JP4145520B2 - 内燃機関のカム位相制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクシャフトに対する吸気カムおよび/または排気カムの実際の位相である実カム位相を、応答指定型制御アルゴリズムにより、目標カム位相に収束させるように制御する内燃機関のカム位相制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のカム位相制御装置として、例えば特開2001−132482号公報に記載されたものが知られている。この内燃機関は、吸気カムの実カム位相を変更するカム位相可変装置を備えており、このカム位相可変装置は、油圧駆動式のカム位相可変機構と、これにオイルポンプからの油圧を供給する電磁制御弁などで構成されている。また、カム位相制御装置は、クランクシャフトおよび吸気カムの角度位置に相当する信号をそれぞれ検出するクランク角センサおよびカム角センサと、これらのセンサの検出信号が入力されるコントローラとを備えている。このコントローラは、クランク角センサおよびカム角センサの検出信号に基づいて実カム位相を算出し、内燃機関の運転状態に基づいて目標カム位相を算出するとともに、以下に述べるように、応答指定型制御アルゴリズムとしてのスライディングモード制御アルゴリズムに基づいて、実カム位相を目標カム位相に収束させるように制御する。
【0003】
すなわち、電磁制御弁への制御入力を入力とし、算出された実カム位相を出力とする、カム位相可変機構および電磁制御弁を含む制御対象を連続時間系モデルとしてモデル化する。具体的には、制御対象の状態方程式を、実カム位相の一次および二次の時間微分値を状態変数とする微分方程式として設定するとともに、切換関数を、目標カム位相と実カム位相との偏差、およびその時間微分値(すなわち変化速度)を状態変数とする線形関数として設定する。そして、以上のように設定した切換関数の状態変数である偏差およびその変化速度が切換直線上に載るように制御入力を算出することによって、すなわち偏差およびその変化速度が切換直線上をスライディングし、値0に収束するように制御入力を算出することによって、実カム位相が目標カム位相に収束するように制御される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のカム位相可変装置では、油圧駆動式のカム位相可変機構は摩擦特性の強いものが多く、そのような制御対象を制御する場合、制御性を高める観点から制御周期を所定の周期よりも可能な限り短くする方が好ましい。また、目標カム位相は、内燃機関の運転状態に基づいて算出されているため、そのパワースペクトルは、制御周期に相当する周波数よりもかなり低い周波数域に存在している。これは、目標カム位相が、運転状態やアクセル開度などの変化速度の遅いパラメータに基づいて算出されるので、算出された目標カム位相の変化速度も遅いものとなってしまうことによる。
【0005】
したがって、目標カム位相と実カム位相との偏差の変化速度を切換関数の状態変数とする上記従来のカム位相制御装置では、目標カム位相の変化速度が遅いことにより、それに基づいて制御される実カム位相の変化速度も遅いものとなるため、目標カム位相と実カム位相との偏差の変化速度は、制御周期のような短い時間間隔では値0近傍となり、変化しない状態となってしまう。その結果、偏差の算出値は、ノイズの影響を受けやすく、算出精度の低いものとなってしまう。さらに、偏差の変化速度が値0近傍となり、切換関数が偏差とほぼ等価になってしまうことによって、スライディングモード制御特有のスライディングモードの実現が困難になるため、ロバスト性や応答指定特性を確保できなくなる。以上により、実カム位相が目標カム位相に向かって収束する際の過渡状態での制御性の低下を招いてしまい、例えば、実カム位相が目標カム位相に対してオーバーシュートしてしまうことがある。
【0006】
また、従来のカム位相制御装置では、制御対象を連続時間系モデルとしてモデル化しているので、制御対象モデルのモデルパラメータを制御対象の実験データから直接同定することは困難である。そのため、具体的には、連続時間系モデルを離散時間系モデルに近似変換し、それに基づいてモデルパラメータを同定しなければならないので、このような近似変換の使用により、モデルパラメータの同定精度が低下してしまう。さらに、離散時間系モデルを連続時間系モデルに再度、近似変換しなければならないので、このような2回の近似変換の使用により、制御対象モデルのモデル化誤差も増大してしまう。その結果、制御の安定余裕を確保するために、コントローラゲインを低く抑える必要が生じ、制御性の低下を招く。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、実カム位相を変更する機構の摩擦特性が強い場合でも、実カム位相が目標カム位相に収束する際の過渡状態での制御性を向上させることができ、モデルパラメータを精度よくかつ容易に同定することができる内燃機関のカム位相制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、吸気カム6aおよび排気カム7aの少なくとも一方の、クランクシャフト8に対する実際の位相である実カム位相CAINを制御する内燃機関3のカム位相制御装置1であって、実カム位相CAINを変更するカム位相可変装置10と、実カム位相CAINを検出するカム位相検出手段(ECU2、カム角センサ20)と、内燃機関3の運転状態(エンジン回転数NE、スロットル弁開度TH)を検出する運転状態検出手段(ECU2、スロットル弁開度センサ21、クランク角センサ23)と、検出された運転状態に応じて、目標カム位相CAINCMDを設定する目標カム位相設定手段(ECU2、ステップ5)と、カム位相可変装置10への制御入力DUTを入力としかつ実カム位相CAINを出力とする制御対象を離散時間系モデルとしてモデル化する応答指定型制御アルゴリズム(式(1))により、実カム位相CAINを目標カム位相CAINCMDに収束させるための制御入力DUTを所定の制御周期ΔTで決定するコントローラ(ECU2)と、制御入力DUT、実カム位相CAIN、および、実カム位相CAINと目標カム位相CAINCMDとの偏差(追従誤差e)を、制御周期ΔTよりも長い所定のサンプリング周期ΔTsでそれぞれサンプリングするサンプリング手段(ECU2)と、を備え、離散時間系モデルは、サンプリングされた制御入力DUT(n)、およびサンプリングされた実カム位相CAINの時系列データ(CAIN(n+1)、CAIN(n),CAIN(n−1))で構成され、コントローラ(ECU2)は、サンプリングされた偏差の時系列データ(e(k)、e(k−5))の関数として切換関数σ(k)を構成する応答指定型制御アルゴリズム(式(11))により、制御入力DUT(k)を決定し、応答指定型制御アルゴリズムは、スライディングモード制御アルゴリズムおよびバックステッピング制御アルゴリズムの一方であることを特徴とする。
【0009】
この内燃機関のカム位相制御装置によれば、応答指定型制御アルゴリズムにおいて、制御対象が離散時間系モデルとしてモデル化されるので、モデルパラメータを、実験データやシュミレーションデータに基づき、最小二乗法などの一般的な同定アルゴリズムによって、連続時間系モデルを用いる従来の場合よりも精度よくかつ容易に同定することができる。また、同じ理由により、オンボード同定器をカム位相制御装置に付加することが可能になり、そのようにした場合には、モデルパラメータをリアルタイムで適切かつ容易に同定でき、制御性を向上させることができる。さらに、同じ理由により、制御対象をモデル化する際に近似変換を使用する必要がないので、連続時間系モデルを用いる従来の場合と比べて、制御対象モデルのモデル化誤差を低減させることができるとともに、制御の安定余裕をより多く確保できることで、コントローラゲインをより大きく確保でき、制御性を向上させることができる。また、同じ理由により、応答指定型制御アルゴリズムの制御目的である、制御対象の出力の目標値への収束応答やその出力の周波数応答の指定(例えばH制御など)を、精度よく行うことができる。
【0010】
また、前述したように、この種のカム位相制御装置において、カム位相可変装置の摩擦特性が強い場合、制御性を向上させるために、所定の周期よりも短い制御周期で制御入力を決定する必要がある。一方、実カム位相を、変化速度の遅い目標カム位相に精度よく追従させるには、目標カム位相または実カム位相のパワースペクトルが存在する周波数域での、制御対象モデルと実制御対象との周波数特性を一致させる必要がある。したがって、この内燃機関のカム位相制御装置によれば、サンプリング周期を制御周期よりも長い所定の値に設定するとともに、制御対象の離散時間系モデルを、このサンプリング周期でサンプリングされた制御入力および実カム位相の時系列データで構成しているので、目標カム位相のパワースペクトルが存在する周波数域での制御対象の動特性を、この離散時間系モデルに適切に反映させることができる。その結果、制御性をさらに向上させることができる。
【0011】
さらに、この内燃機関のカム位相制御装置によれば、切換関数が、目標カム位相と実カム位相との偏差の複数の時系列データの関数として構成されるとともに、これらの時系列データのサンプリング周期が制御周期よりも長く設定されているので、偏差の変化速度を切換関数の成分とする従来のカム位相制御装置と異なり、目標カム位相と実カム位相との偏差の変化量を適切にサンプリングすることができ、切換関数の増減をノイズの影響を回避しながらより正確に算出できることによって、切換関数を精度よく値0に収束させることができる。その結果、応答指定型制御アルゴリズムとして、例えばスライディングモード制御アルゴリズムを用いた場合には、スライディングモードを確実に発生させることができることによって、スライディングモード制御の特徴である、ロバスト性および応答指定特性を確保することができる。また、応答指定型制御アルゴリズムとして、バックステッピング制御アルゴリズムを用いた場合にも、ロバスト性および応答指定特性に優れたカム位相制御装置を実現することができる。同じ理由により、例えばカムからの反力などの外乱が制御対象に入力されたときに、それに対する切換関数の感度を向上させることができ、切換関数を外乱の影響を適切に反映した値として算出できることにより、外乱に対する制御の安定性を確保することができる。これにより、切換関数を適切に算出することができる。以上により、実カム位相が目標カム位相に収束する際の過渡状態での制御性を向上させることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、吸気カム6aおよび排気カム7aの少なくとも一方の、クランクシャフト8に対する実際の位相である実カム位相CAINを制御する内燃機関3のカム位相制御装置1であって、実カム位相CAINを変更するカム位相可変装置10と、実カム位相CAINを検出するカム位相検出手段(ECU2、カム角センサ20)と、内燃機関3の運転状態(エンジン回転数NE、スロットル弁開度TH)を検出する運転状態検出手段(ECU2、スロットル弁開度センサ21、クランク角センサ23)と、検出された運転状態に応じて、目標カム位相CAINCMDを設定する目標カム位相設定手段(ECU2、ステップ5)と、検出された実カム位相CAINと設定された目標カム位相CAINCMDとの偏差(追従誤差e)を所定のサンプリング周期ΔTsでサンプリングするサンプリング手段(ECU2)と、サンプリングされた偏差の複数の時系列データ(e(k)、e(k−5))の関数として切換関数σ(k)を構成する応答指定型制御アルゴリズムにより、実カム位相CAINを目標カム位相CAINCMDに収束させるための、カム位相可変装置10への制御入力DUTを所定の制御周期ΔTで決定するコントローラ(ECU2)と、を備え、所定のサンプリング周期ΔTsは、制御周期ΔTよりも長く設定されており、応答指定型制御アルゴリズムは、スライディングモード制御アルゴリズムおよびバックステッピング制御アルゴリズムの一方であることを特徴とする。
【0013】
この内燃機関のカム位相制御装置によれば、切換関数が、所定のサンプリング周期でサンプリングされた目標カム位相と実カム位相との偏差の複数の時系列データの関数として設定されるので、これらの時系列データのサンプリング周期を適切に設定することにより、目標カム位相と実カム位相との偏差を、目標カム位相のパワースペクトルが存在する周波数域における偏差の増減挙動が適切に反映された値としてサンプリングすることが可能になる。これにより、例えばカム位相可変装置の摩擦特性が強く、目標カム位相のパワースペクトルが存在する周波数域に相当する周期よりも短い制御周期で制御入力を算出する場合でも、偏差の変化速度を切換関数の成分とする従来のカム位相制御装置と異なり、切換関数をノイズの影響を回避しながら適切に算出することが可能になり、それにより、実カム位相が目標カム位相に収束する際の過渡状態における応答性を高めることができる。さらに、目標カム位相と実カム位相との偏差の複数の時系列データのサンプリング周期が、制御周期よりも長く設定されているので、偏差の変化速度を切換関数の成分とする従来のカム位相制御装置と異なり、目標カム位相と実カム位相との偏差の変化量を適切にサンプリングすることができ、切換関数の増減をノイズの影響を回避しながらより正確に算出できることによって、切換関数を精度よく値0に収束させることができる。その結果、応答指定型制御アルゴリズムとして、例えばスライディングモード制御アルゴリズムを用いた場合には、スライディングモードを確実に発生させることができることによって、スライディングモード制御の特徴である、ロバスト性および応答指定特性を確保することができる。また、応答指定型制御アルゴリズムとして、バックステッピング制御アルゴリズムを用いた場合にも、ロバスト性および応答指定特性に優れたカム位相制御装置を実現することができる。同じ理由により、例えばカムからの反力などの外乱が制御対象に入力されたときに、それに対する切換関数の感度を向上させることができ、切換関数を外乱の影響を適切に反映した値として算出できることにより、外乱に対する制御の安定性を確保することができる。これにより、切換関数を適切に算出することができる。以上により、実カム位相が目標カム位相に収束する際の過渡状態での制御性を向上させることができる。
【0016】
請求項に係る発明は、請求項1または2に記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、制御入力DUT(k)は、複数の入力の総和(Ueq(k)+Urch(k)+Unl(k)+Uadp(k)+Udamp(k))であり、複数の入力の各々は、切換関数σ(k)の値および実カム位相CAIN(k)の少なくとも一方に応じて決定されることを特徴とする。
【0017】
この種のスライディングモード制御アルゴリズムでは、制御入力が、切換関数の値および/または制御対象の出力に応じて決定される複数の入力の総和として、構成される(例えば、特開平11−153051号公報)。したがって、この内燃機関のカム位相制御装置によれば、複数の入力を適切に設定することにより、切換関数の状態変数すなわち偏差の時系列データの値を切換超平面上に載せることが可能になり、偏差を値0に収束させることが可能になる。その結果、実カム位相を目標カム位相に適切に収束させることができる。
【0018】
請求項に係る発明は、請求項に記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、複数の入力は、切換関数σ(k)の値に比例する到達則入力Urch(k)を含むことを特徴とする。
【0019】
スライディングモード制御アルゴリズムでは、切換関数の状態変数が大きな外乱などの影響により切換超平面(または切換直線)上から大きく外れた場合でも、制御入力に含まれる、切換関数の値に比例する到達則入力により、状態変数の値を切換超平面上に迅速に戻すことができるということが、理論上、確認されている(例えば、特開平11−153051号公報)。したがって、この内燃機関のカム位相制御装置によれば、切換関数の状態変数としての実カム位相と目標カム位相との偏差を、切換超平面上に迅速に戻すことができ、迅速に値0に収束させることができることで、制御の速応性を確保できる。
【0020】
請求項に係る発明は、請求項3または4に記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、複数の入力は、切換関数σ(k)の値とは正負が逆に設定される非線形入力Unl(k)を含むことを特徴とする。
【0021】
スライディングモード制御アルゴリズムでは、制御入力に含まれる、切換関数の値とは正負が逆に設定される非線形入力により、切換関数の状態変数を切換超平面に載せることができ、それにより、モデル化誤差および外乱の影響を適切に抑制することができるとともに、制御対象の非線形特性をそれに応じて補償することができるということが、理論上、確認されている(例えば、特開平11−153051号公報)。したがって、この内燃機関のカム位相制御装置によれば、モデル化誤差および外乱の影響を抑制することができるとともに、制御対象の非線形特性をそれに応じて補償することができる。
【0022】
請求項に係る発明は、請求項3または4に記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、カム位相可変装置10は、油圧源(油圧ポンプ11)からの油圧OPを互いに別個の油圧(進角油圧OP1、遅角油圧OP2)としてそれぞれ出力する2つの油圧系統と、2つの油圧系統の油圧(進角油圧OP1、遅角油圧OP2)間の差圧DOP12が値0となる中立位置を含む所定の移動範囲内で移動可能なスプール弁体12aとを有し、制御入力DUTに応じて、スプール弁体12aを移動範囲内で移動させることにより、2つの油圧系統の油圧間の差圧DOP12を変更する電動スプール弁12と、電動スプール弁12から出力された2つの油圧系統の油圧間の差圧DOP12に応じて実カム位相CAINを変更するカム位相可変機構13と、を備え、複数の入力は、切換関数σ(k)の値とは正負が逆に設定される非線形入力Unl(k)を含み、非線形入力Unl(k)のゲインHは、2つの油圧系統の油圧間の差圧DOP12に応じて設定されることを特徴とする。
【0023】
この種の電動スプール弁では、2つの油圧系統からそれぞれ出力される2つの油圧系統の油圧は、移動範囲内でのスプール弁体の位置、すなわち2つの油圧系統の油圧間の差圧に対して非線形な特性を示すのが一般的であり、そのため、カム位相可変装置の出力である実カム位相も非線形な特性を示すのが一般的である。これに対して、本発明によれば、非線形入力のゲインが、2つの油圧系統の油圧間の差圧に応じて設定されるので、上述したカム位相可変装置の非線形な出力特性を、それに応じて適切に補償することができる。
【0024】
請求項に係る発明は、請求項に記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、非線形入力Unl(k)のゲインHは、2つの油圧系統の油圧間の差圧が値0を含む所定範囲内にあるとき(制御入力の前回値DUT(k−1)が−Dc≦DUT(k−1)≦Dbにあるとき)には、所定範囲内にないときよりも大きな値(最大値Hmax)に設定されることを特徴とする。
【0025】
一般に、この種の電動スプール弁では、スプール弁体が中立位置付近にあるとき、すなわち2つの油圧系統の油圧間の差圧が値0付近の値になっているときに、非線形特性が最も顕著になることで、挙動が最も不安定になる。これに対して、本発明によれば、非線形入力のゲインが、2つの油圧系統の油圧間の差圧が値0を含む所定範囲内にあるときに、所定範囲内にないときよりも大きな値に設定されるので、この所定範囲を適切に設定することにより、非線形特性が最も顕著になるときに、それに応じて非線形入力のゲインをより大きく設定することができる。それにより、電動スプール弁の非線形特性をより効果的かつ適切に補償することができる。
【0026】
請求項に係る発明は、請求項3ないし7のいずれかに記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、複数の入力は、実カム位相の変化速度(CAIN(k)−CAIN(k−1))に比例するダンピング入力Udamp(k)を含むことを特徴とする。
【0027】
一般に、カム位相可変装置では、目標カム位相の変化速度が大きいときには、機械部分の慣性力などに起因して、実カム位相が目標カム位相に対してオーバーシュートしやすい。これに対して、この内燃機関のカム位相制御装置によれば、実カム位相の変化速度に比例するダンピング入力が制御入力に含まれているので、目標カム位相に対する実カム位相のオーバーシュートを、その変化速度に応じて適切に抑制することができる。特に、請求項8に係る発明のように、カム位相可変装置が油圧駆動式であることで、油圧系の慣性力およびオイルの圧縮性などに起因してオーバーシュートが発生しやすい場合には、それを効果的に抑制することができる。
【0028】
請求項に係る発明は、請求項3ないし8のいずれかに記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、複数の入力は、切換関数σ(k)の積分値に比例する適応則入力Uadp(k)を含むことを特徴とする。
【0029】
切換関数の積分値に比例する適応則入力が制御入力に含まれる、いわゆる適応スライディングモード制御アルゴリズムでは、この適応則入力により、制御対象の定常偏差、モデル化誤差および外乱の影響を抑制しながら、切換関数の状態変数の値を切換超平面上に確実に載せることができるということが、理論上、確認されている(例えば、特開平11−153051号公報)。したがって、この内燃機関のカム位相制御装置によれば、制御対象の定常偏差、モデル化誤差および外乱の影響を抑制しながら、実カム位相と目標カム位相との偏差の時系列データを切換超平面上に載せることができ、偏差を値0に確実に収束させることができる。すなわち、制御対象の定常偏差、モデル化誤差および外乱に対する制御の安定性を確保できる。
【0030】
請求項10に係る発明は、請求項に記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、適応則入力Uadp(k)のゲインGは、切換関数σ(k)の値に応じて設定されることを特徴とする。
【0031】
この内燃機関のカム位相制御装置によれば、適応則入力のゲインが切換関数の値に応じて設定されるので、適応則入力の積分特性に起因する、目標カム位相に対する実カム位相のオーバーシュートを、適切に抑制することができる。
【0032】
請求項11に係る発明は、請求項3ないし10のいずれかに記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、複数の入力は、サンプリング手段により所定のサンプリング周期ΔTsで連続的にサンプリングされた複数の実カム位相の値(CAIN(k),CAIN(k−5))に基づいて決定される等価制御入力Ueq(k)を含むことを特徴とする。
【0033】
スライディングモード制御アルゴリズムでは、制御入力に含まれる等価制御入力により、切換関数の状態変数を切換超平面上に確実に拘束しておくことができるということが、理論上、確認されている(例えば、特開平11−153051号公報)。したがって、この内燃機関のカム位相制御装置によれば、切換関数の状態変数としての偏差の時系列データを、切換超平面上に確実に拘束しておくことができ、それにより、実カム位相を目標カム位相に確実に収束させる(すなわち偏差を値0に収束させる)ことができるとともに、その収束後の実カム位相の挙動を安定した状態に保持できる。また、請求項2に係る発明のように、実カム位相のサンプリング周期が制御周期よりも長く設定されている場合には、カム位相可変装置の摩擦特性が強いときでも、実カム位相のサンプリング周期を、目標カム位相のパワースペクトルが存在する周波数域に応じて適切に設定することにより、その周波数域付近での実カム位相の動特性を、等価制御入力に適切に反映させることができる。それにより、目標カム位相のパワースペクトルが存在するの周波数域付近における実カム位相の制御の安定性を確保することができる。
【0034】
請求項12に係る発明は、請求項3ないし11のいずれかに記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、複数の入力のうちの少なくとも1つのゲイン(非線形入力UnlのゲインG)は、実カム位相CAINを進角側に変更するときと遅角側に変更するときとの間で、互いに異なるようにスケジュール化されている(図13)ことを特徴とする。
【0035】
この内燃機関のカム位相制御装置によれば、制御入力に対する実カム位相の応答性がその進角側と遅角側とで互いに異なる場合に、実カム位相の進角側および遅角側への応答性が互いに同じになるように補償することができる。
【0036】
請求項13に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、カム位相可変装置10は、油圧源(油圧ポンプ11)から油圧OPが供給されることにより実カム位相CAINを変更するように構成され、切換関数σ(k)を構成する偏差(追従誤差e)の複数の時系列データ(e(k),e(k−5))のうちの少なくとも1つ(e(k−5))には、乗算係数(切換関数設定パラメータS)が乗算され、乗算係数(切換関数設定パラメータS)は、油圧源からカム位相可変装置に供給される油圧OPに応じて設定されることを特徴とする。
【0037】
一般に、この種のカム位相可変装置では、油圧源から供給される油圧が変化するのに伴い、カム位相可変装置の動特性(実カム位相の動特性)、より詳しくはその応答特性が変化する。これに対して、この内燃機関のカム位相制御装置では、油圧源からの油圧に応じて設定される乗算係数が、切換関数を構成する偏差の複数の時系列データのうちの少なくとも1つに乗算されることで、カム位相可変装置の応答特性の状態に応じて、実カム位相の目標カム位相への追従速度を適切に設定できるため、カム位相可変装置による実カム位相の変更動作を、油圧の変化に伴う応答特性の変化を補償しながら適切に実行することができ、それにより、制御入力に対する実カム位相の応答性を安定した状態に保持できる。その結果、内燃機関を安定した運転状態に保持できる。
【0038】
請求項14に係る発明は、請求項13に記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、乗算係数(切換関数設定パラメータS)は、油圧OPと所定の基準圧OPREFとの差圧DOPが大きいほど、偏差の減少速度が小さくなるように(基準値Sopが小さくなるように)設定されていることを特徴とする。
【0039】
この種のカム位相可変装置では、油圧源から供給される油圧が所定圧のときに、実カム位相の目標カム位相への収束挙動が最適な状態となり、所定圧よりも高いほど、目標カム位相に対する実カム位相のオーバーシュートが発生しやすくなるとともに、所定圧よりも低いほど、実カム位相の目標カム位相への収束速度が遅くなってしまうという事実が確認されている(図6参照)。したがって、この内燃機関のカム位相制御装置によれば、所定の基準圧を上記のような所定圧として設定することにより、油圧が所定の基準圧よりも高いときには、偏差の減少速度が小さくなることで、目標カム位相に対する実カム位相のオーバーシュートの発生を抑制することができるとともに、油圧が所定の基準圧よりも低いときには、偏差の減少速度が大きくなることで、実カム位相の目標カム位相への収束速度を適切に高めることができる。
【0040】
請求項15に係る発明は、請求項13または14に記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、油圧源(油圧ポンプ11)は、内燃機関3で使用されるオイルをカム位相可変装置10に供給し、乗算係数(切換関数設定パラメータS)は、内燃機関3の始動時からの経過時間が短いほど(始動後タイマのタイマ値Tmastが小さいほど)、偏差の減少速度が小さくなるように設定されていることを特徴とする。
【0041】
一般に、この種のカム位相可変装置では、油圧源から供給されるオイルの温度が低いほど、オイルの粘性抵抗が大きくなることで、実カム位相の変化速度が遅くなり、その応答性が低下することによって、実カム位相の挙動が不安定になる。そのため、内燃機関の始動直後には、オイル温度が低いことで、実カム位相の挙動が不安定になることがある。これに対して、この内燃機関のカム位相制御装置によれば、内燃機関の始動時からの経過時間が短いほど、偏差の減少速度が遅くなるように設定されているので、オイルの温度が低く、実カム位相の挙動が不安定になりやすい状態にあるほど、制御の応答性を遅くすることによって、内燃機関の始動直後における実カム位相の不安定な状態を補償しながら、実カム位相を目標カム位相に適切に収束させることができ、制御の安定性を確保することができる。
【0042】
請求項16に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関3のカム位相制御装置1において、カム位相可変装置10は、内燃機関3で使用されるオイルが油圧源(油圧ポンプ11)から供給されることにより実カム位相CAINを変更するように構成され、切換関数σ(k)を構成する偏差(追従誤差e)の複数の時系列データ(e(k),e(k−5))のうちの少なくとも1つ(e(k−5))には、乗算係数(切換関数設定パラメータS)が乗算され、乗算係数(切換関数設定パラメータS)は、内燃機関3の始動時からの経過時間が短いほど(始動後タイマのタイマ値Tmastが小さいほど)、偏差の減少速度が小さくなるように設定されていることを特徴とする。
【0043】
この内燃機関のカム位相制御装置によれば、請求項15に係る発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0078】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る内燃機関のカム位相制御装置について説明する。図1は、本実施形態のカム位相制御装置およびこれを適用した内燃機関の概略構成を示している。同図に示すように、このカム位相制御装置1は、後述するように実カム位相CAINを変更するカム位相可変装置10と、これを制御するためのECU2(カム位相検出手段、運転状態検出手段、目標カム位相設定手段、サンプリング手段)などを備えている。
【0079】
この内燃機関(以下「エンジン」という)3は、4サイクルDOHC型ガソリンエンジンであり、吸気カムシャフト6および排気カムシャフト7を備えている。吸気カムシャフト6は、吸気弁4を開閉駆動する吸気カム6aを有し、排気カムシャフト7は、排気弁5を開閉駆動する排気カム7aを有している。これらの吸気および排気カムシャフト6,7は、図示しないタイミングベルトを介してクランクシャフト8に連結されており、クランクシャフト8が2回転するごとに1回転する。
【0080】
上記カム位相可変装置10は、クランクシャフト8に対する吸気カム6aの実際の位相(以下、単に「実カム位相」という)CAINを無段階に進角または遅角させるものであり、図2に示すように、油圧ポンプ11、電動スプール弁12およびカム位相可変機構13などで構成されている。油圧源としての油圧ポンプ11は、電動式のものであり、ECU2により駆動されたときに、エンジン3のオイルパン3aに蓄えられた潤滑用のオイルを、油路14cを介して吸い込むとともに、これを昇圧した状態で、油路14cを介して電動スプール弁12に供給する。
【0081】
電動スプール弁12は、進角油路14aおよび遅角油路14bを介してカム位相可変機構13に接続されており、油圧ポンプ11から供給された油圧OPを、進角油圧OP1および遅角油圧OP2として、進角油路14aおよび遅角油路14bを介して、カム位相可変機構13にそれぞれ出力する。電動スプール弁12は、所定の移動範囲内で移動自在のスプール弁体12aを有している。電動スプール弁12は、ECU2に電気的に接続されており、後述する制御入力DUTに応じた駆動信号がECU2から入力された際、スプール弁体12aを、駆動信号に応じて所定の移動範囲内で移動させることにより、進角油圧OP1および遅角油圧OP2(2つの油圧系統の油圧)をそれぞれ変化させる。
【0082】
具体的には、制御入力DUTが値0(デューティ比50%に相当する値)のときには、スプール弁体12aが所定の移動範囲の中央の位置である中立位置に保持され、それにより、進角油圧OP1および遅角油圧OP2が互いに同じ値に保持される。すなわち、進角油圧OP1と遅角油圧OP2との差圧DOP12(2つの油圧系統の油圧間の差圧)が値0に保持される。また、制御入力DUTが正値のときには、それに応じた位置にスプール弁体12aが移動することにより、差圧DOP12を正値に変化させ、制御入力DUTが負値のときには、差圧DOP12を負値に変化させる。
【0083】
上記カム位相可変機構13は、ハウジング13aおよびベーン13bなどを備えている。ハウジング13aは、図示しないスプロケットを備え、このスプロケットおよび前記タイミングベルトを介してクランクシャフト8に連結されており、クランクシャフト8の回転に伴って同じ方向に回転する。
【0084】
さらに、ベーン13bは、4枚羽根タイプのもので、吸気カムシャフト6の一端部に一体に回転するように取り付けられている。また、ベーン13bは、所定の回転角度範囲内で相対的に回転可能な状態で、ハウジング13aに収容されている。さらに、ベーン13bとハウジング13aとの間には、2つの進角室13c,13cおよび2つの遅角室13d,13dが形成されている。上記進角油路14aは、その下流側が2つに分岐しており、それらの分岐部分の先端部が進角室13c,13cにそれぞれ接続されている。これにより、各進角室13cには、進角油圧OP1が進角油路14aを介して電動スプール弁12から供給される。また、上記遅角油路14bも、その下流側が2つに分岐しており、それらの分岐部分の先端部が遅角室13d,13dにそれぞれ接続されている。これにより、各遅角室13dには、遅角油圧OP2が遅角油路14bを介して電動スプール弁12から供給される。
【0085】
以上のカム位相可変装置10では、油圧ポンプ11の運転中、電動スプール弁12が制御入力DUTに応じて作動することにより、進角油圧OP1が進角室13c,13cに、遅角油圧OP2が遅角室13d,13dにそれぞれ供給される。その際、進角油圧OP1と遅角油圧OP2との差圧DOP12が値0のとき(すなわち制御入力DUTが値0のとき)には、ベーン13bがハウジング13aに対して相対的に回転せず、それにより、カム位相可変機構13は、実カム位相CAINをそのときの状態に保持する。また、上記差圧DOP12が正値のとき(DUT>0のとき)には、それに応じてベーン13bがハウジング13aに対して相対的に進角側に回転することにより、実カム位相CAINが進角される。一方、上記差圧DOP12が負値のとき(DUT<0のとき)には、それに応じてベーン13bがハウジング13aに対して相対的に遅角側に回転することにより、実カム位相CAINが遅角される。
【0086】
また、吸気カムシャフト6のカム位相可変機構13と反対側の端部には、カム角センサ20が設けられている。このカム角センサ20(カム位相検出手段)は、例えばマグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、吸気カムシャフト6の回転に伴い、パルス信号であるCAM信号を所定のカム角(例えば1゜)ごとにECU2に出力する。
【0087】
一方、エンジン3の吸気管16には、スロットルバルブ17およびスロットル弁開度センサ21が設けられている。スロットルバルブ17は、電動式のものであり、ECU2によりその開度(以下「スロットル弁開度」という)THが制御される。スロットル弁開度センサ21(運転状態検出手段)は、スロットル弁開度THを検出して、その検出信号をECU2に出力する。
【0088】
また、吸気管16のスロットルバルブ17よりも下流側には、吸気管内絶対圧センサ22が設けられている。この吸気管内絶対圧センサ22は、例えば半導体圧力センサなどで構成され、吸気管16内の吸気管内絶対圧PBAを検出して、その検出信号をECU2に出力する。
【0089】
さらに、エンジン3には、クランク角センサ23が設けられている。クランク角センサ23(運転状態検出手段)は、クランクシャフト8の回転に伴い、いずれもパルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。
【0090】
CRK信号は、所定のクランク角(例えば30゜)ごとに1パルスが出力される。ECU2は、このCRK信号に応じ、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出するとともに、CRK信号と前述したカム角センサ20によるCAM信号に基づき、実カム位相CAINを算出する。また、TDC信号は、各気筒のピストン9が吸入行程開始時のTDC位置よりも若干、手前の所定クランク角度位置にあることを表す信号であり、所定クランク角ごとに1パルスが出力される。
【0091】
さらに、ECU2には、油圧センサ24およびアクセル開度センサ25が接続されている。この油圧センサ24は、油圧ポンプ11から電動スプール弁12に供給される油圧OPを検出して、その検出信号をECU2に出力する。また、アクセル開度センサ25は、図示しないアクセルペダルの開度(以下「アクセル開度」という)APを検出して、その検出信号をECU2に出力する。
【0092】
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。CPUには、I/Oインターフェースを介して、前述したセンサ20〜25の検出信号などがそれぞれ入力される。ECU2は、これらの入力信号に応じて、エンジン3の運転状態を判別するとともに、以下に述べるように、所定の制御周期ΔT(本実施形態では2msec)で、実カム位相CAINの制御処理を実行する。すなわち、ECU2は、制御入力DUTを、適応スライディングモード制御アルゴリズムに基づいて算出する適応スライディングモードコントローラを構成しており、そのように算出した制御入力DUTに応じた駆動信号を、電動スプール弁12に供給することにより、実カム位相CAINを目標カム位相CAINCMDに収束させるように制御する。
【0093】
以下、本制御で用いる適応スライディングモード制御アルゴリズムについて説明する。この制御アルゴリズムでは、まず、カム位相可変装置10を含む制御対象を、制御入力DUTおよび実カム位相CAINがそれぞれ入力および出力される系と見なし、この制御対象を、下式(1)に示すように、離散時間系モデルであるARXモデル(auto-regressive model with exogeneous input:外部入力を持つ自己回帰モデル)としてモデル化する。
【0094】
CAIN(n+1)=a1・CAIN(n)+a2・CAIN(n-1)+b1・DUT(n) ……(1)
ここで、CAIN(n)およびDUT(n)はそれぞれ、実カム位相CAINおよび制御入力のサンプルデータを表しており、記号n+1,n,n−1は、各データのサンプリングサイクルの順番を表しているとともに、そのサンプリング周期ΔTsは、本実施形態では制御周期ΔTの5倍の値(10msec)に設定されている。また、a1,a2,b1はモデルパラメータを表している。
【0095】
このように、制御対象を離散時間系モデルとしてモデル化することにより、モデルパラメータa1,a2,b1を、最小二乗法などの一般的な同定アルゴリズムによって、連続時間系モデルを用いる従来の場合よりも精度よくかつ容易に同定することができる。また、オンボード同定器(例えば特開平11−153051号公報に記載されたもの)をカム位相制御装置1に付加することが可能になり、そのようにした場合には、モデルパラメータa1,a2,b1をリアルタイムで適切かつ容易に同定でき、制御性を向上させることができる。また、実カム位相CAINおよび制御入力DUTのサンプリング周期ΔTsが、制御周期ΔTよりも長く設定されているので、前述した理由により、目標カム位相CAINCMDのパワースペクトルが存在する周波数域での制御対象の動特性を、この離散時間系モデルに適切に反映させることができる。
【0096】
なお、制御対象を、上記(1)式に示す2次のARXモデルに限らず、3次以上のARXモデルとしてモデル化してもよい。
【0097】
次に、適応スライディングモードコントローラの設定について説明する。上記離散時間系モデルを用いた場合、切換関数σは以下のように設定される。すなわち、下式(2)に示すように、追従誤差eを実カム位相CAINと目標カム位相CAINCMDの偏差として定義すると、切換関数σは、下式(3)に示すように、追従誤差eの時系列データの線形関数として設定される。
e(n)=CAIN(n)−CAINCMD(n) ……(2)
σ’(n)=e(n)+S’・e(n−1) ……(3)
ここで、記号nは、サンプリングサイクルの順番を表し、S’は切換関数設定パラメータを表す。
【0098】
前述したように、サンプリング周期ΔTsは、制御周期ΔTの5倍の値に設定されているので、上記(3)式を制御周期でサンプリングされた追従誤差eの時系列データで表すと、下式(4)のようになる。
σ’(k)=e(k)+S’・e(k−5) ……(4)
ここで、記号kは、制御サイクルの順番を表す。
【0099】
また、比較のために、追従誤差eのサンプリング周期を制御周期ΔTと同一に設定した場合、切換関数σ''は下式(5)のようになる。
σ''(k)=e(k)+S''・e(k−1) ……(5)
ここで、S''は切換関数設定パラメータを表す。
【0100】
以上の切換関数σ’,σ''では、追従誤差eの減衰特性は、切換関数設定パラメータS’,S''の値によって決定されるので、ここでは、比較のために、切換関数設定パラメータS’,S''の値をそれぞれ、図3(a),(b)に示すように、追従誤差eの減衰特性曲線の時間的な収束状態が互いに一致するような値(S’=−0.9,S''=−0.59)に設定する。
【0101】
図4は、切換関数σ’,σ''および切換関数設定パラメータS’,S''を以上のように設定した場合において、正弦波状の外乱によって実カム位相CAINが正弦波状に加振されているときの切換関数σ’,σ''の値をそれぞれ示している。同図を参照すると、切換関数σ’,σ''を構成する追従誤差eのサンプリング周期の差異に起因して、切換関数σ’,σ''の外乱に対する感度が異なっており、追従誤差eのサンプリング周期ΔTsを制御周期ΔTよりも長く設定した切換関数σ’の方が、サンプリング周期を制御周期ΔTと同じに設定した切換関数σ''と比べて、外乱に対する感度が良いことが判る。したがって、本実施形態では、前記制御対象モデルに基づき、切換関数σを、上記式(4)に示すように、制御周期ΔTの5倍のサンプリング周期ΔTsでサンプリングした追従誤差eの時系列データの線形関数として設定する。
【0102】
スライディングモード制御アルゴリズムでは、切換関数σが2つの状態変数(本実施形態では追従誤差eの時系列データ)で構成されている場合、2つの状態変数で構成される位相空間は、これらをそれぞれ縦軸および横軸とする2次元の位相平面となり、そのため、この位相平面上において、σ=0を満たす2つの状態変数の値の組み合わせは、切換直線と呼ばれる直線上に載ることになる。そのため、制御対象への制御入力を、2つの状態変数の組み合わせが切換直線上に収束する(載る)ように適切に決定することにより、2つの状態変数をいずれも、値0になる平衡点に収束(スライディング)させることができる。さらに、スライディングモード制御アルゴリズムでは、切換関数σの設定により、状態変数の動特性、より具体的には収束挙動や収束速度を指定することができる。例えば、本実施形態のように、切換関数σが2つの状態変数で構成されている場合には、切換直線の傾きを値1に近づけると、状態変数の収束速度が遅くなる一方、値0に近づけると、収束速度が速くなる。
【0103】
本実施形態では、前述した式(4)に示すように、切換関数σ’が追従誤差eの2つの時系列データ、すなわち追従誤差eの今回値e(k)および前回値e(k−5)により構成されているので、これらの今回値e(k)および前回値e(k−5)の組み合わせを切換直線上に収束させるように、制御対象への制御入力DUTを設定すればよい。具体的には、制御入力DUT(k)(=Usl(k))は、適応スライディングモード制御アルゴリズムに基づき、図5に示す式(6)のように、等価制御入力Ueq(k)、到達則入力Urch(k)、非線形入力Unl(k)および適応則入力Uadp(k)の総和として設定される。
【0104】
この等価制御入力Ueq(k)は、追従誤差eの今回値e(k)および前回値e(k−5)の組み合わせを切換直線上に拘束しておくためのものであり、具体的には、図5に示す式(7)のように設定される。また、到達則入力Urch(k)は、外乱やモデル化誤差などにより、追従誤差eの今回値e(k)および前回値e(k−5)の組み合わせが切換直線上から外れた際に、これらを切換直線上に収束させるためのものであり、具体的には、図5に示す式(8)のように設定される。
【0105】
さらに、非線形入力Unl(k)は、制御対象の非線形特性を補償するとともに、上記到達則入力Urch(k)と同様の効果を得るためのものであり、具体的には、図5に示す式(10)のように設定される。また、適応則入力Uadp(k)は、制御対象の定常偏差、モデル化誤差および外乱の影響を抑制しながら、追従誤差eの今回値e(k)および前回値e(k−5)の組み合わせを、切換超平面上に確実に収束させるためのものであり、具体的には、図5に示す式(9)のように設定される。
【0106】
本実施形態では、制御性を向上させるために、以上の式(4),(6)〜(10)を以下の式(11)〜(20)のように改良するとともに、これらを用いることで制御入力DUT(k)を算出する。
σ(k)=e(k)+S・e(k-5) ……(11)
e(k)=CAIN(k)−CAINCMD(k) ……(12)
S=Sop・Ksast ……(13)
DUT(k)=Usl(k)=Ueq(k)+Urch(k)+Unl(k)+Uadp(k)+Udamp(k)……(14)
Ueq(k)=(1/b1){(1-a1-S)・CAIN(k)+(S-a2)・CAIN(k-5)} ……(15)
Urch(k)=(-F/b1)・σ(k) ……(16)
Unl(k)=(-H/b1)・sgn(σ(k)) ……(17)
Uadp(k)=Uadp(k-1)+(-G/b1)・ΔT・σ(k) ……(18)
Udamp(k)=(-Q/b1)・(CAIN(k)−CAIN(k-1)) ……(19)
ここで、Sは切換関数設定パラメータであり、SopおよびKsastは、切換関数設定パラメータの基準値および始動後補正係数をそれぞれ表す。また、Udamp(k)は、ダンピング入力であり、F,G,H,Qはそれぞれ、到達則入力のゲイン、適応則入力のゲイン、非線形入力のゲインおよびダンピング入力のゲインを表す。
【0107】
次に、以上の式(11)〜(19)に示す制御アルゴリズムにおける改良点について説明する。まず、上記式(13)に示す切換関数設定パラメータS(乗算係数)の改良点について説明する。本実施形態のような油圧駆動式のカム位相可変装置10では、カム位相可変装置13におけるベーン13bの駆動力が、油圧OPに応じて変化するため、実カム位相CAINの目標カム位相CAINCMDへの収束挙動も、油圧OPの影響を受ける。そのため、図6に示すように、目標カム位相CAINCMDがステップ状に変化した際、OP=OPREFのときに、実カム位相CAINの応答性が最適の状態になり、OP>OPREFのときにオーバーシュートを生じるとともに、OP<OPREFのときに応答遅れを示すような基準圧OPREFが存在する。
【0108】
したがって、本実施形態では、上記式(13)の基準値Sopが、油圧OPと基準圧OPREFとの差圧DOP(=OP−OPREF)に応じて、図7のテーブルに示すように設定されている。すなわち、切換関数設定パラメータSの基準値Sopは、差圧DOPが大きいほど、より小さい値に設定されており、これにより、差圧DOPが大きいほど、実カム位相CAINの目標カム位相CAINCMDへの収束速度を遅くすることができる。言い換えれば、差圧DOPが小さいほど、実カム位相CAINの目標カム位相CAINCMDへの収束速度を早めることができる。このように、基準値Sopが差圧DOPに応じて設定されていることにより、図8に示すように、OP>OPREFのときのオーバーシュートを抑制することができるとともに、OP<OPREFのときの応答遅れを補償することができる。
【0109】
さらに、本実施形態のような油圧駆動式のカム位相可変装置10では、オイルの温度が低いほど、オイルの粘性抵抗や、電動スプール弁12内の油路間でのオイル漏れが大きくなることで、実カム位相CAINの変化速度が遅くなり、その応答性が低下することによって、実カム位相CAINの挙動が不安定になる。そのため、エンジン3の潤滑用のオイルを用いる本実施形態の場合、エンジン3の始動直後には、オイル温度が低いことで、実カム位相CAINの挙動が不安定になることがある。これを補償するために、前述した式(13)の始動後補正係数Ksastは、エンジン始動後の経過時間を計時する始動後タイマのタイマ値Tmastに応じて、図9のテーブルに示すように設定されている。すなわち、タイマ値Tmastが小さいほど、始動後補正係数Ksastの値がより大きくなるように設定されている。言い換えれば、エンジン始動後の経過時間が短く、オイルの温度が低いほど、偏差の減少速度が遅くなるように設定されている。これにより、エンジン3の始動直後における実カム位相CAINの不安定な状態を補償しながら、実カム位相CAINを目標カム位相CAINCMDに適切に収束させることができる。
【0110】
次に、前述した式(14)の制御入力DUT(k)の改良点について説明する。本式(14)と図5の式(6)とを比較すると明らかなように、本式(14)の制御入力DUT(k)は、式(6)の制御入力DUT(k)に、ダンピング入力Udamp(k)を加えたものである。このダンピング入力Udamp(k)を加えた理由は、以下による。
【0111】
すなわち、油圧駆動式のカム位相可変装置10では、目標カム位相CAINCMDの変化速度が大きいときには、ベーン13bの慣性力、油圧系の慣性力および圧縮性などに起因して、実カム位相CAINが目標カム位相CAINCMDに対してオーバーシュートを生じるので、これを抑制するためのダンピング入力Udamp(k)を、制御入力DUT(k)に加える必要がある。その場合、ダンピング入力Udamp(k)は、実カム位相CAINの変化速度が過大になったときに、これを減速させるために作用する力として設定すべきであるので、ダンピング入力Udamp(k)の候補としては、以下の3つの入力Udamp1(k)〜Udamp3(k)が考えられる。
【0112】
Udamp1(k)=(-Q1/b1)・(CAIN(k)−CAIN(k-1) ……(19a)
Udamp2(k)=(-Q2/b1)・(σ(k)−σ(k-1)) ……(19b)
Udamp3(k)=(-Q3/b1)・(e(k)−e(k-1)) ……(19c)
ここで、Q1〜Q3は、ダンピング入力のゲインを表す。
【0113】
これらの3つの式(19a)〜(19c)において、切換関数σ(k)および偏差e(k)の値は、実カム位相CAINが変化した場合に加えて、目標カム位相CAINCMDが変化した場合にも大きくなる。そのため、入力Udamp2(k),Udamp3(k)を用いることで、オーバーシュートの抑制効果を得ようとすると、実カム位相CAINの目標カム位相CAINCMDに対する速応性が低下してしまう。したがって、本実施形態では、オーバーシュートの抑制効果および速応性を両立させるために、式(19a)の入力Udamp1(k)、すなわち前述した式(19)のダンピング入力Udamp(k)を用いる。
【0114】
図10は、ダンピング入力Udamp(k)を含む式(14)で制御入力DUT(k)を算出したときと、比較のために、ダンピング入力Udamp(k)を含まない式(6)で制御入力DUT(k)を算出したときにおける、目標カム位相CAINCMDに対する実カム位相CAINの応答性のシミュレーション結果を示している。これらのシミュレーション結果を比較すると、ダンピング入力Udamp(k)を加えることにより、目標カム位相CAINCMDが急激に変化したときでも、目標カム位相CAINCMDに対する実カム位相CAINのオーバーシュートを抑制できることが判る。
【0115】
次に、前述した式(18)の適応則入力Uadp(k)の改良点について説明する。前述した図5の式(9)の適応則入力Uadp(k)を用いた場合、実カム位相CAINの定常偏差およびモデル化誤差を抑制することはできるものの、一定値のゲインG’が切換関数σ’の積分値に常に乗算されることで、目標カム位相CAINCMDに対する実カム位相CAINのオーバーシュートが発生しやすくなる。したがって、本実施形態では、実カム位相CAINの定常偏差およびモデル化誤差の抑制効果に加えて、実カム位相CAINの目標カム位相CAINCMDに対するオーバーシュートの抑制効果を得るために、適応則入力Uadp(k)を以下のように算出する。
【0116】
すなわち、適応則入力Uadp(k)のゲインGを、図11に示すようにゲインスケジュール化する(すなわち可変ゲイン化する)とともに、ゲインGの変更時における適応則入力Uadp(k)の急変を防止するために、適応則入力Uadp(k)を、式(9)に代えて式(18)で算出する。
【0117】
図11に示すテーブルでは、ゲインGの値は、切換関数σ(k)に応じて設定されており、具体的には、ゲインGは、切換関数σ(k)の正側および負側の値に対して対称に設定されており、σ(k)が値0付近の所定範囲(−σa≦σ(k)≦σa)内にあるときには、所定の最大値Gmaxになるように設定されている。これは、σ(k)が値0付近で、偏差eが値0に収束するとき、すなわち、実カム位相CAINが目標カム位相CAINCMDに接近したときに、ゲインGを最大値Gmaxに設定することで、適応則入力Uadp(k)の積分特性に起因して発生するオーバーシュートを抑制するためである。また、ゲインGは、σa<σ(k)の範囲では、σ(k)の値が大きいほど、小さい値に設定されているとともに、σa<σ(k)<σbの範囲では、σb≦σ(k)の範囲よりも変化度合が大きくなるように設定されている。これは、ゲインGを最大値Gmaxに変更する際の適応則入力Uadp(k)の急変を防止するためである。
【0118】
図12は、以上のように設定された適応則入力Uadp(k)を含む制御入力DUT(k)を用いたときの、目標カム位相CAINCMDに対する実カム位相CAINの応答性のシミュレーション結果を示している。同図において、曲線CAINX1および曲線Uadpx1は、可変ゲインGを含む式(18)の適応則入力Uadp(k)を用いたときのシミュレーション結果を示している。また、曲線CAINX2および曲線Uadpx2は、比較のために、ゲインGと同様にゲインスケジュール化されたゲインG’を含む式(6)の適応則入力Uadp(k)を用いたときのシミュレーション結果を示しており、曲線CAINX3および曲線Uadpx3は、一定値のゲインG’を含む式(6)の適応則入力Uadp(k)を用いたときのシミュレーション結果を示している。
【0119】
これらのシミュレーション結果を比較すると、適応則入力Uadp(k)を、上記のようにゲインスケジュール化されたゲインGを含む式(18)を用いて算出することにより、実カム位相CAINのオーバーシュートを抑制できることに加えて、ゲインGを最大値Gmaxに変更する際の適応則入力Uadp(k)の急変を防止できるとともに、それに伴う実カム位相CAINの不連続挙動を防止できることが判る。
【0120】
なお、上記図11では、ゲインGを切換関数σ(k)に応じて設定(スケジュール化)したが、これに限らず、ゲインGを偏差e(k)や、実カム位相CAIN(k)、制御入力DUT(k)に応じて設定してもよい。また、ゲインGを、切換関数σ(k)の値の正側と負側とで互いに対称に設定したが、非対称に設定してもよい。さらに、環境条件やエンジン3の運転状態に応じて、ゲインGの値を補正しても良い。
【0121】
次に、前述した式(17)の非線形入力Unl(k)の改良点について説明する。本実施形態のような電動スプール弁12を備えたカム位相可変装置10では、スプール弁体12aが中立位置付近にあるとき、すなわち制御入力DUTが値0付近で差圧DOP12が値0付近になっているときに、ヒステリシス特性や不感帯特性などの非線形特性を示すこと、およびスプール内で油漏れが生じることなどに起因して、実カム位相CAINの挙動が最も不安定になるとともに、制御入力DUT(k)が正値の領域と負値の領域との間、すなわち実カム位相CAINが進角されるときと遅角されるときとの間で異なる特性を示すのが一般的である。
【0122】
このような特性を補償するために、式(17)の非線形入力Unl(k)では、そのゲインHが図13に示すようにゲインスケジュール化されている。具体的には、ゲインHの値は、進角側および遅角側の間での実カム位相CAINの異なる特性に対応するために、制御入力の前回値DUT(k−1)の正側および負側の値に対して互いに異なるように設定されているとともに、スプール弁体12aが中立位置付近にあるときの、最も不安定な実カム位相CAINの挙動を補償するために、DUT(k−1)が値0付近の所定範囲(−Dc≦DUT(k−1)≦Db)内にあるときに、所定の最大値Hmaxになるように設定されている。言い換えれば、差圧DOP12が値0を含む所定範囲内にあるときであって、スプール弁体12aが中立位置を含む所定範囲内の位置にあるときに、ゲインHが最大値Hmaxに設定される。
【0123】
また、ゲインHの値は、Da≦DUT(k−1),DUT(k−1)≦−Ddの範囲では所定の一定値に設定されている。さらに、ゲインHの値を最大値Hmaxに変更する際の実カム位相CAINの急変を防止するために、Db<DUT(k−1)<Daの範囲では、DUT(k−1)が大きいほど、より小さい値に設定され、−Dd<DUT(k−1)<−Dcの範囲では、DUT(k−1)が小さいほど、より小さい値に設定されている。
【0124】
なお、ゲインテーブルにおいて、ゲインHを、制御入力の前回値DUT(k−1)に代えて、差圧DOP12やこれをフィルタリングした値(例えば移動平均値)に応じて設定してもよい。また、式(17)において、制御入力の前回値DUT(k−1)の正負に応じて、モデルパラメータb1を異なる値に設定してもよい。さらに、前述した式(16)の到達則入力Urch(k)のゲインFを、前記適応則入力Uadp(k)のゲインGまたは非線形入力Unl(k)のゲインHのように、ゲインスケジュール化(すなわち可変ゲイン化)してもよい。
【0125】
さらに、前述した図5の式(8)には、目標カム位相CAINCMDの次回サンプル値CAINCMD(k+5)が含まれているが、この値を用いることは実際の演算では不可能であるので、等価制御入力Ueq(k)は、実際には前述した式(15)を用いて算出される。なお、この式(15)は、上記式(8)において、CAINCMD(k+5)=CAINCMD(k)=CAINCMD(k−5)と近似的に設定することで導出される。
【0126】
なお、切換関数σを構成する状態変数(本実施形態では追従誤差eの時系列データ)の数は、前述したような2つに限らず、3つ以上でもよい。その場合、状態変数が3つのときには位相空間が3次元となることで、σ=0を満たす3つの状態変数の組み合わせは、切換面と呼ばれる平面上に載ることになり、状態変数が4つ以上のときには、σ=0を満たす4つ以上の状態変数の組み合わせは、切換超平面と呼ばれる幾何学的に図示不可能な面となるとともに、制御対象への制御入力DUTは、切換関数σを構成する状態変数の組み合わせが切換面または切換超平面に収束するように、決定される。
【0127】
次に、図14を参照しながら、以上の適応スライディングモード制御アルゴリズムに基づいて、ECU2により実行される実カム位相CAINの制御処理について説明する。本処理は、前述した制御周期ΔTで実行される(なお、この処理を、エンジン回転数NEに対応するタイミング、例えばCRK信号の発生に同期して実行してもよい。その場合には、各時系列データのサンプリング周期は、CRK信号の発生周期の整数倍の周期(例えばTDC信号の発生周期)に設定すればよい)。
【0128】
この処理では、まず、ステップ1(図では「S1」と略す。以下同じ)において、エンジン3が始動したか否かを判別する。この判別では、エンジン回転数NEに基づき、エンジン3のクランキングが終了した状態にあるときに、エンジン3が始動したと判別される。
【0129】
この判別結果がNOで、エンジン3が始動していないときには、ステップ11に進み、アップカウント式の始動後タイマのタイマ値Tmastを値0にセットする。次に、ステップ12に進み、目標カム位相CAINCMDを最遅角側の所定値X_CCMDRにセットする。次いで、ステップ13に進み、制御入力DUTを、実カム位相CAINを最遅角側の位置に保持するための所定値X_DUTRにセットした後、本処理を終了する。
【0130】
一方、ステップ1の判別結果がYESで、エンジン3が始動したときには、ステップ2〜4において、以下の3つの条件(a)〜(c)がいずれも成立しているか否かを判別する。
(a)カム位相可変装置(VTC)10が正常であること。
(b)油圧OPが所定の下限値X_OPLよりも大きいこと。
(c)始動後タイマのタイマ値Tmastが所定値X_ASTよりも大きいこと。
【0131】
ステップ2〜4において、上記3つの条件(a)〜(c)のうちの少なくとも1つが成立していないときには、前述したステップ12,13を実行した後、本処理を終了する。一方、3つの条件(a)〜(c)がいずれも成立しているときには、制御入力DUTを適応スライディングモード制御アルゴリズムで算出すべき状態にあるとして、ステップ5に進み、実カム位相CAIN、目標カム位相CAINCMDおよび追従誤差eを算出する。
【0132】
具体的には、実カム位相CAINを、CRK信号およびCAM信号に基づいて算出し、目標カム位相CAINCMDを、エンジン回転数NEおよびスロットル弁開度THに応じて、図示しないマップを検索することにより算出するとともに、これらの実カム位相CAINおよび目標カム位相CAINCMDより、追従誤差eを算出する。
【0133】
なお、目標カム位相CAINCMDを、エンジン回転数NEおよびスロットル弁開度THに代えて、エンジン3の運転状態を表す他のパラメータに応じて算出してもよい。例えば、エンジン回転数NEおよび吸気管内絶対圧PBA、またはエンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、マップを検索することにより、目標カム位相CAINCMDを算出してもよい。
【0134】
次に、ステップ6に進み、切換関数設定パラメータSを算出する。具体的には、油圧OPと基準圧OPREFとの差圧DOPを算出し、前述したように、この差圧DOPに応じて、図7に示すテーブルを検索することにより、切換関数設定パラメータSの基準値Sopを算出する。これと同時に、始動後タイマのタイマ値Tmastに応じて、図9に示すテーブルを検索することにより、始動後補正係数Ksastを算出する。そして、式(13)に示すように、基準値Sopに始動後補正係数Ksastを乗算することにより、切換関数設定パラメータSを算出する。
【0135】
次いで、ステップ7に進み、ステップ5,6でそれぞれ算出された追従誤差eおよび切換関数設定パラメータSと、RAM内に記憶されている追従誤差eの前回サンプル値e(k−5)を用い、前述した式(11),(12)により、切換関数σを算出する。
【0136】
次に、ステップ8に進み、適応則入力UadpのゲインHおよび非線形入力UnlのゲインGを算出する。具体的には、前述したように、制御入力の前回値DUT(k−1)に応じて、図13に示すテーブルを検索することにより、適応則入力UadpのゲインHを算出するとともに、ステップ7で算出された切換関数σの値に応じて、図11に示すテーブルを検索することにより、非線形入力UnlのゲインGを算出する。
【0137】
次いで、ステップ9に進み、ステップ5〜8で算出された実カム位相CAIN、切換関数設定パラメータS、適応則入力UadpのゲインHおよび非線形入力UnlのゲインGに加えて、RAM内に記憶されている各種の値を用い、前述した式(15)〜(19)により、等価制御入力Ueq、到達則入力Urch、非線形入力Unl、適応則入力Uadpおよびダンピング入力Udampをそれぞれ算出する。
【0138】
次に、ステップ10に進み、前述した式(14)に示すように、制御入力DUTを、ステップ9で算出された各種の入力Ueq,Urch,Unl,Uadp,Udampの総和として算出した後、本処理を終了する。
【0139】
以上のように、本実施形態のカム位相制御装置1によれば、式(1)に示すように、制御対象を離散時間系モデルとしてモデル化したので、モデルパラメータa1,a2,b1を、実験データやシュミレーションデータに基づき、最小二乗法などの一般的な同定アルゴリズムによって、連続時間系モデルを用いる従来の場合よりも容易に同定することができる。また、同じ理由により、オンボード同定器をカム位相制御装置に付加することが可能になり、そのようにした場合には、モデルパラメータa1,a2,b1をリアルタイムで適切かつ容易に同定でき、制御性を向上させることができる。さらに、ハードウエアの特性のばらつきや経年特性変化を補償する必要がない場合には、オンボード同定器に代えてモデルパラメータスケジューラを用い、モデルパラメータa1,a2,b1の値を、実カム位相CAINおよび油圧OPなどに応じて設定することによって、制御性を向上させることができる。
【0140】
また、この離散時間系モデルが、制御周期ΔTよりも長いサンプリング周期ΔTsでサンプリングされた、制御入力DUTおよび実カム位相CAINの時系列データで構成されているので、摩擦特性が強い油圧駆動式のカム位相可変装置10において、目標カム位相CAINCMDの変化周期、すなわちそのパワースペクトルの周波数よりも数倍以上高い周波数に相当する制御周期で制御入力DUTを算出する場合でも、目標カム位相CAINCMDのパワースペクトルが存在する周波数域での制御対象の動特性を、この離散時間系モデルに適切に反映させることができる。その結果、制御性をさらに向上させることができる。なお、この手法により、離散時間系モデルに基づいて設計した最適制御(LQ、LQI)や最適レギュレータ逆問題制御(I−LQ)などを用いた場合にも、制御性を向上させることができる。
【0141】
また、式(11),(12)に示すように、切換関数σが、追従誤差eの時系列データの線形関数として設定されているとともに、これらの時系列データのサンプリング周期ΔTsが制御周期ΔTよりも長く設定されているので、摩擦特性の強い油圧駆動式のカム位相可変装置10において、目標カム位相CAINCMDのパワースペクトルの周波数よりも数倍以上高い周波数に相当する制御周期で制御入力DUTを算出する場合でも、偏差の変化速度を切換関数の成分とする従来のカム位相制御装置と異なり、追従誤差eの算出値を、目標カム位相CAINCMDの変化に伴い制御対象の挙動が変化する周波数域における追従誤差eの変化を適切に反映した値としてサンプリングすることができ、それにより、追従誤差eの変化を切換関数σの増減としてこれに適切に反映させることができる。したがって、追従誤差eの値0への収束挙動を、切換関数σにより決まる収束挙動により精度よく一致させることができることで、モデル化誤差の制御への影響を抑制することができる。同じ理由により、例えばカムからの反力などの外乱が制御対象に入力されたときに、それに対する切換関数σの感度を向上させることができ、切換関数σを外乱の影響を適切に反映した値として算出できることにより、外乱に対する制御の安定性を確保することができる。さらに、同じ理由により、追従誤差eの変化を切換直線によって指定した収束速度で、より精度よく制御することができる。以上により、実カム位相CAINが目標カム位相CAINCMDに収束する際の過渡状態での制御性を、従来よりも向上させることができる。
【0142】
また、式(13)に示すように、切換関数設定パラメータSが基準値Sopおよび始動後補正係数Ksastの積として設定されており、図7に示すように、この基準値Sopが差圧DOP(=OP−OPREF)が大きいほど、より小さい値に設定されていることにより、目標カム位相CAINCMDに対する実カム位相CAINの、OP>OPREFのときのオーバーシュートを抑制することができるとともに、OP<OPREFのときの応答遅れを補償することができる。また、始動後補正係数Ksastが、図9に示すように、タイマ値Tmastが小さいほど、より大きい値に設定されているので、エンジン3の始動直後における実カム位相CAINの不安定な状態を補償しながら、実カム位相CAINを目標カム位相CAINCMDに適切に収束させることができる。その結果、制御入力DUTに対する実カム位相CAINの応答性を安定した状態に保持でき、エンジン3を安定した運転状態に保持できる。
【0143】
また、制御入力DUTに含まれる非線形入力Unlにより、モデル化誤差および外乱の影響を抑制することができるとともに、制御対象の非線形特性を補償することができる。特に、非線形入力UnlのゲインGが、制御入力の前回値DUT(k−1)が値0付近の所定範囲(−Dc≦DUT(k−1)≦Db)内にあるとき、すなわち実カム位相CAINが電動スプール弁12の特性に起因して最も不安定な挙動を示すときに、所定の最大値Gmaxになるようにスケジュール化されているので、そのような不安定な挙動を適切に補償することができる。これに加えて、ゲインGが、制御入力DUTの正値側および負値側で異なるように設定されているので、実カム位相CAINの進角側および遅角側への応答性が互いに異なるのを、それに応じて適切に補償することができる。
【0144】
さらに、制御入力DUTに含まれるダンピング入力Udampにより、目標カム位相CAINCMDが急激に変化した際の、油圧系の慣性力およびオイルの圧縮性などに起因する、目標カム位相CAINCMDに対する実カム位相CAINのオーバーシュートを、効果的に抑制できる。
【0145】
また、制御入力DUTに含まれる適応則入力Uadpにより、制御対象の定常偏差、モデル化誤差および外乱の影響を抑制しながら、追従誤差eの時系列データを切換直線上に載せることができ、追従誤差eを値0に確実に収束させることができる。すなわち、制御対象の定常偏差、モデル化誤差および外乱に対する制御の安定性を確保できる。特に、適応則入力UadpのゲインGが切換関数σの値に応じて設定されるので、適応則入力Uadpの積分特性に起因する、目標カム位相CAINCMDに対する実カム位相CAINのオーバーシュートを、適切に抑制することができる。
【0146】
さらに、制御入力DUTに含まれる等価制御入力Ueqにより、追従誤差eの時系列データを切換直線上に確実に拘束しておくことができ、それにより、実カム位相CAINを目標カム位相CAINCMDに確実に収束させることができる。特に、実カム位相CAINのサンプリング周期ΔTsが制御周期ΔTよりも長く設定されているので、摩擦特性が強いカム位相可変装置10を用い、実カム位相CAINを変化させたい周波数域の数倍以上の周波数に相当する制御周期で制御入力を決定する場合においても、サンプリング周期ΔTsに相当する周波数付近での実カム位相CAINの動特性を、等価制御入力Ueqに適切に反映させることができ、それにより、サンプリング周期ΔTsに相当する周波数付近におけるの制御の安定性を確保することができる。
【0147】
なお、本施形態は、適応スライディングモード制御により実カム位相CAINを制御する例であるが、実カム位相CAINの制御方法は、これに限らず、応答指定型制御であればよい。例えば、応答指定型制御として、設計パラメータの調整により追従誤差eの収束挙動を指定可能なバックステッピング制御を用いてもよく、その場合にも、実施形態と同様の切換関数σの設定方法を採用することにより、前述したような効果を得ることができる。
【0148】
また、実施形態は、油圧OPの変動の影響を補償するために、切換関数設定パラメータSを油圧OPに応じて変更(設定)する例であるが、油圧OPの変動の影響を補償する手法は、これに限らず、油圧OPが変化した際、その油圧OPに応じてモデルパラメータを同定するようにしてもよい。この手法により、油圧OPの変動の影響を補償することは可能であるけれども、実施形態の手法と比べて、コントローラの安定性の確保がより困難である。この観点から、実施形態では、切換関数設定パラメータSを変更する手法を採用している。
【0149】
さらに、実施形態は、油圧駆動式のカム位相可変装置10を用いた例であるが、カム位相可変装置10は、これに限らず、制御入力DUTに応じて実カム位相CAINを変更可能なものであればよい。例えば、電気モータまたはソレノイドの駆動力により実カム位相CAINを変更する電動式のカム位相可変装置を用いてもよい。
【0150】
また、実施形態では、カム位相可変機構13により吸気カム6aの実カム位相CAINを制御する例について説明したが、カム位相可変機構13により、排気カム7aのクランクシャフト8に対する実カム位相を制御するようにしてもよい。さらに、吸気カム6aおよび排気カム7aの実カム位相を双方とも制御してもよいことは言うまでもない。
【0151】
【発明の効果】
以上のように、本発明の内燃機関のカム位相制御装置によれば、実カム位相を変更する機構の摩擦特性が強い場合でも、実カム位相が目標カム位相に収束する際の過渡状態での制御性を向上させることができ、モデルパラメータを精度よくかつ容易に同定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のカム位相制御装置およびこれを適用した内燃機関の概略構成を示す図である。
【図2】カム位相可変装置の概略構成を示す模式図である。
【図3】(a)切換関数設定パラメータS’=−0.9に設定したときと(b)切換関数設定パラメータS''=−0.59に設定したときの追従誤差eの減衰特性曲線を示す図である。
【図4】切換関数設定パラメータS’,S''を図3のように設定した場合において、正弦波状の外乱が入力されているときの切換関数σ’,σ''の値を示す図である。
【図5】基本的な適応スライディングモード制御アルゴリズムによる制御入力DUTの算出式を示す図である。
【図6】油圧OPの差異に起因する、目標カム位相CAINCMDに対する実カム位相CAINの応答性の変化を示す図である。
【図7】切換関数設定パラメータSの基準値Sopの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図8】差圧DOPに応じて算出した基準値Sopを用いた場合の、油圧OPに起因する、目標カム位相CAINCMDに対する実カム位相CAINの応答性の変化を示す図である。
【図9】始動後補正係数Ksastの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図10】ダンピング入力Udampの有無に起因する、目標カム位相CAINCMDに対する実カム位相CAINの応答性の変化を示す図である。
【図11】適応則入力UadpのゲインGの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図12】適応則入力Uadpの算出式およびそのゲインの設定の差異に起因する、目標カム位相CAINCMDに対する実カム位相CAINの応答性の変化を示す図である。
【図13】非線形入力のゲインHの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図14】適応スライディングモード制御アルゴリズムを適用した実カム位相CAINの制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 カム位相制御装置
2 ECU(カム位相検出手段、運転状態検出手段、目標カム位相設定手段、コントローラ、サンプリング手段)
3 内燃機関
6a 吸気カム
7a 排気カム
8 クランクシャフト
10 カム位相可変装置
11 油圧ポンプ(油圧源)
12 電動スプール弁
12a スプール弁体
13 カム位相可変機構
20 カム角センサ(カム位相検出手段)
21 スロットル弁開度センサ(運転状態検出手段)
23 クランク角センサ(運転状態検出手段)
ΔT 制御周期
ΔTs サンプリング周期
CAIN 実カム位相
CAINCMD 目標カム位相
DUT 制御入力
Ueq 等価制御入力
Urch 到達則入力
Unl 非線形入力
H 非線形入力のゲイン
Uadp 適応則入力
G 適応則入力のゲイン
Udamp ダンピング入力
σ 切換関数
e 追従誤差(実カム位相と目標カム位相との偏差)
S 切換関数設定パラメータ(乗算係数)
Sop 基準値
Kmast 始動後補正係数
OP 油圧
OPREF 基準圧
DOP 油圧と基準圧との差圧
OP1 進角油圧(2つの油圧系統の油圧の一方)
OP2 遅角油圧(2つの油圧系統の油圧の他方)
DOP12 進角油圧と遅角油圧との差圧(2つの油圧系統の油圧間の差圧)
NE エンジン回転数(内燃機関の運転状態を表すパラメータ)
TH スロットル弁開度(内燃機関の運転状態を表すパラメータ)

Claims (16)

  1. 吸気カムおよび排気カムの少なくとも一方の、クランクシャフトに対する実際の位相である実カム位相を制御する内燃機関のカム位相制御装置であって、
    前記実カム位相を変更するカム位相可変装置と、
    前記実カム位相を検出するカム位相検出手段と、
    前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
    当該検出された運転状態に応じて、目標カム位相を設定する目標カム位相設定手段と、
    前記カム位相可変装置への制御入力を入力としかつ前記実カム位相を出力とする制御対象を離散時間系モデルとしてモデル化する応答指定型制御アルゴリズムにより、前記実カム位相を前記目標カム位相に収束させるための前記制御入力を所定の制御周期で決定するコントローラと、
    前記制御入力、前記実カム位相、および、前記実カム位相と前記目標カム位相との偏差を、前記制御周期よりも長い所定のサンプリング周期でそれぞれサンプリングするサンプリング手段と、
    を備え、
    前記離散時間系モデルは、当該サンプリングされた制御入力、および当該サンプリングされた実カム位相の時系列データで構成され、
    前記コントローラは、前記サンプリングされた前記偏差の複数の時系列データの関数として切換関数を構成する前記応答指定型制御アルゴリズムにより、前記制御入力を決定し、
    当該応答指定型制御アルゴリズムは、スライディングモード制御アルゴリズムおよびバックステッピング制御アルゴリズムの一方であることを特徴とする内燃機関のカム位相制御装置。
  2. 吸気カムおよび排気カムの少なくとも一方の、クランクシャフトに対する実際の位相である実カム位相を制御する内燃機関のカム位相制御装置であって、
    前記実カム位相を変更するカム位相可変装置と、
    前記実カム位相を検出するカム位相検出手段と、
    前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
    当該検出された運転状態に応じて、目標カム位相を設定する目標カム位相設定手段と、
    前記検出された実カム位相と前記設定された目標カム位相との偏差を所定のサンプリング周期でサンプリングするサンプリング手段と、
    当該サンプリングされた偏差の複数の時系列データの関数として切換関数を構成する応答指定型制御アルゴリズムにより、前記実カム位相を前記目標カム位相に収束させるための、前記カム位相可変装置への制御入力を所定の制御周期で決定するコントローラと、
    を備え、
    前記所定のサンプリング周期は、前記制御周期よりも長く設定されており、
    前記応答指定型制御アルゴリズムは、スライディングモード制御アルゴリズムおよびバックステッピング制御アルゴリズムの一方であることを特徴とする内燃機関のカム位相制御装置。
  3. 前記制御入力は、複数の入力の総和であり、当該複数の入力の各々は、前記切換関数の値および前記実カム位相の少なくとも一方に応じて決定されることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  4. 前記複数の入力は、前記切換関数の値に比例する到達則入力を含むことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  5. 前記複数の入力は、前記切換関数の値とは正負が逆に設定される非線形入力を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  6. 前記カム位相可変装置は、
    油圧源からの油圧を互いに別個の油圧としてそれぞれ出力する2つの油圧系統と、当該2つの油圧系統の油圧間の差圧が値0となる中立位置を含む所定の移動範囲内で移動可能なスプール弁体とを有し、前記制御入力に応じて、当該スプール弁体を前記移動範囲内で 移動させることにより、前記2つの油圧系統の油圧間の差圧を変更する電動スプール弁と、
    当該電動スプール弁から出力された前記2つの油圧系統の油圧間の差圧に応じて前記実カム位相を変更するカム位相可変機構と、
    を備え、
    前記複数の入力は、前記切換関数の値とは正負が逆に設定される非線形入力を含み、当該非線形入力のゲインは、前記2つの油圧系統の油圧間の差圧に応じて設定されることを特徴とする請求項3または4に記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  7. 前記非線形入力の前記ゲインは、前記2つの油圧系統の油圧間の差圧が値0を含む所定範囲内にあるときには、当該所定範囲内にないときよりも大きな値に設定されることを特徴とする請求項に記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  8. 前記複数の入力は、前記実カム位相の変化速度に比例するダンピング入力を含むことを特徴とする請求項3ないし7に記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  9. 前記複数の入力は、前記切換関数の積分値に比例する適応則入力を含むことを特徴とする請求項ないし8のいずれかに記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  10. 前記適応則入力のゲインは、前記切換関数の値に応じて設定されることを特徴とする請求項9に記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  11. 前記複数の入力は、前記サンプリング手段により前記所定のサンプリング周期で連続的にサンプリングされた複数の実カム位相の値に基づいて決定される等価制御入力を含むことを特徴とする請求項3ないし10に記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  12. 前記複数の入力のうちの少なくとも1つのゲインは、前記実カム位相を進角側に変更するときと遅角側に変更するときとの間で、互いに異なるようにスケジュール化されていることを特徴とする請求項ないし11のいずれかに記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  13. 前記カム位相可変装置は、油圧源から油圧が供給されることにより前記実カム位相を変更するように構成され、
    前記切換関数を構成する前記偏差の複数の時系列データのうちの少なくとも1つには、乗算係数が乗算され、
    当該乗算係数は、前記油圧源から前記カム位相可変装置に供給される油圧に応じて設定されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  14. 前記乗算係数は、前記油圧と所定の基準圧との差圧が大きいほど、前記偏差の減少速度が小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項13に記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  15. 前記油圧源は、前記内燃機関で使用されるオイルを前記カム位相可変装置に供給し、
    前記乗算係数は、前記内燃機関の始動時からの経過時間が短いほど、前記偏差の減少速度が小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項13または14に記載の内燃機関のカム位相制御装置。
  16. 前記カム位相可変装置は、前記内燃機関で使用されるオイルが油圧源から供給されることにより前記実カム位相を変更するように構成され、
    前記切換関数を構成する前記偏差の複数の時系列データのうちの少なくとも1つには、乗算係数が乗算され、
    当該乗算係数は、前記内燃機関の始動時からの経過時間が短いほど、前記偏差の減少速度が小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関のカム位相制御装置。
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