JP3331096B2 - 磁束密度の高い方向性けい素鋼板の製造方法並びに脱炭焼鈍方法及び脱炭焼鈍設備 - Google Patents

磁束密度の高い方向性けい素鋼板の製造方法並びに脱炭焼鈍方法及び脱炭焼鈍設備

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、磁気特性、なか
でも磁束密度に優れる方向性けい素鋼板の製造方法並び
にこの方向性けい素鋼板の製造時に適用可能な脱炭焼鈍
方法及び脱炭焼鈍設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】方向性けい素鋼板は、変圧器や発電機等
の鉄心として使用されるもので、磁気特性として磁束密
度(800 A/m の磁場の強さでの値B8 で示される。)が
高く、鉄損(1.7 Tの最大磁束密度における50Hzの交番
鉄損値W17/50で示される。)が低いことが必要とされ
る。近年、鋼板表面に局部的に歪を導入したり、溝を形
成する、いわゆる磁区細分化技術が開発され、これによ
って大幅な鉄損の改善が可能となった。そのため、方向
性けい素鋼板の磁気特性に関する研究課題は、磁束密度
の向上に移行しつつある。
【0003】一般に、方向性けい素鋼板の磁束密度を向
上させるためには、製品の結晶方位を(110)〔00
1〕方位、いわゆるゴス方位に高度に集積させる必要が
あり、かかる方向性けい素鋼板のゴス方位の結晶粒は、
製造工程中、最終仕上焼鈍による2次再結晶現象によっ
て得られる。
【0004】この最終仕上焼鈍の2次再結晶の際には、
(110)〔001〕方位結晶粒のみを優先的に成長さ
せて他の方位の結晶粒の成長を抑制する、いわゆる選択
成長をさせる必要があるため、かかる他の方位の結晶粒
の成長を抑制するための抑制剤(インヒビター)をあら
かじめ添加しておくことが必要となる。かくして、この
インヒビターは鋼中で析出分散相を形成し、2次再結晶
の直前まで1次再結晶粒の成長(正常粒成長)を抑制す
ることにより、(110)〔001〕方位結晶粒が優先
的に成長し、磁束密度の優れた材料が得られることにな
る。しかしながら、実際の製造工程上では、結晶方位が
(110)〔001〕方位からずれた粒がしばしば2次
再結晶し、磁束密度の劣化した鋼板が製造される結果と
なっているため、このことが緊急の問題となっていた。
【0005】このように結晶方位が(110)〔00
1〕方位からずれた粒が2次再結晶する理由について
は、発明者らの調査により、2次再結晶のための焼鈍
(最終仕上焼鈍)の際に鋼板表面が酸化し、これによっ
て鋼板表層部のインヒビターが分解・消失するために、
2次再結晶前の状態において鋼板表層部の抑制力が不足
しているためであることが分かった。
【0006】こうした最終仕上焼鈍中における鋼板表層
部のインヒビターの分解・消失を抑える手段としては、
最終仕上焼鈍の前工程である脱炭焼鈍において鋼板表層
部に形成される内部酸化物層(サブスケール)を利用す
ることが考えられる。つまり、鋼板表層部にサブスケー
ルが存在する場合には、この内部酸化物層がO、Mn、Al
といった鋼中成分の拡散の障害物となって酸化を抑え、
インヒビターの分解・消失を抑制できると考えられる。
【0007】このような技術思想に基づいて、発明者ら
は効果的に酸化を抑制するサブスケールの組成を鋭意研
究し、その成果として鋼板最表面のサブスケールの組成
につき、ファイヤライトとシリカとの比を一定範囲に制
御する技術を開発し、先に特開平4−202713号公
報において開示した。
【0008】しかしながら、この技術によってしても、
磁気特性の安定化は十分とはいい難く、磁束密度の高い
方向性けい素鋼の安定生産は望み得なかった。これは、
脱炭焼鈍に供する鋼板表面の適正な履歴及び状態が十分
解明されておらず、さらに、脱炭焼鈍自体も工業的な生
産では連続焼鈍炉が使用されるため、焼鈍雰囲気が十分
に制御できていない点に問題があった。
【0009】詳述すれば、方向性けい素鋼板を脱炭する
際、脱炭焼鈍炉内では、次式(1) ,(2) + H2O →CO + H2 ……(1)Si +2H2O →SiO2+2H2 ……(2) に示される脱炭反応と酸化反応とが起き、水蒸気(H2O
)が消費され、水素(H2)と一酸化炭素(CO)とが発
生する。こうした脱炭反応,酸化反応の進行は、焼鈍雰
囲気中に含有されるH2O 分圧とH2分圧との比である酸素
ポテンシャルP(H2O) /P(H2)によって定められるが、
この酸素ポテンシャルの値は、かかる反応が進行する際
に発生するH2や、消費されるH2O によって変動してしま
う。したがって、良好なサブスケールを得るためには、
酸素ポテンシャルを所定値に制御することが必要である
のに対して、上記した方法では、十分な制御ができてい
なかったのである。
【0010】炉内雰囲気を制御する方法に関し、特開平
1−263216号公報では、特に露点を一定に制御す
るために、炉内に供給するガスを乾燥ガスと定量の水蒸
気を混合して露点を一定化した後、供給する方法を提案
しているが、炉内で消費されるH2O の量及び発生するH2
の量は、上述の反応(1) 、(2) の進行速度により決ま
り、連続焼鈍炉の場合では、反応の前期段階である加熱
ゾーン、中期段階である均熱前期ゾーン、反応の終期段
階である均熱後期ゾーンで大きく異なっている。また、
各ゾーンにおいても、炉長方向では反応段階が異なるた
めにH2O 量及びH2量は微妙に変化している。それゆえ、
所定のP(H2O) /P(H2) 値に制御できないという問題
点があった。
【0011】また、特開平5−148534号公報に
は、炉内に供給するガスのH2流量とこのガスを加湿する
ための水蒸気流量との比を制御したのち、炉内に供給す
る方法が提案されているが、やはり、前述の特開平1−
263216号公報に開示の方法と同様の問題があっ
た。
【0012】さらに、特開平5−247529号公報に
おいては、連続焼鈍炉の炉長方向に複数に分割された各
ゾーンのH2O 分圧を制御する方法が提案されているが、
仮に、各ゾーンのH2O 分圧が一定になったとしても、各
ゾーンではH2が種々の値で発生しているため、H2分圧は
まちまちとなるので、各ゾーンのP(H2O) /P(H2)を一
定値に揃えることはできず、また、炉長方向での変動量
を小さくすることもできなかった。しかも、反応により
発生するCOガスが反応(1) 、(2) へ悪影響を及ぼすこと
も問題となる。
【0013】したがって、磁束密度の高い方向性けい素
鋼板の安定生産を可能にする脱炭焼鈍方法及びこの脱炭
焼鈍を有利に実施するための連続脱炭設備についてもそ
の開発が必要とされていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上述した
実情に鑑み開発されたもので、工業的生産において問題
となる製品の磁束密度の劣化を有利に解決し、安定して
高磁束密度の材料を得ることができる方向性けい素鋼板
の新規な製造方法を、磁束密度の高い方向性けい素鋼板
の安定生産を可能にする脱炭焼鈍方法及びこの脱炭焼鈍
を有利に実施するための連続脱炭設備と共に提案するこ
とを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記
の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、最終冷延圧
延前の鋼板表面に一定量の酸化物を残存させること、脱
炭焼鈍の前処理の洗滌として脱脂処理を行うこと、及び
脱炭焼鈍雰囲気の酸素ポテンシャルの変動を抑え、かつ
十分な脱炭効果が得られるまで酸素ポテンシャルを低下
させることにより、所期した目的が有利に達成されるこ
と、また、脱炭焼鈍の冷却時の雰囲気を中性ガス雰囲気
とすることが前述の目的達成のためにはより好ましいと
の知見を得た。
【0016】さらに、上記のように脱炭焼鈍雰囲気の酸
素ポテンシャルの変動を抑えるためには、加熱領域や均
熱領域の複数領域にて反応ガスの一部もしくは全量を排
出すれば良いことの知見を得た。この発明は、上記の知
見に立脚するものである。
【0017】すなわち、この発明の要旨構成は、次のと
おりである。 (1) C:0.020 〜0.10wt%、Si:1.0 〜5.0 wt%及
びMn:0.05〜2.5 wt%を含み、かつインヒビター成分と
してAl,S,Se及びSbのうちから選ばれる1種又は2種
以上を 0.005〜0.06wt%含有する方向性けい素鋼板用熱
延コイルに、1回又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延
を施して最終板厚とした後、脱炭焼鈍をし、次いで焼鈍
分離剤を鋼板表面に塗布してから最終仕上焼鈍を施す一
連の工程からなる方向性けい素鋼板の製造方法におい
て、 最終冷間圧延前の鋼板表面に、酸素目付量に換
算して0.05〜0.70g/m2(両面)の酸化物を存在させるこ
と、 最終冷間圧延後、脱炭焼鈍前に洗滌処理として
脱脂処理を行うこと、並びに 脱炭焼鈍の際、均熱温
度を 800〜900 ℃とし、この均熱時及び均熱に至る加熱
時における雰囲気中の酸素ポテンシャルP(H2O) /P(H
2)を0.35〜0.50でかつ連続焼鈍炉の炉長方向にて0.05以
内の変動量とし、焼鈍時間を少なくとも鋼板の残留C量
が 20wtppm以下となる時間とすることを特徴とする磁束
密度の高い方向性けい素鋼板の製造方法(第1発明)。
【0018】(2) 第1発明において、上記脱炭焼鈍
の際、均熱に引き続く冷却時の雰囲気を、不可避的不純
物を除いて中性ガス雰囲気とすることを特徴とする磁束
密度の高い方向性けい素鋼板の製造方法(第2発明)。
【0019】(3) 最終冷間圧延を終えた方向性けい
素鋼板を脱炭焼鈍をするにあたり、被処理鋼板の加熱ゾ
ーン、均熱ゾーン及び冷却ゾーンに対応して炉内空間を
区画すると共に、少なくとも均熱ゾーンについては鋼板
通板方向で複数領域に区分した連続焼鈍炉を用い、該加
熱ゾーン及び均熱ゾーンの各領域に供給するガスの H2O
分圧とH2分圧との比P(H2O) /P(H2)を0.35〜0.50の範
囲に調整するとともに、上記加熱ゾーン及び均熱ゾーン
における複数の領域にて反応ガスの一部もしくは全量を
排出することにより、炉内雰囲気ガスの更新を行って、
上記加熱ゾーン及び均熱ゾーンの各領域における雰囲気
ガス中の H2O分圧とH2分圧との比P(H2O) /P(H2)を
長方向での変動量が0.05以下に保持することを特徴とす
る方向性けい素鋼板の連続脱炭焼鈍方法(第3発明)。
【0020】(4) 炉内空間を仕切り壁により、被処
理鋼板の加熱ゾーン、均熱ゾーン及び冷却ゾーンに対応
して区画すると共に、少なくとも均熱ゾーンについては
鋼板通板方向に複数領域に区分し、これら複数領域のそ
れぞれに、ガス組成及びガス流量変更により H 2 O分圧
とH 2 分圧との比P(H 2 O) /P(H 2 )を調整した雰囲気ガス
を供給する経路へ連なるガス導入孔を設けるとともに、
加熱ゾーン、均熱ゾーンにおける複数の領域にそれぞ
、炉内雰囲気ガスの一部又は全部更新することによ
り雰囲気ガス中の H 2 O分圧とH 2 分圧との比P(H 2 O) /P
(H 2 )を所定の値に保持することを可能にするガス排出孔
を設けてなることを特徴とする連続脱炭焼鈍設備(第4
発明)。
【0021】以下、この発明を具体的に説明する。ま
ず、この発明の基礎となった実験及びその結果について
説明する。なお、実験に供した素材には、C、Si及びAl
を含有させたものを用いた。ここにCは、熱延、冷延に
おける組織改善に有用な成分であり、またSiは、電気抵
抗を高めて鉄損を向上させるのに有用な成分であり、さ
らにAlは、インヒビター成分として2次再結晶粒方位の
向上、すなわち磁束密度の向上に有用な成分である。
【0022】実験 C:0.070 wt%、Si:3.35wt%、Mn:0.070 wt%、Al:
0.025 wt%、Se:0.018 wt%及びSb:0.025 wt%を含有
する方向性けい素鋼スラブを11本用意し、これらのスラ
ブを常法により板厚2.2 mmの熱延板に熱間圧延後、1000
℃で30秒間の焼鈍を施し、次いで第1回目の冷間圧延に
より板厚1.5 mmにした後、1100℃で1分間の湿N2−H2
合雰囲気(露点40℃)、つまり弱脱炭雰囲気での焼鈍を
行い、その後15%HCl 水溶液で酸洗を行って鋼板表面の
酸化物を酸素目付量にて0.08〜0.15g/m2(両面)となる
まで除去し、その後、第2回目の冷間圧延によって0.22
mmの最終板厚とした。
【0023】次に、脱炭焼鈍の前処理として表面洗滌
を、15%のNaOH水溶液中でのアルカリ脱脂により行った
後、純水中でブラッシングしながらリンスし、乾燥させ
た。
【0024】これらのコイルを、図1に示す連続焼鈍炉
を用いて脱炭焼鈍に供した。図1の連続焼鈍炉は、処理
しようとする通板コイル1の入口及び出口が、シールロ
ール2により通板可能に気密され、また炉内空間は、し
きり壁3により被処理材の加熱ゾーン、均熱ゾーン及び
冷却ゾーンに対応してそれぞれ、複数領域に区分され、
これら複数領域には、ガス排出孔4及びガス導入孔5が
設けてある。このガス導入孔5は、ガス組成及びガス流
量を変更可能に雰囲気ガスを供給する経路(図示せ
ず。)と接続している。図1の連続焼鈍炉の場合には、
図中番号6が第1加熱ゾーン、7が第2加熱ゾーンであ
り、また、図中番号8…13がそれぞれ第1均熱ゾーン…
第6均熱ゾーンであり、14が第1冷却ゾーン、そして15
が第2冷却ゾーンになっている。なお、図1では炉が具
備するハースロール、ヒータは省略してある。
【0025】このような連続焼鈍炉を用いて、均熱温度
840 ℃への昇温を1分間、均熱時間3分間の脱炭焼鈍を
施すに当たり、区分された各ゾーンへN2,H2及びH2O を
種々の割合にしたガスを供給して、以下に述べるa〜p
の11条件で脱炭焼鈍を行った。なお、いずれの条件も、
冷却ゾーン群のガスは、N2ガスを第2冷却ゾーンから供
給し、第1冷却ゾーンから第2冷却ゾーンにおける供給
流量と同一流量のガスを排出した。この結果、第1、第
2冷却ゾーンのガス雰囲気は、ほぼN2 ガスに保たれ
た。
【0026】条件a、d、e及びfは、加熱ゾーン6、
7と均熱ゾーン8〜13における各ガス排出孔を利用し
て、各ゾーン内を流れるガス流量の20%に相当する流量
(第1加熱ゾーンは100 %に相当する流量)でこれらの
排出孔から炉内ガスを排出しながら、各ゾーンの雰囲気
の酸素ポテンシャルP(H2O) /P(H2)が一定値となるよ
うに供給ガスのH2O 分圧とH2分圧を制御した。かくし
て、加熱、均熱の各ゾーンにおける雰囲気中のP(H2O)
/P(H2)を、条件aは0.55、条件dは0.42、条件eは0.
35、そして条件fは0.30に制御した。
【0027】条件bは、第1加熱ゾーン6、第1均熱ゾ
ーン8、第5均熱ゾーン12及び第6均熱ゾーン13におけ
るガス排出孔を利用して、各ゾーン内を流れるガス流量
の20%に相当する流量(第1加熱ゾーンは100 %に相当
する流量)でこれらの排出孔から炉内ガスを排出しなが
ら、各ゾーンの雰囲気の酸素ポテンシャルP(H2O) /P
(H2)が一定値となるように供給ガスのH2O 分圧とH2分圧
を制御した。かくして、各ゾーンの雰囲気中のP(H2O)
/P(H2)を0.50の一定値に制御した。
【0028】条件cは、第1加熱ゾーン6、第2加熱ゾ
ーン7、第2〜6均熱ゾーン9〜13におけるガス排出孔
を利用して、各ゾーン内を流れるガス流量の20%に相当
する流量(第1加熱ゾーンは100 %に相当する流量)で
これらの排出孔から炉内ガスを排出しながら、各ゾーン
の雰囲気の酸素ポテンシャルP(H2O) /P(H2)が一定値
となるように供給ガスのH2O 分圧とH2分圧を制御した。
かくして、各ゾーンの雰囲気中のP(H2O) /P(H2)を0.
46の一定値に制御した。
【0029】条件g、h、i、j、k及びnは、条件
a、d、e及びfと同様のガス排出方法によって各ゾー
ンの雰囲気の酸素ポテンシャルP(H2O) /P(H2)を制御
したが、条件g、hは、第1均熱ゾーン8及び第2均熱
ゾーン9のP(H2O) /P(H2)が最も高く、その両端のゾ
ーンになる程、低いP(H2O) /P(H2)になるように制御
した(山型パターン)。一方、条件iは、第1均熱ゾー
ン8及び第2均熱ゾーン9のP(H2O) /P(H2)が最も低
く、その両端のゾーンになる程、高いP(H2O) /P(H2)
になるように、また条件jは、第1均熱ゾーン8、第2
均熱ゾーン9及び第3均熱ゾーン10のP(H2O) /P(H2)
が最も低く、その両端のゾーンになる程、高いP(H2O)
/P(H2)になるように、それぞれ制御した(谷型パター
ン)。条件kは、第1加熱ゾーン6から第6均熱ゾーン
13に行くに従い、P(H2O) /P(H2)が低下するように制
御した(頭高パターン)。条件nは、逆に第1加熱ゾー
ン6から第6均熱ゾーン13に行くに従いP(H2O) /P(H
2)が増加するように制御した(尻高パターン)。
【0030】条件mは、全加熱ゾーンと全均熱ゾーンへ
供給するガスについて、H2O 分圧とH2分圧とを一定値
(P(H2O) /P(H2)=0.50)になるように制御してガス
を導入したが、ガス排出孔は第6均熱ゾーン13のガス排
出孔のみを用い、第6均熱ゾーン内を流れるガス流量の
100 %のガスをこの第6均熱ゾーン13のガス排出孔より
排出した。この結果、炉内雰囲気ガスの流れは、第1加
熱ゾーン6から第6均熱ゾーン13への一方向の流れとな
った。
【0031】条件lは、条件mと同様のガス排出条件と
したが、条件mのようにH2O 分圧とH2分圧とを一定値に
制御したガスを導入するのではなく、各ゾーンで消費さ
れたH2O の量と釣り合うH2O 量になるガスを各ゾーンの
ガス導入孔により供給することで全ゾーンを通じてH2O
分圧を一定値に制御したものである。
【0032】条件pは、全加熱ゾーンと全均熱ゾーンへ
供給するガスについて、H2O 分圧とH2分圧とを一定値
(P(H2O) /P(H2)=0.50)になるように制御してガス
を導入したが、ガス排出孔は第1加熱ゾーン6のみを用
い、第1加熱ゾーン内を流れるガス流量の100 %のガス
をこの第1加熱ゾーン6のガス排出孔より排出した。こ
の結果、炉内雰囲気ガスの流れは、第6均熱ゾーン13
から第1加熱ゾーン6への一方向の流れとなった。
【0033】条件oは、条件pと同様のガス排出条件と
したが、条件pのようにH2O 分圧とH2分圧とを一定値に
制御したガスを導入するのではなく、各ゾーンで消費さ
れたH2O の量と釣り合うH2O 量になるガスを各ゾーンへ
のガス導入孔により供給することで全ゾーンを通じてH2
O 分圧を一定値に制御したものである。
【0034】表1に、これらの条件で操業したときの各
ゾーンにおけるP(H2O) /P(H2)の測定値を示す。
【0035】
【表1】
【0036】表1に示すように、各ゾーンにてガス排出
を行い、一定値のP(H2O) /P(H2)に制御した条件a、
d、e及びfについては、加熱ゾーンから均熱ゾーンに
かけてのP(H2O) /P(H2)の変動幅が0.02以内である。
また、第1加熱ゾーン、第1均熱ゾーン、第5均熱ゾー
ン及び第6均熱ゾーンにてガス排出を行い、一定値のP
(H2O) /P(H2)に制御した条件bでは、P(H2O) /P(H
2)の変動幅が0.04以内である。さらに、第1加熱ゾー
ン、第2加熱ゾーン、第2〜6均熱ゾーンにてガス排出
を行い、一定値のP(H2O) /P(H2)に制御した条件cで
は、P(H2O) /P(H2)の変動幅が0.05以内であり、比較
的変動量が小さい。
【0037】これに対して、各ゾーンに供給するガスの
P(H2O) /P(H2)を一定にし、かつガスの排出孔を第6
均熱ゾーンのみ(条件m)もしくは第1加熱ゾーンのみ
(条件p)とした場合は、一定値のP(H2O) /P(H2)に
制御しようとしたにも係わらず、変動幅が条件mでは0.
13、条件pでは0.14もあった。
【0038】また、各ゾーンで消費されたH2O に見合う
量だけ各ゾーンから供給してH2O 分圧を一定に制御する
条件(条件l及びo)では、それぞれ条件lでは0.11、
条件oでは0.09もの変動があった。
【0039】これらの結果から、各ゾーンの雰囲気ガス
のP(H2O) /P(H2)が設定値となるように、各ゾーンへ
供給するガスのH2O 分圧及びH2分圧を制御するととも
に、少なくとも加熱ゾーン群、均熱ゾーン群のうちの2
箇所以上のゾーンにおいて、反応ガスの一部もしくは全
量を排出することにより、P(H2O) /P(H2)の変動の少
ない操業を行うことが可能となったといえる。
【0040】以上述べた脱炭焼鈍を経た各コイルについ
て、酸素目付量と残留C量を調べた。その値を表2に示
す。
【0041】
【表2】
【0042】表2から分かるように、ほぼ同一のP(H
2O) /P(H2)になる雰囲気であっても、条件g、hのよ
うな山型パターンや条件n,o及びpのように第1加熱
ゾーン6から第6均熱ゾーン13に行くに従いP(H2O) /
P(H2)が増加する尻高パターンでは、条件b,c,dの
ようなフラットパターンに比べて酸素目付量が大きい。
これは、鋼板の酸化が進行する際、P(H2O) /P(H2)が
変動すると形成されるサブスケール中の酸化物の分散に
粗い部分が生じ、酸素の拡散が大きくなり、酸化の進行
を促進することを意味している。
【0043】次に、これらのコイルに、5%のTiO2と2
%の Sr(OH)2・8H2Oを含有しMgO を主成分とする焼鈍分
離剤として鋼板表面に塗布した後、コイル状に巻き取っ
て、1200℃までを15℃/hの昇温速度、25%N2−75%H2
混合ガス雰囲気中で昇温し、さらにH2雰囲気下に1200℃
で10h 保持してから降温する、最終仕上焼鈍を施した。
これらのコイルは、未反応の焼鈍分離剤を除去した後、
平坦化処理を兼ねて張力コーティングを塗布焼付けて製
品とした。これらのコイルの磁気特性を表2に併せて示
す。
【0044】表2に示された製品の磁気特性から、脱炭
焼鈍炉内のP(H2O) /P(H2)の加熱〜均熱ゾーンにおけ
る一定化を目的とした条件a〜fに関して、炉内雰囲気
のP(H2O) /P(H2)の平均値と磁気特性との関係を図2
に示す。図2より、P(H2O)/P(H2)が0.35〜0.50の範
囲である場合に、優れた磁気特性が得られることが分か
る。
【0045】次に、炉内雰囲気のP(H2O) /P(H2)がこ
のように0.35〜0.50の範囲になった条件b,c,d,
e,g,h,i,j,k,m,n,o及びpについて、
P(H2O) /P(H2)の炉長方向での変動量と製品の磁気特
性との関係について図3に示す。同図から分かるよう
に、P(H2O) /P(H2)の炉長方向での変動量を0.05以下
と極力軽減した場合に優れた磁気特性が得られた。
【0046】かように炉内雰囲気のP(H2O) /P(H2)が
0.35〜0.50でかつ炉長方向での変動量が0.05以下の場合
に、優れた磁気特性が得られた理由を解明するために、
各条件により脱炭焼鈍を施した後の鋼板を用い、露点20
℃、H275%−NH3 2.0 %(残部N2バランス)の雰囲気の
もと、900 ℃で30分間熱処理することで強制的に酸化や
窒化をさせて鋼板の酸化状況及び窒化状況を調査した。
この調査の結果は、かかる酸・窒化処理によって増加し
た鋼中Nの増量分ΔN(ppm )及び増加した酸素目付量
分ΔO(g/m2)で評価し、これらの値を表2に併記す
る。表2から明らかなように、優れた磁気特性が得られ
た条件b,c,d及びeによる脱炭焼鈍においては、Δ
NやΔOが極めて低く、換言すれば、酸化や窒化が起こ
りにくいサブスケールが得られているといえる。
【0047】方向性けい素鋼板を製造するに際し、最終
仕上焼鈍において鋼板表面が酸化や窒化されると、鋼板
表層部のインヒビターの状態が変化し、そのため酸化の
場合は2次再結晶不良が、また窒化の場合は方位の劣る
2次再結晶の成長が、それぞれ進行することが知られて
いる。したがって、鋼板はできるだけ雰囲気の影響を受
けない不活性状態とすることが好ましい。
【0048】この点、脱炭焼鈍において、P(H2O) /P
(H2)の炉長方向での変動量を0.05以下と極力軽減し、か
つこのP(H2O) /P(H2)の値を0.35〜0.50の範囲で一定
にした場合には、前述のように酸化や窒化が起こりにく
い良好なサブスケールが得られ、二次再結晶の不良が抑
制されることから、優れた磁気特性が得られたものと考
えられる。この発明は、以上の実験結果を基礎にし、そ
の他、種々に具備すべき条件について検討を加えて、完
成させたものである。
【0049】この発明の方向性けい素鋼板の製造方法に
おける第1の要件は、最終冷間圧延前の鋼板表面に、酸
素目付量に換算して0.05〜0.70g/m2(両面)の酸化物を
存在させ、その状態で最終冷間圧延を行うことである。
かかる技術は、酸化物の存在によって、冷間圧延時のロ
ールバイト内に存在する極微量の圧延油溜まりを解消
し、表面性状の優れた冷間圧延板を得ることができ、こ
れにより、脱炭焼鈍によって耐酸化性・耐窒化性に優れ
た保護性の高いサブスケールを得ることができるために
特に有用である。
【0050】第2の要件は、脱炭焼鈍の前処理としての
洗滌に関するものである。通常の前処理としては所定の
酸素目付量を確保するために、特開昭50−71526
号公報に開示されるような酸洗が用いられてきた。しか
しながら発明者らの研究によれば、酸洗による前処理
は、脱炭焼鈍後の酸素目付量の確保という観点からは利
点があっても、サブスケールの耐酸化性・耐窒化性とい
う点では不利で、却って製品の磁気特性を損なうことが
判明した。このような見地から、電解脱脂やアルカリ脱
脂等の脱脂処理が優れていることを見出したのである。
【0051】第3の要件は、脱炭焼鈍に関する規制であ
る。すなわち、既に説明した実験結果に示されるよう
に、脱炭焼鈍の加熱及び均熱時の雰囲気の酸素ポテンシ
ャルP(H2O) /P(H2)を炉長方向で変動量0.05以内の一
定値に制御することがサブスケールの耐酸化性・耐窒化
性の点で優れていることを新規に見出した。なお、従来
の方法においては、一定のP(H2O) /P(H2)値になる雰
囲気ガスを炉内に導いても、脱炭反応、酸化反応の進行
に伴ってH2O が消費され、かつH2が増加すること、しか
も脱炭焼鈍の各段階において反応量が大きく異なるた
め、実際には雰囲気のP(H2O) /P(H2)を各段階で一定
に制御することは不可能であったのは既に述べたとおり
である。この発明により、P(H2O) /P(H2)を一定に制
御することが可能になったことで、耐酸化性、耐窒化性
に優れたサブスケールが得られ、図3に示したように優
れた磁気特性の方向性けい素鋼板が得られる。
【0052】また、かかる炉長方向で一定化されたP(H
2O) /P(H2)については、従来のような高い値ではな
く、0.35〜0.50の範囲といった低い値とする。これによ
り、耐酸化性、耐窒化性に優れたサブスケールが得ら
れ、図2に示したように優れた磁気特性の製品が得られ
る。これは、酸化反応速度を低減することによって緻密
な酸化物の分散相からなるサブスケールが得られるため
である。したがって、脱炭焼鈍の酸化速度は低いほうが
良いが、一定の酸素目付量と脱炭量とを確保するために
は、一定時間以上の焼鈍時間が必要で、この基準として
は、鋼板に残留するC量が20ppm 以下であることが優
れた指標となる。
【0053】また、脱炭焼鈍における均熱温度は、前記
のように脱炭を確保するためには800 ℃以上が必要であ
り、また、逆に900 ℃を超える場合はP(H2O) /P(H2)
の値を如何に低下させても酸化速度が過大となって優れ
たサブスケールが得られないことから、800 〜900 ℃の
範囲とする。
【0054】以上の3条件を充たすことにより、この発
明の目的が達成される。さらに、この発明の目的をより
有利に達成するための好適条件としては、かかる脱炭焼
鈍の冷却時の雰囲気として、中性ガスを用いることがあ
る。詳述すると、鋼板に対して酸化性もしくは還元性の
ガスを冷却時に使用した場合、脱炭焼鈍で生成したサブ
スケールの表面層の酸化物を還元したり、再酸化したり
することから、目的とするサブスケールの性状を変化さ
せる憂いがあるからである(第2発明)。なお、このよ
うに脱炭焼鈍の冷却時の雰囲気を実質的に中性ガス(不
可避的不純物を除いて中性ガス)とするためには、図1
に示した脱炭焼鈍炉を用いる場合にあっては冷却ガスの
排出にあたり冷却ゾーンに供給する中性ガスの供給
流量と同一のガス流量を、均熱帯と冷却帯の境界近傍に
設置した第1冷却ゾーンのガス排出孔を介して排出する
一方、第6均熱ゾーンの炉内ガスの流れを第5均熱ゾー
ンの方向に導くように加熱帯、均熱帯のガスの供給およ
び排出の条件を設定し、均熱ゾーンの炉内ガスが冷却ゾ
ーンに混入することを防止することが望ましい。
【0055】また、かかる方向性けい素鋼板の製造を可
能とする連続脱炭焼鈍方法としては、被処理鋼板の加熱
ゾーン、均熱ゾーン及び冷却ゾーンに対応して炉内空間
を区画すると共に、少なくとも均熱ゾーンについては鋼
板通板方向で複数領域に区分した連続焼鈍炉を用い、該
加熱ゾーン及び均熱ゾーンの各領域に供給するガスのH2
O 分圧とH2分圧との比P(H2O) /P(H2)を0.35〜0.50の
範囲に調整するとともに、図1に示すように加熱ゾーン
及び均熱ゾーンにおける複数の領域にて反応ガスの一部
もしくは全量を排出することにより、炉内雰囲気ガスの
更新を行って、上記加熱ゾーン及び均熱ゾーンの各領域
における雰囲気ガス中の H2O分圧とH2分圧との比P(H
2O) /P(H2)を炉長方向での変動量が0.05以下に保持す
ることが必要である。これは、炉内で起こる脱炭反応及
び酸化反応によって、雰囲気中の H2Oが減少し、かつH2
やCOが増加すること、また、これらの反応が、加熱の後
期及び均熱の前期でもっとも大きいなど、各ゾーンによ
って大きく異なるため、P(H2O) /P(H2)の一定化が極
めて困難であるからである。かくして、かかる制御技術
によってこの発明の目的が達成される(第3発明)。
【0056】さらに、前述の連続脱炭焼鈍操業を可能に
する焼鈍設備について述べる。従来の連続焼鈍炉は、供
給するガスの経路、位置についてのみ注意が払われてお
り、反応ガスの排出経路はなおざりにされていた。すな
わち、連続脱炭焼鈍炉の入口ゾーン、もしくは出口ゾー
ンに排出経路を設けるか、さらに付加する場合において
も均熱ゾーンと冷却ゾーンとの間にガス排出経路を設け
るのみであった。
【0057】この発明の連続焼鈍設備の独創的な点は、
加熱ゾーン、均熱ゾーンにおいて、その両端のゾーンの
みならず、その間のゾーンにもガス排出経路を設けるこ
とにあり(第4発明)、これによって前述したような反
応ガス中のH2O が減少し、かつH2やCOが増加することに
よる炉内ガスのO2ポテンシャルの変動という問題点を一
挙に解決できる点にある。また、この発明の連続焼鈍設
備は、炉長方向における雰囲気ガスのP(H2O) /P(H2)
の一定化というこの発明の目的以外にも、積極的にゾー
ン群においてP(H2O) /P(H2)の値に一定の差異を設け
る(例えば、加熱ゾーン群のP(H2O) /P(H2)を0.35と
し、均熱ゾーン群のP(H2O) /P(H2)を0.40とする)場
合にも、極めて有用であり、かつ制御能力も高い。
【0058】
【発明の実施の形態】次に、この発明に従う、磁束密度
が高く磁気特性に優れた方向性けい素鋼板の製造方法に
おける数値限定理由について説明する。まず第1に、使
用する鋼の成分組成範囲について説明する。
【0059】Cは、0.020 〜0.10wt%とする。Cは、0.
020 wt%よりも少ない場合には、脱炭焼鈍工程までの変
態量が少なく、良好な結晶組織が得られずに磁気特性が
劣化し、逆に0.10wt%より多い含有量では、脱炭性が劣
化するので0.020 〜0.10wt%とする。Siは、1.0 〜5.0
wt%とする。Siは、鋼の電気抵抗を高め、製品の渦電流
損の改善に有効であり、そのためには1.0 wt%以上が必
要であるが、5.0 wt%を超える含有量では、冷間圧延時
の脆化が甚だしくなるので、1.0 〜5.0 wt%とする。Mn
は、0.05〜2.5 wt%とする。Mnは、0.05wt%以上の含有
量が鋼の熱間圧延性を改善するために必要であり、一方
2.5 wt%を超えると脱炭性を阻害するので0.05〜2.5 wt
%とする。
【0060】この他に、インヒビター成分としてAl、
S、Se、Sbのうちから選ばれる成分の1種又は2種を以
上含有させることが必要である。この目的のためには、
インヒビター成分の0.005 wt%以上の含有が必要である
が、0.06wt%を超える含有量では、Al、S又はSeの場合
は析出物の粗大化が生じてインヒビター作用の低下を招
き、またSbの場合は冷間圧延性の劣化を招くので0.005
〜0.06wt%の範囲とする。
【0061】以上述べた成分の含有は、この発明の磁束
密度の高い方向性けい素鋼板を製造する上で必須の成分
であるが、この他に、従来公知の有効成分、例えば0.4
wt%以上のCu、Sn、Mo、As、Te、Bi、P又はBを含有し
ても良い。かかる成分の上限値を規定するのは、この上
限値を超えて含有させた場合、2次再結晶が抑制され、
磁気特性が劣化するからである。
【0062】上記のような成分組成範囲に調整された方
向性けい素鋼板用熱延コイルは、1回もしくは中間焼鈍
を挟む複数回の冷間圧延によって最終板厚とされる。こ
の冷間圧延において、最終冷間圧延前の鋼板表面に適正
量の酸化物を存在させることが必要である。これは、圧
延途中においてロールバイト内に存在する微量なロール
面と鋼板表面との間の圧延油の油溜まりに起因する圧延
後の鋼板表面の不均一形状を低減し、脱炭焼鈍時の酸化
挙動を均一化して、耐酸化性、耐窒化性に優れた対雰囲
気保護性の高いサブスケールを形成させるためである。
【0063】このための酸化物量としては、最終冷間圧
延前の鋼板表面の酸素目付量として0.05〜0.70g/m2(両
面)であることが必要である。すなわち、酸化物量が酸
素目付量で0.05g/m2未満の場合は、圧延ロールバイト中
に不均一に分散して存在する圧延油の存在によって、圧
延後の鋼板表面の形状が不均一となり、脱炭焼鈍後のサ
ブスケールの耐酸化性、耐窒化性が低下するため、磁気
特性が劣化する。一方、0.70g/m2を超える場合は、鋼板
表面の酸化物が不均一に変形し、やはり圧延後の鋼板表
面の形状が劣化する。つまり、鋼板表面の0.05〜0.70g/
m2といった若干の酸化物の存在によって圧延後の鋼板表
面の形状が改善されるのであり、これは、圧延油を伴う
冷間圧延特有の現象である。以上の理由により、最終冷
間圧延前の鋼板表面に酸素目付量として0.05〜0.70g/m2
(両面)の酸化物を存在させることが必要である。この
手段としては、最終冷間圧延前の焼鈍における焼鈍雰囲
気や冷却条件を選定し、かつ焼鈍後の鋼板の酸洗処理や
研削処理によって酸化物の量を制御すればよい。
【0064】なお、酸素目付量OM は、下記式で計算さ
れる。 OM =ρ×t(〔O〕t −〔O〕b )×10-3 ここでρは鋼板の比重(g/cm3 )、tは鋼板板厚(m
m)、〔O〕t は鋼板表面の酸化物も含めた鋼板の酸素
含有量(ppm )、〔O〕b は鋼板表層の酸化物を除去し
たときの鋼板の酸素含有量(ppm )である。
【0065】次に、脱炭焼鈍の前処理としての洗滌を脱
脂処理とする。ここに、酸洗による洗滌の場合には、脱
炭焼鈍時における酸化速度が大きく、脱炭焼鈍後の鋼板
表面のサブスケールの耐酸化性、耐窒化性が低下するた
めに磁気特性が劣化する。したがって、アルカリ脱脂、
有機脱脂、電解脱脂といった脱脂処理がこの発明に適す
る。また、脱脂処理において、ブラシ洗滌及びリンス洗
滌を併用して洗滌効果を高めても良い。さらに、脱脂処
理の前又は後に、圧延残渣物(スカム等)を除去する意
味で軽い酸洗を付加することも可能である。
【0066】最終冷間圧延後の鋼板は、脱炭焼鈍に供す
るが、このときの焼鈍条件を規制する点もこの発明の最
も重要な要件の一つである。すなわち、脱炭焼鈍の酸化
反応で形成されるサブスケールの形成速度を小さく、か
つ鋼板平面に均一かつ時間的にも均一に制御することに
よって、緻密な酸化物の分散相からなるサブスケールが
形成され、次工程の最終仕上焼鈍における耐酸化性、耐
窒化性に優れた脱炭焼鈍板が得られる。
【0067】この目的のためには、脱炭焼鈍の加熱及び
均熱時の雰囲気の酸素ポテンシャルP(H2O) /P(H2)の
変動量を加熱、均熱処理におて0.05以内の一定値に制御
することが必要で、かつこの一定値というのを0.35〜0.
50の範囲という低い値とすることが必要である。このP
(H2O) /P(H2)の変動量が0.05を超える場合及びP(H
2O) /P(H2)の値が0.50を超える場合は、耐酸化性、耐
窒化性に優れたサブスケールが得られず、磁気特性が劣
化する。また、P(H2O) /P(H2)が0.30より低い場合、
一定量の酸素目付量が確保できず、製品のフォルステラ
イト被膜の外観及び密着性が劣化する。
【0068】さらに、一定の酸素目付量と脱炭量とを確
保するためには、脱炭焼鈍の際に一定時間以上の焼鈍時
間が必要であり、この発明においては、鋼板残留C量が
20wtppm 以下となるような焼鈍時間とすることが必要で
ある。焼鈍時間が短く、鋼板残留C量が20wtppm を超え
る場合は、製品の不純物としてのC量が増加し、磁気特
性が劣化するからである。
【0069】また、脱炭焼鈍の温度は、800 〜900 ℃の
範囲とする。脱炭焼鈍温度(均熱温度)が800 ℃に満た
ない場合には、前述の脱炭量が確保できず、一方、900
℃を超える焼鈍温度では、P(H2O) /P(H2)の値の低下
にもかかわらず、酸化速度が過大となり、耐酸化性、耐
窒化性に優れたサブスケールを得ることができない。
【0070】次に、この発明の目的を有利に達成するた
めにの好適条件としては、脱炭焼鈍の冷却時の雰囲気と
して実質的に中性ガスすなわち不可避的不純物を除いて
中性ガスを用いることである。これは、鋼板に対して酸
化性もしくは還元性のガスの場合には、前述のとおり脱
炭焼鈍で生成したサブスケール表面層の酸化物を還元し
たり、再酸化によって酸化物の組成が変化し、所期した
目的が達成できなくなるおそれが高まるからである。
【0071】かかる脱炭焼鈍を可能にする連続脱炭焼鈍
方法としては、炉内空間、なかでも加熱及び均熱領域に
対応する空間が炉長方向で複数に区分された連続焼鈍炉
を用いて、該加熱ゾーン及び均熱ゾーンの各領域に供給
するガスのH2O 分圧とH2分圧との比P(H2O) /P(H2)を
調整するとともに、上記加熱ゾーン及び均熱ゾーンにお
ける複数の領域にて反応ガスの一部もしくは全量を排出
することにより、炉内雰囲気ガスの更新を行うことが必
要である。その理由は、焼鈍過程においては、脱炭反
応、酸化反応の各段階に対応して消費されるH2O の量や
発生するH2やCOの量が異なるので、きめ細かい対応が必
要であるからである。
【0072】なお、加熱領域や均熱領域が分割された連
続脱炭処理炉や、分割された各領域に供給するH2O の分
圧やH2の分圧を制御する方法は従来からなされている技
術であるが、かような従来技術では、炉内雰囲気につい
て一定の酸素ポテンシャルP(H2O) /P(H2)の値を得る
ことができなかったのである。
【0073】したがって、この発明では、各反応によっ
て発生したH2及びCOの一部又は全部を加熱ゾーン及び均
熱ゾーンにおける複数の領域にて排出する点に特徴があ
るということができる。換言すれば、炉内の不要な反応
ガスの排出を、加熱及び均熱領域の両端以外にも、少な
くとも1ゾーン以上において行う点にある。かくして、
脱炭反応、酸化反応の途中段階において生成したH2及び
COの一部又は全部を排出することで除去し、ゾーンへの
供給ガスとの置換を促進することによって、P(H2O) /
P(H2)の一定化が実現できるのである。
【0074】なお、上記のような加熱及び均熱領域にお
ける両端以外のゾーンでの排出ガス量は、当該ゾーン内
を通過するガス流量の5%以上あれば、所期した目的を
十分に達成することができ、より好ましくは、10%以上
である。また、脱炭焼鈍時にガスを排出する排出孔の配
置の好適例としては、加熱後段領域および均熱前段領域
に相当するゾーン群に配置することが最も有効である。
【0075】さらに、このような連続脱炭焼鈍を可能と
する設備については、炉内空間を仕切り壁により、加熱
ゾーン、均熱ゾーン及び冷却ゾーンに対応して区画する
と共に、好ましくは図1に示したように、各ゾーンをそ
れぞれ鋼板通板方向に複数領域に区分し、これら複数領
域のそれぞれに、ガス組成及びガス流量変更によりH 2
O分圧とH 2 分圧との比P(H 2 O) /P(H 2 )を調整した雰囲
気ガスを供給する経路へ連なるガス導入孔を設けるとと
もに、加熱ゾーン、均熱ゾーンにおける複数の領域に
れぞれ、炉内雰囲気ガスの一部又は全部更新すること
により雰囲気ガス中の H 2 O分圧とH 2 分圧との比P(H 2 O)
/P(H 2 )を所定の値に保持することを可能にするガス排
出孔を設ける。かかる設備は、従来の設備が単に反応後
の雰囲気ガスの排出を目的としているのに対し、反応の
途中段階における雰囲気ガスの制御を目的とするもので
あって、過剰なH2及びCOの濃度を低減するのに有効であ
る。また、この発明の設備の排出経路に H2O、H2及びCO
ガスの濃度計やガス流量計を設置して、反応ガスの排出
量を制御することも可能である。
【0076】以上のような脱炭焼鈍後の鋼板は、表面に
焼鈍分離剤を塗布し、2次再結晶と純化焼鈍を兼ねる最
終仕上焼鈍を行い、最終製品とする。なお、必要に応じ
て絶縁コーティングを施し、平坦化処理を行って製品と
することができる。また、鋼板表面に溝を形成したり、
プラズマジェットやレーザーを照射して局部的に歪を与
える方法等での磁区細分化処理を施すことも可能であ
る。
【0077】
【実施例】
実施例1 C:0.073 wt%、Si:3.32wt%、Mn:0.068 wt%、Al:
0.024 wt%、Se:0.020 wt%、Sb:0.030 wt%、Mo:0.
015 wt%及びN:0.008 wt%を含有し、残部はFe及び不
可避的不純物よりなる方向性けい素鋼スラブを11本用意
した。これらのスラブを常法により熱間圧延して2.0 mm
厚の熱間圧延板とした。これらの熱延板を1150℃、露点
40℃の湿N2中で40秒間の熱延板焼鈍及び引き続くミスト
水による冷却速度40℃/sの急冷処理を施したのち、表面
研削により表面酸化物の一部を除去し、酸素目付量とし
て次の条件a〜kの量になる酸化物を鋼板表面に残存さ
せた。
【0078】条件a:1.25g/m2(±0.12g/m2)、条件
b:1.04g/m2(±0.08g/m2)、条件c:0.88g/m2(±0.
06g/m2)、条件d:0.70g/m2(±0.05g/m2)、条件e:
0.51g/m2(±0.04g/m2)、条件f:0.36g/m2(±0.03g/
m2)、条件g:0.18g/m2(±0.03g/m2)、条件h:0.09
g/m2(±0.02g/m2)、条件i:0.05g/m2(±0.01g/
m2)、条件j:0.02g/m2(±0.01g/m2)、条件k:表面
酸化物を完全に除去。これら11種類のコイルを、180 〜
220 ℃の温度で0.26mmの最終板厚まで冷間圧延した。
【0079】次工程の脱炭焼鈍の前処理としての洗滌に
際し、各コイルを2分割し、一方は30%のオルトけい酸
ソーダ中でブラッシングし、脱脂した後、純水中でリン
スし乾燥させた(発明法)。残る一方は15%H2SO4 水溶
液中で酸洗した後、純水中でリンスし乾燥させた(比較
法)。
【0080】これらのコイルを図4に示す連続脱炭焼鈍
炉を用いて840 ℃への昇温時間:30秒、均熱時間:2分
間の脱炭焼鈍を施すに当たり、第1、第2均熱ゾーンの
ガス排出孔を利用して、ゾーン内流量の80%のガスを排
出し、各ゾーンのP(H2O) /P(H2)が一定値となるよう
に供給ガスのH2O 分圧とH2分圧とを制御した。この結
果、各ゾーンのP(H2O) /P(H2)は第1加熱ゾーンで0.
45、第1均熱ゾーンで0.45、第2均熱ゾーンで0.45、第
3均熱ゾーンで0.43〜0.45、第4均熱ゾーンで0.44〜0.
45であった。なお、第1加熱ゾーンと第1冷却ゾーンの
雰囲気ガス排出量はゾーン流量の100 %とし、第1、第
2冷却ゾーンの雰囲気ガスを100 %N2とした。
【0081】脱炭焼鈍後の鋼板の酸素目付量及び残留C
量を表3に示す。また、脱炭焼鈍後の鋼板を用い、900
℃で露点20℃、H275%−NH3 2.0 %(残部N2バランス)
の強制的酸化及び窒化の雰囲気条件下で30分間熱処理
し、鋼板の酸化挙動及び窒化挙動を調査した。この酸・
窒化処理によって増加した鋼中Nと酸素目付量の増加分
を表3に併せて記す。
【0082】
【表3】
【0083】次に、これらのコイルに8%のTiO2と3%
の Sr(OH)2・8H2Oを含有しMgO を主成分とする焼鈍分離
剤を鋼板表面に塗布した後、コイル状に巻き取り、1200
℃までを15℃/hの昇温速度、25%N2−75%H2の混合雰囲
気下で昇温し、さらにH2雰囲気下に1200℃、10h 保持し
た後、降温する最終仕上焼鈍を施した。
【0084】これらのコイルは未反応の焼鈍分離剤を除
去した後、平坦化処理を兼ねて張力コーティングを塗布
焼き付けて製品とした。これらのコイルの磁気特性を表
3に併せて示す。
【0085】表3に示されるように、脱炭焼鈍の前処理
として酸洗処理を施した場合は、酸・窒化処理後におけ
る窒素増加分及び酸素目付量の増加分が大きく、サブス
ケールの耐酸化性、耐窒化性が低く、磁気特性が大幅に
劣化している。これに対して、脱炭焼鈍前処理として脱
脂処理を行った場合においては、圧延前の鋼板表面の酸
化物を酸素目付量にして0.05〜0.70g/m2の範囲に制限し
たときに、サブスケールの耐酸化性、耐窒化性が良好
で、優れた磁気特性が得られている。
【0086】実施例2 表4に示すA〜Hの鋼塊を常法に従い、熱間圧延により
板厚2.0 mmの熱延鋼板とした。これらのコイルに1000
℃、30秒間の熱延板焼鈍を施した後、酸洗により表面被
膜を完全に除去した後、第1回目の冷間圧延を行って1.
40mmの板厚とした。その後1100℃で露点40℃、25%N2
75%H2の雰囲気下で焼鈍を行い、ミスト水で350 ℃まで
40℃/sの冷却速度で急冷した後、20秒間、350 ℃で保持
した後、徐冷した。これらのコイルについて、酸化被膜
を酸素目付量として0.1 〜0.4 g/m2となるように酸化物
を残存させながら酸洗により除去した。
【0087】
【表4】
【0088】次に、これらのコイルを50%の圧下率まで
は温度非制御の冷間圧延で、圧下率50%以上の圧延では
180 〜250 ℃での圧延を行った。この板温制御はロール
クーラントの油量を制御することにより行った。
【0089】その後、これらのコイルを脱脂洗滌したの
ち、レジストインキを部分的に塗布してから電解エッチ
ングすることにより、鋼板の片面に深さ10μm 、幅200
mmの圧延方向に対して直交する方向の溝を、圧延方向の
間隔5mmごとに設けた。この後30%オルトけい酸ソーダ
水中で電解脱脂を行ったのち、各コイルともa,b,c
の小コイルに3分割した。これらの分割コイルは、図4
に示される連続脱炭焼鈍炉を用いて、850 ℃への昇温30
秒間、均熱2分間の脱炭焼鈍を施した。
【0090】この脱炭焼鈍の際、分割コイルa及びbに
ついては、第1、第2均熱ゾーンのガス排出孔を利用し
て、ゾーン内流量の100 %のガスを排出しつつ各ゾーン
のP(H2O) /P(H2)が一定値になるように、供給ガスの
H2O 分圧とH2分圧とを制御した。ただし、分割コイルa
については、第1加熱ゾーンと第1冷却ゾーンの雰囲気
ガス排出量をゾーン流量の100 %とし、第1、第2冷却
ゾーンの雰囲気ガスを100 %N2とした。一方、分割コイ
ルbについては、第1加熱ゾーンと第2冷却ゾーンの雰
囲気ガス排出量をゾーン内流量の100 %とし、第2冷却
ゾーンの雰囲気ガスを100 %N2とした。
【0091】また、分割コイルcについては、各ゾーン
の供給ガスのH2O 分圧とH2分圧とを制御したけれども、
雰囲気ガスの排出孔は第1加熱ゾーンと第2冷却ゾーン
のみを使用し、それぞれにつきゾーン内流量の100 %の
ガスを排出した。また、第1及び第2冷却ゾーンへの供
給ガスは100 %N2とした。
【0092】この結果、各ゾーンのP(H2O) /P(H2)
は、分割コイルaに関して、第1、第2加熱ゾーンで0.
42〜0.43、第1、第2、第3均熱ゾーンで0.42〜0.43、
第4均熱ゾーンで0.43であり、また、分割コイルbに関
しては、第1、第2加熱ゾーンで0.42〜0.43、第1、第
2、第3均熱ゾーンで0.42〜0.43、第4均熱ゾーンで0.
40〜0.43、第1冷却ゾーンで0.28〜0.38であった。さら
に、分割コイルcに関しては、第1加熱ゾーンで0.35〜
0.42、第2加熱ゾーンで0.37〜0.43、第1均熱ゾーンで
0.39〜0.43、第2均熱ゾーンで0.40〜0.43、第3均熱ゾ
ーンで0.43、第4均熱ゾーンで0.43〜0.44となった。こ
れらのコイルの脱炭焼鈍後の鋼板の酸素目付量と残留C
量を表5に示す。
【0093】
【表5】
【0094】次に、これらのコイルに10%のTiO2と1%
のSrSO4 とを含有しMgO を主成分とする焼鈍分離剤を鋼
板表面に塗布した後、コイル状に巻き取り、1200℃まで
15℃/hの昇温速度で昇温し、さらにH2雰囲気下で1200
℃、10h 保持した後、降温する最終仕上焼鈍を施した。
【0095】これらのコイルは、未反応の焼鈍分離剤を
除去したのち、平坦化処理を兼ねて張力コーティングを
塗布焼き付けして製品とした。これらのコイルの磁気特
性を表5に併せて示す。
【0096】表5に示されるように、脱炭焼鈍の昇温時
及び均熱時のP(H2O) /P(H2)の変動量の少ない分割コ
イルa及びbは、優れた磁気特性を示す。また、冷却ゾ
ーンの雰囲気供給ガスを100 %N2とした分割コイルa
は、特に優れた磁気特性を示す。
【0097】
【発明の効果】以上詳細に述べた如く、この発明によれ
ば、最終冷間圧延前の鋼板の表面状態、最終冷間圧延後
の脱炭焼鈍前の前処理方法及び脱炭焼鈍における雰囲気
への制御方法を工夫することにより極めて磁束密度の高
い、優れた製品の方向性けい素鋼板を安定して製造でき
るようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の脱炭焼鈍設備の一例を示す要部説明
図である。
【図2】脱炭焼鈍の際の炉内加熱ゾーン、均熱ゾーンに
おける雰囲気中のP(H2O) /P(H2)の平均値と磁気特性
との関係を示すグラフである。
【図3】脱炭焼鈍の際の炉内加熱ゾーン、均熱ゾーンに
おける雰囲気中のP(H2O) /P(H2)の炉長方向での変動
量と製品の磁気特性との関係について示すグラフであ
る。
【図4】この発明の脱炭焼鈍設備の他の例を示す要部説
明図である。
【符号の説明】
1 通板コイル 2 シールロール 3 しきり壁 4 ガス排出孔 5 ガス導入孔 6 第1加熱ゾーン 7 第2加熱ゾーン 8 第1均熱ゾーン 9 第2加熱ゾーン 10 第3加熱ゾーン 11 第4加熱ゾーン 12 第5加熱ゾーン 13 第6加熱ゾーン 14 第1冷却ゾーン 15 第2冷却ゾーン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山口 広 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 審査官 小柳 健悟 (56)参考文献 特開 平5−247529(JP,A) 特開 平6−336617(JP,A) 特開 平6−336616(JP,A) 特開 平5−263135(JP,A) 特開 平7−41861(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/46 501 C21D 8/12 H01F 1/16

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.020 〜0.10wt%、Si:1.0 〜5.0
    wt%及びMn:0.05〜2.5wt%を含み、かつインヒビター
    成分としてAl,S,Se及びSbのうちから選ばれる1種又
    は2種以上を 0.005〜0.06wt%含有する方向性けい素鋼
    板用熱延コイルに、1回又は中間焼鈍を挟む複数回の冷
    間圧延を施して最終板厚とした後、脱炭焼鈍をし、次い
    で焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布してから最終仕上焼鈍を
    施す一連の工程からなる方向性けい素鋼板の製造方法に
    おいて、 最終冷間圧延前の鋼板表面に、酸素目付量に換算し
    て0.05〜0.70g/m2(両面)の酸化物を存在させること、 最終冷間圧延後、脱炭焼鈍前に洗滌処理として脱脂
    処理を行うこと、並びに 脱炭焼鈍の際、均熱温度を
    800〜900 ℃とし、この均熱時及び均熱に至る加熱時に
    おける雰囲気中の酸素ポテンシャルP(H2O) /P(H2)を
    0.35〜0.50でかつ連続焼鈍炉の炉長方向にて0.05以内の
    変動量とし、焼鈍時間を少なくとも鋼板の残留C量が 2
    0wtppm以下となる時間とすることを特徴とする磁束密度
    の高い方向性けい素鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 上記脱炭焼鈍の際、均熱に引き続く冷却
    時の雰囲気を、不可避的不純物を除いて中性ガス雰囲気
    とする請求項1記載の磁束密度の高い方向性けい素鋼板
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 最終冷間圧延を終えた方向性けい素鋼板
    を脱炭焼鈍をするにあたり、 被処理鋼板の加熱ゾーン、均熱ゾーン及び冷却ゾーンに
    対応して炉内空間を区画すると共に、少なくとも均熱ゾ
    ーンについては鋼板通板方向で複数領域に区分した連続
    焼鈍炉を用い、 該加熱ゾーン及び均熱ゾーンの各領域に供給するガスの
    H2O分圧とH2分圧との比P(H2O) /P(H2)を0.35〜0.50
    の範囲に調整するとともに、 上記加熱ゾーン及び均熱ゾーンにおける複数の領域にて
    反応ガスの一部もしくは全量を排出することにより、炉
    内雰囲気ガスの更新を行って、 上記加熱ゾーン及び均熱ゾーンの各領域における雰囲気
    ガス中の H2O分圧とH2分圧との比P(H2O) /P(H2)を
    長方向での変動量が0.05以下に保持することを特徴とす
    る方向性けい素鋼板の連続脱炭焼鈍方法。
  4. 【請求項4】 炉内空間を仕切り壁により、被処理鋼板
    の加熱ゾーン、均熱ゾーン及び冷却ゾーンに対応して区
    画すると共に、少なくとも均熱ゾーンについては鋼板通
    板方向に複数領域に区分し、 これら複数領域のそれぞれに、ガス組成及びガス流量
    変更により H 2 O分圧とH 2 分圧との比P(H 2 O) /P(H 2 )を
    調整した雰囲気ガスを供給する経路へ連なるガス導入孔
    を設けるとともに、 加熱ゾーン、均熱ゾーンにおける複数の領域にそれぞ
    、炉内雰囲気ガスの一部又は全部更新することによ
    り雰囲気ガス中の H 2 O分圧とH 2 分圧との比P(H 2 O) /P
    (H 2 )を所定の値に保持することを可能にするガス排出孔
    を設けてなることを特徴とする連続脱炭焼鈍設備。
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