JP4144142B2 - 環状オレフィン系共重合体の製造方法 - Google Patents

環状オレフィン系共重合体の製造方法 Download PDF

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  • Polyoxymethylene Polymers And Polymers With Carbon-To-Carbon Bonds (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状オレフィン系共重合体の製造方法に関し、更に詳しくは光学特性、接着性、低吸湿性等の諸性能に優れ、光ディスク、レンズ、光学フィルムなどの光学材料や、光半導体封止材料、その他の電子部品材料として好適な環状オレフィン系共重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年において、透明性樹脂は、自動車部品、照明機器、電気部品、雑貨などの通常の透明性が要求される成形材料として使用される以外に、光学的性質を重視する光学材料や電子部品材料として広く応用されてきている。そして、光学材料や電子部品材料としては、単なる透明性のみならず、これまで以上に従来の一般的な透明性樹脂、例えばポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂などでは満足し得ない高度の機能が要求されている。例えば、光学材料としての光ディスクの基盤材料としては、低複屈折性、低吸湿性、機械的強度、記録層に対する接着性などが要求されている。
【0003】
また、上記の透明性樹脂以外の樹脂材料としては、環状オレフィン系(共)重合体、例えば、(1)チグラー型触媒によるエチレンとノルボルネン系炭化水素化合物との共重合体(特開昭61−292601号公報参照)、(2)メタセシス触媒によるテトラシクロドデセン系炭化水素化合物の単独またはノルボルネン系炭化水素化合物の開環(共)重合体に水素添加して得られる重合体(特開昭60−26024号公報参照)、(3)メタセシス触媒による極性置換基を有するノルボルネン誘導体の開環(共)重合体の水素化物(特開平1−132625号公報、特開平1−132626号公報、特開平4−202404号公報等参照)などが提案されているが、このような透明性樹脂も、上記の特性の全てを十分に満足するものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
具体的に説明すると、上記(1)または(2)の透明性樹脂は、極性基を有しないため、記録層に対する接着性および密着性が低い、という欠点を有する。
また、上記(3)の透明樹脂材料は、上記(1)または(2)の透明性樹脂に比較して、記録層に対する接着性および密着性が高いものであるが、その程度は十分なものではなく、また、極性置換基を有するノルボルネン誘導体に由来する構造単位の割合が高いため、吸湿性が大きい、という欠点を有する。
以上のように、従来、優れた光学的性質、低吸湿性および記録層に対して高い接着性などの複数の特性の全てを十分に満足する透明樹脂材料は知られていないのが現状である。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、優れた光学的性質を有し、他の材料に対する接着性および密着性が高く、しかも、吸湿性が小さい環状オレフィン系共重合体を確実に製造することができる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の方法によって製造される環状オレフィン系共重合体は、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表わされる構造単位(a)と、
下記一般式(3)または下記一般式(4)で表される構造単位(b)とを有してなり、 135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2〜5dl/gのものである。
【0007】
【化5】
Figure 0004144142
【0008】
〔式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立して水素原子または炭化水素基を示し、XおよびZは、それぞれ独立して水素原子、炭化水素基または下記の官能基を示し、XおよびZのうち少なくともいずれか一方は官能基である。nは0〜2の整数を示す。
官能基:ヒドロキシル基若しくはヒドロキシル基が結合した炭化水素基、カルボキシル基若しくはカルボキシル基が結合した炭化水素基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、これらのアミノ基が結合した炭化水素基若しくはこれらの第四級アンモニウム塩、アミド基、N置換炭化水素基を有すると共にN活性水素を有するアミド基若しくはこれらのアミド基が結合した炭化水素基、およびXとZとから構成された−CO−NH−CO−で表されるイミド基から選ばれた官能基。〕
【0009】
【化6】
Figure 0004144142
【0010】
〔式中、R3 〜R10は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R11〜R14は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基または一般式 −(CH 2 q COOR 15 (但し、R 15 は炭素数が1〜12の炭化水素基を示し、qは0〜5の整数である。)で表される基を示し、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、R11とR12とまたはR13とR14とは、一体化して2価の炭化水素基を形成していてもよく、R11またはR12とR13またはR14とは、互いに結合して単環または多環構造を形成していてもよい。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。〕
【0011】
本発明の方法による環状オレフィン系共重合体においては、全構造単位中における前記構造単位(a)の割合が0.005〜40モル%であることが好ましい。
また、前記構造単位(a)および前記構造単位(b)の合計に対する前記一般式(2)で表される構造単位および前記一般式(4)で表される構造単位の合計の割合が90モル%以上であることが好ましく、更に好ましくは95モル%以上、特に好ましくは98モル%以上である。
また、ガラス転移温度が20〜250℃の範囲にあることが好ましい。
【0012】
本発明の環状オレフィン系共重合体の製造方法は、下記一般式(5)で表される官能基含有環状オレフィンと、周期表第2族、第12族および第13族から選ばれた金属による有機金属化合物とを反応させ、
得られた反応生成物と、下記一般式(6)で表される環状オレフィンとを、タングステンの塩化物または臭化物を主成分とするものか、タングステンカルベンまたはタングステンカルビンからなるメタセシス触媒の存在下に開環重合させる工程を有することを特徴とする。
【0013】
【化7】
Figure 0004144142
【0014】
〔式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立して水素原子または炭化水素基を示し、XおよびZは、それぞれ独立して水素原子、炭化水素基または下記の官能基を示し、XおよびZのうち少なくともいずれか一方は官能基である。nは0〜2の整数を示す。
官能基:ヒドロキシル基若しくはヒドロキシル基が結合した炭化水素基、カルボキシル基若しくはカルボキシル基が結合した炭化水素基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、これらのアミノ基が結合した炭化水素基若しくはこれらの第四級アンモニウム塩、アミド基、N置換炭化水素基を有すると共にN活性水素を有するアミド基若しくはこれらのアミド基が結合した炭化水素基、およびXとZとから構成された−CO−NH−CO−で表されるイミド基から選ばれた官能基。〕
【0015】
【化8】
Figure 0004144142
【0016】
〔式中、R3 10 は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。 11 〜R 14 は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基または一般式 −(CH 2 q COOR 15 (但し、R 15 は炭素数が1〜12の炭化水素基を示し、qは0〜5の整数である。)で表される基を示し、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、R11とR12とまたはR13とR14とは、一体化して2価の炭化水素基を形成していてもよく、R11またはR12とR13またはR14とは、互いに結合して単環または多環構造を形成していてもよい。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。〕
【0017】
本発明の環状オレフィン系共重合体の製造方法においては、周期表第2族、第12族および第13族から選ばれた金属による有機金属化合物は、前記一般式(5)で表される官能基含有環状オレフィンにおける官能基1当量に対して0.5当量以上となる割合で用いられることが好ましい。
また、開環重合させることによって得られる共重合体を水素添加することが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〈環状オレフィン系共重合体〉
本発明の環状オレフィン系共重合体は、上記一般式(1)または上記一般式(2)で表される構造単位(a)(以下、単に「構造単位(a)」ともいう。)と、上記一般式(3)または上記一般式(4)で表される構造単位(b)(以下、単に「構造単位(b)」ともいう。)とを含有してなるものである。
【0020】
構造単位(a)は、上記一般式(1)または上記一般式(2)で表される構造単位であって、上記一般式(5)で表される官能基含有環状オレフィン(以下、「特定の官能基含有環状オレフィン」ともいう。)により形成されるものである。上記一般式(1)、一般式(2)および一般式(5)において、基R1 および基R2 は、それぞれ独立して水素原子または炭化水素基であり、炭化水素基としては炭素数が1〜12のものが好ましい。基Xおよび基Zは、それぞれ独立して水素原子、炭化水素基または特定の官能基であり、炭化水素基としては、炭素数が1〜12のものが好ましい。また、基Xおよび基Zのうち少なくともいずれか一方は官能基とされる。nは0〜2の整数、好ましくは0または1である。
ここで、特定の官能基は、ヒドロキシル基、ヒドロキシル基が結合した炭化水素基、カルボキシル基、カルボキシル基が結合した炭化水素基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第一級アミノ基若しくは第二級アミノ基が結合した炭化水素基、アミド基、N置換炭化水素基を有すると共にN活性水素原子を有するアミド基、これらのアミド基が結合した炭化水素基、基Xと基Yとから構成された−CO−NH−CO−で表されるイミド基から選ばれた基であり、カルボキシル基が結合した炭化水素基、アミノ基が結合した炭化水素基およびアミド基が結合した炭化水素基としては、置換基を除く炭素数が1〜6のものが好ましい。
【0021】
また、基Xおよび/または基Zとして特定の官能基が結合された炭素原子には、基R1 および/または基R2 として炭素数が1または2の脂肪族炭化水素基が結合されていることが、成形加工する際に、当該共重合体の熱分解が起こりにくく、優れた耐久性が得られる点で好ましい。
特定の官能基が結合された炭素原子に水素原子が結合されている場合には、当該水素原子は活性な第三級水素原子(第三級炭素原子に結合した水素原子)となるため、得られる共重合体は熱安定性が低いものとなりやすい。
【0022】
上記特定の官能基としては、カルボキシル基、アミド基、イミド基が、他の材料に対する接着性および密着性が高く、耐熱性が高い共重合体が得られる点で好ましい。
構造単位(a)としては、一般式(1)および一般式(2)において、基Xおよび基Zの一方のみが特定の官能基であって、当該特定の官能基が結合した炭素原子に結合している基R1 または基R2 が、炭素数が1または2の炭化水素基であるものが、当該共重合体の分解が起こりにくく、優れた耐久性が得られる点で好ましく、特に、基Xおよび基Zの他方が水素原子であって、当該水素原子が結合した炭素原子に結合している基R1 または基R2 が水素原子であるもの、或いは基Xおよび基Zの他方が炭化水素基であって、当該炭化水素基が結合した炭素原子に結合している基R1 または基R2 が炭化水素基であるものが好ましい。
【0023】
構造単位(a)を形成するための特定の官能基含有環状オレフィンは、シクロペンタジエンと官能基含有オレフィンとをディールス・アルダー反応によって縮合させ、必要に応じて加水分解反応させることにより製造される。
このような特定の官能基含有環状オレフィンの具体例としては、
5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−ヒドロキシエチルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−カルボキシビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−アミノメチルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−アミノプロピルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−N−メチル−アミノプロピルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−N−イソプロピル−アミノプロピルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−アミノシクロヘキシルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−アミノフェニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−N−メチル−アミノフェニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−N−メチル−アミノベンジルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−N−メチルアミノカルボニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ジヒドロキシビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ジヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ジヒドロキシエチルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン−5,6−ジカルボン酸イミド、
5,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ビス(アミノプロピル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ビス(N−メチル−アミノプロピル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ビス(N−イソプロピル−アミノプロピル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ビス(アミノシクロヘキシル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ビス(アミノフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ビス(N−メチル−アミノフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ビス(N−メチル−アミノベンジル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ビス(アミノカルボニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5,6−ビス(N−メチルアミノカルボニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−メチル−5−ヒドロキシ−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−メチル−5−カルボキシ−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−エチル−5−カルボキシ−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−プロピル−5−カルボキシ−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−ブチル−5−カルボキシ−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−フェニル−5−カルボキシ−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−メチル−5−ヒドロキシメチル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−エチル−5−ヒドロキシメチル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−メチル−5−カルボキシメチル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−エチル−5−カルボキシメチル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−メチル−5−カルボキシエチル−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、
5−メチル−5−アミノメチル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−エチル−5−アミノメチル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−メチル−5−アミノプロピル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−メチル−5−アミノカルボニル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−メチル−5−N−メチル−アミノカルボニル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−メチル−5−N−プロピル−アミノカルボニル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−エチル−5−アミノカルボニル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−エチル−5−N−エチル−アミノカルボニル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジメチル−5,6−ジヒドロキシ−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジメチル−5,6−ジカルボキシ−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジエチル−5,6−ジカルボキシ−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジメチル−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン−5,6−ジカルボン酸イミド、
5,6−ジメチル−5,6−ビス(カルボキシメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジエチル−5,6−ビス(カルボキシメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジメチル−5,6−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジエチル−5,6−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジメチル−5,6−ビス(アミノメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジエチル−5,6−ビス(アミノメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジメチル−5,6−ビス(アミノプロピル)−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジメチル−5,6−ビス(アミノカルボニル)−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジメチル−5,6−ビス(N−メチル−アミノカルボニル)−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジメチル−5,6−ビス(N−プロピル−アミノカルボニル)−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジエチル−5,6−ビス(アミノカルボニル)−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジエチル−5,6−ビス(N−エチル−アミノカルボニル)−ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
8−カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10.]−3−ドデセン、
8,9−ジカルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10.]−3−ドデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10.]−3−ドデセン−8,9−ジカルボン酸イミド、
8−メチル−8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エチル−8−カルボキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−ヒドロキシルメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エチル−8−ヒドロキシルメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−アミノメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エチル−8−アミノメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−アミノカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−N−メチル−アミノカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エチル−8−アミノカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エチル−8−N−エチル−アミノカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジメチル−8,9−ジカルボキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジエチル−8,9−ジカルボキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジメチル−8,9−ビス(ヒドロキシルメチル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジエチル−8,9−ビス(ヒドロキシルメチル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジメチル−8,9−ビス(アミノメチル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジエチル−8,9−ビス(アミノメチル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジメチル−8,9−ビス(アミノカルボニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジメチル−8,9−ビス(N−メチル−アミノカルボニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジエチル−8,9−ビス(アミノカルボニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジエチル−8,9−ビス(N−エチル−アミノカルボニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン
などが挙げられる。
【0024】
構造単位(a)は、全構造単位中0.005〜40モル%の範囲で含有されていることが好ましく、更に好ましくは0.01〜10モル%、特に好ましくは0.02〜2モル%である。
構造単位(a)の含有割合が0.005モル%以上である場合には、得られる共重合体は、金属やポリオレフィン系以外の重合体に対する接着性および密着性が高いものとなりやすい、という利点がある。一方、構造単位(a)の割合が40モル%以下である場合には、得られる共重合体は、耐熱性が高いものとなりやすく、また、吸湿性が低いものとなりやすい、という利点がある。
【0025】
構造単位(b)は、上記一般式(3)または上記一般式(4)で表される構造単位であって、上記一般式(6)で表される環状オレフィン(以下、「特定の環状オレフィン」ともいう。)により形成されるものである。上記一般式(3)、上記一般式(4)および上記一般式(6)において、R3 〜R10は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R11〜R14は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基またはその他の1価の有機基を示し、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。その他の1価の有機基としては、一般式:−(CH2 q COOR15(但し、R15は炭素数が1〜12の炭化水素基を示し、qは0〜5の整数である。)で表される基が好ましい。また、R11とR12とまたはR13とR14とは、一体化して2価の炭化水素基を形成していてもよく、R11またはR12とR13またはR14とは、互いに結合して単環または多環構造を形成していてもよい。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。
【0026】
このような特定の環状オレフィンの具体例としては、
ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−メチルビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−エチルビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−ブチルビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−ヘキシルビシクロ〔2,2,1〕−2−ヘプテン、
5−シクロヘキシル〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−フェニルビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,6−ジメチルビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5,5−ジメチルビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−メチル−6−エチルビシクロ〔2.2.1.〕−2−ヘプテン、
5,6−ジエチルビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−メチル−6−プロピルビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−メチル−6−シクロヘキシル〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
1−メチルビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
トリシクロ〔4.3.0.12,5 〕−3−デセン、
2−メチル−トリシクロ〔4.3.0.12,5 〕−3−デセン、
トリシクロ〔4.4.0.12,5 〕−3−デセン、
テトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−メチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8,9−ジメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
5,10−ジメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
ペンタシクロ〔6.6.13,6 .02,7 .09,14〕−4−ヘキサデセン、
ヘキサシクロ〔6.6.1.13,6 .110,13 .02,7 .09,14〕−4−ヘプタデセン、
12−メチルヘキサシクロ〔6.6.13,6 .110,13 .02,7 .09,14〕−4−ヘプタデセン、
トリシクロ〔4.4.0.12,5 〕−3−ウンデセン、
ペンタシクロ〔6.5.1.13,6 .02,7 .09,13〕−3−ペンタデセン、
ペンタシクロ〔4.7.0.12,5 .08,13.19,12〕−3−ペンタデセン、
5−メチル−5−フェニルビシクロ〔2.2.1.〕−2−ヘプテン、
8−フェニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−メチル−8−フェニルビシクロ〔2.2.1.〕−2−ヘプテン、
8−エチリデンビシクロ〔2.2.1.〕−2−ヘプテン、
1,4−メタノ−1,1a,4,4a−テトラヒドロフルオレン、
1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12, 5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
5−メトキシカルボニルビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテンなどが挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
構造単位(b)は、全構造単位中60〜99.995モル%の範囲で含有されていることが好ましく、更に好ましくは70〜99.99モル%、特に好ましくは80〜99.98モル%である。
このような条件を満足することにより、吸湿性が低く、かつ、他の材料に対する接着性および密着性が高い共重合体が得られやすい。
また、構造単位(a)および構造単位(b)の合計の割合は、全構造単位中の65モル%以上であることが好ましい。
このような環状オレフィン系共重合体は、後述する熱可塑性樹脂組成物を構成するための環状オレフィン系共重合体として好適である。
【0028】
本発明の環状オレフィン系共重合体においては、構造単位(a)および構造単位(b)の合計に対する前記一般式(2)で表される構造単位および前記一般式(4)で表される構造単位の合計の割合、すなわち不飽和結合の水素化率が、90モル%以上であることが好ましく、更に好ましくは95モル%以上、特に好ましくは98モル%以上である。この割合(水素化率)が90モル%以上である場合には、当該共重合体は、耐熱性が高いものとなりやすく、その結果、成形加工時や製品としての使用時の加熱によってその特性が劣化することを防止または抑制される、という利点がある。
【0029】
本発明の環状オレフィン系共重合体には、上記の構造単位(a)および構造単位(b)以外の構造単位(以下、「他の構造単位」という。)、例えばメタセシス触媒によって開環重合し得る単量体に由来する構造単位が含有されていてもよい。
このような他の構造単位を導入するための単量体としては、シクロブテン、シクロペンテン、3−フェニルシクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロオレフィン類を用いることができる。
【0030】
本発明の環状オレフィン系共重合体は、135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η〕が0.2〜5の範囲にあるものであり、好ましくは0.3〜2.5、特に好ましくは0.5〜1.5である。
この極限粘度[η〕が0.2以上である場合には、高い破壊強度を有する環状オレフィン系重合体が得られる、という利点がある。一方、この極限粘度[η〕が5以下である場合には、当該環状オレフィン系重合体は、成形加工性が良好であるため、成形時に熱劣化を起こすことなく、また、複屈折の小さい成形体が得られる、という利点がある。
また、本発明のオレフィン系共重合体は、ゲル透過クロマトグラフィー法によって135℃のo−ジクロロベンゼン溶媒で測定されるポリスチレン換算重量平均分子量Mwが30,000〜500,000であることが好ましく、更に好ましくは40,000〜400,000、特に好ましくは50,000〜200,000であり、ポリスチレン換算数平均分子量Mnが10,000〜300,000であることが好ましく、更に好ましくは20,000〜200,000、特に好ましくは25,000〜100,000である。
また、本発明の環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度は、20〜250℃であることが好ましく、更に好ましくは50〜200℃、特に好ましくは70〜170℃である。
ここで、環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度は、示差熱分析計(DSC)により測定することができる。
【0031】
本発明の環状オレフィン系共重合体には、例えば2,6−ジ−t−ブチル,4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1’−−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等の酸化防止剤や、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤を添加することができ、これにより、当該環状オレフィン系共重合体の安定性をさらに向上させることができる。
また、加工性を向上させるために、滑剤などの従来から樹脂加工において用いられている添加剤を添加することができる。
本発明の環状オレフィン系共重合体は、射出成形法、圧縮成形法、押出し成形法などの公知の成形法を利用して、目的とする光学製品とすることができる。
【0032】
本発明の環状オレフィン系共重合体は、特定の官能基(基Xおよび/または基Z)を有する構造単位(a)が、特定の割合で含有されているため、他の材料例えば金属に対して高い接着性および密着性を有し、しかも、吸湿性の低いものである。
また、構造単位(a)において、特定の官能基(基Xおよび/または基Z)が結合した炭素原子に水素原子が結合されていない場合には、結合した炭素原子から離脱してラジカルが発生しやすい第三級水素原子が存在しないため、成形加工時に、特定の官能基が分解することが抑制され、その結果、他の材料に対する高い接着性および密着性が維持されて好ましい。
本発明の環状オレフィン系共重合体は、以上のような性質を有するため、光ディスク、レンズ、光ファイバー、液晶パネルに用いられる導光板やフィルムなどの光学材料、光半導体封止材料やその他の電子部品材料として好適であり、その他には、自動車部品、電気部品、医療容器などにも広く用いることができる。
また、本発明の環状オレフィン系共重合体は、それ自体単独で使用することもできるが、後述する熱可塑性重合体組成物のように、他の重合体の改質材として利用することができ、これにより、他の重合体に対して、例えば他の材料に対する接着性および密着性、光学特性、その他の特性を付与することができる。
【0033】
〈環状オレフィン系共重合体の製造方法〉
以上のような環状オレフィン系共重合体は、以下のようにして製造することができる。
先ず、周期表第2族、第12族および第13族から選ばれた金属による有機金属化合物(以下、「特定の有機金属化合物」という。)と、特定の官能基含有環状オレフィンとを反応させることにより、特定の官能基含有環状オレフィンの官能基(基Xおよび/または基Z)をマスキング処理する。
【0034】
マスキング処理に用いられる特定の有機金属化合物の具体例としては、
ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、
ジブチルマグネシウム、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、メチルアルモキサン、ブチルアルモキサン等のトリアルキルアルミニウムと水との反応物、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド、エチルアルミニウムジハイドライド等の水素化有機アルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド等のハロゲン化有機アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物が挙げられる。
これらの中で有機アルミニウム化合物が好ましく、特に好ましい有機アルミニウム化合物としては、ハロゲン原子を含まないもの、具体的にはトリアルキルアルミニウム、水素化有機アルミニウムなどが挙げられる。
【0035】
マスキング処理すなわち特定の官能基含有環状オレフィンと特定の有機金属化合物との反応は、不活性溶媒または希釈剤の存在下で、かつ、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
ここで、不活性溶媒または希釈剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類を用いることができる。
【0036】
また、特定の有機金属化合物は、特定の官能基含有環状オレフィンにおける官能基1当量に対して0.5当量以上となる割合で用いることが好ましく、より好ましくは0.5〜3当量、さらに好ましくは0.7〜2当量である。この割合が過小である場合には、マスキングされない官能基が多量に残存するため、後述する重合処理において触媒活性が低下して重合反応が十分に進行しないことがある。
特定の官能基含有環状オレフィンと特定の有機金属化合物との反応条件は、用いられる特定の有機金属化合物および特定の官能基含有環状オレフィンの種類によって異なるが、反応時間が、通常、5分間以上、好ましくは15〜120分間であり、反応温度が、通常、0〜160℃、好ましくは10〜50℃である。
【0037】
このようにしてマスキング処理された特定の官能基含有環状オレフィンは、重合処理に供されるまでに使用されるまで30℃以下の温度に貯蔵されることが好ましく、これにより、副反応の発生を防止することができる。
また、マスキング処理された特定の官能基含有環状オレフィンには、さらに、マスキングされた化合物中に未反応の金属−炭素結合が存在する場合には、貯蔵中の安定性を増すために、イソプロパノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキサノール、メタノール、エタノール、アミルアルコール、ノニルアルコール、ドデカノールなどのアルコール類、4−メチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、ノニルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジtert−ブチルクレゾールなどのフェノール類を添加することもできる。
また、ハロゲン化有機アルミニウムを用いる場合には、貯蔵中に特定の官能基含有環状オレフィンにおける二重結合のカチオン反応による消失を防止するために、弱いルイス塩基であるジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソールなどのエーテル化合物や、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル、フタル酸メチル、テレフタル酸メチルなどの有機カルボン酸エステル化合物、トリブチルリン酸エステル、トリオクチルリン酸エステル、トリノニルリン酸エステルなどのリン酸エステル類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリキシリルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン類を、ハロゲン化有機アルミニウム1モルに対して0.01〜0.2モルとなる割合で添加することができる。
【0038】
そして、本発明の製造方法においては、マスキング処理された特定の官能基含有環状オレフィンと、特定の環状オレフィンとを、メタセシス触媒の存在下に開環重合させる。メタセシス触媒としては、種々のものを用いることができ、具体的には、以下のようなものが挙げられる。
【0039】
(1)遷移金属の塩化物または臭化物を主成分とするもの。
ここで、遷移金属としては、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Ru、Os、Irなどを用いることができ、その塩化物および臭化物の具体例としては、TiCl4 、TiBr4 、ZrCl4 、VCl4 、VOCl4 、NbCl5 、TaCl5 、MoCl5 、WCl6 、WOCl4 、ReCl5 、RuCl3 、OsCl3 、IrCl3 などを挙げることができる。
このような遷移金属の塩化物または臭化物は、単独でメタセシス触媒として用いることができるが、一般的には、(C2 5 3 Al、(C4 9 3 Al、(C2 5 2 AlCl、(C2 5 3 Al2 Cl3 、(C2 5 )AlCl2 、メチルアルモキサン、(C2 5 2 Al(OC2 5 )、(C4 9 )Li、LiAlH4 、(CH3 4 Sn、(C4 9 4 Sn、(C6 5 4 Snなどの有機金属化合物またはその水素化物と併用してメタセシス触媒として用いられる。このような有機金属化合物またはその水素化物は、通常、遷移金属1グラム原子当たり1〜50モル、好ましくは2〜20モルの範囲で用いられる。以上において、WCl6 、MoCl5 、ReCl5 を用いる場合には、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類,アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、エピクロルヒドリン、2,6−ジ−tブチルフェノール、2,6−ジ−tブチルクレゾール、酸素、ベンゾイルパーオキシド、水などを少量添加することにより、重合活性を向上させることができる。
また、TiCl4 を用いる場合には、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン類、ホスフィン類など少量添加することにより、重合活性を向上させることができる。
【0040】
(2)金属カルベンまたは金属カルビンからなるもの。
ここで、金属カルベンまたは金属カルビンの具体例としては、
6 5 (CH3 O)=W(CO)5 、C6 5 (C2 5 O)=W(CO)5 、(C6 5 2 C=W(CO)5 、H(C4 9 )C=W(OR162 17(但し、R16は、ブチル基,2,6−ジフェニルフェニル基を示し、R17は塩素原子または臭素原子を示す。)、
Mo(=CH−t−C4 9 )(=N−2,6−C6 3 −(i−C3 7 2 )(O−t−C4 9 2 、W(=CH−t−C4 9 )(=N−2,6−C6 3 −(i−C3 7 2 )(Ot−C4 9 2
チタノセンジクロリドとトリメチルアルミニウムとから得られるTebbe試薬(CP2 Ti=CH2 ・Al(CH3 2 Cl)と、エチレン、プロピレン、イソブチレン、t−ブチルエチレン、スチレン、1,1−ジシクロヘキシルエチレン、シクロペンテン、ノルボルネン、アレン、メチルアレンなどのオレフィン化合物との反応によって得られるチタナシクロブタン系触媒
などを挙げることができる。
以上において、C6 5 (CH3 O)=W(CO)5 、C6 5 (C2 5 O)=W(CO)5 、(C6 5 2 C=W(CO)5 、H(C4 9 )C=W(OR162 17をメタセシス触媒として用いる場合には、AlBr3 ,GaBr3 などのルイス酸を添加することにより、重合活性を向上させることができる。
【0041】
上記の触媒の使用割合は、目的とする共重合体の分子量によって異なるが、通常、用いられる単量体:触媒中の遷移金属原子が、モル比で1000:1〜100000:1の範囲である。
また、開環重合反応においては、必要に応じて分子量調節剤を用いることができる。かかる分子量調節剤の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィンを挙げることができる。
【0042】
開環重合反応は、適宜の溶媒の存在下で行われることが好ましい。このような溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類およびこれらのハロゲン化物、カルボン酸エステル類、エーテル類を用いることができる。脂肪族炭化水素類の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ヘプタンなどを挙げることができる。脂環式炭化水素類としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどを挙げることができる。芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどを用いることができる。ハロゲン化炭化水素類の具体例としては、ジクロルメタン、エチレンジクロライド、クロルベンゼンなどを挙げることができる。カルボン酸エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなどを挙げることができる。エーテル類の具体例としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどを挙げることができる。
上記の溶媒の使用割合は、用いられる単量体1重量部に対して0.5〜10重量部であることが好ましい。
【0043】
開環重合反応は、0〜150℃、特に10〜100℃の温度で行われることが好ましい。
また、開環重合反応を行うための反応器は、バッチ式および連続式のいずれであってもよい。連続式の反応器としては、チューブ型反応器、塔型反応器、槽型反応器などを用いることができる。
【0044】
開環重合反応は、反応系にアルコール、有機酸、水、アルカリ金属塩などを添加することにより停止することができる。
開環重合反応が終了した後、後述する水素添加を行う前に、水、アルコールを用いて、得られた重合体溶液中の触媒の除去処理を行うことができるが、例えば高活性のメタセシス重合触媒を選択した場合には、当該触媒の除去処理を行わなくてもよい。
【0045】
本発明においては、上記の開環重合反応によって得られる共重合体に対して、適宜の触媒の存在下に水素添加を行うことにより、一般式(1)で表される構造単位および一般式(3)で表される構造単位(以下、これらを「不飽和結合含有構造単位」ともいう。)中の不飽和結合の水素化を行う。具体的には、開環重合反応によって得られた重合体溶液に触媒を添加して水素添加を行う。
ここで、水素化反応を行うための触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素化反応に用いられるものを使用することができ、具体的には、以下のものを挙げることができる。
【0046】
本発明の官能基含有環状オレフィン系共重合体の水素化触媒として
(1)Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Irなどの金属を、カーボン、アルミナ、シリカ、ケイソウ土などの坦体に坦持した坦持型金属触媒。
(2)Co、Ru、Rh、Pt、Pdなどの貴金属錯体触媒。
具体的には、HCo[P(OC6 5 3 4 、RuHCl(CO)(P(C6 5 3 3 、RuHCl(CO)(P(C6 5 3 2 (P(C6 5 CH3 3 )、RuHCl(PC6 123 3 、RuH(NO)(P(C6 5 3 3 、RuCl2 (P(C6 5 3 3 、RhCl(P(C6 5 3 3 、RhH(CO)(P(C6 5 3 3 などを挙げることができる。
(3)Ti、Zr、Co、Niなどの有機金属錯体、ハロゲン化物、有機酸塩と、Li、Alの有機金属化合物とからなる触媒。
具体的には、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジクロライドと、ブチルリチウムおよび/またはトリエチルアルミニウムとからなる触媒、ビス(シクロペンタジエニル)ジトリルチタンとブチルリチウムとからなる触媒、ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルチタンとブチルリチウムとジフェニルケトンとジエチルアルミニウムクロライドとからなる触媒、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコンジクロライドとメチルアルモキサンとからなる触媒、オクタン酸コバルトとブチルリチウムとからなる触媒、オクタン酸コバルトとトリエチルアルミニウムとからなる触媒、オクタン酸ニッケルとブチルリチウムとからなる触媒、ナフテン酸ニッケルとトリエチルアルミニウムとからなる触媒、オクタン酸ニッケルとトリエチルアルミニウムとからなる触媒、ビス(シクロオクタジエン)ニッケルとトリエチルアルミニウムとからなる触媒などを挙げることができる。
【0047】
水素化反応は、10〜200℃、好ましくは50〜170℃で、10〜150kg/cm2 の水素ガス雰囲気下において行うことができる。
また、全不飽和結合含有構造単位中の不飽和結合に対する水素化率は、90%以上であることが好ましく、更に好ましくは95モル%以上、特に好ましくは98%以上である。
このようにして水素化反応を行うことにより、一般式(2)で表される構造単位および一般式(4)で表される構造単位を高い割合で含有する共重合体が得られ、このような共重合体は優れた耐熱性を有するものとなり、その結果、成形加工時や製品としての使用時の加熱によってその特性が劣化することを防止または抑制することができる。
【0048】
本発明においては、以上のようにして水素化が行われた共重合体に対して、脱マスキング処理を行う。
特定の官能基含有環状オレフィンとして、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有するものを用いた場合には、脱マスキング剤として、シュウ酸、フマル酸、ジオクチル一リン酸、トリフロロ酢酸、ドデシルベンゼンスルフォン酸、ノニルフェノキシポリエチレングリコールのモノリン酸エステル、ノニルフェノキシポリエチレングリコールのジリン酸エステル、ラウロキシポリエチレングリコールのモノリン酸エステル、ラウロキシポリエチレングリコールのジリン酸エステル等の比較的酸性度の大きい酸が用いられる。
一方、特定の官能基含有環状オレフィンとして、アミノ基またはアミド基を有するものを用いた場合には、脱マスキング剤として、t−ブタノールと、リチウム、ナトリウムまたはカリウムとのアルコラート、アミルアルコールと、リチウム、ナトリウムまたはカリウムとのアルコラート、オクタン酸のリチウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩、ノニルフェノールのリチウム塩またはカリウム塩などの塩基性の強いアルコラートやフェノールまたは有機カルボン酸のアルカリ金属塩が用いられる。
また、第4級アンモニウム塩によって形成された官能基を有する環状オレフィン系共重合体を製造する場合には、上記の脱マスキング処理によって得られるアミノ基を有する共重合体に、有機カルボン酸、有機リン酸、有機スルフォン酸、第三級炭素原子、アリル位の炭素原子またはベンジル位の炭素原子に、ハロゲン原子が結合した活性な有機ハロゲン化物などを作用させる。
【0049】
本発明の製造方法においては、このようにして得られる環状オレフィン系共重合体を含有する重合体溶液を、シリカ、アルミナ、ケイソウ土などが充填された吸着カラムを通過させることによって、或いは重合体溶液に、水、アルコールなどを多量に添加して洗浄することによって、残留する脱マスキング剤、重合触媒などの除去処理を行うことが好ましい。
【0050】
そして、重合体溶液に水蒸気を吹き込むことにより、溶媒の除去処理を行った後、得られるスラリーから固形物を分離し、さらに押し出し機または熱風により脱水・乾燥することにより、固体状の環状オレフィン系共重合体が得られる。或いは、重合体溶液を加熱することによって濃縮し、その後、ベント付き押し出し機を用いて乾燥処理することにより、固体状のオレフィン系共重合体が得られる。
【0051】
以上のような方法によれば、特定の官能基含有環状オレフィンにおける官能基を、特定の有機金属化合物によってマスキング処理するため、当該官能基が確実にマスキングされる結果、重合反応において触媒の活性が低下することがなく、しかも、重合反応において立体障害が生ずることがなく、従って、所期の環状オレフィン系共重合体を確実に製造することができる。
【0052】
〈熱可塑性重合体組成物〉
本発明においては、上記の構造単位(a)および構造単位(b)を有する環状オレフィン系共重合体(以下、「特定の環状オレフィン系共重合体」ともいう。)と、当該特定の環状オレフィン系共重合体以外の熱可塑性重合体(以下、「他の重合体」ともいう。)とを混合することにより、熱可塑性重合体組成物を調製することができる。
【0053】
熱可塑性重合体組成物を構成するための他の重合体としては、特定の環状オレフィン系共重合体と十分な相溶性を有するものであれば、非晶性ポリマー、結晶性ポリマー、液晶ポリマーなどの種々のものを用いることができる。
かかる他の重合体の具体例としては、特定の環状オレフィン系共重合体以外の環状オレフィン系重合体、ノルボルネン系重合体、水素化石油樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリレーンスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂などを挙げることができる。
【0054】
特定の環状オレフィン系重合体以外の環状オレフィン系重合体およびノルボルネン系重合体(以下、これらを「他の環状オレフィン系重合体」ともいう。)としては、特開昭61−292601号公報および特開昭60−168708号公報に記載された、チグラー型触媒によるエチレンとノルボルネン系炭化水素化合物との共重合体、特開昭60−26024号公報に記載された、メタセシス触媒によるテトラシクロドデセン系炭化水素化合物の単独またはノルボルネン系炭化水素化合物の開環(共)重合体に水素添加して得られる重合体、特開平2−51511号公報に記載された、エチレンと、環状オレフィンと、極性基を有する環状オレフィンとによる共重合体、特開平1−132625号公報、特開平1−132626号公報、特開平4−202404号公報に記載された、メタセシス触媒による極性置換基を有するノルボルネン誘導体の開環(共)重合体の水素化物などを用いることができる。
【0055】
本発明に有用なスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ポリクロルスチレン、ポリα−メチルスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体などを挙げることができ、これらは、その1種のみでなく、2種以上を用いることもできる。
【0056】
本発明において有用な塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと、50重量%以下、好ましくは45重量%以下の塩化ビニルと共重合可能な二重結合を少なくとも1個有する化合物との共重合体を挙げることができる。
この共重合可能な二重結合を少なくとも1個有する化合物の具体例としては、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステル、マレイン酸およびそれらのエステル、アクリロニトリルなどを挙げることができる。
塩化ビニル系樹脂の重合度は通常400〜4500であり、特に400〜1500が好ましい。
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルを単独でまたは塩化ビニルと前記共重合可能な化合物とをフリーラジカル触媒の存在下で(共)重合することによって得られるものであり、その製造方法は広く知られている。
【0057】
本発明において有用なポリアリーレンスルフィド樹脂は、式−(Ar−S)−で表わされる構成単位を70モル%以上含有してなるものである。ここで、Arは、p−フェニレン、m−フェニレン、2,6−ナフタレン、4,4’−ビフェニレン、p,p’−ビベンジル、およびこれらの核置換体などの炭素原子数6以上の芳香族基を表わす。これらのうち、核無置換のp−フェニレン核からなる構造単位を有するポリ−p−フェニレンスルフィドが成形加工性の点から好ましい。
式−(Ar−S)−で表わされる構成単位が70モル%未満である樹脂を用いると、得られるポリマーの結晶性の低下、転移温度の低下および成形品の物性の低下などの好ましくない結果を生じる。30モル%未満であれば、1,2,4−結合フェニレン核などの3価以上の結合手を有する芳香族基、脂肪族基、ヘテロ原子含有基などが含有されていてもよい。
上記ポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する方法としては、ジハロゲン化芳香族化合物とジチオール芳香族化合物またはモノハロゲン化芳香族チオールとの縮合反応、あるいはジハロゲン化芳香族化合物と硫化アルカリあるいは水硫化アルカリとアルカリまたは硫化水素とアルカリ化合物からの脱塩縮合反応を利用する方法などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
本発明に有用なポリカーボネート樹脂の例としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族−芳香族ポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。一般には、2,2−ビス(4−オキシフェニル)アルカン系、ビス(4−オキシフェニル)エーテル系、ビス(4−オキシフェニル)スルホンスルフィドまたはスルホキサイド系などのビスフェノール類を重合して得られる重合体若しくは共重合体であって、必要に応じてハロゲンにより置換されたビスフェノール類を用いた重合体である。ポリカーボネート樹脂の種類および製造方法については、例えば日刊工業新聞社発刊(昭和44年9月30日発行)の「ポリカーボネート樹脂」の記載を参照することができる。
【0059】
本発明に有用なポリエステル樹脂の代表例としては、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(プロピレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(ペンタメチレンテレフタレート)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタレート)などの芳香族ジカルボン酸と二価アルコールとから得られるポリエステル樹脂および芳香族ジカルボン酸と芳香族ジフェノールとから得られる芳香族ポリエステル樹脂である、いわゆるポリアリレート樹脂を挙げることができる。ポリアリレート樹脂の具体例としては、ビスフェノールAとテレフタール酸またはイソフタール酸とによるポリエステル樹脂およびコポリエステル樹脂を例示することができる。これらのうち特に好ましいものは、PETおよびPBTである。
【0060】
本発明に有用なポリアミド樹脂は、通常、式:H2 N−(CH2 x −NH2 (式中、xは3〜12の整数である。)で表わされる線状ジアミンと、式:HOOC−(CH2 y −COOH(式中、yは2〜12の整数である。)で表わされる線状ジカルボン酸との縮合によって製造されたもの、若しくはラクタムの開環重合によって製造されたものを挙げることができる。
これらのポリアミド樹脂の好ましい例としては、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12 、ナイロン4,6、ナイロン3,4、ナイロン6,9、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン4などが挙げられる。また、ナイロン6/6,10、ナイロン6/6,12、ナイロン6/4,6、ナイロン6/12、ナイロン6/6,6、ナイロン6/6,6/6,10、ナイロン6/4,6/6,6、ナイロン6/6,6/6,12、ナイロン6/4,6/10、ナイロン6/4,6/12などの共重合体ポリアミド類を挙げることができる。
さらにナイロン6/6,T(T:テレフタル酸成分)、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とメタキシリレンジアミンまたは脂環族ジアミンとにより得られる半芳香族ポリアミド樹脂、メタキシリレンジアミンと上記線状ジカルボン酸とにより得られるポリアミド樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ポリエーテルアミド樹脂およびポリエステルエーテルアミド樹脂などを挙げることができる。
【0061】
以上において、本発明の効果が十分に発揮される好ましい熱可塑性重合体組成物としては、以下のものが挙げられる。
(イ)特定の環状オレフィン系共重合体と、極性基を有しない他の環状オレフィン系重合体とを含有してなる熱可塑性重合体組成物。
このような熱可塑性重合体組成物によれば、極性基を有しない他の環状オレフィン系重合体の欠点であった他の材料に対する低い接着性および密着性が改善される。
(ロ)特定の環状オレフィン系共重合体と、極性基を有する他の環状オレフィン系重合体とを含有してなる熱可塑性重合体組成物。
このような熱可塑性重合体組成物によれば、極性基を有する他の環状オレフィン系重合体における接着性および密着性が更に向上し、また、光学特性も向上し、光学材料や電子部品材料として一層好適なものとなる。
(ハ)特定の環状オレフィン系共重合体と、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレートまたはポリカーボネートなどとを含有してなる熱可塑性重合体組成物。
このような熱可塑性重合体組成物によれば、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレートまたはポリカーボネートなどにおける光学特性が向上する。
(ニ)特定の環状オレフィン系共重合体と、水素化石油樹脂とを含有してなる熱可塑性重合体組成物。
このような熱可塑性重合体組成物によれば、特定の環状オレフィン系共重合体の透明性が確保された状態で、当該特定の環状オレフィン系共重合体の流動性が向上し、更に光学特性が向上する。
(ホ)特定の環状オレフィン系共重合体と、他の環状オレフィン系重合体と、水素化石油樹脂とを含有してなる熱可塑性重合体組成物。
このような熱可塑性重合体組成物によれば、特定の環状オレフィン系共重合体および他の環状オレフィン系重合体の透明性が確保された状態で、当該特定の環状オレフィン系共重合体および他の環状オレフィン系重合体の流動性が向上し、更に光学特性が向上する。
なお、上記(イ)〜(ホ)以外の熱可塑性重合体組成物においても、特定の環状オレフィン系共重合体と他の重合体との相溶性が良好で、他の材料に対する低い接着性および密着性が改善される。
【0062】
本発明の熱可塑性重合体組成物において、特定の環状オレフィン系共重合体と他の重合体との割合は、特定の環状オレフィン系共重合体および他の重合体の種類、両者の相溶性、組成物の使用目的に応じて適宜選択されるが、金属に対する高い接着性および密着性を有すると共に、優れた耐熱性を有する重合体組成物が得られる点で、組成物全体における特定の環状オレフィン系共重合体の割合が5〜95重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは20〜80重量%である。
【0063】
本発明の熱可塑性重合体組成物には、ゴム質重合体およびゴム強化熱可塑性樹脂が、それぞれ単独であるいはこれらの両方が含有されていてもよい。このようにゴム質重合体および/またはゴム強化熱可塑性樹脂を更に含有することにより、熱可塑性重合体組成物の耐衝撃性を向上させることができる。
ここで、ゴム質重合体とは、ガラス転移温度が0℃以下の重合体であって、通常のゴム状重合体および熱可塑性エラストマーが含まれる。
【0064】
ゴム状重合体の具体例としては、例えばエチレン−α−オレフィン系ゴム質重合体;エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合ゴム;エチレン−メチルメタクリレート、エチレン−ブチルアクリレートなどのエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンまたはスチレン−イソプレンのランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル−スチレン共重合体などのジエン系ゴム;ブチレン−イソプレン共重合体などが挙げられる。また、ゴム質重合体は、上記のゴム状重合体をジビニルベンゼンなどの公知の架橋剤を使用して架橋させたものであってもよい。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
上記エチレン−α−オレフィン系ゴム質重合体において、エチレンとα−オレフィンの割合は、重量比で95:5〜5:95、好ましくは95:5〜20:80、更に好ましくは92:8〜60:40、特に好ましくは85:15〜70:30とされる。
ここで使用されるα−オレフィンは、炭素数が3〜20の不飽和炭化水素化合物であり、その具体例としては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、4−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1などを挙げることができる。特に好ましいものはプロピレンである。
上記エチレン−α−オレフィン系ゴム質重合体におけるシクロヘキサン不溶分は、最終的に得られる熱可塑性重合体組成物の成形加工性と耐衝撃性に影響を与える成分であり、このことを考慮して、その割合は50重量%以下、好ましくは5重量%以下とされる。
上記エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体のためのポリエン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、6−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、9−メチル−1,9−ウンデカジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,4,9−デカトリエン、4−ビニル−1−シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、2−メチル−2,5−ノルボルナジエン、5−メチル−2−ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエンなどを挙げることができる。
上記のゴム状重合体よりなるゴム質重合体は、そのムーニー粘度 (ML1+4、100℃)が5〜200であることが好ましい。
【0066】
ゴム質重合体として用いられる熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂などを挙げることができる。
芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体としては、α−β、α−β−α、α−β−γ、α−β1 −β2 、α/β、α−α/β、α−α/β−γ、α−α/β−α、β2 −β1 −β2 、γ−β、γ−β−γ、γ−α/β−γ、γ−α−β〔式中、αは芳香族ビニル化合物重合体、βは共役ジエン化合物重合体、β1 はビニル結合含有量が20重量%以上の共役ジエン化合物重合体、β2 はビニル結合含有量が20重量%未満の共役ジエン化合物重合体、α/βは芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物のランダム共重合体、γは共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体であり、かつ芳香族ビニル化合物が漸増するテーパー重合体を表わす。〕やこれらの水素添加物を挙げることができる。
特に透明性の優れた熱可塑性重合体組成物を得るために好ましいゴム質重合体としては、水素化スチレン−ブタジエンランダム共重合体、ブロック共重合体またはブロック−ランダム共重合体であってスチレン含有量が20〜45重量%のもの、並びにブタジエンとアクリル酸エステルの共重合体であってしかもブタジエンとアクリル酸エステルの重量比が10〜90:90〜10であるもの、並びにこれらの100重量部にスチレンおよび/またはアクリロニトリルが0〜30重量部の割合で共重合されたものおよびその水素添加物を挙げることができる。
【0067】
ゴム質重合体は、特定の環状オレフィン系重合体との相溶性を向上させる目的で、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基などの官能基によって変性されたものであってもよい。
このゴム質重合体の変性のために使用される官能基を有する不飽和化合物の量は、熱可塑性重合体組成物全体の0.01〜30重量%の範囲内であることが好ましい。
【0068】
本発明の熱可塑性重合体組成物に用いることのできるゴム強化熱可塑性樹脂は、ゴム質重合体の存在下において、これと共重合可能な単量体あるいは単量体混合物、例えば芳香族ビニル化合物、マレイミド系化合物、ビニルシアン化合物およびこれらと共重合可能な他のビニル単量体などを共重合してなる熱可塑性の共重合体である。
ここに、ゴム強化熱可塑性樹脂を得るためのゴム質重合体の例としては、前記ゴム質重合体と同様のものを挙げることができる。これらのゴム質重合体は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
これらのうち、物性上好ましいゴム質重合体はジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンターポリマーである。
【0069】
ゴム質重合体の存在下に共重合される芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルスチレンなどを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち好ましく用いられる芳香族ビニル化合物はスチレンである。
マレイミド系化合物の具体例としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−o−クロルフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどを挙げることができ、好ましくはN−フェニルマレイミド、N−o−クロルフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどであり、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ビニルシアン化合物の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを挙げることができ、これらのちで好ましいものはアクリロニトリルである。
他の共重合可能なビニル化合物の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレートなどのアクリル酸のアルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートなどのメタクリル酸のアルキルエステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和酸無水物を挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上を用いることができる。
【0070】
以上のようなゴム強化熱可塑性樹脂の具体例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−スチレン樹脂(AES樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−メチルメタクリレート−スチレン樹脂(ABMS樹脂)、アクリロニトリル−n−ブチルアクリレート−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ゴム変性ポリスチレン(ハイインパクトスチレン)などを挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
ゴム質重合体および/またはゴム強化熱可塑性樹脂を含有させる場合において、その含有割合は、最終的に得られる熱可塑性重合体組成物全体の2〜98重量%の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは5〜95重量%、特に好ましくは10〜90重量%の範囲である。
【0072】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、単軸押出機または二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどを用いる通常の方法により、特定の環状オレフィン系共重合体、他の重合体およびその他の成分を混合することによって得ることができる。一例を示せばミキサーで各成分を混合した後、押出機で220〜350℃で溶融混練して造粒物を得る方法、更に簡単な方法としてこれらの成分を直接成形機内で溶融混練して成形物を得る方法などを挙げることができる。
【0073】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
〈実施例1〉
(1)特定の官能基含有環状オレフィンのマスキング処理:
反応容器内に溶媒としてトルエンを入れた後、さらに5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]−2ヘプテン1.0ミリモル(15.2g)と、トリイソブチルアルミニウム1.0ミリモルとを添加し、窒素雰囲気下に25℃で30分間反応させることにより、5−カルボキシ−5メチルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンにおけるカルボキシル基のマスキング処理を行った。
【0075】
(2)開環重合反応:
窒素雰囲気下において、反応容器内にテトラシクロ[4.4.0.12,5 7,10]−3−ドデセン31.25ミリモル(50g)と、マスキング処理された5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]−2ヘプテン0.50ミリモルと、溶媒としてトルエン500mLと、分子量調節剤として1−ヘキセン10.2gとを仕込み、この系を50℃に加温した後、メタセシス触媒として六塩化タングステン0.0637ミリモルおよびトリエチルアルミニウム0.637ミリモルを添加し、50℃、2時間の条件で、テトラシクロ[4.4.0.12,5 7,10]−3−ドデセンおよびマスキング処理された5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]−2ヘプテンの開環重合反応を行った。この開環重合反応における転化率は97%であった。
また、得られた共重合体の一部を採取し、シュウ酸を含有するメタノール溶液に添加して脱マスキング処理を行った後、135℃のデカリン中で極限粘度[η]を測定したところ、0.65であり、赤外線吸収スペクトルを測定し、カルボニル部分の吸収強度とオレフィン部分の吸収強度とから、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]−2ヘプテンに由来する構造単位を求めたところ、1.6モル%であった。
【0076】
(3)水素化反応:
窒素雰囲気下に、得られた重合体溶液をステンレス製のオートクレーブ内に移し、この重合体溶液に、触媒としてRuHCl(CO)(P(C6 5 3 3 0.0490ミリモルを添加して攪拌した。次いで、オートクレーブ内を100Kg/cm2 の水素ガス雰囲気とし、その後、オートクレーブ内の温度を徐々に上昇させて165℃とし、この状態で系を4時間攪拌することにより、共重合体の水素化反応を行った。
(4)脱マスキング処理:
得られた重合体溶液に、5.0mmolのシュウ酸を含有するメタノール溶液を添加して30分間攪拌することにより、脱マスキング処理を行った。
【0077】
以上のようにして得られた環状オレフィン系共重合体について分析したところ、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.63、ゲル透過クロマトグラフィー法によって測定したポリスチレン換算重量平均分子量Mwが75,000、ポリスチレン換算数平均分子量Mnが39,000であった。
また、示差熱分析計(DSC)によって、10℃/minの昇温速度で−20℃〜200℃の範囲で測定したガラス転移温度は165℃であった。
また、 1H−NMRによって水素化率を測定したところ99.5%であった。
【0078】
〈比較例1〉
5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]−2ヘプテンを用いず、脱マスキング処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして環状オレフィン系重合体を得た。
この環状オレフィン系重合体について分析したところ、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.62、ゲル透過クロマトグラフィー法によって測定したポリスチレン換算重量平均分子量Mwが73,000、ポリスチレン換算数平均分子量Mnが38,000であった。
また、示差熱分析計(DSC)によって、10℃/minの昇温速度で−20℃〜200℃の範囲で測定したガラス転移温度は165℃であった。
また、 1H−NMRによって水素化率を測定したところ99.5%であった。
【0079】
〈比較例2〉
テトラシクロ[4.4.0.12,5 7,10]−3−ドデセンの代わりに、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 7,10]−3−ドデセンを用いたこと以外は、比較例1と同様にして環状オレフィン系重合体を得た。
この環状オレフィン系重合体について分析したところ、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.64、ゲル透過クロマトグラフィー法によって測定したポリスチレン換算重量平均分子量Mwが74,000、ポリスチレン換算数平均分子量Mnが39,000であった。
また、示差熱分析計(DSC)によって、10℃/minの昇温速度で−20℃〜200℃の範囲で測定したガラス転移温度は171℃であった。
また、 1H−NMRによって水素化率を測定したところ99.6%であった。
【0080】
上記の実施例1および比較例1で得られた環状オレフィン系共重合体について、以下の項目の評価を行った。以上、結果を表1に示す。
(1)屈折率:
ASTM D542に準拠し、25℃におけるD線(589nm)の屈折率n25 D を測定した。
(2)全光線透過率:
ASTM D1003に準拠し、厚みが3.2mmの試験片により全光線透過率を測定した。
(3)光弾性係数:
エリプソメータにより、波長630nmの光弾性係数を測定した。
(4)吸水率:
23℃の水中に24時間浸漬させた後、吸水率を測定した。
(5)密着性:
10cm×10cmの試験片にアルミニウムを蒸着し、この蒸着膜に対して、カッターにより、1mm×1mmの碁盤目が10個×10個形成されるよう切り込みを入れ、セロハンテープによる剥離試験を行い、25ブロック中における剥離したブロックの数を測定した。
【0081】
【表1】
Figure 0004144142
【0082】
表1の結果から明らかなように、実施例1に係る環状オレフィン系共重合体は、優れた光学特性を有するものであり、金属に対する接着性および密着性が高く、また、吸湿性が小さいものであることが確認された。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法による環状オレフィン系共重合体は、優れた光学特性を有するものであり、また、特定の官能基(基Xおよび/または基Z)を有する構造単位(a)が、特定の割合で含有されているため、他の材料例えば金属に対して高い接着性および密着性を有し、しかも、吸湿性の低いものである。
また、構造単位(a)において、特定の官能基(基Xおよび/または基Z)が結合した炭素原子に水素原子が結合されていない場合には、結合した炭素原子から離脱してラジカルが発生しやすい第三級水素原子が存在しないため、成形加工時に、特定の官能基が分解することが抑制され、その結果、他の材料に対する高い接着性および密着性が維持される。
本発明の方法による環状オレフィン系共重合体は、以上のような性質を有するため、光ディスク、レンズ、光ファイバー、液晶パネルに用いられる導光板やフィルムなどの光学材料、光半導体封止材料やその他の電子部品材料として好適であり、その他には、自動車部品、電気部品、医療容器などにも広く用いることができる。
【0084】
本発明の環状オレフィン系共重合体の製造方法によれば、優れた光学的性質を有し、他の材料に対する接着性および密着性が高く、しかも、吸湿性が小さい環状オレフィン系共重合体を確実に製造することができる。
【0085】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、上記の環状オレフィン系共重合体が含有されているため、他の材料に対する接着性および密着性が向上し、また、光学特性が向上し、更に上記の環状オレフィン系共重合体に起因する種々の特性が付与されたものである。

Claims (3)

  1. 下記一般式(5)で表される官能基含有環状オレフィンと、周期表第2族、第12族および第13族から選ばれた金属による有機金属化合物とを反応させ、
    得られた反応生成物と、下記一般式(6)で表される環状オレフィンとを、タングステンの塩化物または臭化物を主成分とするものか、タングステンカルベンまたはタングステンカルビンからなるメタセシス触媒の存在下に開環重合させる工程を有することを特徴とする環状オレフィン系共重合体の製造方法。
    Figure 0004144142
    〔式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立して水素原子または炭化水素基を示し、XおよびZは、それぞれ独立して水素原子、炭化水素基または下記の官能基を示し、XおよびZのうち少なくともいずれか一方は官能基である。nは0〜2の整数を示す。
    官能基:ヒドロキシル基若しくはヒドロキシル基が結合した炭化水素基、カルボキシル基若しくはカルボキシル基が結合した炭化水素基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、これらのアミノ基が結合した炭化水素基若しくはこれらの第四級アンモニウム塩、アミド基、N置換炭化水素基を有すると共にN活性水素を有するアミド基若しくはこれらのアミド基が結合した炭化水素基、およびXとZとから構成された−CO−NH−CO−で表されるイミド基から選ばれた官能基。〕
    Figure 0004144142
    〔式中、R3 〜R10は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R11〜R14は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基または一般式 −(CH2 q COOR15(但し、R15は炭素数が1〜12の炭化水素基を示し、qは0〜5の整数である。)で表される基を示し、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、R11とR12とまたはR13とR14とは、一体化して2価の炭化水素基を形成していてもよく、R11またはR12とR13またはR14とは、互いに結合して単環または多環構造を形成していてもよい。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。〕
  2. 周期表第2族、第12族および第13族から選ばれた金属による有機金属化合物は、一般式(5)で表される官能基含有環状オレフィンにおける官能基1当量に対して0.5当量以上となる割合で用いられることを特徴とする請求項1に記載の環状オレフィン系共重合体の製造方法。
  3. 開環重合させることによって得られる共重合体を水素添加することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環状オレフィン系共重合体の製造方法。
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