JPH0931546A - 磁気特性に優れた方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性に優れた方向性けい素鋼板の製造方法

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JPH0931546A
JPH0931546A JP7190431A JP19043195A JPH0931546A JP H0931546 A JPH0931546 A JP H0931546A JP 7190431 A JP7190431 A JP 7190431A JP 19043195 A JP19043195 A JP 19043195A JP H0931546 A JPH0931546 A JP H0931546A
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宏威 石飛
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雅子 久田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 工業的生産においても安定して高磁束密度の
製品を得ることができる方向性けい素鋼板の新規な製造
方法について提案する。 【解決手段】 含けい素鋼スラブに熱間圧延を施し、次
いで1回または中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延によっ
て最終板厚とした後、脱炭焼鈍、そして焼鈍分離剤を塗
布して最終仕上焼鈍を施す一連の工程によって方向性け
い素鋼板を製造するに当たり、最終冷間圧延後の鋼板表
面の算術平均粗さを0.40μm以下に調整し、その後脱炭
焼鈍に先立って、電解脱脂法によって鋼板表面にSiを含
有する電着物が0.1mg/m2以上で付着する洗浄処理を施
し、次いで雰囲気における水素分圧に対する水蒸気分圧
の比を0.30〜0.65に調整して行う前期と、雰囲気におけ
る温度を850 〜950 ℃かつ水蒸気分圧を0.05〜3.0 %に
調整して鋼板表面の酸化物の分解再生成高密度化処理を
行う後期とからなる脱炭焼鈍を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、磁気特性に優れ
た方向性けい素鋼板の製造方法、特に磁束密度の向上に
有利な製造方法に関する。
【0002】方向性けい素鋼板は変圧器や発電機等の鉄
心として使用されるもので、磁気特性として、磁束密度
(磁化力が800 A/m における磁束B8 値で示される) が
高く、かつ鉄損(最大磁束密度1.7 Tおよび周波数50Hz
における1kg当たりの鉄損W 17/50 値で示される) が低
いことが要求される。
【0003】
【従来の技術】近年、方向性けい素鋼板の磁気特性、中
でも鉄損の低減に対して、鋼板表面に局部的に歪みを導
入したり溝を形成して、磁区を細分化する技術が開発さ
れ、これによって大幅な鉄損の改善が可能となった。特
に、この技術は、磁束密度の高い鋼板に適用すると極め
て有効であり、鉄損の低減は磁束密度の向上に併せて達
成されるのである。
【0004】方向性けい素鋼板の磁束密度を向上するに
は、製品の結晶方位を(110)〔001〕方位、いわゆるゴ
ス方位に高度に集積させる必要があり、このゴス方位の
結晶粒は、最終仕上焼鈍において、2次再結晶現象によ
って得られる。従って、2次再結晶では、(110) 001 方
位に近い結晶粒のみを優先的に成長させて他の方位の結
晶粒の成長を抑制する必要があるため、ゴス方位以外の
方位の結晶粒の成長を抑制するインヒビターの添加が必
須である。このインヒビターは、鋼中に析出分散相を形
成し、2次再結晶の直前まで1次再結晶粒の成長(正常
粒成長)を抑制することによって、磁束密度の向上に寄
与するものである。しかし、実際の製造工程では、しば
しば結晶方位が(110) 001 方位からずれた粒が2次再結
晶し、磁束密度の劣化した鋼板が製造されることが問題
となっていた。
【0005】この問題について、発明者らが行った調査
によれば、2次再結晶のための焼鈍(最終仕上焼鈍)に
おいて鋼板表面が酸化し、鋼板表層部のインヒビターを
分解そして消失するために、2次再結晶前に鋼板表層部
における正常粒成長抑制力が不足することが判明した。
【0006】こうした最終仕上焼鈍中の鋼板表層部にお
けるインヒビターの分解そして消失を抑制するには、最
終仕上焼鈍の前工程である脱炭焼鈍において鋼板表面に
形成される酸化物層(サブスケール)を利用することが
考えられる。すなわち、鋼板表面に酸化物層が存在する
場合、この酸化物層が、O,Mn, Alなどの元素の拡散に
対する障害物となれば、これら元素の酸化が抑えられ
て、その結果インヒビターの分解そして消失も抑制され
る。
【0007】この技術思想に基づいて、酸化の抑制に寄
与し得る酸化物層の組成について鋭意検討した結果、鋼
板表面の酸化物層の組成として、ファイヤライトおよび
シリカの比を一定範囲に制御する技術を開発し、特開平
4−20271 号公報において提案した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この技
術によっても、工業的生産における、磁気特性の安定化
は充分とはいい難く、とりわけ磁束密度の高い方向性け
い素鋼板を安定して生産することは困難であった。そこ
で、この発明は、工業的生産においても安定して高磁束
密度の製品を得ることができる方向性けい素鋼板の新規
な製造方法について提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記の問題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、最終冷間圧延後の
鋼板の表面粗さを特定の範囲に調整すること、脱炭焼鈍
に先立って電解脱脂法による洗浄処理を行って鋼板表面
にSiを含有する電着物を所定量以上付着させること、そ
して脱炭焼鈍の雰囲気を制御することによって、磁束密
度の安定した向上が実現するとの知見を得るに到った。
この発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0010】すなわち、この発明は、含けい素鋼スラブ
に熱間圧延を施し、次いで1回または中間焼鈍を挟む複
数回の冷間圧延によって最終板厚とした後、脱炭焼鈍、
そして焼鈍分離剤を塗布して最終仕上焼鈍を施す一連の
工程によって方向性けい素鋼板を製造するに当たり、最
終冷間圧延後の鋼板表面の算術平均粗さを0.40μm以下
に調整し、その後脱炭焼鈍に先立って、電解脱脂法によ
って鋼板表面にSiを含有する電着物が0.1mg/m2以上で付
着する洗浄処理を施し、次いで、雰囲気における水素分
圧に対する水蒸気分圧の比(以下、P(H2O) /P(H2)と
示す)を0.30〜0.65に調整して行う前期と、雰囲気にお
ける温度を850 〜950 ℃かつ水蒸気分圧を0.05〜3.0 %
に調整して鋼板表面の酸化物の分解再生成高密度化処理
を行う後期とからなる脱炭焼鈍を施すことを特徴とする
磁気特性に優れた方向性けい素鋼板の製造方法である。
【0011】次に、この発明の基礎となった種々の実験
結果について説明する。なお、実験に供した素材は、
C,SiおよびAlを必須成分として含有させた。なぜな
ら、Cは熱間圧延および冷間圧延における組織の改善に
有用な成分であり、またSiは電気抵抗を高めて鉄損を向
上させるのに有用な成分であり、さらにAlはインヒビタ
ー成分として2次再結晶粒方位の向上、すなわち磁束密
度の向上に有用な成分であるからである。
【0012】実験1 C:0.065 重量%、Si:3.25 重量%、Mn:0.070重量%,
Al:0.025重量%, Se:0.020重量%およびSb:0.025重量%
を含有する鋼スラブの3本に、それぞれ熱間圧延を施し
た後、1000℃で1分間の熱延板焼鈍を施し、第1回目の
冷間圧延にて1.50mmの板厚としてから、湿N2 雰囲気(
露点40℃) 中で1100℃,60秒間の中間焼鈍を施してミス
ト水を用いて40℃/sの冷却速度で350 ℃まで急冷した
後、350 ℃で20秒間保持したのち、常温まで冷却した。
【0013】次いで、中間焼鈍後に15%のHCl 水溶液に
て酸洗し、180mm 径のワークロールをそなえるゼンジミ
ア圧延機を用いて、0.22mmの最終板厚とした。なお、最
終冷間圧延後のコイルの表面粗さは算術平均粗さで0.30
〜0.35μmであった。
【0014】その後、脱炭焼鈍の前処理として、鋼板の
表面洗浄を行った。すなわち、第1番目のコイルは、15
%NaOH水溶液中に通板してブラッシングを施した後、純
水でリンスし乾燥した。第2番目のコイルは、同じく15
%NaOH水溶液中を通板してブラッシングを施した後、20
%HCl 水溶液中を通板し、その後、純水でリンスし乾燥
した。第3番目のコイルは、a〜jに10分割し、各分割
コイルをオルソ珪酸ソーダ浴中に通板した後、純水でリ
ンスし乾燥した。ここで、オルソ珪酸ソーダ浴中を通板
するに際し、分割コイルa以外の分割コイルには交番電
流を付加して電解脱脂法による鋼板表面の洗浄処理を行
った。なお、分割コイルbには1.0 A/dm 2 の−+の交番
電流を付加し、分割コイルc〜jには、それぞれ0.01,
0.1, 0.5, 1.0, 3.0, 5.0, 8.0, 15A/dm2 の+−の交番
電流を付加した。
【0015】これらの前処理の結果はいずれも、鋼板表
面が清浄なものとなったが、第2番目のコイルは、鋼板
表面が0.2 μm厚にわたり溶損し、第3番目のコイルに
おいて、分割コイルc〜jは鋼板表面にSiを含有する電
着物が付着し、その付着量は、分割コイルcにおいては
0.03mg/m2 、同dにおいては0.06mg/m2 、同eにおいて
は0.10mg/m2 、同fにおいては0.34mg/m2 、同gにおい
ては0.54mg/m2 、同hにおいては1.36mg/m2 、同iにお
いては2.4 mg/m2 、同jにおいては4.0 mg/m2であっ
た。
【0016】さらに、12種類のコイルをそれぞれ2分割
して2組に分け、一方の組の12種類のコイルには、50%
H2および残余N2バランスの雰囲気(露点60℃,P(H2O)
/P(H2):0.39)下にて840 ℃で2分間の連続脱炭焼鈍
を施した。残る組の12種類のコイルには、50%H2および
残余N2バランスの雰囲気(露点60℃)下にて840 ℃で2
分間の連続脱炭焼鈍を行った後、880 ℃で10秒間、露点
−10〜−4℃( H2O分圧:0.25〜0.43%)の乾N2雰囲気
下での熱処理を行った。
【0017】次いで、これらのコイルは5%TiO2と2%
Sr(OH)2 ・8H2O を含有しMgO を主成分とする焼鈍分離
剤を鋼板表面に塗布した後、コイル状に巻き取り、1200
℃まで15℃/hの昇温速度で25%N2と75%H2の混合雰囲気
下で昇温し、さらにH2の雰囲気下で1200℃、10h保持し
た後、降温する最終仕上焼鈍を施した。その後、各コイ
ルにおける未反応の焼鈍分離剤を除去した後、平坦化処
理を兼ねた張力コーティングを鋼板表面に塗布焼付けし
て製品とした。かくして得られた製品コイルの磁気特性
を図1に示す。
【0018】図1に示すように、脱炭焼鈍の前処理とし
て、電解脱脂法を採用しかつ鋼板表面にSiを含有する電
着物を0.1mg/m2以上付着させ、さらに脱炭焼鈍後に熱処
理を施した場合に、磁束密度の高い優れた磁気特性の製
品が得られた。
【0019】また、これらの優れた磁気特性の得られた
理由を解明するために、各々の脱炭焼鈍板を25%N2と75
%H2の混合雰囲気(露点20℃)下で900 ℃,30分間の熱
処理を行って、酸化挙動および窒化挙動を調査した。そ
の結果を、図2に示すように、磁束密度の高い材料が得
られた条件では、鋼板の酸化および窒化が抑制されてい
ることが判明した。すなわち、鋼板表層部での酸化や窒
化が抑制されると、最終仕上げ焼鈍において、鋼板表層
部のインヒビターが良好な状態に維持されることから、
適切な2次再結晶が得られたものと推定される。
【0020】さらに、脱炭焼鈍後に施した熱処理は、後
述するように、鋼板表面の酸化物を分解し、その後細か
い酸化物粒子を再生成することによって、鋼板表面の酸
化物粒子を高密度に分散生成させるため、酸素や窒素の
拡散を抑制する作用を有するところから、鋼板表面の酸
化物の分解再生成高密度化処理と呼称する。
【0021】実験2 実験1と同じ組成を有する鋼スラブの12本に、それぞれ
熱間圧延を施した後、1050℃で1分間の熱延板焼鈍を施
し、第1回目の冷間圧延にて1.40mmの板厚としてから、
25%N2と75%H2の混合雰囲気( 露点45℃) 中で1050℃,
60秒間の中間焼鈍を施してミスト水を用いて40℃/sの冷
却速度で250 ℃まで急冷した後、350 ℃で120 秒間保持
したのち、常温まで冷却した。
【0022】次いで、中間焼鈍後に最終板厚0.19mmまで
の最終冷間圧延を行うに際し、第1番目、第2番目、第
3番目および第4番目のコイルは、中間焼鈍後そのまま
の状態で冷間圧延を行い、第5番目、第6番目、第7番
目および第8番目のコイルは、15%のHCl水溶液中に
通板してスケール表層を除去した後冷間圧延を行い、そ
して第9番目、第6番目、第10番目、第11番目および第
12番目のコイルは、表面研削機で約0.1 mmの間隔で鋼板
表面の酸化物層の全てを幅1000 mm にわたり除去した
後、冷間圧延を行った。
【0023】なお、冷間圧延はゼンジマー圧延機にて、
第1番目、第2番目、第5番目、第6番目、第9番目、
第10番目のコイルは250 mm径のワークロールを用いて行
い、残りのコイルは150 mm径のワークロールを用いて行
った。さらに、第1番目、第3番目、第5番目、第7番
目、第9番目および第11番目のコイルの圧延に際して、
高粘度系の圧延油を用い、残りのコイルの圧延は低粘度
系の圧延油を用いた。
【0024】最終冷間圧延後の鋼板表面の平均粗さは、
第1番目のコイルが0.74μmRa 、第2のコイルが0.68
μmRa 、第3番目のコイルが0.62μmRa 、第4番目
のコイルが0.56μmRa 、第5番目のコイルが0.39μm
a 、第6番目のコイルが0.35μmRa 、第7番目のコ
イルが0.31μmRa 、第8番目のコイルが0.27μm
a 、第9番目のコイルが0.52μmRa 、第10番目のコ
イルが0.44μmRa 、第11番目のコイルが0.37μm
a 、第12番目のコイルが0.33μmRa であった。
【0025】これら12種類のコイルをさらに2分割して
2組に分け、脱炭焼鈍の前処理として、一方の組の16種
類のコイルは、15%NaOH水溶液中でアルカリ脱脂後に純
水でのリンスを行い、残る組の16種類のコイルには、オ
ルソ珪酸ナトリウム浴中を通板する際に、−+−+の交
番電流を流して電解脱脂を行って、1.0 〜2.5 mg/m2のS
iを含有する電着物を鋼板表面に付着させた後、純水で
のリンスを行った。
【0026】その後、各コイルは45%H2および残余N2
ランスの雰囲気(露点60℃)下で850 ℃,2分間の脱炭
焼鈍と、引続く同一連続焼鈍炉内での65%H2および残余
N2バランスの雰囲気(露点−5〜5℃,H2O 分圧:0.46
〜0.86%)下で860 ℃,15秒間の連続焼鈍を行った。
【0027】次いで、これらのコイルは10%TiO2および
3%Sr(OH)2 ・8H2O を含有しMgOを主成分とする焼鈍
分離剤を鋼板表面に塗布した後、コイル状に巻き取り、
850℃で35時間N2中で保持した後、15℃/hの昇温速度で2
5%N2および75%H2の混合雰囲気下で1200℃まで昇温
し、さらにH2の雰囲気下で1200℃、10h保持した後、降
温する最終仕上焼鈍を施した。その後、各コイルにおけ
る未反応の焼鈍分離剤を除去した後、平坦化処理を兼ね
た張力コーティングを鋼板表面に塗布焼付けして製品と
した。かくして得られた製品コイルの磁気特性を図3に
示す。
【0028】図3から、最終冷間圧延後の鋼板表面の表
面粗さを0.40μmRa 以下とし、、また脱炭焼鈍の前処
理として電解脱脂法を採用しかつ鋼板表面にSiを含有す
る電着物を付着させた場合に、磁束密度の高い優れた磁
気特性の製品が得られたことがわかる。
【0029】また、優れた磁気特性が得られた理由を解
明するために、各々の脱炭焼鈍板を25%N2と75%H2の混
合雰囲気(露点20℃)下で900 ℃,30分間の熱処理を行
って、酸化挙動および窒化挙動を調査したところ、実験
1と同様に磁束密度の高い材料が得られた条件では、鋼
板の酸化および窒化が抑制されていた。
【0030】実験3 実験1と同じ組成を有する鋼スラブに、熱間圧延を施し
た後、1050℃で1分間の熱延板焼鈍を施し、第1回目の
冷間圧延にて1.40mmの板厚としてから、25%N2と75%H2
の混合雰囲気( 露点45℃) 中で1050℃,60秒間の中間焼
鈍を施してミスト水を用いて40℃/sの冷却速度で300 ℃
まで急冷した後、300 ℃で60秒間保持したのち、常温ま
で冷却した。その後、15%HCl 水溶液での酸洗により、
鋼板の外部スケールを除去した。その後、200 mm径のロ
ールをそなえるゼンジミア圧延機を用いて、0.19mmの最
終板厚とした。なお、最終冷間圧延後の鋼板の表面粗さ
は0.25〜0.30μmRa であった。
【0031】次に、脱炭焼鈍の前処理として、オルソ珪
酸ナトリウム水溶液中での電解脱脂を行って、Siを含有
する電着物を0.4 〜1.0mg/m2付着させた後、このコイル
を8分割して、雰囲気のP(H2O) /P(H2)を種々に変化
して850 ℃で2分間の脱炭焼鈍を施した。
【0032】すなわち、H2とN2の混合比率を変え、かつ
雰囲気の露点を変化することによりP(H2O) /P(H2)
を、0.05, 0.15, 0.20, 0.30, 0.45, 0.55, 0.65, 0.70
および0.75とした雰囲気において、それぞれ脱炭焼鈍を
施した。これら8種類のコイルは、60%H2および残余N2
バランスの雰囲気(露点6〜8℃,H2O 分圧0.92〜1.06
%) 下で870 ℃,20秒間の連続焼鈍を行った。
【0033】次に、これらのコイルは10%のTiO2および
3%のSr(OH)2 ・8H2O を含有するMgO を焼鈍分離剤と
して鋼板表面に塗布した後、コイル状に巻き取り、850
℃で15時間N2中で保持した後、15℃/hの昇温速度で25%
N2と75%H2の混合雰囲気下で1200℃まで昇温し、さらに
H2の雰囲気下で1200℃、10h保持したのち降温する、最
終仕上焼鈍を施した。その後、各コイルにおける未反応
の焼鈍分離剤を除去した後、平坦化処理を兼ねた張力コ
ーティングを鋼板表面に塗布焼付けして製品とした。か
くして得られた製品コイルの磁気特性を図4に示すよう
に、脱炭焼鈍の雰囲気におけるP(H2O) /P(H2)を0.30
〜0.65とすることにより、磁束密度の高い優れた磁気特
性が得られた。
【0034】また、これらの優れた磁気特性の得られた
理由を解明するために、各々の脱炭焼鈍板を25%N2と75
%H2の混合雰囲気(露点20℃)下で900 ℃,30分間の熱
処理を行って、酸化挙動および窒化挙動を調査したとこ
ろ、実験1と同様に磁束密度の高い材料が得られた条件
では、鋼板の酸化および窒化が抑制されていた。
【0035】実験4 次に、脱炭焼鈍に引続く鋼板表面の酸化物に対する分解
再生成高密度化処理について、その最適条件を調査し
た。実験1と同じ組成の鋼スラブを熱間圧延によって2.
0 mmの板厚のコイルとし、湿N2雰囲気(露点35℃)で11
50℃,1分間の熱延板焼鈍を施してから、ミスト水を用
いて平均冷却速度40℃/sで室温まで冷却した後、15%の
HCl 水溶液での酸洗により、鋼板の酸化物表層を除去し
た。
【0036】このコイルを200mm 径のワークロールを有
するゼンジミア圧延機によって、0.26mmの最終板厚まで
冷間圧延した。なお、冷間圧延後の鋼板の表面粗さは、
0.28〜0.32μmRa であった。
【0037】次に脱炭焼鈍の前処理として、オルソ珪酸
ナトリウム水溶液中での電解脱脂を行って、Siを含有す
る電着物を0.5 〜0.8mg/m2付着させた後、55%H2および
残余N2の雰囲気(露点65℃)下で850 ℃,100 秒間の脱
炭焼鈍を施した。このコイルを131 分割し、それぞれの
コイルに、以下に示す種々の熱処理を施した。
【0038】〔熱処理雰囲気の条件〕分割したコイルの
うち40コイルに対して、870 ℃,20秒間の熱処理を、そ
れぞれ100 %H2ガスにH2O を含有させたもの、75%H2
よび25%N2ガスにH2O を含有させたもの、50%H2および
50%N2ガスにH2O を含有させたもの、そして25%H2およ
び75%N2ガスにH2O を含有させたもの、100 %N2ガスに
H2O を含有させたものによる雰囲気で行った。なお、含
有させたH2O の量は、ガス分圧で0.01%,0.03%, 0.05
%, 0.1 %, 0.5 %, 3.0%, 5.2 %そして12%とし
た。
【0039】かかる熱処理後に、この熱処理を施さない
1コイルを含めた41コイルについて、10% TiO2 および
4%Sr(OH)2 ・8H2O を含有するMgO を主成分とする焼
鈍分離剤を鋼板表面に塗布した後、コイル状に巻き取
り、N2中で840 ℃,40h保持した後、15℃/hの昇温速度
で25%N2および75%H2の混合雰囲気下で1200℃まで昇温
し、さらにH2の雰囲気下で1200℃, 10h保持した後降温
する、最終仕上焼鈍を施した。
【0040】その後、各コイルにおける未反応の焼鈍分
離剤を除去した後、平坦化処理を兼ねた張力コーティン
グを鋼板表面に塗布焼付けして製品とした。かくして得
られた製品コイルの磁気特性を図5に示す。なお、かか
る熱処理を行わなかった製品の磁束密度は、B8 値で1.
865 Tであった。図5から、高磁束密度の製品を得るた
めには、N2とH2との混合比に拘わらず、H2O の含有量を
0.05〜3.0 %とする必要があることがわかる。
【0041】〔熱処理の温度と時間の条件〕分割した残
りの90コイルを用いて、40%N2および60%H2の混合雰囲
気中にH2Oを1.8 %含有させた雰囲気にて熱処理を行っ
た。ここで熱処理は、温度を800, 825, 850, 875, 900,
925, 950, 975, 1000℃の9水準および時間を2,3,
5,10, 15, 20, 30, 40, 50, 60秒間の10水準として、
それらを組合わせて行った。
【0042】かかる熱処理の後、これら90種類の分割コ
イルは10%TiO2および4%Sr(OH)2・8H2O を含有するM
gO を主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布した
後、コイル状に巻き取り、N2中で840 ℃,40h保持した
後、15℃/hの昇温速度で25%N2および75%H2の混合雰囲
気下で1200℃まで昇温し、次いでH2の雰囲気下で1200℃
まで昇温し、さらにH2の雰囲気下で1200℃,110 h保持
したのち降温する、最終仕上焼鈍を施した。
【0043】その後、各コイルにおける未反応の焼鈍分
離剤を除去した後、平坦化処理を兼ねた張力コーティン
グを鋼板表面に塗布焼付けして製品とした。かくして得
られた製品コイルの磁気特性を図6に示すように、温度
および時間の最適条件は、850 〜950 ℃で5〜40秒間の
範囲であることがわかる。
【0044】また、各々の脱炭焼鈍板を25%N2と75%H2
の混合雰囲気(露点20℃)下で900℃,30分間の熱処理
を行って、酸化挙動および窒化挙動を調査したところ、
実験1や2と同様に、磁束密度の高い材料が得られた条
件では、鋼板の酸化および窒化が抑制されていた。
【0045】さらに、脱炭焼鈍板に0.05〜0.35%のH2O
分圧の雰囲気で熱処理を施すと、酸化および窒化が抑制
される理由を詳細に調査するため、鋼板断面のSEM 写真
を観察したところ、この熱処理によって鋼板表層部に存
在するファイヤライト(Fe2SiO4) が、次式(1) に示す反
応に従って分解し、シリカ(SiO2)の微細粒が高密度に生
成していることがわかった。
【数1】 Fe2SiO4Si →2SiO2+2Fe -----(1)
【0046】すなわち、図7(a) に示すように、脱炭焼
鈍板上に生成する酸化物はその表面側にファイヤライト
および地鉄側にシリカがそれぞれ生成するのが一般であ
る。特に、ファイヤライトは酸素分圧の高い表面側に生
成するため、同図に示すように、粗い粒子として形成さ
れる。
【0047】ここで、H2O 分圧が0.05〜3.0 %の雰囲気
で熱処理を行うと、図7(b) に示すように、ファイヤラ
イトの一部がシリカと鉄と酸素に分解し、酸素が鉄中に
溶存する微量Siと結合してさらにシリカを生成する。こ
れら分解して生成するシリカおよび鉄中に溶存する微量
Siと結合して生成するシリカは、極めて微細な粒子であ
り、しかも高密度でサブスケール中に存在するため、サ
ブスケールを介しての酸素の拡散や窒素の拡散を妨げる
作用が大きい。このため、鋼板は最終仕上焼鈍中の酸化
や窒化から保護されることになり、インヒビターの初期
状態が2次再結晶まで維持され、良好な磁気特性が得ら
れたものである。そこで、かかる熱処理を、鋼板表面の
酸化物の分解再生成高密度化処理と呼称する。
【0048】この鋼板表面の酸化物の分解再生成高密度
化処理によって微細なシリカ粒子を酸化物内に高密度に
生成させるには、十分なファイヤライト粒子がかかる処
理の前に存在することが必要である。すなわち、最終冷
間圧延後の鋼板の表面粗さを0.40μmRa 以下とするこ
と、脱炭焼鈍の前処理として電解脱脂法によって鋼板表
面にSiを含有する電着物が0.1mg/m2以上で付着する洗浄
処理を施すことおよび脱炭焼鈍の前期においてP(H2O)
/P(H2)を0.30〜0.65とすることは、いずれも、脱炭焼
鈍で形成される酸化物中のファイヤライトを増加させる
作用があることが、新たに判明した。
【0049】また、酸化物の分解再生成高密度化処理の
条件として、温度が低すぎる場合や時間が短かすぎる場
合は、ファイヤライトの分解および微細シリカの再生成
の反応の進行が遅く、逆に、温度が高すぎる場合は、フ
ァイヤライトの分解によって再生成されるシリカの粒子
径が粗大となってサブスケールの酸化および窒化抑制作
用が十分に機能しなくなる。一方、処理時間が長過ぎる
場合は、ファイヤライトが完全に分解して、消滅する結
果、最終仕上焼鈍時に、焼鈍分離剤中のMgO と反応して
次式(2) に示すオリビン形成の反応が抑制され、磁気特
性が劣化することになる。
【数2】 2x MgO + Fe2SiO4 → (Mgx Fe1-x )2SiO4+2xFeO -----(2)
【0050】なお、脱炭焼鈍板に非酸化性雰囲気で890
〜1050℃で加熱焼鈍処理を施す技術について、特公昭54
−24686 号公報に開示されているが、ここに示された雰
囲気は、Siに対しても非酸化性であり、H2O 分圧は0.01
%以下である。そして、熱処理温度も890 ℃以上と高
く、またサブスケール中の酸化物であるファイヤライト
やシリカに関する記載はなく、従って微細SiO2を分散再
生成させる技術である、この発明とは異なる技術であ
る。
【0051】また、特公昭57−1575号公報には、脱炭焼
鈍を前半と後半に分け、後半の雰囲気のP(H2O) /P(H
2)を前半より低下させる脱炭焼鈍技術が開示されている
が、これはP(H2O) /P(H2)のレベルを変えて生成する
酸化物を変更するものであり、従って、H2とH2O の分圧
の比率が問題となる。すなわち、H2O の分圧を一定値以
下に制御してファイヤライトを分解してシリカを再生成
する、この発明とは本質的に異なるものであり、両者の
相違は、例えば100 %N2の雰囲気中に微量のH2O が含有
される場合についての適合性を評価すれば明白である。
さらに同公報には、サブスケール中の酸化物であるファ
イヤライトやシリカに関する記載はなく、ファイヤライ
トを増加させる処理およびシリカの微細分散を図ること
の示唆もない。
【0052】上述したとおり、この発明は、方向性けい
素鋼板の製造工程において、最終冷間圧延後の鋼板の表
面粗さを適正に調整し、次いで脱炭焼鈍の前処理とし
て、電解脱脂法によって鋼板表面にSiを含有する電着物
が0.1mg/m2以上で付着する洗浄処理を施し、脱炭焼鈍
前、後期の雰囲気のP(H2O) /P(H2)を所定量の範囲と
し、かつ後期の雰囲気中のH2O 分圧を所定量以下としか
つ温度を所定の温度範囲とすることで、脱炭焼鈍後の鋼
板表面の酸化物の分解微細分散再生成を促進し、最終仕
上焼鈍中の鋼板の酸化および窒化を抑制し、最終的に製
品の磁束密度を向上させるものである。
【0053】ここで、この発明の素材成分は、方向性け
い素鋼の一般に従うものであり、例えば以下に示す成分
組成が有利に適合する。 C:0.020 〜0.10重量% Cは、熱間圧延および冷間圧延における組織改善に有用
な成分であり、この効果は含有量が0.020 重量%に満た
ないと得られない。一方、0.10重量%をこえると、脱炭
不良となり磁気特性の劣化を招くため、C量は0.020 〜
0.10重量%の範囲に限定した。 Si:1.0 〜5.0 重量% Siは製品の電気抵抗を高め渦電流損を低減させる上で重
量な成分で、この目的のためには1.0 重量%以上は必要
であるが、一方5.0 重量%をこえると冷間圧延性が劣化
するため、1.0 〜5.0 重量%の範囲に限定した。 Mn:0.05〜2.5 重量% Mnは後述するインヒビター形成成分であり、さらに熱間
圧延性を高めるために必要な成分でもあり、このために
は、0.05重量%以上を必要とするが、一方2.5重量%を
こえると脱炭が困難となるため、0.05〜2.5 重量%の範
囲に限定した。
【0054】次に、インヒビター形成成分としては、上
記のMnのほか、Al, SまたはSeを0.005 〜0.04重量%の
範囲で含有する。すなわち、Al, SまたはSeは、AlN, M
nSまたはMnSeとして鋼中に微細析出してインヒビターを
形成するのに必要であり、これらのうち1種または2種
以上の含有が必要である。この目的のためには、0.005
重量%以上の含有が必要であるが、0.04重量%をこえる
と、微細に分散析出させることが困難となってインヒビ
ターの機能が低下するため、0.005 〜0.04重量%の範囲
で含有する。なお、2種以上を含有させる場合は、個々
の成分を0.005 〜0.04重量%の範囲に制限することが好
ましい。
【0055】その他、必要に応じて、インヒビター成分
として、Ge, P,V,Sn, Sb, Bi,BおよびNを0.005
〜0.040 重量%、SnおよびSbを0.005 〜0.2 重量%、Bi
およびBを0.0003〜0.0100重量%の範囲で添加すること
が好ましい。なお、Nは製造工程の途中において窒化す
ることによって添加することも可能である。さらに、熱
間圧延性を改善するために、Moを0.05重量%までの範囲
で含有することもできる。
【0056】
【発明の実施の形態】次に、この発明に従う製造方法に
ついて詳しく述べる。上記好適成分組成になる鋼スラブ
は、従来用いられている製鋼法で得られた鋼を鋳造して
得られ、必要に応じて再圧延を行い、次いで熱間圧延に
よって熱延コイルとする。かかる熱延コイルは、1回も
しくは中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延によって最終板
厚とするが、この最終冷間圧延後の鋼板の表面粗さを0.
40μmRa 以下に調整することが、この発明の必須要件
である。これは、冷間圧延前の鋼板表面の酸化物層の除
去量、圧延機のワークロール径、圧延油の粘度あるいは
圧延速度などを変更することにより達成される。
【0057】ここに、鋼板表面の平均粗さが0.40μmR
a をこえると、脱炭焼鈍の前期において形成される酸化
物中のファイヤライトの含有量が低下し、脱炭焼鈍後期
での酸化物の分解再生成高密度化処理の効果が得られな
い。
【0058】最終冷間圧延後の鋼板表面の酸化物は、最
終冷間圧延前の焼鈍後の表面スケールを除去する際、そ
の除去量を変えることにより行われる。また、除去の手
段は、酸洗や研削など従来公知の方法を用いることがで
きる。最終冷間圧延後のコイルは、次に脱炭焼鈍に供す
るが、この脱炭焼鈍の前処理として、電解脱脂法による
洗浄処理を施す必要がある。すなわち、電解脱脂法は鋼
板を浴中に浸漬し、正又は負の電流を鋼板表面から浴中
に流して、鋼板表面を清浄化する技術である。かかる電
解脱脂での洗浄において、鋼板表面にSiを含有する電着
物を最終的に0.1 mg/m2 以上で付着させることが肝要で
ある。なぜなら、Siを含有する電着物の付着量が0.1mg/
m2未満の場合は、続く脱炭焼鈍の前期において形成され
る鋼板表面の酸化物中のファイヤライトの含有量が低下
し、脱炭焼鈍後期において酸化物の分解再生成高密度化
処理の効果が得られない。
【0059】なお、Siを含有する電着物の付着量の検出
は、けい光X線によるSi強度の単位時間当たりのカウン
ト数を用いて行うことができる。すなわち、付着した電
着物を極低濃度のHCl で洗い落として、その前後の重量
変化を測定し、この重量変化とけい光X線によるSi強度
のカウント数の変化とを対応させ、較正曲線を予め作成
しておくことにより、付着量の測定は簡便になされる。
【0060】また、脱炭焼鈍は操業性の点から前期およ
び後期に分けて同一の連続炉で行っても、前期と後期と
を別々の焼鈍処理として行っても良い。脱炭焼鈍前期
は、通常行われている脱炭焼鈍であるが、鋼板表面に形
成される酸化物におけるファイヤライトの組成割合を高
めるため、雰囲気のP(H2O) /P(H2)を0.30〜0.65の範
囲とすることが必要である。すなわち、P(H2O) /P(H
2)が0.30未満の場合、ファイヤライトの生成が不十分と
なり、脱炭焼鈍後期での鋼板表面の酸化物に対する分解
再生成高密度化処理において、微細シリカの生成が不十
分となる。一方、P(H2O) /P(H2)が0.65をこえる場合
は、ウスタイトが生成されて、同じく酸化物に対する分
解再生成高密度化処理において、微細シリカの生成が困
難となる。従って、脱炭焼鈍前期における雰囲気のP(H
2O) /P(H2)を0.30〜0.65とする。
【0061】脱炭焼鈍後期は、焼鈍雰囲気中の H2O分圧
を0.05〜3.0 %とし、焼鈍温度を 850〜950 ℃の範囲と
することが必要である。すなわち、H2O 分圧が0.05%以
下の場合、ファイヤライトから分解した再生成物として
Fe、OおよびSiO2が生じ、緻密かつ微細なシリカの分散
とはならず、一方 3.0%をこえると、ファイヤライトの
分解が阻害される。さらに、焼鈍温度が 850℃未満にな
ると、ファイヤライトの分解反応の進行が不十分とな
り、一方 950℃をこえると、シリカ粒子の粗大化が生じ
緻密な酸化物粒子の分散状態が得られなくなる。従っ
て、焼鈍雰囲気中の H2O分圧は0.05〜3.0 %とし、かつ
焼鈍温度を 850〜950 ℃の範囲に限定する。
【0062】かかる酸化物の分解再生成高密度化処理
は、5秒間未満ではやや不十分であり、40秒間をこえる
と過剰にファイヤライトが分解されて、磁気特性の低下
を招くため、5〜40秒間の範囲が好ましい。
【0063】なお、脱炭焼鈍後は焼鈍分離材を塗布して
から1200℃程度の温度で最終仕上焼鈍を行い、最終製品
とする。そして、必要に応じて、絶縁コーティングを施
し、平坦化処理を行って製品とすることができる。ま
た、鋼板表面に溝を設けたり、プラズマジェットやレー
ザーを照射して局部的に歪みを与えて磁区細分化処理を
施すことも可能である。
【0064】
【実施例】
実施例1 表1に従う組成の鋼スラブA〜Pを熱間圧延後、1000℃
で1分間の熱延板焼鈍を施し、次いで第1回目の冷間圧
延でA〜Lは1.5mm およびM〜Pは0.60mmの中間板厚と
したのち、中間焼鈍として、A〜Lは1100℃およびM〜
Pは1000℃で40秒間、25%湿N2および75%H2雰囲気(露
点40℃)での焼鈍を施した後、ミスト水を用いて40℃/s
の冷却速度で350 ℃まで急冷し、その後A〜Lは 350℃
およびM〜Pは 200℃で25秒間保持した後、常温まで大
気中で徐冷した。中間焼鈍後のコイルは、15%のHCl 水
溶液で酸洗し、その後 180mm径のワークロールを有する
センジミア圧延機にて、0.22mmの最終板厚とした。これ
らのコイルの表面粗さは、表2に示すように0.25〜0.30
μmRa であった。
【0065】次に、これらのコイルを2分割し、一方は
脱炭焼鈍の前処理として、アルカリ脱脂浴中を通板した
後純水でリンスし洗浄した。他方は脱炭焼鈍の前処理と
してオルソ珪酸ソーダ浴を用いて電解脱脂し、Siを含有
する電着物を 1.0〜2.3mg/mm 2 付着させた。その後、コ
イルを50%H2および残余N2バランスの雰囲気(露点60
℃,P(H2O) /P(H2):0.39)で 840℃,2分間の前期
の脱炭焼鈍を行い、引き続いて脱炭焼鈍後期において、
50%H2および残部N2バランスの雰囲気(露点5℃, H2O
分圧: 0.9%)下で 880℃において20秒間の酸化物の分
解再生成高密度化処理を施した。
【0066】
【表1】
【0067】これらのコイルは、3%のTiO2および2%
の Sr(OH)2・8H2Oを含有しMgO を主成分とする焼鈍分離
剤を鋼板表面に塗布した後、コイル状に巻き取り、N2
で 840℃45hの保持を行った後、15℃/hの昇温速度で25
%N2および75%H2の雰囲気で1200℃まで昇温し、H2中で
1200℃,10h保持した後降温する、最終仕上焼鈍を施し
た。その後、未反応の焼鈍分離剤を除去した後、平坦化
処理を兼ねて張力コーティングを塗布焼付けて製品とし
た。かくして得られた製品の磁気特性を、表2に併記す
る。
【0068】
【表2】
【0069】実施例2 表1に記載した鋼スラブAを熱間圧延後、1150℃で1分
間の熱延板焼鈍を施した後、ミスト水を用いて40℃/sの
冷却速度で室温まで冷却した。その後、15%のHCl 水溶
液で酸洗してから、 180mm径のワークロールを有するセ
ンジミア圧延機を用いて、0.26mmの最終板厚とした。こ
こで、コイルの表面粗さは0.28〜0.32μmRa であっ
た。
【0070】次に、脱炭焼鈍の前処理として、オルソ珪
酸ソーダ浴を用いて電解脱脂し、Siを含有する電着物を
0.8mg/m2 で付着させた。このコイルに、45%H2および
残余N2バランスの雰囲気(露点60℃,P(H2O) /P
(H2):0.44)で 850℃,2分間の脱炭焼鈍を行った後、
2分割し、一方をN2雰囲気(露点−5℃, H2O分圧:0.
4%)で 860℃において20秒間の酸化物の分解再生成高
密度化処理を施した。残る一方は、そのまま次工程の処
理へ廻した。
【0071】これらのコイルは、10%TiO2および2%の
Sr(OH)2・8H2Oを含有しMgO を主成分とする焼鈍分離剤
を鋼板表面に塗布した後、コイル状に巻き取り、25%N2
および75%H2雰囲気で 850℃まで30℃/h 850℃から1200
℃まで15℃/hの昇温速度で昇温し、H2中1200℃, 10hの
保持を行った後、降温する最終仕上焼鈍を施した。その
後、未反応の焼鈍分離剤を除去した後、平坦化処理を兼
ねて張力コーティングを塗布焼付けて製品とした。かく
して得られた製品の磁気特性を表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】実施例3 C:0.040 重量%, Si:3.25重量%, Mn:0.07重量%,
P:0.004 重量%, Al:0.001 重量%, S:0.002 重量
%, Se:0.018 重量%, Mo:0.010 重量%およびSb:0.
025 重量%を含有し、残部Feと不可避的不純物からなる
けい素鋼スラブ2本を熱間圧延し、1000℃, 30秒間の熱
延板焼鈍を施した後、0.64mmの板厚とした。その後、75
%H2および残余N2バランスの雰囲気(露点35℃)で1000
℃, 30秒間の中間焼鈍を行い、冷却後表面を研削してか
ら、タンデム圧延機にて低粘度油を用いて、0.20mmの最
終板厚とした。このとき、鋼板の表面粗さは0.35〜0.38
μmRa であった。
【0074】次に、脱炭焼鈍の前処理として、オルソ珪
酸ソーダ浴を用いて電解脱脂し、Siを含有する電着物を
2.3 g/m2付着させた。これらのコイルを2分割し、一方
は45%H2および残余N2バランスの雰囲気(露点60℃,P
(H2O) /P(H2):0.44)で820 ℃,2分間の前期脱炭焼
鈍を行い、引続いて50%H2および残余N2バランスの雰囲
気(露点12℃,H20 分圧:1.4 %)下で 860℃,20秒間
の酸化物の分解再生成高密度化処理を施した。他方のコ
イルは、比較として、同じく45%H2および残余N2バラン
ス(露点60℃,P(H2O) /P(H2):0.44)の雰囲気で 8
20℃,2分間の前期脱炭焼鈍を行い、引続いて 100%H2
の雰囲気(露点−40℃, H2O分圧:0.01%) 下で1000
℃,20秒間の酸化物の分解再生成高密度化処理を施し
た。
【0075】これら2つのコイルは、2%のTiO2および
1.2%の SrSO4を含有しMgO を主成分とする焼鈍分離剤
を鋼板表面に塗布した後、コイル状に巻き取り、N2中で
850℃,50h保持後、25%N2および75%H2雰囲気で30℃
/hの昇温速度で1200℃まで昇温し、H2中で1200℃, 10h
保持した後降温する、最終仕上焼鈍を施した。その後、
未反応の焼鈍分離剤を除去した後、平坦化処理を兼ねて
張力コーティングを塗布焼付けた後、圧延方向と直角方
向に5mmの間隔でプラズマジェットを圧延方向に照射し
て磁区細分化処理を施し、製品とした。かくして得られ
た製品の磁気特性を表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
【発明の効果】この発明によれば、磁束密度の高い方向
性けい素鋼板を安定して製造することができ、とりわけ
方向性けい素鋼板の工業的規模での生産における効果は
極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱炭焼鈍の前処理法および鋼板表面へのSi含有
電着物の付着量と磁気特性との関係を示した図である。
【図2】脱炭焼鈍の前処理条件と脱炭焼鈍板の耐酸化性
および耐窒化性との関係を示した図である。
【図3】最終冷間圧延後の鋼板表面に残留する酸化物量
を示す酸素目付量と磁気特性との関係を示した図であ
る。
【図4】脱炭焼鈍前期の雰囲気のP(H2O) /P(H2)と磁
気特性との関係を示した図である。
【図5】脱炭焼鈍後期処理の雰囲気と磁気特性との関係
を示した図である。
【図6】脱炭焼鈍後期処理の温度および時間と磁気特性
との関係を示した図である。
【図7】鋼板表面の酸化物の分解再生成高密度化処理に
よって酸化物の組成と酸化物粒子分布が変化する状態を
示した模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 久田 雅子 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 山口 広 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 含けい素鋼スラブに熱間圧延を施し、次
    いで1回または中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延によっ
    て最終板厚とした後、脱炭焼鈍、そして焼鈍分離剤を塗
    布して最終仕上焼鈍を施す一連の工程によって方向性け
    い素鋼板を製造するに当たり、最終冷間圧延後の鋼板表
    面の算術平均粗さを0.40μm以下に調整し、その後脱炭
    焼鈍に先立って、電解脱脂法によって鋼板表面にSiを含
    有する電着物が0.1mg/m2以上で付着する洗浄処理を施
    し、次いで、雰囲気における水素分圧に対する水蒸気分
    圧の比を0.30〜0.65に調整して行う前期と、雰囲気にお
    ける温度を850 〜950 ℃かつ水蒸気分圧を0.05〜3.0 %
    に調整して鋼板表面の酸化物の分解再生成高密度化処理
    を行う後期とからなる脱炭焼鈍を施すことを特徴とする
    磁気特性に優れた方向性けい素鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 分解再生成高密度化処理を5〜40秒間に
    わたって行う請求項1に記載の方向性けい素鋼板の製造
    方法。
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