JP4147649B2 - ディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術】
本発明は、ディーゼル機関の排気中に含まれる微粒子成分(パティキュレ−ト)を捕集し、再生する排気ガス浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば特開平9−88549号公報に記載されるディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置では、推定したフィルタのパティキュレ−ト捕集量に応じてフィルタに流入させる給気流量値を決定し、この定給気流量値でフィルタ中のパティキュレ−トを燃焼させている。
【0003】
また、他の従来技術では、パティキュレ−トが着火するまでの着火期間、その後のパティキュレ−トの燃焼伝播期間、その後のフィルタの冷却のための放冷期間を設け、各期間ごとに最適な給気流量値を定め、この給気流量値の変化パターンにしたがってシーケンシャルに給気流量制御を行っている。
このような定給気流量値制御の主要な目的は、フィルタを構成するセラミックス(たとえばコージェライトや炭化珪素)が、所定の最高許容温度を超えるとクラックなどの焼損を生じ、フィルタ温度が低下すると失火や延焼速度の極端な低下を生じるのを防止するためである。
【0004】
更に説明すると、従来のこのような定給気流量値制御により、ヒータからフィルタに流入させる加熱空気の流量及び温度をそれぞれ一定化することにより、外部からフィルタに与える熱量を固定でき、更に、給気流量の変化によるフィルタ内の燃焼熱の発生量の変化を低減することができ、フィルタ温度を予想する好適範囲に維持することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、燃焼伝播中特にその後半期間に定給気流量値制御を行う上述した従来の給気流量制御技術によれば、燃焼中はフィルタ内に燃焼伝播が進んで、フィルタの許容温度範囲内で十分にまだ燃焼を促進できるにもかかわらず、設定された定給気流量値が小さいために燃焼速度が遅く、その結果、再生必要時間及び再生に必要な電力量が増大するという問題や、ヒータから遠いフィルタの末端部において燃焼が十分に行われず、燃え残りが生じ易いという問題があった。
【0006】
もちろん、燃焼伝播中特にその後半期間に設定される定給気流量値を増大することにより上記燃焼伝播中特にその後半期間における燃焼を強化することもできるが、この場合には燃焼伝播期間の初期や前半期間において、給気流量が大きくなって、フィルタ各部の燃焼進行度合いのばらつきが大きくなってしまうという問題が生じた。更に説明すると、パティキュレ−ト燃焼はフィルタのヒータ側の端面から開始されるが、厳密に考えると、まず最初にこの端面の一部領域で着火が生じ、この着火領域から燃焼伝播面が径方向および軸方向に進行することにより延焼がなされる。したがって、この着火直後の期間や燃焼伝播期間の前半部分などにおいてあまり給気流量が多いと、フィルタ軸方向への給気の流れ、熱の流れが急速となって、燃焼伝播面がフィルタの端面全体に広がる前に上記着火領域から燃焼が軸方向へ進行してしまい、これによりフィルタの径方向各部において軸方向燃焼度合いが大きくばらつき、最終的にフィルタの再生効率(パティキュレ−ト残存比率の逆数)が低下してしまうという不具合が生じる。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、再生効率の向上や再生時間の短縮を実現可能なディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置によれば、再生期間は、パティキュレ−ト着火時点近傍までの着火期間、着火したパティキュレ−トを延焼させる燃焼伝播期間、及び、燃焼伝播期間後にフィルタを冷却する放冷期間に分けて制御される。
【0009】
本構成では特に、燃焼伝播期間の少なくとも後半期間に、給気流量がパティキュレ−トの残存量に負の相関を有するように、給気流量を無段階または多段階(3段階以上)に変化させるので、再生効率の向上や再生時間の短縮を実現することができる。以下、更に詳しく説明する。
本構成によれば、燃焼伝播期間の少なくとも後半期間の最初には、フィルタに比較的少ない給気流量が供給される。これにより、発生熱伝播遅れからまだフィルタの前部または中央部にとどまっている燃焼伝播面が軸方向へ急速に進行することがなく、フィルタの径方向各部の軸方向燃焼進行度合いが大きくばらつくのを抑制することができる。
【0010】
そして、燃焼伝播期間の少なくとも後半期間の後期には、フィルタに供給される給気流量が増大される。これにより、燃焼伝播面が軸方向に相当に進行してもはや今後の上記ばらつきを顧慮する必要がすくない燃焼伝播期間の少なくとも後半期間の後期には、フィルタに十分な給気流量を投入して燃焼伝播期間を短縮することができる。また、ヒータ側のフィルタ端面から遠く離れていて加熱されにくく、燃えにくく延焼速度が低下しがちなこの期間における燃焼具合を良化して、この燃焼伝播期間の最終期間における燃えの残りを低減することができる。
【0011】
第二点として、本構成では、上記した燃焼伝播期間の少なくとも後半期間における上記給気流量の増大を、パティキュレ−ト残存量に負相関を有するように無段階または多段階に実施する。すなわち、実際のパティキュレ−ト残存量に応じて給気流量を制御する。
これにより、元々のパティキュレ−ト量が少なくパティキュレ−ト残存量が早期に減少する場合には早めに給気流量を増大して燃焼強化を実施し、フィルタの後端側での燃焼維持を行い、その立ち消え状態への移行を防ぐ。逆に、元々のパティキュレ−ト量が多く、パティキュレ−ト燃焼による発生熱量が燃焼伝播期間の早期から多い場合には、給気流量の増大を遅延させてフィルタ温度の過昇を防ぐことができる。
【0012】
請求項1記載の構成によれば更に、給気手段は残存量に負の相関を有して給気流量が変化する特性をもつ。そして、燃焼伝播期間の少なくとも後半期間の少なくとも一部にて給気手段の回転数制御用の電気パラメータを固定する。このようにすれば、請求項1記載の給気流量制御を、センサを用いた複雑なフィードバック制御系を採用することなく実現することができる。
【0013】
以下、更に詳しく説明する。
たとえば遠心ブロワなど上記特性をもつ給気手段では、パティキュレ−ト残存量の絶対値に負の相関を有して給気流量が連動する。したがって、最初のパティキュレ−ト量の多寡にかかわらず、パティキュレ−ト残存量の絶対値に応じて給気流量を定めるとともにパティキュレ−ト残存量の減少にしたがい給気流量を増大させて再生期間短縮、再生効率向上を図る上記請求項1記載の給気流量制御を、この給気手段の駆動モータの回転数を固定するという極めて簡素な装置構成で実現できる。
【0014】
請求項2記載の構成によれば請求項1記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において更に、パティキュレ−トの残存量に関連する物理量を検出し、この物理量に基づいて積極的に給気流量を請求項1記載の方法で制御する。
このようにすれば、給気手段の流体負荷抵抗と給気流量との関係を示す特性に限定されることなく、パティキュレ−ト残存量の変化に対して最も好適なレートで給気流量を増大させることができる。
【0015】
請求項3記載の構成によれば請求項1又は2記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において更に、給気流量に関連する物理量を検出し、この物理量に基づいて給気流量が所定値に達したと判定した時点で燃焼伝播期間を終了させる。
このようにすれば、給気流量が増えてパティキュレ−ト残存量が実質的に0に達したと判定した時点を簡単に決定するとともに、この決定時点でただちに放冷期間に移行することができるので、簡素な構成で再生時間の短縮を実現することができる。
【0016】
給気流量に関連する物理量を検出する手段としては、パティキュレ−ト残存量が減ることにより給気流量が増える給気手段を採用する場合にはたとえば給気流量センサを採用することができる。
また、多くのタイプの給気手段においては通常、パティキュレ−ト残存量が減って給気手段の負荷抵抗が減少すれば、その消費電力または負荷電流の低減や、回転数の増大または給気流量の増大が生じるので、これらによりパティキュレ−ト残存量を推定することができる。
【0017】
更に、フィルタの圧力損失を圧力センサで検出してその検出値によりパティキュレ−ト残存量を推定することもできる。
請求項4記載の構成によれば請求項1ないし3のいずれか記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において更に、燃焼伝播期間の初期期間に定給気流量値制御を行う。なお、この定給気流量値は、燃焼伝播期間の後半における給気流量より小さく設定される。
【0018】
このようにすれば、パティキュレ−ト残存量により変動することなく着火直後の燃焼を後半期より緩慢な一定レベルとすることができるので、フィルタの端面の一部で生じた着火領域から燃焼伝播面が軸方向へ大きく進行する前にフィルタ内部より相対的に高温であって燃焼伝播し易いフィルタの径方向へ燃焼伝播面が格段に高速に進行することができ、フィルタの径方向各部における燃焼伝播面の軸方向のばらつきを抑止し、それに起因するフィルタ後端部における燃え残りを低減することができる。
【0019】
請求項5記載の構成によれば請求項1ないし4のいずれか記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において更に、着火期間に定給気流量値制御を行う。
このようにすれば、この着火期間における給気流量のばらつきに強く依存する再生開始から着火開始までの時間(着火期間の長さ)のばらつきを減少することができるので、その後の燃焼伝播期間の始点が実際の着火時点からずれるのを良好に抑止できる。
【0020】
その他、この期間における給気はフィルタ各部の予熱を行うので、この着火期間における給気流量のばらつきにより燃焼伝播期間開始時点におけるフィルタ各部の温度のばらつきも減らすことができる。
なお、この着火期間における給気流量や給気温度は、外気温度に応じて制御することもできるが、この制御は、請求項1記載の制御とはまったく異なる制御であり、外気温度による燃焼伝播期間初期におけるフィルタ各部温度のばらつきを低減する方向で行われるべきである。
【0021】
着火期間の終了すなわち燃焼伝播期間の開始時点は、上述の着火期間における給気流量の定給気流量値制御または外気温度の影響をキャンセルした定給気流量値制御と、フィルタ流入空気温度変化の一定化制御により、着火期間開始時点から一定時間後に実施することができる他、ヒータに面するフィルタの端面の温度をモニタして行うことができる。
【0022】
請求項6記載の構成によれば請求項1ないし5のいずれか記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において更に、放冷期間に給気流量を定給気流量値制御する。
このようにすれば、放冷期間において、フィルタの温度低下率が高すぎない範囲でできるだけ高速にフィルタ温度を低下させることができ、放冷期間の短縮を実現することができる。
【0023】
請求項7記載の構成によれば請求項1ないし6のいずれか記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において更に、燃焼伝播期間における給気手段の給気流量増大運転時に加熱手段の発生する熱量を低減させる。
このようにすれば、燃焼伝播期間の後半において給気流量増大による燃焼熱の増大に応じて段階的にまたは連続的にフィルタに供給する空気温度を低下させることができるので、フィルタ温度の過昇を抑止し、かつ、ヒータ消費電力を節約することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適態様を実施例を参照して説明する。
【0027】
【実施例1】
本発明の排気ガス浄化装置の一実施例を図1に示すブロック図を参照して説明する。
この排気ガス浄化装置は金属製のフィルタ収容ケース1を有し、フィルタ収容ケース1内にはセラミックハニカムフィルタ2が収容されている。フィルタ2の上流側端面に面してヒータ3が小間隔を隔てて対面配置されており、フィルタ2とヒータ3との間には温度センサ4が配設されている。なお、温度センサ4は、フィルタ2の上流側端面又はヒータ3の下流側端面に密接してもよい。
【0028】
ヒータ3は、裸のニクロム線を、ケース1に固定された電気絶縁性のセラミック部材(絶縁支持材)により支持しつつ、フィルタ2の軸方向と直角の方向へ張り回してなる。ヒータ3は、後述するコントローラ9を通じて商用200V交流電源から給電される。
フィルタ収容ケース1の上流側の端壁にはディーゼルエンジン100の排気主管101と送気用枝管102とが連結されている。送気用枝管102の末端を排気主管101に連結させてもよい。5は電磁弁、6はエアフローメータ、7はブロワであり、ブロワ7のモータMの駆動により外気が送気用枝管102を通じてフィルタ2に送入される。
【0029】
送気用枝管102から圧力ホース103が延設されており、圧力ホース103の先端には圧力センサ8が設けられている。104はフィルタであり、105はフィルタ収容ケース1の下流側の端壁から外部に排気ガスを放出する尾管である。
ブロワ7としては、流量が負荷流体抵抗に負の相関を有する形式のものが採用される。この種のものとしてはたとえば遠心翼形式のものが好適である。この種のブロワでは、回転数一定状態で流量は負荷流体抵抗に略逆比例する流量特性を有する。
【0030】
モータMとしては、交流モータ、直流モータのどちらでも採用することができる。前者では誘導モータ以外では通常、印加周波数を固定することにより回転数を固定することができ、後者では通常、印加電圧を固定することにより回転数を固定することができる。
温度センサ4、エアフローメータ6、圧力センサ8の信号はコントローラ9に入力され、コントローラ9は演算結果に基づいてヒータ3、電磁弁5、ブロワ7のモータMを駆動制御している。
【0031】
コントローラ9はマイコン(図示せず)を内蔵する制御装置であって、このマイコンは、入力される各種データをデジタルデータに変換後、演算処理してヒータ3、電磁弁5及びブロワ7用のモータMを駆動制御して再生を実行する。
12は異常発生時に発報する警報ブザー12であり、13は再生時期の到来を報知するランプであり、14はコントローラ9にフィルタ再生動作を指令する手動スイッチであり、15は車載バッテリである。
【0032】
フィルタ2はハニカムセラミックフィルタであって、コ−ジェライト又は炭化珪素を素材として円柱形状に焼成されている。フィルタ2はその両端面を貫通する多数の通気孔を有し、隣接する通気孔の一方は上流端で封栓され、その他方は下流端で封栓されている。排気ガスは隣接する通気孔間の多孔性隔壁を透過し、パティキュレ−トだけが下流端封栓通気孔及び多孔性隔壁に捕集される。
【0033】
コントローラ9は、温度センサ4が検出する温度が燃焼伝播期間に所定範囲に維持されるようにヒータ3への通電電流をフィードバック制御する。この種の二値オンオフフィードバック制御については周知であるので詳細な説明は省略する。
コントローラ9は、ブロワ7のモータMに印加する電圧を無段階に変更可能なインバータ回路を通じて、交流モータからなるモータMに給電する。入力されるPWM制御電圧により内蔵のパワースイッチング素子を断続制御してその出力周波数を制御するインバータ回路については周知の構成であるので詳細な説明は省略する。また、モータMとして直流モータを使用する場合には平均出力直流電圧をPWM制御型のコンバータで制御して回転数を制御できる。そしてこれらの回転数制御によりブロワ7の流量が制御される。この種のモータ制御回路は周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0034】
以下、このディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置の動作を説明する。
(パティキュレ−ト捕集動作)
ディ−ゼルエンジン100から排出された排気ガスは排気管101を通じてフィルタ収容ケース1内に導入され、排気ガス中のパティキュレ−トはフィルタ2で捕集され、浄化された排気ガスが尾管105から外部に排出される。なお、このパティキュレ−ト捕集動作時に電磁弁5は遮断され、ヒータ3及びブロワ7のモータMへの通電も遮断される。
【0035】
なお、この実施例では、ブロワ7としては、流量が負荷流体抵抗に負の相関を有する流量特性を有する形式のものを採用する。この形式のブロワとしては、たとえば遠心送風形状のものが好適である。
(フィルタ再生時期判定動作)
次に、コントローラ9により実行されるこのフィルタ2の再生時期判定動作を説明する。
【0036】
イグニッションスイチ(図示せず)がオンされると、バッテリ15からコントローラ9に電源電圧が供給され、これらは初期リセットされて動作を開始する。同時に図示しないスタータがエンジンを起動する。
次に、圧力センサ8から圧力Pを読み込み、温度センサ4から温度Tを読み込む。次に、エンジン運転中であれば、圧力Pが所定のしきい値圧力を超えるかどうかを判定し、超えればランプ13を点灯してフィルタ再生を要求する。
【0037】
(フィルタ再生動作)
オペレータがランプ13の発光を見てフィルタ再生が必要なことを確認し、エンジン停止期間中にフィルタ再生のためにスイッチ14をオンすれば、フィルタ再生ルーチンが実施してフィルタ2を再生する。このフィルタ再生ルーチンを図2に示すフローチャートおよび図3に示すタイミングチャートを参照して以下に説明する。なお、フィルタ再生は、着火期間、燃焼伝播期間および放冷期間の順に実施される。
【0038】
着火期間において、コントローラ9は、まず電磁弁5を開き、ヒータ3及びモータMへの給電を実行して加熱空気をフィルタ2に供給してそれを昇温させる(S10)。ブロワ駆動用のモータMは、エアフローメータ6から出力される検出給気流量値が着火期間目標給気流量値Q1に維持されるように、モータMの回転数を制御する。この回転数制御には上記インバータ回路の出力周波数を制御すればよいが、モータMが直流モータの場合にはモータMへ出力する直流電圧の大きさを制御してもよい。
【0039】
次に、再生開始時点からカウントするタイマーのカウント時間Tがあらかじめ定められた着火期間T1に達したら(S12)、次の燃焼伝播期間を開始し、モータMの回転数を低下させて給気流量Qを着火期間の給気流量Q1より小さいQ2に減らす(S14)。
この実施例では、タイマー制御により着火期間の長さT1を決定しているが、温度センサ4をフィルタ2の前端面に近接ないし接触して設置するなどしてしておけば、温度センサ4の検出温度はほぼフィルタの前端面温度に近似するので、検出温度がパティキュレ−ト着火温度を超えた段階で着火期間を終了することも可能である。
【0040】
この実施例で、着火期間終了後、給気流量Q1をQ2に減らすのは、着火領域からの延焼が大きな給気流量により軸方向へ進行するのを抑止し、フィルタ前端面をまんべんなく着火させるためである。なお、着火期間の給気流量を最初からQ2に設定することも考えられるが着火期間の給気流量が少ないと、フィルタ全体の昇温ができにくく、フィルタの前端面のみが加熱されているにもかかわらずフィルタ後端部の温度上昇が小さく、その後の軸方向燃焼伝播に悪影響が生じるためである。
【0041】
次に、タイマーが燃焼伝播期間になってからT2時間経過したかどうかを調べ(S16)、達したら、上記着火後の給気流量抑制により、フィルタの前端面全体に燃焼伝播面が生じたと判断して、モータMの駆動周波数を所定値にセットし、ブロワ7の回転数を所定値に固定する(S18)。この所定値は、通常のパティキュレ−ト量において給気流量Q2に近い値とすることが好ましい。なお、ステップS14、S16は省略可能である。なお、この実施例では、t2は少なくとも燃焼伝播期間の前半期間に開始されるように設定する。
【0042】
このようにすると、フィルタ中のパティキュレ−ト残存量が多く、燃焼伝播面がまだ比較的高温のフィルタの前部にある場合には、給気流量を押さえてその燃焼熱量の増大を抑止し、かつ、軸方向延焼速度がフィルタの径方向各部(特に比較的高温の径方向中心部と比較的低温の外周部との間で)で軸方向延焼速度がばらつくのを抑止する。
【0043】
そして、フィルタ中のパティキュレ−ト残存量が減少し、燃焼伝播面がフィルタの後部に移行した場合には、ブロワ7の負荷流体抵抗の減少により給気流量を増加させてその燃焼熱量を増大させて燃焼速度を速め、かつ、フィルタの前端部に比べて温度が低く燃焼速度が低下しがちなフィルタ後部の燃焼をアシストする。なお、フィルタ後部における軸方向延焼速度の増大では残りの軸方向延焼距離は短縮されているので、フィルタの径方向各部(特に比較的高温の径方向中心部と比較的低温の外周部との間で)での軸方向延焼速度が多少ばらついても問題とはならない。
【0044】
これにより、フィルタ後部における燃え残りを低減して再生効率を向上することができる。
次に、t2からの時間があらかじめ決められた所定の一定時間Tvが経過すれば(S20)、ヒータ3をオフし、給気流量Qを大きな所定値Q3にセットする(S22)。これにより、フィルタ2は冷たい給気により冷却されて冷却される。
【0045】
次に、t3からの時間があらかじめ決められた所定の放冷期間T3に達すれば(S24)、電磁弁5をオフし、ブロワ7をオフして再生動作を終了する。
【0046】
【実施例2】
他の実施例を次に説明する。
この実施例は、図4に示すように、図2のステップS20において、パティキュレ−ト残存量を調べてそれが0であると判定した時点で燃焼伝播期間を終了し、放冷期間に移行するようにしたものである。
【0047】
この実施例では、パティキュレ−ト残存量が0かどうかを、エアフローメータが検出する給気流量が所定値に達したかどうかで判定している。
このようにすれば、燃焼伝播期間の長さを必要最小限とすることができるので、再生時間を短縮することができる。
(変形態様)
その他、給気流量の増加率が飽和した時点またはそれから所定時間後に燃焼伝播期間を終了してもよい。
【0048】
その他、圧力センサ8の検出圧力が所定のしきい値まで低下したら燃焼伝播期間の終了と判定してもよく、この検出圧力の低下率変化が飽和した時点またはそれから所定時間後に燃焼伝播期間を終了してもよい。
【0049】
【実施例3】
他の実施例を次に説明する。
この実施例は、図2のステップS18、S20の代わりに、図5に示すように、再生開始時点におけるブロワ7を駆動した状態での圧力センサ8が検出する圧力Pini(または給気流量Q)に基づいてマップから燃焼伝播期間のTv期間における給気流量Qの変化パターンを決定するものである。
【0050】
すなわち、再生開始時点におけるブロワ7を駆動し、一定の給気流量を供給した時点において、圧力センサ8が検出する圧力Piniは正確にフィルタ2の流体抵抗に応じた値となる。そして、フィルタ2の流体抵抗はパティキュレ−ト量に応じて変化するので、この圧力Piniに基づいてマップから初期パティキュレ−ト量を良好に正確に推定することができる。
【0051】
この初期パティキュレ−ト量と燃焼伝播期間のTv期間における給気流量Qの変化パターンとフィルタ最高温度とは、一定の関係をもつ。したがって、フィルタ最高温度がその許容温度を超えない範囲によりあらかじめ実験により記憶したマップに初期パティキュレ−ト量を代入して燃焼伝播期間の後半期に可能な最大給気流量を決定することができる。これにより、再生時間の短縮と再生効率の向上を最大限に図ることができる。
【0052】
(変形態様)
再生直後の圧力センサ8が検出する圧力Piniの代わりに、燃焼伝播期間に常時、圧力センサ8により圧力を検出し、この値によりパティキュレ−ト残存量を判定することもできる。ただし、この場合には、流量センサにより流量を検出し、この流量と圧力とからフィルタの流体抵抗すなわちパティキュレ−ト残存量を検出する必要がある。そして、上記初期パティキュレ−ト量から、現時点で検出したパティキュレ−ト残存量を差し引いて燃焼したパティキュレ−ト量を求め、総燃焼熱量を求め、それと燃焼開始からいままでの時間を求め、フィルタ温度を推定することができる。そしてこのフィルタ温度に応じて選択された給気流量を供給することによりフィルタ最高許容温度に達することなく給気流量を増大させることができる。
【0053】
【実施例4】
他の実施例を次に説明する。
この実施例は、図2のステップS18、S20の代わりに、燃焼伝播期間のTv期間に図6に示すように温度センサ4の検出温度に基づいて給気流量を徐々に増加するものである。温度センサ4はできるだけフィルタ2に密着させることが好ましい。
【0054】
このようにすれば、検出温度がその時点の基準温度より高い場合には給気流量の増加率を押さえてフィルタ温度の過昇を抑止し、検出温度がその時点の基準温度より低い場合には給気流量の増加率を増加して燃焼を強化し、再生効率向上および再生時間の短縮を図ることができる。
【0055】
【実施例5】
他の実施例を次に説明する。
この実施例は、図2のステップS18とS20の間で、検出した給気流量Qに負の相関を有するようにヒータ3への通電電力を制御するものである。
給気流量Qの増大は、燃焼を盛んとしてフィルタ後部における燃え残り低減に効果的であるが、燃焼熱の発生量を増大するのでフィルタ温度が増加し過ぎる場合が生じる。
【0056】
この実施例においては、燃焼伝播期間の後半期間において給気流量を増大してパティキュレ−ト焼失速度を高めるものの、ヒータから空気を通じてフィルタに与える熱量を減らすので、フィルタ温度過昇を抑止しつつ、再生時間短縮、再生効率向上を図ることができるという優れた効果を奏することができる。
(変形態様)
なお、この実施例では、給気流量Qに応じてヒータ電力を変更したが、給気流量の連動することなく、給気流量が徐々に増大する燃焼伝播期間の後半期間に自動的にヒータ温度を徐々に低減してもよい。
【0057】
(変形態様)
なお、この実施例では、給気流量Qに応じてヒータ電力を変更したが、燃焼により発生する熱量に関連する他の検出量たとえば圧力や、給気流量と圧力との両方に応じてヒータ電力を制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】実施例1における再生制御動作を示すフローチャートである。
【図3】実施例1における再生制御時の温度および給気流量の変化を示すタイミングチャートである。
【図4】他の実施例における再生制御を示すフローチャートである。
【図5】他の実施例における再生制御を示すフローチャートである。
【図6】他の実施例における再生制御を示すフローチャートである。
【図7】他の実施例における再生制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2はフィルタ、3はヒータ(加熱手段)、6はエアフローメータ(給気流量関連物理量検出手段)、7はブロワ(給気手段)、9はコントローラ(加熱制御手段、給気制御手段)
Claims (7)
- ディ−ゼルエンジンの排気経路に介設されてパティキュレ−トを捕集するフィルタ、
前記フィルタに堆積されたパティキュレ−トを加熱する加熱手段、
前記パティキュレ−ト燃焼のために前記フィルタに給気する給気手段、
パティキュレ−ト着火時点近傍までの着火期間、着火した前記パティキュレ−トを延焼させる燃焼伝播期間、及び、前記燃焼伝播期間後に前記フィルタを冷却する放冷期間からなる再生期間に前記加熱手段の発生熱量を制御する加熱制御手段、及び、
前記再生期間に前記給気手段の給気流量を制御する給気制御手段、
を備えるディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において、
前記給気手段は、前記残存量に負の相関を有して給気流量が変化する特性を有し、
前記給気制御手段は、前記燃焼伝播期間の少なくとも後半期間にて前記給気手段の給気流量が前記パティキュレ−トの残存量に負の相関を有するように前記給気流量を無段階または多段階に変化させ、かつ、前記燃焼伝播期間の少なくとも後半期間の少なくとも一部にて前記給気手段の回転数制御用の電気パラメータを固定する制御を行うことを特徴とするディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置。 - 請求項1記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において、
前記パティキュレ−トの残存量に関連する物理量を検出する残存量関連物理量検出手段を有し、
前記給気制御手段は、前記物理量に基づいて前記給気流量が前記パティキュレ−トの残存量に負の相関を有するように前記燃焼伝播期間に前記給気手段を駆動する制御を行うことを特徴とするディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置。 - 請求項1又は2記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において、
前記給気流量に関連する物理量を検出する給気流量関連量検出手段を有し、
前記給気制御手段は、前記給気流量に関連する物理量に基づいて前記給気流量が所定値に達したと判定した時点で前記燃焼伝播期間を終了させることを特徴とするディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置。 - 請求項1ないし3のいずれか記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において、
前記給気制御手段は、前記燃焼伝播期間の前記初期期間に所定の前記給気流量にて前記給気手段を駆動することを特徴とするディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置。 - 請求項1ないし4のいずれか記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において、
前記給気制御手段は、前記着火期間に前記給気流量を所定値とすることを特徴とするディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置。 - 請求項1ないし5のいずれか記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において、
前記給気制御手段は、前記放冷期間に前記給気流量を所定値とすることを特徴とするディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置。 - 請求項1ないし6のいずれか記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において、
前記加熱制御手段は、前記燃焼伝播期間における前記給気手段の給気流量増大運転時に前記加熱手段の発生する熱量を低減させることを特徴とするディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置。
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