JP4142755B2 - 方向性珪素鋼板の製造方法及び方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備 - Google Patents

方向性珪素鋼板の製造方法及び方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄損が極めて低い方向性珪素鋼板の製造方法及び連続脱炭・窒化焼鈍設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性珪素鋼板は電気機器の磁気鉄心として多用され、エネルギーロスを少なくする改善はもとより、製造の安定性改善、製造コスト低減等が繰り返され、脱炭工程を含む一次再結晶焼鈍を行う脱炭焼鈍工程や窒化焼鈍工程も例外ではなかった。脱炭・窒化焼鈍工程の主たる目的は、熱延工程でのγ相域確保等の理由で鋼板に含まれた炭素(通常5×10−2%程度)を、最終製品で磁性が時効劣化しない領域(15ppm未満)まで脱炭し、次いで鋼板表面に適正な酸素付与を行ってFe及びSi酸化物を形成させた後、鋼板に適正な窒素付与を行い、その後、表面塗布したMgOと次工程の仕上焼鈍で反応させ、グラス皮膜を形成するとともに、次工程の仕上焼鈍で2次再結晶させる前準備として最適な結晶粒サイズに一次再結晶させることである。
【0003】
従来、この方向性珪素鋼板の脱炭焼鈍工程は連続焼鈍炉で行われ、炉内で鋼板が連続的に脱炭され、鋼板表面に酸素付与されるとともに、雰囲気ガスも連続的に還元され、炉外に放散燃焼されていた。また、窒化焼鈍工程は、炉内で鋼板が連続的に窒化され、鋼板に窒素付与されるとともに、雰囲気ガスも連続的にNH 分解及び還元され、炉外に放散燃焼されていた。
【0004】
図3に、従来の連続脱炭・窒化焼鈍設備の一例を示す。炉2は、加熱・均熱帯3、還元帯4、窒化帯5、冷却帯6及びそれらの処理帯間の雰囲気仕切り7〜9から構成されている。加熱・均熱帯3の雰囲気ガスは、加熱・均熱帯3の後方の雰囲気ガス供給管20Aより供給され、鋼板1と対向しながら大半は炉2の前部に流され、雰囲気ガス排出管11Aより放散燃焼されるが、一部は炉入口から放散されるとともに、雰囲気仕切り7へ流出している。還元帯4の雰囲気ガスは、雰囲気ガス供給管20Bより供給され、雰囲気ガス排出管11Bより放散燃焼されるとともに、前後の雰囲気仕切り7、8へ流出している。窒化帯5の雰囲気ガスは、雰囲気ガス供給管20Cより供給され、雰囲気ガス排出管11Cより放散燃焼されるとともに、前後の雰囲気仕切り8、9へ流出している。冷却帯6の雰囲気ガスは、雰囲気ガス供給管20Dより供給され、前部の雰囲気仕切り9に流出するとともに炉出口より放散されている。また、各雰囲気仕切り7〜9からは雰囲気ガス排出管11E〜Gを通して放散燃焼している。尚、各雰囲気仕切りの炉圧は前後の処理帯より一定値だけ低くなるよう設定され、これを維持するよう各雰囲気ガス排出管11A〜C、E〜Gから雰囲気ガスが放散燃焼されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この方向性珪素鋼板の脱炭・窒化焼鈍工程では、使用された雰囲気ガスは炉外に放散燃焼され、高い雰囲気コストを余儀なくされていた。また、雰囲気コスト削減のため、雰囲気ガス量の低減化が試みられたが、しばしば、脱炭不良、窒化不良、皮膜不良又は磁性不良を招くとともに、これらの不良改善に多大の時間と費用を費やさざるを得なかった。
【0006】
本発明は上述した従来の脱炭・窒化焼鈍工程が持っている課題に鑑み、窒化帯の雰囲気ガスをも一層回収して再利用することにより、雰囲気ガスを安価に供給するとともに、高位に品質の安定した製品を供給できる方向性珪素鋼板の製造方法及び方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、以下の(1)〜(7)の通りである。
【0008】
(1)方向性珪素鋼板の製造方法において、Si:2.0〜4.8質量%、インヒビタ形成成分としてMn、S、Al、N、Se、Sn、B、Bi、Nb、Ti、Pのいずれか1種または2種以上を含み、残部鉄及び不可避的不純物からなる珪素熱延鋼帯を、焼鈍を施すか又は施さず、その後、1回又は中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を行って所定の板厚とし、次いで脱炭工程を含む一次再結晶焼鈍及び窒化焼鈍を行う方向性珪素鋼板の製造方法において、炉の雰囲気ガスを一次再結晶焼鈍を行う加熱・均熱帯、窒化焼鈍を行う窒化帯を含む複数の処理帯又は処理帯間の雰囲気仕切り内から回収し、窒化帯又は窒化帯前後の雰囲気仕切り内から回収した雰囲気ガスを、炉からの飛散物除去用のフィルタに通し、予備処理としてNH を熱分解させた後、窒化帯又は窒化帯前後の雰囲気仕切り内以外から回収した雰囲気ガスと合わせて精製し、H2、不活性ガス及びCOx1%未満(ドライガス換算)からなる再生雰囲気ガスを生産し、これにH2含有ガス、成分調整用不活性ガス及びH2Oを加えて成分調整し、H2濃度25%(ドライガス換算)以上、COx1%未満(ドライガス換算)、露点50〜75℃、残部不活性ガスとしてから加熱・均熱帯に供給し、脱炭工程を含む一次再結晶焼鈍及び窒化焼鈍を行い、更に焼鈍分離材を塗布して仕上焼鈍を施すことを特徴とする方向性珪素鋼板の製造方法。
【0009】
(2)加熱・均熱帯に供給した後の残余の再生雰囲気ガスに、H2含有ガス、成分調整用不活性ガス及びH2Oを加えて成分調整し、加熱・均熱帯及び窒化帯を除く1個以上の処理帯に供給することを特徴とする前記(1)の方向性珪素鋼板の製造方法。
【0010】
(3)加熱・均熱帯に供給した後の残余の再生雰囲気ガスに、H2含有ガス、成分調整用不活性ガス、H2O及びNH を加えて成分調整し、窒化帯に供給することを特徴とする前記(1)又は(2)の方向性珪素鋼板の製造方法。
【0011】
(4)方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備において、窒化帯又は窒化帯前後の雰囲気仕切り内から回収した使用済み雰囲気ガスから炉からの飛散物を除去するフィルタと、
これに続いてフィルタを通った前記使用済み雰囲気ガスを予備処理するNH 熱分解装置と、
前記予備処理された使用済み雰囲気ガスと一次再結晶焼鈍を行う加熱・均熱帯を含む複数の処理帯又は処理帯間の雰囲気仕切り内から回収した前記とは別途の使用済み雰囲気ガスとを合わせて精製し、H2、不活性ガス及びCOx1%未満(ドライガス換算)からなる再生雰囲気ガスを生産する雰囲気ガス精製装置と、
再生雰囲気ガスにH2含有ガス、成分調整用不活性ガス及びH2Oを加えて成分調整する加熱・均熱帯向けの雰囲気ガス成分調整装置と、
を配設したことを特徴とする方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備。
【0012】
(5)加熱・均熱帯に供給した後の残余の再生雰囲気ガスにH2含有ガス、成分調整用不活性ガス及びH2Oを加えて成分調整する加熱・均熱帯及び窒化帯を除く1個以上の処理帯向けの雰囲気ガス成分調整装置を配設したことを特徴とする前記(4)の方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備。
【0013】
(6)加熱・均熱帯に供給した後の残余の再生雰囲気ガスにH2含有ガス、成分調整用不活性ガス、H2O及びNH を加えて成分調整する窒化帯向けの雰囲気ガス成分調整装置を配設したことを特徴とする前記(4)又は(5)の方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備。
【0014】
(7)前記フィルタが微細なステンレス繊維からなる繊維焼結体に襞を持たせ円筒状に加工したものであることを特徴とする前記(4)〜(6)のいずれかの方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備。
【0015】
【発明の実施の形態】
雰囲気ガスの炉内でのガス濃度を詳細に調査したところ、加熱・均熱帯では、主にH2Oが鋼板の炭素の酸化及び地鉄の酸化に消費されて減少し、一方、鋼板の炭素の酸化によりCOxが数%(ドライガス換算)のオーダーで増加することが判明した。H2、H2O、COx、不活性ガスを含む使用済み雰囲気ガスの内で、脱炭焼鈍工程での再使用の支障となるガス成分はCOxのみであり、他の処理帯での使用の障害となるのは、加えてH2Oである。その他の雰囲気ガス成分は、使用済み雰囲気ガスの各組成の濃度を分析し、不足分を補充することで再使用可能である。また、窒化帯では、主にNH が分解してH2とN2に変わり、一部H2が鋼板の地鉄の酸化物を還元することによりH2Oが若干増加する。H2、N2、H2O、NH の内で、他の処理帯での使用の障害となるガス成分は、残留NH 、H2Oのみである。その他の雰囲気ガス成分は、使用済み雰囲気ガスの各組成の濃度を分析し、不足分を補充することで再使用可能である。
【0016】
図1に本発明の連続脱炭・窒化焼鈍設備の一例を示す。炉2は、加熱・均熱帯3、還元帯4、窒化帯5、冷却帯6及び雰囲気仕切り7〜9から構成されている。加熱・均熱帯3の後方の雰囲気ガス供給管20Aから炉内に供給された雰囲気ガスは鋼板1と対向して進行し、大半は炉の前部に至り雰囲気ガス排出管11Aから炉外に排出されるが、一部は炉入口から放散されるとともに、雰囲気仕切り7へ流出している。尚、炉の前部に流れるにつれH2Oは消費されて減少するとともに、COxが増加する。還元帯4の雰囲気ガスは、雰囲気ガス供給管20Bより供給され、雰囲気ガス排出管11Bより排出されるとともに、前後の雰囲気仕切り7、8へ流出している。窒化帯5に雰囲気ガス供給管20Cから供給された雰囲気ガスは、雰囲気ガス排出管11Cから炉外に排出されるとともに、前後の雰囲気仕切り8、9へ流出している。冷却帯6の雰囲気ガスは、雰囲気ガス供給管20Dより供給され、前部の雰囲気仕切り9に流出するとともに炉出口より放散されている。また、各雰囲気仕切り7〜9からは雰囲気ガス排出管11E〜Gを通して排出している。尚、各雰囲気仕切りの炉圧は前後の処理帯より一定値だけ低くなるよう設定され、これを維持するよう各雰囲気ガス排出管11A〜C、E〜Gから雰囲気ガスが排出される。
【0017】
雰囲気ガス排出管11C、F、Gから排出されたNH 含有ガスは、フィルタ21で炉からの飛散物を除去後、NH 熱分解装置22に導かれ、NH はN2とH2に分解される。NH を含有しない雰囲気ガス、例えば、加熱・均熱帯3から排出された雰囲気ガス及びNH 熱分解装置22で予備処理された雰囲気ガスは、入側ガスホルダー14を経て雰囲気ガス精製装置15に導かれ、COxが1%未満(ドライガス換算)まで除去される。
【0018】
雰囲気ガス精製に特に難しい条件はなく、COxが1%未満(ドライガス換算)まで除去されるとともに、H2Oが充分に除去され、H2の回収効率が不活性ガスの回収効率より高ければよい。例えば、吸着剤として活性アルミナ、活性炭、ゼオライト等を使用したPSA法(Pressure Swing Adsorption)、又は、ポリミド等の分離膜を使用した膜分離法等が採用可能である。いずれの方法でも、雰囲気ガス精製によりH2濃度は高められる。例えば、PSA法では、吸着剤及び吸着時の圧力を選ぶことにより、H2回収率は70%、N2回収率は15%、COxは大半が除去され得る。H2源ガスをアンモニア分解ガス(H275%、N225%)とすると、H2濃度は90%(ドライガス換算)まで高めることが可能である。また、種々のH2源ガスについても、上記関係が成り立つ。
【0019】
雰囲気ガス精製装置15で精製され、一部減量された再生雰囲気ガスは、出側ガスホルダー16を経て、ガス分析装置26でガス成分の濃度を分析され、雰囲気ガス1次成分調整装置17で不足する不活性ガスを補充され、H2源ガスと同じ成分とされる。この後、加熱・均熱帯3の雰囲気ガス所要量が雰囲気ガス2次成分調整装置19Aへと入れられ、H2Oを付加される。また、余剰の再生ガスは、還元帯4の雰囲気ガス2次成分調整装置19Bへと入れられ、不足するH2源ガスとH2Oを付加される。窒化帯5及び冷却帯6には、各々H2源ガスが導入されている。尚、上記回路中には、雰囲気ガス循環装置13A、Cが配設され、雰囲気ガス循環・精製に必要な駆動力を付与している。
【0020】
図2に本発明で用いるフィルタの構成ユニットの概略を示す。フィルタ構成ユニットは、ステンレス等の非酸化性の金属を微細繊維としたものを織物とし、更に、焼結して作られた素材を襞をもたせて加工されたフィルタ面53と、フィルタ面53の上部固定板であり、中空構造からなるフランジ51と、下部固定部であり、密閉構造からなる底板52とで構成され、フィルタ面53とフランジ51、底板52との間は各々溶接されている。雰囲気回収ガスはフランジ51の中央間隙よりフィルタ内部へ入り、側面のフィルタ面53を通過してフィルタ外へ出るが、この時、雰囲気回収ガスに含有された炉からの飛散物はフィルタ面53の内側に残される。フィルタ面53は、非酸化性繊維焼結体で構成されているが、フィルタサイズ(穴サイズ)が小さくなるにつれてフィルタ面53の圧力損失は大きくなるので、これを抑える目的で襞を持たせ、フィルタの表面積を増やす対策がとられている。許容される塵(炉からの飛散物)・量及び圧力損失が最適なフィルタサイズ(穴サイズ)、襞サイズ(襞ピッチ、襞高さ)が選ばれる。
【0021】
本発明で対象とする鋼成分は、Si:2.0〜4.8重量%、方向性珪素鋼板製造に必要なインヒビタ成分を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、それ以外の成分は規定しない。
【0022】
Siは電気抵抗を高め鉄損を下げるうえで重要であるが、その含有量が4.8質量%超では冷間圧延時に割れやすくなる。一方、2.0質量%未満では電気抵抗が低く、鉄損を下げるうえで問題がある。
【0023】
インヒビタ形成成分としては、Mn、S、Al、N、Se、Sn、B、Bi、Nb、Ti、Pがある。
【0024】
脱炭焼鈍を行う加熱・均熱帯に供給する再生雰囲気ガスのH2濃度(ドライガス換算)が25%未満では、酸化ポテンシャルが強く表面のSi選択酸化を阻害させる。COx濃度(ドライガス換算)が1%以上では、酸化ポテンシャルが弱く脱炭性を低下させる。露点が50℃未満では、酸化ポテンシャルが低く脱炭性を低下させる。露点が50℃未満では、酸化ポテンシャルが低く脱炭性を低下させ、75℃超では、1℃当たりの水の量が多くなりすぎ供給雰囲気成分の変動を大きくする。
【0025】
Si:2.0〜4.8質量%、方向性珪素鋼板製造に必要なインヒビタ形成成分を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる溶鋼を、通常の工程で、もしくは連続鋳造して熱延鋼板又は熱延鋼帯とする。この熱延鋼板又は熱延鋼帯に、750〜1200℃の温度域で30秒〜30分間磁束密度向上の為の焼鈍を施し又は施さず、次いでこれらの熱延鋼板又は熱延鋼帯を冷間圧延する。冷間圧延は、最終冷間圧延率50%以上、望ましくは特公昭40−15644号公報に開示されているように80%以上とする。冷間圧延後の材料を連続脱炭・窒化焼鈍設備に入れる。
【0026】
まず、鋼板温度800〜850℃で脱炭焼鈍を行う。この時、炉に供給する雰囲気ガスの組成は、H225%(ドライガス換算)以上、望ましくは75%、COx1%未満(ドライガス換算)、露点50〜75℃、残部不活性ガスとする。
【0027】
次に、鋼板温度800〜850℃で還元焼鈍を行う。炉に供給する雰囲気ガスの組成は、H225%(ドライガス換算)以上、望ましくは75%、COx1%未満(ドライガス換算)、露点10℃以下、残部不活性ガスとする。
【0028】
次いで、鋼板温度700〜800℃で窒化焼鈍を行う。炉に供給する雰囲気ガスの組成は、NH30.5〜10%(ドライガス換算)、H225%(ドライガス換算)以上、望ましくは65%超、COx1%未満(ドライガス換算)、露点10℃以下、残部不活性ガスとする。
【0029】
また、窒化帯を含む複数の処理帯又は処理帯間の雰囲気仕切りより雰囲気ガスの回収・精製を行い、成分を調整して加熱・均熱帯を含む複数の処理帯に循環再使用する。
【0030】
こうして脱炭し、更に窒化した鋼板又は鋼帯は、MgOを主成分とする焼鈍分離材を塗布して仕上焼鈍炉に入れ、920〜1150℃に到達後、5時間以上保持して2次再結晶し、その後、純化のため1200℃まで昇温し、この温度に10時間以上保持する。仕上焼鈍終了後、必要に応じて磁区細分化処理を含む張力コーティングを行う。
【0031】
【実施例】
Si:3.2重量%、酸可溶性Al:0.029重量%、N:0.065重量%、Mn:0.12重量%、S:0.008重量%、C:0.05重量%を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる珪素熱延鋼帯を1100℃で2分間焼鈍した後冷延し、0.23mm厚とした。
【0032】
本発明例では、H2源をアンモニア分解ガス(H275%、N225%)とし、合計700m3/hrをH2源ガス供給管から炉へ補給した。加熱・均熱帯〜窒化帯から雰囲気ガスを回収し、雰囲気精製装置で精製後、ガス組成をH275%(ドライガス換算)、COx0.2%未満(ドライガス換算)、残部不活性ガスとし、露点69℃としたあと加熱・均熱帯に雰囲気ガスを循環させ、そのなかで鋼板を通板し、鋼板温度830℃で2分間焼鈍するとともに、残余の回収雰囲気ガスを露点0℃としたあと還元帯に循環させ、鋼板表面の処理を行った。次に、2次再結晶を安定させるために、アンモニア雰囲気中で窒化処理を行い、窒素量を200ppmとし、インヒビタを強化したあと、アンモニア分解ガス雰囲気で冷却した。
【0033】
比較例1、2では、H2源ガス供給管から、各合計1,200m3/hr及び1,700m3/hrのアンモニア分解ガスを炉へ供給した。加熱・均熱帯へは、露点69℃としたあと供給し、大半は、炉の前部の雰囲気ガス排出管から放散燃焼させ、一部は炉入口から放散させるとともに雰囲気仕切りへ流出させた。また、還元帯へは、露点0℃としたあと供給し、雰囲気ガス排出管から放散、燃焼させた。次に、2次再結晶を安定させるために、アンモニア雰囲気中で窒化処理を行い、窒素量を200ppmとし、インヒビタを強化したあと、アンモニア分解ガス雰囲気で冷却した。
【0034】
その後、MgOを主成分とする焼鈍分離材を塗布し、高温焼鈍した。高温焼鈍では、1100℃まで10%N2−90%H2雰囲気で150℃/hrの昇温速度を保ちながら昇温し、1100℃到達後、その温度で10時間保持した。その後、100%H2雰囲気とし、更に1200℃まで昇温し、この温度に10時間保持した。仕上焼鈍終了後、リン酸−クロム酸系の張力コーティング処理を行った。得られた特性及び皮膜状況は表1の通りである。
【0035】
【表1】
Figure 0004142755
【0036】
表1で明らかなように、本発明例では雰囲気ガスを安価にできるとともに、磁性及び皮膜を含めて製品品質が高位安定した。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、窒化帯の雰囲気ガスをも一層回収して再利用することができるので、雰囲気ガスを一層安価に供給するとともに、極めて安定して方向性珪素鋼板を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の連続脱炭・窒化焼鈍設備の一例を示す図である。
【図2】本発明で使用するフィルタを示す図である。
【図3】従来の連続脱炭・窒化焼鈍設備の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 鋼帯
2 炉
3 加熱・均熱帯
4 還元帯
5 窒化帯
6 冷却帯
7〜9 雰囲気仕切り
11A〜C、E〜G雰囲気ガス排出管
12A〜G、E〜G雰囲気ガス排出管バルブ
13A、C 雰囲気ガス循環装置
14 入側ガスホルダー
15 雰囲気ガス精製装置
16 出側ガスホルダー
17 雰囲気ガス1次成分調整装置
18A〜B回収雰囲気ガス供給管バルブ
19A〜C雰囲気ガス2次成分調整装置
20A〜D雰囲気ガス供給管
21 フィルタ
22NH 熱分解装置
26、27 ガス分析装置
31 不活性ガス供給管
32 不活性ガス供給管バルブ
33 H2源ガス供給管
34A〜D H2源ガス供給管バルブ
35 H2O源ガス供給管
36A、B H2O源ガス供給管バルブ
37NH ガス供給管
38NH ガス供給管バルブ
51 フランジ
52 底板
53 フィルタ面
X 鋼板均熱温度到達点

Claims (7)

  1. 方向性珪素鋼板の製造方法において、Si:2.0〜4.8質量%、インヒビタ形成成分としてMn、S、Al、N、Se、Sn、B、Bi、Nb、Ti、Pのいずれか1種または2種以上を含み、残部鉄及び不可避的不純物からなる珪素熱延鋼帯を、焼鈍を施すか又は施さず、その後、1回又は中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を行って所定の板厚とし、次いで脱炭工程を含む一次再結晶焼鈍及び窒化焼鈍を行う方向性珪素鋼板の製造方法において、炉の雰囲気ガスを一次再結晶焼鈍を行う加熱・均熱帯、窒化焼鈍を行う窒化帯を含む複数の処理帯又は処理帯間の雰囲気仕切り内から回収し、窒化帯又は窒化帯前後の雰囲気仕切り内から回収した雰囲気ガスを、炉からの飛散物除去用のフィルタに通し、予備処理としてNH を熱分解させた後、窒化帯又は窒化帯前後の雰囲気仕切り内以外から回収した雰囲気ガスと合わせて精製し、H2、不活性ガス及びCOx1%未満(ドライガス換算)からなる再生雰囲気ガスを生産し、これにH2含有ガス、成分調整用不活性ガス及びH2Oを加えて成分調整し、H2濃度25%(ドライガス換算)以上、COx1%未満(ドライガス換算)、露点50〜75℃、残部不活性ガスとしてから加熱・均熱帯に供給し、脱炭工程を含む一次再結晶焼鈍及び窒化焼鈍を行い、更に焼鈍分離材を塗布して仕上焼鈍を施すことを特徴とする方向性珪素鋼板の製造方法。
  2. 加熱・均熱帯に供給した後の残余の再生雰囲気ガスに、H2含有ガス、成分調整用不活性ガス及びH2Oを加えて成分調整し、加熱・均熱帯及び窒化帯を除く1個以上の処理帯に供給することを特徴とする請求項1記載の方向性珪素鋼板の製造方法。
  3. 加熱・均熱帯に供給した後の残余の再生雰囲気ガスに、H2含有ガス、成分調整用不活性ガス、H2O及びNH3を加えて成分調整し、窒化帯に供給することを特徴とする請求項1又は2記載の方向性珪素鋼板の製造方法。
  4. 方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備において、窒化帯又は窒化帯前後の雰囲気仕切り内から回収した使用済み雰囲気ガスから炉からの飛散物を除去するフィルタと、
    これに続いてフィルタを通った前記使用済み雰囲気ガスを予備処理するNH 熱分解装置と、
    前記予備処理された使用済み雰囲気ガスと一次再結晶焼鈍を行う加熱・均熱帯を含む複数の処理帯又は処理帯間の雰囲気仕切り内から回収した前記とは別途の使用済み雰囲気ガスとを合わせて精製し、H2、不活性ガス及びCOx1%未満(ドライガス換算)からなる再生雰囲気ガスを生産する雰囲気ガス精製装置と、
    再生雰囲気ガスにH2含有ガス、成分調整用不活性ガス及びH2Oを加えて成分調整する加熱・均熱帯向けの雰囲気ガス成分調整装置と、
    を配設したことを特徴とする方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備。
  5. 加熱・均熱帯に供給した後の残余の再生雰囲気ガスにH2含有ガス、成分調整用不活性ガス及びH2Oを加えて成分調整する加熱・均熱帯及び窒化帯を除く1個以上の処理帯向けの雰囲気ガス成分調整装置を配設したことを特徴とする請求項4記載の方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備。
  6. 加熱・均熱帯に供給した後の残余の再生雰囲気ガスにH2含有ガス、成分調整用不活性ガス、H2O及びNH を加えて成分調整する窒化帯向けの雰囲気ガス成分調整装置を配設したことを特徴とする請求項4又は5記載の方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備。
  7. 前記フィルタが微細なステンレス繊維からなる繊維焼結体に襞を持たせ円筒状に加工したものであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか記載の方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備。
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