移動は一方向のスライドであるから、簡単な構造で実現できる。
請求項14の発明は、請求項13の発明において、前記保持機構部が駆動源を備え、前記シート部を駆動源の駆動力によりスライド位置を強制的に変化させることを特徴とする。
この構成によれば、支柱部の揺動時にシート部のスライド位置を強制的に変化させることによって、使用者の脚部に作用する負荷の大きさを時間経過に伴って変化させることができる。
請求項15の発明は、請求項6の発明において、前記支柱体が、前記結合機構部を介して前記架台に結合されるポスト部と、ポスト部の上端部に配置され使用者の臀部を載せるシート部と、ポスト部に対するシート部の平行移動と回転移動との少なくとも一方を許容する形でポスト部に対してシート部を結合する保持機構部とを備え、前記保持機構部が、支柱体を強制的に揺動させる第1の駆動源と、前記足置台を強制的に移動させる第2の駆動源とを備え、支柱体は伸縮自在であって伸縮長を強制的に変化させる第3の駆動源を備え、保持機構部がポスト部に対してシート部を強制的に移動させる第4の駆動源を備えることを特徴とする。
この構成によれば、使用者は支柱体の上に臀部を載せているだけで支柱体を駆動源によって揺動させることができるから、使用者が積極的に身体を動作させることなく使用者の脚部への負荷の大きさを強制的に変化させることができ、いわゆる他動的な運動によって筋収縮を促すことができる。すなわち、筋力の低下によって歩行に支障があるような使用者であっても使用することが可能になる。また、4個の駆動源を備えるから適宜の駆動源の動作を組み合わせることによって、負荷の大きさを変化させたり、負荷を時間経過に伴って変化させたりすることが可能であって、運動の自由度が高くなり使用者の必要に応じた運動が可能になる。
請求項16の発明は、請求項15の発明において、前記第1ないし第4の駆動源のうちの少なくとも2個の駆動源の動作を同期させる制御部が付加されたことを特徴とする。
この構成によれば、2個の駆動源の動作を同期させることによって、たとえば膝関節の屈曲角度を変えることなく脚部への負荷の大きさを変化させるように動作させることが可能になり、膝関節に傷みがあるような使用者であっても使用可能になる。
請求項17の発明は、請求項7または請求項16の発明において、前記制御部が、使用者の膝関節の屈曲角度を変化させずに使用者の脚部に作用する負荷を変化させるように前記第1の駆動源と前記第2の駆動源とを同期させて駆動することを特徴とする。
この構成によれば、使用者の膝関節の屈曲角度を変化させないように第1の駆動源と第2の駆動源とを同期させて駆動するから、他動的な運動によって使用者は積極的に身体を動かすことなく軽負荷で運動することができる上に、膝関節の屈曲角度を変化させずに使用者の脚部に作用する負荷を変化させることができ、膝に痛みがあるような使用者でも使用可能になる。
請求項18の発明は、請求項16の発明において、前記制御部が、使用者の膝関節の屈曲角度を変化させずに使用者の脚部に作用する負荷を変化させるように前記第1の駆動源と前記第3の駆動源とを同期させて駆動することを特徴とする。
この構成によれば、使用者の膝関節の屈曲角度を変化させないように第1の駆動源と第3の駆動源とを同期させて駆動するから、他動的な運動によって使用者は積極的に身体を動かすことなく軽負荷で運動することができる上に、膝関節の屈曲角度を変化させずに使用者の脚部に作用する負荷を変化させることができ、膝に痛みがあるような使用者でも使用可能になる。
請求項19の発明は、請求項17または請求項18の発明において、前記制御部が、前記支柱体が前記架台に対して垂直に立つ位置と垂直に立つ位置に対して5度以下の傾斜角度で傾斜する位置との間で往復移動するように揺動させるとともに、前記支柱体が1秒間に往復移動する往復回数を2回以下に設定し、膝関節の屈曲範囲を伸展位置から40度以内に設定していることを特徴とする。
この構成によれば、使用者が変形性膝関節症であっても膝に強い痛みを伴わずに使用することができる条件を規定するものであり実験結果に基づくものである。また、膝関節を伸展位置から40度までの範囲で屈曲させても膝痛は生じることが少なく、しかも伸展位置から屈曲させる角度が大きくなるほど支柱体に臀部を載せやすくなる。そこで、膝痛の発生しない上限値として40度を規定している。
請求項20の発明は、請求項19の発明において、前記往復回数と前記傾斜角度とにそれぞれ規定の重みを設定した重み付き線形和を前記負荷の推定値に用い、前記制御部は、負荷の目標値と往復回数とが与えられると目標値を前記推定値に当て嵌めて求められる傾斜角度を前記支柱体の傾斜角度とすることを特徴とする。
この構成によれば、支柱体を揺動させる際の往復回数と傾斜角度との重み付き線形和である負荷の推定値を用いることにより、使用者の脚に瞬時的に作用する最大負荷を推定することができ、最大負荷を越えないように支柱体の最大傾斜角度を制御することで、膝痛を持つ使用者であっても膝に痛みを伴わないように使用することが可能になる。加えて、遅い速度(往復回数)でしか使用することができない使用者であっても、望ましい負荷量を与えるために必要な傾斜角度を簡単に設定することができる。
請求項21の発明は、請求項1ないし請求項20の発明において、前記支持部に設けられ使用者の自重のうち脚部に作用する負荷を反映する荷重を検出する荷重センサと、荷重センサにより検出される負荷の時間変化を使用者に実時間で通知する荷重変化通知手段とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、使用者が脚部に作用する負荷の時間変化を実時間で知ることができるから、適正な負荷が得られているか否かを容易に判断することができ、負荷に過不足があるときには、装置を調節したり体の位置をずらすことによって適正な負荷の運動を行うことが可能になる。
請求項22の発明は、請求項21の発明において、使用者の属性を入力する入力部と、入力部から入力された使用者の属性から適正な負荷の範囲を求める表示情報処理部と、入力部から入力された使用者の属性および表示情報処理部で得られた負荷の範囲を表示可能な表示部とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、使用者の体重、年齢、性別、疾患の有無や疾患名、運動歴などの属性に応じて求めた適正な負荷の範囲が表示されるから、使用者が適正な負荷の範囲を知ることによって負荷の過不足を防止することができる。
請求項23の発明は、請求項5、請求項7、請求項8、請求項9、請求項12、請求項13、請求項15、請求項16、請求項17、請求項18の発明において、前記支持部に設けられ使用者の自重のうち脚部に作用する負荷を反映する荷重を検出する荷重センサと、荷重センサで検出した荷重から求めた脚部への負荷を規定した目標範囲内に保つように前記駆動源を制御するフィードバック処理部とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、駆動源がフィードバック制御されることによって過不足のない負荷が自動的に得られる。
請求項24の発明は、請求項23の発明において、使用者の属性を入力する入力部を備え、前記フィードバック処理部は入力部から入力された使用者の属性に応じて脚部への負荷の目標範囲を決定することを特徴とする。
この構成によれば、使用者の体重、年齢、性別、疾患の有無や疾患名、運動歴などの属性に応じて目標範囲が自動的に決定されるから、使用者に応じた適正な負荷を与えることができる。とくに、使用者の体重を入力するとともに、荷重センサにより求めた荷重から求められる脚部(主として大腿部)への負荷の体重に対する比を求め、この比について目標範囲を設定すれば、各使用者の体重差にかかわりなく適正な目標範囲を設定することが可能になる。
請求項25の発明では、請求項6、請求項7、請求項8、請求項15、請求項16、請求項17、請求項18の発明において、前記足置台の上面は前方に下り傾斜していることを特徴とする。
この構成によれば、足置台の上面が前方に下り傾斜していることによって、脚部に荷重がかかったときに脚部の前面側と後面側との筋肉群がともに収縮するから、膝関節の伸展と屈曲に寄与する筋肉が同時に収縮し関節の動きが固定されて膝関節に作用する剪断力が軽減され、結果的に膝痛をほとんど誘発せずに脚部の広範囲の筋肉を収縮させることが可能になる。
請求項26の発明では、請求項6、請求項7、請求項8、請求項15、請求項16、請求項17、請求項18の発明において、前記足置台は左右一対設けられ、足置台の上面は互いに近付く向きと互いに遠ざかる向きとのいずれか一方に下り傾斜していることを特徴とする。
この構成によれば、いわゆるO脚やX脚などであって膝関節の両側の骨の間隔が膝関節の内側または外側において他側よりも狭くなっているような場合に、間隔の狭くなっている部分を拡げることができ、膝関節を形成している骨の接触による痛みの発生を抑制することが可能になる。
請求項27の発明は、請求項25または請求項26の発明において、前記足置台が、載置された使用者の足の位置ずれを防止する位置ずれ防止部材を備えることを特徴とする。
この構成によれば、足置台を傾斜させている構成において位置ずれ防止部材を足置台に設けているから、足置台に対する足位置のずれを防止することができ、所期の目的に沿った運動が可能になる。
本発明の構成によれば、使用者の自重の一部を支持部で支えた状態で大腿部を含む脚部に使用者の一部の自重を作用させることによって大腿部を含む脚部の筋肉に負荷を与えることができ、比較的軽い負荷で脚部の筋収縮を促すことができる。すなわち、軽い負荷ながらも糖代謝を促進するのに有効である大腿部の筋収縮を促すから、筋力の低下や関節痛などによって運動機能が低下している使用者でも容易に使用することができ、継続的に使用すれば生活習慣病の改善に寄与する。しかも、支持部が架台に対して可動に結合され、かつ足位置と重心位置との相対位置の変位方向が膝関節の屈伸方向に制限されるから、膝の中心と第2指とを結ぶ方向に制限して負荷をかけることが可能になり、このような方向に作用する負荷であれば変形性膝関節症のように膝関節に痛みがある使用者であっても、痛みや症状の悪化のような悪影響を与えることなく使用することが可能になる。
(実施形態1)
本実施形態は、図1に示すように、床のような設置面の定位置に設置される架台1を有し、使用者の身体の一部を支持する支持部として、使用者の臀部を載せる支柱体2と使用者が足を載せる足置台3とを、架台1の上に配置した例を示す。支柱体2と足置台3とは、架台1に対してそれぞれ結合機構部4,5を介して取り付けられている。また、結合機構部4,5にはそれぞれ駆動源としてのモータ6,7が設けられ、モータ6,7によって支柱体2と足置台3との動作をそれぞれ制御する。足置台3は左右一対設けられ、モータ7は各足置台3ごとに設けられる。
支柱体2は、支柱となるポスト部21を有し、ポスト部21の上端部には保持機構部23を介して使用者の臀部を載せるシート部22が結合される。シート部22は自転車等におけるサドルと同様の形状であって、平面視では前端部(使用者がシート部21に着座したときの前側)が後端部よりも狭幅になる三角形状に形成されている。ポスト部21の下端部は結合機構部4に連結される。
結合機構部4は、前後方向および左右方向の回転軸を有し、たとえば左右方向の回転軸の回りでポスト部21を前後に起伏可能とし(つまり、架台1に垂直に立つ位置と、この位置に対して傾く位置との間で反復して移動し)、かつ左右方向の回転軸を含むジョイント部分を前後方向の軸回りで左右方向に起伏可能とする構成を採用している。したがって、ポスト部21は下端部を支点として前後左右に起伏可能になる。すなわち、結合機構部4は、2個のモータ6を用いてポスト部21を任意の方向に起伏可能としている。
また、ポスト部21は、下端部と上端部とを入れ子状に形成することによって伸縮可能に構成してあり、ポスト部21の長手方向の中間部には駆動源としてのモータ8が設けられる。このモータ8の回転によってポスト部21の伸縮長を可変にすることが可能になっている。さらに、ポスト部21とシート部22とを結合している保持機構部23にも駆動源としてのモータ9が設けられ、このモータ9はシート部22をポスト部21に対して前後方向に起伏させることが可能になっている。
一方、足置台3に対応する結合機構部5は、架台1の上に取り付けたパンタグラフ51を備え、パンタグラフ51の上に足置台3が結合される。結合機構部5にも駆動源としてのモータ7が設けられており、モータ7を回転させることによりパンタグラフ51を伸縮させて足置台3を上下に移動させることが可能になっている。
要するに、支柱体2はモータ6により前後左右に揺動可能であり、足置台3はモータ7により上下方向に移動可能であり、ポスト部21はモータ8により伸縮可能であり、さらにシート部22はモータ9によりポスト部21に対する前後方向の角度が調節可能になっている。支柱体2と足置台3とに対応するモータ6,7は各2個ずつ設けられるから、合計6個のモータ6〜9を制御することによって、上述の動作の組合せ動作が可能になる。図2に示すように、各モータ6〜9はマイクロコンピュータを主構成とする制御部10により制御される。制御部10には、適正な運動負荷を得るための各モータ6〜9の回転角度に関する時系列データが複数セット設定されており、時系列データの適宜セットを選択することによって所望の動作を行わせることが可能になっている。
上述した運動補助装置の一般的な使用形態では、一対の足置台3に片脚ずつ載せ、シート部22に着座した形で動作させる。シート部22に着座せずに各足置台3に片脚ずつ載せた状態での運動も可能であるが、本実施形態ではこの形態での使用については述べない。ここに、シート部22に着座した状態においては足置台3に足裏を接触させることが必要であって、足置台3の高さ位置とポスト部21の伸縮長との少なくとも一方を調節することによって、足置台3とシート部22との位置関係を使用者の脚長に応じて調節する。
動作の形態はどのモータ6〜9を駆動するかに応じて種々選択可能であるが、動作の際には原則的としてモータ6はつねに駆動され支柱体2が揺動する。また、支柱体2を単独で揺動させ、他のモータ7〜9を停止させておくことは可能であるが、後述するように、足置台3を駆動するモータ7とシート部22を駆動するモータ9との少なくとも一方は、支柱体2を駆動するモータ6と同期させて駆動するのが望ましい。
使用者がシート部22に着座した状態で支柱体2を揺動させると、使用者の足位置に対して使用者の重心位置が変位する。ここで、支柱体2を架台1の上面に対して垂直に位置させた状態から支柱体2を前方に倒すと、使用者の重心位置が前方に移動することによって大腿部を含む脚部に対して使用者の自重で作用する負荷が増加することになる。また、使用者の片脚側に支柱体2を倒すと、使用者の自重による負荷は主として支柱体2を倒した側の片脚に作用することになる。このように、使用者の自重の一部はシート部22で受けることによって、使用者の脚部に作用する負荷を軽減しながらも、支柱体2を起伏させることによって脚部(とくに、大腿部)に作用する負荷を変化させることが可能になる。換言すれば、負荷を与えることにより筋収縮を促し、結果的に筋代謝を促してインシュリン抵抗性の向上が期待できる。しかも、他の部位に比較して体積の大きい筋肉を備えた大腿部に負荷を作用させるから、他の部位に負荷を与える場合に比較して筋代謝が効率的に実現できる。
ところで、使用者が膝関節に痛みを持つような場合に、膝の中心と第2指とを結ぶ方向には膝関節をある程度屈伸させることが可能であるが、他の方向に屈伸させると強い痛みを生じたり、症状が悪化することがある。そこで、本実施形態では、支柱体2が起伏する方向(つまり、足置台3に載せた足の位置と使用者の重心位置との相対位置の変位方向)が、膝関節の屈伸方向に制限されるようにモータ6を駆動している。つまり、制御部10においてモータ6に関する時系列データは、支柱体2が膝関節の屈伸方向に起伏するように設定される。このように、結合機構部4の動作は支柱体2の起伏方向を制限する。また、モータ6を駆動に際しては、膝関節の屈伸範囲が伸展位置から45度までの範囲になるように支柱体2の可動範囲を制限している。このように、膝関節の捻れを伴わずに膝関節を屈伸させる方向を制限し、しかも膝関節の屈伸範囲(角度範囲)を制限しているから、変形性膝関節症のように関節に痛みがある使用者であっても、痛みの増加や症状の悪化のような悪影響を与えることなく使用することが可能になる。
ただし、上述のように、膝関節の屈伸方向を制限するために支柱体2の起伏方向を膝関節の屈伸方向に一致させるには、支柱体2の起伏方向を制御するだけではなく、足置台3の上での足位置および足先の向きを決めるか、足位置および足先の向きを適宜のセンサによって検出する必要がある。本実施形態では、足置台3の上に足位置および向きを決めるためのマークを表記してある。概略構成を図3に示す。図3では足置台3に足を載せることによって足位置と足先の向きとが決まることを表している。ここに、足位置と足先の向きとを固定するために、足置台3にスリッパあるいはサンダルの先端部のように足先を差し入れるトークリップ部を設けるようにすれば、さらに正確に位置を決めることが可能である。
ここにおいて、片脚にのみ負荷を与える場合には、一方の足置台3に片脚だけを載せればよく、両足にそれぞれ負荷を与える場合には各足置台3にそれぞれ片脚ずつを載せることになる。この状態において結合機構部4は、支柱体2において使用者Mの臀部を支持している部位と使用者Mの各足の第2指とをそれぞれ含む2面内で支柱体2を起伏させる。図3(a)のように支柱体2が架台1に対して略垂直に立っている状態では支柱体2が足置台3よりも多く使用者Mの体重を支え、図3(b)のように支柱体2が架台1に対して傾斜した状態では図3(a)の状態よりも使用者Mの体重によって足置台3にかかる荷重が大きくなる。つまり、図3(b)の状態では図3(a)の状態よりも使用者Mの自重によって大腿部に作用する負荷が大きくなる。図3(b)の状態においても、使用者Mの自重の一部は依然として支柱体2で支持しているから、使用者Mの全自重を負荷として脚部に作用させるスクワット運動に比較すると軽負荷にすることもでき、膝関節に障害を持つ場合でも脚部に作用する負荷を調節することによって使用することが可能になる。しかも、捻れを伴わずに膝関節を屈伸させることができるから、膝関節に痛みを持つ使用者Mであっても、膝関節の痛みを増加させたり症状を悪化させたりすることなく使用することが可能になる。
さらに、本実施形態の構成では片脚ずつ載せる一対の足置台3を設けることによって、支柱体2の起伏方向(可動方向)を足位置と重心位置との相対位置の変位方向が片脚ずつの膝関節の屈伸方向になるように制限している。つまり、使用者は脚を揃えるのではなく、脚をやや開いて使用するように構成されており、片脚ずつに負荷を作用させる場合に、支柱体2は前後方向に起伏するのではなく架台1に対して垂直方向に立つ位置と前右方向または前左方向に傾動する位置との間で起伏する。この動作によって、片脚ずつ負荷をかけることができ、たとえば一方の脚を休ませることが可能になるとともに、両脚を揃えて両脚に均等に負荷を作用させる場合に比較すると最大負荷を高める(たとえば、最大負荷を使用者の自重の50%以上とする)ことが可能になる。また、一般に両脚を揃えて負荷を与えると左右の筋力差や左右の膝関節の痛みの程度の差異などによって一方の脚に他方の脚よりも大きい負荷が作用して、左右の脚に均等に負荷を与えることができない場合があるが、片脚ずつに負荷を与えることによって、両脚に均等に負荷を与えることが可能になる。なお、足置台3を定位置に固定するか、使用者が足を揃えて架台1に足を置く場合には、支柱体2を前後方向に起伏させることによって、両脚に同時に負荷を与えることも可能である。
上述したように足置台3は架台1に対して上下方向に移動可能であって、足置台3の上下位置は支柱体2の起伏に同期(連動)するように制御される。つまり、図4(a)に示すように架台1に対して支柱体2が略垂直に立っている状態に対して、図4(b)に示すように架台1に対して支柱体2が傾斜すると足置台3を下方に移動させる。このような制御は、支柱体2を傾斜させるモータ6と足置台3を昇降させるモータ7との制御を同期させることによって可能になる。
このように架台1に対する支柱体2の傾斜角度が大きくなるほど足置台3を下方に移動させるようにすれば、膝関節の屈曲角度θをほとんど変化させることなく使用者の自重によって脚Pに作用する負荷を変化させることが可能になる。言い換えると、脚Pの筋肉を等尺性伸縮に近い状態で収縮させることが可能になり、膝への負担を小さくしながらも筋収縮を行わせることが可能になる。しかも、支柱体2と足置台3とはモータ6,7(第1の駆動源および第2の駆動源)により駆動されるから、他動的な運動によって使用者は積極的に身体を動かすことなく運動することができる。
さらに、架台1に対して支柱体2が略垂直に立っている状態から左右の一方の足置台3に向かって支柱体2を傾動させる際には、支柱体2を傾動させた向きに存在する足置台3のみを下方に移動させるのが望ましい。このような動作によって一方の脚Pにのみ効率よく負荷を与えることが可能になる。また、支柱体2を傾動させた向きに存在する足置台3とは反対の足置台3をやや上方に移動させるようにしてもよい。このような動作を取り入れると、使用者Mの体幹が傾くことによって支柱体2が傾いた方向の脚Pにより大きな負荷を与えることが可能になる。すなわち、支柱体2を傾動させる角度を小さくしながらも脚Pに比較的大きい負荷を作用させることができ、支柱体2を傾動させるエネルギに対して脚Pに作用する負荷の比率が大きくなり、脚Pに効率よく負荷を与えることができる。ここに、支柱体2の傾動は左右の一方のみで繰り返すことが可能であるが、左右交互に傾動させてもよい。
なお、足置台3の位置を変えずに支柱体2の傾斜角度とポスト部21との伸縮とを連動させるように、モータ6,8(第1の駆動源および第3の駆動源)を同期させて制御しても同様の効果が期待できる。つまり、図5(a)に示すように架台1に対して支柱体2が略垂直に立っている状態でのポスト部21の長さL1に対して、図5(b)に示すように架台1に対して支柱体2が傾斜している状態でのポスト部21の長さL2を大きくする(L1<L2)。この場合も膝関節の屈曲角度θをほとんど変化させることなく使用者の自重によって脚Pに作用する負荷を変化させることが可能である。
ところで、本実施形態では、ポスト部21に対するシート部22の前後方向の傾斜角度もモータ9によって制御可能であって、架台1に対する支柱部2の傾斜角度とポスト部21に対するシート部22の傾斜角度とを連動させて制御することも可能である。つまり、図5(a)のように支柱体2が架台1に対して略垂直に立っている状態では、ポスト部21の長手方向に直交する平面に対してシート部22の下面を略平行にし、図5(b)のように支柱体2を傾斜させた状態では、ポスト部21の長手方向に直交する平面に対してシート部22の下面前端部が下方に位置するように傾斜させる。このように、支柱体2の架台1に対する傾斜角度が大きくなるほどシート部22の前端部をポスト部21に直交する平面よりも下方に下げることによって、支柱体2の傾斜角度が大きくなるほど、使用者の臀部からシート部22の上面が受ける垂直抗力が小さくなり、使用者はシート部22から滑り落ちやすくなる。要するに、支柱体2の傾斜角度が大きくなれば、シート部22が傾かなくとも使用者の自重によって脚部に作用する負荷が大きくなるが、支柱体2の傾斜角度が同じであれば、シート部22が上述のように傾くことによって、脚部に作用する負荷をより大きくすることが可能になる。なお、支柱体2とシート部22とを連動させるにあたって、支柱体2の傾斜角度の増加に伴ってシート部22を上述した動作とは逆向きに傾斜させるようにすれば、支柱体2の傾斜による脚部への負荷の増加率を低減することが可能になる。
上述したように、各モータ6〜9のうちの適宜の2個が同期するように制御すれば、膝関節の屈曲角度を変化させないように動作させたり、使用者の自重によって脚に作用する負荷の変化率を調節したり、時間経過に伴う負荷の大きさの変化パターンを調節したりすることが可能になる。これらの組合せは自由であって、使用者の運動機能や体調に合わせて適正な動作を行うように制御部10から与える動作を選択する。
なお、本実施形態においては、足置台3を架台1に対して上下方向(垂直方向)に移動させる例を示したが、足置台3を架台1に対して平行(水平方向)に移動させる構成を採用してもよい。たとえば、支柱体2の傾斜角度が大きくなるほど足置台3と支柱体2の下端との距離を小さくするなどの制御を行うようにしても、膝関節の屈曲角度を変化させずに脚への負荷の大きさを変化させることが可能になる。また、足置台3を架台1に対して垂直方向と水平方向とにともに移動可能とし、支柱体2の傾斜角度と足置台3の位置とを連動させるようにしてもよい。
シート部22については、ポスト部21の上端に対する前後方向の傾斜角度を変化させる代わりに、図7のようにポスト部21の長手方向に交差する面内においてシート部22が一方向(前後方向)にスライドするように保持機構部23を構成してもよい。この構成では、保持機構部23に設けたモータ9はシート部22をポスト部21に対してスライド移動させるように駆動力を与える。図示例では支柱体2の傾斜角度が大きくなると、シート部22を前方にせり出すように移動させているから(二点鎖線は支柱体2が垂直に立っている状態でのシート部22の位置を示す)、使用者の臀部が前方に移動することによって、使用者は立った状態に近くなり脚部に作用する負荷が増加する。
上述した構成例では、4個のモータ6〜9によって、架台1に対する支柱体2の傾斜角度と、架台1に対する足置台3の位置と、支柱体2の伸縮長と、ポスト部21に対するシート部22の位置との4種類の状態を駆動力によって可変にしていたが、支柱体2の傾斜角度の変化とポスト部21に対するシート部22の位置変化とを連動させる構成を採用する場合に、シート部22を駆動するモータ9は以下の構成によって省略可能である。
図8に示す構成は、ポスト部21に対するシート部22の傾斜角度を変化させる構成であって、シート部22の前端部と架台1における支柱体2との間に伸長しないワイヤ24を張設したものである。また、ポスト部21に対してシート部22は前後方向(1つの軸回り)に傾斜可能であり、かつシート部22の下面がポスト部21の長手方向に略直交する位置を保つようにばね付勢されている。この構成では、図8(a)のように支柱体2が架台1に対して略垂直に立っている状態において、支柱体2の下端を中心としてシート部22とワイヤ24との結合点を通る円弧に対して、シート部22の前方では、ワイヤ24の下端を中心としてシート部22とワイヤ24との結合点を通る円弧のほうが下側を通る。このようにシート部22の前端部がワイヤ24に拘束されていることによって、支柱体2が図8(b)のように架台1に対して傾斜すると、シート部21の前端部はポスト部22の長手方向に直交する平面よりも前方に傾斜することになる。また、支柱体2が図8(a)の位置に復帰すれば、シート部22はばね力によって元の位置に復帰する。なお、ワイヤ24に代えて伸縮しない棒体を用いるのであれば、シート部22をばね付勢する必要もなくなる。
一方、シート部22をポスト部21に対してスライド可能に設けている場合には、図9に示すように、シート部22の前端部の質量を後端部より重くする構成を採用することも可能である(図9では、シート部22の前端部の質量を大きくしたことを概念的に示すために重り25を設けているが、重り25は必須ではない)。この構成では、シート部22をポスト部21に対して前後方向にスライド可能に取り付けておくことによって、図9(a)のように支柱体2が立っている状態から図9(b)のように支柱体2が前方(図9の左方)に傾斜すると、重り25によってシート部22が前方に移動するから、モータ9によって駆動力を与えている場合と同様に機能する。なお、支柱体2が傾斜した状態から図9(a)のように支柱体2が立った状態に復帰する際には、使用者の臀部付近が後方に移動することによってシート部22がスライドし、元の位置に復帰するから、ばね等による復帰力はとくに必要としない。
図10に示す構成は、ポスト部21とシート部22とを結合する保持機構部23としてボールジョイント26を用いたものである。つまり、ポスト部21に対してシート部22は任意方向に傾くことが可能になっている。このような構成では、支柱体2が略垂直に立っている状態ではシート部22に作用する荷重の大部分をポスト部21で受けることができるものの、支柱体2が傾斜するとシート部22では使用者の臀部から受ける荷重を支えにくくなり、結果的に使用者は脚部の筋肉を収縮させて自重を脚部で支えるようになる。つまり、図10に示す構成でもシート部22がポスト部21に対して固定されている場合に比較すると、支柱体2の傾斜角度に対して使用者の自重によって脚部に作用する負荷の増加率が大きくなる。
なお、本実施形態のようにモータ6を用いて支柱体2を任意の方向に起伏可能としている場合には、足置台3によって足位置および足先の向きを決めなくとも、足位置および足先の向きを適宜のセンタによって検出し、支柱体2の起伏方向を制御部10が決定する構成を採用してもよい。この種のセンサとしては、足裏の複数位置を検出する重量センサや、足部分の画像を撮像するTVカメラと画像処理装置とを組み合わせたセンサなどを用いることができる。また、支柱体2の可動範囲の制限を制御部10で行うから、制御部10には使用者の脚長などを入力するデータ入力手段が必要になるが、リミットスイッチを設けて支柱体2の可動範囲を制限したり、機械的なストッパによって支柱体2の可動範囲を制限したりすることも可能である。さらに、使用者の臀部を自転車のサドルに類似した形状のシート部22によって支持する構成を採用したが、シート部22の形状は他の形状でもよく、たとえば椅子状や鞍状などに形成することも可能である。
ところで、一般に運動補助装置は使用者の代謝を亢進させることが目的であって、使用者の生理的な許容範囲において代謝亢進は大きいほど望ましい。一方、膝関節を屈曲させると膝痛を誘発するような使用者でも運動補助装置を使用可能とするには、膝痛を誘発しないように運動補助装置を駆動する条件が必要になる。本実施形態の運動補助装置は、使用者が臀部を載せる支柱体2を傾動させることによって使用者の自重の少なくとも一部を負荷として脚部に作用させるものであるから、負荷の瞬時値は支柱体2の傾斜角度に依存すると推定できる。また、筋代謝ないし糖代謝は負荷の積算量(以下、負荷量という)に相関があると考えられるから、単位時間当たりの負荷量は支柱体2を傾動させる速度に依存すると推定される。さらに、使用者の自重が脚部に作用する際に膝関節が伸展位置から屈曲する角度が大きいほど膝痛が生じやすくなると考えられるから、膝関節の角度も考慮する必要がある。以下では、膝関節の角度を伸展位置からの角度で表し膝角度と呼ぶ。膝角度は上述した膝関節の屈曲角度θを180度から減算した値である。つまり、屈曲角度と膝角度とを加算すれば180度になる。
そこで、筋代謝(ないし糖代謝)について以下の4種類の計測を実施するとともに、膝痛について以下の5種類の計測を実施し、各計測についての評価結果に基づいて運動補助装置を駆動する条件を決定した。支柱体2の駆動形態としては、支柱体2を架台1に対して垂直に立つ位置と垂直に立つ位置に対して傾斜した位置との間で往復移動させる形態を採用した。以下に示す往復回数は、支柱体2が架台1に対して垂直に立つ位置から傾動し次に垂直に立つ位置に復帰するまでを1回として、1秒間の回数を規定したものであり、以下では単位としてHzを用いている。すなわち、往復回数は数値が大きいほど支柱体2の動きが速いことを意味する。また、自重率は、足置台3に作用した荷重を使用者の自重に対する百分率で表した値であって、使用者の脚部に作用する負荷を使用者の自重で正規化したものである。ただし、足置台3に作用する荷重は時間経過に伴って変化するから、支柱体2が1往復する期間におけるピーク値を荷重の代表値として用い、さらに、この代表値も支柱体2の往復毎に変動するから、代表値の1分間の平均値を採用する。すなわち、自重率は、支柱体2が1往復する間の荷重のピーク値を1分間について平均し、この平均値を使用者の自重に対する百分率として表したものである。
筋代謝ないし糖代謝を評価する計測条件を表1に示し、膝痛を評価する計測条件を表2に示す。なお、表1の計測1〜3が筋代謝の評価を行う条件であり、計測4が糖代謝の評価を行う条件であって、筋代謝は近赤外分光法により計測し、糖代謝はグルコースクランプ法により計測した。また、筋代謝ないし糖代謝の評価には、乗馬運動を模擬するように鞍状の座席が揺動する運動補助装置を使用した場合と比較した。以下では、乗馬運動を模擬する運動補助装置を従来機、本実施形態の運動補助装置を本機と呼ぶ。
表1に示す筋代謝を評価する計測に関して、計測1では、片脚のみに負荷を与えたところ、往復回数および膝角度については有意の差異は見られず、自重率に関してのみ有意の差が見られた。計測1における最大筋代謝は従来機の1.5倍に達した。計測2の条件では従来機の1.2倍であった。
計測3での筋代謝の計測結果を図11に示す。図11において、(a)は、往復回数が1Hz、膝角度が40度、自重率が40%である場合を示し、以下(b)は1.43Hz、40度、40%、(c)は1.43Hz、40度、60%、(d)は2Hz、40度、60%とした場合を示す。図11から明らかなように、往復回数が2Hz、膝角度が40度、自重率が60%であるときに従来機の3.1倍の負荷が得られた。すなわち、計測1において往復回数が1Hz以下では筋代謝に関して往復回数による有意の差が生じなかったが、1Hzを越えると筋代謝に有意の差が見られた。
計測4の条件では脛骨が架台1に対して直立する位置から支柱体2の傾動動作を開始させたところ、従来機の1.35倍の糖代謝が得られた。図12(a)は従来機における安静時と運動時との糖代謝を示し、図12(b)は本機における安静時と運動時との糖代謝を示している。図12(a)の被験者数は5名、図12(b)の被験者数は2名とした。図12から明らかなように、従来機では安静時に対して運動時の糖代謝が1.6倍になっており、本機では安静時に対して運動時の糖代謝が2.1倍になった。つまり、糖代謝効果が1.35倍に増加したことになる。これらの計測結果から、筋代謝および糖代謝に関しては、往復回数を2Hz、膝角度を40度、自重率を60%とするのが望ましいと考えられる。
表2に示す膝痛を評価する計測は、被験者の痛みの程度を表すためにフェイスペインスケールを用いて官能評価した。評価に用いたフェイスペインスケールは、笑顔から泣き顔まで段階的に表情が変化するように20個の顔が示され、各顔に点数が付加されたものであって、痛みがなければ笑顔の点数を選択し、痛みが強いほど泣き顔に近いほうの点数を選択することにより官能評価を行うものである。このフェイスペインスケールは20点満点であって、痛みがなければ20点になり、痛みが強いほど点数を下げて評価するようにしてある。
計測1の各条件での評価では、いずれも膝痛はほとんどなく、また膝角度の相違による有意の差はみられなかった。さらに、支柱体2の傾動を開始するときの脛骨の位置については、架台1に対して垂直方向に立っている場合と、前方に下り傾斜している場合とで有意の差はみられなかった。ただし、往復回数と自重率との相違では膝痛の程度に若干の差異が請じた。本機使用と歩行時(平坦面の歩行)と階段降りとの各場合について、痛みの程度をフェイスペインスケールで評価した結果を図13(a)〜(c)にそれぞれ示す。図13(a)に示す本機使用の例では、図13(c)に示す階段降りの場合よりも膝痛が大幅に少なく、図13(b)に示す歩行の場合よりもさらに膝痛が少なく(点数が高く)なっていることがわかる。なお、図13に示す棒グラフにおいて各バーの上に突出しているバーは標準偏差を表している。
計測2は本実施形態の運動補助装置を実使用するに際して1回の使用時間を15分間と考え、15分間継続して使用した場合に後日に膝痛が生じないか否かを検証するものである。計測2では脛骨が直立する位置を開始位置とした。また、計測2の被験者のうち1名については歩行よりも膝の痛みが少ない条件として往復回数を0.3Hzとした。計測2の条件では運動補助装置の使用中と後日とのいずれにおいても痛みは生じなかった。
計測3は、表3に示す各種条件で、大腿直筋A、外側広筋B、内側広筋C、内転筋D、腓腹筋E、前脛骨筋F、大腿二頭筋Gの筋電をそれぞれ計測したものであって、計測結果から各筋のEMG(積分筋電位)の10秒間の平均値を求め、各筋のEMG(積分筋電位)の平均値をプロットした結果を図14に示している。表3において「踵」の欄における「上」とは、踵がつま先よりも上がるように足裏を傾斜させた状態を意味している。この状態は足置台3を10度傾斜させて実現した。なお、足置台3を傾斜させた構成については後述する。
図14において踵を上げていない場合(運動条件1、3、5、7、9、11)と、踵を上げている場合(運動条件2、4、6、8、10、12)とを比較すると、他の条件が等しい場合には、腓腹筋Eおよび大腿二頭筋Gについて踵を上げると筋収縮が大きくなっている。すなわち、踵を上げると踵を上げない場合に比較して、脚部の後面側の筋肉群の筋収縮が大きくなることがわかる。計測4は、計測3の条件における官能評価を行ったものであり、踵を上げるか否かの相違のみで他の条件を等しくした場合には、踵を上げた場合のほうが膝痛が少ないという結果が得られた。踵を上げることによる膝痛の緩和効果は、脚部の前面側である大腿四頭筋と脚部の後面側である大腿二頭筋との両方で筋収縮が生じることによる拮抗作用で膝関節の動きが固定されるため、膝関節において剪断力が緩和されるからであると推測される。
計測5は、計測2と同様に15分間継続して使用した場合に後日に膝痛が生じないか否かを検証するものである。計測5の条件では運動補助装置の使用中と後日とのいずれにおいても痛みは生じなかった。これらの計測結果から、膝痛の生じない条件として、往復回数を2Hz、膝角度を40度、自重率を60%とするのが望ましいと考えられる。
表1および表2に示す計測で得られた結果に基づいて、膝角度を40度とした場合について、往復回数および自重率の条件と、筋代謝、糖代謝、膝痛の官能評価との関係を図15に示す。図15では往復回数を横軸とし自重率を縦軸としてあり、筋代謝と糖代謝と膝痛の官能評価とはそれぞれ黒塗りの四角(■)、黒塗りの三角(▲)、黒塗りの丸(●)で表している。筋代謝および糖代謝は従来機に対する本機の倍率で示しており、右上方が代謝の亢進される方向であって、膝痛については左下方が点数の高い(膝痛が少ない)方向になる。
すなわち、表1に示す計測では、所望の筋代謝および糖代謝を得るには、往復回数を2Hz、膝角度を40度、自重率を60%とするのが望ましいという結論が得られた。また、表2に示す計測によって、上記条件で15分間継続して運動しても後日に膝痛が発生しないことがわかった。したがって、上記条件を運動条件とするのが望ましいと言える。ただし、この条件は上限値であって、筋代謝および糖代謝を少なくしてもよければ、運動条件をこれらの値よりも小さくすることが可能である。なお、図15において斜線で示す範囲は所望の代謝が得られる範囲であって、しかも膝痛の官能評価において20点満点中15点以上であって15分間の使用において後日に膝痛が生じない範囲であるから、この範囲内で使用するのが望ましい。すなわち、往復回数は1.4〜2Hzとし、自重率は40〜60%とするのが望ましい。さらに、運動の開始位置としては脛骨が架台1に対して直立している位置とすればよい。
ところで、上述した運動条件のうち、往復回数は支柱体2の動作を制御することにより制御でき、また膝角度は支柱体2と足置台3との位置関係を制御することにより一定に保つことが可能であるが、自重率は足置台3に作用する使用者の荷重であって、支柱体2の移動速度が速いほど移動方向の変化時に大きな加速度が作用するから足置台3には大きな荷重が作用すると考えられ、また支柱体2の傾斜角度が大きいほど使用者の自重のうち支柱体2が分担して受ける割合が少なくなるから足置台3に作用する荷重は大きくなると考えられる。つまり、自重率は往復回数と傾斜角度との両方をパラメータに持つと考えられる。ここで、使用者の体重の範囲は数十kg程度であるから、このような狭い範囲では自重率と往復回数および傾斜角度との間に線形関係があると仮定し、以下の等式で示すように、往復回数と傾斜角度とにそれぞれ規定の重みa,bを設定した重み付き線形和を負荷の推定値とし、この推定値が自重率に対応するように重みを決定する。なお、下式の傾斜角度は最大傾斜角度を意味する。
(負荷の推定値)=a×(往復回数)+b×(傾斜角度)
往復回数および傾斜角度を変化させて自重率を実測した結果を図16に示す。ただし、図16に示す計測は、本機の使用経験がない8名の成人について、膝角度を40度に保ち、右脚の荷重を1分間連続して記録することによって行った。図16によれば、(往復回数、傾斜角度、自重率)の関係は、(1.4Hz、3度、38.6%)、(1.4Hz、5度、52.2%)、(2Hz、3度、41.1%)、(2Hz、5度、58.8%)であり、これらの数値を用いて上式を回帰式とする重回帰分析を行った結果、重みa,bとしてそれぞれ8.9、8.1が得られた。すなわち、自重率は往復回数と(最大)傾斜角度とから下式で求めることが可能である。
(自重率〔%〕)=8.9×(往復回数〔Hz〕)+8.1×(傾斜角度〔度〕)
自重率を上式で決定するものとして、図15の斜線部における支柱体2の傾斜角度を求めると2.7〜5.9度になるが、この範囲内で3〜5度と設定するのが望ましい。つまり、膝角度40度とし、支柱体2の往復回数を1.4〜2Hzとし、支柱体2の傾斜角度を3〜5度とすれば、所望の代謝が得られ、かつ膝痛も生じないように運動補助装置を使用することが可能になる。なお、膝角度は支柱体2に臀部を載せた状態での安定感を得るために40度としているが、40度以下であっても代謝および膝痛に対して有意の差はないから、40度以下の範囲で適宜に設定することが可能である。
以上説明から明らかなように、制御部10では、支柱体2が架台1に対して垂直に立つ位置と垂直に立つ位置に対して5度以下の傾斜角度で傾斜する位置との間で往復移動するように揺動させるとともに、膝角度(膝関節の伸展位置からの角度)を40度に保つように支柱体2と足置台3とを駆動し、さらに、支柱体2が1秒間に往復移動する往復回数を2回以下とすることによって、膝痛を誘発することなく所望の代謝が得られるのである。
制御部10においては上述した条件を固定して動作させることが可能であるが、使用者には個人差があるから、負荷の目標値と往復回数とを制御部10に与えるためのキーボードやタッチパネルのような操作機能を備えた入力部(図示せず)を設けるのが望ましい。負荷の目標値は自重率として与え、上述した理由から40〜60%の範囲で変更可能としておくのが望ましい。同様に、往復回数は1.4〜2Hzの範囲で変更可能としておくのが望ましい。入力部により負荷の目標値および往復回数が与えられると、上式の推定値である自重率に目標値を当て嵌めるとともに往復回数を上式に代入すれば、傾斜角度を求めることができる。この傾斜角度を支柱体2の最大傾斜角度として支柱体2を制御することにより、使用者の脚部に作用する荷重が目標値になるように支柱体2を制御することができる。また、上述のように支柱体2の往復回数の望ましい範囲は1.4〜2Hz、負荷の目標値の望ましい範囲は自重率で40〜60%であるから、入力部において自重率および往復回数を入力する際に、これらの範囲内の入力のみを許容するように入力部を構成するか、これらの範囲を逸脱する入力があると、警告するか入力を拒否するように入力部を構成しておくのが望ましい。あるいはまた、入力部において入力値の範囲が逸脱しているときに適正範囲になるように自動的に修正する機能を設けてもよい。
(実施形態2)
実施形態1では駆動源としてのモータ6〜9を用いることによって、使用者が積極的に身体を動かすことなく他動的に筋収縮を促すようにしているが、モータ6〜9は適宜に省略可能であり、また、本発明の構成は図17のように駆動源を用いずに実現することも可能である。図17に示す構成では、架台1に対して支柱体2および足置台3をそれぞれ結合機構部4,5を介して取り付けてあるが駆動源は設けていない。足置台3を架台1に結合する結合機構部5は実施形態1と同様にパンタグラフ51を用いて上下方向に移動可能となるように構成してある。また、支柱体2を構成するポスト部21は伸縮自在であり、ポスト部21に結合されるシート部22は左右方向の軸(1つの軸)回りで前後方向に傾斜することが可能になっている。ただし、ポスト部21はシート部22の高さ調節のために伸縮可能となっており、またシート部22は、実施形態1において説明した重り25またはボールジョイント26を設けることによって傾くように構成されている。結合機構部5にパンタグラフ51を設けているのは、実施形態1と同様に、支柱体2の傾斜角度の変化に連動して足置台3の高さ位置を変化させるためである。ただし、支柱体2と足置台3とは結合機構部4,5を構成するリンクやカムの組み合わせによって機械的に連動するようになっている。つまり、結合機構部4,5は、支柱体2の架台1に対する傾斜角度が変化すると足置台3の高さ位置が変化するように構成されている。
本実施形態の運動補助装置を使用するにあたっては、使用者が身体を積極的に動かす必要があり、各足置台3に足を載せシート部22に着座した使用者が、臀部を前方に移動させるように脚部に力を入れると、支柱体2が架台1に対して傾き、このとき足置台3が下方に移動することによって膝関節の屈曲角度をほとんど変えることなく、使用者の自重によって脚部に作用する負荷を大きくすることが可能になる。結合機構部4,5には、元の位置に復帰させるためのばねを内蔵してもよいが、使用者自身の脚の力で復帰させるように構成してもよい。支柱体2の傾く方向は、結合機構部4によってシート部22と各足置台3とをそれぞれ含む2面内に制限されており、このことによって支柱体2が傾く方向(使用者の足位置と重心位置との相対位置の変位方向)が膝関節の屈伸方向に制限されることになる。
本実施形態で用いる結合機構部4の一例を図18に示す。図示例の結合機構部4は、半球状のガイド体41を備え、ガイド体41に設けたレール溝42に支柱体2の下端を摺動自在に結合している。また、支柱体2の下端をガイド体41の上端位置に復帰させるようにばね付勢する復帰ばね43を設けている。この構成では、支柱体2の下端がレール溝42に沿って移動すると、支柱体2の傾斜角度が大きくなり、支柱体2の上端はガイド体41の中心(球面の中心)を中心とした円弧状を移動することになる。また、支柱体2が倒れるに従って復帰ばね43により作用する復帰力が増加するから、使用者はわずかな力で支柱体2を元の位置に復帰させることができる。支柱体2の移動方向は、レール溝42によって制限されるから、膝関節の屈伸方向を含む面内にレール溝42を位置させることによって、膝関節に捻れを加えることなく脚部に負荷を与えることが可能になる。
なお、図示例ではレール溝42を1つの面内に形成しているから、ガイド体41を架台1に平行な面内で回転可能とし、支柱体2が倒れる方向が各足置台3の向きになるようにガイド体41の回転位置を合わせた上で使用することにより、使用者は片脚ずつに負荷をかけるように運動することができる。また、ガイド体41を架台1に対して定位置に固定しておき、各足置台3に対応するように2つの面内にレール溝42を形成する構成を採用してもよい。他の構成および動作は実施形態1と同様であって、本実施形態では他動的な運動ではないが、モータ6〜9が不要であることによって制御部10も不要であるから実施形態1よりも構成が簡単になる。
(実施形態3)
本実施形態は実施形態2と同様に駆動源を備えていない構成であって、しかも足置台3も省略した構成を採用している。すなわち、図19に示すように、架台1に対して支柱体2が傾動可能となるようにした結合機構部4を設けているが、足置台3は省略されている。したがって使用者Mは架台1を設置した床面あるいは架台1の上に足を載せて支柱体2に設けたシート部22に着座することになる。結合機構部41としては図18に示した構成を採用すれば、支柱体2が起伏する方向を制限することができる。ただし、足置台3を設けていないから、足位置および足先の向きと支柱体2が起伏する方向とを合わせる目安がない。そこで、本実施形態では、結合機構部4において、架台1に対して架台1の上面と平行な面内で回転可能な方向支持板44を設け、方向支持板44に矢印状のマーク45を表記してある。マーク45は、図18において説明した結合機構部4のレール溝42を含む面内に含まれており、したがって、マーク45の延長線上に足を置くことによって、支柱体2が起伏する方向を膝関節の屈伸方向に一致させることが可能になる。
すなわち、マーク45が示す方向の延長線上に足を置くとともに足の向きをマーク45が示す方向とし、図19(a)に示すように支柱体2が架台1に対して略垂直に立っている状態から、図19(b)に示すように支柱体2を倒すと、支柱体2が倒れる方向がレール溝42により制限されていることによって、支柱体2が起伏する面内に膝関節の屈伸方向が含まれることになる。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
なお、図示例では支柱体2が1つの方向にのみ起伏する構成を示しているが、両脚に交互に負荷を与えることができるように、支柱体2が2つの方向に起伏するように構成してもよい。ここに、図18に示した結合機構部4を用いるのであれば、ガイド体41を架台1として用いることも可能であって、ガイド体41の周面に方向支持板44を設けることができる。
(実施形態4)
上述した各実施形態では、支柱体2の下端を中心として支柱体2が架台1に対して起伏自在である構成を示したが、支柱体2を起伏させずに使用者の自重によって脚部に作用する負荷を変化させることが可能である。本実施形態では、図20に示すように、架台1に対して支柱体2が略垂直に立った状態で平行移動するように結合機構部4を構成している。すなわち、本実施形態の結合機構部4は、架台1の上面に設けたガイドレール47を備え、支柱体2の下端がガイドレール47に沿って走行可能となるように構成してある。また、足置台3を設けてあり、実施形態1と同様に、足置台3によって足位置および足先の向きを決めるようにしてある。ガイドレール47は架台1の所定位置と足置台3とを結ぶ直線上に設けてあり、支柱体2がガイドレール47に沿って走行することによって、使用者Mの臀部と足先との距離が変化し、結果的に膝関節が屈伸されることになる。つまり、支柱体2と足置台3との距離の変化によって使用者Mの自重により脚部に作用する負荷を変化させるのである。この構成もガイドレール46によって、支柱体2の移動方向が膝関節の屈伸方向に制限されることになる。なお、本実施形態では、支柱体2の移動を使用者Mが行うことを想定しているが、駆動源を用いて支柱体2を移動させてもよい。また、図示例では一方の脚部にのみ負荷を与える構成として示しているが、両脚部に負荷を与えるように2方向のガイドレール46を設けてもよい。他の構成および機能は実施形態1と同様である。
なお、足位置と重心位置との相対位置が変化すればよいのであるから、支柱部2と足置台3とはどちらを移動させても等価であって、足置台3が支柱部2に対してスライド自在に移動する構成を採用することも可能である。
(実施形態5)
上述した各実施形態では、使用者の自重を支える支持部として上端部に臀部を載せる支柱体2を例示したが、図21に示すように、支持部として架台1からアーム27を介して吊下した座席28を用いることも可能である。座席28はシート部22に相当し、架台1とアーム27とを結合する結合機構部(図示せず)を適宜に構成することによって、座席28を上述した各実施形態におけるシート部22と同様に移動させることが可能になる。図示例ではアーム27の上端を架台1に対して揺動可能に枢着してあり、座席28は振り子のように移動することになる。ただし、座席28の移動方向は使用者の膝関節の屈伸方向によって制限されており、架台1の一部に結合された足置台3によって使用者Mの足位置および足先の向きを決めた状態では、使用者Mの重心位置と足位置との相対位置の変位が膝関節の屈伸方向に制限される。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
(実施形態6)
本実施形態は実施形態1の構成に対して使用者Mの脚部(主として大腿部)に作用する負荷を反映する荷重を検出するように荷重センサを付加したものである。荷重センサは、ポスト部21においてシート部22の直下と左右の足置台3とのうちの少なくとも1箇所に設けられる。つまり、支持部である支柱体2と足置台3との少なくとも一方に荷重センサが設けられる。荷重センサは、荷重によって使用者Mの脚部に作用する負荷を検出することが目的であるから、1個だけ用いるよりも複数個を組み合わせて用いるほうが検出精度が高くなる。なお、各足置台3にそれぞれ荷重センサを設けるのがもっとも望ましく、この配置によって荷重センサにより検出する荷重の増加分を、脚部に作用する負荷とみなすことが可能になる。ただし、シート部22のみに荷重センサを設けるようにしても、荷重の減少分を脚部に作用する負荷の目安に用いることは可能である。
図22に示すように、荷重センサ11により検出される荷重は表示情報処理部12を介して表示部13に実時間で表示される。つまり、表示情報処理部12と表示部13とは荷重変化通知手段として機能し、荷重センサ11により検出される負荷(使用者Mの脚部に作用する負荷)が実時間で表示部13に表示される。つまり、荷重センサ11により検出される負荷の時間変化が表示部13により実時間で通知される。ここに、表示部13に表示する形式としては、負荷に相当する数値を表示するほか、負荷の時間経過を折れ線グラフで示すグラフ表示としたり、負荷に応じてバーの長さが変化するバー表示としたり、半円形の表示領域を有し負荷に応じて指針の角度位置が変化するメータ表示としたりすることが可能である。ただし、負荷は時々刻々と変化するから、バー表示やメータ表示が望ましく、バー表示やメータ表示であれば、後述する目標範囲を示すマークを並設するのが容易である。ここに、荷重変化通知手段として荷重の変化を視覚的に示すために表示部13を設けているが、負荷に応じた周波数の可聴音を使用者Mに提示するなどすれば、荷重の時間変化を聴覚的に示すことが可能である。
したがって、表示部13の表示や音によって使用者Mに負荷の時間変化を通知することで、使用者Mは運動の負荷が適正か否かを容易に判断することができ、負荷に過不足があるときには、装置を調節したり体の位置をずらすことによって、負荷の大きさを適正に調節することが可能になる。
ところで、筋代謝量が脚部に作用する負荷に相関を持つことは容易に推定されるが、実際には使用者Mの自重、年齢、性別、疾病の有無や疾病の種類、運動歴などの使用者Mの属性(いわゆる、プロフィール)によって、負荷の大きさが同じであっても筋代謝量には差異を生じるという知見が得られている。とくに使用者Mの自重は個人差が大きいから、筋代謝量に大きく影響すると考えられる。そこで、本発明者らが、使用者Mの片脚に作用する負荷と、大腿四頭筋および内転筋を合わせた筋代謝量との関係を測定したところ、以下の結果が得られた。
筋代謝量の評価には、代謝が多いほど酸素化ヘモグロビンの減少率が大きいという性質を利用し、近赤外線分光法によるヘモグロビン測定を行った。図23に示すように、使用者Mの自重(つまり、体重)に対して片脚に作用する負荷(つまり、荷重センサ11で検出した荷重)の比を、20%とした場合と40%とした場合とについて、筋代謝量を評価した。図23における筋代謝量は安静時の筋代謝量を1とするときの比であって、脚部に作用する負荷が体重の20%である場合と40%である場合とで、筋代謝量に有意の差が生じていることがわかる。図23において筋代謝量を示す広幅のバーの先端に付設した細線はばらつきの程度を示しており、ばらつきを考慮しても、負荷の大きさによる有意の差が生じることがわかる。また、上述の測定結果から、個人差の大きい体重を用いるのではなく、脚部に作用する荷重を体重に対する割合を用いると、使用者Mの体重差によらずに筋代謝量に対応付けることができることがわかる。要するに、脚部に作用する荷重の体重に対する割合を筋代謝量の目安に用いることができる。
そこで、表示情報処理部12では入力部14から入力された体重に対して荷重センサ11で求めた荷重の百分率を求め、この百分率を表示部13に与えて筋代謝量の目安として表示するのである。なお、表示部13には上述した各種形態で表示すればよい。また、入力部14からは使用者Mの体重以外の属性も入力可能であるから、体重だけではなく年齢や性別なども考慮して、運動に適した負荷の適正な範囲を決定し、この範囲も表示部13に表示するようにすれば、使用者Mは負荷(脚部に作用する荷重を体重で除算した値)が適正な範囲に保たれるように運動を継続することが可能になる。つまり、使用者Mが適正な負荷の範囲を知ることによって負荷の過不足を防止することができる。なお、使用者Mの属性に対する負荷の適正な範囲は、使用者Mの属性と負荷の適正範囲とを対応付けたデータベースをあらかじめ作成しておき、入力部13から使用者Mの属性が入力されると、データベースから負荷の適正範囲が自動的に読み出されるようにしておくのが望ましい。このような構成を採用すれば、入力部13から使用者Mの属性を入力するだけで適正な負荷の範囲が表示部13に表示され、荷重センサ11により検出した負荷と比較可能な形で表示することができる。
上述した荷重センサ11により検出した脚部に作用する負荷および入力部14から入力された使用者Mの属性は、フィードバック処理部15にも入力される。フィードバック処理部15は、制御部10に対してモータ6〜9の動作に関する指示を与える機能を有し、荷重センサ11で検出した荷重から求めた脚部への負荷を、規定した目標範囲内に保たれるようにモータ6〜9の動作を指示する。つまり、使用者Mが意識することなく、使用者Mの脚部に作用する負荷が目標範囲に維持されるようにフィードバック制御されることになる。
目標範囲は、入力部14から入力される使用者Mの属性に基づいて決定する。つまり、表示情報処理部13と同様に、フィードバック処理部15においても使用者Mの属性に負荷の目標範囲を対応付けたデータベースを設けておき、入力部14から使用者Mの属性が入力されるとデータベースに照合して目標範囲を抽出する。このように、使用者の自重、年齢、性別、疾患の有無や疾患名、運動歴のような属性に応じて目標範囲を自動的に決定することによって、使用者に応じた適正な負荷を与えることが可能になる。なお、目標範囲についても、使用者Mの体重に対する負荷の百分率を用いるのが望ましく、各使用者Mの体重差にかかわりなく目標範囲を適正に設定することができる。
他の構成および動作は実施形態1と同様である。なお、使用者Mの属性を入力する必要がなければ入力部14は不要であり、また、フィードバック制御の必要がなければフィードバック処理部15を省略してもよい。フィードバック処理部15を設けている場合において、足置台3に作用する荷重を検出する負荷センサ(図示せず)を設け負荷センサの出力を用いて自重率を実測し、自重率の既定の目標範囲(つまり、40〜60%)を逸脱しないようにフィードバック処理部15で負荷センサの出力を監視してもよい。フィードバック処理部15では負荷センサにより検出した自重率が目標範囲を逸脱したときには、最大傾斜角度を変更して負荷が目標の範囲内に収まるようにする。また、最大傾斜角度を調節範囲(望ましくは3〜5度)で調節しても負荷センサにより検出される自重率が目標範囲に入らない場合には往復周期を制御する。
上述した各実施形態において、図24のように、シート部22に背もたれ22aを設けてもよい。背もたれ22aを設けることによって、使用者Mが後傾するのを防止することができる。つまり、支柱体2の前傾時に使用者Mが後傾して重心の移動量が小さくなるのを防止し、重心の移動量を確保することにより脚部への負荷が低減するのを防止することが可能になる。
(実施形態7)
実施形態1において説明したように、本発明者らは踵を上げた状態で運動補助装置を使用することにより膝痛を抑制できるという知見を得た。そこで、本実施形態では、踵を上げた状態での使用を可能にするために、図25に示すように、足置台3の上面を前方に向かって下り傾斜させた構成を採用する。足置台3は、1部材の上面を傾斜させてもよいが、傾斜角度や傾斜方向を調節可能にするために、実施形態1で説明した足置台3の上に足底板31を着脱可能に取着することによって2部材で構成してある。足底板31の先端分には実施形態1においても説明したトークリップ部32を位置ずれ防止部材として設けてあり、支柱体2の傾斜によって足先に荷重が作用したときに足の位置がずれるのを防止している。また、足先のみで足の位置ずれを防止すると足先に大きな荷重が作用するから、足底板31の上面は足裏の滑りを防止する滑り止め部33を設けてあり、滑り止め部33も位置ずれ防止部材として機能する。具体的には、足底板31の上面には起毛したり滑り止めの溝あるいは突条を設けることにより摩擦係数を大きくした部材やゴムのように材料自身の摩擦係数が大きい部材を滑り止め部33として設けてある。
上述のように、足置台3の上面を足底板31によって傾斜させ、かつトークリップ部32および滑り止め部33からなる位置ずれ防止部材を設けたことによって、踵を上げた状態で運動補助装置を使用することが可能になり、代謝亢進の効果を得ながらも膝痛の発生を抑制することが可能になる。しかも、位置ずれ防止部材を設けて足の位置を固定しているから、支柱体2の起伏方向を膝関節の屈伸方向に一致させやすく、このことによっても膝痛の発生を抑制することができる。なお、足裏全体を傾斜させず、つま先部分は傾斜させずに水平面で支持する形で踵を上げてもよい。
ところで、いわゆるO脚やX脚のように膝関節が人体左右の外側あるいは内側に変形している使用者の場合には、膝関節を形成している両側の骨の間隔が膝関節の内側または外側において他側よりも狭くなっているから、膝関節を屈曲させたときに骨間の間隔の狭くなっている側において骨が接触し痛みが生じることがある。そこで、O脚やX脚の使用者に対応するために、左右一対設けた足置台3を構成する足底板31の上面を左右方向において互いに近付く向きまたは互いに離れる向きに下り傾斜させる。このように、足底板31の上面を左右方向において傾斜させることにより、O脚やX脚の使用者であっても膝関節の両側の骨の間隔の狭くなっている部分を拡げ、膝関節を形成している骨の接触による痛みの発生を抑制することができる。なお、足底板31を着脱可能とすることにより、前方に下り傾斜する足底板31の取付方向を変向することによって左右方向において下り傾斜する足底板31として用いることが可能である。また、足底板31を着脱せずに架台1の上面に平行な面内で回転可能としてもよい。他の構成および機能は実施形態1と同様である。