JP3329641B2 - 磁気特性及び鋼板端部形状に優れるAl含有方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性及び鋼板端部形状に優れるAl含有方向性電磁鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、変圧器や発電機
の鉄心材料に使用される方向性電磁鋼板の製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】変圧器あるいは発電機などの鉄心材料に
は、特定方向の磁気的性質が優れている方向性電磁鋼板
が用いられる。かかる方向性電磁鋼板は、一次再結晶粒
の成長を抑制するインヒビターと呼ばれる成分を含有さ
せたスラブを、熱間圧延次いで冷間圧延を施して最終板
厚とした後、脱炭焼鈍を施し、次いで鋼板表面に焼鈍分
離剤を塗布してから最終仕上焼鈍を行って製造される。
このような一連の製造工程のなかで最終仕上焼鈍は、脱
炭焼鈍で再結晶した結晶粒の成長をインヒビターで抑制
しつつ特定の結晶方位の粒のみを急激に成長させる、二
次再結晶と呼ぶ現象を利用して結晶方位を揃えること、
さらに高温度域で、インヒビターを分解し、鋼板地鉄中
から排除する純化処理を行うことを特徴としている。
【0003】ここに、インヒビターは、MnS ,MnSeやAl
N 等のような析出物の分散第2相を利用するものであ
り、熱間圧延の前段階で鋼中に固溶させ、熱間圧延によ
り均一微細分散の当該析出物を得ることにより、良好な
インヒビター効果を得る。実際のインヒビターとして
は、上記析出物を単独又は複合して用いるが、AlN を主
インヒビターとして用いる手法は、特公昭46−238
20号公報に示されるように古くから行われている。
【0004】このAlN インヒビターは、最終仕上焼鈍に
おける純化処理により最終的には分解、消失させる必要
があるが、かかる純化処理においても脱N反応は進行し
難い。例えば、特公昭58−32215号公報には、Al
N をインヒビターとしない成分組成の鋼であるが1180℃
で5時間保持する純化処理でも脱N反応が進行し難く、
Nが15ppm 以上鋼中に残留することが記載されている。
そこで上掲特公昭58−32215号公報では、950 〜
1050℃間の昇温速度を低下させることにより、脱N反応
を十分に進行させ、満足できる純化処理を達成する技術
が開示されている。
【0005】このようにして、脱N反応を十分に進行さ
せる純化処理が行われるようになったが、AlN を主イン
ヒビターとするAl含有方向性電磁鋼板は、やはり鋼中に
Nが滞留し易く、このため例えば特開昭62−9661
5号公報の実施例中に1200℃で20時間の処理例が示され
ているように、純化処理には高温、長時間を要すること
が常であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】高温、長時間の最終仕
上焼鈍は、AlN をインヒビターとする鋼において脱N反
応を十分に進行させるために必要であるが、かかる高
温、長時間の最終仕上焼鈍により鋼板は軟化する。この
ためコイル荷重を受けるコイル下端はクリープによる座
屈のために耳歪が発生し、また、コイル上端部はコイル
外、中、内巻部の温度不均一による熱膨張量の不均一に
起因して生じる応力により耳伸びが発生する。つまりい
ずれの場合もコイル幅方向の耳端部における形状不良と
なる。かかる形状不良は片側で50〜100 mmにも達するた
め、著しい形状不良を生じた場合には、スリット製品を
採取した際に大量の不良品発生の原因となる。
【0007】このためコイル幅方向の端部形状不良の改
善が強く望まれていたが、最終仕上焼鈍温度を低下させ
る手法では、前述のように純化不良を招き、製品の磁気
特性を劣化させるという問題を有していた。
【0008】そこでこの発明は、上記の問題を有利に解
決し、製品の磁気特性を劣化させることなく短時間で十
分な純化焼鈍を可能とすることにより、形状不良を極力
軽減した磁気特性及び鋼板端部形状に優れるAl含有方向
性電磁鋼板の製造方法を提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】さて発明者らは、上記の
目的を達成すべく種々の方策を検討したところ、最終冷
延圧延の直前に行う焼鈍において、焼鈍雰囲気の酸素ポ
テンシャルを少なくとも10秒間は0.35以上とすることに
より、従来より低温、短時間の純化処理で十分な脱N処
理が可能であり、よって磁気特性の劣化もないことを新
規に見出し、かかる知見に基づいてこの発明を完成させ
るに至ったのである。かかる新規知見に基づくこの発明
の要旨構成は、次のとおりである。
【0010】Alを含有する方向性電磁鋼板用スラブを熱
間圧延及び冷間圧延により最終板厚となすその最終冷間
圧延直前に焼鈍工程を有し、この冷間圧延の後に脱炭焼
鈍工程、及び二次再結晶処理及び純化処理を兼ねる最終
仕上焼鈍工程を有するAl含有方向性電磁鋼板の製造方法
において、前記スラブ中に0.013 wt%以下のNを含有さ
せること、 前記最終冷間圧延直前の焼鈍の際に、少なく
とも10秒間は30℃以上70℃以下の露点を有する湿潤雰囲
気に鋼板を曝すこと、及び最終仕上焼鈍での純化処理
を、最高到達温度T(℃)と、TないしT−20(℃)の
温度域における熱処理時間t(hr)との関係につき次式 352 −0.3 T≦t≦476 −0.4 T を満たす条件で行うことを特徴とする磁気特性及び鋼板
端部形状に優れるAl含有方向性電磁鋼板の製造方法(第
1発明)。
【0011】Alを含有する方向性電磁鋼板用スラブを熱
間圧延及び冷間圧延により最終板厚となすその最終冷間
圧延直前に焼鈍工程を有し、この冷間圧延の後に脱炭焼
鈍工程、及び二次再結晶処理及び純化処理を兼ねる最終
仕上焼鈍工程を有するAl含有方向性電磁鋼板の製造方法
において、前記スラブ中に0.013 wt%以下のNを含有さ
せること、 前記最終冷間圧延直前の鋼板表面及び表面層
に、それぞれ酸素目付量にして0.03〜0.8 g/m2のサブス
ケール及び0.5 〜40μm 厚の脱珪層を存在させること、
及び最終仕上焼鈍での純化処理を、最高到達温度T
(℃)と、TないしT−20(℃)の温度域における熱処
理時間t(hr)との関係につき次式 352 −0.3 T≦t≦476 −0.4 T を満たす条件で行うことを特徴とする磁気特性及び鋼板
端部形状に優れるAl含有方向性電磁鋼板の製造方法(第
2発明)。
【0012】第1発明又は第2発明において、最終冷間
圧延直前の焼鈍に引き続く酸洗処理を、鋼板温度が70℃
未満に下がらない間に70℃以上の酸洗浴で5〜30秒間行
うことを特徴とする磁気特性及び鋼板端部形状に優れる
Al含有方向性電磁鋼板の製造方法(第3発明)。
【0013】第3発明において、最終冷間圧延直前の焼
鈍の冷却過程で、200 〜500 ℃間に定める冷却停止点ま
でを冷却速度20℃/s以上で冷却し、この冷却停止点到達
時から10〜120 秒間の処理として、当該温度に保持する
か、2℃/s以下の速度で徐冷するか、冷却停止点+35℃
以内で昇温させるかのいずれかの処理を施すことを特徴
とする磁気特性及び鋼板端部形状に優れるAl含有方向性
電磁鋼板の製造方法(第4発明)。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、この発明の基礎となった実
験結果について説明する。 (実験1)Si:3.25wt%、Mn:0.08wt%、Al:0.025 wt
%、Se:0.018 wt%、Sb:0.020wt%及びN:0.008 wt
%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる珪素鋼スラ
ブを1420℃に加熱した後、熱間圧延を施して板厚2.2 mm
の熱延コイルとした。
【0015】かかる熱延コイル(a,bの2コイル)に
つき、コイルaは乾N2(露点−20℃)中で1000℃,均熱
30秒間の熱延板焼鈍を施し、コイルbは湿N2(露点35
℃)中で1000℃,均熱30秒間の熱延板焼鈍を施した。そ
の後、コイルa,bはいずれも酸洗し、1.5 mmの厚みに
冷間圧延した。
【0016】次いで1100℃の中間焼鈍を、コイルaは乾
水素(露点−20℃)中で、bは湿水素中(露点40℃)
で、いずれも在炉120 秒間で行い、酸洗処理の後、200
℃の温間圧延で0.22mmの最終板厚に圧延した。さらに、
これらa,bのコイルに脱炭焼鈍を、850 ℃で均熱120
秒間を湿水素及び窒素中で行った後、2%のSr(OH)2
8H2Oと10%のTiO2とを含有するMgO を焼鈍分離剤として
塗布してからそれぞれを2分割し、コイル状に巻き取っ
た。
【0017】続いて行う最終仕上焼鈍において、各分割
コイルの一方は、850 ℃で20時間をN2中で保持の後、12
00℃までを15℃/hr の昇温速度、25%N2と75%H2の雰囲
気下で昇温し、この1200℃で10時間保持をH2中でした
後、降温した。残る一方のコイルは850 ℃で20時間をN2
中で保持の後、1160℃までを15℃/hの昇温速度、25%N2
と75%H2の雰囲気下で昇温し、この1160℃で8時間保持
をH2中で行った後、降温した。
【0018】これら4コイルは、未反応の焼鈍分離剤を
除去した後、平坦化処理を兼ねて800 ℃で張力コーティ
ングを塗布焼付けて製品とした。これらの製品の磁気特
性と鋼中不純物量、及びコイル幅方向の端部における耳
形状不良部の領域の最大値を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】表1に示されるように、熱延板焼鈍及び中
間焼鈍の雰囲気の露点を高露点としたコイルbにおいて
は、最終仕上焼鈍の温度を1160℃に低下し、かつ時間も
8時間と短縮した条件下においても脱N反応は進行して
おり、磁気特性、コイル端部耳形状の点からも有利であ
る。
【0021】(実験2)実験1と同一の熱延板を用い
て、コイルbと同一条件の冷間圧延工程及び脱炭焼鈍工
程を行い、2%の Sr(OH)2・8H2Oと5%のTiO2を添加し
たMgO を焼鈍分離剤として塗布し、コイル状に巻きとっ
た後、各種ヒートパターンで最終仕上焼鈍を行って、純
化の程度と端部コイル形状不良の程度を調査した。
【0022】最終仕上焼鈍の純化及び耳形状には、温度
と時間の双方が影響を及ぼし、かつヒートパターンには
種々の種類が存在するので、最高到達温度T(℃)と、
それより20℃低いT−20(℃)以上の温度域(T〜(T
−20℃))での熱処理時間t(hr)との関係によって、図
1にまとめた。
【0023】図1より、T乃至T−20(℃)の温度域で
の熱処理時間が476 −0.4 T(hr)を超える場合は、コイ
ル端部形状の劣化が甚だしく、また、352 −0.3 T(hr)
より短い場合は鋼中Nの純化が不良となることがわか
る。したがって、tの値を476−0.4 Tと352 −0.3 T
との間に制御することで、純化にとっても、コイル端部
形状にとっても良好な製品が得られることがわかる。
【0024】(実験3)第3の実験として、かかる良好
な結果が得られるための、最終冷延直前の焼鈍における
雰囲気の露点範囲と必要処理時間について実験により調
べた。すなわち、実験1と同一の熱延板を用いて、乾N2
中で1000℃、均熱30秒間の熱延板焼鈍を施した後、酸洗
し、1.5 mmの厚みに冷間圧延した。この後、コイルから
中間焼鈍用の試験片を多数採取し、二連の炉室からなる
研究用小型炉を用いて1100℃、在炉90秒間の中間焼鈍を
50%H2と50%N2の雰囲気で行った。この時、一室を乾燥
雰囲気(露点−20℃)、他室を湿雰囲気(露点50℃)と
し、それぞれの室における滞在時間を変化することによ
って、湿雰囲気中での滞在時間を0秒間,4秒間,8秒
間,10秒間, 20秒間, 40秒間, 60秒間及び90秒間に変更
した。また、湿雰囲気の炉室での滞在時間を30秒間に固
定し、湿雰囲気の露点を0℃,10℃, 20℃, 30℃, 40
℃, 50℃, 60℃及び70℃と変更した実験も行った。
【0025】中間焼鈍後は酸洗を行い、180 ℃の温度で
の温間圧延により、0.22mmの最終板厚とした。次いでこ
れらの試料に、脱炭焼鈍を湿水素と窒素雰囲気中で850
℃、均熱120 秒間行い、さらに5%TiO2を含有するMgO
を焼鈍分離剤として塗布した後、積層して最終仕上焼鈍
を施した。この最終仕上焼鈍の際は、850 ℃でN2中15時
間保持した後、15℃/hr の昇温速度、25%N2と75%H2
雰囲気下で1160℃まで昇温し、この温度でH2中で10時間
保持した後、降温した。これらの試料の磁気特性と鋼中
のN含有量の分析値を表2、表3に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】表2、表3より、低温度、短時間の最終仕
上焼鈍の純化処理で十分なNの純化を得るには、焼鈍雰
囲気の露点として30〜70℃で、かつ処理時間として10秒
間以上が必要であることがわかる。焼鈍雰囲気の露点を
高めることにより、当然、脱炭が進行し、脱炭焼鈍工程
後の残留Cの低減効果が得られるが、これは最終仕上焼
鈍におけるNの純化促進効果をもたらすものではない。
【0029】かかるNの純化促進効果が得られた機構に
ついて発明者らは鋭意研究を重ねたところ、冷間圧延工
程の焼鈍、より詳しくは最終冷間圧延直前の焼鈍におい
て酸化性雰囲気を使用することによって、鋼板表層部に
脱珪層が形成され、これが脱炭焼鈍時に形成する脱炭焼
鈍サブスケールの質を変化させ、そのために鋼中Alの含
有量が高いにも拘わらず、最終仕上焼鈍中、鋼中へ侵入
するNを抑制し、純化処理における脱Nを促進している
ことがわかった。かかる脱珪層の存在がない場合、最終
仕上焼鈍時における吸N量は最高200 ppm にも及ぶ。こ
れが、Al含有方向性電磁鋼板のNの純化処理を妨げ、結
果として高温、長時間の最終仕上焼鈍を必要としていた
理由であったことが判明した。また、かかる脱珪層の形
成と同時に形成されるサブスケールも脱炭焼鈍時に形成
する脱炭焼鈍サブスケールの質を改善するのに補助的作
用を果たしていることがわかった。
【0030】以上のことから、この発明で上記効果を得
るためには、冷間圧延工程の焼鈍、特に最終冷間圧延直
前の焼鈍(例えば2回冷延法の場合は中間焼鈍、1回冷
延法の場合は熱延板焼鈍)において、鋼板表面層に0.5
〜40μm の脱珪層(鋼中Si含有量に対し、Si濃度の低下
している領域層)存在が必要である。また、さらに、鋼
板表面に0.03〜0.8 g/m2のサブスケールが付加的に存
在していることが好ましい。
【0031】また、かかるサブスケール及び脱珪層は、
当該焼鈍後に行う酸洗によって消失されないことが必要
であり、そのためには、外部スケールのみが迅速に除去
できる酸洗条件が好ましい。
【0032】この条件としては、高温で短時間の酸洗処
理が好ましく、かくして外部スケールのみを優先的に除
去できる。なお、焼鈍の冷却過程から酸洗処理にかけて
鋼板温度を室温まで冷却すると、鋼板の昇温に時間を要
するので、外部スケールと同時にサブスケールや脱珪層
も除去され易くなるので好ましくない。
【0033】こうした高温、短時間の酸洗処理としては
酸洗浴の液温を70℃以上とし、5〜30秒間の短時間で外
部スケールを除去する条件が最適である。また、サブス
ケールの除去を回避するために、ある程度外部スケール
が残存した状態で酸洗処理を終了し、引き続いて残存す
る外部スケールを機械的に除去することも可能である。
すなわち、酸洗液への浸漬により鋼板の外部スケールは
機械的衝撃に対して剥落し易い状態になっている一方
で、サブスケールは機械的衝撃に対して強固に固着して
いるから、例えばブラシがけをすることは、外部スケー
ルのみを択一的に除去するのに有効である。
【0034】なお、ここで云う外部スケールとは、Feの
外部への拡散によって生成した酸化物で、FeO, Fe3O4,
Fe2O3 を称し、サブスケールとは酸素の内部への拡散に
よって生成した酸化物で、SiO2やAl2O3 を主体とした酸
化物を称す。
【0035】次に、製品の磁気特性を向上させる手法と
して特開平 4−83823 号公報に開示されているように、
最終冷間圧延直前の焼鈍において微細炭化物を析出させ
る技術が知られている。
【0036】これは、200 〜500 ℃間の所定冷却停止温
度までを急冷とし、その後、一定時間、徐熱又は温度保
持又は徐冷でもって、一定サイズの微細炭化物を析出さ
せる技術であり、かかる処理によって飛躍的に製品の磁
気特性は向上する。
【0037】しかしながら、この技術は、冷却停止温度
近辺で一定時間滞留させるために酸化性の高い雰囲気で
は鋼板の外部酸化の進行が甚だしく、これにより、酸洗
処理が過剰となり勝ちとなってサブスケールや脱珪層も
除去されてしまう。それ故に、最終仕上焼鈍中での侵窒
を招き、磁気特性が劣化する傾向があった。このような
不利益を、高温短時間の酸洗処理を行うことによって回
避でき、かつ最終仕上焼鈍時の純化処理の低温化、短時
間化を可能とし、コイル端部の耳形状を改善することも
可能となる利益も、もたらされる。
【0038】さらに第3の利益として、焼鈍後の冷却過
程で上記した微細炭化物析出処理を行った場合において
も、高温、短時間の酸洗処理を行えば、鋼板温度を高く
保つことにより炭素の炭化物への凝集が完全に行われ、
磁気特性がさらに向上するという効果が得られる。
【0039】ともあれ、この発明の冷間圧延工程の焼鈍
方法と最終仕上焼鈍方法との組合わせにより、磁気特性
が良好でかつ、コイル端部形状に優れる方向性電磁鋼板
を得ることができる。
【0040】以下、この発明の方向性電磁鋼板の製造方
法を、各構成要件の数値限定理由を含め、より具体的に
説明する。まず、この発明で出発材料とする電磁鋼スラ
ブは、連続鋳造法又は造塊−分塊圧延法によって得られ
た方向性電磁鋼用のスラブを対象とするが、その成分組
成は、次の範囲が好適である。
【0041】Cは、鋼板の結晶組織を改善する有用元素
であるが、0.01wt%未満ではその添加効果に乏しく、一
方0.10wt%を超えると脱炭性が劣化するので、通常は0.
01〜0.10wt%の範囲が好ましい。
【0042】Siは、鋼板の比抵抗を高め鉄損を下げるた
めに必要であるが、2wt%未満ではα−γ変態を生じて
最終仕上焼鈍で結晶方位が揃わず、一方5.5 wt%を超え
ると冷延性が劣化するので2〜5.5 wt%の範囲が好まし
い。
【0043】Mnは、インヒビターとして作用させるため
には少なくとも0.02wt%を必要とし、また、熱間圧延性
を改善するにも有効である。しかし、2.0 wt%を超える
と変態を促進し、最終仕上焼鈍で結晶方位が揃わなくな
るので、通常は0.02〜2.0 wt%程度の範囲とする。
【0044】Alはこの発明のために必須の元素であり、
インヒビター成分として0.01wt%以上含有させることが
必要である。但し、0.04wt%を超えるとAlN の析出物の
粗大化をもたらすので、0.01〜0.04wt%含有させる。
【0045】なお、インヒビターAlN の一方の成分であ
るNは途中工程における窒化処理で含有させることも可
能であるので、含有量の下限は不純物程度でも有効であ
るが、0.013 wt%を超えるとスラブ中に気泡となって存
在し、ふくれの原因となるので上限を0.013 wt%とす
る。
【0046】また、上記した成分の他にインヒビター成
分としてS,Se, Cu, Sn, Sb, Mo,P,Cr, Te, V,B
及びBiのうちから選ばれる1種又は2種以上を少量含有
させることも可能である。
【0047】上記の好適成分組成になるスラブは、ガス
燃焼炉、誘導加熱炉、もしくは両者の併用により、1150
〜1460℃の高温のスラブ加熱に供される。なお、このス
ラブ加熱の前工程として、厚みの低減又は幅の低減の処
理を行うこともできる。
【0048】加熱後のスラブを常法により熱間圧延し、
熱延コイルとする。この熱延コイルは、必要に応じて熱
延板焼鈍を施し、1回もしくは中間焼鈍を挟む複数回の
冷間圧延によって最終板厚とされる。ここに、この発明
における「最終冷間圧延直前の焼鈍」とは、1回冷延法
における熱延板焼鈍や二回冷延法における中間焼鈍のこ
とをいい、少なくとも部分的には再結晶を伴う温度以上
での熱処理であって雰囲気ガスの使用を伴うものを称す
る。また、この発明の「冷間圧延」とは、先に述べた実
験にもあるように、温間圧延を含めて称するものであ
る。この冷間圧延は通常のタンデム機を用いた圧延でも
ゼンジマー機を用いた圧延でも良い。圧延温度も常温か
ら300 ℃までの温間圧延で良いが、温間圧延の方がより
磁気特性上好ましい。
【0049】かかる最終冷間圧延直前の焼鈍において、
少なくとも10秒間は30℃以上、70℃以下の露点を有する
湿潤雰囲気に鋼板を曝すことが必要である。このような
処理によって、鋼板表面にサブスケールを形成させ、か
つ、鋼板表層部に脱珪層を形成させる。かかる鋼板表層
部の組織は脱炭焼鈍時に形成するサブスケールの性状を
変え、最終仕上焼鈍時の雰囲気から鋼中への侵Nを抑制
する作用をもち、この発明の技術の根幹をなす。
【0050】したがって、湿潤雰囲気の露点としては30
〜70℃、処理時間は10秒間以上とする。すなわち、十分
な脱珪層を形成させるという観点からは雰囲気露点にし
て30℃以上、処理時間として10秒間以上を必要とする
が、雰囲気露点が70℃を超えると脱珪層が過剰となり、
脱炭焼鈍における十分なサブスケールの形成が困難とな
る。なお、処理時間の上限については特に定める必要は
なく焼鈍時間すべてにわたって湿潤雰囲気とすることが
可能である。また、このような湿潤雰囲気に鋼板を曝す
処理を、2回冷延法の場合は中間焼鈍以外にも、熱延板
焼鈍にも適用することができ、この場合は、脱珪層の制
御がより容易となり、有利である。
【0051】かかるサブスケール及び脱珪層の形成は最
終冷間圧延の直前の状態で制御されていることが好まし
く、サブスケールの量としては酸素目付量とて0.03〜0.
8 g/m2のサブスケールと、0.5 〜20μm の脱珪層を存在
させていることが好ましい。すなわち、脱珪層が0.5 μ
m よりも薄い場合、脱炭焼鈍で形成されるサブスケール
が粗鬆状態となり、緻密性が失われるため、最終仕上焼
鈍での侵Nが甚大となり、低温短時間での純化処理が不
可能となる。また、逆に脱珪層が20μm よりも厚い場合
は、脱炭焼鈍で形成されるサブスケール量が不足し、最
終仕上焼鈍での鋼中への侵Nを許すことになる。さら
に、サブスケールが0.03g/m2より少ない場合、脱炭焼
鈍で形成されるサブスケールの緻密性が失われる傾向と
なり、最終仕上焼鈍での侵Nを助長し、低温短時間での
純化を妨げる場合が多くなり、逆に0.8 g/m2より多い
場合はやはり、脱炭焼鈍での酸化を抑制し、脱炭焼鈍後
のサブスケール量が不足し、最終仕上焼鈍時の鋼中への
侵Nを許す傾向となる。
【0052】次に、かかるサブスケールを伴う脱珪層を
十分に保持するためには、最終冷間圧延直前の焼鈍に引
き続いて行う酸洗処理に留意することが有利である。す
なわち、酸洗処理を高温短時間とすることにより、サブ
スケールを保持したまま、外部スケールを除去すること
が可能となる。これは、高温短時間の場合、酸洗反応は
鋼板表面層から進行し、しかも、FeO, Fe3O4, Fe2O3
らなる外部スケールは酸に溶解しやすいために、サブス
ケールを侵さずに当該外部スケールを溶解させることが
可能になるのである。これに対して、低温長時間の酸洗
処理では、酸化物の粒界中や地鉄酸化物の境界中へ酸洗
液が侵入して、サブスケールの剥離や脱珪層の腐食が進
行する。
【0053】かかるサブスケール及び脱珪層の保持に好
適な酸洗浴の温度は70℃以上であり、処理時間としては
5〜30秒間である。処理時間が5秒間よりも短いと、外
部スケールの残存量が大きくなり、30秒間よりも長いと
サブスケールの侵食が大きくなる。また、酸洗浴の温度
が70℃より低いと、短時間の酸洗処理によっては外部ス
ケールが除去されないという弊害がある。なお、酸洗浴
の温度の上限は、特に限定しなくても実施可能な限度と
して自ずと定まるが、操業の安定性、安全性の観点から
は90℃程度とするのが好ましい。
【0054】このような酸洗に際する鋼板の降温過程に
おいて、鋼板の温度を酸洗浴の温度より低下させない方
が外部スケールは剥落し易くなる。さらに、外部スケー
ルを酸洗処理で意図的に残存させておき、ブラシ等によ
って機械的に剥落させる方法は、外部スケールが酸浴浸
漬により剥落し易くなっているので、より好適である。
【0055】上述のような酸洗法の技術が有利に適用さ
れる技術として、最終冷間圧延直前の焼鈍の冷却過程
で、鋼板を急冷時効する技術が挙げられる。この急冷時
効する処理を行えば、該処理に伴う酸化及び酸化性の高
い雰囲気における冷却停止点近傍での滞留などにより鋼
板の外部酸化が甚だしいため、通常の酸洗処理では、外
部スケールのみを除去することがでは困難になってく
る。この点、上述のような酸洗法では、急冷時効処理を
行ってもサブスケールや脱珪層が除去されることなく外
部スケールのみを除去することができる。
【0056】かかる急冷時効の処理は、磁気特性の向上
に有利であり、そのための有利な条件としては、まず50
0 〜200 ℃の間の冷却停止点までを20℃/s以上の冷却速
度で急冷し、Cの鋼中過飽和度を高める。かようにCの
鋼中過飽和度を高めるためには、冷却停止点が500 〜20
0 ℃間であることが必要で、500 ℃より高いと、それ以
下の温度域でCは粒界に拡散していき、粒界Fe3C とな
って粗大化してしまい、逆に200 ℃より低いと、Cの拡
散速度が十分でなく、時効処理における微細カーバイト
の析出が十分に得られずに、50Å程度の極微細カーバイ
トの析出に留まってしまう。
【0057】時効処理の温度は冷却停止点近傍の温度域
で十分であり、必ずしも、一定温度に保持する必要はな
く、徐加熱や徐冷でも十分である。前者の場合は35℃以
内の昇温に留めることが必要であり、後者の場合は2℃
/s以下の徐冷とすることが必要である。時効処理の時間
としては、微細カーバイト析出のためには10秒間以上必
要であるが、120 秒間を超えると効果が飽和し、また工
業的に設備が過剰となるので意味がない。
【0058】冷間圧延工程によって最終板厚とされた後
には、脱炭焼鈍によって、脱炭と一次再結晶及び脱炭サ
ブスケールの形成がなされる。脱炭焼鈍は一般に750 〜
950℃の温度域で1〜5分の時間、湿水素と窒素ガスの
雰囲気でなされ、雰囲気の露点としては20〜70℃の値が
常用される。
【0059】脱炭焼鈍後は、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗
布した後、コイル状に巻き取り、最終仕上焼鈍に供され
る。この最終仕上焼鈍は二次再結晶と、高温での純化処
理を兼ねる焼鈍であるが、二次再結晶にかかわる部分に
関しては公知のいかなるヒートパターン及び雰囲気が適
用できる。
【0060】この発明に係わる重要な要件は純化処理に
関する部分であり、最終仕上焼鈍の最高到達温度T
(℃)と、TないしT−20(℃)の温度域における熱処
理時間t(hr)との関係について 352 −0.3 T≦t≦476 −0.4 T を満たすことが必要である。これにより、この発明の特
徴とする磁気特性とコイル端部形状のともに優れる方向
性電磁鋼板が製造できる。
【0061】ここでtが352 −0.3 Tよりも短い場合、
この発明の技術をもってしてもN成分の純化が十分でな
く、逆に476 −0.4 Tよりも大きい場合、コイル端部形
状が従来どおり劣化し、改善効果が得られない。なお、
純化処理における雰囲気としてはH2が最も好ましいが、
Ar雰囲気でも可能であり、また40%以下のN2なら、H2
囲気中に混合して使用しても良い。この最終仕上焼鈍後
の鋼板は必要に応じて絶縁コーティングと平坦化処理が
施され、製品とされる。さらに、かかる方向性電磁鋼板
の製造工程において、磁区細分化処理を施こすことによ
り、より鉄損の低減が可能である。公知のように溝を付
与することによる磁区細分化を行う技術においては、最
終冷間圧延後、脱炭焼鈍前の段階で溝を設ける技術と最
終仕上焼鈍後に溝を付与する技術があり、いずれもこの
発明の方向性電磁鋼板の製造方法に適用できる。また、
パルスレーザー処理、連続レーザー処理、プラズマジェ
ットによって、鋼板に局所的歪を導入する磁区細分化処
理を行う技術においては、最終仕上焼鈍以降の工程にお
いて適用される。
【0062】
【実施例】
(実施例1)連続鋳造によって得たC:0.073 wt%、S
i:3.35wt%、Mn:0.077 wt%、Al:0.023 wt%、Se:
0.016 wt%、Sb:0.025 wt%及びN:0.008 wt%を含有
し、残部は不可避的不純物とFeの組成になる電磁鋼用ス
ラブ4本を常法の熱間圧延により2.0 mmの厚みの熱延コ
イルとした。
【0063】これらの熱延コイルは、1000℃で均熱20秒
の熱延板焼鈍を乾燥N2中で施した後、酸洗し、冷間圧延
により1.5 mmの中間板厚とした。ここで中間焼鈍の条件
として、60秒間の昇温と1100℃で均熱60秒間の熱処理を
行い、冷却条件として350 ℃まで40℃/sの急冷をミスト
水を用いて行った後、350 ℃で30秒間保持した後、80℃
まで徐冷してから、15%HCl 、80℃の酸洗浴に20秒間浸
漬した後、ブラシロールで表面を洗滌した。
【0064】この中間焼鈍の際、C−1,C−2の2コ
イルは、昇温時の雰囲気を45℃の露点、50%H2と50%の
N2の雰囲気で行い、均熱雰囲気は乾燥(露点−5℃)N2
+H2混合雰囲気(50%H2と50%N2) で行った(この発明
に従う焼鈍方法)。またd−1,d−2の2コイルは昇
温、均熱ともに雰囲気を乾燥N2+H2混合雰囲気(50%H2
と50%N2) とした。
【0065】次に最終冷間圧延をゼンジマー圧延機で20
0 ℃の温間圧延で行い0.22mmの最終板厚としたが、圧延
前の各コイルのサブスケールの量と脱珪層の厚みはC−
1がそれぞれ0.12 g/m2 と 12 μm 、C−2が0.08 g/m
2 と16μm ,d−1が0.02 g/m2 と0.4 μm , d−2が
0.02 g/m2 と 0.5μm であった。
【0066】最終冷間圧延後の各コイルは840 ℃で3分
間の脱炭焼鈍を施したが、雰囲気としては55%のH2と露
点46℃、残部N2バランスとした。脱炭焼鈍後は2%の S
r(OH)2・8H2O と5%のTiO2を添加したMgO を焼鈍分離
剤として鋼板表面に塗布し、コイル状に巻きとった後、
最終仕上焼鈍を施した。
【0067】この最終仕上焼鈍の条件としては、C−
1,d−1のコイルはN2中で850 ℃に15時間保持した
後、25%N2と75%H2の雰囲気下に1160℃まで15℃/hr の
昇温速度で昇温し、H2雰囲気で最高到達温度1160℃に10
時間保持(1140 ℃以上の温度域の滞留時間:12時間) し
た後、降温した(この発明に従う焼鈍方法)。一方C−
2,d−2のコイルはN2中で850 ℃に15時間保持した
後、25%N2と75H2の雰囲気下に1200℃まで15℃/hr の昇
温速度で昇温し、H2雰囲気で最高到達温度1200℃に10時
間保持(1180 ℃以上の温度域の滞留時間:13時間) した
後、降温した(従来の方法)。
【0068】これらのコイルは未反応分離剤を除去した
後、平坦化処理を兼ねて張力コーティングを800 ℃で1
分間焼付けて製品とした。かかる製品の磁気特性と鋼中
不純物量及びコイル幅方向の端部における耳形状不良部
の領域の最大値を表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】(実施例2)C:0.04wt%、Si:3.05wt
%、Mn:0.08wt%、Al:0.025 wt%及びN:0.008wt%
を含有し、残部は不可避的不純物とFeからなる電磁鋼ス
ラブ4本を常法の熱間圧延により、2.8 mmの厚みの熱延
コイルとした。これらの熱延コイルは1100℃で均熱60秒
の熱延板焼鈍を行い、引き続きミスト水で100 ℃まで急
冷してから、80℃の15%のHCl 液中で15秒間酸洗した。
【0071】この熱延板焼鈍の雰囲気として、e−1と
e−2は35℃の露点を有するプロパン燃焼ガスを用い
(この発明に従う焼鈍方法)、f−1,f−2は乾燥N2
ガス(比較のための焼鈍方法)を用いた。次に最終圧延
をゼンジマー圧延機にて180 ℃の温間圧延で行い、0.34
mmの最終板厚としたが、圧延前の各コイルのサブスケー
ルの量と脱珪層の厚みはe−1がそれぞれ0.53 g/m2
18μm 、e−2が0.62 g/m2 と25μm であり、f−1が
0.02 g/m2 と0.2 μm 、f−2が0.01 g/m2 と0.2 μm
であった。
【0072】最終冷間圧延後の各コイルは840 ℃で1分
間の脱炭焼鈍を施したが、雰囲気としては55%のH2と露
点20℃、残部N2バランスとした。この脱炭焼鈍後は2%
のSrSO4 と5%のTiO2を添加したMgO を焼鈍分離剤とし
て鋼板表面に塗布し、コイル状に巻きとった後、最終仕
上焼鈍を施した。
【0073】この最終仕上焼鈍の条件としてはe−1、
f−1のコイルはN2中で900 ℃まで30℃/hr の昇温速度
で昇温した後、25%N2と75%H2の雰囲気下に1150℃まで
15℃/hr の昇温速度で昇温し、H2雰囲気で最高到達温度
1150℃、10時間保持(1130℃以上の温度域の滞留時間:
13時間)した後、降温した(この発明に従う焼鈍方
法)。一方e−2、f−2のコイルはN2中で900 ℃まで
30℃/hr の昇温速度で昇温した後、25%N2と75%の雰囲
気下1200℃まで15℃/hr の昇温速度で昇温し、H2雰囲気
で最高到達温度1200℃、10時間保持(1180℃以上の温度
域の滞留時間:12時間)した後、降温した(従来の焼鈍
方法)。
【0074】これらのコイルは未反応分離剤を除去した
後、平坦化処理を兼ねて張力コーティングを800 ℃で1
分間焼付けて製品とした。かかる製品の磁気特性と鋼中
不純物量及びコイル幅方向の端部における耳形状不良部
の領域の最大値を表5に示す。
【0075】
【表5】
【0076】(実施例3)表6に示される組成を有する
電磁鋼スラブA〜Hを常法の熱間圧延により、2.2 mmの
厚みの熱延コイルとした。これらの熱延コイルは酸洗し
た後、冷間圧延により、1.5 mmの中間板厚とした。
【0077】次いで中間焼鈍を行い、その焼鈍条件とし
て、60秒間の昇温と1100℃で均熱60秒間の熱処理を行
い、室温まで40℃/sの速度でミスト水を用いて急冷し
た。ここで焼鈍雰囲気としては露点35℃のN2雰囲気を用
いた。中間焼鈍後は酸洗し、ゼンジマー圧延機で0.21mm
の厚みに圧延して最終板厚とした。最終圧延前のサブス
ケール量と脱珪層の厚みは、鋼Aがそれぞれ0.20 g/m2
と15μm 、鋼Bが0.15 g/m 2 と12μm 、鋼Cが0.18 g/m
2 と13μm 、鋼Dが0.08 g/m2 と8μm 、鋼Eが0.18 g
/m2 と14μm 、鋼Fが0.23 g/m2 と17μm 、鋼Gが0.22
g/m2と18μm 、鋼Hが0.24 g/m2 と18μm であった。
【0078】最終冷間圧延後、各コイルは850 ℃で3分
間の脱炭焼鈍を施したが、雰囲気としては、55%のH2
露点60℃、残部N2バランスとした。次いでこの脱炭焼鈍
後は8%のTiO2を添加したMgO を焼鈍分離剤として鋼板
表面に塗布し、コイル状に巻きとった後、最終仕上焼鈍
を施した。
【0079】最終仕上焼鈍の条件としては850 ℃までN2
中で25℃/hr の昇温速度で昇温した後、25%N2と75%H2
の雰囲気下、1180℃まで15℃/hr の昇温速度で昇温し、
H2雰囲気で最高到達温度1180℃、1時間保持(1160℃以
上の温度域の滞留時間:2.5時間)した後、降温した。
【0080】これらのコイルは未反応分離剤を除去した
後、平坦化処理を兼ねて張力コーティングを800 ℃で1
分間、焼付けて製品とした。かかるこれらの製品の磁気
特性と鋼中N残留量及びコイル幅方向端部における耳形
状不良部の領域の最大値を表6に併せて示す。また、磁
区細分化処理として、プラズマジェットを圧延直角方向
に線状に、また圧延方向において5mmの周期で照射し、
鉄損を測定した。
【0081】
【表6】
【0082】(実施例4)表6の記号Gで示される成分
からなる方向性電磁鋼スラブを6本用意し、熱間圧延に
より板厚2.6 mmの熱延コイルとした。これらのコイルは
1000℃で30秒間の熱延板焼鈍を施した後、酸洗し、1.8
mmの厚さに冷間圧延した。この後、1本目のコイルは11
00℃で60秒間、60%H2 と40%N2 の混合ガスからなる
乾燥雰囲気(露点−12℃)中で中間焼鈍した後、330
℃までミスト水により冷却速度45℃/sで急冷し、引き
続き350 ℃の温度に維持すべく、25秒間加熱保持した
後、100 ℃まで冷却し、15%の濃度で85℃のHCl 浴中に
10秒間通入して酸洗処理を施した(記号g−1)
【0083】残る5本のコイルは1100℃で60秒間、露点
45℃、60%H2 と40%N2 の混合ガスからなる湿潤雰囲
気中で中間焼鈍した後、330 ℃までをミスト水により、
冷却速度45℃/sで急冷し、引き続き350 ℃の温度に維
持すべく、25秒間加熱保持した後、100 ℃まで冷却し、
15%の濃度で85℃のHCl 浴中に通入して酸洗処理を施し
た。この時、1本のコイルは5秒間の酸洗処理を行い
(記号g−2)、他の1本のコイルは15秒間酸洗処理を
行い(記号g−3)、他の1本のコイルは30秒間酸洗処
理を行い(記号g−4)、他の1本のコイルは45秒間酸
洗処理を行い(記号g−5)、残る1本のコイルは10秒
間酸洗処理を行った後ブラシロールで外部スケールを除
去した(記号g−6)。
【0084】次に最終冷間圧延をゼンジマー圧延機で20
0 ℃の温間圧延で行い、0.26mmの最終板厚としたが、圧
延前の各コイルのサブスケールの量と脱珪層の厚みはg
−1が、それぞれ0.01g/m2と0.1 μm (比較例)、g
−2が1.5 g/m2と17μm であり外部スケールが残存し
ており、g−3が0.5 g/m2と16μm であり、g−4
が、0.1 g/m2と14μm であり、g−5が0.01g/m2
11μm であり、これらは外部スケールが完全除去されて
おり、g−6が0.2 g/m2と17μm であり、外部スケー
ルの大半は除去されていた。また、ここでg−2からg
−6までは本発明の実施例である。
【0085】この後、各コイルは脱脂処理を施し、マス
キング剤を鋼板表面に選択的に塗布し、非塗布部分を電
解エッチングすることにより、鋼板表面に深さ25μm 、
幅200 μm で圧延方向から85℃の方向に延びた溝を、圧
延方向における間隔4mmで鋼板表面に設けた。
【0086】この後、脱炭焼鈍として850 ℃で60%
2 、40%N2 、露点45℃の雰囲気下で2分間の焼鈍を
施した。脱炭焼鈍後は2%のSr(OH)2 ・8H2O と5%の
TiO2を添加したMgO を焼鈍分離剤として鋼板表面に塗布
し、コイル状に巻きとった後、最終仕上焼鈍を施した。
【0087】この最終仕上焼鈍の条件としてN2 中で85
0 ℃に25時間保持した後、25%N2と75%H2 の雰囲気
下に1150℃まで12℃/hrの昇温速度で昇温し、H2 雰囲
気で最高到達温度1150℃に5時間保持(1130℃以上の温
度域の滞留時間:8時間)した後、降温した。
【0088】これらのコイルは未反応分離剤を除去した
後、平坦化処理を兼ねて張力コーティングを800 ℃で1
分間焼付けて製品とした。かかる製品の磁気特性と鋼中
不純物量及びコイル幅方向の端部における耳形状不良部
の領域の最大値を表7に示す。
【0089】
【表7】
【0090】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、Alを含有
する方向性電磁鋼板の製造に関し、最終仕上焼鈍の高温
長時間の純化処理に伴うコイル端部の形状劣化を有利に
抑制することができ、磁気特性の上からも形状の点から
も高品質の方向性電磁鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷間圧延工程の焼鈍雰囲気の露点を高めた鋼板
につき、最終仕上焼鈍における最高到達温度(℃)と、
T−20(℃)以上の温度域の熱処理時間t(hr) との変
化によるコイル端部の形状変化と鋼中N残量の変化を調
べた図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−96615(JP,A) 特公 昭58−32215(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/12 C21D 9/46 501 C22C 38/00 303 C22C 38/06 H01F 1/16

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Alを含有する方向性電磁鋼板用スラブを
    熱間圧延及び冷間圧延により最終板厚となすその最終冷
    間圧延直前に焼鈍工程を有し、この冷間圧延の後に脱炭
    焼鈍工程、及び二次再結晶処理及び純化処理を兼ねる最
    終仕上焼鈍工程を有するAl含有方向性電磁鋼板の製造方
    法において、前記スラブ中に0.013 wt%以下のNを含有させること、 前記 最終冷間圧延直前の焼鈍の際に、少なくとも10秒間
    は30℃以上70℃以下の露点を有する湿潤雰囲気に鋼板を
    曝すこと、及び最終仕上焼鈍での純化処理を、最高到達
    温度T(℃)と、TないしT−20(℃)の温度域におけ
    る熱処理時間t(hr)との関係につき次式 352 −0.3 T≦t≦476 −0.4 T を満たす条件で行うことを特徴とする磁気特性及び鋼板
    端部形状に優れるAl含有方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 Alを含有する方向性電磁鋼板用スラブを
    熱間圧延及び冷間圧延により最終板厚となすその最終冷
    間圧延直前に焼鈍工程を有し、この冷間圧延の後に脱炭
    焼鈍工程、及び二次再結晶処理及び純化処理を兼ねる最
    終仕上焼鈍工程を有するAl含有方向性電磁鋼板の製造方
    法において、前記スラブ中に0.013 wt%以下のNを含有させること、 前記 最終冷間圧延直前の鋼板表面及び表面層に、それぞ
    れ酸素目付量にして0.03〜0.8 g/m2のサブスケール及び
    0.5 〜40μm 厚の脱珪層を存在させること、及び最終仕
    上焼鈍での純化処理を、最高到達温度T(℃)と、Tな
    いしT−20(℃)の温度域における熱処理時間t(hr)と
    の関係につき次式 352 −0.3 T≦t≦476 −0.4 T を満たす条件で行うことを特徴とする磁気特性及び鋼板
    端部形状に優れるAl含有方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 最終冷間圧延直前の焼鈍に引き続く酸洗
    処理を、鋼板温度が70℃未満に下がらない間に70℃以上
    の酸洗浴で5〜30秒間行うことを特徴とする請求項1又
    は2記載の磁気特性及び鋼板端部形状に優れるAl含有方
    向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 最終冷間圧延直前の焼鈍の冷却過程で、
    200 〜500 ℃間に定める冷却停止点までを冷却速度20℃
    /s以上で冷却し、この冷却停止点到達時から10〜120 秒
    間の処理として、 当該温度に保持するか、2℃/s以下の速度で徐冷する
    か、冷却停止点+35℃以内で昇温させるかのいずれかの
    処理を施すことを特徴とする請求項3記載の磁気特性及
    び鋼板端部形状に優れるAl含有方向性電磁鋼板の製造方
    法。
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