JP2018090871A - 方向性電磁鋼板、及び、その製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
鋼板を積層する際に、鋼板が滑りにくいと鋼板の端面がそろいにくく、鉄心組み上げ精度が低下するという問題があった。そのため、鋼板の滑りやすさをある程度以上に調整する必要がある。
一方、鋼板の表面粗さが大きい方が、切断加工性が良好であるため、鋼板の滑りやすさと、切断加工性を両立することが課題となっている。
前記鋼板中の酸素濃度が板厚0.22mm換算で500ppm以上2200ppm以下であり、
前記方向性電磁鋼板の輪郭曲線の線粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0.8μm以上1.5μm以下であり、且つ、当該輪郭曲線の平均高さと、負荷長さ率が10%となる切断レベルとの差(切断レベル差:Rδc)が2.0μm以下であることを特徴とする。
前記冷延板を湿水素−不活性ガス雰囲気中、酸素ポテンシャルPH2O/PH2が0.19以上0.44以下、昇温速度が100℃/秒以上2000℃/秒以下で脱炭焼鈍し、酸素濃度が板厚0.22mm換算で300ppm以上1500ppm以下の脱炭板とする工程と、
前記脱炭板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍する工程と、
張力コーティングを形成する工程とを有することを特徴とする。
なお、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
また、本発明において「ppm」は、特に断りがない限り、質量の比率を表す。
本発明に係る方向性電磁鋼板は、Siを0.8質量%以上7.0質量%以下含有する鋼板と、当該鋼板の両面にそれぞれ張力コーティングを有する方向性電磁鋼板であって、
前記鋼板中の酸素濃度が板厚0.22mm換算で500ppm以上2200ppm以下であり、
前記方向性電磁鋼板の輪郭曲線の線粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0.8μm以上1.5μm以下であり、且つ、当該輪郭曲線の平均高さと、負荷長さ率が10%となる切断レベルとの差(切断レベル差:Rδc)が2.0μm以下であることを特徴とする。
本発明に係る方向性電磁鋼板10は、図1の例に示されるように、鋼板5の両面にそれぞれ張力コーティング1を有するものである。また、方向性電磁鋼板10の表面は、図2の例に示されるように微細な凹凸を有しており、輪郭曲線の線粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0.8μm以上1.5μm以下であり、且つ、当該輪郭曲線の平均高さと、負荷長さ率が10%となる切断レベルとの差(切断レベル差:Rδc)が2.0μm以下である。
本発明の方向性電磁鋼板10は、通常、表面がフォルステライト(2MgO・SiO2)等の酸化物を含むグラス被膜2となっており、当該鋼板5中の酸素濃度が板厚0.22mm換算で500ppm以上2200ppm以下である。
以上のことから、上記本発明の方向性電磁鋼板は、切断加工性に優れ、滑り性が良好となる。
以下、本発明の方向性電磁鋼板の各構成について説明する。
本発明の方向性電磁鋼板は、表面の輪郭曲線の線粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0.8μm以上1.5μm以下であり、且つ、当該輪郭曲線の平均高さと、負荷長さ率が10%となる切断レベルとの差(切断レベル差:Rδc)が2.0μm以下である。
算術平均粗さ(Ra)、及び、切断レベル差(Rδc)は、それぞれJIS B0601に規定されているものであるが、以下に説明する。
このとき算術平均粗さRaは下記数式(1)により算出される。
また本発明においては、上記により算出された切断レベル差(Rδc)が2.0μm以下である。Rδcが2.0μm以下であることにより、滑り性および切断加工性に優れている。Rδcは小さいほど滑り性と切断加工性に優れているため、Rδcの下限は特に限定されないが、製造コスト等の点から、0.2μm以上であることが好ましい。
本発明において鋼板は、Si(ケイ素)を0.8質量%以上7.0質量%以下含有し、本発明の効果を損なわない範囲でその他の元素を含有してもよい、Fe(鉄)を主成分とする化学組成を有する。
なお、本発明において主成分とは、最も高い割合を示す成分のことをいい、通常、元素含有率が50質量%以上である。
本発明においては、鋼板の表層にグラス被膜を有することが好ましく、特に、鋼板の表層にフォルステライト(2MgO・SiO2)を含むグラス被膜を有することが好ましい。グラス被膜を有することにより、後述する張力コーティングとの密着性に優れている。
C = CS × TS / 0.22
(数式(2)中、Cは換算後の酸素濃度(ppm)、Csは換算前の酸素濃度(測定値)(ppm)、Tsは測定対象の板厚(mm)を表す。)
本発明の方向性電磁鋼板は前記鋼板の両面にそれぞれ張力コーティングを有する。当該張力コーティングは、従来公知のものの中から適宜選択することができる。本発明においてはリン酸塩系被膜が好ましく、特に、リン酸アルミニウム及びリン酸マグネシウムのうち1種以上を主成分とし、更に、副成分としてクロム及び酸化ケイ素のうち1種以上を含有する被膜であることが好ましい。このような張力コーティングは、鋼板の絶縁性を確保すると共に、鋼板に張力を与えて低鉄損化にも優れている。
張力コーティングの厚みは特に限定されないが、絶縁性を確保する点から、0.5μm以上とすることが好ましい。一方、方向性電磁鋼板の表面形状を制御しやすい点から、3μm以下とすることが好ましい。
本発明に係る方向性電磁鋼板の製造方法は、Siを0.8質量%以上7.0質量%以下含有する鋼板素材を、輪郭曲線の線粗さが、算術平均粗さ(R’a)で0.8μm以上3.0μm以下であり、且つ、当該輪郭曲線の平均高さと、負荷長さ率が10%となる切断レベルとの差(切断レベル差:R’δc)が7.0μm以下の冷延板とする工程と、
前記冷延板を湿水素−不活性ガス雰囲気中、酸素ポテンシャルPH2O/PH2が0.19以上0.44以下、昇温速度が100℃/秒以上2000℃/秒以下で脱炭焼鈍し、酸素濃度が板厚0.22mm換算で300ppm以上1500ppm以下の脱炭板とする工程と、
前記脱炭板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍する工程と、
張力コーティングを形成する工程とを有することを特徴とする。
本発明の製造方法は、少なくとも上記各工程を有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の工程を有していてもよいものである。以下、各工程について順に説明する。
本発明において、熱間圧延工程は、特に限定されず、直送熱延、連続熱延など公知の方法を適宜選択することができる。熱間圧延時のスラブの表面温度は、特に限定されないが、通常、1050℃以上1400℃以下の範囲で適宜設定される。スラブの表面温度を1050℃以上とすることによりインヒビターが十分に固溶するため、優れた磁気特性を有し、且つばらつきの抑制された方向性電磁鋼板を得ることができる。
また、本発明においては、スラブの表面温度の保持時間は、適宜調整すればよい。優れた磁気特性を有し、且つばらつきの抑制された方向性電磁鋼板を得ることができる点から、15分以上とすることが好ましい。一方、磁気特性の点から、60分以下で十分であり、生産性を向上し、製造コストを抑制する点からは、60分以下とすることが好ましい。
熱間圧延後の鋼板の厚みは、特に限定されないが、例えば、1.8〜3.5mmとすることができる。熱間圧延に関する他の条件は特に限定されず、適宜調整すればよい。
中間焼鈍条件は特に限定されず、例えば、750〜1200℃の温度域で30秒〜10分間実施するなど適宜条件を選択すればよい。ここで、圧延機に複数回通板させる際、圧延と圧延の間に300℃以下程度へ鋼板を加熱してから圧延を実施することが磁気特性向上には好ましい。
冷延板の表面粗度は、主に当該冷延最終段に用いる冷延ロールの粗度と、鋼板素材の当該冷延ロール通過速度等により制御することができる。即ち、目的とする冷延板の算術平均粗さ(R’a)、及び切断レベル差(R’δc)より、やや平滑度の高い冷延ロールを準備し、冷延板の製造速度を調節することにより上記目的の冷延板を得ることができる。
なお、冷延板の算術平均粗さ(R’a)と切断レベル差(R’δc)は、前述した方向性電磁鋼板の算術平均粗さ(Ra)及び切断レベル差(Rδc)と同様に測定することができるので、ここでの説明は省略する。
脱炭焼鈍工程における焼鈍温度や焼鈍時間は(保持時間)、常法の手法により施行してよいが、生産性の観点から、脱炭焼鈍工程における焼鈍温度は750℃〜900℃の範囲が好ましく、保持時間は30秒〜250秒の範囲とすることが好ましい。ただし、昇温速度は前述のとおり規定する必要があり、毎秒100℃以上であることが必要であるが、昇温速度が速すぎると鋼板の酸化が進行し易くなり、RaおよびRδcの適切な制御が困難になるため、昇温速度の上限は毎秒2000℃に限定する。また、雰囲気については水素−不活性ガス雰囲気とし、酸素ポテンシャルがPH2O/PH2で0.19〜0.44の間とする必要がある。昇温速度と酸素ポテンシャルは、同時に上記の範囲とする必要がある。たとえば、酸素ポテンシャルのみが上記の範囲であると、後述するようにグラス被膜と鋼鈑の界面の嵌合構造が十分に発達せず、グラス被膜の密着性が劣位となる。脱炭焼鈍の雰囲気には水素は必要だが、不活性ガスとしては窒素のほか、アルゴン、ヘリウム、あるいはこれらの混合ガスが使用可能である。このうちコストの面からは窒素を選択するとよい。
このようにして得られた脱炭板は、酸素濃度が板厚0.22mm換算で300ppm以上1500ppm以下となる。なお、酸素濃度の測定方法は、前記方向性電磁鋼板と同様であるため、ここでの説明は省略する。
焼鈍分離剤はMgOを主成分とするが、被膜特性改善、磁気特性改善のための公知の微量添加元素を含むことができる。焼鈍分離剤の塗布方法は、焼鈍分離剤を水に分散させてスラリーとして鋼板に塗布した後に乾燥する方法や、静電塗布法など公知いずれの方法も用いることができる。
焼鈍分離剤の塗布量は、片面あたり3〜10g/m2とするとよく、望ましくは5〜7g/m2とするとよい。焼鈍分離剤の塗布量が少なすぎると焼鈍時に鋼板が焼きつきやすくなり、一方多すぎるとコイル状に巻き取りにくくなる上に、コスト上昇等の問題が生じるようになる。
通常、脱炭板の表面近傍(鋼板表面からおおむね3μm深さまで)には脱炭工程中に形成されたSiO2を主とする酸化物層が存在する。このSiO2は後述する仕上げ焼鈍において、焼鈍分離剤に含まれるMgOと反応してフォルステライトを含むグラス被膜を形成することから、密着性の良好なグラス被膜を得るためには脱炭板のSiO2を制御することが必要である。すなわちSiO2が少なすぎると、鋼板中の酸素濃度が500ppm未満となってグラス被膜の形成不良となり、被膜の密着性などが損なわれるおそれがある。他方SiO2が多すぎると、鋼板中の酸素濃度が2200ppm超となってグラス被膜が厚くなり、前工程で表面粗度を制御した効果がなくなる。本発明では脱炭焼鈍時に急速加熱することで、薄いグラス被膜でも密着性の良好なグラス被膜が得られる。急速加熱で密着性が向上する理由については、形成されるSiO2が鋼板の深い部位まで形成されて、この構造がのちにグラス被膜と鋼板界面が強固な嵌合構造を形成することを可能とし、結果としてグラス被膜が薄くても密着性に優れる被膜が形成されると考えられる。
最高温度では5〜20時間保定したのち室温まで冷却し、グラス被膜が形成された方向性電磁鋼板を得る。
仕上げ焼鈍中の雰囲気は特に限定しないが、例えば、窒素水素混合雰囲気とし、最高温度では純化を促進するため水素を多く含む雰囲気とするとよい。この場合、窒素の代わりにアルゴン、ヘリウム等の不活性ガスや、これらの混合ガスを使えるが、コストの面から窒素ガスが最も適している。
Si:3.4質量%、Mn:0.17質量%、S:0.006質量%、Se:0.002%,C:0.045質量%、酸可溶解Al:0.022質量%、N:0.005質量%を含んだスラブを素材として公知の方法にて熱間圧延後、熱延板焼鈍を行い、冷間圧延で0.22mmを最終板厚とする鋼板を得た。
この際冷延後の表面粗さを振るために、冷延ロールの粗度を種々に変えて試験を行った。
このような冷延板を脱炭して窒化後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を片面4g/m2となるよう塗布した。脱炭条件は、850℃まで500℃/秒で昇温した後、60秒保定して冷却した。脱炭雰囲気は水素−不活性ガス雰囲気でPH2O/PH2で0.33とした。このような条件で得られた脱炭板の酸素量は300ppmであった。焼鈍分離剤の組成は、MgO:100質量部、TiO2:5質量部に対し、FeCl2を塩素で200ppmとなるよう添加した。また、窒化量は200ppmとした。
得られた鋼板をコイル状に巻き取って、20℃/hで昇温し、1200℃の水素気流中で20時間仕上げ焼鈍した後冷却した。この後、リン酸アルミニウムを主成分とする張力コーティングを厚さ1μmとなるよう形成し方向性電磁鋼板を得た。なお、リン酸アルミニウムを主成分とする張力コーティング形成前の鋼板の酸素量は、表層のフォルステライト層を含めて580ppmであった。
上記により得られた方向性電磁鋼板を3枚準備した。図3に示されるように、前記3枚の鋼板を重ね合わせ(11、12、13)、この上に錘14を乗せた。真ん中の鋼板11を引き抜き、このときの力Fをばねばかり15で測定し、滑り摩擦係数(FF値)を算出した。結果を表1に示す。
(評価基準)
○:滑り摩擦係数が0.6以下であった。
×:滑り摩擦係数が0.6を超過した。
得られた方向性電磁鋼板に、金型を用いてφ5mmの穴を繰り返し形成し、当該金型の摩耗により、穴の縁のかえりが50μmを超えるまでの穴の形成回数を測定した。穴の縁のかえりが基準値50μmを超えるまでの回数が多いほど切断加工性が良好である。結果を表1に示す。
(評価基準)
○:50万回以上穴を形成しても、基準値を超えなかった。
×:50万回未満で基準値を超えた。
得られた方向性電磁鋼板を、直径20mmの円柱に巻きつけて、被膜が剥離した面積を測定し、その総面積が鋼板表面積の全域に占める面積比率にて評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
○:被膜剥離領域3%未満(ゼロも含む)であった。
×:被膜剥離領域3%以上であった。
Si:3.4質量%、Mn:0.17質量%、S:0.006質量%、Se:0.002%,C:0.045質量%、酸可溶解Al:0.022質量%、N:0.005質量%を含んだスラブを素材として公知の方法にて熱間圧延後、熱延板焼鈍を行い、冷間圧延で0.22mmを最終板厚とする鋼板を得た。
この際、冷延後に種々の表面粗さとなるようロール粗度を変えて試験を行った。
このような冷延板を脱炭したが、その際に種々の昇温速度と雰囲気とした。脱炭温度は850℃、処理時間は60秒とした。脱炭後に窒化処理し200ppmの窒素量とした。
窒化後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を片面4g/m2となるよう塗布した。焼鈍分離剤の組成は、MgO:100質量部、TiO2:5質量部に対し、FeCl2を塩素で200ppmとなるよう添加した。
焼鈍分離剤塗布後の鋼板をコイル状に巻き取って、20℃/hで昇温し、1200℃の水素気流中で20時間仕上げ焼鈍した。
この後、リン酸アルミニウムを主成分とする張力コーティングを厚さ1μmとなるように形成し方向性電磁鋼板を得た。
得られた方向性電磁鋼板について、前記実施例1等と同様に、滑り摩擦係数、抜き打ち性、及び密着性の評価を行った。結果を表3に示す。また、表2において、各実施例及び比較例における冷延板のRa及びRδcの値と、脱炭焼鈍工程の条件を示す。
2 グラス被膜
5 鋼板
10 方向性電磁鋼板
A 評価部位
11、12、13 方向性電磁鋼板
14 重錘
15 ばねばかり
F 力
Claims (2)
- Siを0.8質量%以上7.0質量%以下含有する鋼板と、当該鋼板の両面にそれぞれ張力コーティングを有する方向性電磁鋼板であって、
前記鋼板中の酸素濃度が板厚0.22mm換算で500ppm以上2200ppm以下であり、
前記方向性電磁鋼板の輪郭曲線の線粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0.8μm以上1.5μm以下であり、且つ、当該輪郭曲線の平均高さと、負荷長さ率が10%となる切断レベルとの差(切断レベル差:Rδc)が2.0μm以下である、方向性電磁鋼板。 - Siを0.8質量%以上7.0質量%以下含有する鋼板素材を、輪郭曲線の線粗さが、算術平均粗さ(R’a)で0.8μm以上3.0μm以下であり、且つ、当該輪郭曲線の平均高さと、負荷長さ率が10%となる切断レベルとの差(切断レベル差:R’δc)が7.0μm以下の冷延板とする工程と、
前記冷延板を湿水素−不活性ガス雰囲気中、酸素ポテンシャルPH2O/PH2が0.19以上0.44以下、昇温速度が100℃/秒以上2000℃/秒以下で脱炭焼鈍し、酸素濃度が板厚0.22mm換算で300ppm以上1500ppm以下の脱炭板とする工程と、
前記脱炭板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍する工程と、
張力コーティングを形成する工程とを有する、方向性電磁鋼板の製造方法。
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JP6801412B2 (ja) | 2020-12-16 |
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