JP4145098B2 - 可変圧縮比エンジンとその制御 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの圧縮比を変更する可変圧縮比エンジンとその制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
可変圧縮比エンジンでは、運転状況に応じた圧縮比変更を行うことで、種々の利点がある。例えば、ノッキングの発生しやすい高負荷時には圧縮比を低くすることで、燃料の自己着火を抑制し、これによりノッキングの発生も抑制できる。低負荷時では圧縮比を高めると、混合気温度の上昇を招いて燃料の燃焼性が高まる。このため、負荷変動を起こしやすい加速走行時等にあっては、負荷変動(低負荷から高負荷に変動)に応じて圧縮比を高圧縮比から低圧縮比に変更制御することが行われている。こうした負荷変動に応じた圧縮比制御を行うことで、燃費の向上やドライバビリティの向上を実現している。
【0003】
ところで、エンジンを運転するに当たっては、一般に空燃比を目標空燃比に一致させるようにする空燃比制御が行われている。こうした空燃比制御を可変圧縮比エンジンに適用する手法は、例えば、特開昭63−159642号公報に提案されている。この手法は、低負荷領域では圧縮比を高圧縮比としてその際の目標空燃比をリーン側に設定し、高圧縮比から低圧縮比への変更時には目標空燃比をリッチ側に設定するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように空燃比制御と圧縮比変更を行ったとしても、次のような問題が起きることが予想される。エンジンは運転中、ピストンとシリンダ、ピストンとピストンリング、ピストンリング合口等にクリアランスが存在し、燃焼室内の気体がこのクリアランスを吹き抜けるブローバイが起きる。このブローバイガスは、クランクルームに達し、クランクルームから直接、またはシリンダヘッドを経由して、吸気管に戻されている。
【0005】
圧縮比を変更すると、このブローバイの発生状況が変化してブローバイガス量も変化し、圧縮比変更直後ではブローバイガス量の急変を招く。ブローバイガスは、未燃の燃料混合気を含むことがある。このため、吸気管に戻されたブローバイガスは、燃焼室に入り込む吸気における燃料・空気の比率に乱れを起こす。こうした吸気の比率の乱れは、空燃比を目標空燃比に一致させようとする空燃比制御による燃焼状態に悪影響を及ぼすので、その結果として、排気における残存酸素にも乱れを起こす。よって、圧縮比変更に伴うブローバイにより空燃比制御の信頼性が低下する。
【0006】
なお、いわゆる直噴エンジンでは、燃料を燃焼室に直接吹き込む都合上、次のような現象が起きると予想される。直噴エンジンでは、その圧縮行程において空気が噴霧燃料と未混合の状況で存在することが有り得え、この空気がエンジンルームにブローバイガスとして漏れ出る。圧縮比が高いと、圧縮行程の間での空気のブローバイガス量が増えるので、圧縮行程の後半での燃料点火時期においては、燃焼室内の空気不足を招くことがある。こうした事態が起きると、結果的には、燃焼室での燃料・空気の比率に乱れを起こすので、先に述べた問題が起きる。
【0007】
また、空燃比制御は一般に残存酸素に基づいたフィードバック制御手法を採るので、目標空燃比とするための制御には、残存酸素の乱れにより制御の遅れが起きる。よって、運転者は違和感を覚えることがある。例えば、加速操作を止めた場合では、次のようなことが起き得る。
【0008】
加速を止めるためにアクセルペダルの踏込を急に弛めると、高負荷から低負荷への負荷推移に伴い圧縮比も高い状態とされる。こうした状況ではブローバイガス量が増えて燃料過多となるので、車両の減速状況がペダル操作(踏込弛め)と一致せず、アクセル踏込を弛めた運転者は違和感を覚えることがある。なお、直噴エンジンであればブローバイガス量増により空気不足となって燃焼効率が下がり、トルク不足を招き違和感を覚えることがある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされ、圧縮比変更に伴う不具合を抑制することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
かかる課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の可変圧縮比エンジンの制御方法では、エンジンの圧縮比を変更すると、その圧縮比変更に伴うクランクルームから吸気通路へのブローバイの発生状況に応じて、空燃比に関与する物理量を補正する。よって、圧縮比変更後では、空燃比を目標空燃比に一致させる際のこの両空燃比の偏位に拘わらず、空燃比をリーン側或いはリッチ側に速やかに補正できる。この場合、ブローバイの状況により燃料過多に推移するのであれば、この燃料過多を抑制すべく空気量を増やすよう空燃比をリーン側に補正できる。或いは、空気不足であれば、この空気不足に対処して燃料を調整して空燃比を補正できる。
【0011】
従って、こうした空燃比補正により、圧縮比の変更後に燃焼室に入り込む燃料・空気の比率の乱れを小さくできるので、圧縮比変更に伴う違和感を緩和できる。また、エミッションの悪化も回避できる。
【0012】
また、上記課題の少なくとも一部を解決するための本発明の別の可変圧縮比エンジンの制御方法では、エンジンの圧縮比を変更すると、この圧縮比の変更状況に応じて、クランクルームから吸気通路へのブローバイガス量を可変する。つまり、圧縮比変更に伴いブローバイガス量が変動しても、吸気通路へのブローバイガス通気量を可変制御できる。例えば、圧縮比変更に伴うブローバイガス量増により燃料過多に推移するのであれば、ブローバイガス量を制限してこの燃料過多を抑制できる。また、圧縮比変更に伴うブローバイガス量増により空気不足に推移するのであれば、ブローバイガス量を制限してこの空気不足を抑制できる。この逆に、圧縮比変更に伴うブローバイガス量減により燃料量や空気量に乱れが起きるようであれば、ブローバイガスをそれ以前の状況より多く吸気通路に通気できるようにして、こうした乱れを抑制できる。このため、圧縮比の変更後に燃焼室に入り込む燃料・空気の比率の乱れを小さくできるので、圧縮比変更に伴う違和感緩和やエミッションの悪化回避を図ることができる。
【0013】
上記した本発明の可変圧縮比エンジンの制御方法では、ブローバイの発生状況に応じた物理量補正や圧縮比の変更状況に応じたブローバイガス量の可変制御を、圧縮比変更の過渡期間に亘って行うようにできる。こうすれば、燃焼室に入り込む燃料・空気の比率の乱れを小さくした上で、その後、変更済み圧縮比でのエンジン制御が可能となるので、こうしたエンジン制御(例えば、空燃比を目標空燃比に一致させる制御等)を好適に行うことができる。
【0014】
かかる課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の可変圧縮比エンジンでは、圧縮比可変手段により圧縮比が変更されると、空燃比制御手段が制御する際の空燃比に関与する物理量を、圧縮比変更に伴うクランクルームから吸気通路へのブローバイの発生状況に応じて補正する。このため、この本発明のエンジンによっても、圧縮比変更後では、空燃比を目標空燃比に一致させる際のこの両空燃比の偏位に拘わらず、上記したように空燃比を速やかに補正できる。よって、こうした空燃比補正により、圧縮比の変更後に燃焼室に入り込む燃料・空気の比率の乱れを小さくできるので、圧縮比変更に伴う違和感緩和やエミッションの悪化回避を図ることができる。
【0015】
こうした補正をオープンループ制御により実行するにすれば、圧縮比の変更後に燃焼室に入り込む燃料・空気の比率の乱れの抑制より速やかに実行でき好ましい。
【0016】
また、空燃比に関与する物理量の補正に際しては、燃料噴射量と吸入空気量の少なくとも一方をブローバイ発生状況に応じて補正するようにすることができる。例えば、ブローバイの状況により燃料過多に推移するのであれば、吸入空気量の増大補正と燃料噴射量の減少補正、或いはこの両者を組み合わせて、燃料過多を抑制できる。空気不足の場合は、吸入空気量の増大補正と燃料噴射量の減少補正、或いはこの両者を組み合わせて、空気不足に対処できる。
【0017】
更に、上記の空燃比補正を圧縮比変更の過渡期間に亘って行うようにでき、こうすれば、既述したように圧縮比変更済みのエンジン制御を好適に行うことができる。
【0018】
上記課題の少なくとも一部を解決するための本発明の別の可変圧縮比エンジンでは、圧縮比可変手段による圧縮比変更があれば、可変制御手段は、この圧縮比の変更状況に応じて、クランクルームから吸気通路へのブローバイガス量を可変する。このため、圧縮比変更に伴いブローバイガス量が変動しても、既述したように、ブローバイガス量の制限・通気促進を経て燃料過多や空気不足に対処できる。よって、この構成のエンジンによっても、圧縮比の変更後に燃焼室に入り込む燃料・空気の比率の乱れを小さくして、圧縮比変更に伴う違和感緩和やエミッションの悪化回避を図ることができる。
【0019】
こうしたブローバイガス量の可変制御に当たっては、通気手段に絞りを設け、圧縮比の変更状況に応じて、この絞りの絞り開度を調整すればよい。こうすれば、絞り開度調整という簡単な機器制御で、ブローバイガス量の制限・通気促進を経た燃料過多や空気不足への対処、引いては、圧縮比変更に伴う違和感緩和やエミッションの悪化回避を図ることができる。
【0020】
また、ブローバイガス量の可変制御を、圧縮比変更の過渡期間に亘って実行するようにすることもでき、こうすれば、既述したように圧縮比変更済みのエンジン制御を好適に行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の形態を実施例に基づき説明する。図1は第1実施例に係る可変圧縮比エンジン20の構成を概略的に説明する説明図である。
【0022】
図示するように、この可変圧縮比エンジン20は、シリンダブロック22とシリンダヘッド24を備え、そのシリンダ26にピストン28を組み込んで備える。ピストン28は、屈曲可能に構成されたコンロッド27を介してクランクシャフト29と連結され、シリンダ内でのピストン28の上下往復動は、コンロッド27を経てクランクシャフト29の回転運動に変換される。コンロッド27は、後述する圧縮比可変機構30を構成し、その屈曲程度の変更を経てピストン28の上死点位置および下死点位置を同時に変化させる。これにより、可変圧縮比エンジン20は、圧縮比を変更することができる。この詳細は後述する。
【0023】
可変圧縮比エンジン20は、シリンダヘッド24の図示しない吸気ポートに吸気管50を接続して備える。吸気管50は、インジェクタ52が吸気管流路に噴射した燃料を、空気との混合気状態で吸気ポートを経て燃焼室に導く。この場合、空気の吸気量はスロットルバルブ54にて調整され、燃料混合比が調整される。また、可変圧縮比エンジン20は、シリンダブロック22が形成するクランクルーム23から吸気管50に到るブローバイガス流路53を備え、シリンダ26の燃焼室からピストン・クリアランスを吹き抜けたブローバイガスを、このブローバイガス流路53を経て吸気管50に通気する。本実施例では、ブローバイガス流路53をスロットルバルブ54の下流で吸気管50に接続させている。よって、ブローバイガスは、吸気管50の負圧に吸引されて吸気管50に流れ込む。
【0024】
可変圧縮比エンジン20は、圧縮比変更やスロットルバルブ54の駆動等を統括制御するECU60を備える。このECU60は、マイクロコンピュータを中心とする論理演算回路として構成され、スロットルバルブ駆動用のアクチュエータ63やスロットルセンサ55、アクセルセンサ61の他、エンジン回転数とクランク角を検出する回転数・クランク角センサ56、圧縮比変更のためのアクチュエータ(サーボモータ)57、圧縮比を検出する圧縮比センサ58、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサ62、吸気の量を検出するエアフロメータ64等と接続されている。
【0025】
次に、圧縮比変更のための構成について詳述する。図2はコンロッド27を含む圧縮比可変機構30を示す概略斜視図、図3はこの圧縮比可変機構30による圧縮比変更の様子を説明する説明図である。
【0026】
図示するように、圧縮比可変機構30は、コンロッド27を、ピストン28の側の第1コンロッド31と第2コンロッド32とを連結して構成する。第1コンロッド31は、その上部の小端部33で、ピストン28とピストンピン34により回動可能に連結されている。第2コンロッド32は、その下部の大端部35で、クランクシャフト29の図示しないクランクピンと回転可能に連結されている。また、この第1、第2の両コンロッドは、第1コンロッド下端側と第2コンロッド上端側でコンロッドピン36を介して互いに回動可能に連結されている。
【0027】
第1コンロッド31は、下端側に突出部31aを備え、この突出部31aで、コントロールロッド37の一端側とピン38により回動可能に連結されている。コントロールロッド37は他端側に貫通孔37aを備え、この貫通孔37aには、コントロールシャフト39が回動可能に嵌合組み付けされている。
【0028】
この他、圧縮比可変機構30はコントロールシャフトガイド40を有し、当該シャフトガイドをシリンダブロック22(図1参照)に回動可能に支持する。このコントロールシャフトガイド40は、その両端部と途中複数箇所に断面円形のままの軸受部41を備え、隣り合う軸受部41の間を、断面三日月形に切欠形成した連結部42とする。連結部42は、エンジンの気筒数と同じ数だけ用意され、各連結部の切欠領域43にコントロールシャフト39が位置するよう、このコントロールシャフト39はコントロールシャフトガイド40に嵌合・固定されている。つまり、コントロールシャフト39はコントロールシャフトガイド40の回動中心軸(中心軸)Xから偏心した位置に嵌合・固定される。よって、コントロールシャフトガイド40が回動することで、コントロールシャフト39は中心軸Xに対して揺動してその位置を変え、これによりコントロールロッド37はピン38を介して第1コンロッド31を第2コンロッド32に対して屈曲変位させる。こうしてコンロッド27が屈曲すると、その屈曲程度に応じてピストン28の上死点位置と下死点位置長は同時に変わり、可変圧縮比エンジン20は圧縮比を変更する。この場合、圧縮比変更、即ちコントロールシャフトガイド40の回動状況は、エンジンの運転状態に応じてECU60により制御される。
【0029】
なお、コントロールシャフト39が揺動する際に、コントロールロッド37が連結部42と干渉しないよう、連結部42は、その断面形状および寸法が設定されている。
【0030】
圧縮比可変機構30は、上記したコントロールシャフト39の揺動を起こすため、図3に示すように、そのアクチュエータとしてのサーボモータ57とウォームギア47を有する。ウォームギア47は、サーボモータ57のシャフトに連結されたウォーム48と、コントロールシャフトガイド40に連結された直結されたウォームホイール49とで構成される。従って、コントロールシャフトガイド40は、サーボモータ57の回転に伴って回転し、その回転方向と回転角はモータ制御により定まる。
【0031】
つまり、サーボモータ57によりウォーム48が回転すると、コントロールシャフトガイド40はこの回転程度に応じた角度だけ回転し、既述したように、コントロールシャフト39とコントロールロッド37を変位させる。このコントロールロッド37の変位によりコンロッド27の屈曲状態が定まり、エンジンの圧縮比蛩が変化する。本実施例では、コントロールシャフト39は、コントロールシャフトガイド40の中心軸X周りに略3時の方向から略6時の方向の90ーの範囲で変位可能であり、6時の方向ほど圧縮比蛩が高くなるように設定されている。
【0032】
なお、圧縮比センサ58は、コントロールシャフトガイド40或いはウォームホイール49の回転角度(方向を含む)を検出し、これをECU60に出力する。ECU60は、このセンサ出力に基づいて、実際の圧縮比蛩を算出するよう構成されている。
【0033】
ECU60は、既述した各種センサからのセンサ出力を受け、種々のエンジン制御を行う。このうち、本実施例の可変圧縮比エンジン20が行う特徴的な制御とこれに関連する制御について、順次説明する。図4は圧縮比変更制御を示すフローチャート、図5はこの圧縮比変更制御の内容を説明するための説明図である。
【0034】
図4に示す圧縮比変更制御ルーチンは、所定時間ごとに繰り返し実行されるものであり、まず、回転数・クランク角センサ56からのエンジン回転数読み込み、アクセル踏込状況を出力するアクセルセンサ61やスロットルセンサ55或いは図示しない吸気管負圧センサからのセンサ出力に応じたトルクの読み込みを行う(ステップS100)。続いて、読み込んだ回転数・トルクと図5に示すこの両者と圧縮比とのマップに基づいて目標とする圧縮比εtを演算する(ステップS110)。本実施例では、図5に示すように、目標圧縮比を高圧縮域・中圧縮域・低圧縮域の3段階で切り換えるようにした。この場合、図5のマップは、エンジン冷却水温度、吸入空気温度、或いはエミッション等の状況に応じて複数用意され、その時のエンジン運転状況に併せて適宜切り換えるようにすることもできる。
【0035】
次に、圧縮比センサ58からの現状圧縮比の読み込みを行い(ステップS120)、その読み込んだ圧縮比εiと目標圧縮比εtとの一致状況に基づいて、圧縮比の変更を要するか否かを判定する(ステップS130)。ここで、上記の両圧縮比が一致していなければ、圧縮比変更を要すると判定し、ECU60は、圧縮比を目標圧縮比εtとするための変更指令をサーボモータ57に出力する(ステップS140)。詳しくは、現状の圧縮比εiを目標圧縮比εtとするに必要な駆動信号をサーボモータ57に出力し、上記の各処理を繰り返す。こうした制御により、可変圧縮比エンジン20は、サーボモータ57を駆動源とする圧縮比可変機構30によりコンロッド27の屈曲程度を変更し、エンジンの圧縮比を変更する。
【0036】
可変圧縮比エンジン20では、こうした圧縮比変更制御と並行して、以下のようにして燃料噴射制御を行う。図6は可変圧縮比エンジン20が行う燃料噴射制御を示すフローチャートである。
図示する燃料噴射制御ルーチンにあっても所定時間、例えば、所定クランク角(360゜CA)毎にごとに繰り返し実行され、まず、燃料噴射量算出に必要なエンジン回転数NE、吸入空気量Q、目標圧縮比εtを読み込む(ステップS200〜220)。このエンジン回転数NEと吸入空気量Qについては、回転数・クランク角センサ56とエアフロメータ64のセンサ出力から読み込み、目標圧縮比εtについては、図4の圧縮比変更制御で定まったものを読み込む。この場合、図4の圧縮比変更制御により、可変圧縮比エンジン20の実際の圧縮比εは目標圧縮比εtに一致するようされるので、目標圧縮比εtの読み込みに代えて実際の圧縮比εを読み込むようにすることもできる。なお、図4のステップS140により圧縮比が変更された直後にあっては、実際の圧縮比εより目標圧縮比εtを用いることが好ましい。
【0037】
続いて、読み込んだ吸入空気量Qと回転速度NEおよび目標圧縮比εtを用いて、基本燃料噴射量TPを次式(1)に従って算出する(ステップS230)。
TP←k・Q・f(εt)/NE …(1)
【0038】
ここで、kは定数であり、f(εt)は、図4に示すような高圧縮域・中圧縮域・低圧縮域の3段階の目標圧縮比εtに応じて定まる係数である。そして、このf(εt)は、高圧縮域ほど小さな値となるように、予め定められてECUの所定記憶領域に記憶されている。
【0039】
ところで、後述するように本実施例では、圧縮比変化補正制御にて、吸入空気量Qを圧縮比の変化状況、即ちブローバイガス量の変化状況に応じて補正する。よって、こうした補正の実行期間に亘っては、上記の式(1)による基本燃料噴射量TP算出には、補正実行前に読み込んだ吸入空気量Qをそのまま用いる。
【0040】
次に、既に読み込み済みの目標圧縮比εtに応じた目標空燃比を設定する(ステップS240)。この目標空燃比は、例えば図4に示す高圧縮域・中圧縮域・低圧縮域の各域ごとに予め定められてECUの所定記憶領域に記憶されており、高圧縮比側でリッチ側とされている。これに続いて、酸素センサ62からのセンサ出力(酸素濃度)を読み込み(ステップS250)、そのセンサ出力と目標空燃比との偏差ΔO2に応じて空燃比補正係数FAFを補正して、補正後のFAF(ΔO2)を空燃比補正係数FAFとする(ステップS260)。つまり、空燃比補正係数FAFはセンサ出力と目標空燃比との偏差ΔO2に基づき補正され、空燃比は目標空燃比と一致するようフィードバック制御される。
【0041】
こうした空燃比補正係数FAFの算出に続いては、ステップS230で求めた基本燃料噴射量TPに、次式(2)に従うように各種補正係数を掛けることにより実燃料噴射量TAUを算出する(ステップS270)。
TAU←TP・FAF・(1+FWL)・α・β …(2)
【0042】
ここで、FWLは水温増量補正係数であり、図示しない水温センサで検出された冷却水温THWに応じて算出される。この算出処理は、ECUが備える所定のマップを用いて冷却水温THWから水温増量補正係数FWLを求めるものである。このマップは、冷却水温THWと水温増量補正係数FWLとの関係を示すものであり、冷却水温THWが低くなるほど水温増量補正係数FWLは大きな値をとるようされている。
【0043】
α,βは、その他の補正係数であり、例えば、吸気温補正,電源電圧補正等に関する補正係数が該当する。
【0044】
ステップS270で実燃料噴射量TAUが算出されると、続いて、その実燃料噴射量TAUに相当する燃料噴射時間をインジェクタ52の開弁時間を決定する図示しないカウンタにセットする(ステップS280)。この結果、そのカウンタにセットされた開弁時間だけ、インジェクタ52が開弁駆動される。その後、「リターン」に抜けて処理を一旦終了する。
【0045】
次に、圧縮比変更に伴って行う圧縮比変化補正制御について説明する。図7は圧縮比変化補正制御を表すフローチャートである。
図示する圧縮比変化補正制御にあっても、所定時間ごとに繰り返されるものである。この圧縮比変化補正制御は、圧縮比変更に伴うものであるので、その繰り返し時間間隔は、総ての気筒にて圧縮比可変機構30による圧縮比変更が完了する時間を見込んで定められている。これにより、圧縮比変化補正制御は、圧縮比可変機構30により圧縮比が変更されつつある間、具体的にはコンロッド27が屈曲を行っている間において実行されず、コンロッド27の屈曲完了、即ち圧縮比変更が完了してから実行されるようになる。
【0046】
ECU60は、この圧縮比変化補正制御の最初の処理で、圧縮比センサ58から処理開始時点での圧縮比εiを読み込み、これを所定の記憶領域に更新記憶する(ステップS300)。この圧縮比の更新記憶は、相前後して行われる圧縮比変化補正制御で読み込んだ圧縮比を時系列的に更新記憶するようにされている。続いて、前回の処理の際に記憶済みに圧縮比ε(i−1)を読み込み(ステップS310)、これと今回の圧縮比εiとを対比してその増減有無を判定する(ステップS320)。
【0047】
ここで、増減無し(εi=ε(i−1))と判定すれば、「リターン」に抜けて処理を一旦終了する。つまり、圧縮比に変化はないので、何の補正もなく本ルーチンを終了し、図6のステップS280による燃料噴射がそのまま行われる。
【0048】
一方、圧縮比増大(εi>ε(i−1))と判定すれば、ECU60は、スロットルバルブ駆動用のアクチュエータ63に開度増側の駆動信号を出力し(ステップS330)、その後、「リターン」に抜けて処理を一旦終了する。従って、このステップS330を経ることで、圧縮比増大変化の際には、強制的なスロットルバルブ54の開側駆動による吸入空気量の増量を図りつつ、図6のステップS280による燃料噴射とを行う。この空気量増量は、圧縮比増大前の状況に比べてのものである。
【0049】
また、圧縮比低減(εi<ε(i−1))と判定すれば、ECU60は、スロットルバルブ駆動用のアクチュエータ63に開度減側の駆動信号を出力し(ステップS340)、処理を一旦終了する。従って、このステップS340を経ることで、圧縮比低減変化の際には、強制的なスロットルバルブ54の閉側駆動による吸入空気量の減量を図りつつ、図6のステップS280による燃料噴射とを行う。この空気量減量にあっては、圧縮比低減前の状況に比べてのものである。
【0050】
こうした補正を行う本実施例によれば、次のような利点がある。
圧縮比増大(εi>ε(i−1))の状況では、こうした圧縮比変更に伴ってブローバイガス量が増え、ブローバイガス流路53を経てクランクルーム23から吸気管50に達するブローバイガス量も増える。本実施例のように混合吸気式の可変圧縮比エンジン20では、ブローバイガスに未燃の燃料混合気を含むことから、燃焼室に入り込む混合気は、吸気管50へのブローバイガス量増により、燃料過多側(空燃比リッチ側)に推移する。こうした圧縮比増大の局面で何の対処もしないとすれば、圧縮比変更前後で燃料過多での燃焼が起きるので、酸素センサ62の出力に大きな乱れを起こす。よって、図6のステップS260では、FAFの急変を招き、結果的にはフィードバック制御の遅れに基づく運転者の違和感を来す。
【0051】
しかしながら、本実施例では、圧縮比増大の状況となると、ステップS330により吸入空気量の増量を図って空燃比をリーン側とし、こうした燃料過多を抑制できる。このため、圧縮比増大変更後に燃焼室に入り込む燃料・空気の比率の乱れの抑制を通して、酸素センサ62の出力乱れを抑制でき、FAFの急変を招かないようにできる。よって、圧縮比変更に伴う違和感緩和やエミッションの悪化回避を図ることができる。
【0052】
こうした吸入空気量の増大は、その増大程度を圧縮比の増大程度、即ちブローバイガス量の増大程度に合わせるように行うことができる。例えば、低圧縮域から高圧縮域への圧縮比増大で有れば、吸入空気量増大を大きくし、中圧縮域から高圧縮域への変更、或いは低圧縮域から中圧縮域への変更の場合は、吸入空気量の増大を控えるようにすることができる。
【0053】
圧縮比低減の状況も同様であり、この圧縮比低減によるブローバイガス量の低減を加味してステップS340により吸入空気量の低減を図ることができる。よって、圧縮比低減変更後における上記の比率の乱れを抑制して酸素センサ62の出力乱れを抑制できるので、既述したように、圧縮比変更に伴う違和感緩和やエミッションの悪化回避を図ることができる。なお、圧縮比低減によるブローバイガス量低減の様子は、圧縮比増大時のブローバイガス量増大に比せば緩慢であることから、ステップS340の処理を省略するようにすることもできる。
【0054】
こうしたステップS330、340の吸入空気量補正はオープンループ制御によるものであることから、こうした空気量補正の実効性が高まり、上記の燃料・空気の比率の乱れの速やかな抑制に効果的である。
【0055】
上記した図7の圧縮比変化補正制御では、圧縮比増大或いは低減が見られる間においてステップS330、340による吸入空気量増減を行い、実際の圧縮比(ステップS300での読み込み圧縮比)が定常となると吸入空気量増減を停止する。一般に、圧縮比変更は約100〜300msec程度で終了するので、吸入空気量増減をこの圧縮比変更実行期間を越える所定時間、例えば、数秒間程度に亘って強制的に行うようにすることができる。こうすれば、圧縮比変更が行われた後の過渡的な期間に亘って吸入空気量増減を実行するので、圧縮比が変更済みの状況では、燃料噴射制御等の各種エンジン制御を好適に行うことができる。なお、この吸入空気量増減の実行時間は、ディップスイッチやプログラム変更等の種々の手法で任意に長短設定できると共に、後日その時間を変更することもできる。
【0056】
次に、第2実施例について説明する。この実施例は、圧縮比変更に伴って燃料噴射量増減を強制的に図る点に特徴がある。図8は第2実施例における可変圧縮比エンジン20が行う燃料噴射制御を示すフローチャート、図9は同じく第2実施例における圧縮比変化補正制御を表すフローチャートである。
【0057】
図示するように、第2実施例にあっても、燃料噴射制御では、先の実施例同様、燃料噴射量算出に必要なエンジン回転数NE、吸入空気量Q、目標圧縮比εtの読み込み(ステップS200〜220)、これらを用いた式(1)による基本燃料噴射量TPの算出(ステップS230)を行う。
【0058】
このステップS230に続いては、フラグFΔεが値1であるか否かを判定する(ステップS232)。このフラグFΔεは、後述する図9の圧縮比変更制御ルーチンによりセットされるものであり、その値により圧縮比変更の有無を示す。
【0059】
ここで、FΔε=0であると判定すると、圧縮比変更の局面ではないので、先に説明したように、目標圧縮比εtに応じた目標空燃比の設定(ステップS240)、酸素センサ62からのセンサ出力(酸素濃度)の読み込み(ステップS250)、その偏差ΔO2に応じた空燃比補正係数FAFの補正設定(ステップS260)を行う。この場合であっても、偏差ΔO2に基づく空燃比補正係数FAFの補正により、空燃比は目標空燃比と一致するようフィードバック制御される。
【0060】
一方、FΔε=1であると判定すると、圧縮比変更が起きた局面であるので、ステップS265に移行する。このステップS265では、図9の圧縮比変更制御ルーチンにおいて圧縮比の変更状況、即ちブローバイガス量の変化状況に応じて定められる補正係数FAF(Δε)を、次のステップS270で用いる空燃比補正係数FAFにセットする(ステップS265)。
【0061】
こうしたステップS260、265に続いては、式(2)に基づいた実燃料噴射量TAUの算出(ステップS270)、実燃料噴射量TAUに相当する燃料噴射時間のカウンタセット(ステップS280)を行う。こうした処理により、実燃料噴射量TAUは、圧縮比変更の状況(ブローバイガス量の変化状況)に応じてFAF(ΔO2)とFAF(Δε)を使い分けて算出される。
【0062】
図9に示すように、この実施例の圧縮比変化補正制御にあっても、圧縮比εiの読み込み・更新記憶(ステップS300)、前回処理の圧縮比ε(i−1)の読み込み(ステップS310)、およびその対比により圧縮比増減有無判定(ステップS320)を行う。
【0063】
ここで、増減無し(εi=ε(i−1))と判定すれば、圧縮比変更の状況(ブローバイガス量の変化状況)に応じた空燃比補正係数FAFの補正は不要であるとして、フラグFΔεに値ゼロをセットし(ステップS322)、本ルーチンを終了する。これにより、既述したように、実燃料噴射量TAUは、センサ出力と目標空燃比との偏差ΔO2に応じたFAF(ΔO2)で算出される。
【0064】
一方、圧縮比増大(εi>ε(i−1))と判定すれば、ECU60は、補正係数FAF(Δε)を、これを減少させた係数FAF(Δε;−)とする(ステップS332)。また、圧縮比低減(εi<ε(i−1))と判定すれば、補正係数FAF(Δε)を、これを増大させた係数FAF(Δε;+)とする。
【0065】
この減少係数FAF(Δε;−)と増大係数FAF(Δε;+)を定めるに当たり、その増減の程度は、圧縮比の変更状況、即ちブローバイガス量の変化状況に合わせるように行うことができる。例えば、低圧縮域から高圧縮域への圧縮比増大で有れば、減少係数FAF(Δε;−)をその減少程度が大きいものとし、中圧縮域から高圧縮域への変更、或いは低圧縮域から中圧縮域への変更の場合は、減少程度を控えたものとすることができる。圧縮比低減の状況も同様であり、この圧縮比低減によるブローバイガス量の低減を加味してステップS342による増大係数FAF(Δε;+)の増大程度を定めるようにすることもできる。
【0066】
そして、上記のステップS332、342で減少係数FAF(Δε;−)・増大係数FAF(Δε;+)をセットした後は、フラグFΔεに値1をセットし(ステップS350)、本ルーチンを終了する。これにより、既述したように、実燃料噴射量TAUは、圧縮比の変更状況(ブローバイガス量の増減状況)に応じた増大係数FAF(Δε;+)、或いは減少係数FAF(Δε;−)で算出され、この際には、センサ出力と目標空燃比との偏差ΔO2に応じたFAF(ΔO2)は採用されない。
【0067】
以上説明したように、本実施例では、圧縮比増大変化(ブローバイガス量増大変化)の際には、強制的に噴射量が低減されて燃料噴射が行われ、圧縮比低減変化(ブローバイガス量低減変化)の際には、強制的に噴射量が増大されて燃料噴射が行われる。このため、圧縮比変更に伴ってブローバイガス量が増大して混合気に燃料過多(空燃比リッチ)の現象が起きても、燃料噴射量低減(ステップS332)を図って空燃比をリーン側とし、こうした燃料過多を抑制できる。このため、圧縮比増大変更後に燃焼室に入り込む燃料・空気の比率の乱れの抑制を通して、圧縮比変更に伴う違和感緩和やエミッションの悪化回避を図ることができる。
【0068】
なお、圧縮比低減によるブローバイガス量低減の様子は、圧縮比増大時のブローバイガス量増大に比せば緩慢であることから、ステップS342の処理を省略するようにすることもできる。
【0069】
こうしたステップS332、342の係数FAF(Δε)の補正はオープンループ制御によるものであることから、係数補正の実効性が高まり、上記の燃料・空気の比率の乱れの速やかな抑制に効果的である。
【0070】
この図9の圧縮比変化補正制御にあっても、図7と同様、圧縮比増大或いは低減が見られる間においてステップS332、342による燃料噴射量の補正係数増減を行い、実際の圧縮比(ステップS300での読み込み圧縮比)が定常となると吸入空気量増減を停止する。よって、この実施例にあっても、既述したように、所定時間に亘って補正係数増減を強制的に行うようにすることができる。こうすれば、圧縮比変更が行われた後の過渡的な期間に亘って燃料噴射量増減を図るので、圧縮比が変更済みの状況では、各種エンジン制御を好適に行うことができる。この場合であっても、補正係数増減の実行時間は、ディップスイッチやプログラム変更等の種々の手法で任意に長短設定できると共に、後日その時間を変更することもできる。
【0071】
次に、第3実施例について説明する。この実施例は、吸気バルブの開閉時期を制御するバブル制御装置を有し、当該装置にてバルブ開閉時期を制御して吸入空気量を調整する点に特徴がある。図10は、第3実施例における制御の様子を説明する説明図である。
【0072】
この実施例にあっても、既述したように圧縮比変化補正制御を実行し、圧縮比の変更局面においてバルブ開閉タイミングを調整する。今、図10に示すように、低エンジン回転数の時に低圧縮域のポイントAから高圧縮域のポイントBに圧縮比が増大変更されたとする。そうすると、圧縮比が定常状態における吸気バルブの開閉状態を表す図中の開閉曲線Ivを、図中左にシフトさせて開閉曲線IvABとし、この曲線に合うよう吸気バルブの開閉タイミングを早める。これにより、ポイントAからポイントBに圧縮比が増大してブローバイガス量が増える際には、開閉タイミングを早めたことにより燃焼室への吸入空気量が増え、空燃比をリーン側とする。
【0073】
また、高エンジン回転数の時に低圧縮域のポイントaから高圧縮域のポイントbに圧縮比が増大変更された場合は、吸気バルブの開閉曲線Ivを、図中右にシフトさせて開閉曲線Ivabとし、この曲線に合うよう吸気バルブの開閉タイミングを遅くする。これは、次の理由による。
エンジン回転数が高くなると、バルブ開に伴う吸気に際して空気に働く慣性力が増す。よって、バルブタイミングを遅くしても、この慣性力による吸引量増加により吸入空気量が増えるからである。こうしてポイントaからポイントbへの圧縮比増大時であっても、燃焼室への吸入空気量を増やし、空燃比をリーン側とすることができる。こうしたタイミングのシフト量は、エンジン回転数に応じて予め定められている。
【0074】
このようにバルブタイミングを調整することでも、圧縮比増大変更の局面においては、吸入空気量の増大を起こすので、上記した実施例と同様、圧縮比変更に伴う違和感緩和やエミッションの悪化回避を図ることができる。
【0075】
以上説明した各実施例は、燃料を燃焼室に直接噴射する直噴エンジンにも適用できる。こうした直噴エンジンでは、燃焼室に入り込む空気の一部がブローバイガスに置き換わって空気不足を招くので、この空気不足に対処するよう、圧縮比変更状況(ブローバイガス量変化状況)に応じてスロットルバルブ54の開度を調整したり、燃料噴射量を増減すればよい。例えば、図7のステップS330や図9のステップS332では、圧縮比増大に併せて空気量増や係数低減(燃料噴射量低減)を行う。こうすれば、直噴エンジンにあっても、圧縮比変更に伴う違和感緩和やエミッションの悪化回避を図ることができる。
【0076】
次に、他の実施例について説明する。この実施例は、吸気管50に吸引されるブローバイガス量自体を調整する点に特徴がある。図11は第4実施例に係る可変圧縮比エンジン20Aの構成を概略的に説明する説明図である。
【0077】
図示するように、この可変圧縮比エンジン20Aは、圧縮比可変機構30により圧縮比を変更する点で既述した可変圧縮比エンジン20とその構成が共通し、次の点で相違する。つまり、可変圧縮比エンジン20Aは、吸気管50にブローバイガスを導くブローバイガス流路53にブローバイバルブ70を備え、当該流路の開度を調整する。
【0078】
この第4実施例では、圧縮比変化補正制御を次のようにして行う。既述した図7のステップS330や図9のステップS332のように圧縮比増大の局面では、ブローバイバルブ70を閉側に駆動してブローバイガス量を制限する。こうすれば、吸気管50に吸引されるブローバイガス量が低減することから、燃料過多の状況を抑制できる。また、直噴エンジンであれば、ブローバイガス量を制限して空気不足を抑制できる。
【0079】
また、圧縮比が低減すれば、それ以前の状況(即ち高い圧縮比の状況)よりもブローバイバルブ70を開側に駆動してブローバイガス量が増えるようにすることもできる。よって、吸入空気量や燃料噴射量に対するブローバイガス量に大きな乱れを起きないようにできるので、圧縮比の変更後に燃焼室に入り込む燃料・空気の比率の乱れを小さくできる。これらの結果、上記の各実施例と同様に、圧縮比の変更後に燃焼室に入り込む燃料・空気の比率の乱れを小さくして、圧縮比変更に伴う違和感緩和やエミッションの悪化回避を図ることができる。
【0080】
しかも、この可変圧縮比エンジン20Aでは、ブローバイバルブ70の開度調整という簡単な構成で、圧縮比変更に伴う違和感緩和やエミッションの悪化回避を図ることができる。
【0081】
なお、このようにブローバイガス量を調整する場合であっても、既述したように、このブローバイガス量調整を、圧縮比変更が行われた後の過渡的な期間に亘って行うようにすることができる。また、圧縮比低減によるブローバイガス量低減の様子は、圧縮比増大時のブローバイガス量増大に比せば緩慢であることから、圧縮比低減時には、ブローバイバルブ70のバルブ開度を維持するようにすることもできる。
【0082】
更に、ブローバイガス量調整の程度を、ブローバイガス量に応じて定めるようにすることもできる。
【0083】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記の実施例や実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0084】
例えば、上記した各実施例では、圧縮比変更の有無を圧縮比センサ58からのセンサ出力で判断したが、次のようにすることもできる。つまり、スロットルセンサ55や回転数・クランク角センサ56からのセンサ出力によりその時の圧縮比を、図5に示したようなマップから読み取り、その読み取った圧縮比の変化状況から圧縮比の変更有無を判断するようにすることもできる。こうすれば、圧縮比センサ58が不要となり、コスト低減に寄与できる。
【0085】
また、図7等の圧縮比変化補正制御では、圧縮比の変更状況により、吸入空気量Q、燃料噴射量を増減補正したが、次のようにすることもできる。つまり、ブローバイガス流路53にブローバイガス量を検出するセンサ(ブローバイセンサ)を設け、圧縮比の変更状況に伴う吸入空気量Qや燃料噴射量の増減補正程度を、このブローバイセンサ出力によって調整する。こうすれば、当該補正程度をブローバイガス量の変化状況により的確に併せることができるので、圧縮比変更後に燃焼室に入り込む燃料・空気の比率の乱れをより的確に抑制でき好ましい。
【0086】
また、上記の実施例では、燃料噴射量補正(係数補正)と吸入空気量補正の一方を行うものについて説明したが、この両者を組み合わせて実行するようにすることもできる。
【0087】
この他、屈曲するコンロッド27を有する圧縮比可変機構30によって圧縮比を変更する場合について説明したが、こうした構成に限るわけではない。例えば、ピストン28とこれにピストンピンを介して連結されたコンロッドとの位置関係を、油圧機構により変更できるようにして、ピストンの上死点位置と下死点位置を同時に変更するようなものとすることもできる。また、サーボモータ57とウォームギア47に代え、コントロールシャフトガイド40を油圧機構式のヘリカルスプラインにて回転させるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例に係る可変圧縮比エンジン20の構成を概略的に説明する説明図である。
【図2】コンロッド27を含む圧縮比可変機構30を示す概略斜視図である。
【図3】この圧縮比可変機構30による圧縮比変更の様子を説明する説明図である。
【図4】圧縮比変更制御を示すフローチャートである。
【図5】この圧縮比変更制御の内容を説明するための説明図である。
【図6】可変圧縮比エンジン20が行う燃料噴射制御を示すフローチャートである。
【図7】圧縮比変化補正制御を表すフローチャートである。
【図8】第2実施例における可変圧縮比エンジン20が行う燃料噴射制御を示すフローチャートである。
【図9】同じく第2実施例における圧縮比変化補正制御を表すフローチャートである。
【図10】第3実施例における制御の様子を説明する説明図である。
【図11】第4実施例に係る可変圧縮比エンジン20Aの構成を概略的に説明する説明図である。
【符号の説明】
20…可変圧縮比エンジン
20A…可変圧縮比エンジン
22…シリンダブロック
23…クランクルーム
24…シリンダヘッド
26…シリンダ
27…コンロッド
28…ピストン
29…クランクシャフト
30…圧縮比可変機構
31…第1コンロッド
31a…突出部
32…第2コンロッド
33…小端部
34…ピストンピン
35…大端部
36…コンロッドピン
37…コントロールロッド
37a…貫通孔
38…ピン
39…コントロールシャフト
40…コントロールシャフトガイド
41…軸受部
42…連結部
43…切欠領域
47…ウォームギア
48…ウォーム
49…ウォームホイール
50…吸気管
52…インジェクタ
53…ブローバイガス流路
54…スロットルバルブ
55…スロットルセンサ
56…回転数・クランク角センサ
57…サーボモータ
58…圧縮比センサ
61…アクセルセンサ
62…酸素センサ
63…アクチュエータ
64…エアフロメータ
70…ブローバイバルブ
X…中心軸

Claims (11)

  1. エンジンの圧縮比を変更するエンジンの制御方法であって、
    前記圧縮比を変更するに当たり、エンジンのトルクが低い場合には圧縮比を高圧縮比側に変更制御し、前記トルクが高い場合には圧縮比を低圧縮比側に変更制御する工程(1)と、
    圧縮比変更に伴うクランクルームから吸気通路へのブローバイの発生状況に応じて、前記エンジンの空燃比に関与する物理量を補正する工程(2)とを備え、
    該工程(2)は、前記工程(1)による圧縮比の変更程度に応じて、前記物理量の補正程度を変更する、可変圧縮比エンジンの制御方法。
  2. 請求項1記載のエンジンの制御方法であって、
    前記工程(2)は、前記工程(1)により圧縮比が高圧縮比側に変更制御されると前記物理量を空燃比が大きくなる側に前記ブローバイの発生状況に応じて補正し、前記工程(1)により圧縮比が低圧縮比側に変更制御されると前記物理量を空燃比が小さくなる側に前記ブローバイの発生状況に応じて補正する、可変圧縮比エンジンの制御方法。
  3. エンジンの圧縮比を変更するエンジンの制御方法であって、
    前記圧縮比を変更する工程(1)と、
    ブローバイガスがクランクルームから吸気通路に流れる流路の開度を圧縮比の変更状況に応じて調整することで、クランクルームから吸気通路へのブローバイガス量を可変制御する工程(2)と
    を備える可変圧縮比エンジンの制御方法。
  4. 請求項3記載のエンジンの制御方法であって、
    前記工程(2)は、前記工程(1)による圧縮比の変更程度に応じて、前記流路の開度の調整程度を変更する、可変圧縮比エンジンの制御方法。
  5. 請求項1ないし請求項4いずれかに記載のエンジンの制御方法であって、
    前記工程(2)は、前記圧縮比変更の過渡期間に亘って実行される、可変圧縮比エンジンの制御方法。
  6. エンジンの圧縮比を変更するエンジンであって、
    エンジンのトルクが低い場合には圧縮比を高圧縮比側に変更制御し、前記トルクが高い場合には圧縮比を低圧縮比側に変更制御する圧縮比可変手段と、
    前記エンジンの空燃比を目標空燃比に一致するよう制御する空燃比制御手段と、
    該空燃比制御手段が制御する際の空燃比に関与する物理量を、圧縮比変更に伴うクランクルームから吸気通路へのブローバイの発生状況に応じて補正する補正手段とを備え、
    該補正手段は、圧縮比を高圧縮比側に変更する前記圧縮比変更の際は前記物理量を空燃比が大きくなる側に前記ブローバイの発生状況に応じて補正し、圧縮比を低圧縮比側に変更する前記圧縮比変更の際は前記物理量を空燃比が小さくなる側に前記ブローバイの発生状況に応じて補正する可変圧縮比エンジン。
    とを特徴とする可変圧縮比エンジン。
  7. 請求項6記載の可変圧縮比エンジンであって、
    前記補正手段は、前記補正をオープンループ制御により実行する、可変圧縮比エンジン。
  8. 請求項6または請項7に記載の可変圧縮比エンジンであって、
    前記補正手段は、前記物理量として燃料噴射量と吸入空気量の少なくとも一方を前記ブローバイ発生状況に応じて補正する、可変圧縮比エンジン。
  9. 請求項6ないし請求項8いずれか記載の可変圧縮比エンジンであって、
    前記補正手段は、前記圧縮比変更の過渡期間に亘って前記補正を実行する、可変圧縮比エンジン。
  10. エンジンの圧縮比を変更する圧縮比可変手段を有するエンジンであって、
    クランクルームから吸気通路にブローバイガスを通気する通気手段と、
    該通気されるブローバイガス量を前記通気手段に設けた絞りの絞り開度を調整して増減調整すると共に、前記ブローバイガス量が前記圧縮比の変更状況に応じて変更するよう、前記圧縮比の変更程度に応じて前記絞り開度の調整程度を変更する可変制御手段と、
    を備えることを特徴とする可変圧縮比エンジン。
  11. 請求項10記載の可変圧縮比エンジンであって、
    前記可変制御手段は、前記圧縮比変更の過渡期間に亘って前記絞り開度の調整を実行する、可変圧縮比エンジン。
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