JP4143540B2 - ポリマーアロイの製造方法、ポリマーアロイ、成形品、透明成形品及び光学フィルム - Google Patents
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Description
本発明は、ポリマーアロイの製造方法、ポリマーアロイ並びにポリマーアロイを用いてなる成形品、透明成形品及び光学フィルムに関する。
背景技術
従来から、通常状態では非相溶である2種以上のポリマーをブレンドすることにより単独のポリマーでは得られない性質を持つポリマーアロイが注目されている。とりわけ、2種以上のポリマーが微小相分離構造になっている場合には、それぞれの樹脂の特性が反映されたポリマーアロイを得ることができる。例えば、成形性は良いが耐熱性の悪い非晶性ポリマーに、耐熱性の良好な非晶性のポリマーを加えポリマーアロイを形成させることにより、成形性が良好であり、かつ耐熱性にも優れたポリマーアロイを作製することができる。しかもポリマーアロイの製造に際しては、ブロックコポリマーやランダムコポリマー等の共重合体のように面倒な共重合操作を必要とすることもない。
従来、通常状態では非相溶である2種以上のポリマーをブレンドし、微小相分離構造を有するポリマーアロイを得る方法としては混練り法が用いられていたが、充分な微小相分離構造を得るためには、何らかの相溶化剤を使用することが必須とされていた。しかし、相溶化剤としては原料ポリマーに対応したものを選択する必要があるところ、この選択は容易ではなく、微小相分離構造を形成させ所望の特性を有するポリマーアロイを得ることが困難であったり、いまだに良好な相溶化剤が見出されていないポリマーの組み合わせもあるのが実情であった。
これに対して、特開平2−134214号公報には、2種類の重合体を常温常圧では気体である超臨界気体又は超臨界気体の混合物を用いて溶融させ、溶融した重合体混合物の粘度が少なくとも10%低下するまで充分な時間にわたって徹底的に混合し、次いで、重合体の溶融混合物の粘度が少なくとも再び当初の値に達するまで充分に時間をかけて混合を続けながら溶融混合物を充分に冷却した後に、混合容器を急激に解圧してポリマーアロイ微分散相分離構造体を製造する方法が開示されている。また、特開平10−330493号公報には、常温常圧で液体の溶媒を高温高圧状態の流体に変えて非相溶な2種以上のポリマーを相溶化させ、次いで急激に圧力を低下させ溶媒を気化させて100nm以下の超微小相分離構造を持つポリマーアロイを製造する方法が開示されている。
しかしながら、これらのポリマーアロイの製造方法は、その製造過程において超臨界気体又は超臨界気体を含む混合物を加圧状態から急激に解圧したり、急激に圧力を低下させることによって高温高圧の流体を気化させる、いわゆる断熱膨張による冷却工程を有することから、得られるポリマーアロイ中には大量の気泡が発生していた。このような気泡を有するポリマーアロイを用いて透明な成形品を得るためには煩雑な脱泡工程を要するうえ、脱泡工程によりポリマーアロイの超微小相分離構造が破壊されてしまうことがあり、その利用範囲は非常に限られていた。また、溶媒を急激に気化する工程はスケールアップが困難であり工業化が難しいといった問題もあった。
特開平6−234861号公報には、超臨界流体中で少なくとも1種のブロック共重合体又はグラフト共重合体を用いたポリマーアロイの製造方法が開示されている。しかしながら、この方法では、加圧されたポリマーアロイを微細ノズルを通過させて膨張させることから、やはり発泡が起こりやすく、気泡を取り除く工程が必要となるという問題があった。また、この方法では、予め原料樹脂を付着させたガラスビーズをカラムに充填してから超臨界流体をカラムに流し、原料樹脂を溶解させつつ樹脂を混合するので、組成比はそれぞれの樹脂の溶解比によって決まってしまう。更に、処理できる樹脂量が少なく、原料樹脂を連続的に供給できないので生産量も高くなかった。
発明の要約
本発明は、ポリマーアロイの製造方法、ポリマーアロイ並びにポリマーアロイを用いてなる成形品、透明成形品及び光学フィルムを提供することを目的とする。
第1の本発明は、少なくとも、常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂と常温常圧で液状又は気体状である溶媒とを混合する工程1と、前記溶媒を加熱及び加圧して高温高圧流体又は超臨界流体とし、この状態で混合する工程2と、前記工程2で得られた混合物を解圧せずに急速にガラス転移温度以下にまで冷却する工程3とを有するポリマーアロイの製造方法である。上記常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂と常温常圧で液状である溶媒との混合物中に占める上記溶媒の体積は、上記常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂の体積の合計の1倍以上であることが好ましい。上記常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂と熱可塑性ノルボルネン系樹脂と非相溶な1種以上の樹脂とからなることが好ましい。
第2の本発明は、常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂を高温高圧流体又は超臨界流体中で混合してなるポリマーアロイであって、示差熱量計を用いて相転移現象を観測したときに、少なくとも、上記2種類以上の樹脂のなかのいずれかの樹脂についての相転移現象が消失するか、又は、それぞれの樹脂の相転移現象の起こる温度とは異なる温度において相転移現象が観測されるポリマーアロイである。第2の本発明のポリマーアロイは、常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂のガラス転移温度のうち最も高いものをTgH、最も低いものをTgLとし、TgHとTgLの差の絶対値をαとしたときに、ポリマーアロイのガラス転移温度Tgが下記式(1)により算出されるTg’に対してTg’±0.1αの範囲内にあることが好ましい。
Σ(wi/Tgi)=1/Tg’ (1)
式中、wiは樹脂iの重量分率、Tgiは樹脂iのガラス転移温度を表す。
第2の本発明のポリマーアロイはまた、常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂のガラス転移温度のうち最も高いものをTgH、最も低いものをTgLとし、TgHとTgLの差の絶対値をαとしたときに、少なくともガラス転移温度以上の温度に加熱される条件を含む熱サイクルが加えられたときの相転移温度の変動幅が0.3α以内であることが好ましい。
第2の本発明のポリマーアロイは、透明樹脂と前記透明樹脂と非相溶な少なくとも1種以上の樹脂とからなり、透明樹脂と前記透明樹脂と非相溶な樹脂とが100nm以下の超微小相分離構造を形成していることが好ましい。
第2の本発明のポリマーアロイを成形してなる成形品及び溶融成形してなる透明成形品もまた、本発明の1つである。本発明の成形品又は透明成形品の製造方法としては、示差熱量計で求めたポリマーアロイ超微小相分離構造体の相転移開始温度よりも高い温度で成形することが好ましい。
本発明のポリマーアロイを用いてなる光学フィルムもまた、本発明の1つである。
発明の詳細な開示
以下に本発明を詳述する。
第1の本発明のポリマーアロイの製造方法は、少なくとも、常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂と常温常圧で液状又は気体状である溶媒とを混合する工程1と、前記溶媒を加熱及び加圧して高温高圧流体又は超臨界流体とし、この状態で混合する工程2と、前記工程2で得られた混合物を解圧せずに急速にガラス転移温度以下にまで冷却する工程3とを有する。なお、本明細書においてポリマーアロイとは、それぞれの樹脂が小さな樹脂ドメインとして均一に分散した混合状態にある相分離構造体を有する樹脂混合物を意味し、好ましくはそれぞれの樹脂ドメインが100nm以下の大きさである超微小相分離構造体を有する樹脂混合物を意味する。また、本明細書においてポリマーアロイには、上記樹脂ドメインが限りなく小さくなり、樹脂同士が完全に相溶化している状態をも含む。
第1の本発明のポリマーアロイの製造方法では、まず工程1において常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂と常温常圧で液状又は気体状である溶媒とを混合する。
上記常温常圧で液体の溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系有機溶剤;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
上記常温常圧で気体状の溶媒としては、例えば、N2;CO2;N2O;クロロジフルオロメタン、ジクロロトリフルオロエタン等のクロロフルオロカーボン又はヒドロクロロフルオロカーボン;n−ブタン、プロパン、エタン等の低分子量アルカン;エチレン等の低分子量アルケン;アンモニア等が挙げられる。
なかでも、25℃の常温、0.1MPaの常圧で液状であり、かつ、臨界温度、臨界圧力を有している溶媒が好適である。溶媒が常温常圧で気体状であると、解圧を徐々に行い発泡しないように調整する必要があるが、溶媒が常温常圧で液状であれば、解圧時に混合容器内の内圧がほとんど変わらず発泡のおそれがない。これらは単独で用いられても良いし、2種類以上併用されても良い。
なかでも、非相溶な2種類以上の樹脂の1つとして熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含む場合には、溶媒として水を用いることが好ましい。常温常圧環境下では実用的にはシクロヘキサンにしか溶解しない熱可塑性ノルボルネン系樹脂であっても、高温高圧流体又は超臨界流体となり極性が減少した水に対しては充分に溶解させることができる。常温常圧環境下においては熱可塑性ノルボルネン系樹脂は水に溶解しないため取り出しやすく取扱いやすい。また、溶媒としてアルコールを用いることも好ましい。アルコールも比較的低温で高温高圧状態又は超臨界状態となるので、樹脂が熱分解を起こすことがなく好適に使用される。
上記溶媒は樹脂を攪拌できる程度の体積を占めていることが好ましい。即ち、常温常圧で液状の溶媒の体積は上記常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂の体積の合計の1倍以上であることが好ましい。
高温高圧状態又は超臨界状態における溶媒の粘度は高く樹脂の粘度より高くすることもできる。よって、通常の混合では粘度が高く、混合しにくい樹脂であっても高温高圧状態又は超臨界状態で高粘度となった溶媒による攪拌により他の樹脂と混合することができる。
なお、上記溶媒には、必要に応じて相溶化剤を添加してもかまわない。上記相溶化剤としては、ポリマーアロイを形成させたい各成分にそれぞれ相溶することができるセグメントが存在するオリゴマー又はポリマーが挙げられる。相溶化剤がポリマーであるときは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマーのいずれでもよい。
また、ポリマーの構造の一部に対して変性を加えることにより、相溶化剤としての機能を持たせることもできる。上記相溶化剤としては、例えば、マレイン酸変性ポリプロピレン、カルボン酸変性ポリプロピレン、アミノ基末端ニトリルブタジエンラバー、カルボン酸変性ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、スルホン化ポリスチレン、水酸基末端ポリオレフィン、水酸基末端ポリブタジエン、マレイン酸変性エチレンブチレンラバー、エチレン/アクリル酸共重合体等が挙げられる。また、グラフト型ポリマー相溶化剤として有効なポリマーとしては、側鎖にビニルポリマーがグラフトされているポリオレフィン、側鎖にビニルポリマーがグラフトされているポリカーボネート等がある。市販の相溶化剤としては、例えば、「モディパー」(日本油脂社製)、「アドマー」(三井化学社製)等が挙げられる。
第1の本発明のポリマーアロイの製造方法では、次いで、上記溶媒を加熱及び加圧して高温高圧流体又は超臨界流体とし、この状態で混合する工程2を行う。
上記高温高圧流体又は超臨界流体の温度は100〜700℃であることが好ましい。100℃未満であると、得られるポリマーアロイの超微小相分離構造の形成が不充分となることがあり、700℃を超えると、樹脂が分解したり、昇温するために必要とするエネルギーが非常に大きくかつエネルギーロスが大きくなるため、コストが高くなり経済的でないことがある。より好ましくは100〜400℃である。
上記高温高圧流体又は超臨界流体の圧力は0.5〜100MPaであることが好ましい。0.5MPa未満であると、超微小相分離構造体の形成が不充分となることがあり、100MPaを超えると、圧力を大きくさせるために必要なエネルギーが非常に大きくなるため、コストが高くなり経済的でない。より好ましくは0.5〜60MPaである。
樹脂を高温高圧状態又は超臨界状態で混合する処理時間は短時間であることが好ましい。混合時間が短時間であれば樹脂の分解を抑制することができる。なお、混合時間が長くなると得られる樹脂が分解してしまい液状となってしまうことがある。好ましい混合時間は処理温度により異なるが、400℃以上では30分以内、より好ましくは20分以内、更に好ましくは10分以内であり、400℃以下では1時間以内、より好ましくは30分以内である。
このように短時間で混合を完了させる方法としては、例えば、それぞれの樹脂をあらかじめ溶融混合しておく方法が挙げられる。即ち、それぞれの樹脂を予め溶融して混合しておけば、高温高圧状態又は超臨界状態にすることにより、すみやかにポリマーアロイとなる。また、これにより原料組成比と異なるポリマーアロイが得られる恐れがなく、原料組成比とほぼ同じ組成比のポリマーアロイが得られる。
また、高温高圧状態又は超臨界状態に達するまでの時間も短時間であることが好ましい。短時間であれば樹脂の分解を抑制することができる。短時間で高温高圧状態又は超臨界状態に達するための方法としては、例えば、混合された樹脂をあらかじめ常圧環境下で予熱しておく方法等が挙げられる。
第1の本発明のポリマーアロイの製造方法では、次いで、上記工程2で得られた混合物を解圧せずに急速にガラス転移温度以下にまで冷却する工程3を行う。従来の技術では、断熱膨張による吸熱により冷却する方法が採られていた。しかしこの方法では、圧力の制御が難しく、解圧条件の違いにより冷却速度が変わりマクロ相分離を起こすおそれがあった。また、気泡を大量に含むポリマーアロイしか得ることができなかった。本発明者らは、鋭意検討の結果、急速にガラス転移温度以下にまで冷却すれば、冷却速度に応じて任意の微小相分離構造をつくり出すことができ、気泡を含まないポリマーアロイが得られることを見出した。上記急速に冷却とは冷却速度が特に限定されないが、製造温度からガラス転移温度までの降温速度が25℃/min以上であることが好ましい。25℃/min未満であると、樹脂が劣化することがある。より好ましくは50℃/min以上である。なお、ガラス転移温度が複数存在する場合には、最も低いガラス転移温度を示す樹脂のガラス転移温度まですみやかに急冷してもよいし、各樹脂のガラス転移温度まで段階的に急冷を繰り返してもよい。この場合、冷却速度を変えることにより、任意の相構造の形成が可能である。例えば、上限臨界共溶温度がマトリクス成分のガラス転移温度よりも高く、かつ、ドメイン成分のガラス転移温度がマトリクス成分のガラス転移温度よりも高い場合、マトリクス成分のガラス転移温度より高い温度に一定時間保持しドメイン成分を析出させた後に急冷すれば、完全相溶構造ではなく微小相分離構造を有するポリマーアロイを得ることができる。
なお、樹脂のガラス転移温度が室温以下である場合には、少なくとも室温まで急冷すれば、相構造をある程度維持することができる。このような、少なくとも、常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂と常温常圧で液状又は気体状である溶媒とを混合する工程1と、前記溶媒を加熱及び加圧して高温高圧流体又は超臨界流体とし、この状態で混合する工程2と、前記工程2で得られた混合物を解圧せずに急速に室温以下にまで冷却する工程3とを有するポリマーアロイの製造方法もまた、本発明の1つである。
第1の本発明のポリマーアロイの製造方法では、混合開始前又は混合開始初期の製造容器内の温度と圧力を任意に設定することにより得られるポリマーアロイの相分離したドメイン粒子の大きさを調整することもできる。また、生成したポリマーアロイを取り出す温度と圧力を調整したり、溶媒を選択したりすることにより発泡体として取り出すこともできる。
第1の本発明のポリマーアロイの製造方法では、溶媒が常温常圧で液状であっても分解してしまうことなく、生成したポリマーアロイは粒子として取り出すこともできる。粒子を取り出した後に、ろ過、乾燥することでポリマーアロイを容易に回収することができる。また、取り出した樹脂を、各種成形方法により任意の形状に成形することができる。
第1の本発明のポリマーアロイの製造方法が好適に適用できる樹脂としては特に限定されない。適用可能な樹脂としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリルスチレン共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフロオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、エチレンビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリエチレン、ポリジシクロペンタジエン、メチルペンテン樹脂、ポリブチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ノルボルネン系樹脂、ポリビニルアルコール、ウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエトキシエチルメタクリレート、ポリホルムアルデヒド、セルロースジアセテート、ポリビニルブチラール等が挙げられる。なかでも、極性の大きく異なる樹脂の組み合わせはポリマーアロイとすることが困難であったが、第1の本発明のポリマーアロイの製造方法によれば容易にポリマーアロイを得ることができる。このような極性の異なる樹脂の組み合わせとしては、例えば、低極性樹脂がポリオレフィン樹脂であり、極性樹脂がアクリル樹脂、スチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート等である場合等が挙げられる。
第1の本発明のポリマーアロイの製造方法は、従来と異なり、常温常圧で液状の溶媒を急激に気化させる工程を含まないので、圧力の制御の必要がなく、生産性に優れ、気泡の発生が抑えられ品質が向上し、スケールアップも容易である。
また、第1の本発明のポリマーアロイの製造方法によれば、加熱されても相構造が壊れにくいポリマーアロイを得ることができる。従って、それぞれの樹脂の優れた性質を損なうことなく、他の樹脂の性質を発現させることが可能である。また、溶融成型時にポリマーアロイの相構造が維持されるので優れた成型品を得ることができる。
第1の本発明のポリマーアロイの製造方法に用いる製造装置の一例を図1に示した。図1の製造装置では、製造容器1が金属塩3中に沈められており、金属塩3はヒーター2で加熱溶融され、その温度は熱電対4で制御される。
なお、図1の製造装置では加熱手段として金属塩溶融浴を用いたが、その他にも、例えば、電気ヒーター、バーナー、燃焼ガス、蒸気、熱媒、サンドバス等の加熱手段を用いることができる。
製造容器1としては、超臨界域又は超臨界域近傍になる過酷な条件下でも製造を行うため、この条件に耐えられる材質及び肉厚のものが使用される。
製造容器1の材質としては、例えば、炭素鋼、Ni、Cr、V、Mo等の特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、ハステロイ、チタン又はこれらにガラス、セラミック、カーバイト等をライニング処理したもの、他の金属をクラッドしたもの等が挙げられる。
また、製造容器1の形状としては特に限定されず、例えば、槽型、管型、又は、特殊な形状のものでも使用できる。なかでも、耐熱、耐圧の問題を考えると槽型又は管型が好ましい。バッチ式の場合は、オートクレーブや管型反応管が好ましい。
上記製造容器1内には金属やセラミック等からなる硬質ボールや所定形状の障害物を置き、乱流を生じさせることが好ましい。製造容器1内に硬質ボールが備えられていると振とうにより乱流が発生するので攪拌効率が高められ反応効率を上げることができる。更に、製造容器1が硬質ボール等で充填されていると容器を振とうするだけで攪拌効率が高くなり好ましい。
また、上記硬質ポールの充填率は20〜80%であることが好ましい。この範囲外であると、攪拌効率が悪くなる。なお、直径の異なる2種以上の硬質ボールを用いることが好ましい。充填率を向上させることができ、攪拌効率を上げることができる。
また、上記製造容器1内にはオリフィスがあいている板が備えられていることが好ましい。製造容器1内にオリフィスがあいている板が備えられていると振とうにより乱流が発生するので攪拌効率が高められ反応効率を上げることができる。
図1に示した製造装置を用いて本発明のポリマーアロイを製造する方法としては、例えば、非相溶な2種以上の樹脂と溶媒とを、製造容器1に投入し、充分シールした後、上記金属塩溶融浴5に投入することにより、上記溶媒を加熱及び加圧して高温高圧流体又は超臨界流体にさせる。
この状態で所定の時間保持して、上記の2種以上の樹脂を相溶化させた後、製造容器1を冷却浴に素早く投入し、急速に冷却する。充分に冷却した後、製造容器1内に生成したポリマーアロイを取り出す方法が挙げられる。
第1の本発明のポリマーアロイの製造方法に用いる製造装置の別の一例を図2に示した。図2の製造装置では、原料樹脂はそれぞれ押出機6とシリンジフィーダー7から供給される。供給された樹脂はシースヒーター8により加熱され溶融混合される。一方、高温高圧流体又は超臨界流体となりうる流体は定量ポンプ9により金属塩溶融浴10で加熱される。加熱された流体は高温高圧流体又は超臨界流体となる。溶融状態の混合樹脂と高温の流体は混合され電気炉11で保温される。そして、冷却器12に達するまでに混合樹脂はポリマーアロイとなる。冷却器12により冷却され流体は高温高圧流体や超臨界流体ではなくなる。
得られたポリマーアロイは流体とともに背圧調整弁13を備えた回収タンク14に貯留される。
第2の本発明は、常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂を高温高圧流体又は超臨界流体中で混合してなるポリマーアロイであって、示差熱量計を用いて相転移現象を観測したときに、少なくとも、上記2種類以上の樹脂のなかのいずれかの樹脂についての相転移現象が消失するか、又は、それぞれの樹脂の相転移現象の起こる温度とは異なる温度において相転移現象が観測されるポリマーアロイである。
第2の本発明のポリマーアロイは、常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂を高温高圧流体又は超臨界流体中で混合してなるものである。
高温高圧流体又は超臨界流体中で混合することにより、常温常圧では互いに非相溶である2種以上の樹脂であってもポリマーアロイを得ることができる。
本発明のポリマーアロイは、示差熱量計を用いて相転移現象を観測したときに、少なくとも、用いた2種類以上の樹脂のなかのいずれかの樹脂についての相転移現象が消失するか、又は、それぞれの樹脂の相転移現象の起こる温度とは異なる温度において相転移現象が観測される。これは、ポリマーアロイが超微小相分離構造をとっていることを示すものである。
通常、ポリマーアロイが超微小相分離構造をとっているかどうかは、四酸化ルテニウム等により染色し電子顕微鏡により観察することにより確認することができる。ポリマーアロイが超微小相分離構造をとっていれば、それぞれの樹脂が小さな樹脂ドメインとして均一に分散した混合状態となっていることが観察できる。しかし、樹脂の種類によっては電子顕微鏡によって2種類以上の樹脂が完全に相互に溶解した状態として観察され、それぞれの樹脂ドメインが観察されない場合がある。この場合、予め示差熱量計を用いてそれぞれの樹脂の相転移温度を測定しておき、次いでこれらの樹脂を用いて得られたポリマーアロイの相転移温度を測定することによりポリマーアロイが超微小相分離構造をとっているかどうかを確認することができる。即ち、完全に相互に溶解している場合、又は、それぞれの樹脂が非常に小さな樹脂ドメインとして均一に分散した混合状態となっている分散状態である場合には相転移温度は単一なものとなる。従って、観測されていたいずれかの樹脂の相転移現象が消失し相転移開始温度に達しても観測されないか、又は、予め観測されていたそれぞれの樹脂の相転移現象とは異なる温度に新たに相転移現象を起こす相転移開始温度が観測されればポリマーアロイが形成されていると推定することができる。
また、上記樹脂ドメインの大きさは、ポリマーアロイをフィルム状に成形してレーザー光散乱測定を行い散乱強度の散乱ベクトル依存性を測定し、下記式で表されるZimmの式により算出することができる。
なお、s=4πsinθ/λである。
式中、2θは散乱角を表し、λは光源の波長を表し、〈Rg〉zは測定されるドメインの大きさを表し、I(s)は散乱ベクトルsに対する散乱強度を表す。
また、上記樹脂ドメインの大きさは、ポリマーアロイに対して小角X線散乱測定を行い、散乱強度の角度依存性を測定し、下記式で表されるGuinierの式により算出することができる。
式中、Rgはドメインサイズを表し、I(0)は散乱角0の散乱強度を表す。
本発明のポリマーアロイは、常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂のガラス転移温度のうち最も高いものをTgH、最も低いものをTgLとし、TgHとTgLの差の絶対値をαとしたときに、ポリマーアロイのガラス転移温度Tgが下記式(1)により算出されるTg’に対してTg’±0.1αの範囲内にあることが好ましい。
Σ(wi/Tgi)=1/Tg’ (1)
式中、wiは樹脂iの重量分率、Tgiは樹脂iのガラス転移温度を表す。好ましい。
上記式(1)は、Foxの式と呼ばれるものであり、この式により算出されるTg’は、ポリマーアロイが完全相溶体構造をとっている場合の理論的なガラス転移温度である。示差熱量計を用いて観察したときに、ポリマーアロイのガラス転移温度TgがTg’±0.1αの範囲内にあれば、ポリマーアロイは超微小相分離構造をとっていると考えられる。
本発明のポリマーアロイは、少なくともガラス転移温度以上の温度に加熱される条件を含む熱サイクルが加えられたときに、相転移温度の変動幅が0.3α以内であることが好ましい。通常、非相溶である2種類以上の樹脂を混練等の機械的せん断力を用いて混合して急激に冷却したり、それぞれの樹脂を適当な溶媒に加圧することなく溶解させ混合した後に急激に冷却したりした場合は、そのドメイン構造を固定できたとしても、その構造は熱に対して非常に不安定であり、ガラス転移温度以上の熱サイクルを加えることによりガラス転移温度が変化してしまう(Polym.Eng.Sci.vol27.1953(1987))。従って、ポリマーアロイにおいてもこのような性質を有していると、成形した際に、物性が変化してしまいポリマーアロイとしての本来の特性が失われてしまう。より好ましくは0.25α以内である。
本発明のポリマーアロイに用いられる樹脂としては、お互いに非相溶又は相溶性に乏しい樹脂であれば特に限定されず、結晶性樹脂と非結晶性樹脂の樹脂混合物;相溶性に乏しいカチオン性又はアニオン性のイオン性樹脂混合物;非極性樹脂と極性樹脂との樹脂混合物;ガラス転移点や融点が大きく異なる樹脂の混合物等や、粘度の大きく異なる樹脂の混合物等が挙げられる。また、上記樹脂の構造は、線状であっても分岐構造であってもよく、又は、橋架構造を有していてもよい。更に、それらの規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック又はアタックチックのいずれでもよい。また上記樹脂は、ブロック共重合体、ランダム共重合体又はグラフト共重合体等の共重合体であってもよい。また、オリゴマーであっても、高分子量又は超高分子量重合体であってもよい。
光学用途を目的とする場合には、上記樹脂としては透明性に優れたものであることが好ましい。透明性に優れる樹脂としては特に限定されず、例えば、熱可塑性ノルボルネン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル等が挙げられる。また、それぞれの樹脂の屈折率が近い場合には、透明性を実現しやすく好ましい。また、光学用途の中には低屈折率を必要とする用途もあるが、そのような用途には屈折率の低い、熱可塑性ノルボルネン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の樹脂が好適である。
光学用途を目的として得られた本発明のポリマーアロイは、透明性、耐熱性、低吸湿性、低複屈折性及び成形性等に優れているため、その特性を活かし、例えば、一般カメラ用レンズ、ビデオカメラ用レンズ、望遠鏡レンズ、眼鏡レンズ、レーザビーム用レンズなどのレンズ類、光学式ビデオディスク、オーディオディスク、文書ファイルディスク、メモリディスクなどの光ディスク類、光ファイバーなどの光学材料、受像転写シートや各種フィルム、シート等の光学的用途を中心に、その他、各種電子機器筺体、窓ガラス、プリント基板、封止剤、無機又は有機化合物のバインダー等の各種用途に広く用いることができる。
本発明のポリマーアロイが熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含有する場合には、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の耐熱性や透明性を損なうことなく、成形性、透湿性、接着性などが改善される。また、溶融成形時の熱劣化や欠陥の発生を抑制することができる。
上記熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては特に限定されず、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(共重合体を含む)の水素添加物;ノルボルネン系モノマーと、エチレン及び/又はα−オレフィン等のオレフィン系モノマーとの共重合体等を挙げることができる。これらはいずれも実質的に不飽和結合を有さないものである。
上記熱可塑性ノルボルネン系樹脂の原料となるノルボルネン系モノマーとしては、特開平5−39403号公報、特開平5−212828号公報、特許第3038825号、特許第3019741号、特許第3030953号等に記載されているものを用いることができ、例えば、ノルボルネン、メタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノドデカヒドロアントラセン、ジメタノデカヒドロアントラセン、トリメタノドデカヒドロアントラセン、又はそれらの置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロシクロペンタジエン、メタノオクタヒドロベンゾインデン、ジメタノオクタヒドロベンゾインデン、メタノデカヒドロベンゾインデン、ジメタノデカヒドロベンゾインデン、メタノオクタヒドロフルオレン、ジメタノオクタヒドロフルオレン、又はそれらの置換体等を挙げることができる。なお、これらノルボルネン系モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記置換体における置換基としては特に限定されず、従来公知の炭化水素基又は極性基を用いることができ、例えば、アルキル基、アルキリデン基、アリール基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ピリジル基等が挙げられる。上記置換体としては、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン等が挙げられる。
上記熱可塑性ノルボルネン系樹脂の数平均分子量としては特に限定されないが、通常は5000〜20万であることが好ましい。5000未満であると、本発明のポリマーアロイから製造される成形品(特に光学フィルム等)の力学強度が不十分となることがあり、20万を超えると、成形性が悪くなることがある。より好ましくは7000〜35000、更に好ましくは8000〜3万である。なお、上記熱可塑性ノルボルネン系樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
本発明で用いられる熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、上述のように、極性基を有する樹脂又は極性基を有しない樹脂のいずれであってもよい。極性基を有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂の場合、極性基は光学特性、成形性等を損なわない範囲で存在してよく、むしろ、成形品に適度な透湿性を与えるためには、極性基の存在は好ましい。
このような極性基としては特に限定されず、例えば、ハロゲン基(塩素基、臭素基、フッ素基)、水酸基、カルボン酸基、エステル基、アミノ基、無水酸基、シアノ基、シリル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、シラノール基等が挙げられる。なかでも、脱保護により反応性を与えることのできるエステル基や無水酸基が好適である。
上記熱可塑性ノルボルネン系樹脂のうち、市販品として入手できるものとしては、例えば、極性基を有する樹脂として「アートン」(JSR社製)、極性基を有しない樹脂として「ゼオノア」(日本ゼオン社製)等が挙げられる。
本発明のポリマーアロイにおいて、上記熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いる場合、これと組み合わせてポリマーアロイを形成させる非相溶な樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとαオレフィンとの共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体:エチレン/エチルアクリレート共重合体等のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体又はエチレン/(メタ)アクリル酸共重合体;ポリブタジエン等のポリオレフィン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリカーボネート;ポリ酢酸ビニル;ポリアミド;ポリアセタール;ポリフェニレンエーテル;アイオノマー;ポリ塩化ビニル;ポリイミド;ポリエステル;ポリエチレンオキサイド;ポリアリレート;ABS樹脂;フッ化プラスチック;ポリフッ化ビニリデン;ポリ塩化ビニリデン;ポリスチレン;ポリサルホン;ポリビニルエーテル;ポリビニルアルコール;ポリ乳酸等が挙げられる。なかでも、透明性が要求される光学フィルム等の用途に対しては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリサルホン、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール等の非晶性樹脂や低結晶性樹脂、結晶性樹脂であっても結晶サイズの小さい樹脂が好適に用いられる。
本発明のポリマーアロイにおいて用いる2種以上の樹脂の少なくとも1つが透明樹脂である場合、上記透明樹脂と非相溶な樹脂とが100nm以下の超微小分離構造を形成していることが好ましい。相分離構造が100nmを超えた場合には透明性、ヘイズ等が低下して光学用途等には不適当になってしまう可能性がある。また、透湿性の高い樹脂を混合し100nm以下の超微小分離構造とすることにより熱可塑性ノルボルネン系樹脂に透湿性を付与することもできる。
本発明のポリマーアロイにおいて、常温常圧では非相溶である2種類以上の樹脂の配合割合としては、ベースとなる樹脂100重量部に対して、上記ベース樹脂に非相溶である樹脂を0.01〜100重量部配合することが好ましい。より好ましくは0.01〜15重量部、更に好ましくは3〜10重量部である。
また、上記熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いる場合、熱可塑性ノルボルネン系樹脂とポリマーアロイを形成させる非相溶な樹脂の配合量を別の尺度から規定すると、得られるポリマーアロイが耐熱性や成形性を保持するために、上記熱可塑性ノルボルネン樹脂との配合によって生じるガラス転移温度の低下を30℃以内に維持できる範囲内にすることが好ましい。ガラス転移温度の低下が30℃を上回ると、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が本来備える耐熱性が損なわれ、光学フィルム等としての用途において、その使用範囲が大幅に制限されることがある。
本発明のポリマーアロイには、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の公知の添加剤を配合することができる。
上記酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
第2の本発明のポリマーアロイが上記熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含有する場合には、透明性、耐熱性、低吸湿性、低複屈折性及び成形性等に優れているため、その特性を活かし、例えば、一般カメラ用レンズ、ビデオカメラ用レンズ、望遠鏡レンズ、眼鏡レンズ、レーザビーム用レンズなどのレンズ類、光学式ビデオディスク、オーディオディスク、文書ファイルディスク、メモリディスクなどの光ディスク類、光ファイバーなどの光学材料、受像転写シートや各種フィルム、シート等の光学的用途を中心に、その他、各種電子機器筺体、窓ガラス、プリント基板、封止剤、無機又は有機化合物のバインダー等の各種用途に広く用いることができる。
本発明のポリマーアロイを用いてなる成形品、及び、透明成形品もまた、本発明の1つである。
本発明のポリマーアロイを用いてなる成形品は、公知の成形手段、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形等の成形手段を用いて作製することができる。
本発明のポリマーアロイを用いてなる成形品を製造する方法としては特に限定されないが、示差熱量計で求めたポリマーアロイ超微小相分離構造体の相転移開始温度よりも高い温度で成形することが好ましい。ただし、相転移開始温度よりも30℃以上高くない温度で成形することが好ましい。あまり高温となると超微小相分離構造が成形中に壊れてしまう恐れがある。なお、超臨界状態又は高温高圧状態から直接射出成形又は押出成形してもかまわない。
また、光学フィルムを成形する場合は、ポリマーアロイを相転移開始温度よりも30℃以上高くない温度で加熱プレスすることが好ましい。また、最も高い配合比で配合した樹脂のガラス転移温度よりも30℃以上高くない温度で加熱プレスすることがより好ましい。これにより、ポリマーアロイが発泡している場合や、発泡していないがわずかに気泡を含む場合であっても超微小相分離構造を壊すことなく内部に気泡が存在しない透明な光学フィルムを得ることができる。
また、成形温度が高くなくとも長い時間加熱を続けると超微小相分離構造がしだいに失われていくため成形時間はできるだけ短くすることが好ましい。
また、本発明のポリマーアロイを用いてなる成形品の表面に、無機化合物、シランカップリング剤等の有機シリコン化合物、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、メラニン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等からなるハードコート層を形成してもよい。これにより、成形品の耐熱性、光学特性、耐薬品性、耐磨耗性、透湿性等を向上させることができる。
上記ハードコート層の形成手段としては、例えば、熱硬化法、紫外線硬化法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の方法を挙げることができる。
本発明のポリマーアロイが熱可塑性ノルボルネン系樹脂を構成成分として含む場合は、その成形性、耐熱性に優れるという点を最大限に活かして、特に位相差フィルム、偏光板保護フィルム等の光学フィルムに適する。
本発明のポリマーアロイを用いてなる光学フィルムもまた、本発明の1つである。
本発明の光学フィルムは、引き裂き強度が0.1N以上であることが好ましい。0.1N未満であると、光学フィルムとしての使用範囲が限定されることがあり、特に10μm以下の薄膜の場合にはその傾向が顕著となる。
本発明の光学フィルムは、全光線透過率が60%以上であることが好ましい。60%未満であると、光学フィルムとしての使用範囲が限定されることがある。より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。
本発明の光学フィルムは、ヘイズが20%以下であることが好ましい。20%未満であると、光学フィルムとしての使用範囲が限定されることがある。より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である。
本発明の光学フィルムは、例えば、押出成形法、プレス成形法等により製造することができる。本発明の光学フィルムの厚さは、通常10〜300μmである。
本発明のポリマーアロイは、それぞれの樹脂の優れた性質を損なうことなく、他の樹脂の性質も発現させることが可能である。また、加熱されても相分離構造が壊れにくく溶融成型時にポリマーアロイの微小相分離構造が維持される。従って、優れた成型品を得ることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1、2、4、5、6)
図1に示した回分式の製造容器1(管型容器、SUS316製、Tube Bomb Reacter、内容積100mL)に、表1に示した配合組成に従って所定の溶媒、熱可塑性ノルボルネン系樹脂(Tg=161℃)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA、Tg=110℃)、ポリカーボネート(PC、Tg=141℃)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA、Tm=78℃)の所定量を投入し、充分に製造容器内を窒素置換した。
次に、製造容器1をマイクロヒーター2(助川電気工業社製)を備えた金属塩溶融浴5(新日豊化学社製)中に沈め、表1に示した温度、圧力で所定時間処理した。その後、製造容器1を冷却浴により急速に冷却し、次いで氷冷した後得られたポリマーアロイを分離、乾燥した。
得られたポリマーアロイを185℃にて熱プレスすることにより、厚さ40μmのフィルムを作製した。
(実施例3)
図1に示した回分式の製造容器1(管型容器、SUS316製、Tube Bomb Reacter、内容積100mL)に、表1に示した配合組成に従って所定量の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、PMMAを投入し、次いで、二酸化炭素を液化し、ポンプにより製造容器内の圧力が10MPaになるまで加え封入した後、製造容器1をマイクロヒーター2(助川電気工業社製)を備えた金属塩溶融浴5(新日豊化学社製)中に沈め、製造容器1を急速に加熱して温度200℃、圧力35MPaまで上昇させ、この状態に180分間維持した。その後、製造容器1を空冷により冷却し、次いで、その後得られたポリマーアロイを乾燥した。
得られたポリマーアロイを185℃にて熱プレスすることにより、厚さ40μmのフィルムを作製した。
(比較例1〜3)
表1に示した配合組成に従って所定量の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、PMMA、PC、EVAをプラストミル(東洋精機製社製、LABO PLASTOMILL MODEL 100C100)により、所定の条件で混練りしてポリマーブレンドを得た。
得られたポリマーブレンドを185℃にて熱プレスすることにより、厚さ40μmのフィルムを作製した。
実施例1〜6で得られたポリマーアロイ及び比較例1〜3で得られたポリマーブレンドについて下記の方法により相転移温度、相分離構造のサイズを評価した。また、実施例1〜6及び比較例1〜3で作製したフィルムについて下記の方法により全光線透過率を評価した。
結果を表1に示した。
[相転移温度]
TA Instruments社製DSC2920 Modulated DSCを用い、下記の(1)〜(6)の順に進める温度プログラム条件において、最終昇温時のガラス転移温度を本発明のガラス転移温度とした。
(1)室温から−50℃まで10℃/minで降温して−50℃で5分間等温維持
(2)−50℃から280℃まで10℃/minで昇温して280℃で5分間保持
(3)280℃から−50℃まで10℃/minで降温して−50℃で5分間保持
(4)−50℃から280℃まで10℃/minで昇温して280℃で5分間保持
この相転移温度の測定条件は、測定されるポリマーアロイに対する熱サイクル試験に相当する。よって、熱サイクルを加えることなく測定された相転移温度と上記の相転移温度の測定条件で熱サイクルを3回繰り返したときに、相転移温度の変動幅が0.5α以下である場合を○、0.5αを超える場合を×として評価した。
[相分離構造のサイズ]
透過型電子顕微鏡観察により相分離構造を観察し、下記の基準で評価した。
○:100nm以下
×:100nmを超えている
[全光線透過率]
ヘイズメーター(東京電色社製:HCIIIDPK)を用い、JIS K 7150に準拠して測定した。
表1から明らかなように、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含有するポリマーアロイを用いた実施例1、2、4、5のフィルムは透明性に優れるものであった。
産業上の利用可能性
本発明によれば、ポリマーアロイ、ポリマーアロイの製造方法、ポリマーアロイ超微小相分離構造を用いてなる成形品及び光学フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のポリマーアロイを製造する製造装置の一例を示す模式図であり、図2は、本発明のポリマーアロイを製造する製造装置の一例を示す模式図である。
図中、1は製造容器を表し、2はヒーターを表し、3は金属塩を表し、4は熱電対を表し、5は金属塩溶融浴を表し、6は押出機を表し、7はシリンジフィーダーを表し、8はシースヒーターを表し、9は定量ポンプを表し、10は金属塩溶融浴を表し、11は電気炉を表し、12は冷却機を表し、13は背圧調整弁を表し、14は回収タンクを表す。
Claims (3)
- 少なくとも、
常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂と常温常圧で液状又は気体状である溶媒とを混合する工程1と、
前記溶媒を加熱及び加圧して高温高圧流体又は超臨界流体とし、この状態で混合する工程2と、
前記工程2で得られた混合物を解圧せずに急速に室温以下にまで冷却する工程3とを有する
ことを特徴とするポリマーアロイの製造方法。 - 常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂と常温常圧で液状である溶媒との混合物中に占める溶媒の体積が、上記常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂の体積の合計の1倍以上であることを特徴とする請求項1記載のポリマーアロイの製造方法。
- 常温常圧では互いに非相溶である2種類以上の樹脂は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂と熱可塑性ノルボルネン系樹脂と非相溶な1種以上の樹脂とからなることを特徴とする請求項1又は2記載のポリマーアロイ超微小相分離構造体の製造方法。
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